磁気転写用マスター担体、及び磁気転写方法
【課題】磁界を印加した際、磁界の印加方向に磁化が発生し、かつ磁界を解除した際に残留磁化の発生が抑制される磁性層を有する磁気転写用マスター担体等の提供。
【解決手段】本発明の磁気転写用マスター担体20は、垂直磁気記録媒体10に記録すべき情報のパターンに対応して配設される凸部201を表面に有する基材200と、前記凸部201の先端面に少なくとも形成される磁性層40と、を備え、磁界が印加されると、前記磁性層40が磁束を吸収して、磁界のパターンを形成する磁気転写用マスター担体20であって、該磁性層40は、少なくとも2層の垂直磁気異方性層41(41a、41b)と、これらの垂直磁気異方性層41の全ての間に介在され、隣接する2層の垂直磁気異方性層41の間の反強磁性結合を誘導する反強磁性結合誘導層43と、を有する。
【解決手段】本発明の磁気転写用マスター担体20は、垂直磁気記録媒体10に記録すべき情報のパターンに対応して配設される凸部201を表面に有する基材200と、前記凸部201の先端面に少なくとも形成される磁性層40と、を備え、磁界が印加されると、前記磁性層40が磁束を吸収して、磁界のパターンを形成する磁気転写用マスター担体20であって、該磁性層40は、少なくとも2層の垂直磁気異方性層41(41a、41b)と、これらの垂直磁気異方性層41の全ての間に介在され、隣接する2層の垂直磁気異方性層41の間の反強磁性結合を誘導する反強磁性結合誘導層43と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体に情報を磁気転写する磁気転写用マスター担体、該磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法、及び該磁気転写マスター担体を用いて磁気転写された磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
情報を高密度で記録可能な磁気記録媒体として、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体(以下、垂直磁気記録媒体)が知られている。この垂直磁気記録媒体の情報記録領域は、狭トラックで構成されている。そのため、垂直磁気記録媒体では、狭いトラック幅において正確に磁気ヘッドを走査し、高いS/N比で信号を再生するためのトラッキングサーボ技術が重要となる。このトラッキングサーボを行うためには、トラッキング用のサーボ信号、アドレス情報信号、再生クロック信号等のサーボ情報を、所定間隔で垂直磁気記録媒体に、いわゆるプリフォーマットとして記録しておく必要がある。
【0003】
垂直磁気記録媒体に、サーボ情報をプリフォーマットする方法としては、例えば、サーボ情報に対応した、表面に磁性層を有する複数の凸部からなるパターンが形成されたマスター担体を、該垂直磁気記録媒体に密着させた状態で、記録用磁界を印加し、該マスター担体のパターンに対応するサーボ情報を、該垂直磁気記録媒体に磁気転写する方法がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
前記方法において、垂直磁気記録媒体に前記マスター担体を密着させた状態で記録用磁界が印加されると、前記マスター担体の磁化状態に基づいて、磁束がパターン状に配置する磁性層に吸収される。その結果、前記記録用磁界は、前記マスター担体のパターンに対応して強められる。このパターン状に強められた磁界によって、垂直磁気記録媒体の所定箇所のみが磁化される。このようにして、該マスター担体のパターンに対応するサーボ情報が、該垂直磁気記録媒体に磁気転写される。
なお、磁気転写後、記録用磁界は解除され、該垂直磁気記録媒体と密着している該マスター担体は、該垂直磁気記録媒体から分離される。
【0005】
従来、この種のマスター担体の磁性層の材料としては、高飽和磁化を有する磁性材料が用いられていた。記録用磁界を印加した際に、該マスター担体の磁性層の磁化を高めて、該磁性層に磁束を吸収させ易くするためである。
【0006】
しかしながら、該マスター担体の磁性層は、厚みが数十ナノメータ程度であり、非常に薄く、反磁界の影響を強く受ける。そのため、該磁性層の材料として高飽和磁化を有する磁性材料を使用しても、反磁界によって実効的な磁性層への印加磁界(記録用磁界)が減少し、該磁性層が未飽和状態となってしまう。その結果、該磁性層の磁化を、希望通り高くすることができず、問題であった。
【0007】
なお、印加する磁界を強くすることも考えられるが、印加磁界が強くなると、該マスター担体のパターン状に配置する磁性層以外の箇所に存在する磁界によっても、該垂直磁気記録媒体が磁化されることがあり、問題となる。
【0008】
更に、従来、この種のマスター担体の磁性層は、残留磁化が高く問題となることがあった。前記のように、磁気転写後、記録用磁界が解除されても、該マスター担体の磁性層には残留磁化が存在している。該残留磁化が大きいと、前記のように、該マスター担体を該垂直磁気記録媒体から分離する際、該マスター担体の位置が、該垂直磁気記録媒体の表面方向に沿って僅かにずれても、該マスター担体の磁性層の残留磁化によって、該垂直磁気記録媒体が不要に磁化されることがあり、問題であった。
【0009】
【特許文献1】特開2003−203325号公報
【特許文献2】特開2000−195048号公報
【特許文献3】米国特許第7218465号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、磁界を印加した際に、該磁界の印加方向に磁化が発生し、かつ、磁界を解除した際に残留磁化の発生が抑制される磁性層を有する磁気転写用マスター担体、該磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 垂直磁気記録媒体に記録すべき情報のパターンに対応して配設される凸部を表面に有する基材と、
前記凸部の先端面に少なくとも形成される磁性層と、を備え、
磁界が印加されると、前記磁性層が磁束を吸収して、磁界のパターンを形成する磁気転写用マスター担体であって、
該磁性層は、少なくとも2層の垂直磁気異方性層と、これらの垂直磁気異方性層の全ての間に介在され、隣接する2層の垂直磁気異方性層の間の反強磁性結合を誘導する反強磁性結合誘導層と、を有することを特徴とする磁気転写用マスター担体である。
該<1>に係る磁気転写用マスター担体は、磁性層が少なくとも2層の垂直磁気異方性層と、これらの垂直磁気異方性層の全ての間に介在され、隣接する2層の垂直磁気異方性層の間の反強磁性結合を誘導する反強磁性結合誘導層と、を有するため、隣接する2層の垂直磁気異方性層の間に反強磁性結合が形成され、残留磁化が抑制される。また、所定値以上の磁界が印加されると、反強磁性結合が解消され、該磁界の印加方向に磁化が発生する。
<2> 反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の残留磁化Mruと厚みtuとの積Mrutuと、他方の垂直磁気異方性層の残留磁化Mrlと厚みtlとの積Mrltlとの比(Mrutu/Mrltl)が、0.5〜2である前記<1>に記載の磁気転写用マスター担体である。
<3> 2層の垂直磁気異方性層が同一の残留磁化を有し、
反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の厚みwaと、他方の垂直磁気異方性層の厚みwbとの比(wb/wa)が、2〜0.2である前記<1>から<2>のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体である。
<4> 反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の厚みwaと、他方の垂直磁気異方性層の厚みwbとの比(wb/wa)が、2〜0.5である前記<3>に記載の磁気転写用マスター担体である。
<5> 反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の厚みwaと、他方の垂直磁気異方性層の厚みwbとの比(wb/wa)が、1.5〜0.5である前記<3>から<4>のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体である。
<6> 垂直磁気異方性層の厚みが、2nm〜60nmである前記<1>から<5>のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体である。
<7> 磁性層が、下記条件1の下、スパッタリング法により作製された垂直磁気異方性層と、かつ、下記条件2の下、スパッタリング法により作製された、反強磁性結合誘導層と、を有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体である。
<条件1>
ターゲット材料:CoPt
圧力:0.3Pa
基材−ターゲット間距離:200mm
DCパワー:1,000W
<条件2>
ターゲット材料:Ru
圧力:0.3Pa
基材−ターゲット間距離:200mm
DCパワー:100W
<8> 磁界を印加して、垂直磁気記録媒体を初期磁化する初期磁化工程と、
初期磁化された垂直磁気記録媒体に、前記<1>から<7>のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体を密着させる密着工程と、
該垂直磁気記録媒体と該磁気転写用マスター担体とを密着させた状態で、初期磁化工程において印加した磁界と逆向きの磁界を印加して、該垂直磁気記録媒体に情報を記録する磁気転写工程と、を有することを特徴とする磁気転写方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、磁界を印加した際に、該磁界の印加方向に磁化が発生し、かつ、磁界を解除した際に残留磁化の発生が抑制される磁性層を有する磁気転写用マスター担体、該磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る磁気転写用マスター担体、磁気転写方法、及び磁気記録媒体について、図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、磁気転写用マスター担体を用いて垂直磁気記録媒体に情報を磁気転写する磁気転写方法の概略を示す説明図である。該磁気転写方法は、初期磁化工程、密着工程、及び磁気転写工程を有する。先ず、図1を用いて、該磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写技術の概略を説明する。
【0015】
〔磁気転写技術の概略〕
図1において、符号10は、垂直磁気記録媒体であるスレーブディスクを表し、符合20は、磁気転写用マスター担体であるマスターディスクを表す。
図1(a)は、初期磁化工程を示す説明図である。図1(a)に示されるように、該初期磁化工程において、スレーブディスク10に対し直流磁界(Hi)が印加されて、該スレーブディスク10が初期磁化される。該直流磁界(Hi)は、スレーブディスク10の平面に対し、垂直に印加される。
図1(b)は、密着工程を示す説明図である。図1(b)に示されるように、該密着工程において、初期磁化後のスレーブディスク10に該マスターディスク20を密着させる。
図1(c)は、磁気転写工程を示す説明図である。図1(c)に示されるように、該磁気転写工程において、互いに密着したスレーブディスク10及びマスターディスク20に対し、前記直流磁界(Hi)と逆向きの磁界(Hd)(記録用磁界)が印加され、該マスターディスク20に基づいた情報が、該スレーブディスク10に記録される。
【0016】
次いで、前記磁気転写用マスター担体、磁気転写方法、及び磁気記録媒体について、それぞれ図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
〔磁気転写用マスター担体〕
図2は、磁気転写用マスター担体(マスターディスク)20の断面の概略を示す説明図である。図2に示されるように、該磁気転写用マスター担体20は、基材200と、磁性層40と、を有する。
【0018】
(基材)
前記基材200の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、ガラス、ポリカーボネート等の合成樹脂、ニッケル、アルミニウム等の金属、シリコン、カーボン等の公知の材料が用いられる。
【0019】
前記基材200の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。図2において示される磁気転写用マスター担体20は、円盤状である。前記基材200は、表面に複数の凸部201を有する。
【0020】
前記凸部201は、垂直磁気記録媒体に記録すべき情報のパターンに対応して前記基材200の表面に配設されている。垂直磁気記録媒体に記録すべき情報としては、例えば、サーボ信号、アドレス情報信号等のトラッキングサーボ技術用のサーボ情報がある。該凸部201は、該基材200の表面上で、該記録すべき情報のサイズに対応した、パターンを成している。前記基材200の表面に配設される該凸部201の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0021】
図3は、磁気転写用マスター担体20(マスターディスク)を上面から見た説明図である。図3に示されるように、磁気転写用マスター担体20の表面(上面)には、サーボ情報のパターンに対応して配設される凸部からなるパターン(サーボパターン52)が、放射状に形成されている。
【0022】
前記凸部201の表面は、図2に示されるように、先端面202と、側面203とからなる。本実施形態において、先端面202は、平面となっている。該先端面202の外形形状は、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択できる。本実施形態において、該先端面202は、四角形(正方形)となっている。前記凸部201間には、凹部204がある。
【0023】
(磁性層)
前記磁性層40は、前記凸部201の表面のうち、少なくとも先端面202に形成される。図2において示されるように、本実施形態においては、該凸部201の先端面202以外に、製造容易等の理由により、凹部204の表面にも磁性層400が形成されている。なお、必要に応じて、該凸部201の側面203に該磁性層40を形成してもよい。
【0024】
前記磁性層40は、垂直磁気異方性層41と、反強磁性結合誘導層43とを有する。該磁性層40は、その他、必要に応じて、下地層、保護層等の他の層を含んでもよい。
【0025】
<垂直磁気異方性層>
前記垂直磁気異方性層41は、磁性層40に、少なくとも2層含まれる。図2に示される本実施形態に係る磁気転写用マスター担体20の磁性層40は、2層の垂直磁気異方性層41を有する。
2層の垂直磁気異方性層41のうち、反強磁性結合誘導層43の下側に配置し、凸部側に配置する一方のものを、垂直磁気異方性層41aと表し、反強磁性結合誘導層43の上側に配置する他方のものを、垂直磁気異方性層41bと表す。
【0026】
他の実施形態においては、該垂直磁気異方性層41の層数は、2層以外に、3層でもよいし、4層でもよい。該垂直磁気異方性層41の層数は、2層等の偶数でもよいし、3層等の奇数でもよい。
【0027】
前記垂直磁気異方性層41は、垂直磁気異方性を有する磁性材料を含む。該垂直磁気異方性層41の磁性材料としては、Fe、Co及びNiのうち少なくとも1つの強磁性金属と、Cr、Pt、Ru、Pd、Si、Ti、B、Ta及びOのうち少なくとも1つの非磁性物質と、から構成される合金、或いは化合物が用いられる。
前記垂直磁気異方性層41は、該垂直磁気異方性層41の面内方向に対し、垂直な方向において、磁気異方性を有する。つまり、磁性層40の積層方向に、磁気異方性を有する。
【0028】
前記垂直磁気異方性層41の厚みwとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定されるが、2nm〜60nmが好ましく、10nm〜40nmがより好ましく、15nm〜25nmが更に好ましい。
該垂直磁気異方性層41の厚みwが2nm未満であると、マスター担体の最表面における磁化が不足することがあり、厚みwが60nmを超えると、反強磁性結合効果が弱まることがある。
【0029】
前記垂直磁気異方性層41の厚みwは、例えば、原子間力顕微鏡(日本ビーコ社製、Dimension5000)によって測定できる。
【0030】
なお、該垂直磁気異方性層41の厚みは、平均値(平均厚み)である。該厚みwは、半径=5mm、10mm、20mm、及び30mm(90度毎に4箇所:計16箇所)の平均値として算出した。
【0031】
特に、反強磁性結合誘導層43に隣接する2層の垂直磁気異方性層41の厚みwにおいては、以下に示す関係がある。ここで、本実施形態に係る2層の垂直磁気異方性層41a及び41bを例に挙げて説明する。
【0032】
前記垂直磁気異方性層41aの厚みwaとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定されるが、1nm〜30nmが好ましく、5nm〜20nmがより好ましく、7nm〜13nmが更に好ましい。
該垂直磁気異方性層41aの厚みwaが2nm未満であると、マスター担体の最表面における磁化が不足することがあり、厚みwaが30nmを超えると、反強磁性結合効果が弱まることがある。
【0033】
前記垂直磁気異方性層41bの厚みwbとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定されるが、2nm〜60nmが好ましく、10nm〜40nmがより好ましく、15nm〜25nmが更に好ましい。
該垂直磁気異方性層41bの厚みwbが2nm未満であると、マスター担体の最表面における磁化が不足することがあり、厚みwbが60nmを超えると、反強磁性結合効果が弱まることがある。
【0034】
前記垂直磁気異方性層41aの残留磁化Mruと厚みtuとの積Mrutuと、前記垂直磁気異方性層41bの残留磁化Mrlと厚みtlとの積Mrltlとの比(Mrutu/Mrltl)としては、0.5〜2が好ましく、0.7〜1.5がより好ましい。前記比が0.8〜1.3の時、残留磁化(残留磁束密度)を抑制する効果が最も大きくなる。
【0035】
前記垂直磁気異方性層41aと前記垂直磁気異方性層41bとが同一の材料で構成されている等の理由で、2層の垂直磁気異方性層が同一の残留磁化を有する場合には、前記垂直磁気異方性層41aの厚みwaと、前記垂直磁気異方性層41bの厚みwbとの比(wb/wa)としては、2〜0.2が好ましく、2〜0.5がより好ましく、1.5〜0.5がさらに好ましく、1.3〜0.8が特に好ましい。前記比が1.3〜0.8の時、残留磁化(残留磁束密度)を抑制する効果が最も大きくなる。
【0036】
前記垂直磁気異方性層41の形成方法(成膜方法)としては、例えば、スパッタリング法がある。成膜圧力(Pa)、基板−ターゲット間距離(mm)、DCパワー(W)等の条件を適宜、選択することにより、スパッタリング法によって、前記垂直磁気異方性層41を形成できる。
【0037】
前記垂直磁気異方性層41が、CoPtからなる場合、主として、成膜圧力、Pt含有量(ターゲット組成比)を調節することによって、該垂直磁気異方性層41の垂直磁気異方性を制御できる。
【0038】
前記磁性層40の垂直磁気異方性層41が「垂直磁気異方性を有する」とは、以下の方法により求められる、面内磁化曲線の磁化値(Min)、及び垂直磁化曲線の磁化値(Mpe)の比(Mpe/Min)が、反磁界補正を施したヒステリシス曲線において、1以上の場合である。Min及びMpeを求める方法は、以下の通りである。
【0039】
磁気転写用マスター担体の磁性層40と同じものを、該マスター担体の製造時と同じ条件で、ガラス基板(2.5インチ)上に形成する。該ガラス基板上に形成された試料を、6mm×8mmのサイズに切り出し、その切り出した試料に対し、振動試料型磁力計(東英工業社製、VSM−C7)を用いて、面内方向及び垂直方向に磁界を印加して、その試料の磁化曲線の測定を行う。
得られた磁化曲線に基づいて、記録用磁界と同値の外部印加磁界強度での面内磁化曲線の磁化値(Min)、垂直磁化曲線の磁化値(Mpe)を算出する。
【0040】
<反強磁性結合誘導層>
前記反強磁性結合誘導層43は、前記垂直磁気異方性層41の全ての間に介在される。例えば、垂直磁気異方性層41が3層のとき、磁性層40には、該反強磁性結合誘導層43が2層含まれる。また、該垂直磁気異方性層41が6層のとき、磁性層40には、該反強磁性結合誘導層43が5層含まれる。
【0041】
前記反強磁性結合誘導層43は、隣接する2層の垂直磁気異方性層の間に、反強磁性結合が生じるように、該反強磁性結合を誘導する層である。
該反強磁性結合誘導層43の材料としては、Ru、Ir、Rh、Re及びCrのいずれか1つを少なくとも含む金属、合金、或いは積層結合体が用いられる。
【0042】
前記反強磁性結合誘導層43の厚みxとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定され、0.1nm〜2nmが好ましく、0.3nm〜1.5nmがより好ましく、0.5nm〜1nmが更に好ましい。
該反強磁性結合誘導層43の厚みxが0.1nm未満であると、薄膜均一性のばらつきにより、部分的に下層の垂直磁気異方性層41aと、上層の垂直磁気異方性層41bとが接触して、一体化してしまうことがあり、厚みxが2nmを超えると、層の垂直磁気異方性層41aと、上層の垂直磁気異方性層41bとの間における反強磁性結合効果が得られないことがある。
【0043】
前記反強磁性結合誘導層43の厚みwは、例えば、前記反強磁性結合誘導層43の断面方向の薄片を作製し、該薄片を透過電子顕微鏡(TEM)によって測定することで、求めることができる。
【0044】
なお、反強磁性結合誘導層43の厚みは、平均値(平均厚み)である。該厚みは、半径=10mm、20mm(180度毎に2箇所:計4箇所)の平均値として算出した。
【0045】
前記反強磁性結合誘導層43の形成方法(成膜方法)としては、例えば、前記垂直磁気異方性層41の形成方法と同様、スパッタリング法がある。成膜圧力(Pa)、基板−ターゲット間距離(mm)、DCパワー(W)等の条件を適宜、選択することにより、スパッタリング法によって、前記反強磁性結合誘導層43を形成できる。
【0046】
ここで、磁性層40が2層の垂直磁気異方性層41(41a、41b)と、これらの間に1層の反強磁性結合誘導層43を有する場合を例に挙げて、本発明の磁気転写用マスター担体40の磁性層40の作用を説明する。
【0047】
図4Aは、外部から磁界が印加されていない状態の磁性層40の概略を示す説明図である。
図4Aにおいて符号45で示される矢印は、該垂直磁気異方性層41a中のスピンを表し、符号46で示される矢印は、該垂直磁気異方性層41b中のスピンを表す。
図4Aにおいて示されるように、外部から磁界が印加されていない状態の磁性層40においては、垂直磁気異方性層41a中のスピン45と、垂直磁気異方性層41b中のスピン46とが、逆平行の関係になろうとする。
これは、反強磁性結合誘導層43が、垂直磁気異方性層41a及び垂直磁気異方性層41bとの間に、反強磁性結合(反強磁性的な結合)を誘導する機能を有するためである。
垂直磁気異方性層41a及び垂直磁気異方性層41bは、共に垂直磁気異方性を有している。そのため、外部から磁界が印加されていない状態の磁性層40においては、該垂直磁気異方性層41aのスピン45と、該垂直磁気異方性層41bのスピン46とが、該反強磁性結合誘導層43を介して、面内方向に対し垂直な方向に沿って(積層方向に沿って)、逆平行の関係になろうとする。
このように、反強磁性的な結合が、垂直磁気異方性層41a及び垂直磁気異方性層41bの間で形成されると、垂直磁気異方性層41a及び垂直磁気異方性層41bの磁化が互いに打ち消し合い、磁性層40全体の磁化が抑制される。
【0048】
図4Bは、外部から磁界が印加された状態の磁性層40の概略を示す説明図である。図4Bにおいて示されるように、外部から所定値以上の強度の磁界(H)44(例えば、記録用磁界)が印加されると、垂直磁気異方性層41aのスピン45は、反転して、垂直磁気異方性層41bのスピン46と同じ方向を向こうとする。
これは、外部から磁界44が印加されると、垂直磁気異方性層41a及び垂直磁気異方性層41bとの間における反強磁性結合が解消され、垂直磁気異方性層41aのスピン45及び垂直磁気異方性層41bのスピン46の挙動が、主として、磁界44に支配されるためである。
垂直磁気異方性層41aのスピン45及び垂直磁気異方性層41bのスピン46が、共に同じ方向を向くと、磁界を印加していない状態と比較して、磁性層40全体としての磁化が大きくなる。
【0049】
以上のようにして、前記磁性層40は、外部から磁界が印加されると、磁界の印加方向に磁化を発生し、磁界が解除されると、残留磁界が抑制される。
【0050】
(下地層)
前記磁性層40の下(該磁性層40と凸部201の先端面202との間)に、必要に応じて、下地層を形成してもよい。該下地層の材料としては、Pt、Ru、Pd、Co、Cr、Ni、W、Ta、Al、P、Si、Tiのうち、少なくとも1つを含有する金属、合金、或いは化合物が挙げられる。該下地層の材料としては、Pt、Ru等の白金属の金属、合金が好ましい。該下地層は、単層でもよく、多層でもよい。該下地層は、スパッタリング法等の公知の方法により、形成できる。
該下地層の厚みは、1nm〜30nmの範囲が好ましく、3nm〜10nmの範囲が更に好ましい。
【0051】
(保護層等)
前記磁性層40の上に、必要に応じて、ダイヤモンドライクカーボン等の保護層を形成してもよい。該保護層の厚みは、通常、10nm以下である。更に、該保護層の上に、潤滑層剤層を形成してもよい。
【0052】
〔磁気転写用マスター担体の製造方法〕
一実施形態に係る磁気転写用マスター担体の製造方法を例に挙げて、本発明の磁気転写用マスター担体の製造方法を説明する。
前記一実施形態に係る磁気転写用マスター担体の製造方法によって製造されるマスター担体は、磁性層40が、2層の垂直磁気異方性層41と、これらの間に1層の反強磁性結合誘導層と、を含むものである。
【0053】
前記磁気転写用マスター担体20の製造には、原盤が用いられる。先ず、原盤の一製造方法を、図5を用いて説明する。
【0054】
(原盤の製造)
図5は、磁気転写用マスター担体20の製造に用いられる原盤の製造工程を示す説明図である。
図5(a)に示されるように、表面が平滑なシリコンウェハ(Si基板)からなる原板30を用意し、この原板30上に、電子線レジスト液をスピンコート法等により塗布して、レジスト層32を形成する(図5(b)参照)。その後、該レジスト層32を、ベーキング処理(プレベーク)する。
【0055】
次いで、図5(c)に示されるように、高精度な回転ステージ、又はX−Yステージを備えた不図示の電子ビーム露光装置のステージ上に、前記原板30をセットし、該原板30を回転させながら、該レジスト層32に対し、サーボ信号に対応させて変調した電子ビームを照射し、該レジスト層32に、サーボ信号に対応させたパターンを描画露光した。なお、図5(c)において、符号33が露光部分を表す。
【0056】
次いで、図5(d)に示されるように、該レジスト層32を現像処理し、露光部分(描画部分)33を除去すると、パターン状のレジスト層32が原板30上に形成される。
なお、原板30上に塗布されるレジストは、ポジ型、ネガ型のいずれも使用可能である。なお、ポジ型と、ネガ型とでは、露光(描画)パターンが反転することになる。
前記現像処理後、レジスト層32と原板30との密着力を高めるためのベーキング処理(ポストベーク)を行う。
【0057】
次いで、図5(e)に示されるように、該レジスト層32をマスクとして、該レジスト層32の開口部34より、原板30を、表面より所定の深さだけ除去(エッチング)する。該エッチングとしては、アンダーカット(サイドエッチ)を最小にするべく、異方性のエッチングを選択することが好ましい。該異方性のエッチングとしては、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)が好ましい。
【0058】
次いで、図5(f)に示されるように、エッチング後の該レジスト層32を除去する。該レジスト層32の除去方法としては、アッシング等の乾式法、剥離液による除去等の湿式法のいずれも採用できる。該レジスト層32が除去されると、原盤36が得られる。
【0059】
(磁気転写用マスター担体の製造)
前記原盤36を用いた、磁気転写用マスター担体20の一製造方法を、図6を用いて説明する。
【0060】
図6(g)に示されるように、原盤36の表面に、厚みが均一な導電層37を形成する。該導電層37の形成方法としては、PVD(Physical Vapor Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の各種金属成膜法を採用できる。該導電層37としては、例えば、Niを主成分とする膜からなる。このような、Niを主成分とする膜は、形成が容易であり、且つ、硬質であるため、該導電膜37として好適である。該導電層37の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、一般的に、数十nm程度が採用される。
【0061】
次いで、図6(h)に示されるように、原盤36の表面に、電鋳により、所望の厚みの金属板38を積層する。該金属板の材料としては、例えば、Niが挙げられる。
電鋳は、所定の電鋳装置(不図示)において行なわれる。該電解装置は、スルファミン酸Ni等の電解液の入った電解液槽を有し、該電解液槽中の電解液に原盤36が浸される。該原盤36を陽極とし、該陽極と、図示されない陰極との間を通電すると、該原盤36上に金属板が積層される。電解液の濃度、電解液のpH、電流値等の諸条件は、適宜、設定される。
その後、前記金属板38を積層した原盤36は、電鋳装置の電解液槽から取り出され、純水等からなる剥離液に浸される。該剥離液中において、金属板38は、原盤36から引き剥がされる。このようにして、図6(i)に示されるような、原盤36表面の凹凸形状が反転した、表面形状を有する基板200が得られる。
【0062】
次いで、前記基板200表面上の凸部201の先端面202に図示しない下地層を形成する。該下地層の材料は、例えば、Taから成る。該下地層は、前記材料をターゲットとして用いたスパッタリング法によって形成される。
次いで、図6(j)において示されるように、前記基板200表面上の凸部201の先端面202に垂直磁気異方性層41aを形成する。該垂直磁気異方性層41aの材料は、例えば、CoPtからなる。該垂直磁気異方性層41aは、前記材料をターゲットとして用いたスパッタリング法によって形成される。
【0063】
次いで、図6(k)において示されるように、前記垂直磁気異方性層41aの上に、反強磁性結合誘導層43を形成する。該反強磁性結合誘導層43の材料は、例えば、Ruからなる。該反強磁性結合誘導層43は、前記材料をターゲットとして用いたスパッタリング法によって形成される。
【0064】
次いで、図6(l)において示されるように、前記反強磁性結合誘導層43の上に、垂直磁気異方性層41bを形成する。該垂直磁気異方性層41bの材料は、例えば、CoPtからなる。該垂直磁気異方性層41bは、前記材料をターゲットとして用いたスパッタリング法によって形成される。
その後、必要に応じて、前記基板200を所定サイズに打抜き加工等すると、磁気転写用マスター担体20が得られる。
【0065】
〔垂直磁気記録媒体〕
前記磁気転写用マスター担体20を用いて磁気転写される垂直磁気記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択される。図7は、垂直磁気記録媒体の断面の概略を示す説明図である。ここで、図7を用いて、一実施形態に係る該垂直磁気記録媒体の構成を説明する。
【0066】
図7に示されるように、該垂直磁気記録媒体10は、基板12と、軟磁性層(軟磁性下地層:SUL)13と、非磁性層(中間層)14と、磁性層15と、を有する。更に、図7において示される該垂直磁気記録媒体10は、該磁性層16上に、保護層16及び潤滑剤層17を備える。
【0067】
前記基板12は、円盤状であり、ガラス、Al(アルミニウム)等の非磁性材料からなる。
【0068】
前記軟磁性層13は、該磁性層16の垂直磁化状態を安定させ、記録再生時の感度を向上させる等の目的で設けられる。該軟磁性層13に用いられる材料としては、CoZrNb、FeTaC、FeZrN、FeSi合金、FeAl合金、パーマロイ等のFeNi合金、パーメンジュール等のFeCo合金等の軟磁性材料が用いられる。該軟磁性層13は、ディスクの中心から外側に向かって半径方向に(放射状に)磁気異方性が付けられている。
【0069】
前記非磁性層14は、後に形成する磁性層15の垂直方向の磁気異方性を大きくする等の目的で設けられる。該非磁性層14に用いられる材料としては、Ti、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru、Pd、Ta、Pt等が用いられる。
【0070】
前記磁性層15は、垂直磁化膜からなる。該垂直磁化膜は、膜内の磁化容易軸が基板12に対し、主として、垂直方向に配向している。該磁性層15に、情報が記録される。
該磁性層15に用いられる材料としては、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Co合金-SiO2、Co合金-TiO2、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi等)等が用いられる。
【0071】
前記保護層16は、C(カーボン)等からなり、前記潤滑剤層17は、PFPE等のフフッ素系潤滑剤等からなる。
【0072】
なお、前記垂直磁気記録媒体10は、前記基板12の片面に磁性層15が形成されているが、他の実施形態においては、該基板12の表裏面に磁性層15が形成されてもよい。
また、他の実施形態においては、軟磁性層13、及び非磁性層14が、複数層形成されてもよい。
【0073】
〔磁気転写方法〕
以下、前記磁気転写用マスター担体を用いて、前記垂直磁気記録媒体に情報を磁気転写する方法を説明する。
該磁気転写方法は、前記磁気転写技術の概略において説明した通り、初期化工程、密着工程、及び磁気転写工程を有する。以下、図1等を用いて、一実施形態に係る磁気転写方法を説明する。
【0074】
<初期磁化工程>
前記初期化工程は、垂直磁気記録媒体10(スレーブディスク)に対し直流磁界(Hi)を印加して、該垂直磁気記録媒体10を初期磁化する工程である。
図1(a)に示されるように、該初期磁化工程において、垂直磁気記録媒体10に対し、直流磁界(Hi)が印加される。該直流磁界(初期化磁界)(Hi)は、垂直磁気記録媒体10の表面に対し、垂直に印加される。該直流磁界(Hi)は、所定の磁界印加手段(不図示)により、印加される。該直流磁界(Hi)の強さは、垂直磁気記録媒体10の保磁力Hc以上に設定される。
【0075】
図8は、初期磁化後の垂直磁気記録媒体の磁性層の磁化方向を示す説明図である。図8において示されるように、初期磁化後の垂直磁気記録媒体10の磁性層15は、該垂直磁気記録媒体10のディスク面と垂直な一方向に、初期磁化される。なお、図8における符号Piで示される矢印は、該磁性層の磁化方向を表す。
【0076】
<密着工程>
前記密着工程は、初期磁化後の垂直磁気記録媒体10に該磁気転写用マスター担体(
マスターディスク)20を密着させる工程である。
図1(b)に示されるように、初期磁化後の垂直磁気記録媒体10と、磁気転写用マスター担体20と重ね合わせ、密着させる。
該密着工程では、該磁気転写用マスター担体20の表面の凸部201上の磁性層40と、該垂直磁気記録媒体10の磁性層(記録層)とが密着する。該磁気転写用マスター担体20は、所定の押圧力で、該垂直磁気記録媒体10に密着させる。
【0077】
なお、必要に応じて、磁気転写用マスター担体20を垂直磁気記録媒体10に密着する前に、該垂直磁気記録媒体10に、グライドヘッド、研磨体等によって表面の微小突起又は付着粉塵埃を除去するクリーニング処理(バーニッシング等)を施してもよい。
【0078】
該密着工程は、図1(b)に示されるように、本実施形態においては、垂直磁気記録媒体10の片面のみに磁気転写用マスター担体20を密着させているが、他の実施形態においては、両面に磁性層を有する垂直磁気記録媒体(スレーブディスク)に対し、両面から磁気転写用マスター担体20を密着させてもよい。
【0079】
なお、該密着工程では、外部より磁界が印加されていないため、磁気転写用マスター担体20の磁性層40においては、図4Aにおいて示されるように、垂直磁気異方性層41aと垂直磁気異方性層41bとの間に、反強磁性結合が発生している。そのため、該磁性層40からの磁化の発生は、抑制される。
【0080】
<磁気転写工程>
前記磁気転写工程は、互いに密着した垂直磁気記録媒体10及び磁気転写用マスター担体20に対し、前記初期磁界(Hi)と逆向きの磁界(Hd)である記録用磁界を印加することにより、該磁気転写用マスター担体20に基づいた情報を、該垂直磁気記録媒体10に記録する工程である。
図1(c)に示されるように、互いに密着した垂直磁気記録媒体10及び磁気転写用マスター担体20に対し、所定の磁界印加手段(不図示)により、該初期磁界(Hi)と逆向きの磁界(Hd)を発生させる。
【0081】
図9は、磁気転写工程における垂直磁気記録媒体10及び磁気転写用マスター担体20の断面の様子を示す説明図である。図9に示されるように、垂直磁気記録媒体10及び磁気転写用マスター担体20を密着させた状態で、記録用磁界(Hd)を印加すると、該磁界(Hd)により生じた磁束Gは、磁気転写用マスター担体20に進入し、磁気転写用マスター担体20の有する磁性層40に吸収される。その結果、磁気転写用マスター担体20の凸部201の領域で、磁界が強くなる。これに対し、磁気転写用マスター担体20の凹部204の領域の磁界は、該凸部201の領域の磁界よりも弱くなる。このようにして、垂直磁気記録媒体10に記録すべき情報に対応した磁界のパターンが形成される。
その結果、凸部201に対応する領域では、垂直磁気記録媒体10の磁性層15の磁化の向きが反転し、情報が記録される、なお、凹部204に対応する領域では、磁性層15の磁化の向きは変化しない。
【0082】
図10は、磁気転写工程後の垂直磁気記録媒体の磁性層の磁化方向を示す説明図である。図10において示されるように、垂直磁気記録媒体10の磁性層16には、サーボ信号等の情報が、初期磁化Piの反対向きの磁化となって記録磁化Pdとして記録される。
【0083】
前記記録用磁界(Hd)は、目的に応じて適宜選択されるが、一般に、垂直磁気記録媒体10の磁性層16の保磁力(Hc)の40〜130%の強度の磁界が好ましく、50〜120%が更に好ましい。
【0084】
磁気転写工程において、前記記録用磁界(Hd)が印加されると、磁気転写用マスター担体20の磁性層40においては、図4Bに示されるように垂直磁気異方性層41a及び垂直磁気異方性層41bとの間における反強磁性的な結合は解消され、垂直磁気異方性層41aのスピン45、及び垂直磁気異方性層41bのスピン46が、共に外部から印加された記録用磁界の方向を向く。
そのため、磁気転写工程において、磁気転写用マスター担体20の磁性層40は、それ自身、垂直磁気記録媒体の記録面(磁性層の表面)に対し、垂直な方向の磁化を有する。
【0085】
図11Aは、本実施形態に係る磁気転写用マスター担体20の磁性層40のM−H曲線を模式的に示した説明図である。横軸は外部印加磁界(H)を表し、縦軸は磁化(M)を表す。
図11Aにおいて示されるように、該磁気転写用マスター担体20の磁性層40は、外部より磁界が印加されると、磁化が大きくなる。また、外部磁界をゼロにすると、該磁性層40の磁化が最も小さくなる。この時、該磁気転写用マスター担体20の磁性層40であれば、残留磁化(Mr)を、0にすることも可能である。
【0086】
図11Bは、従来の磁気転写用マスター担体に用いられる磁性層のM−H曲線を模式的に示した説明図である。横軸は外部印加磁界(H)を表し、縦軸は磁化(M)を表す。
図11Bにおいて示されるように、外部より磁界が印加されて、磁化が大きくなる従来の磁性層は、外部磁界がゼロであっても、磁化が大きく、残留磁化(Mr)を0にできない。
【0087】
磁気転写用マスター担体20を用いて垂直磁気記録媒体10に情報を記録する際(磁気転写する際)、例えば、互いに密着した垂直磁気記録媒体10及び磁気転写用マスター担体20を、所定の回転手段(不図示)により回転させつつ、前記磁界印加手段によって記録用磁界(Hd)を印加してもよい。他の実施形態においては、該磁界印加手段に回転機構を儲け、垂直磁気記録媒体10及び磁気転写用マスター担体20に対し、相対的に回転させてもよい。
【0088】
図12は、磁気転写装置の概略を示す説明図である。該磁気転写装置は、コア62にコイル63が巻きつけられた電磁石からなる磁界印加手段60を有する。該磁気転写装置は、このコイル63に電流を流すと、ギャップ64において、互いに密着した磁気転写用マスター担体20及び垂直磁気記録媒体10に対し、垂直に磁界が発生する構造になっている。発生させる磁界の向きは、コイル63に流す電流の向きによって変えられる。従って、このような磁気転写装置によって、垂直磁気記録媒体10の初期磁化、及び磁気転写を行なえる。
【0089】
なお、前記磁気転写用マスター担体20により記録された垂直磁気記録媒体は、例えば、ハードディスク装置等の磁気記録再生装置に組み込まれて、使用される。該垂直磁気記録媒体は、サーボ精度が高く、良好な記録再生特性の高記録密度磁気記録再生装置を得られる。
【0090】
ここで、本発明の他の実施形態に係る磁気転写用マスター担体の概略を、図面を用いて説明する。図13は、他の実施形態に係る磁気転写用マスター担体20Aの概略を示す説明図である。図13に示されるように、該磁気転写用マスター担体20Aは、凸部201の先端面202に、磁性層40を有し、その磁性層は、3層の垂直磁気異方性層41(41a、41b及び41c)と、2層の反強磁性結合誘導層43(43a及び43b)を有する。
反強磁性結合誘導層43aは、垂直磁気異方性層41a及び41bの間に介在し、反強磁性結合誘導層43bは、垂直磁気異方性層41b及び41cの間に介在している。
図13は、外部磁界が印加されていない状態の磁性層を表している。
該反強磁性結合誘導層43aに隣接する垂直磁気異方性層41aと、垂直磁気異方性層41bとの間には、反強磁性結合が形成されている。
また、反強磁性結合誘導層43bに隣接する垂直磁気異方性層41bと、垂直磁気異方性層41cとの間にも、反強磁性結合が形成されている。
なお、該磁気転写用マスター担体20Aに外部磁界(例えば、記録用磁界)が印加されると、何れの垂直磁気異方性層41の電子スピンも、外部磁界の印加方向に沿って向こうとする。
このように、本発明の磁気転写用マスター担体は、磁性層40の垂直磁気異方性層41が3層以上であってもよい。
【実施例】
【0091】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下に示される実施例に限定されるものではない。
【0092】
〔実施例1〕
〔磁気転写用マスター担体1〕
(原盤の作製)
【0093】
8インチのSiウェハ(原板)上に、電子線レジストをスピンコート法により、100nmの厚みで塗布した。塗布後、該原板上の該レジストに対し、回転式電子線露光装置を用いて、サーボ情報等に対応させて変調した電子ビームを照射し、該レジストを露光した。その後、該レジストを現像し、未露光部分を除去して、該原板上に該レジストのパターンを形成した。
【0094】
次いで、パターン状の該レジストをマスクとして用い、該原板に対して反応性エッチング処理を行い、該レジストでマスクされていない箇所を掘り下げた。該エッチング処理後、該原板上に残存するレジストを溶剤で洗浄し、除去した。その後、該原板を乾燥させて、磁気転写用マスター担体を作製するための原盤を得た。
【0095】
(磁気転写用マスター担体の作製)
前記原盤上に、Niからなる導電層(厚み:6nm)をスパッタリング法により、形成した。その後、該導電層を形成した原盤を母型として用い、電鋳法により、該原盤上に、Ni層を形成した。その後、Ni層を原盤から引き剥がし、該Ni層を洗浄等して、表面に凸部を配設したNi基材を得た。
【0096】
次いで、前記Ni基材を、所定のチャンバー内にセットし、該Ni基材の凸部に、下地層としてのTa膜(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=300W。
前記のように下地層を形成した後、垂直磁気異方性層(磁性層1)としてのCoPt膜(Co80_Pt20at%)(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=1,000W。
【0097】
前記のように垂直磁気異方性層を形成した後、該垂直磁気異方性層(磁性層1)の上に、反強磁性結合誘導層としてのRu膜(厚み:0.7nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=100W。
【0098】
前記のように反強磁性結合誘導層を形成した後、該反強磁性結合誘導層の上に、垂直磁気異方性層(磁性層2)としてのCoPt膜(Co80_Pt20at%)(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=1,000W。
【0099】
以上のようにして、磁気転写用マスター担体1を作製した。
【0100】
〔垂直磁気記録媒体〕
2.5インチのガラス基板上に、以下に示す手順で各層を形成し、垂直磁気記録媒体を作製した。
作製した垂直磁気記録媒体は、軟磁性層、第1の非磁性配向層、第2の非磁性配向層、磁性層、保護層、及び潤滑剤層が順次形成されている。
なお、軟磁性層、第1の非磁性配向層、第2の非磁性配向層、磁性層、及び保護層は、スパッタリング法で形成し、潤滑剤層は、ディップ法で形成した。
【0101】
(軟磁性層の形成)
前記軟磁性層として、CoZrNb膜を、100nmの厚みで形成した。
具体的には、前記ガラス基板を、CoZrNbターゲットと対向させて配置し、圧力が0.6PaとなるようにArガスを流入させ、DCパワー:1,500Wで放電して、成膜した。
【0102】
(第1の非磁性配向層の形成)
前記第1の非磁性配向層として、Ti膜を、5nmの厚みで形成した。
具体的には、前記軟磁性層を形成した後のガラス基板を、Tiターゲットと対向させて配置し、圧力が0.5PaとなるようにArガスを流入させ、DCパワー:1,000Wで放電して、成膜した。
【0103】
(第2の非磁性配向層の形成)
前記第2の非磁性配向層として、Ru膜を、6nmの厚みで形成した。
具体的には、前記第1の非磁性配向層を形成した後のガラス基板を、Ruターゲットと対向させて配置し、圧力が0.8PaとなるようにArガスを流入させ、DCパワー:900Wで放電して、成膜した。
【0104】
(磁性層の形成)
前記磁性層として、CoCrPtO膜を、18nmの厚みで形成した。
具体的には、前記第2の非磁性配向層を形成した後のガラス基板を、CoCrPtOターゲットと対向させて配置し、圧力が14PaとなるようにO2を0.06%含むArガスを流入させ、DCパワー:290Wで放電して、成膜した。
【0105】
(保護層の形成)
前記保護層として、C膜を、4nmの厚みで形成した。
具体的には、前記磁性層を形成した後のガラス基板を、Cターゲットと対向させて配置し、圧力が0.5PaとなるようにArガスを流入させ、DCパワー:1,000Wで放電して、成膜した。
【0106】
(潤滑剤層の形成)
前記潤滑剤層として、PFPE潤滑剤からなる層を、2nmの厚みで形成した。
【0107】
前記垂直磁気記録媒体の保磁力は、334kA/m(4.2kOe)であった。
【0108】
〔磁気転写〕
(初期磁化工程)
前記垂直磁気記録媒体に磁界を印加して、該垂直磁気記録媒体の初期磁化を行なった。印加した磁界の強度は、10kOeである。
【0109】
(密着工程)
初期磁化後の垂直磁気記録媒体に対し、前記磁気転写用マスター担体を、9kg/cm2の圧力で密着させた。
【0110】
(磁気転写工程)
前記垂直磁気記録媒体と、前記磁気転写用マスター担体とを密着させた状態で、記録磁界を印加した。該記録磁界の強度は、4.2kOeである。
その後、該記録磁界の印加を停止し、該磁気転写用マスター担体を、該垂直磁気記録媒体から分離した。
【0111】
〔比較例1〕
(磁気転写用マスター担体101)
反強磁性結合誘導層を形成しなかったこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体101を作製した。該磁気転写用マスター担体101を用いて、前記実施例1と同様にして、前記垂直磁気記録媒体に対し、磁気転写を行なった。
【0112】
〔評価1〕
(磁気転写用マスター担体1の残留磁化)
記録磁界の印加を停止した後、垂直磁気記録媒体から分離した磁気転写用マスター担体1の磁性層の残留磁化(Mr)を評価した。
なお、残留磁化(Mr)の測定は、振動試料型磁力計(東英工業社製、VSM−C7)を使用した。磁気転写用マスター担体の磁性層の構成と、同じ構成の試料を作製し、その試料より得られたM−Hカーブから、外部印加磁界がゼロの時の磁化を読み取った。
結果は、表1に示した。
【0113】
〔評価2〕
(垂直磁気記録媒体の転写信号S/N)
前記磁気転写用マスター担体101用いて磁気転写された垂直磁気記録媒体の信号S/Nの評価を行った。
具体的には、前記比較例1の磁気転写用マスター担体101を用いて磁気転写された、ビット長=100nmに相当する連続単一信号(150波形分)をデジタルオシロスコープで読み取り、波形解析により算出した、垂直磁気記録媒体の信号S/Nを基準値とし、該基準値に対する増減値を求めた。
結果は、表1に示した。
【0114】
〔実施例2〕
(磁気転写用マスター担体2)
反強磁性結合誘導層の厚みを1nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体2を作製した。
該磁気転写用マスター担体2を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体2に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価、及び転写信号S/Nの評価を行った。結果は表1に示した。
【0115】
〔実施例3〕
(磁気転写用マスター担体3)
反強磁性結合誘導層の厚みを2nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体3を作製した。
該磁気転写用マスター担体3を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体3に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価、及び転写信号S/Nの評価を行った。結果は表1に示した。
【0116】
〔実施例4〕
(磁気転写用マスター担体4)
反強磁性結合誘導層の厚みを4nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体4を作製した。
該磁気転写用マスター担体4を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体4に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価、及び転写信号S/Nの評価を行った。結果は表1に示した。
【0117】
〔実施例5〕
(磁気転写用マスター担体5)
2層の垂直磁気異方性層のうち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを5nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体5を作製した。
該磁気転写用マスター担体5を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体5に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表2に示した。
【0118】
〔実施例6〕
(磁気転写用マスター担体6)
2層の垂直磁気異方性層のうち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを20nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体6を作製した。
該磁気転写用マスター担体6を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体6に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表2に示した。
【0119】
〔実施例7〕
(磁気転写用マスター担体7)
2層の垂直磁気異方性層のうち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを40nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体7を作製した。
該磁気転写用マスター担体7を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体7に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表2に示した。
【0120】
〔実施例8〕
(磁気転写用マスター担体8)
2層の垂直磁気異方性層のうち、最初に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを40nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体8を作製した。
該磁気転写用マスター担体8を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体8に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表2に示した。
【0121】
〔実施例9〕
(磁気転写用マスター担体9)
2層の垂直磁気異方性層のうち、最初に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを20nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体9を作製した。
該磁気転写用マスター担体9を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体9に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表2に示した。
【0122】
〔実施例10〕
(磁気転写用マスター担体10)
2層の垂直磁気異方性層のうち、最初に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体10を作製した。
該磁気転写用マスター担体10を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体10に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表2に示した。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
〔実施例11〕
(磁気転写用マスター担体11)
実施例1と同様にして、Ni基材を作製した。
次いで、前記Ni基材を、所定のチャンバー内にセットし、該Ni基材の凸部に、下地層としてのTa膜(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=300W。
前記のように下地層を形成した後、垂直磁気異方性層(磁性層1)としてのCoPt膜(Co80_Pt20at%)(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=1,000W。
【0126】
前記のように垂直磁気異方性層(磁性層1)を形成した後、該垂直磁気異方性層の上に、反強磁性結合誘導層(誘導層1)としてのRu膜(厚み:0.7nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=100W。
【0127】
前記のように反強磁性結合誘導層(誘導層1)を形成した後、該反強磁性結合誘導層の上に、垂直磁気異方性層(磁性層2)としてのCoPt膜(Co80_Pt20at%)(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=1,000W。
【0128】
前記のように垂直磁気異方性層(磁性層2)を形成した後、該垂直磁気異方性層の上に、反強磁性結合誘導層(誘導層2)としてのRu膜(厚み:0.7nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=100W。
【0129】
前記のように反強磁性結合誘導層(誘導層2)を形成した後、該反強磁性結合誘導層の上に、垂直磁気異方性層(磁性層3)としてのCoPt膜(Co80_Pt20at%)(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=1,000W。
【0130】
以上のようにして、磁気転写用マスター担体11を作製した。
【0131】
該磁気転写用マスター担体11を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体11に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表3に示した。
【0132】
〔実施例12〕
(磁気転写用マスター担体12)
実施例11において、3層の垂直磁気異方性層うち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを20nmに代えたこと以外は、実施例11と同様にして、磁気転写用マスター担体12を作製した。
該磁気転写用マスター担体12を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体12に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表3に示した。
【0133】
【表3】
【0134】
〔実施例13〕
(磁気転写用マスター担体13)
前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体13を作製した。
該磁気転写用マスター担体13を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体13に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価を行った。
また、下記の方法により、垂直磁気異方性層の残留磁化を評価し、下記の基準により総合評価を実施した。
結果は表4に示した。
【0135】
〔評価3〕
(垂直磁気異方性層の残留磁化)
記録磁界の印加を停止した後、垂直磁気記録媒体から分離した垂直磁気異方性層の磁性層の残留磁化(Mru、Mrl)を評価した。
なお、残留磁化(Mru、Mrl)の測定は、振動試料型磁力計(東英工業社製、VSM−C7)を使用した。磁気転写用マスター担体の磁性層の構成と、同じ構成の試料を作製し、その試料より得られたM−Hカーブから、外部印加磁界がゼロの時の磁化を読み取った。
結果は、表4に示した。
【0136】
(総合評価)
◎:S/Nが+0.7dB以上で、且つ残留磁化Mrが60emu/cc未満
○:S/Nが+0.1dB以上
△:S/Nが±0.1dB未満のもの
×:S/Nが±0.1dB未満のもので、且つ残留磁化Mrが200emu/cc以上
【0137】
〔実施例14〕
(磁気転写用マスター担体14)
反強磁性結合誘導層の厚みを0.5nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体14を作製した。
該磁気転写用マスター担体14を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体14に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0138】
〔実施例15〕
(磁気転写用マスター担体15)
反強磁性結合誘導層の厚みを0.6nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体15を作製した。
該磁気転写用マスター担体15を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体15に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0139】
〔実施例16〕
(磁気転写用マスター担体16)
反強磁性結合誘導層の厚みを0.8nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体16を作製した。
該磁気転写用マスター担体16を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体16に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0140】
〔実施例17〕
(磁気転写用マスター担体17)
反強磁性結合誘導層の厚みを0.9nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体17を作製した。
該磁気転写用マスター担体17を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体17に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0141】
〔実施例18〕
(磁気転写用マスター担体18)
前記実施例2と同様にして、磁気転写用マスター担体18を作製した。
該磁気転写用マスター担体18を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体18に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0142】
〔実施例19〕
(磁気転写用マスター担体19)
前記実施例3と同様にして、磁気転写用マスター担体19を作製した。
該磁気転写用マスター担体19を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体19に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0143】
〔実施例20〕
(磁気転写用マスター担体20)
前記実施例4と同様にして、磁気転写用マスター担体20を作製した。
該磁気転写用マスター担体20を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体20に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0144】
〔比較例2〕
(磁気転写用マスター担体102)
前記比較例1と同様にして、磁気転写用マスター担体102を作製した。
該磁気転写用マスター担体102を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体102に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0145】
【表4】
【0146】
〔実施例21〕
(磁気転写用マスター担体21)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体21を作製した。
該磁気転写用マスター担体21を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体21に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0147】
〔実施例22〕
(磁気転写用マスター担体22)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体22を作製した。
該磁気転写用マスター担体22を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体22に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0148】
〔実施例23〕
(磁気転写用マスター担体23)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体23を作製した。
該磁気転写用マスター担体23を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体23に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0149】
〔実施例24〕
(磁気転写用マスター担体24)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体24を作製した。
該磁気転写用マスター担体24を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体24に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0150】
〔実施例25〕
(磁気転写用マスター担体25)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体25を作製した。
該磁気転写用マスター担体25を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体25に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0151】
〔実施例26〕
(磁気転写用マスター担体26)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体26を作製した。
該磁気転写用マスター担体26を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体26に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0152】
〔実施例27〕
(磁気転写用マスター担体27)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体27を作製した。
該磁気転写用マスター担体27を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体27に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0153】
〔実施例28〕
(磁気転写用マスター担体28)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体28を作製した。
該磁気転写用マスター担体28を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体28に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0154】
〔実施例29〕
(磁気転写用マスター担体29)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体29を作製した。
該磁気転写用マスター担体29を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体29に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0155】
〔実施例30〕
(磁気転写用マスター担体30)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体30を作製した。
該磁気転写用マスター担体30を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体30に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0156】
【表5】
【0157】
〔実施例31〕
(磁気転写用マスター担体31)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の材質をCoPt膜(Co70_Pt30at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体31を作製した。
該磁気転写用マスター担体31を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体31に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0158】
〔実施例32〕
(磁気転写用マスター担体32)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の材質をCoPt膜(Co74_Pt26at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体32を作製した。
該磁気転写用マスター担体32を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体32に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0159】
〔実施例33〕
(磁気転写用マスター担体33)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の材質をCoPt膜(Co76_Pt24at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体33を作製した。
該磁気転写用マスター担体33を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体33に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0160】
〔実施例34〕
(磁気転写用マスター担体34)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の材質をCoPt膜(Co78_Pt22at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体34を作製した。
該磁気転写用マスター担体34を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体34に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0161】
〔実施例35〕
(磁気転写用マスター担体35)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の材質をCoPt膜(Co78_Pt22at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体35を作製した。
該磁気転写用マスター担体35を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体35に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0162】
〔実施例36〕
(磁気転写用マスター担体36)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の材質をCoPt膜(Co76_Pt24at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体36を作製した。
該磁気転写用マスター担体36を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体36に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0163】
〔実施例37〕
(磁気転写用マスター担体37)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の材質をCoPt膜(Co74_Pt26at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体37を作製した。
該磁気転写用マスター担体37を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体37に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0164】
〔実施例38〕
(磁気転写用マスター担体38)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の材質をCoPt膜(Co70_Pt30at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体38を作製した。
該磁気転写用マスター担体38を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体38に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0165】
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は、磁気転写方法の概略を示す説明図である。
【図2】図2は、磁気転写用マスター担体の断面の概略を示す説明図である。
【図3】図3は、磁気転写用マスター担体の上面の説明図である。
【図4A】図4Aは、磁界が印加されていない状態の磁性層の概略を示す説明図である。
【図4B】図4Bは、磁界が印加された状態の磁性層の概略を示す説明図である。
【図5】図5は、磁気転写用マスター担体の製造に用いられる原盤の製造工程を示す説明図である。
【図6】図6は、磁気転写用マスター担体の製造工程を示す説明図である。
【図7】図7は、垂直磁気記録媒体の断面の概略を示す説明図である。
【図8】図8は、初期磁化後の垂直磁気記録媒体の磁性層の磁化方向を示す説明図である。
【図9】図9は、磁気転写における垂直磁気記録媒体及び磁気転写用マスター担体の断面の様子を示す説明図である。
【図10】図10は、磁気転写後の垂直磁気記録媒体の磁性層の磁化方向を示す説明図である。
【図11A】図11Aは、磁気転写用マスター担体の磁性層のM−H曲線を模式的に示した説明図である。
【図11B】図11Bは、従来の磁気転写用マスター担体の磁性層のM−H曲線を模式的に示した説明図である。
【図12】図12は、磁気転写装置の概略を示す説明図である。
【図13】図13は、本発明の他の実施形態に係る磁気転写用マスター担体の磁性層の概略を示す説明図である。
【符号の説明】
【0167】
10 垂直磁気記録媒体(スレーブディスク)
20、20A 磁気転写用マスター担体(マスターディスク)
200 基材
201 凸部
202 先端面
203 側面
204 凹部
40 磁性層
41、41a、41b、41c 垂直磁気異方性層
43、43a、43b 反強磁性結合誘導層
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体に情報を磁気転写する磁気転写用マスター担体、該磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法、及び該磁気転写マスター担体を用いて磁気転写された磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
情報を高密度で記録可能な磁気記録媒体として、垂直磁気記録方式の磁気記録媒体(以下、垂直磁気記録媒体)が知られている。この垂直磁気記録媒体の情報記録領域は、狭トラックで構成されている。そのため、垂直磁気記録媒体では、狭いトラック幅において正確に磁気ヘッドを走査し、高いS/N比で信号を再生するためのトラッキングサーボ技術が重要となる。このトラッキングサーボを行うためには、トラッキング用のサーボ信号、アドレス情報信号、再生クロック信号等のサーボ情報を、所定間隔で垂直磁気記録媒体に、いわゆるプリフォーマットとして記録しておく必要がある。
【0003】
垂直磁気記録媒体に、サーボ情報をプリフォーマットする方法としては、例えば、サーボ情報に対応した、表面に磁性層を有する複数の凸部からなるパターンが形成されたマスター担体を、該垂直磁気記録媒体に密着させた状態で、記録用磁界を印加し、該マスター担体のパターンに対応するサーボ情報を、該垂直磁気記録媒体に磁気転写する方法がある(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
前記方法において、垂直磁気記録媒体に前記マスター担体を密着させた状態で記録用磁界が印加されると、前記マスター担体の磁化状態に基づいて、磁束がパターン状に配置する磁性層に吸収される。その結果、前記記録用磁界は、前記マスター担体のパターンに対応して強められる。このパターン状に強められた磁界によって、垂直磁気記録媒体の所定箇所のみが磁化される。このようにして、該マスター担体のパターンに対応するサーボ情報が、該垂直磁気記録媒体に磁気転写される。
なお、磁気転写後、記録用磁界は解除され、該垂直磁気記録媒体と密着している該マスター担体は、該垂直磁気記録媒体から分離される。
【0005】
従来、この種のマスター担体の磁性層の材料としては、高飽和磁化を有する磁性材料が用いられていた。記録用磁界を印加した際に、該マスター担体の磁性層の磁化を高めて、該磁性層に磁束を吸収させ易くするためである。
【0006】
しかしながら、該マスター担体の磁性層は、厚みが数十ナノメータ程度であり、非常に薄く、反磁界の影響を強く受ける。そのため、該磁性層の材料として高飽和磁化を有する磁性材料を使用しても、反磁界によって実効的な磁性層への印加磁界(記録用磁界)が減少し、該磁性層が未飽和状態となってしまう。その結果、該磁性層の磁化を、希望通り高くすることができず、問題であった。
【0007】
なお、印加する磁界を強くすることも考えられるが、印加磁界が強くなると、該マスター担体のパターン状に配置する磁性層以外の箇所に存在する磁界によっても、該垂直磁気記録媒体が磁化されることがあり、問題となる。
【0008】
更に、従来、この種のマスター担体の磁性層は、残留磁化が高く問題となることがあった。前記のように、磁気転写後、記録用磁界が解除されても、該マスター担体の磁性層には残留磁化が存在している。該残留磁化が大きいと、前記のように、該マスター担体を該垂直磁気記録媒体から分離する際、該マスター担体の位置が、該垂直磁気記録媒体の表面方向に沿って僅かにずれても、該マスター担体の磁性層の残留磁化によって、該垂直磁気記録媒体が不要に磁化されることがあり、問題であった。
【0009】
【特許文献1】特開2003−203325号公報
【特許文献2】特開2000−195048号公報
【特許文献3】米国特許第7218465号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、磁界を印加した際に、該磁界の印加方向に磁化が発生し、かつ、磁界を解除した際に残留磁化の発生が抑制される磁性層を有する磁気転写用マスター担体、該磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 垂直磁気記録媒体に記録すべき情報のパターンに対応して配設される凸部を表面に有する基材と、
前記凸部の先端面に少なくとも形成される磁性層と、を備え、
磁界が印加されると、前記磁性層が磁束を吸収して、磁界のパターンを形成する磁気転写用マスター担体であって、
該磁性層は、少なくとも2層の垂直磁気異方性層と、これらの垂直磁気異方性層の全ての間に介在され、隣接する2層の垂直磁気異方性層の間の反強磁性結合を誘導する反強磁性結合誘導層と、を有することを特徴とする磁気転写用マスター担体である。
該<1>に係る磁気転写用マスター担体は、磁性層が少なくとも2層の垂直磁気異方性層と、これらの垂直磁気異方性層の全ての間に介在され、隣接する2層の垂直磁気異方性層の間の反強磁性結合を誘導する反強磁性結合誘導層と、を有するため、隣接する2層の垂直磁気異方性層の間に反強磁性結合が形成され、残留磁化が抑制される。また、所定値以上の磁界が印加されると、反強磁性結合が解消され、該磁界の印加方向に磁化が発生する。
<2> 反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の残留磁化Mruと厚みtuとの積Mrutuと、他方の垂直磁気異方性層の残留磁化Mrlと厚みtlとの積Mrltlとの比(Mrutu/Mrltl)が、0.5〜2である前記<1>に記載の磁気転写用マスター担体である。
<3> 2層の垂直磁気異方性層が同一の残留磁化を有し、
反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の厚みwaと、他方の垂直磁気異方性層の厚みwbとの比(wb/wa)が、2〜0.2である前記<1>から<2>のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体である。
<4> 反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の厚みwaと、他方の垂直磁気異方性層の厚みwbとの比(wb/wa)が、2〜0.5である前記<3>に記載の磁気転写用マスター担体である。
<5> 反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の厚みwaと、他方の垂直磁気異方性層の厚みwbとの比(wb/wa)が、1.5〜0.5である前記<3>から<4>のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体である。
<6> 垂直磁気異方性層の厚みが、2nm〜60nmである前記<1>から<5>のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体である。
<7> 磁性層が、下記条件1の下、スパッタリング法により作製された垂直磁気異方性層と、かつ、下記条件2の下、スパッタリング法により作製された、反強磁性結合誘導層と、を有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体である。
<条件1>
ターゲット材料:CoPt
圧力:0.3Pa
基材−ターゲット間距離:200mm
DCパワー:1,000W
<条件2>
ターゲット材料:Ru
圧力:0.3Pa
基材−ターゲット間距離:200mm
DCパワー:100W
<8> 磁界を印加して、垂直磁気記録媒体を初期磁化する初期磁化工程と、
初期磁化された垂直磁気記録媒体に、前記<1>から<7>のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体を密着させる密着工程と、
該垂直磁気記録媒体と該磁気転写用マスター担体とを密着させた状態で、初期磁化工程において印加した磁界と逆向きの磁界を印加して、該垂直磁気記録媒体に情報を記録する磁気転写工程と、を有することを特徴とする磁気転写方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、磁界を印加した際に、該磁界の印加方向に磁化が発生し、かつ、磁界を解除した際に残留磁化の発生が抑制される磁性層を有する磁気転写用マスター担体、該磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る磁気転写用マスター担体、磁気転写方法、及び磁気記録媒体について、図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、磁気転写用マスター担体を用いて垂直磁気記録媒体に情報を磁気転写する磁気転写方法の概略を示す説明図である。該磁気転写方法は、初期磁化工程、密着工程、及び磁気転写工程を有する。先ず、図1を用いて、該磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写技術の概略を説明する。
【0015】
〔磁気転写技術の概略〕
図1において、符号10は、垂直磁気記録媒体であるスレーブディスクを表し、符合20は、磁気転写用マスター担体であるマスターディスクを表す。
図1(a)は、初期磁化工程を示す説明図である。図1(a)に示されるように、該初期磁化工程において、スレーブディスク10に対し直流磁界(Hi)が印加されて、該スレーブディスク10が初期磁化される。該直流磁界(Hi)は、スレーブディスク10の平面に対し、垂直に印加される。
図1(b)は、密着工程を示す説明図である。図1(b)に示されるように、該密着工程において、初期磁化後のスレーブディスク10に該マスターディスク20を密着させる。
図1(c)は、磁気転写工程を示す説明図である。図1(c)に示されるように、該磁気転写工程において、互いに密着したスレーブディスク10及びマスターディスク20に対し、前記直流磁界(Hi)と逆向きの磁界(Hd)(記録用磁界)が印加され、該マスターディスク20に基づいた情報が、該スレーブディスク10に記録される。
【0016】
次いで、前記磁気転写用マスター担体、磁気転写方法、及び磁気記録媒体について、それぞれ図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
〔磁気転写用マスター担体〕
図2は、磁気転写用マスター担体(マスターディスク)20の断面の概略を示す説明図である。図2に示されるように、該磁気転写用マスター担体20は、基材200と、磁性層40と、を有する。
【0018】
(基材)
前記基材200の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、ガラス、ポリカーボネート等の合成樹脂、ニッケル、アルミニウム等の金属、シリコン、カーボン等の公知の材料が用いられる。
【0019】
前記基材200の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。図2において示される磁気転写用マスター担体20は、円盤状である。前記基材200は、表面に複数の凸部201を有する。
【0020】
前記凸部201は、垂直磁気記録媒体に記録すべき情報のパターンに対応して前記基材200の表面に配設されている。垂直磁気記録媒体に記録すべき情報としては、例えば、サーボ信号、アドレス情報信号等のトラッキングサーボ技術用のサーボ情報がある。該凸部201は、該基材200の表面上で、該記録すべき情報のサイズに対応した、パターンを成している。前記基材200の表面に配設される該凸部201の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0021】
図3は、磁気転写用マスター担体20(マスターディスク)を上面から見た説明図である。図3に示されるように、磁気転写用マスター担体20の表面(上面)には、サーボ情報のパターンに対応して配設される凸部からなるパターン(サーボパターン52)が、放射状に形成されている。
【0022】
前記凸部201の表面は、図2に示されるように、先端面202と、側面203とからなる。本実施形態において、先端面202は、平面となっている。該先端面202の外形形状は、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択できる。本実施形態において、該先端面202は、四角形(正方形)となっている。前記凸部201間には、凹部204がある。
【0023】
(磁性層)
前記磁性層40は、前記凸部201の表面のうち、少なくとも先端面202に形成される。図2において示されるように、本実施形態においては、該凸部201の先端面202以外に、製造容易等の理由により、凹部204の表面にも磁性層400が形成されている。なお、必要に応じて、該凸部201の側面203に該磁性層40を形成してもよい。
【0024】
前記磁性層40は、垂直磁気異方性層41と、反強磁性結合誘導層43とを有する。該磁性層40は、その他、必要に応じて、下地層、保護層等の他の層を含んでもよい。
【0025】
<垂直磁気異方性層>
前記垂直磁気異方性層41は、磁性層40に、少なくとも2層含まれる。図2に示される本実施形態に係る磁気転写用マスター担体20の磁性層40は、2層の垂直磁気異方性層41を有する。
2層の垂直磁気異方性層41のうち、反強磁性結合誘導層43の下側に配置し、凸部側に配置する一方のものを、垂直磁気異方性層41aと表し、反強磁性結合誘導層43の上側に配置する他方のものを、垂直磁気異方性層41bと表す。
【0026】
他の実施形態においては、該垂直磁気異方性層41の層数は、2層以外に、3層でもよいし、4層でもよい。該垂直磁気異方性層41の層数は、2層等の偶数でもよいし、3層等の奇数でもよい。
【0027】
前記垂直磁気異方性層41は、垂直磁気異方性を有する磁性材料を含む。該垂直磁気異方性層41の磁性材料としては、Fe、Co及びNiのうち少なくとも1つの強磁性金属と、Cr、Pt、Ru、Pd、Si、Ti、B、Ta及びOのうち少なくとも1つの非磁性物質と、から構成される合金、或いは化合物が用いられる。
前記垂直磁気異方性層41は、該垂直磁気異方性層41の面内方向に対し、垂直な方向において、磁気異方性を有する。つまり、磁性層40の積層方向に、磁気異方性を有する。
【0028】
前記垂直磁気異方性層41の厚みwとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定されるが、2nm〜60nmが好ましく、10nm〜40nmがより好ましく、15nm〜25nmが更に好ましい。
該垂直磁気異方性層41の厚みwが2nm未満であると、マスター担体の最表面における磁化が不足することがあり、厚みwが60nmを超えると、反強磁性結合効果が弱まることがある。
【0029】
前記垂直磁気異方性層41の厚みwは、例えば、原子間力顕微鏡(日本ビーコ社製、Dimension5000)によって測定できる。
【0030】
なお、該垂直磁気異方性層41の厚みは、平均値(平均厚み)である。該厚みwは、半径=5mm、10mm、20mm、及び30mm(90度毎に4箇所:計16箇所)の平均値として算出した。
【0031】
特に、反強磁性結合誘導層43に隣接する2層の垂直磁気異方性層41の厚みwにおいては、以下に示す関係がある。ここで、本実施形態に係る2層の垂直磁気異方性層41a及び41bを例に挙げて説明する。
【0032】
前記垂直磁気異方性層41aの厚みwaとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定されるが、1nm〜30nmが好ましく、5nm〜20nmがより好ましく、7nm〜13nmが更に好ましい。
該垂直磁気異方性層41aの厚みwaが2nm未満であると、マスター担体の最表面における磁化が不足することがあり、厚みwaが30nmを超えると、反強磁性結合効果が弱まることがある。
【0033】
前記垂直磁気異方性層41bの厚みwbとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定されるが、2nm〜60nmが好ましく、10nm〜40nmがより好ましく、15nm〜25nmが更に好ましい。
該垂直磁気異方性層41bの厚みwbが2nm未満であると、マスター担体の最表面における磁化が不足することがあり、厚みwbが60nmを超えると、反強磁性結合効果が弱まることがある。
【0034】
前記垂直磁気異方性層41aの残留磁化Mruと厚みtuとの積Mrutuと、前記垂直磁気異方性層41bの残留磁化Mrlと厚みtlとの積Mrltlとの比(Mrutu/Mrltl)としては、0.5〜2が好ましく、0.7〜1.5がより好ましい。前記比が0.8〜1.3の時、残留磁化(残留磁束密度)を抑制する効果が最も大きくなる。
【0035】
前記垂直磁気異方性層41aと前記垂直磁気異方性層41bとが同一の材料で構成されている等の理由で、2層の垂直磁気異方性層が同一の残留磁化を有する場合には、前記垂直磁気異方性層41aの厚みwaと、前記垂直磁気異方性層41bの厚みwbとの比(wb/wa)としては、2〜0.2が好ましく、2〜0.5がより好ましく、1.5〜0.5がさらに好ましく、1.3〜0.8が特に好ましい。前記比が1.3〜0.8の時、残留磁化(残留磁束密度)を抑制する効果が最も大きくなる。
【0036】
前記垂直磁気異方性層41の形成方法(成膜方法)としては、例えば、スパッタリング法がある。成膜圧力(Pa)、基板−ターゲット間距離(mm)、DCパワー(W)等の条件を適宜、選択することにより、スパッタリング法によって、前記垂直磁気異方性層41を形成できる。
【0037】
前記垂直磁気異方性層41が、CoPtからなる場合、主として、成膜圧力、Pt含有量(ターゲット組成比)を調節することによって、該垂直磁気異方性層41の垂直磁気異方性を制御できる。
【0038】
前記磁性層40の垂直磁気異方性層41が「垂直磁気異方性を有する」とは、以下の方法により求められる、面内磁化曲線の磁化値(Min)、及び垂直磁化曲線の磁化値(Mpe)の比(Mpe/Min)が、反磁界補正を施したヒステリシス曲線において、1以上の場合である。Min及びMpeを求める方法は、以下の通りである。
【0039】
磁気転写用マスター担体の磁性層40と同じものを、該マスター担体の製造時と同じ条件で、ガラス基板(2.5インチ)上に形成する。該ガラス基板上に形成された試料を、6mm×8mmのサイズに切り出し、その切り出した試料に対し、振動試料型磁力計(東英工業社製、VSM−C7)を用いて、面内方向及び垂直方向に磁界を印加して、その試料の磁化曲線の測定を行う。
得られた磁化曲線に基づいて、記録用磁界と同値の外部印加磁界強度での面内磁化曲線の磁化値(Min)、垂直磁化曲線の磁化値(Mpe)を算出する。
【0040】
<反強磁性結合誘導層>
前記反強磁性結合誘導層43は、前記垂直磁気異方性層41の全ての間に介在される。例えば、垂直磁気異方性層41が3層のとき、磁性層40には、該反強磁性結合誘導層43が2層含まれる。また、該垂直磁気異方性層41が6層のとき、磁性層40には、該反強磁性結合誘導層43が5層含まれる。
【0041】
前記反強磁性結合誘導層43は、隣接する2層の垂直磁気異方性層の間に、反強磁性結合が生じるように、該反強磁性結合を誘導する層である。
該反強磁性結合誘導層43の材料としては、Ru、Ir、Rh、Re及びCrのいずれか1つを少なくとも含む金属、合金、或いは積層結合体が用いられる。
【0042】
前記反強磁性結合誘導層43の厚みxとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定され、0.1nm〜2nmが好ましく、0.3nm〜1.5nmがより好ましく、0.5nm〜1nmが更に好ましい。
該反強磁性結合誘導層43の厚みxが0.1nm未満であると、薄膜均一性のばらつきにより、部分的に下層の垂直磁気異方性層41aと、上層の垂直磁気異方性層41bとが接触して、一体化してしまうことがあり、厚みxが2nmを超えると、層の垂直磁気異方性層41aと、上層の垂直磁気異方性層41bとの間における反強磁性結合効果が得られないことがある。
【0043】
前記反強磁性結合誘導層43の厚みwは、例えば、前記反強磁性結合誘導層43の断面方向の薄片を作製し、該薄片を透過電子顕微鏡(TEM)によって測定することで、求めることができる。
【0044】
なお、反強磁性結合誘導層43の厚みは、平均値(平均厚み)である。該厚みは、半径=10mm、20mm(180度毎に2箇所:計4箇所)の平均値として算出した。
【0045】
前記反強磁性結合誘導層43の形成方法(成膜方法)としては、例えば、前記垂直磁気異方性層41の形成方法と同様、スパッタリング法がある。成膜圧力(Pa)、基板−ターゲット間距離(mm)、DCパワー(W)等の条件を適宜、選択することにより、スパッタリング法によって、前記反強磁性結合誘導層43を形成できる。
【0046】
ここで、磁性層40が2層の垂直磁気異方性層41(41a、41b)と、これらの間に1層の反強磁性結合誘導層43を有する場合を例に挙げて、本発明の磁気転写用マスター担体40の磁性層40の作用を説明する。
【0047】
図4Aは、外部から磁界が印加されていない状態の磁性層40の概略を示す説明図である。
図4Aにおいて符号45で示される矢印は、該垂直磁気異方性層41a中のスピンを表し、符号46で示される矢印は、該垂直磁気異方性層41b中のスピンを表す。
図4Aにおいて示されるように、外部から磁界が印加されていない状態の磁性層40においては、垂直磁気異方性層41a中のスピン45と、垂直磁気異方性層41b中のスピン46とが、逆平行の関係になろうとする。
これは、反強磁性結合誘導層43が、垂直磁気異方性層41a及び垂直磁気異方性層41bとの間に、反強磁性結合(反強磁性的な結合)を誘導する機能を有するためである。
垂直磁気異方性層41a及び垂直磁気異方性層41bは、共に垂直磁気異方性を有している。そのため、外部から磁界が印加されていない状態の磁性層40においては、該垂直磁気異方性層41aのスピン45と、該垂直磁気異方性層41bのスピン46とが、該反強磁性結合誘導層43を介して、面内方向に対し垂直な方向に沿って(積層方向に沿って)、逆平行の関係になろうとする。
このように、反強磁性的な結合が、垂直磁気異方性層41a及び垂直磁気異方性層41bの間で形成されると、垂直磁気異方性層41a及び垂直磁気異方性層41bの磁化が互いに打ち消し合い、磁性層40全体の磁化が抑制される。
【0048】
図4Bは、外部から磁界が印加された状態の磁性層40の概略を示す説明図である。図4Bにおいて示されるように、外部から所定値以上の強度の磁界(H)44(例えば、記録用磁界)が印加されると、垂直磁気異方性層41aのスピン45は、反転して、垂直磁気異方性層41bのスピン46と同じ方向を向こうとする。
これは、外部から磁界44が印加されると、垂直磁気異方性層41a及び垂直磁気異方性層41bとの間における反強磁性結合が解消され、垂直磁気異方性層41aのスピン45及び垂直磁気異方性層41bのスピン46の挙動が、主として、磁界44に支配されるためである。
垂直磁気異方性層41aのスピン45及び垂直磁気異方性層41bのスピン46が、共に同じ方向を向くと、磁界を印加していない状態と比較して、磁性層40全体としての磁化が大きくなる。
【0049】
以上のようにして、前記磁性層40は、外部から磁界が印加されると、磁界の印加方向に磁化を発生し、磁界が解除されると、残留磁界が抑制される。
【0050】
(下地層)
前記磁性層40の下(該磁性層40と凸部201の先端面202との間)に、必要に応じて、下地層を形成してもよい。該下地層の材料としては、Pt、Ru、Pd、Co、Cr、Ni、W、Ta、Al、P、Si、Tiのうち、少なくとも1つを含有する金属、合金、或いは化合物が挙げられる。該下地層の材料としては、Pt、Ru等の白金属の金属、合金が好ましい。該下地層は、単層でもよく、多層でもよい。該下地層は、スパッタリング法等の公知の方法により、形成できる。
該下地層の厚みは、1nm〜30nmの範囲が好ましく、3nm〜10nmの範囲が更に好ましい。
【0051】
(保護層等)
前記磁性層40の上に、必要に応じて、ダイヤモンドライクカーボン等の保護層を形成してもよい。該保護層の厚みは、通常、10nm以下である。更に、該保護層の上に、潤滑層剤層を形成してもよい。
【0052】
〔磁気転写用マスター担体の製造方法〕
一実施形態に係る磁気転写用マスター担体の製造方法を例に挙げて、本発明の磁気転写用マスター担体の製造方法を説明する。
前記一実施形態に係る磁気転写用マスター担体の製造方法によって製造されるマスター担体は、磁性層40が、2層の垂直磁気異方性層41と、これらの間に1層の反強磁性結合誘導層と、を含むものである。
【0053】
前記磁気転写用マスター担体20の製造には、原盤が用いられる。先ず、原盤の一製造方法を、図5を用いて説明する。
【0054】
(原盤の製造)
図5は、磁気転写用マスター担体20の製造に用いられる原盤の製造工程を示す説明図である。
図5(a)に示されるように、表面が平滑なシリコンウェハ(Si基板)からなる原板30を用意し、この原板30上に、電子線レジスト液をスピンコート法等により塗布して、レジスト層32を形成する(図5(b)参照)。その後、該レジスト層32を、ベーキング処理(プレベーク)する。
【0055】
次いで、図5(c)に示されるように、高精度な回転ステージ、又はX−Yステージを備えた不図示の電子ビーム露光装置のステージ上に、前記原板30をセットし、該原板30を回転させながら、該レジスト層32に対し、サーボ信号に対応させて変調した電子ビームを照射し、該レジスト層32に、サーボ信号に対応させたパターンを描画露光した。なお、図5(c)において、符号33が露光部分を表す。
【0056】
次いで、図5(d)に示されるように、該レジスト層32を現像処理し、露光部分(描画部分)33を除去すると、パターン状のレジスト層32が原板30上に形成される。
なお、原板30上に塗布されるレジストは、ポジ型、ネガ型のいずれも使用可能である。なお、ポジ型と、ネガ型とでは、露光(描画)パターンが反転することになる。
前記現像処理後、レジスト層32と原板30との密着力を高めるためのベーキング処理(ポストベーク)を行う。
【0057】
次いで、図5(e)に示されるように、該レジスト層32をマスクとして、該レジスト層32の開口部34より、原板30を、表面より所定の深さだけ除去(エッチング)する。該エッチングとしては、アンダーカット(サイドエッチ)を最小にするべく、異方性のエッチングを選択することが好ましい。該異方性のエッチングとしては、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)が好ましい。
【0058】
次いで、図5(f)に示されるように、エッチング後の該レジスト層32を除去する。該レジスト層32の除去方法としては、アッシング等の乾式法、剥離液による除去等の湿式法のいずれも採用できる。該レジスト層32が除去されると、原盤36が得られる。
【0059】
(磁気転写用マスター担体の製造)
前記原盤36を用いた、磁気転写用マスター担体20の一製造方法を、図6を用いて説明する。
【0060】
図6(g)に示されるように、原盤36の表面に、厚みが均一な導電層37を形成する。該導電層37の形成方法としては、PVD(Physical Vapor Deposition)、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の各種金属成膜法を採用できる。該導電層37としては、例えば、Niを主成分とする膜からなる。このような、Niを主成分とする膜は、形成が容易であり、且つ、硬質であるため、該導電膜37として好適である。該導電層37の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、一般的に、数十nm程度が採用される。
【0061】
次いで、図6(h)に示されるように、原盤36の表面に、電鋳により、所望の厚みの金属板38を積層する。該金属板の材料としては、例えば、Niが挙げられる。
電鋳は、所定の電鋳装置(不図示)において行なわれる。該電解装置は、スルファミン酸Ni等の電解液の入った電解液槽を有し、該電解液槽中の電解液に原盤36が浸される。該原盤36を陽極とし、該陽極と、図示されない陰極との間を通電すると、該原盤36上に金属板が積層される。電解液の濃度、電解液のpH、電流値等の諸条件は、適宜、設定される。
その後、前記金属板38を積層した原盤36は、電鋳装置の電解液槽から取り出され、純水等からなる剥離液に浸される。該剥離液中において、金属板38は、原盤36から引き剥がされる。このようにして、図6(i)に示されるような、原盤36表面の凹凸形状が反転した、表面形状を有する基板200が得られる。
【0062】
次いで、前記基板200表面上の凸部201の先端面202に図示しない下地層を形成する。該下地層の材料は、例えば、Taから成る。該下地層は、前記材料をターゲットとして用いたスパッタリング法によって形成される。
次いで、図6(j)において示されるように、前記基板200表面上の凸部201の先端面202に垂直磁気異方性層41aを形成する。該垂直磁気異方性層41aの材料は、例えば、CoPtからなる。該垂直磁気異方性層41aは、前記材料をターゲットとして用いたスパッタリング法によって形成される。
【0063】
次いで、図6(k)において示されるように、前記垂直磁気異方性層41aの上に、反強磁性結合誘導層43を形成する。該反強磁性結合誘導層43の材料は、例えば、Ruからなる。該反強磁性結合誘導層43は、前記材料をターゲットとして用いたスパッタリング法によって形成される。
【0064】
次いで、図6(l)において示されるように、前記反強磁性結合誘導層43の上に、垂直磁気異方性層41bを形成する。該垂直磁気異方性層41bの材料は、例えば、CoPtからなる。該垂直磁気異方性層41bは、前記材料をターゲットとして用いたスパッタリング法によって形成される。
その後、必要に応じて、前記基板200を所定サイズに打抜き加工等すると、磁気転写用マスター担体20が得られる。
【0065】
〔垂直磁気記録媒体〕
前記磁気転写用マスター担体20を用いて磁気転写される垂直磁気記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択される。図7は、垂直磁気記録媒体の断面の概略を示す説明図である。ここで、図7を用いて、一実施形態に係る該垂直磁気記録媒体の構成を説明する。
【0066】
図7に示されるように、該垂直磁気記録媒体10は、基板12と、軟磁性層(軟磁性下地層:SUL)13と、非磁性層(中間層)14と、磁性層15と、を有する。更に、図7において示される該垂直磁気記録媒体10は、該磁性層16上に、保護層16及び潤滑剤層17を備える。
【0067】
前記基板12は、円盤状であり、ガラス、Al(アルミニウム)等の非磁性材料からなる。
【0068】
前記軟磁性層13は、該磁性層16の垂直磁化状態を安定させ、記録再生時の感度を向上させる等の目的で設けられる。該軟磁性層13に用いられる材料としては、CoZrNb、FeTaC、FeZrN、FeSi合金、FeAl合金、パーマロイ等のFeNi合金、パーメンジュール等のFeCo合金等の軟磁性材料が用いられる。該軟磁性層13は、ディスクの中心から外側に向かって半径方向に(放射状に)磁気異方性が付けられている。
【0069】
前記非磁性層14は、後に形成する磁性層15の垂直方向の磁気異方性を大きくする等の目的で設けられる。該非磁性層14に用いられる材料としては、Ti、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru、Pd、Ta、Pt等が用いられる。
【0070】
前記磁性層15は、垂直磁化膜からなる。該垂直磁化膜は、膜内の磁化容易軸が基板12に対し、主として、垂直方向に配向している。該磁性層15に、情報が記録される。
該磁性層15に用いられる材料としては、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Co合金-SiO2、Co合金-TiO2、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi等)等が用いられる。
【0071】
前記保護層16は、C(カーボン)等からなり、前記潤滑剤層17は、PFPE等のフフッ素系潤滑剤等からなる。
【0072】
なお、前記垂直磁気記録媒体10は、前記基板12の片面に磁性層15が形成されているが、他の実施形態においては、該基板12の表裏面に磁性層15が形成されてもよい。
また、他の実施形態においては、軟磁性層13、及び非磁性層14が、複数層形成されてもよい。
【0073】
〔磁気転写方法〕
以下、前記磁気転写用マスター担体を用いて、前記垂直磁気記録媒体に情報を磁気転写する方法を説明する。
該磁気転写方法は、前記磁気転写技術の概略において説明した通り、初期化工程、密着工程、及び磁気転写工程を有する。以下、図1等を用いて、一実施形態に係る磁気転写方法を説明する。
【0074】
<初期磁化工程>
前記初期化工程は、垂直磁気記録媒体10(スレーブディスク)に対し直流磁界(Hi)を印加して、該垂直磁気記録媒体10を初期磁化する工程である。
図1(a)に示されるように、該初期磁化工程において、垂直磁気記録媒体10に対し、直流磁界(Hi)が印加される。該直流磁界(初期化磁界)(Hi)は、垂直磁気記録媒体10の表面に対し、垂直に印加される。該直流磁界(Hi)は、所定の磁界印加手段(不図示)により、印加される。該直流磁界(Hi)の強さは、垂直磁気記録媒体10の保磁力Hc以上に設定される。
【0075】
図8は、初期磁化後の垂直磁気記録媒体の磁性層の磁化方向を示す説明図である。図8において示されるように、初期磁化後の垂直磁気記録媒体10の磁性層15は、該垂直磁気記録媒体10のディスク面と垂直な一方向に、初期磁化される。なお、図8における符号Piで示される矢印は、該磁性層の磁化方向を表す。
【0076】
<密着工程>
前記密着工程は、初期磁化後の垂直磁気記録媒体10に該磁気転写用マスター担体(
マスターディスク)20を密着させる工程である。
図1(b)に示されるように、初期磁化後の垂直磁気記録媒体10と、磁気転写用マスター担体20と重ね合わせ、密着させる。
該密着工程では、該磁気転写用マスター担体20の表面の凸部201上の磁性層40と、該垂直磁気記録媒体10の磁性層(記録層)とが密着する。該磁気転写用マスター担体20は、所定の押圧力で、該垂直磁気記録媒体10に密着させる。
【0077】
なお、必要に応じて、磁気転写用マスター担体20を垂直磁気記録媒体10に密着する前に、該垂直磁気記録媒体10に、グライドヘッド、研磨体等によって表面の微小突起又は付着粉塵埃を除去するクリーニング処理(バーニッシング等)を施してもよい。
【0078】
該密着工程は、図1(b)に示されるように、本実施形態においては、垂直磁気記録媒体10の片面のみに磁気転写用マスター担体20を密着させているが、他の実施形態においては、両面に磁性層を有する垂直磁気記録媒体(スレーブディスク)に対し、両面から磁気転写用マスター担体20を密着させてもよい。
【0079】
なお、該密着工程では、外部より磁界が印加されていないため、磁気転写用マスター担体20の磁性層40においては、図4Aにおいて示されるように、垂直磁気異方性層41aと垂直磁気異方性層41bとの間に、反強磁性結合が発生している。そのため、該磁性層40からの磁化の発生は、抑制される。
【0080】
<磁気転写工程>
前記磁気転写工程は、互いに密着した垂直磁気記録媒体10及び磁気転写用マスター担体20に対し、前記初期磁界(Hi)と逆向きの磁界(Hd)である記録用磁界を印加することにより、該磁気転写用マスター担体20に基づいた情報を、該垂直磁気記録媒体10に記録する工程である。
図1(c)に示されるように、互いに密着した垂直磁気記録媒体10及び磁気転写用マスター担体20に対し、所定の磁界印加手段(不図示)により、該初期磁界(Hi)と逆向きの磁界(Hd)を発生させる。
【0081】
図9は、磁気転写工程における垂直磁気記録媒体10及び磁気転写用マスター担体20の断面の様子を示す説明図である。図9に示されるように、垂直磁気記録媒体10及び磁気転写用マスター担体20を密着させた状態で、記録用磁界(Hd)を印加すると、該磁界(Hd)により生じた磁束Gは、磁気転写用マスター担体20に進入し、磁気転写用マスター担体20の有する磁性層40に吸収される。その結果、磁気転写用マスター担体20の凸部201の領域で、磁界が強くなる。これに対し、磁気転写用マスター担体20の凹部204の領域の磁界は、該凸部201の領域の磁界よりも弱くなる。このようにして、垂直磁気記録媒体10に記録すべき情報に対応した磁界のパターンが形成される。
その結果、凸部201に対応する領域では、垂直磁気記録媒体10の磁性層15の磁化の向きが反転し、情報が記録される、なお、凹部204に対応する領域では、磁性層15の磁化の向きは変化しない。
【0082】
図10は、磁気転写工程後の垂直磁気記録媒体の磁性層の磁化方向を示す説明図である。図10において示されるように、垂直磁気記録媒体10の磁性層16には、サーボ信号等の情報が、初期磁化Piの反対向きの磁化となって記録磁化Pdとして記録される。
【0083】
前記記録用磁界(Hd)は、目的に応じて適宜選択されるが、一般に、垂直磁気記録媒体10の磁性層16の保磁力(Hc)の40〜130%の強度の磁界が好ましく、50〜120%が更に好ましい。
【0084】
磁気転写工程において、前記記録用磁界(Hd)が印加されると、磁気転写用マスター担体20の磁性層40においては、図4Bに示されるように垂直磁気異方性層41a及び垂直磁気異方性層41bとの間における反強磁性的な結合は解消され、垂直磁気異方性層41aのスピン45、及び垂直磁気異方性層41bのスピン46が、共に外部から印加された記録用磁界の方向を向く。
そのため、磁気転写工程において、磁気転写用マスター担体20の磁性層40は、それ自身、垂直磁気記録媒体の記録面(磁性層の表面)に対し、垂直な方向の磁化を有する。
【0085】
図11Aは、本実施形態に係る磁気転写用マスター担体20の磁性層40のM−H曲線を模式的に示した説明図である。横軸は外部印加磁界(H)を表し、縦軸は磁化(M)を表す。
図11Aにおいて示されるように、該磁気転写用マスター担体20の磁性層40は、外部より磁界が印加されると、磁化が大きくなる。また、外部磁界をゼロにすると、該磁性層40の磁化が最も小さくなる。この時、該磁気転写用マスター担体20の磁性層40であれば、残留磁化(Mr)を、0にすることも可能である。
【0086】
図11Bは、従来の磁気転写用マスター担体に用いられる磁性層のM−H曲線を模式的に示した説明図である。横軸は外部印加磁界(H)を表し、縦軸は磁化(M)を表す。
図11Bにおいて示されるように、外部より磁界が印加されて、磁化が大きくなる従来の磁性層は、外部磁界がゼロであっても、磁化が大きく、残留磁化(Mr)を0にできない。
【0087】
磁気転写用マスター担体20を用いて垂直磁気記録媒体10に情報を記録する際(磁気転写する際)、例えば、互いに密着した垂直磁気記録媒体10及び磁気転写用マスター担体20を、所定の回転手段(不図示)により回転させつつ、前記磁界印加手段によって記録用磁界(Hd)を印加してもよい。他の実施形態においては、該磁界印加手段に回転機構を儲け、垂直磁気記録媒体10及び磁気転写用マスター担体20に対し、相対的に回転させてもよい。
【0088】
図12は、磁気転写装置の概略を示す説明図である。該磁気転写装置は、コア62にコイル63が巻きつけられた電磁石からなる磁界印加手段60を有する。該磁気転写装置は、このコイル63に電流を流すと、ギャップ64において、互いに密着した磁気転写用マスター担体20及び垂直磁気記録媒体10に対し、垂直に磁界が発生する構造になっている。発生させる磁界の向きは、コイル63に流す電流の向きによって変えられる。従って、このような磁気転写装置によって、垂直磁気記録媒体10の初期磁化、及び磁気転写を行なえる。
【0089】
なお、前記磁気転写用マスター担体20により記録された垂直磁気記録媒体は、例えば、ハードディスク装置等の磁気記録再生装置に組み込まれて、使用される。該垂直磁気記録媒体は、サーボ精度が高く、良好な記録再生特性の高記録密度磁気記録再生装置を得られる。
【0090】
ここで、本発明の他の実施形態に係る磁気転写用マスター担体の概略を、図面を用いて説明する。図13は、他の実施形態に係る磁気転写用マスター担体20Aの概略を示す説明図である。図13に示されるように、該磁気転写用マスター担体20Aは、凸部201の先端面202に、磁性層40を有し、その磁性層は、3層の垂直磁気異方性層41(41a、41b及び41c)と、2層の反強磁性結合誘導層43(43a及び43b)を有する。
反強磁性結合誘導層43aは、垂直磁気異方性層41a及び41bの間に介在し、反強磁性結合誘導層43bは、垂直磁気異方性層41b及び41cの間に介在している。
図13は、外部磁界が印加されていない状態の磁性層を表している。
該反強磁性結合誘導層43aに隣接する垂直磁気異方性層41aと、垂直磁気異方性層41bとの間には、反強磁性結合が形成されている。
また、反強磁性結合誘導層43bに隣接する垂直磁気異方性層41bと、垂直磁気異方性層41cとの間にも、反強磁性結合が形成されている。
なお、該磁気転写用マスター担体20Aに外部磁界(例えば、記録用磁界)が印加されると、何れの垂直磁気異方性層41の電子スピンも、外部磁界の印加方向に沿って向こうとする。
このように、本発明の磁気転写用マスター担体は、磁性層40の垂直磁気異方性層41が3層以上であってもよい。
【実施例】
【0091】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は以下に示される実施例に限定されるものではない。
【0092】
〔実施例1〕
〔磁気転写用マスター担体1〕
(原盤の作製)
【0093】
8インチのSiウェハ(原板)上に、電子線レジストをスピンコート法により、100nmの厚みで塗布した。塗布後、該原板上の該レジストに対し、回転式電子線露光装置を用いて、サーボ情報等に対応させて変調した電子ビームを照射し、該レジストを露光した。その後、該レジストを現像し、未露光部分を除去して、該原板上に該レジストのパターンを形成した。
【0094】
次いで、パターン状の該レジストをマスクとして用い、該原板に対して反応性エッチング処理を行い、該レジストでマスクされていない箇所を掘り下げた。該エッチング処理後、該原板上に残存するレジストを溶剤で洗浄し、除去した。その後、該原板を乾燥させて、磁気転写用マスター担体を作製するための原盤を得た。
【0095】
(磁気転写用マスター担体の作製)
前記原盤上に、Niからなる導電層(厚み:6nm)をスパッタリング法により、形成した。その後、該導電層を形成した原盤を母型として用い、電鋳法により、該原盤上に、Ni層を形成した。その後、Ni層を原盤から引き剥がし、該Ni層を洗浄等して、表面に凸部を配設したNi基材を得た。
【0096】
次いで、前記Ni基材を、所定のチャンバー内にセットし、該Ni基材の凸部に、下地層としてのTa膜(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=300W。
前記のように下地層を形成した後、垂直磁気異方性層(磁性層1)としてのCoPt膜(Co80_Pt20at%)(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=1,000W。
【0097】
前記のように垂直磁気異方性層を形成した後、該垂直磁気異方性層(磁性層1)の上に、反強磁性結合誘導層としてのRu膜(厚み:0.7nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=100W。
【0098】
前記のように反強磁性結合誘導層を形成した後、該反強磁性結合誘導層の上に、垂直磁気異方性層(磁性層2)としてのCoPt膜(Co80_Pt20at%)(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=1,000W。
【0099】
以上のようにして、磁気転写用マスター担体1を作製した。
【0100】
〔垂直磁気記録媒体〕
2.5インチのガラス基板上に、以下に示す手順で各層を形成し、垂直磁気記録媒体を作製した。
作製した垂直磁気記録媒体は、軟磁性層、第1の非磁性配向層、第2の非磁性配向層、磁性層、保護層、及び潤滑剤層が順次形成されている。
なお、軟磁性層、第1の非磁性配向層、第2の非磁性配向層、磁性層、及び保護層は、スパッタリング法で形成し、潤滑剤層は、ディップ法で形成した。
【0101】
(軟磁性層の形成)
前記軟磁性層として、CoZrNb膜を、100nmの厚みで形成した。
具体的には、前記ガラス基板を、CoZrNbターゲットと対向させて配置し、圧力が0.6PaとなるようにArガスを流入させ、DCパワー:1,500Wで放電して、成膜した。
【0102】
(第1の非磁性配向層の形成)
前記第1の非磁性配向層として、Ti膜を、5nmの厚みで形成した。
具体的には、前記軟磁性層を形成した後のガラス基板を、Tiターゲットと対向させて配置し、圧力が0.5PaとなるようにArガスを流入させ、DCパワー:1,000Wで放電して、成膜した。
【0103】
(第2の非磁性配向層の形成)
前記第2の非磁性配向層として、Ru膜を、6nmの厚みで形成した。
具体的には、前記第1の非磁性配向層を形成した後のガラス基板を、Ruターゲットと対向させて配置し、圧力が0.8PaとなるようにArガスを流入させ、DCパワー:900Wで放電して、成膜した。
【0104】
(磁性層の形成)
前記磁性層として、CoCrPtO膜を、18nmの厚みで形成した。
具体的には、前記第2の非磁性配向層を形成した後のガラス基板を、CoCrPtOターゲットと対向させて配置し、圧力が14PaとなるようにO2を0.06%含むArガスを流入させ、DCパワー:290Wで放電して、成膜した。
【0105】
(保護層の形成)
前記保護層として、C膜を、4nmの厚みで形成した。
具体的には、前記磁性層を形成した後のガラス基板を、Cターゲットと対向させて配置し、圧力が0.5PaとなるようにArガスを流入させ、DCパワー:1,000Wで放電して、成膜した。
【0106】
(潤滑剤層の形成)
前記潤滑剤層として、PFPE潤滑剤からなる層を、2nmの厚みで形成した。
【0107】
前記垂直磁気記録媒体の保磁力は、334kA/m(4.2kOe)であった。
【0108】
〔磁気転写〕
(初期磁化工程)
前記垂直磁気記録媒体に磁界を印加して、該垂直磁気記録媒体の初期磁化を行なった。印加した磁界の強度は、10kOeである。
【0109】
(密着工程)
初期磁化後の垂直磁気記録媒体に対し、前記磁気転写用マスター担体を、9kg/cm2の圧力で密着させた。
【0110】
(磁気転写工程)
前記垂直磁気記録媒体と、前記磁気転写用マスター担体とを密着させた状態で、記録磁界を印加した。該記録磁界の強度は、4.2kOeである。
その後、該記録磁界の印加を停止し、該磁気転写用マスター担体を、該垂直磁気記録媒体から分離した。
【0111】
〔比較例1〕
(磁気転写用マスター担体101)
反強磁性結合誘導層を形成しなかったこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体101を作製した。該磁気転写用マスター担体101を用いて、前記実施例1と同様にして、前記垂直磁気記録媒体に対し、磁気転写を行なった。
【0112】
〔評価1〕
(磁気転写用マスター担体1の残留磁化)
記録磁界の印加を停止した後、垂直磁気記録媒体から分離した磁気転写用マスター担体1の磁性層の残留磁化(Mr)を評価した。
なお、残留磁化(Mr)の測定は、振動試料型磁力計(東英工業社製、VSM−C7)を使用した。磁気転写用マスター担体の磁性層の構成と、同じ構成の試料を作製し、その試料より得られたM−Hカーブから、外部印加磁界がゼロの時の磁化を読み取った。
結果は、表1に示した。
【0113】
〔評価2〕
(垂直磁気記録媒体の転写信号S/N)
前記磁気転写用マスター担体101用いて磁気転写された垂直磁気記録媒体の信号S/Nの評価を行った。
具体的には、前記比較例1の磁気転写用マスター担体101を用いて磁気転写された、ビット長=100nmに相当する連続単一信号(150波形分)をデジタルオシロスコープで読み取り、波形解析により算出した、垂直磁気記録媒体の信号S/Nを基準値とし、該基準値に対する増減値を求めた。
結果は、表1に示した。
【0114】
〔実施例2〕
(磁気転写用マスター担体2)
反強磁性結合誘導層の厚みを1nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体2を作製した。
該磁気転写用マスター担体2を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体2に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価、及び転写信号S/Nの評価を行った。結果は表1に示した。
【0115】
〔実施例3〕
(磁気転写用マスター担体3)
反強磁性結合誘導層の厚みを2nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体3を作製した。
該磁気転写用マスター担体3を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体3に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価、及び転写信号S/Nの評価を行った。結果は表1に示した。
【0116】
〔実施例4〕
(磁気転写用マスター担体4)
反強磁性結合誘導層の厚みを4nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体4を作製した。
該磁気転写用マスター担体4を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体4に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価、及び転写信号S/Nの評価を行った。結果は表1に示した。
【0117】
〔実施例5〕
(磁気転写用マスター担体5)
2層の垂直磁気異方性層のうち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを5nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体5を作製した。
該磁気転写用マスター担体5を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体5に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表2に示した。
【0118】
〔実施例6〕
(磁気転写用マスター担体6)
2層の垂直磁気異方性層のうち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを20nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体6を作製した。
該磁気転写用マスター担体6を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体6に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表2に示した。
【0119】
〔実施例7〕
(磁気転写用マスター担体7)
2層の垂直磁気異方性層のうち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを40nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体7を作製した。
該磁気転写用マスター担体7を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体7に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表2に示した。
【0120】
〔実施例8〕
(磁気転写用マスター担体8)
2層の垂直磁気異方性層のうち、最初に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを40nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体8を作製した。
該磁気転写用マスター担体8を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体8に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表2に示した。
【0121】
〔実施例9〕
(磁気転写用マスター担体9)
2層の垂直磁気異方性層のうち、最初に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを20nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体9を作製した。
該磁気転写用マスター担体9を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体9に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表2に示した。
【0122】
〔実施例10〕
(磁気転写用マスター担体10)
2層の垂直磁気異方性層のうち、最初に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体10を作製した。
該磁気転写用マスター担体10を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体10に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表2に示した。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
〔実施例11〕
(磁気転写用マスター担体11)
実施例1と同様にして、Ni基材を作製した。
次いで、前記Ni基材を、所定のチャンバー内にセットし、該Ni基材の凸部に、下地層としてのTa膜(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=300W。
前記のように下地層を形成した後、垂直磁気異方性層(磁性層1)としてのCoPt膜(Co80_Pt20at%)(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=1,000W。
【0126】
前記のように垂直磁気異方性層(磁性層1)を形成した後、該垂直磁気異方性層の上に、反強磁性結合誘導層(誘導層1)としてのRu膜(厚み:0.7nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=100W。
【0127】
前記のように反強磁性結合誘導層(誘導層1)を形成した後、該反強磁性結合誘導層の上に、垂直磁気異方性層(磁性層2)としてのCoPt膜(Co80_Pt20at%)(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=1,000W。
【0128】
前記のように垂直磁気異方性層(磁性層2)を形成した後、該垂直磁気異方性層の上に、反強磁性結合誘導層(誘導層2)としてのRu膜(厚み:0.7nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=100W。
【0129】
前記のように反強磁性結合誘導層(誘導層2)を形成した後、該反強磁性結合誘導層の上に、垂直磁気異方性層(磁性層3)としてのCoPt膜(Co80_Pt20at%)(厚み:10nm)を、スパッタリング法により、形成した。成膜条件は、以下の通りである。
<成膜条件>
成膜圧力=0.3Pa、Ni基材−ターゲット間距離=200mm、DCパワー=1,000W。
【0130】
以上のようにして、磁気転写用マスター担体11を作製した。
【0131】
該磁気転写用マスター担体11を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体11に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表3に示した。
【0132】
〔実施例12〕
(磁気転写用マスター担体12)
実施例11において、3層の垂直磁気異方性層うち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを20nmに代えたこと以外は、実施例11と同様にして、磁気転写用マスター担体12を作製した。
該磁気転写用マスター担体12を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体12に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価を行った。結果は表3に示した。
【0133】
【表3】
【0134】
〔実施例13〕
(磁気転写用マスター担体13)
前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体13を作製した。
該磁気転写用マスター担体13を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体13に関し、前記実施例1と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価を行った。
また、下記の方法により、垂直磁気異方性層の残留磁化を評価し、下記の基準により総合評価を実施した。
結果は表4に示した。
【0135】
〔評価3〕
(垂直磁気異方性層の残留磁化)
記録磁界の印加を停止した後、垂直磁気記録媒体から分離した垂直磁気異方性層の磁性層の残留磁化(Mru、Mrl)を評価した。
なお、残留磁化(Mru、Mrl)の測定は、振動試料型磁力計(東英工業社製、VSM−C7)を使用した。磁気転写用マスター担体の磁性層の構成と、同じ構成の試料を作製し、その試料より得られたM−Hカーブから、外部印加磁界がゼロの時の磁化を読み取った。
結果は、表4に示した。
【0136】
(総合評価)
◎:S/Nが+0.7dB以上で、且つ残留磁化Mrが60emu/cc未満
○:S/Nが+0.1dB以上
△:S/Nが±0.1dB未満のもの
×:S/Nが±0.1dB未満のもので、且つ残留磁化Mrが200emu/cc以上
【0137】
〔実施例14〕
(磁気転写用マスター担体14)
反強磁性結合誘導層の厚みを0.5nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体14を作製した。
該磁気転写用マスター担体14を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体14に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0138】
〔実施例15〕
(磁気転写用マスター担体15)
反強磁性結合誘導層の厚みを0.6nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体15を作製した。
該磁気転写用マスター担体15を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体15に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0139】
〔実施例16〕
(磁気転写用マスター担体16)
反強磁性結合誘導層の厚みを0.8nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体16を作製した。
該磁気転写用マスター担体16を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体16に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0140】
〔実施例17〕
(磁気転写用マスター担体17)
反強磁性結合誘導層の厚みを0.9nmに代えたこと以外は、前記実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体17を作製した。
該磁気転写用マスター担体17を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体17に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0141】
〔実施例18〕
(磁気転写用マスター担体18)
前記実施例2と同様にして、磁気転写用マスター担体18を作製した。
該磁気転写用マスター担体18を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体18に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0142】
〔実施例19〕
(磁気転写用マスター担体19)
前記実施例3と同様にして、磁気転写用マスター担体19を作製した。
該磁気転写用マスター担体19を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体19に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0143】
〔実施例20〕
(磁気転写用マスター担体20)
前記実施例4と同様にして、磁気転写用マスター担体20を作製した。
該磁気転写用マスター担体20を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体20に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0144】
〔比較例2〕
(磁気転写用マスター担体102)
前記比較例1と同様にして、磁気転写用マスター担体102を作製した。
該磁気転写用マスター担体102を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体102に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表4に示した。
【0145】
【表4】
【0146】
〔実施例21〕
(磁気転写用マスター担体21)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体21を作製した。
該磁気転写用マスター担体21を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体21に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0147】
〔実施例22〕
(磁気転写用マスター担体22)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体22を作製した。
該磁気転写用マスター担体22を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体22に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0148】
〔実施例23〕
(磁気転写用マスター担体23)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体23を作製した。
該磁気転写用マスター担体23を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体23に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0149】
〔実施例24〕
(磁気転写用マスター担体24)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体24を作製した。
該磁気転写用マスター担体24を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体24に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0150】
〔実施例25〕
(磁気転写用マスター担体25)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体25を作製した。
該磁気転写用マスター担体25を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体25に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0151】
〔実施例26〕
(磁気転写用マスター担体26)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体26を作製した。
該磁気転写用マスター担体26を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体26に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0152】
〔実施例27〕
(磁気転写用マスター担体27)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体27を作製した。
該磁気転写用マスター担体27を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体27に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0153】
〔実施例28〕
(磁気転写用マスター担体28)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体28を作製した。
該磁気転写用マスター担体28を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体28に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0154】
〔実施例29〕
(磁気転写用マスター担体29)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体29を作製した。
該磁気転写用マスター担体29を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体29に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0155】
〔実施例30〕
(磁気転写用マスター担体30)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の厚みを5nmに変え、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の厚みを15nmに変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体30を作製した。
該磁気転写用マスター担体30を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体30に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表5に示した。
【0156】
【表5】
【0157】
〔実施例31〕
(磁気転写用マスター担体31)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の材質をCoPt膜(Co70_Pt30at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体31を作製した。
該磁気転写用マスター担体31を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体31に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0158】
〔実施例32〕
(磁気転写用マスター担体32)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の材質をCoPt膜(Co74_Pt26at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体32を作製した。
該磁気転写用マスター担体32を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体32に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0159】
〔実施例33〕
(磁気転写用マスター担体33)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の材質をCoPt膜(Co76_Pt24at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体33を作製した。
該磁気転写用マスター担体33を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体33に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0160】
〔実施例34〕
(磁気転写用マスター担体34)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、2番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層2)の材質をCoPt膜(Co78_Pt22at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体34を作製した。
該磁気転写用マスター担体34を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体34に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0161】
〔実施例35〕
(磁気転写用マスター担体35)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の材質をCoPt膜(Co78_Pt22at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体35を作製した。
該磁気転写用マスター担体35を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体35に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0162】
〔実施例36〕
(磁気転写用マスター担体36)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の材質をCoPt膜(Co76_Pt24at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体36を作製した。
該磁気転写用マスター担体36を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体36に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0163】
〔実施例37〕
(磁気転写用マスター担体37)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の材質をCoPt膜(Co74_Pt26at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体37を作製した。
該磁気転写用マスター担体37を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体37に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0164】
〔実施例38〕
(磁気転写用マスター担体38)
実施例1において、2層の垂直磁気異方性層うち、1番目に形成した垂直磁気異方性層(磁性層1)の材質をCoPt膜(Co70_Pt30at%)に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、磁気転写用マスター担体38を作製した。
該磁気転写用マスター担体38を用いて、前記実施例1と同様にして、磁気転写を行なった。
更に、該磁気転写用マスター担体38に関し、前記実施例13と同様にして、残留磁化の評価、転写信号S/Nの評価、総合評価を行った。結果は表6に示した。
【0165】
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1は、磁気転写方法の概略を示す説明図である。
【図2】図2は、磁気転写用マスター担体の断面の概略を示す説明図である。
【図3】図3は、磁気転写用マスター担体の上面の説明図である。
【図4A】図4Aは、磁界が印加されていない状態の磁性層の概略を示す説明図である。
【図4B】図4Bは、磁界が印加された状態の磁性層の概略を示す説明図である。
【図5】図5は、磁気転写用マスター担体の製造に用いられる原盤の製造工程を示す説明図である。
【図6】図6は、磁気転写用マスター担体の製造工程を示す説明図である。
【図7】図7は、垂直磁気記録媒体の断面の概略を示す説明図である。
【図8】図8は、初期磁化後の垂直磁気記録媒体の磁性層の磁化方向を示す説明図である。
【図9】図9は、磁気転写における垂直磁気記録媒体及び磁気転写用マスター担体の断面の様子を示す説明図である。
【図10】図10は、磁気転写後の垂直磁気記録媒体の磁性層の磁化方向を示す説明図である。
【図11A】図11Aは、磁気転写用マスター担体の磁性層のM−H曲線を模式的に示した説明図である。
【図11B】図11Bは、従来の磁気転写用マスター担体の磁性層のM−H曲線を模式的に示した説明図である。
【図12】図12は、磁気転写装置の概略を示す説明図である。
【図13】図13は、本発明の他の実施形態に係る磁気転写用マスター担体の磁性層の概略を示す説明図である。
【符号の説明】
【0167】
10 垂直磁気記録媒体(スレーブディスク)
20、20A 磁気転写用マスター担体(マスターディスク)
200 基材
201 凸部
202 先端面
203 側面
204 凹部
40 磁性層
41、41a、41b、41c 垂直磁気異方性層
43、43a、43b 反強磁性結合誘導層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直磁気記録媒体に記録すべき情報のパターンに対応して配設される凸部を表面に有する基材と、
前記凸部の先端面に少なくとも形成される磁性層と、を備え、
磁界が印加されると、前記磁性層が磁束を吸収して、磁界のパターンを形成する磁気転写用マスター担体であって、
該磁性層は、少なくとも2層の垂直磁気異方性層と、これらの垂直磁気異方性層の全ての間に介在され、隣接する2層の垂直磁気異方性層の間の反強磁性結合を誘導する反強磁性結合誘導層と、を有することを特徴とする磁気転写用マスター担体。
【請求項2】
反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の残留磁化Mruと厚みtuとの積Mrutuと、他方の垂直磁気異方性層の残留磁化Mrlと厚みtlとの積Mrltlとの比(Mrutu/Mrltl)が、0.5〜2である請求項1に記載の磁気転写用マスター担体。
【請求項3】
2層の垂直磁気異方性層が同一の残留磁化を有し、
反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の厚みwaと、他方の垂直磁気異方性層の厚みwbとの比(wb/wa)が、2〜0.2である請求項1から2のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体。
【請求項4】
反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の厚みwaと、他方の垂直磁気異方性層の厚みwbとの比(wb/wa)が、2〜0.5である請求項3に記載の磁気転写用マスター担体。
【請求項5】
磁界を印加して、垂直磁気記録媒体を初期磁化する初期磁化工程と、
初期磁化された垂直磁気記録媒体に、請求項1から4のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体を密着させる密着工程と、
該垂直磁気記録媒体と該磁気転写用マスター担体とを密着させた状態で、初期磁化工程において印加した磁界と逆向きの磁界を印加して、該垂直磁気記録媒体に情報を記録する磁気転写工程と、を有することを特徴とする磁気転写方法。
【請求項1】
垂直磁気記録媒体に記録すべき情報のパターンに対応して配設される凸部を表面に有する基材と、
前記凸部の先端面に少なくとも形成される磁性層と、を備え、
磁界が印加されると、前記磁性層が磁束を吸収して、磁界のパターンを形成する磁気転写用マスター担体であって、
該磁性層は、少なくとも2層の垂直磁気異方性層と、これらの垂直磁気異方性層の全ての間に介在され、隣接する2層の垂直磁気異方性層の間の反強磁性結合を誘導する反強磁性結合誘導層と、を有することを特徴とする磁気転写用マスター担体。
【請求項2】
反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の残留磁化Mruと厚みtuとの積Mrutuと、他方の垂直磁気異方性層の残留磁化Mrlと厚みtlとの積Mrltlとの比(Mrutu/Mrltl)が、0.5〜2である請求項1に記載の磁気転写用マスター担体。
【請求項3】
2層の垂直磁気異方性層が同一の残留磁化を有し、
反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の厚みwaと、他方の垂直磁気異方性層の厚みwbとの比(wb/wa)が、2〜0.2である請求項1から2のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体。
【請求項4】
反強磁性結合誘導層に隣接する2層の垂直磁気異方性層のうち、凸部側に配置する一方の垂直磁気異方性層の厚みwaと、他方の垂直磁気異方性層の厚みwbとの比(wb/wa)が、2〜0.5である請求項3に記載の磁気転写用マスター担体。
【請求項5】
磁界を印加して、垂直磁気記録媒体を初期磁化する初期磁化工程と、
初期磁化された垂直磁気記録媒体に、請求項1から4のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体を密着させる密着工程と、
該垂直磁気記録媒体と該磁気転写用マスター担体とを密着させた状態で、初期磁化工程において印加した磁界と逆向きの磁界を印加して、該垂直磁気記録媒体に情報を記録する磁気転写工程と、を有することを特徴とする磁気転写方法。
【図11A】
【図11B】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図11B】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−259372(P2009−259372A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255075(P2008−255075)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
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