説明

磁気記録又は再生装置、磁気記録又は再生装置の制御方法、及びキャプスタン軸のクリーニング方法

【課題】簡便にキャプスタン軸のクリーニングができるようにする。
【解決手段】クリーニングテープ2aをピンチローラ28とキャプスタン軸34との間に挟み、キャプスタン軸34の発生する回転駆動力によってクリーニングテープ2aが走行しないように巻取り側リール41をロックして、ピンチローラ28を押圧しながらキャプスタン軸34を回転駆動してクリーニングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録又は再生装置、磁気記録又は再生装置の制御方法、及びキャプスタン軸のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録テープを用いた磁気記録装置又は磁気再生装置(磁気記録又は再生装置)さらには、磁気記録テープを用いて記録と再生の両方が可能とされる磁気記録及び磁気再生装置(磁気記録及び再生装置)は、産業機器の分野、民生機器の分野で広く用いられている。これらの磁気記録装置は記録用の磁気ヘッドを用いて、磁気記録テープに情報に応じた磁化を施す。その後、磁気再生装置では、再生用の磁気ヘッドを用いて、この磁化に応じた情報を再生できるようにされている。また、磁気記録テープと磁気ヘッドとの運動に注目するならば、磁気ヘッドが運動しない固定磁気ヘッド磁気記録装置(固定磁気記録装置)、固定磁気ヘッド磁気再生装置(固定磁気再生装置)と、磁気ヘッドが運動する回転磁気ヘッド磁気記録装置(回転磁気記録装置)、回転磁気ヘッド磁気再生装置(回転磁気再生装置)との両方が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。このような磁気記録装置、磁気再生装置では、従来から、磁気テープの走行系に付着した磁性粉やバインダ等の汚れが記録再生特性の劣化を引き起こすことが周知事実として知られている。
【0003】
特に、磁気ヘッドに付着する磁性粉等の汚れは、ヘッドクロッグとして記録再生特性に重大な悪影響を与えるため、種々の対策が講じられている。例えば、磁気記録テープに替えてクリーニングテープを定期的に走行させることで、付着物の生成、成長を抑えている(例えば、特許文献2を参照)。クリーニングテープは研磨材の一種であり、付着物と擦れることで効果を発揮する。このようにして、磁気ヘッドの汚れに対してはクリーニングテープを用いるクリーニングの効果は大きかった。
【0004】
磁気記録装置、磁気再生装置では、磁気ヘッドに加えて、重要な機構部品としてキャプスタンモータに固着されたキャプスタン軸が採用されている。キャプスタン軸は、磁気記録テープを精密に移動させるために用いられる部品であり、キャプスタン軸に磁性粉等の汚れが付着した場合にも記録再生特性に悪影響を与える。ここで、一般的には、キャプスタン軸は磁気記録テープに対して滑らないことを前提として設計されているので、キャプスタン軸のクリーニングを行うためにクリーニングテープを走行させても、キャプスタン軸とクリーニングテープとの両者は擦れることがないため、クリーニング効果はほとんど得られないことが多かった。
【0005】
そして、キャプスタン軸のクリーニングが適切に行われない場合には、キャプスタン軸に様々な付着物が堆積する結果となり、この付着物の一部が剥がれて磁気記録テープに転写する事態も生じていた。さらに、磁気記録テープに転写された付着物を運搬する磁気テープが磁気ヘッドと接触する際に、付着物が磁気ヘッドに付着してしまうことによって記録再生特性が大きく害される場合があった。また、脱落した磁性粉等の付着物が磁気テープの走行系に再付着すると、形成される磁気テープトラック(磁気テープパス)が曲がるなどして、記録再生系の特性に別の面から悪影響を与える場合もあった。
【0006】
定期的にユーザーがキャプスタン軸をクリーニングしてこのような事態の発生を防止することも考えられる。しかしながら、近年の装置では、装置が小型化された結果として、装置内に機構部品が密集して配されており一般のユーザーが容易にキャプスタン軸をクリーニングすることが困難となっている。そのためにキャプスタン軸をクリーニングする何らかの機構を備えない場合には、最終的に記録再生特性の劣化が進み、装置の故障としてサービスセンターなどに運ばれる結果となり、装置の筐体からキャプスタン軸を露出させて初めてクリーニングが行われ、それによって本来の記録再生特性を回復できる場合も多かった。
【0007】
この点に鑑み、キャプスタン軸のクリーニングを行うための機構がいくつか提案されている。これらの手法は、キャプスタン軸に対してクリーニング部材を押圧して磁性粉等の汚れを清掃するものである(例えば、特許文献3、特許文献4を参照)。
【特許文献1】特開2005−267796号公報
【特許文献2】特開2002−63705号公報
【特許文献3】特開2000−48425号公報
【特許文献4】特開2000−268439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述するようなクリーニング部材をキャプスタン軸に押圧する手法を採用する場合には、近年の磁気記録装置、磁気再生装置の小型化の要求と矛盾することとなってしまう場合が多い。すなわち、クリーニング部材を押圧する機構の適切な格納場所を見出すことが困難な場合が多くなっている。
【0009】
本発明は、係る課題を解決して、簡便にキャプスタン軸のクリーニングができるようにした磁気記録装置、磁気再生装置、及びこれらの装置の制御方法、並びにキャプスタン軸のクリーニング方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の磁気記録又は再生装置は、磁気記録テープに情報を記録し、又は磁気記録テープから情報を再生するための磁気ヘッドを有する磁気記録又は再生装置において、前記磁気テープを走行させる回転駆動力を発生させるキャプスタン軸と、前記磁気テープを間に配して前記キャプスタン軸に押圧力を付与するピンチローラと、前記磁気テープを巻回するリールと、前記キャプスタン軸の前記回転駆動力の大きさと前記ピンチローラの前記押圧力の大きさと前記リールの回転とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記磁気テープに替えて、前記キャプスタン軸と接する面に研磨剤を配したクリーニングテープを用いた場合において、
前記キャプスタン軸の発生する前記回転駆動力によって前記クリーニングテープが走行しないように前記リールの回転を係止し、前記ピンチローラを押圧しながら前記キャプスタン軸を回転駆動する制御を行うようにした。
【0011】
本発明の磁気記録又は再生装置の制御方法は、磁気記録テープに情報を記録し、又は磁気記録テープから情報を再生するための磁気ヘッドを有する磁気記録又は再生装置の制御方法において、前記磁気テープに替えて、前記キャプスタン軸と接する面に研磨剤を配したクリーニングテープを用い、前記クリーニングテープをキャプスタン軸とピンチローラとで挟み込み、前記クリーニングテープが前記キャプスタン軸の回転駆動力によって走行しないように前記クリーニングテープが巻回されたリールを係止し、前記ピンチローラを前記磁気テープに押圧しながら前記キャプスタン軸を回転駆動するようにした。
【0012】
本発明のキャプスタン軸のクリーニング方法は、磁気記録テープに情報を記録し、又は磁気記録テープから情報を再生するための磁気ヘッドと、前記磁気記録テープと前記磁気ヘッドとの相対速度を所定速度とするために前記磁気記録テープを間に介して互いに対抗するキャプスタン軸とピンチローラと、を備える磁気記録又は再生装置のキャプスタン軸のクリーニング方法において、前記磁気テープに替えて、研磨材を前記キャプスタン軸と接する面に配したクリーニングテープを用い、前記クリーニングテープが前記キャプスタン軸の回転駆動力によって走行しないように前記クリーニングテープの一端を係止し、前記キャプスタン軸を回転し、前記クリーニングテープを間に介してのキャプスタン軸とピンチローラとの間に押圧力を加えるようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明の磁気記録又は再生装置、本発明の磁気記録又は再生装置の制御方法、本発明のキャプスタン軸のクリーニング方法では、クリーニングテープを用いて、記録再生に必要とされる機構部材を用いて簡便にキャプスタン軸のクリーニングができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施形態の磁気記録又は再生装置、実施形態の磁気記録又は再生装置の制御方法、実施形態のキャプスタン軸のクリーニング方法についての最良の形態を第1実施形態ないし第3実施形態として以下に説明をする。以下の説明においては、磁気記録装置を例にして説明するが、磁気再生装置、磁気記録再生装置においても、実施形態の各々は実施できるものであり、磁気記録装置で代表して説明をする。なお、磁気記録装置と磁気再生装置との違いは主として、その回路部に違いがあり、機構部の構成にはほとんど違いがなく、第1実施形態ないし第3実施形態の各々は通常の記録再生に用いられる磁気記録テープに替えてクリーニングテープを用いる点を特徴とするので、回路部が記録の動作をするか再生の動作をするかは、実施形態の説明においては重要ではない。なお、上述した磁気記録装置、磁気再生装置、磁気記録再生装置のすべて含む用語としては、磁気記録および/または再生装置の用語も用いられる。
【0015】
実施形態の要部は、キャプスタン軸とピンチローラとの間にクリーニングテープを配して、クリーニングテープが走行しないように係止し、キャプスタン軸とピンチローラとの間に押圧力を付与しながらキャプスタン軸を回転させる点である。この様にしてクリーニングテープとキャプスタン軸とを相対的に擦り合わせて、クリーニングテープの研磨剤を配した面によってキャプスタン軸の付着物を除去することができる。実施形態の磁気記録又は再生装置においてはこのようにしてクリーニングを可能とする機構部を備え、実施形態の磁気記録又は再生装置の制御方法においてはこのようにしてクリーニングを可能とする機構部を所定手順で制御し、実施形態のキャプスタン軸のクリーニング方法においては、このような手順でクリーニングを行うものである。
【0016】
第1実施形態、第2実施形態は、回転磁気ヘッドを用いる磁気記録装置(磁気再生装置でもほぼ同様であるので、磁気記録装置で代表して説明する)に関し、第2実施形態は固定磁気ヘッドを用いる磁気記録装置(磁気再生装置でもほぼ同様であるので、磁気記録装置で代表して説明する)に関するものである。以下、図面を参照しながら、第1実施形態ないし第3実施形態を説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1を参照して実施形態の磁気記録装置の機構部の説明をする。図1に示す機構部を有する磁気記録装置は、DAT、8mmビデオ機器に用いられており、回転磁気ヘッド(図1には図示せず)を有する回転磁気記録装置として構成されている。また、この回転磁気記録装置は、図示しない回路部を備えており、図1に示す機構部と図示しない回路部とが協調動作をすることによって、磁気テープに情報を記録し、磁気テープに記録された情報を再生することができるようになされている。
【0018】
図1に示す機構部は、固定シャーシ20と、固定シャーシ20上に配置された移動シャーシ11との2つに分離されたベースの上に各々機構部品が配置されている。移動シャーシ11は、ステンレス板等の金属板によって構成されており、周辺部を一体的に折曲げ加工した複数のリブで補強し、精度の高い水平な平面板に加工されている。また、移動シャーシ11には、前後左右の4箇所に、磁気記録テープを格納したテープカセットが挿入/排出される方向(前後方向)に延びる長孔形状のガイド孔14が互いに平行になるように配設されて、移動シャーシ11が固定シャーシ20に接して滑らかに滑るようになされている。この移動シャーシ11には、供給側リール台13aと巻取り側リール台13bとからなる左右一対のリール台が回転自在に取り付けられている。
【0019】
この移動シャーシ11の前端側には、テープカセットから引き出された磁気テープ2(図2〜図5を参照)をガイドするためのガイドレール18aとガイドレール18bとで形成される一対のガイドレールがそれぞれ水平に設けられている。ガイドレール18a、ガイドレール18bは、移動シャーシ11に、例えば、ポリアセタール樹脂等の合成樹脂によってアウトサート成形したものである。
【0020】
また、固定シャーシ20は、アルミニウム板等の金属板で構成されている。この固定シャーシ20の前端側の上部には、回転磁気ヘッドが配設されたドラム3がアルミニウム等の金属で構成されたドラム基台(図示せず)を介して取り付けられている。このドラム3は、例えば、上ドラムが回転するように構成され、下ドラムはドラム基台上に固定して配設されている。このドラム3は、例えば、固定シャーシ20の水平面に対して傾斜角θだけ傾斜させて取り付けられている。
【0021】
固定シャーシ20の上部には、前後左右の4箇所にガイドピン21が固着されている。これら4つのガイドピン21は、それぞれ移動シャーシ11のガイド孔14を貫通し、各ガイドピン21の上端は、テープカセット装着部と係合させている。これによって、テープローディング機構では、テープカセットの着脱の移動に伴って矢印aで示す方向に移動シャーシ11を自在に動かしている。
【0022】
また、装着されたテープカセット内から、磁気テープ2を引き出して、磁気テープ2と摺接させながらガイドレール18a、ガイドレール18bに設けられた溝に沿って移動する複数の引出しポストが立設された傾斜ガイドブロック22、傾斜ガイドブロック23が設けられている。傾斜ガイドブロック22には、この複数の引出しポストとして回転ローラを有する回転ガイド22aと固定ピンを傾斜させた傾斜ガイドポスト22bが立設されている。また、同様にして、傾斜ガイドブロック23には、この複数の引出しポストとして回転ローラを有する回転ガイド23aと固定ピンを傾斜させた傾斜ガイドポスト23bが立設されている。
【0023】
傾斜ガイドブロック22は、ガイドレール18aと摺動部を係合させ、傾斜ガイドブロック23は、ガイドレール18bと摺動部を係合させ、駆動力の供給によって摺動して移動するが行われる。このようにして、傾斜ガイドブロック22、傾斜ガイドブロック23は、磁気テープ2をテープカセットから引き出すローディングの動作、磁気テープ2をテープカセットに収納するアンローディングの動作を行う。
【0024】
テンション検出ピン24は、テンションアーム25上に立設させられている。このテンションアーム25は、回動軸26を中心に回動自在に回動する。このテンションアーム25がテンション検出ピン24と傾斜ガイドブロック22との当接により回動させられる。このテンションアーム25は、例えば、引張りコイルバネ等による付勢力によって磁気テープ2と当接させる方向に付勢させられており、記録再生の動作時点においては磁気テープのテンションを適正に保つための制御におけるテンション検出機構として機能する。
【0025】
また、巻取り側リール41には、テープ引出しピン27が、ローディング操作に伴って供給される駆動力によって、回動軸29を中心に自在に回動可能なように取り付けられたアーム31に配されている。また、巻取り側リール41には、ピンチローラ28が、ローディング操作に伴って供給される駆動力によって、回動軸30を中心に自在に回動可能なように取り付けられたアーム32に配されている。キャプスタン軸34はキャプスタンモータの回転軸に固着されて回転可能とされ、キャプスタンモータは固定シャーシ20に固着されている。
【0026】
このような図1に示す機構部によって、移動シャーシ11が矢印aで示す方向に押し込まれるに従って、ローディング操作を行いながら磁気テープ2がドラム3に巻き付くように引き出されていく。ここで、移動シャーシ11を矢印aで示す方向に押し込むための駆動力はローディング/アンローディング部に配されたローディング/アンローディングモータによって与えられる。
【0027】
テープカセットから磁気テープ2を引き出してドラム3に対して記録再生可能状態となるように磁気テープ2を配置するローディング完了状態から磁気テープ2をテープカセット内に収納するアンローディング操作は、逆の動きであり、上述したようにローディング/アンローディングモータを正方向、又は、逆方向に回転させて、この回転力で機構部の位置を変化させることによって行われる。
【0028】
図2ないし図5を参照して、アンローディングからローディングに至る過程、ローディングからアンローディングに至る過程の各々を順に説明をする。本実施形態においては、ピンチローラ28とキャプスタン軸34との位置関係が重要であるので、この点を中心に説明をする。すなわち、キャプスタン軸34は固定シャーシ20に固着されたキャプスタンモータの回転軸と回転中心が一致しているので、その位置は移動することはない。一方、ピンチローラ28は、ローディングモータによって、移動シャーシ11が矢印aで示す方向に押し込まれるに従って、キャプスタン軸34に対する位置を変化させる。
【0029】
図2は、テープカセット中の磁気テープ2を引き出す前のアンローディング状態である。このときには磁気テープ2とドラム3とは全く接触しておらず、また、ピンチローラ28とキャプスタン軸34との離間距離も大きい。
【0030】
図3は、磁気テープ2とドラム3とが略接触した直後の各構成部品の配置を示す図である。磁気テープ2は、傾斜ガイドブロック22と傾斜ガイドブロック23とによってドラム3の方向へ磁気テープ2は引き出されるが、ピンチローラ28とキャプスタン軸34との離間距離もまだ大きく、ピンチローラ28とキャプスタン軸34とのいずれも磁気テープ2とは接触していない。
【0031】
図4は、磁気テープ2とドラム3とが略接触した後、磁気テープ2がドラム3にローディングされるまでの間における各構成部品の配置を示す図である。傾斜ガイドブロック22と傾斜ガイドブロック23とによってドラム3の方向へ磁気テープ2はさらに引き出されるが、ピンチローラ28とキャプスタン軸34との離間距離もまだ大きく、ピンチローラ28とキャプスタン軸34とのいずれも磁気テープ2とは接触していない。
【0032】
図5は、磁気テープ2がドラム3にローディングされた状態を示すものである。磁気テープ2は、所定の巻き付け角(ラップ角)でドラム3に摺接させられている。また、ピンチローラ28とキャプスタン軸34とで磁気テープ2を挟みこむようにして、磁気テープ2は、正確な速度で移動できるようになされている。また、テンション検出ピン24の作用によって、供給側リール40を回転させる図示しない供給モータのトルクを適宜に調整して所定のテンションを有して、磁気テープ2が所定の巻き付け角を有してドラム3に摺接させられるようにしている。
【0033】
ローディングからアンローディングに至る過程は、図5に示す状態から、図2に示す状態へと時間の経過にしたがって、各機構部品の配置が変化する過程である。
【0034】
図2に示すアンローディング状態では、ドラム3から完全に磁気テープ2が離れており、再生又は録画モード以外の早送りモードあるいは巻戻しモードでは、ローディング完了状態からアンローディング操作を行ってローディング前の状態に戻した後にテープ走行させるので、この方式の磁気記録再生装置は、安全に高速のテープ走行を行わせることができるようになされている。
【0035】
実施形態のキャプスタン軸34のクリーニング方法では、図5に示すローディング完了状態の近傍で機構部を使用するものである。ここで、近傍の意味内容は、以下の説明において明らかにされる。
【0036】
図6は、図1に示す機構部をどのように制御するかを示す機構制御系のブロック図であり、実施形態のクリーニング方法をどの様にして実施するかを概念として説明するための図である。なお、図6においては、実施形態の制御方法、クリーニング方法の説明をするに十分な範囲のみが記載されており、記録再生のための回路部等は、記載されていない。
【0037】
図6に示す機構部の符号は図1ないし図5において同一符号を付した構成部と同一であるので、同一符号を付した各部については、その説明を省略する。符号200はテープカセットである。
【0038】
ドラム駆動制御部42はドラム3を回転させるためのドラムモータ、ドラムモータに電力を供給する回路部、記録再生のための磁気ヘッド、記録のために磁気ヘッドに電流を供給する回路、磁気テープに記録された情報を磁気ヘッドで検出するための回路等を含んでいる。さらには、磁気ヘッドの回転角度を検出するための角度検出器を備える場合もある。
【0039】
キャプスタン軸駆動部43は、キャプスタン軸を回転させるためにキャプスタン軸34の回転中心とその回転子の回転中心とが一致するようにして、回転子を回転させるキャプスタンモータ、このキャプスタンモータに印加される電圧であるモータ印加電圧Vmを検出する回路部、キャプスタンモータに電力を供給する回路部、キャプスタンモータの回転角度を検出するレゾルバ(回転位置検出器)、回転角速度を検出する(角速度検出器(FG))を含んでいる。
【0040】
ローディング/アンローディング部44は、図5に示すようなローディング完了状態であることを検出するためのセンサー、図2に示すアンローディング状態であることを検出するためのセンサー、テープカセットが挿入/排出されたことを確認するためのセンサー、ローディング/アンローディングのための駆動力を与えるためのローディング/アンローディングモータ、このローディング/アンローディングモータを駆動するための電力を供給する回路部等を含んでいる。
【0041】
機構系制御部46は、CPU(中央演算装置)をその中心となる電気部材として含み、CPUと、各部、すなわち、ドラム駆動制御部42、キャプスタン軸駆動部43、ローディング/アンローディング部44、供給側リール駆動部47、巻取り側リール駆動部48及びテンション検出部49とは、機構系制御部46のインターフェイス回路を介して接続されるようになされている。機構系制御部46には、また、CPUを機能されるためのプログラムを格納した記憶装置も含まれている。
【0042】
供給側リール駆動部47は、供給側リール40の回転軸の回転中心とその回転子の回転中心とが一致するように取り付けられた供給側モータを含んでいる。供給側モータは通常の記録再生においては磁気テープの進行方向とは逆方向に付勢をする。また、供給側モータを駆動するための電力を供給する回路部等を含んでいる。
【0043】
巻取り側リール駆動部48は、巻取り側リール41の回転軸の回転中心とその回転子の回転中心とが一致するように取り付けられた巻取り側モータを含んでいる。巻取り側モータは通常の記録再生においては磁気テープの進行方向に付勢をする。また、巻取り側モータを駆動するための電力を供給する回路部等を含んでいる。
【0044】
テンション検出部49は、ドラム3に対して(記録再生時においてはエアーフィルムを介して)、磁気テープを押圧するテンションを検出する。そして、このテンションの値が所定値となるように、供給側リール駆動部47のトルクを制御している。
【0045】
図7は、実施形態のキャプスタン軸のクリーニング方法を説明するための模式図である。また、図8は機構系制御部46を中心としたキャプスタン軸のクリーニングの手順を示すフローチャートである。図1〜図8を参照しながら、機構系制御部46がどのように各機構部を制御してキャプスタン軸のクリーニングを行うかについて説明をする。
【0046】
まず、クリーニング専用のテープカセット200を回転磁気記録装置のカセット挿入口に挿入することで処理はスタートする。
テープカセット200にはクリーニングテープ2aが各々のリールに巻回されて装着されている。クリーニングテープ2aのキャプスタン軸に接触する面は研磨剤を含有する面で形成されている。研磨剤は通常のクリーニングテープに用いるものと同様の材料である。
【0047】
ステップST100では、機構系制御部46は、テープカセット200のカセット挿入口への挿入を検出する。
また、クリーニング回数カウンター(ソフトウエアで形成されるカウンタ)の設定値Ncの値を、Nc=0に設定する。
【0048】
ステップST101では、機構系制御部46は、ローディング/アンローディング部44を制御して、ローディング完了状態とする。
ローディング完了状態とは、図5に示す状態であり、各機構部の配置、磁気テープ2の配置を記録再生可能な配置とする状態である。
【0049】
ステップST102では、機構系制御部46は、巻取り側リール駆動部48を制御して巻取り側リール41をロックする。
ここで、ロックとは巻取り側リール41が回転しないように固定する操作をいうものである。具体的なロックの動作は、例えば、巻取り側のモータが2相、3相の同期モータである場合には、複数の巻き線からなる固定子の一の相にのみ電流を流すか、又は、全相に電流を流して、永久磁石からなる回転子との間に働く電磁力によって、回転子と固定子との位置関係を固定するようにすることができる。
【0050】
ステップST103では、機構系制御部46は、キャプスタン軸駆動部43を制御して、キャプスタン軸34を逆方向に回転(逆回転)させる。
また、クリーニング時間カウンター(ソフトウエアで形成されるカウンタ)の値Tcを、Tc=0に設定する。
このときのキャプスタン軸34の逆回転の角速度は通常の記録再生におけるキャプスタン軸34の角速度の10倍程度に設定している。角速度はキャプスタン軸駆動部43に設けられた角速度検出器(FG等)で検出されフィードバック系の作用によって一定回転が維持される。
クリーニング時間カウンターは、機構系制御部46のCPUの内部のハードウエアタイマーカウンタであり、CPUのクロックに同期して一定時間毎にタイマーカウンタの値がインクリメントするようになされている。
【0051】
ここで、キャプスタン軸34を逆方向に回転させるとは、キャプスタン軸34の回転方向を通常の記録再生における方向とは逆向き(図7の矢印fの方向)に回転させることをいうものである。なお、通常の記録再生においては、磁気テープ2を供給側リール40から巻取り側リール41に移動させるようにキャプスタン軸34を回転(正回転)させるようになされている。また、キャプスタン軸34の回転の角速度を10倍程度としたのは、クリーニングテープ2aの研磨剤の特性との関係で、最もクリーニング効果が高い角速度を実験的に求めた結果に基づくものであり、研磨剤の特性が異なれば、この角速度の最適点も異なるものである。
【0052】
ステップST104では、機構系制御部46は、キャプスタン軸駆動部43を制御してキャプスタン軸34が一定の角速度で逆回転するようにして、このときのキャプスタンモータのモータ印加電圧Vmを検出する。
なお、モータ印加電圧Vmの大きさは、キャプスタンモータが直流モータである場合には逆回転と正回転とではその極性が異なるので、ここでは、モータ印加電圧Vmはその絶対値であり、2相モータ、3相モータの場合には、モータ印加電圧Vmはその実効値としている。
ここで、一定の角速度の大きさは、上述したように通常の記録再生時におけるキャプスタン軸34の角速度の10倍程度である。
なお、ステップST104の処理は、キャプスタンモータからのFG割込みより処理が開始され、各FG割り込みの周期が目的の回転数から求まる周期と一致するようサーボを掛けることで、フィードバック系の安定性を保っている。
【0053】
ステップST105では、機構系制御部46は、モータ印加電圧Vmが予め定めた所定電圧Vc以下であるか否かを判断する。
所定電圧Vcをどのようにして設定するかについては後述する。
ステップST105での判断結果が、モータ印加電圧Vm<所定電圧Vcである場合(Yes)には処理はステップST107へ移り、
ステップST105での判断結果が、モータ印加電圧Vm<所定電圧Vcではない場合(No)には処理はステップST106へ移る。
【0054】
ステップST106では、機構系制御部46は、ローディング/アンローディング部44を制御して、クリーニングテープ2aを介してのピンチローラ28とキャプスタン軸34との押圧力を低減させる。
すなわち、この押圧力を低減させることによってクリーニングテープ2aとキャプスタン軸34との間に生じる摩擦力を低減させる。
ここで、ピンチローラ28とキャプスタン軸34との押圧力の低減は、図5に示すローディング完了状態と図4に示すローディング前の状態との中間の位置とすることによって行うことができる。図4に示す状態に近づくほどピンチローラ28とキャプスタン軸34との離間距離が大きくなり押圧力は低減することとなる(図7の矢印hの方向に傾斜ガイドブロック22が移動し、矢印gの方向に傾斜ガイドブロック23が移動し、矢印eの方向にピンチローラ28は移動する)。
【0055】
ステップST107では、機構系制御部46は、ローディング/アンローディング部44を制御して、クリーニングテープ2aを介してのピンチローラ28とキャプスタン軸34との間の押圧力を増加させる。
すなわち、この押圧力を増加させることによってクリーニングテープ2aとキャプスタン軸34との間に生じる摩擦力を増加させる。
ここで、ピンチローラ28とキャプスタン軸34との間の押圧力は、図5に示すローディング完了状態において通常の記録再生を行う場合よりも小さなものに設定される。このように設定しないとクリーニングテープ2aとキャプスタン軸34との間の摩擦力を高めている実施形態では、クリーニングテープ2aがテープカセットから無理に引き出され、又は、傾斜ガイドブロック22又は傾斜ガイドブロック23からクリーニングテープ2aが脱落する虞が生じるからである。したがって、ピンチローラ28とキャプスタン軸34との押圧力の増加は、図5に示すローディング完了状態に至る以前の位置で、ピンチローラ28とキャプスタン軸34との押圧力を増加させる(図7の矢印eの方向へ移動して押圧力を増加させる)ことができる。
【0056】
ステップST108では、機構系制御部46は、クリーニング時間カウンターの値Tcが予め定める所定値Te以上であるか否かを判断する。
そして、クリーニング時間カウンターの値>所定値Teである場合(Yes)には処理はステップST109へ移り、クリーニング時間カウンターの値>所定値Teではない場合(No)には処理はステップST104へ戻り、クリーニングを続ける。
【0057】
ここで、クリーニング時間カウンターの値は、上述したようにステップST103で0に設定した以降は、各ステップにおける処理とは無関係にハードウエアによって規則正しく時間の経過に伴ってそのカウント値を増加させているので、ステップST103の処理からの経過時間をステップST108では検出して、クリーニング時間カウンターの値>所定値Teあるか否かを判断することができる。
なお、所定値Teによって設定されるクリーニング時間は、実験結果によれば、短い場合にはクリーニングの効果が少なく、長すぎる場合にはクリーニングテープ2aの研磨剤の研磨作用が低下してしまうので、2秒から5秒の範囲が最もクリーニング効果が高かったので、この範囲に設定している。クリーニングテープ2aの研磨剤の特性に応じてこの時間の最適値は定められるものである。
【0058】
そして、クリーニング時間カウンターの値>所定値Teである場合(Yes)には処理はステップST109へ移り、クリーニング時間カウンターの値>所定値Teではない場合(No)には処理はステップST104へ戻り、クリーニングを続ける。
【0059】
ここで、上述したステップST104からステップST108の処理の内容の要点を以下にまとめる。
(1)クリーニングテープ2aとキャプスタン軸34との間の摩擦力が小さい場合にはクリーニング効果を発揮することができず、摩擦力が大きい場合にはキャプスタン軸34が摩耗する虞もあり、また、研磨剤が短時間で消耗されクリーニングが効果的に行われない場合も多いので、実験で求められた最も適切な値に摩擦力を維持することが望ましい。
(2)この、停止しているクリーニングテープ2aとキャプスタン軸34との間の摩擦力は、ピンチローラ28とキャプスタン軸34との押圧力を大きくする程大きくなり、ピンチローラ28とキャプスタン軸34との押圧力を小さくする程小さくなる。
(3)この摩擦力が大きくなる程キャプスタン軸34の機械的な負荷は大きくなって、キャプスタン軸34を一定回転させる場合にはキャプスタンモータのモータ印加電圧Vmの値は大きくなり、摩擦力が小さくなる程キャプスタンモータのモータ印加電圧Vmの値は小さくなる。
(4)よって、クリーニングテープ2aとキャプスタン軸34との間の最も望ましい摩擦力を得る場合におけるキャプスタンモータの印加電圧である所定電圧Vcの値を予め求めておき、キャプスタンモータのモータ印加電圧Vmが所定電圧VcとなるようにステップST104からステップST108で繰り返し、フィードバック制御をおこなっている。
【0060】
なお、このステップST104からステップST108の処理を行っている間において、フローチャートには記載していないが機構系制御部46は、以下の処理を同時に行うのがより望ましい。
(1)機構系制御部46は、供給側リール駆動部47を制御してクリーニングテープ2aが弛まないように、供給側リール40を矢印iで示す方向(図7を参照)に付勢する。
この場合の付勢の力は0.5g(グラム)程度として、通常の記録再生における5gの1/10程度としている。0.5gとする設定は、テンション検出部49によってテンションを0.5gとするフィードバック制御を行っても良く、また、0.5gの付勢をするに適当なる予め定める電圧を供給側モータに供給するようにしても良い。このようにして、磁気ヘッドとクリーニングテープ2aとの押圧力を小さくし磁気ヘッドへのクリーニングテープ2aの押圧の悪影響を低減している。
(2)機構系制御部46は、ドラム駆動制御部42を制御して、ドラム3の回転を停止する。
ドラム3の回転を停止することによって、ドラム3に配された磁気ヘッドとクリーニングテープ2aとが摩擦して磁気ヘッドが不要に研磨されないようにするためである。
【0061】
ステップST109では、機構系制御部46は、キャプスタン軸駆動部43を制御してキャプスタン軸34の回転を停止する。また、機構系制御部46は、ローディング/アンローディング部44を制御して、ピンチローラ28とキャプスタン軸34との離間距離を広げる。
キャプスタン軸34の回転を停止し、キャプスタン軸34とクリーニングテープ2aとの間に生じる摩擦力を小さくすることによって、ステップST111で示す次の動作に移る過渡期において、クリーニングテープ2aが不用意に移動して磁気ヘッドに接触して損傷を与えるのを避けるためである。
【0062】
ステップST110では、クリーニング回数カウンターの設定値Ncの値を1インクリメントする。
【0063】
ステップST111では、機構系制御部46は、以下の動作を略同時に行って、クリーニングテープ2aの新しい面(クリーニング動作によって研磨されていない面)がキャプスタン軸34に接するようにクリーニングテープ2aを送る。
(1)ローディング/アンローディング部44を制御して、ローディング完了状態とする(ピンチローラ28とキャプスタン軸34との離間距離も小さくされる)。
(2)キャプスタン軸駆動部43を制御してキャプスタン軸34の回転を正回転とする(回転速度は通常の記録再生と同じ)。
(3)テンション検出部49からの信号を用いて供給側リール駆動部47を制御して通常の記録再生時と同様のテンション制御を行う。
(4)巻取り側リール駆動部48を制御して巻取り側リール41にクリーニングテープ2aを巻き取る。
【0064】
ステップST112では、機構系制御部46は、クリーニング回数カウンターの値Ncが所定値Nfであるか否かを判断する。
クリーニング回数カウンターの値Ncが所定値Nfである場合(Yes)には、所定の回数であるNf回のクリーニングが行われた場合であるので処理はステップST113へ移り、
クリーニング回数カウンターの値Ncが所定値Nfでない場合(No)には、所定の回数のクリーニングが行われていないので処理はステップST102へ戻る。
【0065】
ステップST113では、機構系制御部46は、ローディング/アンローディング部44を制御して、アンローディング状態とした後、テープカセット200をカセット挿入口から排出する。そしてクリーニングの処理は終了する。
【0066】
第1実施形態では、クリーニングテープ2aとキャプスタン軸34との摩擦力を利用してキャプスタン軸34のクリーニングを行うことを特徴としている。このときに、走行を停止させられたクリーニングテープ2aと一定の角速度で回転するキャプスタン軸34との間の摩擦力を一定の大きさとすることによって、最も効率よく、かつ、キャプスタン軸34に損傷を与えることなくクリーニングを行っている。ここで、最も良好な摩擦力は、クリーニングテープ2aの研磨剤の特性、キャプスタン軸34の回転の角速度に応じて、実験から求められるものである。そして、この最も良好な摩擦力を得るために、クリーニングテープ2aを介在させたピンチローラ28とキャプスタン軸34との押圧力を調整しているが、この場合の押圧力の調整は、ローディング/アンローディングの動作に際して必要とされる各機構部の動きを利用しており、特別な追加の機構部品を必要とせず、ローディング/アンローディング部44、ドラム駆動制御部42、キャプスタン軸駆動部43、供給側リール駆動部47、巻取り側リール駆動部48の各部を制御する機構系制御部46のCPUの制御処理の内容(ソフトウエアに依存する内容)を変更するだけで容易に実施形態のクリーニング方法の実施が可能である。具体的には、移動シャーシ11の移動にともなってクリーニングテープ2aをテープカセット200から引出してキャプスタン軸34とピンチローラ28との間に配する傾斜ガイドブロック22と、傾斜ガイドブロック23とを有して、移動シャーシ11の移動量、傾斜ガイドブロック22、傾斜ガイドブロック23、の位置、及びピンチローラ28とキャプスタン軸34との離間距離をローディング/アンローディング部44によって制御して、ピンチローラ28の押圧力を制御している。
【0067】
また、第1実施形態では、クリーニングテープ2aの一箇所でキャプスタン軸34の研磨を続けると研磨力が低下するために、ピンチローラ28を押圧しながらキャプスタン軸34の回転駆動を所定時間持続した後には、供給側リール40と巻取り側リール41とを回転させて、クリーニングテープ2aの未だキャプスタン軸34に接触していない新しい面がキャプスタン軸34と接触するようにクリーニングテープを走行させている。そして、新しい面によって再びキャプスタン軸34を研磨している。
【0068】
また、第1実施形態では、ピンチローラ28の発生する押圧力をクリーニングに最も適した所定押圧力とするために、キャプスタンモータに印加される電圧が所定電圧値となるように、ピンチローラ28の発生する押圧力を制御している。また、この場合において、ピンチローラ28の発生する押圧力を通常の記録再生の動作を行う場合と等しくすると、クリーニングテープ2aが走行しないようにロック(係止)されている巻取り側リール41からクリーニングテープ2aが引き出され、または、傾斜ガイドブロック22または傾斜ガイドブロック23からクリーニングテープ2aが脱落し、さらには、巻取り側リールを回転させる巻取り側モータが加熱する虞があるので、所定押圧力は記録再生時よりも小さくされている。
【0069】
また、第1実施形態では、キャプスタン軸34は、ドラム3に配された磁気ヘッドに対して、クリーニングテープ2a(磁気テープ)が係止されない場合に走行する方向のより手前に配置されている(すなわち、クリーニングテープ2aの走行経路に沿って、係止(ロック)された巻取り側リール41、キャプスタン軸34、ドラム3に配された磁気ヘッドの順に配置されている)ので、クリーニングテープ2aの磁気ヘッドに対する押圧力を小さなものとできる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、上述した図1に示す回転磁気記録装置の機構部、図6に示す機構制御系のブロック図を参照して第2実施形態について説明をする。
【0071】
第2実施形態と第1実施形態とが異なる点は、第1実施形態においては、キャプスタン軸34を逆回転(通常の記録再生における回転方向と反対方向の回転)させてキャプスタン軸34をクリーニングしたのに対して、キャプスタン軸34を正回転(通常の記録再生における回転方向と同方向の回転)させてキャプスタン軸34をクリーニングするものである。このために、第2実施形態と第1実施形態とでは、クリーニング中のキャプスタン軸34の回転方向が異なるのみならず、各機構部の動作が異なったものとなる。
【0072】
図9は第2実施形態のクリーニングの動作を示すフローチャートである。以下、図9に示すフローチャートを参照して第2実施形態の説明を行う。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の部分については、一部の説明の省略をしている。
【0073】
ステップST200では、機構系制御部46は、テープカセット200のカセット挿入口への挿入を検出し、クリーニング回数カウンターのNcの値を、Nc=0に設定する。
【0074】
ステップST201では、機構系制御部46は、ローディング/アンローディング部44を制御して、ローディング完了状態とする。
【0075】
ステップST202では、機構系制御部46は、供給側リール駆動部47を制御して供給側リール40をロックする。なお、供給側リール40のロックは、図8のステップST102における巻取り側リール41と同様にして行うことができる。
【0076】
ステップST203では、機構系制御部46は、キャプスタン軸駆動部43を制御して、キャプスタン軸34を正方向に回転(正回転)させる。
また、クリーニング時間カウンターの値Tcを、Tc=0に設定する。
このときのキャプスタン軸34の回転の角速度は通常の記録再生におけるキャプスタン軸34の角速度の10倍程度に設定している。
【0077】
ステップST204では、機構系制御部46は、キャプスタン軸駆動部43を制御してキャプスタン軸34が一定の角速度(通常の記録再生の速度の10倍程度の角速度)で回転させ、このときのキャプスタンモータのモータ印加電圧Vmを検出する。なお、ステップST204の処理はFG割込みによって処理が開始される。
モータ印加電圧Vmの大きさは機械的な負荷が大きくなるほど大きくなり、無負荷の時のモータ印加電圧Vmの値は小さい、
【0078】
ステップST205では、機構系制御部46は、モータ印加電圧Vmが予め定めた所定電圧Vc以下であるか否かを判断する。
ステップST205での判断結果が、モータ印加電圧Vm<所定電圧Vcである場合(Yes)には処理はステップST207へ移り、
ステップST205での判断結果が、モータ印加電圧Vm<所定電圧Vcではない場合(No)には処理はステップST206へ移る。
【0079】
ステップST206では、機構系制御部46は、ローディング/アンローディング部44を制御して、クリーニングテープ2aを介してのピンチローラ28とキャプスタン軸34との押圧力を低減させる。
【0080】
ステップST207では、機構系制御部46は、ローディング/アンローディング部44を制御して、クリーニングテープ2aを介してのピンチローラ28とキャプスタン軸34との押圧力を増加させる。
【0081】
ステップST208では、機構系制御部46は、クリーニング時間カウンターの値Tcが予め定める所定値Te以上であるか否かを判断する。
クリーニング時間カウンターの値>所定値Teである場合(Yes)には処理はステップST209へ移り、クリーニング時間カウンターの値>所定値Teではない場合(No)には処理はステップST204へ戻り、クリーニングを続ける。
【0082】
そして、クリーニング時間カウンターの値>所定値Teである場合(Yes)には処理はステップST109へ移り、クリーニング時間カウンターの値>所定値Teではない場合(No)には処理はステップST104へ戻り、クリーニングを続ける。
【0083】
なお、このステップST204からステップST208の処理を行っている間において、フローチャートには記載していないが機構系制御部46は、以下の処理を同時に行うのがより望ましい。
(1)機構系制御部46は、供給側リール駆動部47を制御してクリーニングテープ2aが弛まないように付勢する。
(2)機構系制御部46は、ドラム駆動制御部42を制御して、ドラム3の回転を停止する。
【0084】
ステップST209では、機構系制御部46は、キャプスタン軸駆動部43を制御してキャプスタン軸34の回転を停止する。また、機構系制御部46は、ローディング/アンローディング部44を制御して、ピンチローラ28とキャプスタン軸34との離間距離を広げる。
キャプスタン軸34の回転を停止し、キャプスタン軸34とクリーニングテープ2aとの間に生じる摩擦力を小さくすることによって、ステップST211で示す動作に移る過渡期において、クリーニングテープ2aが不用意に移動して磁気ヘッドに接触するのを避けるためである。
【0085】
ステップST210では、クリーニング回数カウンターの設定値Ncの値を1インクリメントする。
【0086】
ステップST211では、機構系制御部46は、以下の動作を略同時に行って、クリーニングテープ2aの新しい面(クリーニング動作によって研磨されていない面)がキャプスタン軸34に接するようにクリーニングテープ2aを送る。
(1)ローディング/アンローディング部44を制御して、ローディング完了状態とする(ピンチローラ28とキャプスタン軸34との離間距離も小さくされる)。
(2)キャプスタン軸駆動部43を制御してキャプスタン軸34の回転を正回転とする(回転速度は通常の記録再生と同じ)。
(3)テンション検出部49からの信号を用いて供給側リール駆動部47を制御して通常の記録再生時と同様のテンション制御を行う。
(4)巻取り側リール駆動部48を制御して巻取り側リール41にクリーニングテープ2aを巻き取る。
【0087】
ステップST212では、機構系制御部46は、クリーニング回数カウンターの値Ncが所定値Nfであるか否かを判断する。
クリーニング回数カウンターの値Ncが所定値Nfである場合(Yes)には、所定の回数であるNf回のクリーニングが行われた場合であるので処理はステップST213へ移り、クリーニング回数カウンターの値Ncが所定値Nfでない場合(No)には、所定の回数のクリーニングが行われていないので処理はステップST202へ戻る。
【0088】
ステップST213では、機構系制御部46は、ローディング/アンローディング部44を制御して、アンローディング状態とした後、テープカセット200をカセット挿入口から排出してクリーニングの処理は終了する。
【0089】
第2実施形態の磁気記録装置では、クリーニングテープ2aとキャプスタン軸34との摩擦力を利用してキャプスタン軸34のクリーニングを行うことを特徴としている。このときに、走行を停止させられたクリーニングテープ2aと一定の角速度で回転するキャプスタン軸34との間の摩擦力を一定の大きさとすることによって、最も効率よく、かつ、キャプスタン軸34に損傷を与えることなくクリーニングを行っている。ここで、最も良好な摩擦力は、クリーニングテープ2aの研磨剤の特性、キャプスタン軸34の回転の角速度に応じて、実験から求められるものである。そして、この最も良好な摩擦力を得るために、クリーニングテープ2aを介在させたピンチローラ28とキャプスタン軸34との押圧力を調整しているが、この場合の押圧力の調整は、ローディング/アンローディングの動作に際して必要とされる各機構部の動きを利用しており、特別な追加の機構部品を必要とせず、ローディング/アンローディング部44の制御処理の内容(ソフトウエア)を変更するだけで容易に実施形態のクリーニング方法の実施が可能である。
【0090】
第2実施形態の磁気記録装置は、第1実施形態の磁気記録装置と同様の構成を有して構成され、その効果も基本的に第1実施形態と同様である。しかしながら、差異点としては、第1実施形態ではキャプスタン軸34が磁気ヘッドに対してクリーニングテープ2aの走行方向のより手前に配置されているので、クリーニングテープ2aとドラム3に配された磁気ヘッドの間の押圧力は、供給側リール40によって発生される付勢の大きさに依存する。これに対して、第2実施形態では、クリーニングテープ2aに沿って、係止(ロック)された供給側リール40、ドラム3に配された磁気ヘッド、キャプスタン軸34の順に配置されている。そして、クリーニングテープ2aとドラムに配された磁気ヘッドの間の押圧力は、ピンチローラ28のクリーニングテープ2aに対する押圧力の大きさに依存する。そして、第1実施形態におけるクリーニングテープ2aとドラムに配された磁気ヘッドの間の押圧力の方が、より小さくできる場合が多く、磁気ヘッドの保護の観点から両者を比較する場合には、第1実施形態の方が、より、優位である場合が多い。
【0091】
なお、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせ、キャプスタン軸34のクリーニングにおいて、キャプスタン軸34の回転を逆回転とし、その後、キャプスタン軸34の回転を正回転としてクリーニングを行うこと、又は、キャプスタン軸34の回転を正回転とし、その後、キャプスタン軸34の回転を逆回転としてクリーニングを行うこと、さらには、キャプスタン軸34の回転を逆回転と正回転とに交互に切り替える動作を複数回行うことも、クリーニング効果を高める上で非常に有効である。
【0092】
(第3実施形態)
図10は固定磁気ヘッドを有する固定磁気記録装置を模式的に示す図である。テープパスは、供給側リール140、ガイドローラ121、ガイドローラ122、ガイドブローラ123、ガイドローラ125、巻取り側リール141で形成され、これらの部材に支持されて記録再生時においては磁気テープが走行し、クリーニングの動作を行う場合にはクリーニングテープ2bが走行する。
【0093】
キャプスタン軸134は固定位置で回転するようになされ、ピンチローラ128はピンチローラ移動機構によって矢印cで示す方向に移動することが可能とされている。ピンチローラ移動機構は、吸引片145a及びプランジャーコイル145bからなるプランジャー145とコイルバネ151とで形成されている。コイルバネ151によって矢印bの方向へ付勢されており、プランジャーコイル145bに電流が流されていない場合にはコイルバネ151の付勢によってピンチローラ128はクリーニングテープ2bに接触するようになされている。
【0094】
固定磁気ヘッド130は、磁気ヘッドホルダー160に装着されている。磁気ヘッドホルダー160は回動軸161を中心に回動するようにされており、回動のための駆動力は、吸引片149a及びプランジャーコイル149bからなるプランジャー149とコイルバネ150で与えられる。コイルバネ150によって矢印dの方向へ付勢されており、プランジャーコイル149bに電流が流されていない場合にはコイルバネ150の付勢によって固定磁気ヘッド130はクリーニングテープ2bに接触しないようになされている。
【0095】
機構系制御部146は、CPU(中央演算装置)をその中心となる電気部材として含み、CPUと、各部、すなわち、固定磁気ヘッド位置駆動部103、ピンチローラ駆動部104、キャプスタン軸駆動部143、供給側リール駆動部147、及び巻取り側リール駆動部148とは、機構系制御部146のインターフェイス回路を介して接続されるようになされている。機構系制御部146には、また、CPUを機能されるためのプログラムを格納した記憶装置も含まれている。
【0096】
図11は、固定磁気ヘッド記録装置におけるキャプスタン軸のクリーニングの手順を示すフローチャートである。
【0097】
ステップST300では、機構系制御部146は、固定磁気ヘッド位置駆動部103を制御して、クリーニングテープ2bと接触しないように図10の矢印eで示す方向に固定磁気ヘッド130を移動させる。
また、機構系制御部146は、ピンチローラ駆動部104を制御して、クリーニングテープ2bと接触しないように図10の矢印cで示す方向にピンチローラ128を移動させる。
【0098】
ステップST301では、操作者の手動操作により、又は、機構系制御部146が図示しないローディング機構を制御することによってクリーニングテープ2bを磁気記録装置に装着して図10に示すテープパスを形成する。
【0099】
ステップST302では、機構系制御部146は、供給側リール駆動部147を制御して供給側リール140をロックする。供給側リール140のロックは、図8のステップST102における巻取り側リール41と同様にして行うことができる。
【0100】
ステップST303では、機構系制御部146は、キャプスタン軸駆動部143を制御して、キャプスタン軸134を正方向(記録再生における方向と同方向)に回転させる。
また、クリーニング時間カウンターの値Tcを、Tc=0に設定する。
このときのキャプスタン軸134の回転の角速度は通常の記録再生におけるキャプスタン軸134の角速度の10倍程度に設定している。
【0101】
ステップST304では、機構系制御部146は、キャプスタン軸駆動部143を制御してキャプスタン軸134を一定の角速度(通常の記録再生の速度の10倍程度の角速度)で回転させ、このときのキャプスタンモータのモータ印加電圧Vmを検出する。なお、ステップST304の処理はFG割込みによって処理が開始される。
【0102】
ステップST305では、機構系制御部146は、モータ印加電圧Vmが予め定めた所定電圧Vc以下であるか否かを判断する。
ステップST305での判断結果が、モータ印加電圧Vm<所定電圧Vcである場合(Yes)には処理はステップST307へ移り、
ステップST305での判断結果が、モータ印加電圧Vm<所定電圧Vcではない場合(No)には処理はステップST306へ移る。
【0103】
ステップST306では、機構系制御部146は、ピンチローラ駆動部104を制御して、クリーニングテープ2bを介してのピンチローラ128とキャプスタン軸134との押圧力を低減させる。
【0104】
ステップST307では、機構系制御部146は、ピンチローラ駆動部104を制御して、クリーニングテープ2bを介してのピンチローラ128とキャプスタン軸134との押圧力を増加させる。
【0105】
ステップST308では、機構系制御部146は、クリーニング時間カウンターの値Tcが予め定める所定値Te以上であるか否かを判断する。
クリーニング時間カウンターの値>所定値Teである場合(Yes)には処理はステップST309へ移り、クリーニング時間カウンターの値>所定値Teではない場合(No)には処理はステップST304へ戻り、クリーニングを続ける。
【0106】
そして、クリーニング時間カウンターの値>所定値Teである場合(Yes)には処理はステップST309へ移り、クリーニング時間カウンターの値>所定値Teではない場合(No)には処理はステップST304へ戻り、クリーニングを続ける。
【0107】
なお、このステップST304からステップST308の処理を行っている間において、フローチャートには記載していないが機構系制御部146は、巻取り側リール駆動部48を制御してクリーニングテープ2bが弛まないように付勢するのが望ましい。
【0108】
ステップST309では、機構系制御部146は、クリーニング回数カウンターの設定値Ncの値を1インクリメントする。その後処理はステップST310へ移る。
【0109】
ステップST310では、機構系制御部146は、以下の動作を略同時に行って、クリーニングテープ2bの新しい面(クリーニング動作によって研磨されていない面)がキャプスタン軸134に接するようにクリーニングテープ2bを送る。
(1)キャプスタン軸駆動部143を制御してキャプスタン軸134の回転の角速度を通常の記録再生と同じ角速度とする。
(2)テンション検出部139からの信号を用いて供給側リール駆動部147を制御して通常の記録再生時と同様のテンション制御を行う。
(4)巻取り側リール駆動部148を制御して巻取り側リール141にクリーニングテープ2bを巻き取る。
【0110】
ステップST311では、機構系制御部146は、クリーニング回数カウンターの値Ncが所定値Nfであるか否かを判断する。
クリーニング回数カウンターの値Ncが所定値Nfである場合(Yes)には、所定の回数であるNf回のクリーニングが行われた場合であるので処理は終了する。クリーニング回数カウンターの値Ncが所定値Nfでない場合(No)には、所定の回数のクリーニングが行われていないので処理はステップST302へ戻る。
【0111】
上述するステップST305の処理において、クリーニングテープ2bを介してのピンチローラ28とキャプスタン軸34との押圧力が所定値以下であるか否かの判断に際しては、モータ印加電圧Vmによってそれを判断するようにしたが、モータ印加電圧Vmに替えて、図10に示すピエゾ素子等を用いる圧力検知器180からの検出電圧を用いるようにしても良い。
【0112】
第3実施形態の磁気記録装置では、クリーニングテープ2bとキャプスタン軸134との摩擦力を利用してキャプスタン軸134のクリーニングを行うことを特徴としている。このときに、走行を停止させられたクリーニングテープ2bと一定の角速度で回転するキャプスタン軸134との間の摩擦力を一定の大きさとすることによって、最も効率よく、かつ、キャプスタン軸134に損傷を与えることなくクリーニングを行っている。ここで、最も良好な摩擦力は、クリーニングテープ2bの研磨剤の特性、キャプスタン軸134の回転の角速度に応じて、実験から求められるものである。そして、この最も良好な摩擦力を得るために、クリーニングテープ2bを介在させたピンチローラ128とキャプスタン軸134との押圧力を調整しているが、この場合の押圧力の調整は、ピンチローラ128を移動させることによって容易に行うことができ、特別な追加の機構部品を必要とせず、機構系制御部146で行う制御処理の内容(ソフトウエア)を変更するだけで容易に実施が可能である。
【0113】
(その他の実施形態の変形例)
第1実施形態ないし第3実施形態を組み合わせた実施形態においても同様の作用効果を得ることができる。例えば、第3実施形態の磁気記録装置のコイルバネ151、プランジャー145で構成される機構部を有してピンチローラ28の位置の制御を行い、第1実施形態のようにキャプスタン軸34を正回転又は逆回転させて、キャプスタン軸34のクリーニングを行うことも当然可能であり、キャプスタン軸34の正回転と逆回転とを交互に行いながらクリーニングを行うことも当然に可能である。
【0114】
また、第1実施形態又は第2実施形態において、コイルバネ151、プランジャー145で構成される機構部を有してピンチローラ28の位置の制御を行う場合には、クリーニングテープ2aを介在させたピンチローラ28とキャプスタン軸34との押圧力の調整に際しては、ピンチローラ28の動作を、ローディング/アンローディングに応じたクリーニングテープ2aのテープパスの変更とは、完全に独立とすることもできる。この場合には、ドラム3にクリーニングテープを接触することなく、又は、ラップ角を小さくした状態においてクリーニングを行うことができる。したがって、ラップ角を小さくした状態においては、ドラム3に配されて磁気ヘッドの停止位置を制御して磁気ヘッドがラップ角の範囲とならないようにしてクリーニングテープ2aと磁気ヘッドとの接触を避けることができる。
【0115】
第1実施形態ないし第3実施形態の磁気記録装置では、クリーニングテープを用いてキャプスタン軸に付着した付着物を取り除くキャプスタン軸のクリーニングを容易に行うことができる。また、キャプスタン軸のクリーニングをする際に磁気ヘッドとクリーニングテープとが密に接触しないようにして付着物が磁気ヘッドに転写しないようにすることができる。また、付着物は最終的にはクリーニングテープに付着して磁気記録装置の外へ取り出せることとなり、クリーニング後に装着された磁気記録テープに付着物が転写される事態が生じることを防止できる。さらに、この付着物が磁気ヘッドと磁気記録テープとの間に混入することによる磁気記録テープへ損傷を与える事態を防止できる。また、さらに、この付着物が磁気ヘッドと磁気記録テープとの間に混入することによってテープパスに異常を来して記録再生特性が劣化する事態を防止することができる。
【0116】
また、第1実施形態ないし第3実施形態およびこれらの変形例の技術では、キャプスタン軸のクリーニングのためだけに特別な付加的な機構を付加することなく、従来の機構部を用いてその制御のソフトウエアを入れ替え、クリーニングテープを用いることによって良好なクリーニングが行えるので、極めて広範囲な応用範囲を有している。例えば、従来用いられている、多数のテープカセットを少数の磁気記録装置に装着して記録再生を行うチェンジャー型のストレージシステムにおいては、その多数のテープカセットの中に、クリーニングテープを含ませることによって、容易に磁気記録装置のキャプスタン軸のクリーニングが可能となる。また、上述した実施形態に示された技術は、磁気記録および/または再生装置(磁気記録装置、磁気再生装置、磁気記録再生装置)のいずれについても適用が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】磁気記録装置の機構部を示す図である。
【図2】テープカセット中の磁気テープを引き出す前のアンローディング状態
【図3】磁気テープとドラムとが略接触した直後の各構成部品の配置を示す図である。
【図4】磁気テープとドラムとが略接触した後、ローディングされるまでの間における各構成部品の配置を示す図である。
【図5】磁気テープがドラムにローディングされた状態を示す図である。
【図6】図1に示す機構部をどのように制御するかを示す機構制御系のブロック図である。
【図7】キャプスタン軸のクリーニング方法を説明するための模式図である。
【図8】キャプスタン軸のクリーニングの手順を示すフローチャートである。
【図9】別のキャプスタン軸のクリーニングの手順を示すフローチャートである。
【図10】固定磁気ヘッドを有する固定磁気記録装置を模式的に示す図である。
【図11】さらに別のキャプスタン軸のクリーニングの手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0118】
2 磁気テープ、2a、2b クリーニングテープ、 3 ドラム、 11 移動シャーシ、 13a 供給側リール台、 13b 巻取り側リール台、 14 ガイド孔、 18a、18b ガイドレール、 20 固定シャーシ、 21 ガイドピン、 22、23 傾斜ガイドブロック、 22a、23a 回転ガイド、 22b、23b 傾斜ガイドポスト、 24 テンション検出ピン、 25 テンションアーム、 26、28、29 回動軸、 27 テープ引出しピン、 28 ピンチローラ、 31、32 アーム、 34 キャプスタン軸、 40 供給側リール、 41 巻取り側リール、 42 ドラム駆動制御部、 43 キャプスタン軸駆動部、 44 ローディング/アンローディング部、 46 機構系制御部、 47 供給側リール駆動部、 48 巻取り側リール駆動部、 49 テンション検出部、 103 固定磁気ヘッド位置駆動部、 104 ピンチローラ駆動部、 121、122、123、125 ガイドローラ、 128 ピンチローラ、 130 固定磁気ヘッド、 134 キャプスタン軸、 139 テンション検出部、 140 供給側リール、 141 巻取り側リール、 143 キャプスタン軸駆動部、 145、149 プランジャー、 145b、145b プランジャーコイル、 145a、145a 吸引片、 146 機構系制御部、 147 供給側リール駆動部、 148 巻取り側リール駆動部、 150、151 コイルバネ、 160 磁気ヘッドホルダー、 161 回動軸、 180 圧力検知器、 200 テープカセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録テープに情報を記録し、又は磁気記録テープから情報を再生するための磁気ヘッドを有する磁気記録又は再生装置において、
前記磁気テープを走行させる回転駆動力を発生させるキャプスタン軸と、
前記磁気テープを間に配して前記キャプスタン軸に押圧力を付与するピンチローラと、
前記磁気テープを巻回するリールと、
前記キャプスタン軸の前記回転駆動力の大きさと前記ピンチローラの前記押圧力の大きさと前記リールの回転とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記磁気テープに替えて、前記キャプスタン軸と接する面に研磨剤を配したクリーニングテープを用いた場合において、
前記キャプスタン軸の発生する前記回転駆動力によって前記クリーニングテープが走行しないように前記リールの回転を係止し、
前記ピンチローラを押圧しながら前記キャプスタン軸を回転駆動する制御を行うことを特徴とする磁気記録又は再生装置。
【請求項2】
前記クリーニングテープの走行経路に沿って、
前記係止しされた前記リール、前記キャプスタン軸、前記磁気ヘッドの順に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録又は再生装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記クリーニングテープを用いる場合の前記ピンチローラの発生する押圧力が、前記磁気テープに情報の記録を行い、又は、前記磁気テープから情報の再生を行う場合の前記ピンチローラの発生する押圧力よりも小さくなるように制御をすることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録又は再生装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記キャプスタン軸に回転駆動力を付与するキャプスタンモータに印加される電圧が所定電圧値となるようにして、前記ピンチローラの発生する押圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録又は再生装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記ピンチローラの押圧力を検出して、前記ピンチローラの発生する押圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録又は再生装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記キャプスタン軸の発生する前記回転駆動力によって前記クリーニングテープが走行しないように前記リールの回転を係止して前記ピンチローラを押圧しながら前記キャプスタン軸の回転駆動を所定時間持続する制御と、
前記クリーニングテープの未だ前記キャプスタン軸に接触していない面が前記キャプスタン軸と接触するように、前記リールを回転させて前記クリーニングテープを走行させる制御と、を交互に行うことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録又は再生装置。
【請求項7】
前記磁気ヘッドとしてドラム面に配される回転磁気ヘッドと、
前記リールと前記ピンチローラとを配した移動シャーシと、
前記キャプスタン軸を配した固定シャーシと、
前記移動シャーシの移動にともなって前記クリーニングテープを前記テープカセットから引出して前記キャプスタン軸と前記ピンチローラとの間に配する傾斜ガイドブロックと、
前記移動シャーシの移動量、傾斜ガイドブロックの位置、及び前記ピンチローラと前記キャプスタン軸との離間距離を制御するローディング/アンローディング部と、を具備し、
前記ローディング/アンローディング部を制御して前記ピンチローラの押圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録又は再生装置。
【請求項8】
磁気記録テープに情報を記録し、又は磁気記録テープから情報を再生するための磁気ヘッドを有する磁気記録又は再生装置の制御方法において、
前記磁気テープに替えて、前記キャプスタン軸と接する面に研磨剤を配したクリーニングテープを用い、
前記クリーニングテープをキャプスタン軸とピンチローラとで挟み込み、
前記クリーニングテープが前記キャプスタン軸の回転駆動力によって走行しないように前記クリーニングテープが巻回されたリールを係止し、
前記ピンチローラを前記磁気テープに押圧しながら前記キャプスタン軸を回転駆動する、磁気記録又は再生装置の制御方法。
【請求項9】
磁気記録テープに情報を記録し、又は磁気記録テープから情報を再生するための磁気ヘッドと、
前記磁気記録テープと前記磁気ヘッドとの相対速度を所定速度とするために前記磁気記録テープを間に介して互いに対抗するキャプスタン軸とピンチローラと、
を備える磁気記録又は再生装置のキャプスタン軸のクリーニング方法において、
前記磁気テープに替えて、研磨材を前記キャプスタン軸と接する面に配したクリーニングテープを用い、
前記クリーニングテープが前記キャプスタン軸の回転駆動力によって走行しないように前記クリーニングテープの一端を係止し、
前記キャプスタン軸を回転し、
前記クリーニングテープを間に介してのキャプスタン軸とピンチローラとの間に押圧力を加える、キャプスタン軸のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−211755(P2009−211755A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52854(P2008−52854)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)