説明

磁気記録再生装置におけるキャリッジアーム用ストッパー

【課題】永久磁石を取り付けることなく、簡単な構造でキャリッジアームのインナー側およびアウター側への回動を制限する。
【解決手段】磁気ディスク3と、磁気ディスク3のデータを読み取る磁気ヘッド5と、磁気ヘッド5を先端に有し、ピボット軸4によって回動可能に軸支されたキャリッジアーム6とを備えた磁気記録再生装置1において、ピボット軸4の基部がその両側に配置された弾性材製ストッパー8A、8Bの係止部7となされ、ストッパー8A、8Bにおけるキャリッジアーム6の係止部7当接方向に対して90°〜270°の範囲で、厚み方向に貫通する所定長のスリット11、11が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスクにおけるデータの読み取りヘッドを先端に有するキャリッジアームの回動制限を行うストッパーおよびこれを用いたキャリッジアームの回動制限機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図11・図12に示すように、磁気記録再生装置61は、ベース部62内において、磁気ディスク60が回動可能に設けられ、ピボット軸63により軸支されたキャリッジアーム64の先端に磁気ヘッド65が取り付けられたものである。そして、キャリッジアーム64の基部は第一アーム66Aと第二アーム66Bとからなる二股状となっており、これらアーム66A・66Bは、キャリッジアーム64の先端部が磁気ディスク60の中心方向(以下、「インナー側」という)へ移動したり、或いはその逆方向(以下、「アウター側」)へ移動するのに伴って前記ピボット軸63を支点として回動するが、この回動を制限するために下ヨーク67上に第一アーム66Aおよび第二アーム66Bに当接する後述のストッパー69が取り付けられている。
【0003】
すなわち、ストッパー69は、本体が略立方体形状のゴムからなり、一端に形成された方形孔68には支持ロッド70が挿入され、また他の方形孔71には永久磁石72が嵌め込まれていた。そして、キャリッジアーム64の回動に伴って、その第一アーム66Aまたは第二アーム66Bがストッパー69に当接した場合、ストッパー69のゴム弾性によって、その衝撃が緩和されると共に、第一アーム66Aまたは第二アーム66Bがストッパー69の永久磁石72に吸着した。
【特許文献1】特開2004−355778
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した構造のストッパー69によれば、キャリッジアーム64における第一アーム66Aまたは第二アーム66Bの当接時の衝撃が吸収されると共にキャリッジアーム64のインナー側またはアウター側への過度の移動が制限されるものの、ストッパー69内に永久磁石72を嵌め入れるために、予め方形孔71を形成すると共にこれに永久磁石72を嵌め込む作業が必要となり、この作業に手間を要すると共に、製造コストが高くなるといった問題があった。
【0005】
本発明の目的は、永久磁石を取り付けることなく、簡単な構造でキャリッジアームにおける第一アームおよび第二アームの緩衝を確実に行うことができるキャリッジアーム用ストッパーおよびこれを用いたキャリッジアームの回動制限機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明は、先端に磁気ヘッドを有し、ピボット軸で回動可能に軸支されたキャリッジアームの基部が当接するストッパーであって、弾性材で構成され、一側に厚み方向に貫通する所定長のスリットが形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載のストッパーについて、スリットの先端部に円形の貫通孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の本発明は、磁気ディスクと、磁気ディスクのデータを読み取る磁気ヘッドと、該磁気ヘッドを先端に有し、ピボット軸によって回動可能に軸支されたキャリッジアームとを備えた磁気記録再生装置において、ピボット軸の基部がその両側に配置された弾性材製ストッパーの係止部となされ、ストッパーにおけるキャリッジアームの係止部当接方向に対して90°〜270°の範囲で、厚み方向に貫通する所定長のスリットが形成されており、ストッパーにキャリッジアームの係止部が当接した際、ストッパーが変形すると共にスリットの対向壁同士が当接し合うことにより、前記キャリッジアームの回動が制限されると共に、係止部の当接時の衝撃が吸収されるようになされている、磁気記録再生装置におけるキャリッジアームの回動制限機構である。
【0009】
請求項4記載の本発明は、前記請求項3記載の回動制限機構におけるストッパーについて、そのスリットの先端部に円形の貫通孔が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るストッパーは、先端に磁気ヘッドを有し、ピボット軸で回動可能に軸支されたキャリッジアームの基部が当接するものであって、弾性材で構成され、一側に厚み方向に貫通する所定長のスリットが形成された簡単な構造であるため、従来のストッパーとは異なり、永久磁石を必要とせず、またその装着作業も不要となることから、製造作業が簡略化されると共に、製造コストも安価になるという利点がある。
【0011】
また、本発明に係る磁気記録再生装置におけるキャリッジアームの回動制限機構によれば、前記本発明に係るストッパーを介してキャリッジアームのインナー方向およびアウター方向への回動が簡単かつ確実に制限され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1に示すように、本発明に係るストッパー8は、後述するキャリッジアームの基部における係止部の当接方向(矢印A)方向に対して90°〜270°の範囲でスリットが形成されるものである。
【0014】
図2に示すように、磁気記録再生装置1は、方形のベース部2と、ベース部2上に取り付けられた磁気ディスク3と、ピボット軸4によって軸支され、先端に磁気ヘッド5が取り付けられたキャリッジアーム6と、キャリッジアーム6の基部に設けられた係止部7と、キャリッジアーム6の回動に伴って係止部7が当接するインナーストッパー8Aおよびアウターストッパー8Bとを有している。
【0015】
ストッパー8A・8Bは、本実施形態では、弾性材であるポリエステルエラストマーからなり、図2および図3に見られるように、キャリッジアーム6の回動を制限するように、キャリッジアーム6の係止部7の両側に配置され、全体が略立方体形状であって、その一端隅部寄り部分に方形孔9が形成され、ストッパー8A・8Bにおけるキャリッジアーム6の係止部当接側面8aと反対側面8bに、キャリッジアーム6の係止部当接側面8a方向へ伸び、且つ厚み方向に貫通する所定長のスリット11が形成され、スリット11の先端部には円形の貫通孔12が形成されている。
【0016】
なお、ストッパー8A・8Bは、その方形孔9にベース部2上面に設けられた突起14が嵌め入れられることでベース部2上に固定されている。
【0017】
そして、図4(a)(b)に示すように、例えばアウターストッパー8Bにおいては、キャリッジアーム6における係止部7の当接方向(矢印A方向)に対して180°の位置にスリット11が形成されており、そして、係止部7の当接面7aがアウターストッパー8Bの当接側面8aにおけるスリット11の中心線11aを挟んでその一側部10だけに当接するように、アウターストッパー8Bの当接側面8aと係止部7の当接面7aに所定角度が付されている。したがって、図4(b)に示すように、アウターストッパー8Bに係止部7が当接することで、アウターストッパー8Bにおける係止部7の当接側部分10に矢印A方向の外力がかかって変形し、その結果、スリット11の対向壁11b・11c同士が当接し合い、キャリッジアーム6のアウター側への回動が阻止されると共に、前記係止部7の当接時の衝撃が緩和・吸収される。またこれらのことはインナーストッパー8Aについても同様である。
【0018】
図5に示すように、キャリッジアーム6の係止部7の当接時における反発量を、本実施形態のストッパー8A・8Bと従来例のストッパーで比較した結果、スリット11を有する本実施形態のストッパー8A・8Bの方がスリットのない従来例のストッパーよりも反発量が小さく、衝撃吸収性が大きいことが実験により判明した。
【0019】
図6は、本発明に係るストッパーの他の実施形態を示しており、前記アウターストッパー8Bを例にすると、キャリッジアーム6の係止部7の当接方向(矢印A方向)に対して90°の位置にスリット21が形成され、その先端には貫通孔12が形成されている。
【0020】
図7は、本発明に係るストッパーの更に他の実施形態を示しており、前記アウターストッパー8Bを例にすると、キャリッジアーム6の係止部7の当接方向(矢印A方向)に対して270°の位置にスリット31が形成され、その先端には貫通孔12が形成されている。
【0021】
図8は、本発明に係るストッパーの別の実施形態を示しており、前記アウターストッパー8Bを例にすると、キャリッジアーム6の係止部7の当接方向(矢印A方向)に対してほぼ180°の位置に傾斜状のスリット41が形成され、その先端には貫通孔12が形成されている。
【0022】
図9は、更に別の実施形態にかかるストッパーであって、アウターストッパー8Bを例にすると、キャリッジアーム6の係止部7の当接方向(矢印A方向)に対してほぼ180°の位置にスリット51が形成されており、そして、その対向壁51a・51bのうち、一方の壁51bだけが傾斜した構造となされ、スリット51の先端には貫通孔12が形成されている。
【0023】
図10は、他の実施形態にかかるストッパーであって、前記アウターストッパー8Bを例にすると、前述した各実施形態における円形の貫通孔12が形成されず、キャリッジアーム6の係止部7の当接方向(矢印A方向)に対してほぼ180°の位置にスリット73だけが形成された構造となっている。
【0024】
なお、前記第2実施形態以下の各実施形態におけるストッパーの材質も、最初の実施形態と同様、ポリエステルエラストマー製である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、そのストッパーによって、容易に優れた緩衝作用が得られるため、磁気記録再生装置の分野で幅広い利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るストッパーにおけるスリットの形成範囲を示す平面図である。
【図2】実施形態に係る磁気記録再生装置の平面図である。
【図3】アウターストッパーの斜視図である。
【図4】アウターストッパーに対するキャリッジアームの係止部の当接状態を示し、(a)はその当接前、(b)はその当接時の状態を示す。
【図5】実施形態と従来例の各ストッパーについての反発量試験の結果を示すグラフである。
【図6】他の実施形態に係るストッパーの平面図である。
【図7】更に他の実施形態に係るストッパーの平面図である。
【図8】別の実施形態に係るストッパーの平面図である。
【図9】更に別の実施形態に係るストッパーの平面図である。
【図10】他の実施形態に係るストッパーの平面図である。
【図11】従来の磁気記録再生装置を示す平面図である。
【図12】従来の磁気記録再生装置におけるストッパーの斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 磁気記録再生装置
3 磁気ディスク
4 ピボット軸
5 磁気ヘッド
6 キャリッジアーム
7 係止部
8A・8B ストッパー
11 スリット
12 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に磁気ヘッドを有し、ピボット軸で回動可能に軸支されたキャリッジアームの基部が当接するストッパーであって、弾性材で構成され、一側に厚み方向に貫通する所定長のスリットが形成されていることを特徴とする、ストッパー。
【請求項2】
スリットの先端部に円形の貫通孔が形成されている、請求項1記載のストッパー。
【請求項3】
磁気ディスクと、磁気ディスクのデータを読み取る磁気ヘッドと、該磁気ヘッドを先端に有し、ピボット軸によって回動可能に軸支されたキャリッジアームとを備えた磁気記録再生装置において、ピボット軸の基部がその両側に配置された弾性材製ストッパーの係止部となされ、ストッパーにおけるキャリッジアームの係止部当接方向に対して90°〜270°の範囲で、厚み方向に貫通する所定長のスリットが形成されており、ストッパーにキャリッジアームの係止部が当接した際、ストッパーが変形すると共にスリットの対向壁同士が当接し合うことにより、前記キャリッジアームの回動が制限されると共に、係止部の当接時の衝撃が吸収されるようになされている、磁気記録再生装置におけるキャリッジアームの回動制限機構。
【請求項4】
ストッパーにおけるスリットの先端部に円形の貫通孔が形成されている、請求項3記載の磁気記録再生装置におけるキャリッジアームの回動制限機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−140530(P2009−140530A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313001(P2007−313001)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】