説明

磁気浮上システムの枕木締結構造

【課題】本発明の目的は、温度変化に伴うレールの伸縮等により生じる枕木の変位の吸収性をより向上させることが可能な磁気浮上システムの枕木締結構造を提供することである。
【解決手段】本発明では、少なくとも下側にフランジ部12を有する枕木3を介してレール4を路盤2上に固定する磁気浮上システムの枕木締結構造1において、枕木3のフランジ部12と路盤2とは、上下両面に金属板5,11が接着された弾性体9を介して取付けられ、弾性体9の上側の金属板11が、締結手段17,18によりフランジ部12に固定され、弾性体9の下側の金属板5が、締結手段7により路盤2に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気浮上車両や磁気搬送装置等の磁気浮上システムに関し、詳しくは、フランジ部を有する枕木を介してレールを路盤上に固定する磁気浮上システムの枕木締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気浮上車両の軌道としては、地上側に車両走行方向に延びる路盤を設け、その路盤上に枕木を介してレールを固定したものがある。このような磁気浮上車両の軌道では、温度変化に伴うレールの伸縮や車両通行時にレールにかかる荷重によって枕木が変位する場合があり、車両の安定運用に支障をきたすおそれがあった。
そのため、温度変化に伴うレールの伸縮等によって枕木が変位した際に、枕木の変位を吸収するように構成された枕木締結構造が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図9は、従来の磁気浮上車両用の枕木締結構造40の一例を示している。枕木締結構造40は、磁気浮上車両(図示せず)の軌道に適用されるものであり、地上側には、車両走行方向に沿って延びるコンクリート製等の路盤41が設けられている。この路盤41上には、路盤41の幅方向に一対の台座42が載置されている。
【0004】
図9に示すように、一対の台座42の上側には、ゴム等からなる調整パッド43を介してベースプレート44がそれぞれ配置されている。そして、H形鋼からなる枕木45が、一対のベースプレート44を架け渡すように配置されている。この枕木45の上側には、レール46が車両走行方向(路盤41の長手方向)に沿って延びるように配置されている。
【0005】
図9に示すように、従来の枕木締結構造40では、ベースプレート44上に第1の弾性材47を介して枕木45を配置している。また、枕木45の下側フランジ部48には、貫通孔49が設けられている。この貫通孔49には、円筒形のスペーサ50が挿通されており、このスペーサ50の外周面と貫通孔49の内周面との間には、第2の弾性材51が配置されている。
【0006】
さらに、枕木45の下側フランジ部48の上側には、座金形状の第3の弾性材52が配置されており、この第3の弾性材52の上側には、平座金53が配置されている。そして、固定ボルト54が、平座金53と第3の弾性材52とスペーサ50とに挿通されるとともにベースプレート44にねじ込まれている。これにより、枕木45の下側フランジ部48とベースプレート44とが締結されている。
【0007】
以上の構成から、従来の枕木締結構造40では、温度変化に伴うレール46の伸縮等により枕木締結構造40に矢印F方向の力が働いた場合、枕木45が、路盤41に対して摺動した後に矢印方向に回動する。この際、枕木45の変位は、第1ないし第3の弾性材47,51,52の弾性変形により吸収されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−268506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の従来の枕木締結構造40においては、枕木45の下側フランジ部48とベースプレート44とが固定ボルト54により締結されているので、枕木締結構造40に矢印F方向の力が働いた場合、下側フランジ部48とベースプレート44とが固定ボルト54により動きが制限されることになり、これらの間に挟まれた第1の弾性材47の弾性変形の効果が十分に利用されず、枕木45の変位を十分に吸収することができないという問題があった。
【0010】
さらに、上述の従来の枕木締結構造40では、枕木締結構造40に矢印F方向の力が働いた場合、第1ないし第3の弾性材47,51,52の3箇所で弾性変形が生じるので、枕木45がどのように変位するかが予測しにくかった。そのため、設計段階で各弾性体47,51,52が受ける荷重負担等も予測することが難しくなり、各弾性体47,51,52の性能を荷重負担等に合わせて設定することができなった。したがって、温度変化に伴うレールの伸縮等により生じる枕木45の変位を十分に吸収することができないという問題もあった。
【0011】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、温度変化に伴うレールの伸縮等により生じる枕木の変位の吸収性をより向上させることが可能な磁気浮上システムの枕木締結構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明の実施態様によれば、少なくとも下側にフランジ部を有する枕木を介してレールを路盤上に固定する磁気浮上システムの枕木締結構造において、前記枕木の前記フランジ部と前記路盤とは、上下両面に金属板が接着された弾性体を介して取付けられ、前記弾性体の上側の金属板が、締結手段により前記フランジ部に固定され、前記弾性体の下側の金属板が、締結手段により前記路盤に固定されている。
【0013】
また、本発明の別の実施形態によれば、前記下側の金属板は、上下に配置された第1の金属板と第2の金属板とから構成され、前記第1の金属板が、前記弾性体に接着されるとともに、締結手段により前記第2の金属板に固定され、前記第2の金属板が、締結手段により前記路盤に固定されている。
【0014】
また、本発明の別の実施形態によれば、前記下側の金属板には、前記枕木の前記フランジ部の上方の位置まで延在するストッパが設けられており、該ストッパが、前記フランジ部の上方への移動を規制するようになっている。
【0015】
また、本発明の別の実施形態によれば、前記フランジ部及び前記上側の金属板には、前記フランジ部を貫通し且つ前記上側の金属板の内部まで延びるタップ孔が形成されており、前記フランジ部と前記上側の金属板とが、前記フランジ部の上面から前記タップ孔にボルトを挿入することにより締結されている。
【0016】
また、本発明の別の実施形態によれば、前記枕木締結構造を備えた磁気浮上システムの軌道が提供される。
【発明の効果】
【0017】
また、本発明に係る磁気浮上システムの枕木締結構造によれば、少なくとも下側にフランジ部を有する枕木を介してレールを路盤上に固定する磁気浮上システムの枕木締結構造において、前記枕木の前記フランジ部と前記路盤とは、上下両面に金属板が接着された弾性体を介して取付けられ、前記弾性体の上側の金属板が、締結手段により前記フランジ部に固定され、前記弾性体の下側の金属板が、締結手段により前記路盤に固定されているので、フランジ部と下側の金属板との間が弾性体のみで支持されることになり、温度変化に伴うレールの伸縮等により枕木締結構造に力が働いた場合、従来のように固定ボルト等の締結手段により弾性体の弾性変形が制限されず、枕木の変位に対して弾性体がより柔軟に弾性変形することができる。これにより、枕木の変位によって生じる荷重及び振動を従来に比べてより吸収することができる。
さらに、温度変化に伴うレールの伸縮等により枕木締結構造に力が働いた場合、従来では3箇所で弾性変形が生じていたのに対し、本発明では、弾性変形が1箇所のみで生じることになるので、枕木の変位が予測し易くなる。これにより、設計段階で弾性体が受ける荷重負担等も予測し易くなり、弾性体の性能を予測される荷重負担に合わせて設定でき、枕木締結構造に生じる荷重及び振動対する吸収性がより向上する。
また、従来に比べて、使用する弾性体が1つだけでよいので、部品点数が削減され、コストを低減することができる。
【0018】
また、本発明に係る磁気浮上システムの枕木締結構造によれば、前記下側の金属板は、上下に配置された第1の金属板と第2の金属板とから構成され、前記第1の金属板が、前記弾性体に接着されるとともに、締結手段により前記第2の金属板に固定され、前記第2の金属板が、締結手段により前記路盤に固定されているので、枕木締結構造を路盤上に組付ける場合、枕木と弾性体と第1の金属板とが一体となった構造体と、第2の金属板とを工場等で別個に製造し、それぞれを別個に路盤まで運搬することができる。下側の金属板を1枚の構成とした場合、全ての部材を一体として運搬する必要があり、運搬する構造体のサイズが大きくなってしまうが、下側の金属板を2枚の金属板から構成することにより、弾性体に接着される第1の金属板のサイズを小さく設定でき、その結果、運搬する構造体のサイズが小さくなる。これにより、路盤上までの運搬が容易になる。
また、路盤上に枕木締結構造を組付ける場合、まず、第2の金属板のみを路盤上に組付けた後に、枕木と弾性体と第1の金属板とが一体となった構造体を第2の金属板に締結することになる。このように、下側の金属板を1枚の構成とした場合に比べて、組付対象となる個々のサイズが小さくなるだけでなく、路盤上での組付作業も別個に行えるので、組付作業が容易になり、その結果、組付精度も向上する。
【0019】
また、本発明に係る磁気浮上システムの枕木締結構造によれば、前記下側の金属板には、前記枕木の前記フランジ部の上方の位置まで延在するストッパが設けられており、該ストッパが、前記フランジ部の上方への移動を規制するようになっているので、地震や台風等の異常時に枕木に鉛直方向上向きの荷重が加わった場合、フランジ部がストッパに当たることになり、枕木の異常な上昇を防止することができる。これにより、地震や台風等が発生した場合でも、車両の安定した運用が可能となる。
【0020】
また、本発明に係る磁気浮上システムの枕木締結構造によれば、前記フランジ部及び前記上側の金属板には、前記フランジ部を貫通し且つ前記上側の金属板の内部まで延びるタップ孔が形成されており、前記フランジ部と前記上側の金属板とが、前記フランジ部の上面から前記タップ孔にボルトを挿入することにより締結されているので、枕木締結構造を組付ける場合、枕木のフランジ部と上側の金属板とを重ね合わせた後、その状態でボルトをフランジ部の上面から挿入でき、締結作業が容易になる。これにより、工場における作業性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明によれば、前記枕木締結構造を備えた磁気浮上システムの軌道が提供されるので、上述した枕木締結構造と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造における車両走行方向の断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造における車両走行方向の断面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造における車両走行方向の断面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造における車両走行方向の断面図である。
【図8】図7のA−A線断面図である。
【図9】従来の磁気浮上車両用の枕木締結構造における車両走行方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る枕木締結構造における車両走行方向の断面図であり、図2は、図1のA−A線断面図である。
【0024】
本実施形態に係る枕木締結構造1は、磁気浮上車両(図示せず)の軌道に適用されるものであり、地上側には、車両走行方向に沿って延びるコンクリート製等の路盤2が設けられている。
【0025】
図1及び図2に示すように、路盤2上には、路盤2の幅方向(車両走行方向に直交する方向)に一対の枕木締結構造1が設けられている。この一対の枕木締結構造1は、路盤2の長手方向(車両走行方向)に沿って一定間隔をおいて複数配置されている。枕木3は、一対の枕木締結構造1を架け渡すように配置されており、枕木3は、路盤2の幅方向に沿って延びている。そして、磁気浮上車両用のレール4は、路盤2の長手方向に沿って延びるように枕木3上に固定されている。
【0026】
図1に示すように、路盤2上には、矩形状のベースプレート5(下側の金属板)が配置されている。ベースプレート5には、路盤2の長手方向において一対の挿通孔6が設けられている。そして、路盤2とベースプレート5とは、アンカーボルト7を各挿通孔6に挿通して路盤2内にねじ込むことにより締結されている。
【0027】
図1に示すように、ベースプレート5の上面5aには、第1の接着層8を介して弾性体9が配置されている。この弾性体9の上面9aには、第2の接着層10を介して金属板11(上側の金属板)が配置されている。そして、この金属板11の上面11aには、H形鋼からなる枕木3が載置されており、この枕木3は、上下にフランジ部12,13が位置するような配置となっている。
【0028】
図1に示すように、枕木3の下側フランジ部12には、一対の貫通孔15が枕木3のウェブ部14を挟んで対向するように設けられている。また、金属板11にも、貫通孔15に対応する位置にボルト孔16が設けられている。そして、枕木3の下側フランジ部12と金属板11とは、固定ボルト17により締結されている。この固定ボルト17は、金属板11の下側からボルト孔16及び貫通孔15に挿入されるとともに、枕木3の下側フランジ部12上に配置したナット18に螺合されている。
【0029】
また、図1に示すように、弾性体9の上面9aには、金属板11のボルト孔16に対応する位置に凹部9bが設けられている。この凹部9bには、弾性体9と金属板11とが第2の接着層10を介して接着された状態で固定ボルト17の頭部17aが埋設されるようになっている。
【0030】
また、図1に示すように、枕木3の上側フランジ部13の上面13aには、路盤2の長手方向に沿って延びるようにレール4が配置されており、レール4は、ボルト等の締結手段(図示せず)により枕木3の上側フランジ部13に固定されている。
【0031】
次に、本実施形態に係る枕木締結構造1を組付ける手順について説明する。
【0032】
本実施形態では、まず、枕木3の下側フランジ部12と金属板11とを重ね合わせる。そして、固定ボルト17を金属板11の下側からボルト孔16及び貫通孔15に挿入し、枕木3の下側フランジ部12上に配置したナット18に螺合する。
次に、金属板11と弾性体9の上面9aとを第2の接着層10を介して接着する。この際、固定ボルト17の頭部17aが弾性体9の凹部9bに埋設されることになる。
その後、ベースプレート5の上面5aと弾性体9の下面9cとを第1の接着層8を介して接着する。ここまでの手順を工場等で行い、枕木3と弾性体9とベースプレート5等とが一体となった構造体の状態で路盤2上まで輸送する。
最後に、枕木3と弾性体9とベースプレート5等とが一体となった構造体を路盤2上に配置する。この際、アンカーボルト7をベースプレート5の各挿通孔6に挿通して路盤2内にねじ込み、路盤2とベースプレート5とを締結する。
以上により、枕木締結構造1を組付ける手順が完了することになる。
【0033】
本実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造1によれば、枕木3の下側フランジ部12と路盤2とは、上側に金属板11が接着され且つ下側にベースプレート5が接着された弾性体9を介して取付けられ、弾性体9の上側の金属板11が、固定ボルト17及びナット18により枕木3の下側フランジ部12に締結され、弾性体9の下側のベースプレート5が、アンカーボルト7により路盤2に締結されているので、枕木3の下側フランジ部12とベースプレート5との間が弾性体9のみで支持されることになり、温度変化に伴うレール4の伸縮等により枕木締結構造1に力が働いた場合、従来のように固定ボルト等の締結手段により弾性体9の弾性変形が制限されず、枕木3の変位に対して弾性体9がより柔軟に弾性変形することができる。これにより、枕木3の変位によって生じる荷重及び振動を従来に比べてより吸収することができる。
【0034】
さらに、本実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造1によれば、温度変化に伴うレール4の伸縮等により枕木締結構造1に力が働いた場合、従来では3箇所で弾性変形が生じていたのに対し、本発明では、弾性変形が弾性体9の1箇所のみで生じることになるので、枕木3の変位が予測し易くなる。これにより、設計段階で弾性体9が受ける荷重負担等も予測し易くなり、弾性体9の性能を予測される荷重負担に合わせて設定でき、枕木締結構造1に生じる荷重及び振動対する吸収性がより向上する。
また、従来に比べて、使用する弾性体9が1つだけでよいので、部品点数が削減され、コストを低減することができる。
【0035】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造を、図面を参照しながら説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係る枕木締結構造における車両走行方向の断面図であり、図4は、図3のA−A線断面図である。なお、前述した実施形態で説明したものと同様の部分については、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0036】
図3及び図4に示すように、本実施形態では、ベースプレート5が、上下に配置された第1のプレート(第1の金属板)19と第2のプレート(第2の金属板)20とから構成されている。
【0037】
図3に示すように、第1のプレート19は、第2のプレート20より路盤2の長手方向の長さが短く且つ厚さも薄くなるように形成されている。この第1のプレート19には、一対のボルト挿通孔21が弾性体9を挟んで対向するように設けられている。
【0038】
図3に示すように、第1のプレート19の上面19aは、第1の接着層8を介して弾性体9の下面9cに接着されている。そして、第1のプレート19と第2のプレート20とは、締結ボルト22により締結されている。この締結ボルト22は、第1のプレート19の上側からボルト挿通孔21に挿通されるとともに第2のプレート20にねじ込まれている。
【0039】
図3に示すように、第2のプレート20は、路盤2の長手方向において一対の挿通孔23を有している。そして、路盤2と第2のプレート20とが、アンカーボルト24を各挿通孔23に挿通して路盤2内にねじ込むことにより締結されている。
【0040】
次に、本実施形態に係る枕木締結構造1を組付ける手順について説明する。
【0041】
本実施形態では、まず、枕木3の下側フランジ部12と金属板11とを重ね合わせる。そして、固定ボルト17を金属板11の下側からボルト孔16及び貫通孔15に挿入し、枕木3の下側フランジ部12上に配置したナット18に螺合する。
次に、金属板11と弾性体9の上面9aとを第2の接着層10を介して接着する。この際、固定ボルト17の頭部17aが弾性体9の凹部9bに埋設されることになる。
その後、第1のプレート19の上側と弾性体9の下面9cとを第1の接着層8を介して接着する。ここまでの手順を工場等で行い、枕木3と金属板11と弾性体9と第1のプレート19とが一体となった構造体を路盤上まで運搬する。この際、第2のプレート20はその構造体とは別個に運搬される。
そして、第2のプレート20を路盤2上に配置する。この際、アンカーボルト24を第2のプレート20の挿通孔23に挿通して路盤2内にねじ込み、第2のプレート20と路盤2とを締結する。
最後に、第2のプレート20上に上述した構造体を配置する。この際、締結ボルト22をボルト挿通孔21に挿通して第2のプレート20にねじ込み、第1のプレート19と第2のプレート20とを締結する。
以上により、枕木締結構造1を組付ける手順が完了することになる。
【0042】
このように、本実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造1によれば、ベースプレート5が、上下に配置された第1のプレート19と第2のプレート20とから構成され、第1のプレート19が、第1の接着層8を介して弾性体9に接着されるとともに締結ボルト22により第2のプレート20に固定され、第2のプレート20が、アンカーボルト24により路盤2に固定されているので、枕木締結構造1を路盤2上に組付ける場合、枕木3と弾性体9と第1のプレート19とが一体となった構造体と、第2のプレート20とを工場等で別個に製造し、それぞれを別個に路盤2まで運搬することができる。ベースプレート5を1枚の構成とした場合、全ての部材を一体として運搬する必要があり、運搬する構造体のサイズが大きくなってしまうが、ベースプレート5を2枚のプレート19,20から構成することにより、弾性体9に接着される第1のプレート19のサイズを小さく設定でき、その結果、運搬する構造体のサイズが小さくなる。これにより、路盤2上までの運搬が容易になる。
【0043】
また、本実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造1によれば、路盤2上に枕木締結構造1を組付ける場合、まず、第2のプレート20のみを路盤2上に組付けた後に、枕木3と弾性体9と第1のプレート19とが一体となった構造体を第2のプレート20に締結することになる。このように、ベースプレート5が1枚の構成とした場合に比べて、組付対象となる個々のサイズが小さくなるだけでなく、路盤2上での組付作業も別個に行えるので、組付作業が容易になり、その結果、組付精度も向上する。
【0044】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造を、図面を参照しながら説明する。図5は、本発明の第3実施形態に係る枕木締結構造における車両走行方向の断面図であり、図6は、図5のA−A線断面図である。なお、前述した実施形態で説明したものと同様の部分については、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0045】
図5及び図6に示すように、本実施形態では、ベースプレート5の上面5aには、ストッパ25が設けられている。このストッパ25は、ベースプレート5の上面5aに位置するフランジ部26と、このフランジ部26から上方に立設する立設部27と、立設部27の上端27aから枕木3の下側フランジ部12の上方の位置まで延びる延出部28とを備えている。
【0046】
また、図5及び図6に示すように、ストッパ25のフランジ部26には、固定用孔29が設けられている。ここで、アンカーボルト7は、ストッパ25の固定用孔29とベースプレート5の挿通孔6とに挿通されるとともに、路盤2内にねじ込まれている。これにより、ストッパ25がベースプレート5の上面5aに固定されるとともに、ベースプレート5が路盤2に締結されている。
【0047】
このように、本実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造1によれば、ベースプレート5の上面5aには、枕木3の下側フランジ部12の上方の位置まで延びる延出部28を備えたストッパ25が設けられており、ストッパ25が、枕木3の下側フランジ部12の上方への移動を規制するようになっているので、地震や台風等の異常時に枕木3に鉛直方向上向きの荷重が加わった場合、下側フランジ部12がストッパ25に当たることになり、枕木3の異常な上昇を防止することができる。これにより、地震や台風等が発生した場合でも、車両の安定した運用が可能となる。
【0048】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造を、図面を参照しながら説明する。図7は、本発明の第4実施形態に係る枕木締結構造における車両走行方向の断面図であり、図8は、図7のA−A線断面図である。なお、前述した実施形態で説明したものと同様の部分については、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0049】
図7及び図8に示すように、本実施形態では、金属板11が、第1実施形態比べて厚く形成されている。ここで、枕木3の下側フランジ部12及び金属板11には、下側フランジ部12を貫通し且つ金属板11の内部まで延びるタップ孔30が形成されている。そして、枕木3の下側フランジ部12と金属板11とは、ボルト31を枕木3の下側フランジ部12の上面12aからタップ孔30に挿入することにより締結されている。
【0050】
このように、本実施形態に係る磁気浮上車両用の枕木締結構造1によれば、枕木3の下側フランジ部12及び金属板11には、下側フランジ部12を貫通し且つ金属板11の内部まで延びるタップ孔30が形成されており、枕木3の下側フランジ部12と金属板11とが、下側フランジ部12の上面12aからタップ孔30にボルト31を挿入することにより締結されているので、枕木締結構造1を組付ける場合、枕木3の下側フランジ部12と金属板11とを重ね合わせた後、その状態でボルト31を下側フランジ部12の上側から挿入すればよい。つまり、枕木3の下側フランジ部12と金属板11とを締結する際に、金属板11の下側から固定ボルト17を挿入するような第1実施形態に比べて、締結作業がより容易になる。これにより、工場における作業性を向上させることができる。
また、第1実施形態の場合、金属板11の下側から固定ボルト17を挿入することになるので、弾性体9の上面9aに固定ボルト17の頭部17aを埋設する凹部9bを設ける必要があったが、本実施形態では、弾性体9にそのような加工をする必要がなく、弾性体9を直方状に製造すればよいので、工場等での加工作業が容易になる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 枕木締結構造
2 路盤
3 枕木
4 レール
5 ベースプレート
5a ベースプレートの上面
6,23 挿通孔
7,24 アンカーボルト
8 第1の接着層
9 弾性体
9a 弾性体の上面
9b 弾性体の凹部
9c 弾性体の下面
10 第2の接着層
11 金属板
11a 金属板の上面
12,13 枕木のフランジ部
12a,13a フランジ部の上面
14 枕木のウェブ部
15 貫通孔
16 ボルト孔
17 固定ボルト
17a 固定ボルトの頭部
18 ナット
19 第1のプレート
20 第2のプレート
21 ボルト挿通孔
22 締結ボルト
25 ストッパ
26 ストッパのフランジ部
27 ストッパの立設部
27a 立設部の上端
28 ストッパの延出部
29 固定用孔
30 タップ孔
31 ボルト
40 (従来)枕木締結構造
41 (従来)路盤
42 (従来)台座
43 (従来)調整パッド
44 (従来)ベースプレート
45 (従来)枕木
46 (従来)レール
47 (従来)第1の弾性材
48 (従来)枕木の下側フランジ部
49 (従来)貫通孔
50 (従来)スペーサ
51 (従来)第2の弾性材
52 (従来)第3の弾性材
53 (従来)平座金
54 (従来)固定ボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下側にフランジ部を有する枕木を介してレールを路盤上に固定する磁気浮上システムの枕木締結構造において、
前記枕木の前記フランジ部と前記路盤とは、上下両面に金属板が接着された弾性体を介して取付けられ、前記弾性体の上側の金属板が、締結手段により前記フランジ部に固定され、前記弾性体の下側の金属板が、締結手段により前記路盤に固定されていることを特徴とする磁気浮上システムの枕木締結構造。
【請求項2】
前記下側の金属板は、上下に配置された第1の金属板と第2の金属板とから構成され、前記第1の金属板が、前記弾性体に接着されるとともに、締結手段により前記第2の金属板に固定され、前記第2の金属板が、締結手段により前記路盤に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気浮上システムの枕木締結構造。
【請求項3】
前記下側の金属板には、前記枕木の前記フランジ部の上方の位置まで延在するストッパが設けられており、該ストッパが、前記フランジ部の上方への移動を規制するようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気浮上システムの枕木締結構造。
【請求項4】
前記フランジ部及び前記上側の金属板には、前記フランジ部を貫通し且つ前記上側の金属板の内部まで延びるタップ孔が形成されており、前記フランジ部と前記上側の金属板とが、前記フランジ部の上面から前記タップ孔にボルトを挿入することにより締結されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の磁気浮上システムの枕木締結構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の枕木締結構造を備えた磁気浮上システムの軌道。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−265627(P2010−265627A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116418(P2009−116418)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】