説明

磁気記録媒体の製造方法

【目的】 最終製品である磁気記録媒体の耐久性および耐食性が優れることはもとより、特にドロップアウトの発生を極めて有効に防止でき、製品歩留の向上が図れる磁気記録媒体の製造方法を提供する。
【構成】 非磁性支持体上に強磁性金属薄膜が設けられた積層体原反を、その非磁性支持体裏面側が回転ドラムの少なくとも一部と接する状態で連続的に搬送させつつ、強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜を形成させる磁気記録媒体の製造方法であって、前記積層体原反の幅に対する前記回転ドラムの幅の比を、0.9〜1.1に規制しつつプラズマ重合膜を形成させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強磁性金属薄膜を備える磁気記録媒体の製造方法、特に、表面保護膜の形成に注目した磁気記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】金属あるいはCo−Cr等の合金からなる強磁性金属薄膜を、例えば真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の真空薄膜形成法により支持体上に形成したいわゆる金属薄膜タイプの磁気記録媒体は、磁性粉末とバインダーを用いるいわゆる塗布タイプの磁気記録媒体と比べて、以下のような多くの利点を備えている。
【0003】すなわち、金属薄膜タイプの磁気記録媒体は、保磁力等に優れ、磁性材料の充填密度が高いために高密度記録が可能で、電磁変換特性上も非常に有利であり、さらに、磁性層の膜厚を非常に薄くでき、再生時等の厚み損失も著しく小さくすることができる等種々の利点を備えている。
【0004】しかしながら、このような金属薄膜タイプの磁気記録媒体は、一般に磁性層(強磁性金属薄膜)が腐食されやすいという欠点に加え、走行性、耐久性が十分とは言えず、デッキ走行中にテープが走行経路に張り付いて走行停止したり、あるいはガイドポストや磁気ヘッドと接した際に磁性層にキズ等が発生しやすい、という欠点を有していた。
【0005】このような問題を解決するために、従来より、強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜の保護膜および滑性層を設ける旨の提案がなされており(特開昭59−154643号公報等)、特に、プラズマ重合膜は非常に緻密な架橋構造を有し、膜厚も均一であるために上記の問題解決にはなくてはならない技術的手段であると考えられていた。
【0006】また、このようなプラズマ重合膜の保護層を形成するにあたって、予め、非磁性支持体の上に強磁性金属薄膜を形成したものを、繰り出しロールから繰り出すとともに、クーリングキャンに沿って移動させながらプラズマ管を用いてプラズマ重合膜を形成させ、最終的に巻き取りロールで巻き取る装置および方法はすでに提案されている(特開昭63−34728号公報)。
【0007】また、類似の手法として、特開平4−95220号公報や特開平5−325175号公報には、非磁性支持体を繰り出しロールから繰り出すとともに、クーリングキャンに沿って移動させながら、キャン上で強磁性金属薄膜およびプラズマ重合膜の形成を連続的におこない、最終的に巻き取りロールで巻き取る装置および方法も提案されている。
【0008】このような従来の装置を用いたプラズマ重合膜の成膜方法においては、非磁性支持体の幅とキャンの幅との関係については、なんら問題提起がなされていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本出願に係る発明者らが鋭意研究した結果、通常、数時間の連続運転が行われるプラズマ重合膜の成膜過程において、最終製品である磁気記録媒体の特性、特にドロップアウトの発生や、製品歩留の善し悪しは、連続搬送される非磁性支持体の幅とキャンの幅との関係に大きく起因していることが判明した。
【0010】このような実情のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は最終製品である磁気記録媒体の耐久性および耐食性が優れることはもとより、特にドロップアウトの発生を極めて有効に防止でき、製品歩留の向上が図れる磁気記録媒体の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような目的を解決するために、前述のごとく本出願に係る発明者らが、連続搬送される非磁性支持体の幅とキャンの幅との関係に注目して鋭意研究した結果、これらの幅の比が、特にドロップアウトの発生や、製品歩留に大きく寄与することを見いだし、本発明に至ったのである。
【0012】すなわち、本発明は、非磁性支持体上に強磁性金属薄膜が設けられた積層体原反を、その非磁性支持体裏面側が回転ドラムの少なくとも一部と接する状態で連続的に搬送させつつ、強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜を形成させる磁気記録媒体の製造方法であって、前記積層体原反の幅に対する前記回転ドラムの幅の比を、0.9〜1.1に規制しつつプラズマ重合膜を形成させるように構成した。
【0013】
【作用】本発明によれば、非磁性支持体裏面側が回転ドラムに接しているところで、プラズマ重合膜の形成がなされているので、耐久性、耐食性等に優れたプラズマ重合保護膜が形成され、しかも積層体原反の幅に対する回転ドラムの幅の比を所定の範囲内に規制しているので、ドロップアウトの発生が極めて少なく、製品歩留の良い磁気記録媒体が得られる。
【0014】
【実施例】まず、最初に本発明の磁気記録媒体の製造方法に用いられる装置の一例を図面に基づいて説明する。図1はプラズマ重合膜形成装置の概略正面図であり、この装置において、繰出ロール21には、予め非磁性支持体上に強磁性金属薄膜が設けられた積層体原反40が巻かれている。積層体原反40の積層断面の状態が図5に示されており、図5において、符号41は非磁性支持体を、符号42は強磁性金属薄膜を表す。そして、図1に示されるように繰出ロール21から繰り出された積層体原反40は、ガイドロール22を介して回転ドラム25に沿って移動し、さらに、ガイドロール26を介して巻取ロール28へと巻き取られるようになっている。この場合、回転ドラム25は、非磁性支持体の裏面側(強磁性金属薄膜が形成されていない側)と接している。
【0015】また、真空槽7内は、プラズマ重合膜形成のためにのみ必要なスペースを確保するために仕切り板8,8によって上下に仕切られており、さらに放電を発生させるための複数の棒状のプラズマ電極9が前記回転ドラム25の回り(図においては下方)に配設されている。この場合、前記回転ドラム25は、放電を発生させない一方のプラズマ電極(アース側)を構成している。複数のプラズマ電極9はそれらの基部にて、一体的に接続されたいわゆる櫛形状をなしており、この電極にはプラズマ発生のための、例えば、高周波電源等が接続される。このような複数の棒状電極からなる櫛形状のプラズマ電極を用いることによって、真空槽内に導入されるプラズマ原料ガスが、櫛状の隙間を縫って均一に流れ、これによって極めて均一な膜厚を有するプラズマ重合膜が形成される。
【0016】このような一例の装置を用いて行なわれる本発明の磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体上に強磁性金属薄膜が設けられた積層体原反を、その非磁性支持体裏面側が回転ドラムの少なくとも一部と接する状態で連続的に搬送させつつ、強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜を形成させることによって行われる。
【0017】図6には、積層体原反40の上(強磁性金属薄膜42の上)にプラズマ重合膜43を形成し、磁気記録媒体50を形成した断面図が示されている。
【0018】プラズマ重合膜43の形成は、真空槽内で有機化合物、例えば炭化水素系化合物のモノマーガスを高周波によってプラズマ化させ、強磁性金属薄膜42の表面に形成させることによって行われる。通常は、積層体原反40を搬送させる真空槽内を10-5Torr以上に排気した後、原料ガスを所定量導入する。この所定量は、反応圧力が1〜10-2Torrとなるように設定することが一般的である。本発明では特に、炭化水素と水素ガスを含む原料ガスを用いて形成することが好ましい。
【0019】炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、メチルアセチレン、トルエン等を単独または混合して用いる。
【0020】水素ガスの混合割合は、体積比で炭化水素ガス量の0.3〜1.0倍程度、好ましくは、0.5〜0.7倍とされる。炭化水素ガス量に対して、水素ガス量が多くなり過ぎると成膜レートが低下してしまい、これとは逆に水素ガス量が小さくなり過ぎると成膜した膜の緻密性に欠けるという不都合が生じる。
【0021】プラズマ形成のための放電電源は、50kHz〜450kHzの範囲の周波数が望ましく、中でも特に100kHz〜400kHzの範囲の周波数が望ましい。周波数が50kHz未満となると、長時間に亘っての運転が困難になるという不都合が生じる。また、周波数が450kHzを越えると緻密な膜が成膜できないという不都合が生じる。
【0022】そして、本発明においては、図2に詳細が示されるように前記積層体原反40の幅(W2)に対する前記回転ドラム25の幅(W1)の比(W1/W2)を、0.9〜1.1に規制しつつプラズマ重合膜を形成させることが重要である。この値が0.9未満になったり、あるいは1.1を越える場合には、媒体特性、特にドロップアウトが急激に増大してしまうという不都合が生じることが実験的に確認されている。これらの原因については定かではないが、W1/W2の値が大きくなり過ぎると、回転ドラムの両側に生じるわずかな露出部分にプラズマ重合膜が堆積し、このものが次第に剥離され磁気記録媒体、特に、強磁性金属薄膜42とプラズマ重合膜43との間に混入して製品品質に悪影響を及ぼすのではないかと考えられる。この一方で、W1/W2の値が小さくなり過ぎると、積層体原反の両サイドが巻き取り時にシワになりやすく、発生したシワが製品品質に悪影響を及ぼすのではないかと考えられる。
【0023】またさらに、強磁性金属薄膜42の上にプラズマ重合膜43を形成させる際には、非磁性支持体41の裏面側(強磁性金属薄膜42が形成されていない面側)が回転ドラム25と接しているところのみで行うことが好ましい。回転ドラム25と接している状態でプラズマ重合膜43を形成するか否によって、得られるプラズマ重合膜43の膜特性が著しく異なり、接している状態で形成した場合においては、極めて、耐久性および走行性に優れたプラズマ重合膜が形成されることが実験的に確認できたからである。このような現象が生じる理由としては、アース側の電極である回転ドラム25に非磁性支持体41の裏面側を接触させないと、積層体原反40の表面にフローティング電位が発生し、プラズマ中のイオンが膜面に衝突することができず、緻密な膜が形成できないからではないかと考えられる。
【0024】従って、図1に示されるガイドロール22,26の距離を近づけることによって、積層体原反40と回転ドラム25とが接触する面積を大きくするように構成することが有利である。また、プラズマ電極9も上記の接触する範囲において良好なプラズマ重合膜が形成されるように考慮して配置することが望ましい。
【0025】このようにして形成されるプラズマ重合膜の厚さは、80〜150Å程度が好ましい。この厚さが80Å未満では、成膜が十分に行えず、電特も測定不能となる。また、150Åを越えるとスペーシングロスが大きくなり、高密度記録に不向となる傾向が生じる。
【0026】また、プラズマ重合膜の硬度は、ビッカース硬度で600〜2000Kg/mm2 の範囲内におさめることが記録媒体の耐久性を向上させるうえで好ましい。プラズマ重合膜の屈折率は1.80〜2.10の範囲内となるように成膜制御することが好ましい。
【0027】磁気記録媒体を構成する非磁性支持体41は、強磁性金属薄膜42の形成の際に、耐え得るだけの耐熱性のあるものであればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォンなどが挙げられる。非磁性支持体41の厚さは、例えば、磁気記録媒体の録画時間等との兼ね合いで選択されることもあり、通常5〜40μm程度とされる。
【0028】この非磁性支持体41の上に形成される強磁性金属薄膜42は、コバルトまたはコバルト合金とすることが好ましい。コバルト合金としては、Co−Ni、Co−Fe、Co−Ni−Cr、Co−Ni−B、Co−Cu、Co−Pt−Cr等が例示される。強磁性金属薄膜42を蒸着で形成する場合、Coの融点に近い金属では、同一のルツボを用いて蒸着する、いわゆる一元蒸着を行い、融点が異なるものでは複数のルツボを用いる、いわゆる多元蒸着を行う。
【0029】蒸着工程としては、蒸着チャンバー内を、例えば、10-6Torr程度まで排気した後、電子銃にて蒸着させるべく金属の溶解を行い、金属全体が溶解した時点で蒸着を開始する。さらに、蒸着によって形成される強磁性金属薄膜42の磁気特性を制御するために、通常、酸素、オゾン、亜酸化窒素等の酸化性ガスを導入することが好ましい。このように形成される強磁性金属薄膜42の厚さは、0.1〜0.3μm程度とされる。
【0030】本実施例では、プラズマ重合膜43形成の説明を簡潔かつ分かりやすくするために、非磁性支持体41上に強磁性金属薄膜42が設けられた積層体原反40が繰出ロール21に予め巻かれているケースを例にとって説明したが、これに限定されることなく、例えば、特開平4−95220号公報に記載されているように、非磁性支持体のみを繰出ロールに設置し、同一真空槽内で、強磁性金属薄膜およびプラズマ重合膜の形成を順次形成させる方式においても、本発明の磁気記録媒体の製造方法が適用できるのは勿論のことである。
【0031】図3は、図1に示されるプラズマ重合装置の変形例を示したものであって、図中図1と同一符号のものは、図1と同義の部材を示す。図3の装置例においては図1の複数の棒状電極9の代わりに、細孔を備える板状電極19(例えば、メッシュ状の電極)を設けたこと以外は、基本的に図1の装置と同じである。細孔を備える板状電極19を設けることによって、やはり前記棒状電極9の場合と同様に、真空槽内に導入されるプラズマ原料ガスがメッシュの隙間を縫って均一に流れるという作用が発現する。これによって極めて均一な膜厚を有するプラズマ重合膜が形成される。
【0032】図4は、図3に示されるプラズマ重合装置の変形例を示したものであって、図中図3と同一符号のものは、図3と同義の部材を示す。図4の装置例においては図3のガイドロール22,26の代わりに、やや小径のガイドロール22’,26’を設け、さらにこれらのガイドロール22’,26’をそれぞれ繰出ロール21、巻取ロール28に近づけるとともに、ガイドロール22’とガイドロール26’との間を広めにとっている(これによって、積層体原反40と回転ドラム25との接触面積は小さくなる)こと以外は、基本的に図3の装置と同じである。このようなガイドロール22’,26’の形状および配置を採択することによって、巻き取り時にシワが入りにくいというメリットが生じる。
【0033】なお、図1、図3および図4の装置において、プラズマ原料ガスの導入口、および真空ポンプ等の排気系はいわゆる通常のものを用いればよく、ここではそれらの記載を省略している。
【0034】なお、本発明においては、プラズマ重合膜43からなる保護膜上に公知の種々の液体潤滑層を塗布してもよく、この場合には耐久特性が向上する。また、非磁性支持体41の裏面(強磁性金属薄膜42形成面と反対の面)にいわゆる公知の種々のバックコート層を設けてもよいし、非磁性支持体41と強磁性金属薄膜42の間に種々の中間層を設けてもよい。
【0035】以下、本発明に関する具体的実験例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例サンプル1の作製)まず、最初に、真空槽内において(10-6Torrまで排気)、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の非磁性支持体41を連続搬送させつつこの上に、Co−Niの強磁性金属薄膜42を形成させた。すなわち、Co−Ni(Co:Ni=90:10(atm 比))の合金を蒸着源として用いて入射角30°で斜め蒸着を行い、厚さ0.15μmのCo−Ni強磁性金属薄膜42を形成させた。なお、この際に磁気特性を制御するために酸化性ガスとして酸素を導入した。
【0036】次いで、図1に示される装置を用いて、上記強磁性金属薄膜42の上にプラズマ重合膜43からなる保護膜を形成した。
【0037】すなわち、プラズマ原料ガス導入口からメタンガスを20SCCM、水素ガスを10SCCM、それぞれ導入しつつ、0.05Torrの真空下でプラズマを発生させて、プラズマ重合膜43からなる保護膜を形成した。
【0038】この場合、プラズマ放電電源の周波数は、100kHzとした。
【0039】また、積層体原反40の幅(W2)に対する前記回転ドラム25の幅(W1)の比(W1/W2)は、1.0とし、プラズマ重合膜43の形成は、非磁性支持体41の裏面側(強磁性金属薄膜42が形成されていない面側)が回転ドラム25と接しているところのみで行った。
(実施例サンプル2の作製)上記実施例サンプル1で用いた非磁性支持体41の材質を、ポリエチレンテレフタレート(PET)から、ポリエチレンナフタレート(PEN)に変えた。
【0040】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル2を作製した。
(実施例サンプル3の作製)上記実施例サンプル1で用いた非磁性支持体41の材質を、ポリエチレンテレフタレート(PET)から、ポリイミドに変えた。
【0041】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル3を作製した。
(実施例サンプル4の作製)上記実施例サンプル1で用いた非磁性支持体41の材質を、ポリエチレンテレフタレート(PET)から、アラミドに変えた。
【0042】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル4を作製した。
(実施例サンプル5の作製)上記実施例サンプル1で用いた非磁性支持体41の材質を、ポリエチレンテレフタレート(PET)から、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)に変えた。
【0043】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル5を作製した。
(実施例サンプル6の作製)上記実施例サンプル1で用いた非磁性支持体41の材質を、ポリエチレンテレフタレート(PET)から、ポリサルフォンに変えた。
【0044】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル6を作製した。
(実施例サンプル7の作製)上記実施例サンプル1において、PETの上に形成した強磁性金属薄膜の材質を、Co−NiからCo−Fe(Co:Fe=95:5(atm 比))に変えた。
【0045】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル7を作製した。
(実施例サンプル8の作製)上記実施例サンプル1において、PETの上に形成した強磁性金属薄膜の材質を、Co−NiからCo−Ni−Cr(Co:Ni:Cr=70:5:25(atm 比))に変えた。
【0046】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル8を作製した。
(実施例サンプル9の作製)上記実施例サンプル1において、PETの上に形成した強磁性金属薄膜の材質を、Co−NiからCo−Ni−B(Co:Ni:B=80:5:15(atm 比))に変えた。
【0047】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル9を作製した。
(実施例サンプル10の作製)上記実施例サンプル1において、PETの上に形成した強磁性金属薄膜の材質を、Co−NiからCo−Cu(Co:Cu=95:5(atm 比))に変えた。
【0048】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル10を作製した。
(実施例サンプル11の作製)上記実施例サンプル1において、PETの上に形成した強磁性金属薄膜の材質を、Co−NiからCo−Pt−Cr(Co:Pt:Cr=70:25:5(atm 比))に変えた。
【0049】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル11を作製した。
(実施例サンプル12の作製)上記実施例サンプル1において、PETの上にCo−Niからなる強磁性金属薄膜を形成するに際し、磁気特性を制御するために導入した酸化性ガスとしての酸素を、オゾンに変えた。
【0050】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル12を作製した。
(実施例サンプル13の作製)上記実施例サンプル1において、PETの上にCo−Niからなる強磁性金属薄膜を形成するに際し、磁気特性を制御するために導入した酸化性ガスとしての酸素を、亜酸化窒素に変えた。
【0051】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル13を作製した。
(実施例サンプル14〜21の作製)上記実施例サンプル1において、Co−Niからなる強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜43を形成するに際し、炭化水素のプラズマ原料ガスをメタンからエタン(実施例サンプル14)、プロパン(実施例サンプル15)、ブタン(実施例サンプル16)、エチレン(実施例サンプル17)、プロピレン(実施例サンプル18)、アセチレン(実施例サンプル19)、メチルアセチレン(実施例サンプル20)、トルエン(実施例サンプル21)に、それぞれ変えた。
【0052】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル14〜21を作製した。
(実施例サンプル22の作製)上記実施例サンプル1のプラズマ重合膜43の上に、さらに潤滑層(トップコート層)を設けた。すなわち、パーフロロポリエーテルを主成分とするクライトックス(デュポン社製)をフッ素系溶剤に0.3wt%溶解させたものをグラビア法にてプラズマ重合膜43の上に塗布した。
【0053】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル22を作製した。
(実施例サンプル23の作製)上記実施例サンプル22において、潤滑層(トップコート層)を設ける際に用いたクライトックス(デュポン社製)を、両末端極性のパーフロロポリエーテルを主成分とするAM2001(モンテカッチーニ社製)に変えた。
【0054】それ以外は、上記実施例サンプル22と同様にして、実施例サンプル23を作製した。
(実施例サンプル24の作製)上記実施例サンプル22において、潤滑層(トップコート層)を設ける際に用いたクライトックス(デュポン社製)を、フォンブリン(モンテカッチーニ社製)に変えた。
【0055】それ以外は、上記実施例サンプル22と同様にして、実施例サンプル24を作製した。
(実施例サンプル25の作製)上記実施例サンプル22において、潤滑層(トップコート層)を設ける際に用いたクライトックス(デュポン社製)を、n−C817COOH(ダイキン工業社製)に変えた。
【0056】それ以外は、上記実施例サンプル22と同様にして、実施例サンプル25を作製した。
(実施例サンプル26〜31の作製)上記実施例サンプル1において、Co−Niからなる強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜43を形成するに際し、プラズマ原料ガスの一部として導入した水素ガスのガス量を10SCCMから、6SCCM(実施例サンプル26)、8SCCM/分(実施例サンプル27)、12SCCM(実施例サンプル28)、14SCCM(実施例サンプル29)、16SCCM(実施例サンプル30)、20SCCM(実施例サンプル31)に、それぞれ変えた。
【0057】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル26〜31を作製した。
(実施例サンプル32〜35の作製)上記実施例サンプル1において、Co−Niからなる強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜43を形成するに際し、プラズマ放電電源の周波数を、100kHzから、50kHz(実施例サンプル32)、200kHz(実施例サンプル33)、400kHz(実施例サンプル34)、450kHz(実施例サンプル35)に、それぞれ変えた。
【0058】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル32〜35を作製した。
(実施例サンプル36の作製)上記実施例サンプル1において、Co−Niからなる強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜43を形成するに際し、積層体原反40の幅(W2)に対する前記回転ドラム25の幅(W1)の比(W1/W2)を1.0から0.90に変えた。
【0059】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル36を作製した。
(実施例サンプル37作製)上記実施例サンプル1において、Co−Niからなる強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜43を形成するに際し、積層体原反40の幅(W2)に対する前記回転ドラム25の幅(W1)の比(W1/W2)を1.0から0.95に変えた。
【0060】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル37作製した。
(実施例サンプル38の作製)上記実施例サンプル1において、Co−Niからなる強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜43を形成するに際し、積層体原反40の幅(W2)に対する前記回転ドラム25の幅(W1)の比(W1/W2)を1.0から1.05に変えた。
【0061】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル38を作製した。
(実施例サンプル39の作製)上記実施例サンプル1において、Co−Niからなる強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜43を形成するに際し、積層体原反40の幅(W2)に対する前記回転ドラム25の幅(W1)の比(W1/W2)を1.0から1.1に変えた。
【0062】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、実施例サンプル39を作製した。
(比較例サンプル1の作製)上記実施例サンプル1において、Co−Niからなる強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜43を形成するに際し、積層体原反40の幅(W2)に対する前記回転ドラム25の幅(W1)の比(W1/W2)を1.0から1.5に変えた。
【0063】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、比較例サンプル1を作製した。
(比較例サンプル2の作製)上記実施例サンプル1において、Co−Niからなる強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜43を形成するに際し、積層体原反40の幅(W2)に対する前記回転ドラム25の幅(W1)の比(W1/W2)を1.0から2.0に変えた。
【0064】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、比較例サンプル2を作製した。
(比較例サンプル3の作製)上記実施例サンプル1において、Co−Niからなる強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜43を形成するに際し、積層体原反40の幅(W2)に対する前記回転ドラム25の幅(W1)の比(W1/W2)を1.0から0.7に変えた。
【0065】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、比較例サンプル3を作製した。
(比較例サンプル4の作製)上記実施例サンプル1において、Co−Niからなる強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜43を形成するに際し、非磁性支持体41の裏面側(強磁性金属薄膜42が形成されていない面側)が何も接しない状態のままでプラズマ重合膜43を形成させた。すなわち、図1のプラズマ装置を改良し、回転ドラム25を外して、これに変わるものとして平行電極および2つのガイドロールを新たに設置し、この間においてプラズマ重合膜を形成させた。なお、平行電極は2つのガイドロールの間に設けた。
【0066】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、比較例サンプル4を作製した。
(比較例サンプル5の作製)上記実施例サンプル1において、複数の棒状の(プラズマ)電極に変えて、単に湾曲した板状の電極(細孔なし)を設置した。
【0067】それ以外は、上記実施例サンプル1と同様にして、比較例サンプル5を作製した。
【0068】このように作製した上記実施例サンプル1〜39、比較例サンプル1〜5について以下に示すような評価を行った。
【0069】ドロップアウト(DO)ShibaSoku VHO1BZのDOカウンターを用いて、15μsec−16dBの大きさのドロップアウト(DO)を測定した。なお、数値は毎分当たりの個数を表す。
【0070】初期摩擦摩擦測定機を用いて、テープを1passさせた時の摩擦を測定した。すなわち、所定の回転ピンおよいび固定ピン(SUS306製、3mm直径)を介して20gの加重が加えられたテープをロードセルで引き上げ(1pass)、その時にロードセルにかかった加重を摩擦(μ)に換算した。
【0071】耐久摩擦上記の初期摩擦を測定する装置を用い、200pass目の摩擦(μ)を測定した。
【0072】スチルソニー社製S1500デッキを用いて、出力が−5dBになるまでの時間を測定した。
【0073】最大放電時間装置に水素含有プラズマ重合膜を成膜する時と同様に、テープをセットして放電を発生させ、テープ表面に異物と思われるプラズマ重合粉が発生するまでの時間を測定した。
【0074】膜厚分布エリプソメータを用い、幅方向に5点膜厚を測定し、その変動係数を下記式1から求めた。この値をもって膜厚分布の表示とした。
【0075】
【式1】


これらの結果を下記表1および表2に示した。
【0076】
【表1】


【0077】
【表2】


【0078】
【発明の効果】上記の結果より本発明の効果は明らかである。
【0079】すなわち、本発明は、非磁性支持体上に強磁性金属薄膜が設けられた積層体原反を、その非磁性支持体裏面側が回転ドラムの少なくとも一部と接する状態で連続的に搬送させつつ、強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜を形成させる磁気記録媒体の製造方法であって、前記積層体原反の幅に対する前記回転ドラムの幅の比を、0.9〜1.1に規制しつつプラズマ重合膜を形成させるように構成しているので、最終製品である磁気記録媒体の耐久性および耐食性が優れることはもとより、特にドロップアウトの発生を極めて有効に防止でき、製品歩留の格段の向上が図れるという、極めて優れた効果が発現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられるプラズマ重合膜形成装置の一例を示す概略正面図である。
【図2】積層体原反の幅に対する前記回転ドラムの幅の比を図面上規定した斜視図である。
【図3】図1の装置の変形例を示す斜視図である。
【図4】図1の装置の変形例を示す斜視図である。
【図5】積層体原反の積層構造を示す断面図である。
【図6】磁気記録媒体の積層構造を示す断面図である。
【符号の説明】
25…回転ドラム
40…積層体原反
41…非磁性支持体
42…強磁性金属薄膜
43…プラズマ重合膜
50…磁気記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 非磁性支持体上に強磁性金属薄膜が設けられた積層体原反を、その非磁性支持体裏面側が回転ドラムの少なくとも一部と接する状態で連続的に搬送させつつ、強磁性金属薄膜の上にプラズマ重合膜を形成させる磁気記録媒体の製造方法であって、前記積層体原反の幅に対する前記回転ドラムの幅の比を、0.9〜1.1に規制しつつプラズマ重合膜を形成させることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項2】 前記回転ドラムは、放電を発生させない一方のプラズマ電極を構成しており、前記積層体原反と前記回転ドラムとが接している箇所においてのみプラズマ重合膜が形成されるように、放電を発生させる他方のプラズマ電極を前記回転ドラムの回りに配設させたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】 前記他方のプラズマ電極は、前記回転ドラムの回りに複数本配置された棒状電極であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】 前記他方のプラズマ電極は、前記回転ドラムの回りに設けられた細孔を備える板状電極であることを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】 前記プラズマ重合膜は、炭化水素と水素ガスを含む原料ガスを用いて形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】 前記水素ガス量は、炭化水素ガス量の0.3〜1.0倍(体積比)であることを特徴とする請求項5に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】 前記強磁性金属薄膜は、コバルトまたはコバルトを主成分とする合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】 前記強磁性金属薄膜は蒸着法により形成されていることを特徴とする請求項7に記載の磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平7−272269
【公開日】平成7年(1995)10月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−83656
【出願日】平成6年(1994)3月31日
【出願人】(000003067)ティーディーケイ株式会社 (7,238)