説明

磁気記録再生装置

【目的】 本発明は回転する磁気ヘッドにより走行する磁気テープに情報の記録再生を行う磁気記録再生装置に関し、磁気テープに対し磁気ヘッドを高精度に位置決めすることを目的とする。
【構成】 データカートリッジ12の装着で開蓋により表出する磁気テープ12aをヘッドベース39に取り付けられたテープガイド部材40a,40bで位置決めする。そして、ガイドローラ25aを、テープガイド部材40bと一体のカートリッジガイド41により位置決めする構成とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、回転する磁気ヘッドにより走行する磁気テープに情報の記録再生を行う磁気記録再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、コンピュータにおいては、HDD(ハードディスクドライブ)等の記憶装置のバックアップ用として所謂ストリーマと呼ばれる保持記録装置が使用されている。この種の記録装置では、内部に磁気テープが巻回された一対のテープリールと、中央前面に設けられて該一対のテープリールを駆動するための駆動ローラとを有するデータカートリッジが装着されると、駆動ローラを回転させてテープを走行させるとともに磁気記録を行うよう構成されている。
【0003】この種の記録装置では、例えば上記データカートリッジ内の駆動ローラに圧着されるアイドラをモータで回転駆動するとともに、このモータを回転速度に比例した周波数の信号が発生するよう構成されたサーボ方式によりモータの回転制御を行っている。そして、本発明者らは、記憶容量を高めるため、固定式のヘッドに代わって回転式のヘッドを用いた新型の磁気記録再生装置を提案してきている(特願平4−286370号)。
【0004】この場合、記録再生時における磁気ヘッドの磁気テープに対する位置決めが重要であり、特に回転式のヘッドの場合には、テープエッジがヘッドに接触することから、精密に位置決めを行う必要がある。
【0005】そこで、図4に、先行の回転ヘッドを用いた磁気記録再生装置の平面図を示す。図4において、磁気記録再生装置11にはデータカートリッジ12が装着される。
【0006】磁気記録再生装置11は、データカートリッジ12に巻回されているテープを高速及び低速に走行させる駆動機構を有するものである。
【0007】すなわち、磁気記録再生装置11は、筐体11a内に、大略、テープ駆動機構13、回転磁気ヘッド14、及びデータカートリッジ12の装着機構(図示せず)等から構成されている。テープ駆動機構13は、テープを高速走行させる高速駆動機構15と、テープを低速走行させる低速駆動機構16と、高速駆動機構15から低速駆動機構16に切り換える切換機構17とを有する。
【0008】回転磁気ヘッド14は、ヘッドホルダ14aの外周部に所定間隔で複数個配設され、このヘッドホルダ14aがヘッドモータ14bにより回転される。この場合、ヘッドホルダ14aは、データカートリッジ12に巻回された磁気テープ12aのテープ幅より大きい寸法で形成される。
【0009】また、磁気ヘッド14の両側部分には、走行する磁気テープ12aをガイドするテープガイド14c,14dが立設される。
【0010】なお、磁気ヘッド14を固定式とする場合には、特にヘッドホルダ14aやヘッドモータ14bは不要となる。
【0011】高速駆動機構15は、モータベース15a上の高速モータ15bにウォームホイール15cが取り付けられ、該ウォームホイール15cの取付軸15dより、ベルト18aを介してデータカートリッジ12内のテープ12aを走行させるためのアイドラ18が連結される。
【0012】モータベース15aは、支軸15eによりA−B方向に回動自在であり、該支軸15eに巻回され、両端が突起部15f及び係止部15gに係止されたトーションバネ15hによりA方向に付勢されている。
【0013】低速駆動機構16は、モータ16aの軸にウォーム16bが取り付けられたもので、低速走行時にウォームホイール15bとウォーム16bとが噛合してモータ16aによりアイドラ18が回転駆動される。
【0014】そして、切換機構17は、上述のウォームホイール15bにウォーム16bを噛合させ、又は切り離しを行うものでモータ17aを回転させることにより切換える。
【0015】また、筐体11aの両側部には、データカートリッジ12の挿入をガイドする溝及びストッパが形成されたガイド板11b,11cが設けらる。
【0016】一方、データカートリッジ12は、両側に案内溝19a,19bが形成されると共に、内部にテープ12aを走行させる駆動ローラ20が設けられる。
【0017】ここで、図5にデータカートリッジの斜視図を示し、図6にデータカートリッジの平面図、正面図を示す。図5(A),(B)及び図6(A),(B)において、データカートリッジ12は箱状のカセット21の両側部に挿入方向に案内する案内溝19a,19bを有し、この案内溝19a,19bの下面方向位置に装着位置にロックするためのロック溝19c,19dが設けられている。又、データカートリッジ12の前面の開口22には挿入動作に関連して開蓋する蓋23と、開口22に隣接する開口24にはカセット21の天板21aに回転自在に支承された駆動ローラ20とが配置されている。
【0018】上記蓋23はデータカートリッジ12が磁気記録再生装置11に装着されていないとき閉蓋しており、回転磁気ヘッド14が進入するための開口22を閉塞してカセット21の内部及び磁気テープ12aを保護している。そして、後述するようにデータカートリッジ12が磁気記録再生装置11に装着されると、蓋23が図5(B)に示すように回動して開口22を開き磁気テープ12aを露出させる。
【0019】また、図6(A),(B)に示すように、データカートリッジ12の内部には、磁気テープ12aが巻回された一対のリール25,26が回転自在に支承されてガイドローラ25a,26aにより磁気テープ12aが張架され、且つ前面側の駆動ローラ20及び後面側の案内ローラ27,28に巻装された駆動ベルト29が磁気テープ12aの外周に圧着するように各ローラ20,27,28に案内されており、駆動ローラ20の回転駆動により走行しながら一対のリール25,26をテープ巻き取り方向に回転駆動するものである。
【0020】そこで、図7に、データカートリッジ装着の説明図を示す。図7において、データカートリッジ12が図4の矢印方向に、ガイド板11b,11cに沿って挿入され、その奥端部のストッパによりデータカートリッジ12が位置決めされる。
【0021】これと同時に、開口22で磁気テープ12aがテープガイド14c,14dに当接し、磁気ヘッド14と磁気テープ12aとの位置決めが行われる。そして、アイドラ18が駆動ローラ20により押圧され、モータベース15aがB方向に回動することにより、アイドラ18が磁気テープ12aを介して駆動ローラ20に圧接し、アイドラ18及び駆動ローラ20により磁気テープ12aがテープガイド14c,14dに沿って走行するものである。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】しかし、データカートリッジ12のガイドローラ25a,26aは、図6に示すように挿入方向エッジ端より奥に配置されていることから、カートリッジ構成上の許容誤差の範囲内で磁気テープ12の位置にばらつきを生じることになり、さらに該エッジ端の加工許容誤差を含めると該ばらつきが大きくなる。この場合、テープガイド14c,14dは磁気ヘッド14(ヘッドホルダ14a)とは別個の状態で固定されていることから、カートリッジ12による磁気テープ12aの位置のばらつきを解消することが困難であり、磁気ヘッド14と磁気テープ12aのタッチに影響を与えるという問題がある。
【0023】そこで、本発明は上記課題に鑑みなさたもので、磁気テープに対し磁気ヘッドを高精度に位置決めする磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】上記課題は、走行案内を行うガイドローラを介して張設される磁気テープを備えるデータカートリッジが装着され、該データカートリッジ内の磁気テープを、保持部材に取着された磁気ヘッドに対してテープガイド部材により案内して情報の記録再生を行う磁気記録再生装置において、前記ガイドローラと係合して、前記データカートリッジを位置決め支持する支持手段を設けることにより解決される。
【0025】そして、適宜、前記テープガイド部材と前記支持手段とが一体的に形成又は取着し、又は前記保持部材、前記テープガイド部材、及び前記支持手段を、前記磁気テープの幅方向に揺動自在に取着する。
【0026】
【作用】上述のように、装着されたデータカートリッジの磁気テープがテープガイド部材により案内されると共に、カートリッジ内のガイドローラが支持手段に係合されて該カートリッジが位置決め支持される。
【0027】すなわち、カートリッジ自体の成形寸法に誤差やばらつきがあっても、磁気テープの走行案内を行うガイドローラを支持手段で直接支持することから、磁気テープに対する磁気ヘッドを高精度に位置決めさせることが可能となる。
【0028】また、テープガイド部材と支持手段とを一体的に形成又は取着することにより、又はこれらを保持部材に揺動自在に取着することにより、磁気ヘッドとテープガイド及び支持手段との位置関係が一体となり、磁気テープに対する磁気ヘッドをさらに高精度に位置決めさせることが可能となる。
【0029】
【実施例】図1に、本発明の1実施例の構成図を示す。図1は、磁気記録再生装置の要部における磁気ヘッド周辺を示したものである。
【0030】図1において、磁気記録再生装置31に使用されるデータカートリッジは図5及び図6に示すものと同様であり、同一の符号を付す。磁気記録再生装置31は、筐体上に挿入されるデータカートリッジ12をガイドし、かつ保持するガイド板32a,32bが設けられる。このガイド板32a,32bは溝33が形成されており、該データカートリッジ12を嵌合状態でガイドし、保持する。
【0031】また、データカートリッジ12の装着位置には、カートリッジ前面と当接するストッパ34が設けられ、挿入方向の位置決めを行うものである。
【0032】そして、データカートリッジ12が装着されたときに、関連して開蓋する蓋(23)により表出する磁気テープ12aの位置に、該磁気テープ12aに当接する複数の磁気ヘッドを備えるヘッドユニット35が配置される。
【0033】ここで、図2に、図1のヘッドユニットの構成図を示す。図2(A)は斜視図であり、図2(B)は正面図である。図2(A),(B)に示すヘッドユニット35は回転式のもので、複数(実施例では6個)の磁気ヘッド36が円柱状のヘッドホルダ37の端面に突出状態で等間隔に設けられる。該ヘッドホルダ37がヘッドモータ38により回転されることにより、磁気ヘッド36が回転する。このヘッドホルダ37及びヘッドモータ38が保持部材であるヘッドベース39に揺動自在に取り付けられる。
【0034】また、磁気ヘッド36が設けられたヘッドホルダ37の両側には、磁気テープ12aをガイドする「コ」字状の切欠きが形成されたテープガイド部材40a,40bが配置されるもので、該ヘッドベース39にネジ39aにより一体的に取り付けられる(一体に形成してもよい)。この場合、テープガイド部材40bの下部にL字状に、支持手段であるカートリッジガイド41が一体に形成される(ネジ等で一体的に取り付けてもよい)。
【0035】カートリッジガイド41は、磁気ヘッド36が磁気テープ12aに当接したときに、ガイドローラ25aの下端に係合するもので、V字状の切欠き41aが形成される。
【0036】そして、ヘッドベース39、テープガイド部材40a,40b及びカートリッジガイド41は、筐体ベースに取り付けられる。
【0037】なお、他の構成は図4と同様であり、省略する。
【0038】そこで、図3に、図2のカートリッジガイドの説明図を示し、図1の位置決め動作について説明する。いま、データカートリッジ12が装置内に挿入され、カートリッジ前面がストッパ34に当接することによりデータカートリッジ12の挿入方向の位置決めが行われる。
【0039】このとき、蓋(23)が開蓋して磁気テープ12aが表出され、この磁気テープ12aがテープガイド部材40a,40bの切欠き内に嵌合した状態となり、該磁気テープ12aの走行位置が上下方向に位置決めされる。
【0040】また、ストッパ34にデータカートリッジ12の前面が当接したときに、開蓋で該データカートリッジ12内のガイドローラ25aが表出され、このガイドローラ25aの下端にカートリッジガイド41の切欠き41aに嵌合状態となり、テープ走行位置が前後左右に位置決めされるものである。
【0041】この場合、カートリッジガイド41、テープガイド40a,40b、及び磁気ヘッド36(ヘッドホルダ37)が一体的であることから、データカートリッジ12の寸法誤差によってテープ走行位置のばらつきを生じることがなくなるものである。
【0042】このように、テープ走行位置を左右するデータカートリッジ12内のガイドローラ25aに直接位置決め用のカートリッジガイド41を当接させて支持させることによって、テープ走行位置のばらつきを防止することができ、磁気テープ12aに対する磁気ヘッド36を高精度に位置決めすることができる。
【0043】また、テープガイド40a,40bをカートリッジガイド41(及びヘッドベース39)を一体的に形成することにより、生産性を向上させることができるものである。
【0044】なお、上記実施例では、カートリッジガイド41の切欠き41aをV字状に形成した場合を示しているが、該ガイドローラ25aを少なくとも2点で接触する部分が存在すれば何れの形状であってもよい。
【0045】また、上記実施例では、磁気テープ12aに対する磁気ヘッド36を回転式の場合として説明したが、固定式であっても適用することができるものである。
【0046】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、テープガイド部材と共にデータカートリッジ内のガイドローラと係合して該データカートリッジを位置決め支持する支持手段を設けることにより、磁気テープに対して磁気ヘッドを高精度に位置決めすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の構成図である。
【図2】図1のヘッドユニットの構成図である。
【図3】図2のカートリッジガイドの説明図である。
【図4】先行の回転ヘッドを用いた磁気記録再生装置の平面図である。
【図5】データカートリッジの斜視図である。
【図6】図5のデータカートリッジの内部構成図である。
【図7】データカートリッジ装着の説明図である。
【符号の説明】
12 データカートリッジ
12a 磁気テープ
20 駆動ローラ
25a ガイドローラ
31 磁気記録再生装置
32a,32b ガイド板
33 溝
34 ストッパ
35 ヘッドユニット
36 磁気ヘッド
37 ヘッドホルダ
38 ヘッドモータ
39 ヘッドベース
40a,40b テープガイド部材
41 カートリッジガイド
41a 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】 走行案内を行うガイドローラを介して張設される磁気テープを備えるデータカートリッジが装着され、該データカートリッジ内の磁気テープを、保持部材に取着された磁気ヘッドに対してテープガイド部材により案内して情報の記録再生を行う磁気記録再生装置において、前記ガイドローラと係合して、前記データカートリッジを位置決め支持する支持手段を設けることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項2】 前記テープガイド部材と前記支持手段とが一体的に形成又は取着されることを特徴とする請求項1記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】 前記保持部材に、前記テープガイド部材及び前記支持手段が取着されることを特徴とする請求項2記載の磁気記録再生装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【公開番号】特開平7−14271
【公開日】平成7年(1995)1月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−152262
【出願日】平成5年(1993)6月23日
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)