説明

磁気表示パネル用の筆記用具

【課題】1つの軸体で、磁気表示パネル上に2種類の線幅や、あるいは磁気反転タイプや磁気泳動反転タイプの磁気表示パネルにおいては線の色が異なった表示が可能であって、キャップを被覆することなく、筆記用具を落下した際に、磁石の縁部に直に衝撃が加わって磁石の縁部が欠けたりせず、また筆記用具の筆記先端部に付着した砂鉄を容易に取り除け、立てた状態の磁気表示パネルに対して筆記を行っても、良好な筆跡が得られる磁気表示パネル用の筆記用具を得る。
【解決手段】軸体2の中央に、軸体2の両端に開口した通路部3を設ける。通路部3の軸体2の両端部2a、2bに、凹溝で形成された収容部4、5を、該収容部4、5の底部6、7が通路部3を挟んで周方向における反対側に互いが位置するように、通路部3に連通しかつ開口させて設けてある。通路部3に、一方端をN極とし他方端をS極の磁極とした磁石6を移動可能に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石の磁気を利用して表示を行うことができる磁気表示パネル用の筆記用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石を軸体に装着した筆記用具を用いて筆記することにより、その磁石の磁気を利用して表示を行うことができる磁気表示パネルについては知られている。例えば、
a)多くの微小粒の表示用磁性体と分散媒と増稠剤とを主成分とする降伏値を有する分散液体をパネル間に収容した磁気表示パネルであって、パネルの表示面から磁石により前記表示用磁性体を表示面側に吸引泳動させて表示を形成し、反対面から磁石により磁性粒子を表示面とは反対側の面に吸引沈降させて表示を消去する、いわゆる磁気泳動タイプと呼ばれているもの、
b)S極およびN極を有し、S極側表面部分とN極側表面部分とを異なる色に着色した表示用磁性体、分散媒、増稠剤とを主成分とする降伏値を有する分散液体をパネル間に収容した磁気表示パネルであって、パネルの表示面から磁石により前記磁性表示体を反転して記録を表示し、同じ面から表示の時とは逆の極の磁気によりさらに反転して表示を消去する、いわゆる磁気反転タイプと呼ばれているもの、
c)最近、WO 2005/033790公報により開示された、着色材を含有する分散媒中に、高保磁力材からなる第1の磁性材料と低保磁力材からなる第2の磁性材料とを混合してなり、S極側表面部分とN極側表面部分とを、分散媒の色とも異ならせてかつ互いの磁極の色を異なる色に着色した微小磁石を分散して得られた降伏値を有する分散液体をパネル間に収容した磁気表示パネルであって、分散液体中に分散した微小磁石をパネルの表示面から磁石により泳動または泳動/反転させて表示を形成し、さらに表示面から他の磁極の磁石により表示を形成した微小磁石を反転させて表示色を変化させることができ、表示面の裏面から消去用磁石により微小磁石を引き寄せて表示を消去する、背景以外に2色の表示、つまり3色で形成された磁気表示ができる、いわゆる磁気泳動反転タイプと呼ばれているもの
がある。
【0003】
こうした磁気表示パネルの筆記には、分散液体に含有されている磁性表示体または微小磁石に磁界を作用させて、磁性表示体または微小磁石を分散液体中で泳動および/または反転させる必要があり、そのために磁気表示パネル用の筆記用具として軸体の先端に磁石を装着したものが提供されているが、従来の筆記用具は、1つの保持軸の先端に1つの磁石を装着したものがほとんどで、太い筆跡幅が得られる大径の磁石を装着した筆記用具、前記筆跡幅より細い筆跡幅が得られる細径の磁石を装着した筆記用具が個別に提供されているのが現状であった。そのために筆跡幅を変えて磁気表示パネルに筆記したい場合には、いちいち磁石の外径が異なった別の筆記用具に持替えて筆記する必要があった。
【0004】
別の筆記用具に持替える煩わしさの問題を解消するものとして、1つの軸体の両端に外径が異なった磁石を装着したものが提供されているが、磁石が軸体の外方に露出した状態のものばかりである。特に、玩具用の表示板として提供されたものにおいては、子供達の使い勝手や、キャップの紛失や、キャップの誤飲等の理由から、筆記先端としての磁石をキャップで被覆しているものがないのが実情である。そのために、筆記用具を落下するなどして磁石に衝撃が加わると、磁石部分が損傷してしまうことがあり、その状態で磁気表示パネルに筆記すると、磁気表示パネルの表示面を傷つけてしまい、最悪の場合はパネル間に収容された分散液体が洩れてしまうという問題がある。また、筆記用具を外に持ち出して地面等に落下した際には磁石の先端に砂鉄が付着し、手で払っただけでは簡単に砂鉄を取り除くことができず、その状態で磁気表示パネル上に筆記すると、磁気表示パネルの表示面を傷つけてしまうという問題もあった。
【0005】
本願出願人は前記問題を解消するために、先に出願した特願2007−52386号(出願日:平成19年3月2日)により、中空の筒状で非磁性体よりなる軸体に、磁石を両端へ移動可能に収容した磁気表示パネル用の筆記用具を提案した。なお、軸体内に磁石を移動可能に配した構造の筆記具として、特開平3−27078号公報により開示された技術があるが、粉末磁性現像剤により画像を形成した表示面に像を形成するための磁気像筆記具であって、ペン軸の先端部分に突出させて設けた鉄等の磁性体からなるトナー付着部材に前記磁石を接触させることで、トナー付着部材に磁性を帯びさせトナーを吸着させるもので、磁石の移動はトナー付着部材との接触のon、offの作用を図るもので、両端で筆記可能とする構造のものではない。
【0006】
しかし、磁気表示パネルの使用状態において、例えば黒板のようにパネルを立てた状態で使われることもあり、前記したような、こうした場合の筆記用具の使用状態は、パネル面に対して垂直というよりは、パネル面に対向した一端より反対側の他端が下がった仰角状態で使用される。そのために、軸体内に磁石を両端へ移動可能に収容しただけでは、磁石が重力により筆記面側と反対側の軸体の端部に移動してしまい、良好な筆跡が得られないという問題があることが判り、本発明に到った。
【特許文献1】WO 2005/033790号公報
【特許文献2】特開平3−27078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、磁気表示パネル用の筆記用具として、1つの軸体で、磁気表示パネル上に2種類の線幅や、あるいは磁気反転タイプや磁気泳動反転タイプの磁気表示パネルにおいては線の色が異なった表示が可能であって、キャップを被覆することなく、筆記用具を落下した際に、磁石の縁部に直に衝撃が加わって磁石の縁部が欠けたりせず、また筆記用具の筆記先端部に付着した砂鉄を容易に取り除け、立てた状態の磁気表示パネルに対して筆記を行っても、良好な筆跡が得られる磁気表示パネル用の筆記用具を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
「1.磁石の磁気を利用して表示を行うことができる磁気表示パネル用の筆記用具において、非磁性体からなる軸体の内部に、軸体の一方の端部から他方の端部に延びた空間状の通路部を形成するとともに、通路部に磁石を移動可能に収容し、通路部の両端部に、通路部に連通した凹溝状の収容部を磁石が通路部から収容部へ移動して収容可能に設け、筆記時において、磁石が通路部を移動して筆記側となる軸体の一方の端部または他方の端部に位置することで、または一方の収容部または他方の収容部に収容することで、磁気表示パネルへの筆記を可能としたことを特徴とする、磁気表示パネル用の筆記用具。
2.前記収容部を、各々の収容部の底部が通路部を挟んで周方向における反対側に位置するように設けたことを特徴とする、前記1項に記載の磁気表示パネル用の筆記用具。
3.前記収容部を、軸体の中心線上に位置させるとともに、通路部を軸体の中心線に対して交叉するように傾斜させて設けたことを特徴とする、前記2項に記載の磁気表示パネル用の筆記具。
4.前記軸体が、長手方向に延びた棒状の形状であって、軸体の両方の把持部の、各々の収容部の底部の通路部を挟んで周方向における反対側の部分に、親指用の窪み状の指用当接部と人差指用の窪み状の指用当接部を設けたことを特徴とする、前記1項ないし3項のいずれか1項に記載の磁気表示パネル用の筆記具。
5.前記軸体の両方の把持部または把持部の近傍の収容部に対向した外側面の部分に、凸状または凹状の表示部を設けたことを特徴とする、前記1項ないし3項のいずれか1項に記載の磁気表示パネル用の筆記具。
6.前記磁石が、一方端をN極とし他方端をS極の磁極とした磁石であり、磁石が移動方向に回転することなく通路部に収容したことを特徴とする、前記1項ないし5項のいずれか1項に記載の磁気表示パネル用の筆記用具。
7.前記通路部の両端部における軸体の端部において、各々の端部に異なる色彩が施された透明、または半透明で形成したことを特徴とする、前記6項に記載の磁気表示パネル用の筆記用具。」
である。
【0009】
本発明において、表示部とは、軸体を把持した際に特定した側が常に上向きに把持できるようにするための印であって、記号や文字を形成したものでも良いし、点状や筋状の突起や溝でも良い。
【0010】
軸体を構成する非磁性体の弾性部材としては、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)、エチレンアクリル酸エチル共重合樹脂(EEA樹脂)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、合成ゴム等が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の磁気表示パネル用の筆記用具は前記したような構造なので、筆記先端部となる軸体の両端部における軸径を変えることで、1つの筆記用具で、磁気表示パネル上に2種類の線幅や、あるいは磁気反転タイプや磁気泳動反転タイプの磁気表示パネルにおいては線の色が異なった表示が可能となり、いちいち他の筆記用具に持替える必要がないので使い勝手が良い。また、磁石は軸体内に収納してあるので、落下等による衝撃が軸体に加わっても磁石は軸体内に収容されているので、直に衝撃が加わらないので、磁石の縁部等の損傷の危険の度合を軽減できる。また、地面に落下した際に砂鉄が筆記先端部となる軸体に付着しても、軸体は非磁性体で形成されているので、磁石を他方向に移動することで前記筆記先端部における軸体の部分は砂鉄への磁力の影響が無くなり、簡単に筆記先端部における軸体の部分から砂鉄を払いのけることができる。また、磁気表示パネルを立てた状態で使用した際の筆記においても、パネルの表示面側の端部に設けた収納部に磁石を収納すれば、軸体を傾けても磁石が反対側に移動しないので、良好な筆跡を得ることができる。また、キャップを採用していないのでキャップの着脱行為をする必要がないので使用勝手が良い。また、構造もいたって簡単であり、製造コストもいたって安価にできるという利点がある。
【0012】
軸体の両端部に設けた収容部の底部が、周方向において同一線上に位置していると、軸体の一方の端部を筆記先端部として使用する際には、一方の収容部に磁石を収容して使用するが、次に軸体の他方の端部を筆記先端部として使用とした際に、一方の収容部に磁石が収容したままの状態の場合には、磁気表示パネルへの筆記ができなく「いらいら感」が生じるが、請求項2に係る発明の技術とすることで、軸体の他方の端部を筆記先端部として使用とした際には、一方の収容部の底部は通路部に対して上側に位置するので、磁石は一方の収容部から必然的に離脱し、磁石は通路部を通って他方の収容部に収容され、磁気表示パネルへの筆記が可能となり、前記「いらいら感」が生じないという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明の技術とすることで、筆記時において磁気表示パネルへの筆記用の磁石が両端側に位置した際に、磁石が軸の中心線上に位置するので、ボールペンやマーカー等の筆記具と同様の使い勝手で筆記可能となる。
【0014】
請求項4に係る発明の技術とすることで、筆記時に、把持しやすくなり、指用当接部に人差指と親指を当接して筆記用具の一方の把持部を握ることにより、磁石の凹溝状の収納部の底部が下側になるので、磁石が収容部に収容される。磁石が筆記先端部側となる一方の把持部と反対側の他方の収容部に収容されていた場合には、他方の収容部の底部が通路部の上側に位置するので、必然的に磁石は通路部に落下して収容部から離脱し、通路部部を通って一方の収容部側に移動し、一方の収容部に収容されるので、磁石を筆記側の収容部に入れるためだけの動作を行う必要がないという利点がある。
【0015】
請求項5に係る発明の技術とすることで、筆記時に、容易に磁石の凹溝状の収納部の底部が下側になるように把持することが可能となり、前記請求項4に係る発明の技術における効果と同様の効果を得ることができる。
【0016】
請求項6に係る発明の技術とすることで、磁気表示パネル用の筆記用具は前記した磁気反転タイプや磁気泳動反転タイプの筆記用具となり、表示を形成した微小磁石と反対の磁極の磁石により、表示を形成した微小磁石を再反転させることで表示の筆跡の色を変化させる際に、本発明の筆記具用具1つで用が足り、N極の磁極側を筆記先端部とした筆記用具と、S極の磁極側を筆記先端部とした筆記用具の2つの筆記用具を用意する必要がなく、その分、磁気表示用パネルと筆記用具やイレーザーからなる磁気表示用パネル装置を提供する際に、安価に提供することができるという利点がある。
【0017】
請求項7に係る発明の技術とすることで、N極側の軸体をS極側の軸体の色を特定しておくことにより、磁石の存在場所が容易に判るとともに、どちらの軸体の端部がN極あるいはS極の磁極であるかを、容易に知ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の磁気表示パネル用の筆記用具は、非磁性体よりなる中空の軸体に、軸体の一方の端部から他方の端部に延びた空間状の通路部を形成するとともに、通路部に磁石を移動可能に収容し、通路部の両端部において磁石を収容可能な収納部を設けたものである。磁石が両端へ移動することで、または移動して収納部に収容されることで筆記用具の両端が筆記先端部となり、磁気表示パネルへの筆記が可能となる。軸体の外部形状はおよび通路部の形状は、円形、四角形、多角形等何でも良く、限定されるものではない。磁石が一方端をN極とし他方端をS極の磁極とした磁石である場合には、通路部に収容した際に磁石が移動方向に回転することなく通路部内を摺動するように、通路部の形状や磁石の形状を考慮する必要がある。また、磁石は通路部をスムーズに移動が可能であれば良く、磁石と通路部における寸法関係においては、特に規制されるものではない。
【実施例】
【0019】
本発明の磁気表示パネル用の筆記用具の実施例について、図面を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。図1は、第1の実施例の磁気表示パネル用の筆記用具の概略を示す縦断面図である。図2は、図1における磁気表示パネル用の筆記用具の横断面図で、(a)は、A−A線部分の横断面図である。(b)は、B−B線部分の横断面図である。図3は、第2の実施例の磁気表示パネル用の筆記用具の概略を示す縦断面図である。図4は、図3における磁気表示パネル用の筆記用具の横断面図で、(a)は、C−C線部分の横断面図である。(b)は、D−D線部分の横断面図である。図5は、図3における磁気表示パネル用の筆記用具の横断面図で、(a)は、E−E線部分の横断面図である。(b)は、F−F線部分の横断面図である。
【0020】
図1〜図2に示す第1の実施例の磁気表示パネル用の筆記用具1は、軸体2を、筆記用具1による磁気表示パネル面(図示せず)への傷つけ問題を低減するために、ポリプロピレンで形成してある。軸体2の形状は、断面形状が四角形状に形成してある(ず2を参照)。軸体2の中央には、軸体2の両端に開口した、断面が四角形状の空間で構成された通路部3を設けてある。通路部3の軸体の両端部2a、2bには、凹溝で形成された収容部4、5を、該収容部4、5の底部6、7が通路部3を挟んで周方向における反対側に互いが位置し、通路部3に連通しかつ開口させて設けてあり、磁石が通路部3から移動して収容可能としてある。また、収容部4、5の一方の端部4a,5aは外方に開口して設けてある。
【0021】
前記軸体2の通路部3には、一方端をN極とし他方端をS極の磁極とした、断面形状が四角形状の磁石8を移動可能に挿入してある。通路部3と磁石8の寸法関係は、磁石8が移動する際に移動方向に回転することのないようになっている。図示していないが、磁石8のN極側となる軸体2の一方の端部2aの部分は、磁気泳動反転型表示パネル(図示せず)に磁石のN極側の磁極で筆記した際に、磁気泳動反転型表示パネルに表示される筆跡の色と同色または同系色の色彩が施された半透明状に形成されており、磁石8のS極側となる軸体2の他方の端部2bの部分は、磁気泳動反転型表示パネル(図示せず)に磁石のS極側の磁極で筆記した際に、磁気泳動反転型表示パネルに表示される筆跡の色と同色または同系色の色彩が施された半透明状に形成されている。
【0022】
軸体2の両端部2a、2bの壁面2aa、2baには、軸体2の外径より小径で同様な深さの係合凹部9を設けてあり、該係合凹部9の形状にあった磁性部材で形成した栓部材10を接着剤により固着してある。栓部材10により、開口した通路部3の端部や両収容部の端部から、磁石8が飛び出すのを防止している。なお、軸体2の両端壁面2aa、2baと栓部材10の端面10aが面一となるように設けてある。本実施例における筆記用具1においては、前記栓部材10の端面10aと軸体2の壁面2aaが、また栓部材10の端面10aと軸体2の壁面2baが筆記先端部となる。栓部材10の軸心方向の厚さは、言うまでもなく磁気表示パネル(図示せず)への筆記の際に、栓部材10が磁石8により磁性して、磁気表示パネルへの表示が可能な程度の厚さとしてある。
【0023】
両収容部4、5の底部6、7に対して通路部3を挟んだ反対側に位置する軸体2の両把持部部分11、12には、断面形状が半円状で若干長手方向に延びた凸状の表示部13を設けてある。表示部13を指(図示せず)で挟持するように把持することで、収納部4、5の底部6、7は通路部3の下側に位置するようになり、磁石8が収容部4、5に収容されていれば、磁気表示パネル(図示せず)を立てた状態で使用した際の筆記において、軸体2が、仮に端部2bを筆記側とした場合に、反対側の端部2aが端部2bより下がった状態に傾いても、磁石8が通路部3を通って反対側の端部2a側に移動してしまうことがなく、良好な筆跡を得ることができる。
【0024】
図3〜図5に示す第2の実施例の磁気表示パネル用の筆記用具21は、第1の実施例における軸体2と同様に、軸体22はポリプロピレンで形成してあり、断面形状が円形形状で、両端部22a、22bにおいて先窄み状の先端部23、24を有した形状としてある。軸体22には、第1の実施例と同様に軸体22の両端に開口した、断面が円形状の空間で構成された通路部25を設けてある。該通路部25は、軸体22の中心線26に対して交叉するように傾斜させて設けてある。軸体22の先端部23、24には、通路部25に連通しかつ開口した、軸体22の中心線26上に位置して一端を外方に開口した、凹溝で形成された収容部27、28を設けてあり、磁石が通路部25から移動して収容可能としてある。収容部27、28は、互いの底部29、30が通路部25を挟んで周方向における反対側に互いが位置するように設けてある。通路部25の両端は、各収容部27、28の底部29、30側に傾斜した傾斜部25aを設け、挿入した磁石31が通路部25に沿って移動し、収容部27、28上に来ると前記傾斜部25aにより各収容部27、28に収容され易いようにしてある。
【0025】
前記軸体22の通路部25には、一方端をN極とし他方端をS極の磁極とした、丸棒状の磁石31を移動可能に挿入してある。通路部25と磁石31の寸法関係は、磁石31が移動する際に移動方向に回転することのないようになっている。図示していないが、磁石31のN極側の部分の軸体22の先端部23には、磁気泳動反転型表示パネルに磁石のN極側の磁極で筆記した際に、磁気泳動反転型表示パネルに表示される筆跡の色と同色または同系色の色彩が施されており、磁石31のS極側の軸体22の他方の先端部24には、磁気泳動反転型表示パネルに磁石のS極側の磁極で筆記した際に、磁気泳動反転型表示パネルに表示される筆跡の色と同色または同系色の色彩が施されている。
【0026】
軸体22の先端部23、24の端面23a、24aには、第1の実施例と同様に、軸体22の外径より小径で同様な深さの係合凹部32を設けてあり、該係合凹部32の形状にあった磁性部材で形成した栓部材33を接着剤により固着してある。栓部材33により、開口した通路部25の端部や収容部の開口した端部から、磁石31が飛び出すのを防止している。なお、軸体22の先端部の端面23a、24aと栓部材33の端面33aが面一となるように設けてある。本実施例における筆記用具21においては、前記栓部材33の端面33aと軸体22の先端部の端面23aが、また栓部材33の端面33aと軸体22の先端部の端面24aが筆記先端部となる。栓部材33の軸心方向の厚さは、言うまでもなく磁気表示パネル(図示せず)への筆記の際に、栓部材33が磁石31により磁性して、磁気表示パネルへの表示が可能な程度の厚さとしてある。
【0027】
軸体22の両端における把持部34、35の、各々の収容部27、28の底部29、30の通路部25を挟んで周方向における反対側に、図4に示すように、親指用の窪み状の指用当接部36と人差指用の窪み状の指用当接部37を設けてある。軸体22の他方の把持部35において、親指(図示せず)を指用当接部36に人差指を指用当接部37に当接して把持することで、収納部28の底部30は通路部25の下側に位置するようになり、磁石31が収容部28に収容されていれば、磁気表示パネル(図示せず)を立てた状態で使用した際の筆記において、反対側の一方の先端部23が下がった状態に傾いても、磁石31が通路部25を通って他方の先端部23側に移動してしまうことがなく、良好な筆跡を得ることができる。また、一方の把持部34の、親指(図示せず)を指用当接部36に人差指(図示せず)を指用当接部37に当接して把持して筆記しようとした際には、他方の把持部35に位置する収容部28に磁石31が収容されていても、前記収容部28の底部30は通路部25に対して上側に位置するので、磁石31は収容部28から落下して離脱し、通路部25を通って一方の収容部27側に移動して、傾斜部25aに沿って移動し収容部27に収容されるので、筆記の際にいちいち磁石31の位置を気にする必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
磁気表示パネル用の筆記用具として2本存在するものを、1つにまとめることができ、従来の玩具用の磁気表示パネルにおいて複数本の筆記用具の収納スペースが必要であったものが1つの収納スペースで良く、表示パネルの包装体のサイズの縮小化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施例の磁気表示パネル用の筆記用具の概略を示す縦断面図である。
【図2】図1における磁気表示パネル用の筆記用具の横断面図で、(a)は、A−A線部分の横断面図である。(b)は、B−B線部分の横断面図である。
【図3】第2の実施例の磁気表示パネル用の筆記用具の概略を示す縦断面図である。
【図4】図3における磁気表示パネル用の筆記用具の横断面図で、(a)は、C−C線部分の横断面図である。(b)は、D−D線部分の横断面図である。
【図5】図3における磁気表示パネル用の筆記用具の横断面図で、(a)は、E−E線部分の横断面図である。(b)は、F−F線部分の横断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1、21 筆記用具
2、22 軸体
3、25 通路部
4、5、27、28 収容部
6、7、29、30 底部
8、31 磁石
11、12、34、35 把持部
36、37 指用当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石の磁気を利用して表示を行うことができる磁気表示パネル用の筆記用具において、非磁性体からなる軸体の内部に、軸体の一方の端部から他方の端部に延びた空間状の通路部を形成するとともに、通路部に磁石を移動可能に収容し、通路部の両端部に、通路部に連通した凹溝状の収容部を磁石が通路部から収容部へ移動して収容可能に設け、筆記時において、磁石が通路部を移動して筆記側となる軸体の一方の端部または他方の端部に位置することで、または一方の収容部または他方の収容部に収容することで、磁気表示パネルへの筆記を可能としたことを特徴とする、磁気表示パネル用の筆記用具。
【請求項2】
前記収容部を、各々の収容部の底部が通路部を挟んで周方向における反対側に位置するように設けたことを特徴とする、請求項1に記載の磁気表示パネル用の筆記用具。
【請求項3】
前記収容部を、軸体の中心線上に位置させるとともに、通路部を軸体の中心線に対して交叉するように傾斜させて設けたことを特徴とする、請求項2に記載の磁気表示パネル用の筆記具。
【請求項4】
前記軸体が、長手方向に延びた棒状の形状であって、軸体の両方の把持部の、各々の収容部の底部の通路部を挟んで周方向における反対側の部分に、親指用の窪み状の指用当接部と人差指用の窪み状の指用当接部を設けたことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁気表示パネル用の筆記具。
【請求項5】
前記軸体の両方の把持部または把持部の近傍の収容部に対向した外側面の部分に、凸状または凹状の表示部を設けたことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁気表示パネル用の筆記具。
【請求項6】
前記磁石が、一方端をN極とし他方端をS極の磁極とした磁石であり、磁石が移動方向に回転することなく通路部に収容したことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の磁気表示パネル用の筆記用具。
【請求項7】
前記通路部の両端部における軸体の端部において、各々の端部に異なる色彩が施された透明、または半透明で形成したことを特徴とする、請求項6に記載の磁気表示パネル用の筆記用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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