説明

磁気転写能が改善されたマスター記録媒体

【課題】磁気転写能が改善されたマスター記録媒体を提供する。
【解決手段】サーボ領域Sとデータ領域Dとに区分された複数の領域を有する基板110と、サーボ領域S上に形成されたものであり、磁気記録媒体に形成しようとするサーボパターン形状を磁気転写するようにパターン化された磁性層140とを備え、サーボ領域Sに対応する領域が陽刻突出されたことを特徴とするマスター記録媒体101である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気記録技術に係り、特に、磁気記録媒体にサーボ情報を込めたサーボパターンを磁気転写するためのマスター記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体を使用するハードディスクドライブ(HDD:Hard Disc Drive)は、大容量であり、かつ高速アクセス(access)が可能な特性を有しているために、コンピュータだけではなく、各種デジタル機器の情報記憶装置として注目されており、最近、産業化及び情報化がいち早く進む中で、取り扱われる情報の量が急増するにことによって、HDDの高密度化が要求されている。
【0003】
一方、磁気記録媒体には、HDD駆動のために、磁気ヘッドを磁気記録媒体上の所望の位置に正しく位置させるためのサーボ情報があらかじめ記録されていなければならない。サーボ情報は、磁気記録媒体の記録層を所定パターンに磁化(magnetization)させたサーボパターンに記録され、かようなサーボパターンは、前記パターンに対応する形状が形成されたマスター記録媒体を磁気転写する方法によってなされる。
【0004】
HDDが高密度化されるにつれて、サーボパターンの線幅もそれに対応して小さくならなければならないので、高密度記録にふさわしいサーボパターンを効果的に磁気転写できる構造のマスター記録媒体に係る研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前述の必要性によって導き出されたものであり、微細線幅を有するサーボパターンが磁気記録媒体へ磁気転写されうる磁気転写能が改善された構造のマスター記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によるマスター記録媒体は、サーボ領域とデータ領域とに区分された複数の領域を有する基板と、前記サーボ領域上に形成されたものであり、磁気記録媒体に形成しようとするサーボパターン形状を磁気転写するようにパターン化された磁性層とを備え、前記サーボ領域に対応する領域が陽刻突出されたことを特徴とする。
【0007】
前記サーボ領域と前記磁性層との間に、バッファ層が形成されうる。
【0008】
前記バッファ層は、磁気転写時に、磁気記録媒体との緊密な接触を可能にする物質であり、前記磁性層に比べて柔軟な性質を有する物質によってなりうる。
【0009】
前記バッファ層は、磁気転写を促進できるように、磁性物質からなりうる。
【0010】
前記パターン化された磁性層は、ナノインプリント工程を使用して形成されうる。
【0011】
前記磁性層は、前記サーボパターンが陽刻された形状に形成されるか、前記サーボパターン形状が陰刻されたポリマー層の陰刻されたパターン内部を充填する形態に設けられうる。前記サーボパターン形状に陽刻されたポリマー層の表面に沿って、形成されもする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による磁気転写能の改善されたマスター記録媒体によれば、サーボ情報を込めたサーボパターンを磁気記録媒体に転写でき、サーボ領域のみが陽刻突出された構造を採択することで、磁気転写時に接触性を向上させつつも、マスター記録媒体や転写対象である磁気記録媒体を損傷させることがない。また、機能性バッファ層を導入することで、さらに効果的な磁気転写を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】磁気記録媒体の一般的な領域構造を示す図面である。
【図2】磁気記録媒体にサーボパターンを磁気転写する方法を示す図面である。
【図3】本発明の実施形態によるMRMの領域構造を示す図面である。
【図4】図3のA−A’断面で図示した本発明の多様な実施形態によるMRMの構造を示す図面である。
【図5】図3のA−A’断面で図示した本発明の多様な実施形態によるMRMの構造を示す図面である。
【図6】図3のA−A’断面で図示した本発明の多様な実施形態によるMRMの構造を示す図面である。
【図7】図3のA−A’断面で図示した本発明の多様な実施形態によるMRMの構造を示す図面である。
【図8】図3のA−A’断面で図示した本発明の多様な実施形態によるMRMの構造を示す図面である。
【図9】図3のA−A’断面で図示した本発明の多様な実施形態によるMRMの構造を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付された図面を参照しつつ、本発明の望ましい実施形態について詳細に説明する。以下の図面で同じ参照符号は同じ構成要素を指し、図面上で各構成要素の大きさは、説明の明瞭性と便宜性とのために誇張されていることがある。
【0015】
本発明によるマスター記録媒体及びその製造方法についての説明に先立ち、まず図1及び図2を参照し、ハードディスクドライブ(HDD)に使われる磁気記録媒体にサーボパターンを形成する方法について説明する。
【0016】
図1は、磁気記録媒体の一般的な領域構造を示している。磁気記録媒体は、情報が複数の円形トラックに沿って記録されるようにディスク形状を有し、その領域は、データが記録されるデータ領域Dと、トラックに対するサーボ情報が記録されたサーボ領域Sとに分けられている。サーボ領域Sには、その領域が特定パターンに磁化されてなるサーボパターンが形成されている。サーボパターンは、例えば、サーボ同期を提供するプリアンブル、サーボセクタの開始を知らせ、次のグレーコードを読むための同期を提供するサーボアドレスマーク(SAM:Servo Address Mark)、トラックID(IDentification)を提供するグレーコード、トラック追従のために要求される位置誤差信号を計算するための情報を提供するバーストを有することができる。図示されたパターンの具体的な形状は例示的なものであり、その形状はトラックによって互いに異なり、磁気記録媒体に対する記録再生時に、HDDがサーボ領域Sのサーボパターンからサーボ情報を読み取ることによって、トラック探索及びトラック追従を行う。
【0017】
図2は、磁気記録媒体に、それと同じサーボパターンを形成する方法を示している。磁気記録媒体Mにサーボパターンを形成するために、形成しようとするサーボパターン形状を磁気転写(magnetic transfer)できるマスター記録媒体(MRM:Master Recording Medium)を使用する。例えばMRMは、サーボパターン形状が陽刻された基板10、及び前記パターンが形成された表面に沿ってCoFeのような物質によって形成された磁性層20を有する。サーボパターンを形成しようとする磁気記録媒体M上にMRMを載せ、外部磁場Bを印加する。外部磁場Bによって、MRMの磁性層20及び磁気記録媒体Mの上層部の記録層が磁化され、このとき、磁化されたパターンは、MRMの陽刻された形状と同じになる。
【0018】
一方、前述の方法によってサーボパターンを磁気転写する際、MRMの磁性層20が磁気記録媒体Mの表面に緊密に接触されねばならない。ところで、一般的にMRMの磁性層20や磁気記録媒体Mは、いずれも類似した硬度(hardness)特性を有し、これは、2つの物質が緊密に接触することを困難にする。2つの物質間での緊密な接触を誘導するために、圧力を印加する場合、MRMや磁気記録媒体Mをいずれも損傷させることがありうる。
【0019】
本発明は、前記発生可能な問題点に着眼し、MRMと磁気記録媒体Mとの間に緊密な接触を誘導し、磁気転写能を改善させたMRMの領域構造を提示しようとするものである。
【0020】
図3は、本発明の実施形態によるMRMの領域構造を示している。本発明のMRMは、サーボ領域Sとデータ領域Dとを備えている。サーボ領域Sは、磁気記録媒体に形成するサーボパターン形状を磁気転写するためにパターン化された磁性層を含む領域であり、データ領域Dに比べて陽刻突出されている。図示された形状は、サーボ領域Sが陽刻突出されたところを例示するためのものであり、具体的な形状は多様に変形可能である。例えば図面では、ディスク形状のMRMに半径方向には連続し、円周方向には離隔された複数のサーボ領域Sが突出形成されているように図示されているが、複数のサーボ領域Sが円周方向だけではなく、半径方向にも離隔された形態に形成されることも可能である。また、サーボ領域Sの突出されたユニット一つには、基本単位となる1個のサーボパターンに該当する磁性層パターン、または複数個のサーボパターンに該当する磁性層パターンが形成されうる。このように、サーボ領域Sのみが陽刻突出され、データ領域Dが陰刻された凹凸構造のMRMを使用し、図2のような方法によってサーボパターンを磁気記録媒体に磁気転写する場合、サーボ領域Sと磁気記録媒体Mとがさらに緊密に接触されうる。また必要によって、真空吸入のような方法によって適切な圧力を加えても、サーボ領域S以外の他の領域は磁気記録媒体Mに接触せず、磁気記録媒体MやMRMの損傷を防止できる。また、サーボ領域Sを突出させるために、接触誘導や磁気転写誘導に有利な特徴を有する物質からなる機能性バッファ層を導入することができ、磁気転写能を改善できる。
【0021】
図4ないし図9は、図3のA−A’断面で図示した本発明の多様な実施形態のMRM 101〜106の構造を示している。これについての説明は、次の通りである。
【0022】
図4を参照すれば、MRM 101は、サーボ領域Sとデータ領域Dとに区分される複数の領域を有する基板110と、サーボ領域S上に形成されたものであり、磁気記録媒体に形成しようとするサーボパターン形状を磁気転写するようにパターン化された磁性層140とを備える。MRM 101は、前記サーボ領域Sに対応する領域が陽刻突出されており、本実施形態では、基板110のサーボ領域S上にバッファ層120が形成され、バッファ層120上に、パターン化された磁性層140が形成されている。ポリマー層130は、サーボパターン形状が陰刻された形態で設けられ、前記陰刻された内部を磁性層140が充填する形態からなっている。かような形状は、例えば、バッファ層120上にポリマー層130を平坦にコーティングし、サーボパターン形状が陽刻されたナノスタンプを利用したナノインプリント工程によって、ポリマー層130を陰刻した後、陰刻された部分に、磁性層140をメッキまたは蒸着する方法で形成できる。ナノインプリント工程を使用することは、磁性層140パターンの線幅をさらに微細に具現することを可能にするので、このように製造されたMRM 101は、高記録密度用磁気記録媒体のサーボパターンを転写するのに適している。
【0023】
基板110は、Ni合金、Co合金、Fe合金のような磁性物質によって形成され、非磁性物質によって形成されることも可能である。基板110が磁性物質によって形成される場合、磁気転写をさらに容易にできる。
【0024】
バッファ層120は、磁気記録媒体や磁性層140に比べて柔軟な(soft)特性を有する物質によって形成されうる。この場合、機械的衝撃の防止と共に、本発明のMRM 101が図2で例示した方法によって、MRMとして使われるときに、磁気記録媒体Mとの接着力をさらに向上させることができる。バッファ層120の材質としては、例えば、レジン、ポリマー、ゴム材質が採用されうる。またバッファ層120は、磁性物質によって形成され、この場合、磁性層140のパターンの磁気転写を促進できる。磁性層140は、例えば、CoFe、CoNiFe、NiFeのような物質によって形成されうる。
【0025】
図5のMRM 102は、磁性層140のパターンで図4のMRM 101と差がある。磁性層140は、サーボパターン形状が直接陽刻された形態になっている。かような形状は、例えば、サーボパターン形状である陽刻されたナノスタンプを利用したナノインプリントによってサーボパターン形状が陰刻されたポリマーレプリカを作り、前記陰刻された内部を磁性物質で充填した後、磁性物質からポリマーレプリカをピーリングオフ(peeling off)して分離する過程によって形成できる。
【0026】
図6のMRM 103は、サーボパターン形状が陽刻された形態に設けられたポリマー層130の表面に沿って磁性層140が形成されている。かような形状は、例えば、バッファ層120上にポリマー層130を平坦にコーティングした後、サーボパターン形状が陰刻されたナノスタンプを利用したナノインプリントによって、ポリマー層130にサーボパターン形状を陽刻させた後、ポリマー層130の表面に沿って磁性物質を蒸着する方法によって形成できる。
【0027】
以上の実施形態では、サーボ領域Sに形成された磁性層140のパターンの具体的な形状を例示して説明した。ただし、磁性層140のパターンは、磁気記録媒体にサーボパターンを磁気転写できるパターンであればよく、具体的な形状は、MRMを製造する際に、磁性層140を微細線幅でパターン形成する工程に準じて、前記例示された形状と若干変わりうる。
【0028】
またバッファ層120は磁気転写能改善のための機能性物質であり、改善しようとする特性スペックに合った物質に選択されうることを説明した。例えば、バッファ層120は、基板110と同じ物質によって形成されることが可能であり、その場合、バッファ層120と基板110とが一体に形成される構造を採択できる。
【0029】
図7ないし図9のMRM 104〜106は、それぞれ図4ないし図6のMRM 101〜103と、基板110とバッファ層120とが一体に形成された点で違いがある。すなわち、MRM 104〜106は、基板110のデータ領域Dが陰刻され、サーボ領域Sを陽刻突出させる構造によりなっている。かような構造は、例えば、サーボ領域Sの形状に対応する形状を有したエッチングマスクを利用したエッチング工程で形成でき、また、基板110を磁性物質で選択し、磁気転写を効率的にするために採択されうる。
【0030】
以上の実施形態に説明したMRM 101〜106は、図2で説明した磁気転写方法のMRMとして採用され、サーボ情報を込めたサーボパターンを磁気記録媒体に転写でき、サーボ領域のみが陽刻突出された構造を採択することで、磁気転写時に接触性を向上させつつも、MRMや転写対象の磁気記録媒体を損傷させない。また、機能性バッファ層を導入することで、さらに効果的な磁気転写を行うことができる。
【0031】
かような本願発明であるMRM及びその製造方法は、理解を助けるために図面に図示された実施形態を参考に説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、当分野の当業者ならば、それらから多様な変形及び均等な他実施形態が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲によってのみ決まるものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の磁気転写能が改善されたMRMは、例えば、HDD関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
10,110 基板
20,140 磁性層
101,102,103,104,105,106,MRM MRM
120 バッファ層
130 ポリマー層
B 外部磁場
D データ領域
M 磁気記録媒体
S サーボ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボ領域とデータ領域とに区分された複数の領域を有する基板と、
前記サーボ領域上に形成されたものであり、磁気記録媒体に形成しようとするサーボパターン形状を磁気転写するようにパターン化された磁性層とを備え、
前記サーボ領域に対応する領域が陽刻突出されたことを特徴とするマスター記録媒体。
【請求項2】
前記サーボ領域と前記磁性層との間にバッファ層が形成されたことを特徴とする請求項1に記載のマスター記録媒体。
【請求項3】
前記バッファ層は、前記磁性層に比べて柔軟な性質を有する物質からなることを特徴とする請求項2に記載のマスター記録媒体。
【請求項4】
前記バッファ層は、レジン、ポリマー、ラバーのうちいずれか1つの物質によって形成されたことを特徴とする請求項2または3に記載のマスター記録媒体。
【請求項5】
前記バッファ層は、磁性物質からなることを特徴とする請求項2に記載のマスター記録媒体。
【請求項6】
前記基板の前記データ領域が陰刻されたことを特徴とする請求項1ないし5のうち、いずれか1項に記載のマスター記録媒体。
【請求項7】
前記パターン化された磁性層は、ナノインプリント工程を使用して形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のうち、いずれか1項に記載のマスター記録媒体。
【請求項8】
前記磁性層は、前記サーボパターンが陽刻された形状に形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のうち、いずれか1項に記載のマスター記録媒体。
【請求項9】
前記サーボ領域上に設けられたものであり、前記サーボパターン形状が陰刻されたポリマー層を有し、
前記磁性層は、前記陰刻されたパターン内部を充填する形態に設けられたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のうち、いずれか1項に記載のマスター記録媒体。
【請求項10】
前記サーボ領域上に設けられたものであり、前記サーボパターン形状が陽刻されたポリマー層を有し、
前記磁性層は、前記ポリマー層の表面に沿って形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のうち、いずれか1項に記載のマスター記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−289393(P2009−289393A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126616(P2009−126616)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)