説明

磁気特性が優れた一方向性電磁鋼板の安定製造方法

【課題】 一方向性電磁鋼板の製造において、Ti含有量が変化しても良好な磁気特性を得ること。
【解決手段】 重量比で、C:0.025〜0.075%、Si:2.5〜4.0%、酸可溶性Al:0.020〜0.038%、N:0.0050〜0.0095%、S,Seの少なくとも1種を0.0050〜0.0150%、Mn:0.05〜0.8%、Ti:0.002〜0.012%、残部Fe及び不可避不純物からなるスラブを1280℃未満の温度で加熱し、熱延を行い、必要に応じて熱延板焼鈍を行い、一回以上の冷延で所定の厚みとし、脱炭焼鈍後ストリップを走行せしめる状態で窒化処理を行い、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し製造する一方向性電磁鋼板において、その溶製段階のNの含有量を0.0050+14/48 Ti≦N≦0.0095+14/48 Ti(%)とすることを特徴とし、脱炭焼鈍終了後最終仕上焼鈍開始までの一次再結晶粒の平均粒径を19〜26μmとする。
【効果】 不純物元素Tiの範囲制約が広がるため、実際の生産が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トランス等の鉄心として使用される一方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一方向性電磁鋼板は、主にトランスその他の電気機器の鉄心材料として使用されており、励磁特性、鉄損特性等の磁気特性に優れていることが、機器の小型化、エネルギー損失の減少のために要求される。励磁特性を表す特性値として、磁場の強さ800A/mにおける磁束密度B8 がJISで規格化されて通常使用される。又、エネルギー損失を示す特性値としては、周波数50Hzで1.7テスラー(T)まで磁化したときの鋼板1kg当たりのエネルギー損失(鉄損)W17/50もJISで規格化されている。
【0003】磁束密度は鉄損の最大支配因子であり、一般的に磁束密度が高い(大きい)ほど鉄損特性が良好になる。又、一般的に磁束密度が高くなると二次再結晶粒が大きくなり、鉄損が悪化する場合がある。この場合は、既に広く知られているように、磁区を制御することにより、二次再結晶の粒径に拘らず鉄損を改善することができる。
【0004】この一方向性電磁鋼板は、最終仕上焼鈍工程で二次再結晶を起こさせ、鋼板表面に{110}、圧延方向に〈001〉軸をもったいわゆるゴス組織を有している。良好な磁気特性を得るためには、磁化容易軸である〈001〉を圧延方向に高度に揃えることが必要である。
【0005】このような高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造技術は古くから開発され、わが国ではいわゆるインヒビターとしてMnS,AlNを用いる方法(特開昭40−15644号公報)、MnS,MnSe,Sb等を用いる方法(特開昭51−13469号公報)等がある。これらの場合は、熱延板段階でのインヒビターの完全固溶が求められ、実際の熱間圧延時は鋼塊(スラブ)の加熱温度を1350℃以上にすることが必要である。
【0006】この高温度の加熱には数々の不利、不便な点がある。このため、この熱延時の鋼塊(スラブ)の加熱温度を下げる試みが行われている。その一つを開示したものとして特開昭59−56522号公報がある。この技術の発展として多くの発明がなされ、インヒビター形成のために脱炭焼鈍から最終仕上焼鈍の昇温過程で窒化を行う方法(特開昭62−45285号公報、特開昭60−179855号公報)、更にはストリップを走行せしめる状態下での水素、窒素、アンモニアの混合ガスを用いた窒化処理を行う方法(特開平2−77525号公報、特開平1−82400号公報、特開平3−180460号公報、特開平1−317592号公報)が開示された。
【0007】又、脱炭焼鈍時の一次再結晶完了後から最終仕上焼鈍時の二次再結晶完了前までの途中段階での一次再結晶粒径を制御する方法(特開平3−294425号公報、特開平2−96275号公報、特開平2−59020号公報、特開平1−82393号公報)も開示された。しかし、これらの方法においてはTiは不可避不純物として扱われ、その含有量は0.003%以下、望ましくは0.0020%以下としている。
【0008】Tiを積極的に利用した、低鋼塊加熱温度による方向性電磁鋼板製造技術を開示したものとして特公平6−86632号公報がある。この方法においてはTiを0.0020〜0.0150%含有させ、最終仕上焼鈍における二次再結晶開始までの間に窒化させて磁束密度が高い一方向性電磁鋼板の製造方法が開示されている。この場合は良好な磁気特性が得られるが、窒化を高温仕上焼鈍(箱焼鈍)で行うため窒化が不均一傾向で、二次再結晶は安定であるが(B8 =1.94T程度)いわゆるグラス被膜の形成が不安定となる場合がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】一方向性電磁鋼板が具備すべき主たる特性は、良好な磁気特性(低鉄損、高磁束密度)及び良好な被膜特性(被膜張力、密着性、外観)である。この点で、特公平6−86632号公報に開示された技術は更に改善の余地がある。ところで、従来の一方向性電磁鋼板の製造方法においては、Tiが多い場合は、既に広く知られている如く二次再結晶が不安定となる。例えば特開平5−295442号公報の方法で高Ti材も二次再結晶をさせることは可能であるが、この場合にも熱延条件の制御を注意深く行うことが必要であり、かつTi含有量は80ppm が限界である。
【0010】溶鋼のTiの混入原因は、Fe−Si合金鉄からの不純物として混入、又溶鉱炉の安定操業のための砂鉄からの溶銑への混入、スクラップからの混入等が考えられる。即ち高Tiスラブを熱延加熱温度を1280℃以下にして加熱し、脱炭焼鈍後に窒化して製造する本発明は、いずれの場合も従来から製造に大きな困難性を有している。
【0011】そもそも、一方向性電磁鋼板は約3%のSiを含有しており、Fe−Si合金鉄を多量に用いる。このため従来より、不純物の少ない特にTi含有量の少ない高品位のFe−Si合金が用いられている。ところが本発明を適用すると、磁気特性が向上するとともに、更に合金鉄の品位を落すことも可能となり、コストダウンも可能となる。
【0012】本発明は、特公平6−86632号公報に開示された技術を更に発展させて更に良好な磁気特性、被膜特性を得るとともに、上記のコストダウンを実施可能な技術を提供することを課題とする。尚、一方向性電磁鋼板のB8 は、ゴス方位の集積度に強く依存する。更に、ゴス方位の集積度は一次再結晶時の集合組織に依存することが知られている(吉冨等,日本金属学会誌,58(1994),882)。Ti添加によってはこの一次再結晶集合組織は変化しないので、インヒビターの効果のみ考慮すれば良い。
【0013】本発明者は、これらの課題を解決するために特願平7−82984号の出願を行ったが、この技術による場合は、一次再結晶粒が27μm程度と大きくなり、ひいては二次再結晶粒が大きくなるので、磁区制御が必要となる。
【0014】
【課題を解決するための手段】発明者等は鋭意研究を行ったところ、特公平6−86632号公報に開示された技術と脱炭焼鈍までの工程は同様であるが、走行するストリップで窒化することを特徴とし、その窒化量及びBAF(最終仕上焼鈍:一次被膜の形成及び二次再結晶を行わしめる箱型焼鈍)での雰囲気中の窒素分圧を制御することなく、一次被膜(グラス被膜)も良好な一方向性電磁鋼板を製造する技術を完成した。
【0015】具体的には、熱延加熱温度を1280℃以下とする本発明では、初期のAl,Nの量は脱炭焼鈍時の一次再結晶粒径を制御するために規定され、二次再結晶のためのインヒビターとしては脱炭焼鈍後に窒化により行われるので、溶鋼段階でのTiの含有量は二次再結晶にあまり影響しないことを見い出した。
【0016】即ち、Alと結合するNの量を確保するためには、Tiと結合したNの量(14/48×Ti)を溶製段階で添加することが必要であることを知見した。更にこの場合、鋼板中のTi当量のNは安定的に存在するので、余分にNを含有していても一次被膜の形成に悪影響は与えないことも併せて見い出した。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。本発明者等は、Ti含有量が比較的多い電磁鋼スラブを1280℃以下の低い加熱温度で加熱し、得られた熱延板を用いて必要に応じて熱延板焼鈍を施し一回以上の冷間圧延後の脱炭焼鈍後にストリップを走行させる状態下で窒化処理することによりインヒビターを形成する方法で製造可能な、磁気特性及び被膜特性ともに優れた一方向性電磁鋼板を安定的に製造し得るプロセスについて鋭意研究開発を重ねた。
【0018】まず、本発明において出発材とする電磁鋼スラブの成分組成の限定理由は、以下のとおりである。
C:Cは、0.025〜0.075%とした。従来の発明では、0.025%以下ではいわゆる3%Si−Fe材(方向性電磁鋼板の基本成分)では、変態相がなくなる。0.075%を超えると脱炭焼鈍工程での30ppm 以下とするためには、時間が掛かりすぎて生産性が阻害される。
Si:Siはその含有量が2.5%未満になると、良好な鉄損が得られない。また4.5%を超えると、脆性のために冷間圧延等室温での鋼板処理が困難になる。
【0019】S及びSe:S及びSeは、0.015%以下、望ましくは0.010%以下である。1280℃以下のスラブ加熱温度で熱延板を製造し、その後熱延板焼鈍、冷間圧延の後での、ストリップ窒化等による脱炭焼鈍工程以降のインヒビターの作り込みで製造する一方向性電磁鋼板では、多量のS,Seは一次再結晶粒の粒成長を妨げ有害であるためである。0.005%未満では、熱延での操業上の不可避的変動要素(スキッド上及び間の温度履歴差、圧延速度の加速による熱延温度の変動等)により、一次再結晶粒の粒成長に場所的変動が生じ易くなり工業的に安定的に製品が製造できない。
【0020】Ti及びN:TiとNは熱力学的に安定な強固な化合物を形成する。本発明は、Tiの含有量をあまり厳密に制御することなく一方向性電磁鋼板を製造する方法であり、Tiは0.002〜0.012%である。下限の0.002%は、Ti含有量がこれより少ない場合は14/48×Ti≦0.0006%となり、N成分制御範囲の工程能力以下であるためである。TiNはかなり大きな析出物であるが、ある量以上存在するとインヒビター効果が生じ、またTiNを核として他の元素Al,S,Mn等が析出して本来のインヒビター効果が損なわれる。このため二次再結晶が不安定となるので、Tiの上限は0.012%とする。
【0021】Nは主にSi,Alと結合し、一次再結晶粒成長制御及び二次再結晶のためのインヒビターとして働くので重要である。しかし上述した如くTiと結合するので、インヒビター効果を得るためにはTi含有量当量の追加添加が必要となり、その量は14/48×Ti(%)である。0.0050%以下ならば二次再結晶不良が生じ、0.0095%を超えると気泡(ブリスター:鋼板の表面欠陥)が生じる。しかし、本発明Ti当量のNの追加量は、このブリスターの発生原因とはならない。その理由は、TiはNと結合して安定なTiNを形成するため、過剰なNは余剰とならないためである。
【0022】Al:Alは、窒素とともに脱炭焼鈍時の一次再結晶粒成長を制御するために添加される。1280℃以下のスラブ加熱でもAlNは適切な溶解度を持つ。有効なAlN形成のためには0.020〜0.038%とすることが必要である。Alが多過ぎると仕上げ焼鈍中の雰囲気に被膜形成及びインヒビターが影響を受け磁気特性が劣化するので、0.038%を上限とする。下限は二次再結晶の確保のため0.02%以上必要である。
Mn:Mnは、少ないと二次再結晶は不安定になり、多いとB8 は高くなるが、一定量以上入れるとコストが高くなる。従って0.05〜0.8%とする。
【0023】Sn及びSb:二次再結晶粒のサイズを小さくするために添加されるのが望ましい。少ないと効果が少なく、多すぎるとグラス被膜の劣化または脱炭不良傾向であり望ましくない。このため添加する場合には、0.03〜0.3%とする。
Cr:Crはグラス被膜を改善するため添加する。範囲は0.03〜0.3%が良い。
【0024】Cu:Cuは0.05〜0.3%とする。Cuは磁気特性を著しく向上させるために添加するものである。その作用は二次再結晶のインヒビターの強化にある。添加量は0.05%未満では効果がなく、0.3%を超えると熱間圧延時に疵が多発する。また理由は定かでないが、Cuを添加すると一次被膜(グラス被膜)が改善される傾向にある。
その他、グラス被膜形成を容易化及び集合組織の改善のためにP等を添加することも本発明の主旨を損なうものではない。
【0025】脱炭焼鈍後の一次再結晶粒成長の粒成長制御するためには、AlN,MnS,MnSe,TiN等が有効であるが、本発明では、S,Seの含有量が従来の方向性電磁鋼板より少ないためMnS,MnSeによる効果は小さいが、TiN,AlNの効果は大きい。このように、Al,N,Tiの量は一次再結晶粒成長の粒成長制御及び二次再結晶のためのインヒビターとして働くので、相互関係が重要となる。
【0026】Tiを含有する場合、上述したように優先的にTiNが形成されるので、AlNに消費されるNが減り補償する必要が生じる。この補償する方法としては、■溶製段階でTiN当量分余分に含有させる、■ストリップ窒化量を増やす、■BAFでの窒素分圧を上げ脱窒を防ぐ等がある。本発明は■のNを余分に添加する場合のその量を規定したものである。
【0027】次に、溶製、鋳造及び熱延等の処理条件について述べる。本発明に関する溶製及び鋳造は、公知の通常の方法で行われる。即ち、溶製は転炉又は電気炉等を用い、溶銑を主原料としても良いしスクラップを用いても良い。成分調整は真空脱ガス装置で行うのが通常であるが、成分さえ範囲内であればその必要はない。鋳造は連続鋳造機で行われるが、インゴット法でも良い。
【0028】その後の分塊圧延は、熱延の仕上厚みと熱延機の能力(圧下代)のバランスで採用される。熱延は通常の連続熱延機で行うが、いわゆる可逆のステッケルミルでも良い。熱延時のスラブ加熱温度は最大1280℃である。これは、本発明の如く脱炭焼鈍後に同一ライン又は別のラインにてストリップを走行せしめるので、溶体化のためにこの温度を超えての加熱は必要はない。又エネルギーコストの低減及び熱延板の耳割れ等の欠陥低減の観点からも低い方が良い。
【0029】熱延後の工程については特に限定されるものではないが、最終冷間圧延率は80〜95%が望ましい。必要に応じて中間焼鈍を挟む一回以上の冷延を行う。熱延板焼鈍は、熱延の不均一性の緩和、AlNの析出形態の制御のために必要に応じて行うのであり、処理条件は特に限定されるものではないが、最高温度は1160℃として、冷却速度はAlNの量、Si/Cのバランスにより適正化されるのが望ましい。
【0030】脱炭焼鈍は通常の方法で行われ、炭素レベルを製品の磁気時効防止のために0.0030%以下まで脱炭される。又、良好なグラス被膜を形成するために酸化層を形成せしめる。窒化は脱炭焼鈍設備と同一ライン又は別のラインにてストリップを走行せしめる状態下で水素、窒素、アンモニアの混合ガス中で窒化処理が行われる。
【0031】脱炭焼鈍終了後最終仕上焼鈍開始までの一次再結晶粒は、二次再結晶後磁区制御を必要とせずに良好な磁気特性が得られるようにするために、19〜26μmとする。この粒径にするためには、脱炭焼鈍の温度を調整する等の方法がある。
【0032】その後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布する。続く仕上焼鈍の昇温度時に二次再結晶が起こる。窒素分圧は5%より少ないと鋼板内のAlNの分解がたやすく起こり、インヒビターがTiNのみとなり二次再結晶不良となる。一方、90%を超えると良好なグラス被膜が形成され難くなるので、雰囲気圧の5〜90%とすることが極めて望ましい。
【0033】要するに、本発明の最大のポイントは、鋼塊の加熱温度を低くする方向性電磁鋼板製造方法において、溶製段階のTiの量を考慮してNの含有量を変更して、AlNとTiNの複合インヒビター効果、ストリップ窒化による均一なAlNの形成、Ti含有成分系ならではの窒化条件の特定、及び仕上焼鈍中のN2 分圧の特定によるAlNの分解防止及びグラス被膜改善効果、の4者の有機的な結合によって、良好な磁気特性(B8 =1.95T)と被膜特性を得るとともに、Tiの規制範囲を広げることである。
【0034】
【実施例】
(実施例1)C:0.052%、Si:3.23%、Mn:1.01%、S:0.010%、P:0.025%、Cr:0.10%、酸可溶性Al:0.028%、Tiの量を0.002、0.005、0.007、0.009、0.011、0.015%と変化させ、またNを0.0085%程度及び14/48×Ti(%)を追加添加し、残部Fe及び不可避的不純物からなる溶製された溶鋼を通常の方法で連続鋳造してスラブを得、1150℃で加熱した後1080℃で熱延を開始して、2.6mmとして560℃で巻き取った。
【0035】その後、1120℃で2分間の熱延板焼鈍を行い、酸洗後、185〜210℃で温間圧延し0.285mmに冷間圧延した。その後、830℃でN2 :25%、H2 :75%の雰囲気ガス中、露点65℃で150秒焼鈍し脱炭、一次再結晶及び酸化被膜形成を行った。更に、ストリップ状態で0.0110〜0.0120%窒化せしめ、続いてMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した。続く仕上焼鈍で15℃/時間の昇温速度、雰囲気をN2 :25%、H2 :75%として、1200℃まで加熱した。
【0036】その後、H2 :100%のdry雰囲気中で、1200℃で30時間の純化焼鈍を行った。最後に、リン酸アルミ系の張力付与型絶縁コーティングの塗布及び形状矯正を施し、エプシュタインサイズに剪断し、歪取り焼鈍を施し、磁気特性を測定した。その結果を表1に示す。
【0037】
【表1】


【0038】このように、実施例1の各工程の条件では、Tiが多い場合その当量分のNを添加しないと二次再結晶不良が生じる。また No.12では、NをTi当量分補償し二次再結晶は良好であったにもかかわらず、磁気特性が良好でなかった理由は、TiNの形成により一次再結晶粒成長が不十分であったためと考えられる。また No.1、2は、本発明ではないがTi含有量が少ないため、良好な磁気特性が得られている。
【0039】(実施例2)C:0.045%、Si:3.0%、Mn:0.12%、S:0.007%、酸可溶性Al:0.030%、Tiの量を0.002、0.006、0.008、0.012、0.015%と変化させ、またNを0.0065%程度及び14/48×Ti(%)を追加添加、Cr:0.12%、残部Fe及び不可避的不純物からなる溶製された溶鋼を通常の方法で連続鋳造してスラブを得、1150℃で加熱した後1075℃で熱延を開始して、2.8mmとして550℃で巻き取った。
【0040】その後、酸洗後タンデム圧延機で0.335mmに冷間圧延した。その後、845℃でN2 :25%、H2 :75%の雰囲気ガス中、露点62℃で200秒焼鈍し、脱炭、一次再結晶及び酸化被膜形成を行った。更に、ストリップ状態で0.0110〜0.0120%窒化せしめ、続いてMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した。続く仕上焼鈍で15℃/時間の昇温速度、雰囲気をN2 :50%、H2 :50%として1200℃まで加熱した。
【0041】その後H2 :100%のdry雰囲気中で、1200℃で30時間の純化焼鈍を行った。最後にリン酸アルミ系の張力付与型絶縁コーティングの塗布及び形状矯正を施し、エプシュタインサイズに剪断し、歪取り焼鈍を施し、磁気特性を測定した。その結果を表2に示す。表2からわかるように、本発明を用いると、Ti含有量が多くても良好な磁気特性が得られた。
【0042】
【表2】


【0043】(実施例3)C:0.058%、Si:3.51%、Mn:0.09%、Se:0.009%、P:0.05%、Cu:0.10%、Cr:0.11%、Sn:0.10%、酸可溶性Al:0.029%、N:0.0082%及び以下のTi含有量分の添加、Ti:0.001、0.005、0.008、0.011、0.015%と変化させ、残部Fe及び不可避的不純物からなる溶製された溶鋼を通常の方法で連続鋳造してスラブを得、1150℃で加熱した後1085℃で熱間圧延を開始し、2.3mmとして560℃で巻き取った。
【0044】その後、1120℃で30秒保持、引き続き900℃に30秒保存し、750℃から30℃/秒で室温まで冷却し、酸洗を行い、185〜220℃で温間圧延し、0.22mmに冷間圧延した。
【0045】その後、830℃でN2 :25%、H2 :75%の雰囲気ガス中、露点63℃で120秒焼鈍し脱炭、一次再結晶及び酸化被膜形成を行った。更に、ストリップ状態で0.110〜0.120%窒化せしめ、続いてMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した。続く仕上焼鈍で13℃/時間の昇温速度、雰囲気をN2 :40%、H2 :60%として、1200℃まで加熱した。
【0046】その後H2 :100%のdry雰囲気中で1200℃、20時間の純化焼鈍を行った。最後にリン酸アルミ系の張力付与型絶縁コーティングの塗布及び形状矯正を施し、エプシュタインサイズに剪断し、歪取り焼鈍を施し、磁気特性を測定した。その結果を表3に示す。
【0047】
【表3】


【0048】
【発明の効果】本発明によると、Ti含有量が多くても良好な磁気特性が安定して得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 重量比でC :0.025〜0.075%、Si:2.5〜4.0%、酸可溶性Al:0.020〜0.038%、N :0.0050〜0.0095%、S,Seの少なくとも1種を0.0050〜0.0150%、Mn:0.05〜0.8%、Ti:0.002〜0.012%、かつ、0.0050+14/48 Ti≦N≦0.0095+14/48 Ti(%)、残部がFe及び不可避不純物からなるスラブを1280℃未満の温度で加熱し、熱延を行い、熱延板焼鈍を行い、中間焼鈍を挟む一回以上の冷延を行い、脱炭焼鈍後ストリップを走行せしめる状態下で水素、窒素、アンモニアの混合ガス中で窒化処理を行い、脱炭焼鈍終了後最終仕上焼鈍開始までの一次再結晶粒の平均粒径を19〜26μmとし、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、最終仕上焼鈍を施すことを特徴とする磁気特性が優れた一方向性電磁鋼板の安定製造方法。
【請求項2】 重量比でC :0.025〜0.075%、Si:2.5〜4.0%、酸可溶性Al:0.020〜0.038%、N :0.0050〜0.0095%、S,Seの少なくとも1種を0.0050〜0.0150%、Mn:0.05〜0.8%、Ti:0.002〜0.012%、かつ、0.0050+14/48 Ti≦N≦0.0095+14/48 Ti(%)、残部がFe及び不可避不純物からなるスラブを1280℃未満の温度で加熱し、熱延を行い、熱延板焼鈍を行わず、中間焼鈍を挟む一回以上の冷延を行い、脱炭焼鈍後ストリップを走行せしめる状態下で水素、窒素、アンモニアの混合ガス中で窒化処理を行い、脱炭焼鈍終了後最終仕上焼鈍開始までの一次再結晶粒の平均粒径を19〜26μmとし、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布して、最終仕上焼鈍を施すことを特徴とする磁気特性が優れた一方向性電磁鋼板の安定製造方法。
【請求項3】 更にSn,Sb,Crの少なくとも1種を0.03〜0.30%含有させることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気特性が優れた一方向性電磁鋼板の安定製造方法。
【請求項4】 更にCuを0.05〜0.30%含有させることを特徴とする請求項1、2又は3記載の磁気特性が優れた一方向性電磁鋼板の安定製造方法。