説明

磁気表示媒体

【目的】 カードを見ただけで、カードの情報内容を目視にて容易に確認できる磁気表示媒体を提供する。
【構成】 基体上に情報収納部と磁気表示部とを備える磁気表示媒体であって、前記情報収納部は、磁気テープまたはICメモリからなり、前記磁気表示部は、基板と、この上に直接または中間層を介して塗設されたマイクロカプセルを含有する記録層とを有し、該マイクロカプセルの中には、液体と、この液体の中に浮遊しかつ磁場に感応する磁性粉とが含有されており、前記情報収納部に収納された情報に基づき、前記磁気表示部の記録層に目視可能な情報の記録および消去ができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、目視可能な情報の記録および消去ができる磁気表示部を備える磁気表示媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、情報を磁気情報として記録する磁気記録材料は、記録・再生・消去が瞬時にできることや、記録状態がきわめて安定である等の理由から、キャッシュカード、プリペードカード等の磁気カードへの応用が盛んになされている。このような磁気カードは、情報読取り装置にかければ、情報の記録内容が装置のディスプレイに表示され読み取り可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のカードは、上記のごとく、情報の記録内容を目視するためには、必ず、情報読取り装置が必要となる。従って、いかなる時であっても直接、カードを見ただけで、カードの情報内容を目視して確認したいというユーザーの要望があるにもかかわらず、このような要望を満足させるカード等の媒体は存在していなかった。また、鮮明な表示がなされ、目視による確認が容易にできる媒体も要望されている。
【0004】このような実情に鑑み、本発明は創案されたものであり、本発明の目的はいかなる時であっても直接、カード等の媒体を見ただけで、カードの情報内容を目視にて容易に確認できる磁気表示媒体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため本発明は、基体上に情報収納部と磁気表示部とを備える磁気表示媒体であって、前記情報収納部は、磁気テープまたはICメモリからなり、前記磁気表示部は、基板と、この上に直接または中間層を介して塗設されたマイクロカプセルを含有する記録層とを有し、該マイクロカプセルの中には、液体と、この液体の中に浮遊しかつ磁場に感応する磁性粉とが含有されており、前記情報収納部に収納された情報に基づき、前記磁気表示部の記録層に目視可能な情報の記録および消去ができるようにした。
【0006】
【作用】本発明の媒体に、図5で示されるように垂直磁場φVをかけると、マイクロカプセル22の磁性粉22aは垂直方向に整列され、この結果、外部からの入射光Liは、媒体表面に整列され、この結果、外部からの入射光はLiは、基板11表面に達してここで、反射され、反射光Loを生じる。この状態では、基板11の色が反射光として、目視される。
【0007】一方、図6に示されるように、媒体に平行磁場φPをかけると、マイクロカプセル22内の磁性粉22aは水平配向され、外部からの入射光Liは磁性粉22aで反射されて、反射光Loとなり、この状態では、磁性粉22aからの反射光の色が目視される。
【0008】従って、図6の状態を消去状態とすれば、外部からは明るい金属色が目視できる。一方、図5の状態を、垂直磁場φVによって部分的に書き込んだ状態とすれば、この部分が例えば黒色に目視され、外部から容易に判読できる。
【0009】上記の記録状態と、消去の状態とを反転させて、表示することも勿論可能である。
【0010】
【実施例】以下、本発明の磁気表示媒体を図1〜図4を参照して詳細に説明する。図1は、磁気表示媒体1の一実施例を示す斜視図である。本発明の磁気表示媒体1は、媒体のベースとなる基体2と、この基体2の一平面に組み込まれた磁気表示部10と、前記基体2の一平面に組み込まれた情報収納部4とを有している。
【0011】前記基体2は、例えば、板状の支持体であり、このものは、通常、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS、PBT、POM(ポリアセタール)等の各種プラスチックや、各種金属、各種厚紙等の材質から形成される。
【0012】このような基体2の大きさには、特に、制約はないが、通常、容易に持ち運び可能なカードに相当する大きさとされる。厚さは、0.5〜2.0mm程度である。
【0013】このような基体2に組み込まれる磁気表示部10は、図4に示されるような、積層構造をなしている。すなわち、磁気表示部10は、基板11と、この上に設けられた記録層20と、この上にアンカー層13を介して設けられた保護層14とを有している。
【0014】基板11は、各種プラスチック、紙、金属等のシート状の支持体となるものであれば材質に特に制限はないが、基板11そのものが黒く着色されているか、基板11の表面が黒く着色されたものが表示のコントラストを明瞭にするうえで特に好ましい。着色の手段としては、例えば、硫酸バリウム、マイクロシリカ、カーボンブラック等の顔料を各種プラスチック原料に混練した後、シート状に成形すればよい。このような基板11の厚さは、通常50〜200μm程度とされる。
【0015】このような基板11の上に設けられる記録層20は、複数のマイクロカプセル22とバインダー24を備える。マイクロカプセル22の中には液体22bとしてのビヒクルおよび磁性粉22aが含有されており、磁性粉22aはビヒクルの中に浮遊した状態になっている。
【0016】ビヒクルとしては、極性液体と、疎水性液体と、熱可塑性樹脂とを含有させることが好ましい。極性液体としては、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシ基、アミノ基等の極性基を有するアルコール類、ケトン類、エステル類、カルボン酸類、アミノ化合物が挙げられる。より具体的には、芳香族酸エステル、脂肪酸エステル、アルコールエステル、オキシ酸エステル等のエステル類が一般的であって、フタル酸ジブチル、燐酸オクチジフェニル、セバシン酸ジオクチル、トリアセトン、ヒマシ油等が好適例として挙げられる。
【0017】疎水性液体としては、低揮発性の脂肪族、芳香族炭化水素およびこれらの混合物であって感圧複写紙用マイクロカプセルに常用されるものが好適である。熱可塑性樹脂としては、前記極性液体および疎水性液体の混合液に安定に溶解し得るものであればいずれも使用可能である。なかでも溶解時の透明性が良く、電界や磁界、光、熱、及び温度などによってゲル化することのないものであって、マイクロカプセル壁形成反応に対して、悪影響のないものが選択される。好適例として、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、脂環族飽和炭化水素樹脂、ポリメタクリル酸エステル、アセチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。
【0018】このような成分を含有するビヒクルの常温における粘度は、20〜5000cP程度とされる。粘度は主に熱可塑性樹脂の含有量によって変動し、前記熱可塑性樹脂は、2〜50wt%程度含有される。また、極性流体の含有率は、熱可塑性樹脂との相溶性や磁性粉の安定性等を考慮して適宜、設定される。
【0019】磁性粉としては、鉄、ニッケル、鉄−ニッケルや、鉄−ニッケル−クロム等のステンレススチール、アルミニウム−コバルト合金、サマリウム−コバルト合金等が用いられる。磁性粉の形状としては、いわゆるフレーク形状のものが好ましく、厚さはできるだけ薄く、厚さと粒径の比が大きいものが好ましい。粒径は、3〜15μm程度とされる。粒径が大きくなると、カプセルの粒径との関係で、カプセル内にうまく収納されず、また、外部磁気への反応が遅くなる。一方、粒径が小さくなると、磁化させた時、水平方向と垂直方向での光反射率の差が小さくなり記録時のコントラストが悪くなる。
【0020】このような磁性粉の保磁力は、用いられる媒体の用途によって適宜選定すればよく、通常は、500Oe(エルステッド)以上のものを用いる。さらに磁性粉にビヒクルへの分散性を向上させるとともに、磁性粉同士の凝集を防止するという観点から、磁性粉の表面を予め公知の種々の有機材料で被覆してもよい。また、磁性粉の反射率を挙げるためにアルミニウムや銀などを磁性粉表面に蒸着してもよい。
【0021】さらに、マイクロカプセル内には、コントラストを向上させるために染料または顔料を含有させることが好ましい。このようなマイクロカプセルは、例えば、米国特許第2800458号、英国特許第1142556号、米国特許第4001140号等に開示されている公知の種々の方法で製造される。マイクロカプセルの粒径は、体積平均径で10〜100μmが好適である。この値があまり小さくなると、カプセル内に収納される磁性粉の総量が少なくなるために、記録時のコントラストが十分でない。逆に、この値が大きくなりすぎると、記録層表面に凹凸が生じ、記録画像が不均一に成ってしまう。
【0022】このようなマイクロカプセルを塗設するのに用いられるバインダーとしては、マイクロカプセル壁を損傷せず、かつ基板11表面によく接着するものであれば特に制限はない。より好適な具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0023】このようなマイクロカプセルを含有する記録層20の厚さは、通常、50〜200μmとされる。このような記録層20の上にはアンカー層13を介して保護層14が設けられる。
【0024】アンカー層13としては、ポリエステル、アクリル等の材質が用いられる。このようなアンカー層13の厚さは、5〜20μm程度とされる。保護層14としては、ポリエステル、ポリカーボネート等の材質が用いられる。このような保護層14の厚さは、12〜100μm程度とされる。
【0025】上述したように形成される磁気表示部10の下方には、図3に示されるように磁性体層30を埋設させることが好ましい。この磁性体層は、鉄、ニッケル、鉄・ニッケルや鉄・ニッケル・クロム等のステンレススチール、アルミニウム・コバルト合金、サマリウム・コバルト合金等の材質からなる。その大きさは前記磁気表示部10にそれと同程度であり、その厚さは50〜200μm程度である。
【0026】前記基体2の下部の平面に組み込まれた情報収納部として、本実施例では、磁気ストライプ4がカードの長手方向に沿って固着されている。この磁気ストライプ4に書き込まれた記録情報に基づき、前記磁気表示部10の記録層20に目視可能な情報の記録および消去ができるようになっている。この磁気ストライプ4に替えて、情報収納部としてICメモリを基体2の中に組み込むことも好適である。この場合には記憶容量が格段と大きくなる。なお、情報収納部に収納された情報の読取や、前記磁気表示部への目視可能な情報の書込みは図示しない装置によって行われる。
【0027】次に、具体的実験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。〈実験例1〉 フレーク状の磁性粉の分散液の調製 フレーク状の磁性粉 18.0g ・Fe/Ni合金,Fe:Ni=64:36 ・飽和磁化 θs 129 ・残留磁束密度 θr 65 ・保磁力 Hc 540 ・平均粒径 9.2μm ・比表面積 0.096m2 /g ・比重 8.1 エチルセルロース(商品名;N−7,米国ハーキュレス社製)
7.5g フタル酸ジメチル 36.5g フェニル・キシリル・エタン (商品名;日石ハイゾール SAS)
36.5gこの混合液を攪拌しながら、90℃に加熱し、エチルセルロース、着色染料を溶解した。
【0028】
カプセル化用原液の調製 ゼラチン 1.5g アラビアゴム 15g 純水 170gを50℃で溶解しカプセル化用原液とした。
【0029】このようなカプセル化用原液および上記磁性粉の分散液を用いてマイクロカプセルを作製した。
マイクロカプセルの作製上記カプセル化用原液80gに2%NaOH水溶液1.7gを加えて攪拌しながら上記磁性粉の分散液60gを、徐々に加えた後、50μmの粒径になるまで乳化した。
【0030】次に、約50℃の純水250gを加え、この乳化物との混合系を50℃に保ったまま5%酢酸水溶液で系のpHを調製した。ついで、ゆっくりと冷却し50%グルタールアルデヒド4.2gを添加しそのまま3時間攪拌を続けてカプセル壁を硬化し磁気カプセルスラリーを得た。
【0031】ついで、磁気カプセルスラリーをメッシュフィルタにかけて粒度をそろえて(250メッシュフィルター残)記録層形成試料とした。
磁気表示サンプルの作製まず、予め、ICメモリ収納され、かつ表面に凹部が形成された54×85.6、厚さ0.76mmのPVC樹脂性基体の凹部の中に、図4に示されるような層構成からなる磁気表示部10を積層し、磁気表示サンプル(サンプル1)を作製した。
【0032】磁気表示部10の具体的な積層方法は以下の通りであるPETフィルムにプライマー(アンカー剤)をコーティング機で所定量コートし乾燥後巻き取る。
【0033】次に、このコーティングされたPETフィルムのプライマー面にマイクロカプセルインキをコーティング機で所定量コートし、同様に巻き取る。プライマおよびマイクロカプセルがコートされたものの上に更にスミ(黒)インキをコートする。
【0034】同様に、最後に粘着剤をコートして積層が完了する。ついで、上記サンプル1の磁気表示部10の下部に16.4×75.6、厚さ0.4mmの鉄からなる磁性体層30を埋設してサンプル2を作製した。
【0035】これら、2つのサンプルについて、情報の書込み(記録)および消去のテストを行った。すなわち、情報の読取り部と書き込み部とを供えた装置を用いて、ICメモリに記録された所定の情報を読み取らせ、しかる後、サンプルの表示部に情報を書き込んだ。書込みは、所定位置に垂直磁場(650Oe)をかけると、記録層のカプセル内の磁性粉は垂直配向し、黒色化した。明るい背景と、黒色化の明度差を色差計(スガ試験機(株)社製)で測定したところ、サンプル1では14ポイント、サンプル2では20ポイントの差があり、明るいバックの中に黒色化した記録が可能であることが確認され、共に実用に供することが確認された。特に、後者のものは、磁性体層を備えているので、記録表示の濃淡はより明瞭になることも確認された。
【0036】
【発明の効果】本発明の媒体は、基体上に情報収納部と磁気表示部とを備える磁気表示媒体であって、前記情報収納部は、磁気テープまたはICメモリからなり、前記磁気表示部は、基板と、この上に直接または中間層を介して塗設されたマイクロカプセルを含有する記録層とを有し、該マイクロカプセルの中には、液体と、この液体の中に浮遊しかつ磁場に感応する磁性粉とが含有されており、前記情報収納部に収納された情報に基づき、前記磁気表示部の記録層に目視可能な情報の記録および消去ができるようにしているので、いかなる時であっても直接、媒体を見ただけで、カードの情報内容を目視にて容易に確認できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気表示媒体の一実施例を示す斜視図である。
【図2】磁気表示媒体1の正面図である。
【図3】図2の III−III 断面矢視図である。
【図4】磁気表示部の層構成を示す断面図である。
【図5】磁気表示媒体の表面に垂直磁場をかけた時のカプセル内の磁性粉の挙動を示す断面図である。
【図6】磁気表示媒体の表面に水平磁場をかけた時のカプセル内の磁性粉の挙動を示す断面図である。
【符号の説明】
1…磁気表示媒体
4…情報収納部
10…磁気表示部
20…記録層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基体上に情報収納部と磁気表示部とを備える磁気表示媒体であって、前記情報収納部は、磁気テープまたはICメモリからなり、前記磁気表示部は、基板と、この上に直接または中間層を介して塗設されたマイクロカプセルを含有する記録層とを有し、該マイクロカプセルの中には、液体と、この液体の中に浮遊しかつ磁場に感応する磁性粉とが含有されており、前記情報収納部に収納された情報に基づき、前記磁気表示部の記録層に目視可能な情報の記録および消去ができるようにしたことを特徴とする磁気表示媒体。
【請求項2】 前記記録層の下方には磁性体層が埋設されていることを特徴とする請求項1記載の磁気表示媒体。
【請求項3】 前記磁性体層は、鉄、ニッケル、鉄・ニッケルや鉄・ニッケル・クロム等のステンレススチール、アルミニウム・コバルト合金、サマリウム・コバルト合金等の微粒子を薄片状としたものであることを特徴とする請求項2記載の磁気表示媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平5−16578
【公開日】平成5年(1993)1月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−177021
【出願日】平成3年(1991)7月17日
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【出願人】(000107642)スター精密株式会社 (253)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)