説明

磁界延長型アンテナおよび磁界延長型アンテナ搭載RFID認識用手袋

【課題】手袋の複数部位でのRFID記憶媒体との非接触通信が可能であり、低コストで作業性、汎用性が高く、安全であることを特徴とするRFID認識用手袋を提供すること。
【解決手段】連続した1つの導電線ライン2上に電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置からの搬送波と共振させるための誘導コイル11と、RFID記憶媒体との非接触通信を行うための1個または2個以上のループコイル12〜15を形成し、誘導コイルの両端に共振調整用コンデンサー16を接続する。誘導コイル11は手袋1の手の甲または手首などの部位に、ループコイル12〜15を手袋1の手の平、あるいは手の平側の指先を含む複数の場所に配置し、電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置3のアンテナを誘導コイル11に重ね合わせることで、ループコイル12〜15の近傍にある
RFID記憶媒体との非接触通信が可能になることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線用アンテナとして使用することができる磁界延長型アンテナおよび磁界延長型アンテナ搭載RFID認識用手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で情報の送受信が可能なRFID記憶媒体は、商品等の在庫管理などの流通分野だけでなくセキュリティや製造工程の業務管理など様々な分野で使用されている。このRFIDチップと無線でデータ通信を行うリーダーライタの一つとして、ハンディタイプのリーダーライタは持ち運びが容易なため広範囲の領域での作業を可能とする一方で、使用する者の片手もしくは両手を塞ぐことになるため作業効率の点で課題があった。この対策として、最近ではリーダーライタのアンテナを作業用手袋と一体にすることでハンズフリータイプのリーダーライタが提案されている。これにより作業者はハンディタイプのリーダーライタを片手に持つことなく、手袋をはめることで他の作業をしながら無線信号の送受信を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−347937
【特許文献2】特開2007−233737
【特許文献3】特開2007−233738
【特許文献4】特許 3773943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示の発明ではアンテナとリーダーライタがそれぞれ手袋と体の別の部分(腰など)に分かれているため、使用中および着脱時にケーブル配線が支障をきたす場合があり利便性に欠ける。
【0005】
それに対し上記特許文献2ではアンテナとリーダーライタが一体となり手の甲に設置されているので利便性は非常に向上しているが、人体の一部である手を通しての認識となるため認識性能の低下が課題となり実用性に欠ける。また、アンテナとリーダーライタが有線に接続されているため、漏電、ショートした場合にアンテナ線に電流が流れ続けてリーダー側が過負荷となり、焼損や発火などに至る危険性がある。
【0006】
これに対し特許文献3では、アンテナを手のひら側に移行することで作業を妨げずに認識性能を向上させている。また特許文献4では、5本の指や手の平部にアンテナを設置し、確実に認識できるシステム構成にしている。しかし、アンテナとリーダーライタが一体となり手袋に設置されているため、作業中の手袋破損等やアンテナの断線時には修理や交換費用が高くなるため実用性に欠ける。さらに、複数の電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置を近接距離で同時に使用しているため、相互干渉によりRFID記憶媒体との通信に支障が発生するため、全てのリーダーを同期させるなど構成回路が複雑になり実用性に欠ける。

【課題を解決するための手段】
【0007】
RFID記憶媒体と電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置との間で非接触に情報の送受信を行う非接触通信システムにおいて、無給電の誘導コイルの両端に共振調整用コンデンサーを接続するとともに、誘導コイルの両端に接続した連続した1つの導電性ライン上に2個以上のループコイルを形成し、そのループコイルを誘導コイルから離れた所定部位に配置し、かつ前記リーダーライタ装置をリーダーライタ装置のアンテナが前記誘導コイルに重なるように非接触で配置することにより、1台のリーダーライタ装置を使用して、前記ループコイルを配置した複数の部位でRFID記憶媒体との非接触通信が可能になることを特徴とする。
【0008】
磁界延長型アンテナの誘導コイルを手袋の甲または手首部分に配置し、複数のループコイルを手袋の手の平あるいは指先など所定部位に配置し、電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置をリーダーライタ装置のアンテナが前記誘導コイルに重なるように非接触で配置することにより、1台のリーダーライタ装置を使用して、前記ループコイルを配置した複数の部位でRFID記憶媒体との非接触通信が可能になることを特徴とする。
【0009】
2個以上のループコイルを親指とそれ以外の指に配置し、かつ、親指とそれ以外の指に配置したループコイルの巻き方向を反転することにより、親指とそれ以外の指でRFID記憶媒体を保持した時にRFIDを認識できることを特徴とする。
【0010】
ループコイルの数や、誘導コイルおよびループコイルの巻き数、周長、導電性ラインの全長を適切に設定することで共振周波数を調整することにより、連続した1つの導電性ラインのみでRFID記憶媒体と電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置との間で非接触に情報の送受信を行うことを特徴とする。
【0011】
RFID認識用手袋を使用して作業を中断することなくRFID記憶媒体の情報を取得し、このRFID記憶媒体に関する情報を無線で送信もしくはメモリーに保存後その情報を転送し、作業工程の管理をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記のような構成を有する磁界延長型アンテナを使用することで、RFID記憶媒体と電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置との間で非接触により情報の送受信を行う非接触通信システムにおいて、相互干渉によりRFID記憶媒体との通信に支障が発生することなく、1つの電磁誘導型RFIDリーダーライタで広範囲の領域にて認識することができる。
【0013】
また、磁界延長型アンテナの誘導コイルを手袋の甲または手首部分に配置し、複数のループコイルを手袋の手の平あるいは指先など所定部位に配置し、電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置をリーダーライタ装置のアンテナが前記誘導コイルに重なるように非接触で配置することにより、1台のリーダーライタ装置を使用して手の複数の場所でRFID記憶媒体を認識できるRFID認識用手袋として使用することができる。
【0014】
磁界延長型アンテナを構成する誘導コイルおよびループコイルは無給電で電磁誘導型RFIDリーダーライタから出力される搬送波の高周波磁界を非接触状態で受けることにより機能するため、磁界延長型アンテナと電磁誘導型RFIDリーダーライタを接続するための端子やケーブル、コネクタを必要としない。このため、磁界延長型アンテナおよび電磁誘導型RFIDリーダーライタを個々に絶縁、防水加工する事が可能である。特に磁界延長型アンテナについては、接合部分をゴムや樹脂などの皮膜により完全密閉する事も可能であるため、絶縁、防水を行うことが容易である。電磁誘導型RFIDリーダーライタについても、バッテリーや無線通信装置を内蔵させ、外部接続用の端子を必要としない構造とすることで、筐体の防水構造を容易に高めることが可能であることから、屋外など水に濡れる可能性の高い場所でも使用可能なRFID認識用手袋となる。
【0015】
一般的に、電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置では、アンテナ回路に数十ボルトから数百ボルトの高電圧が発生しており、アンテナ回路の一部が漏電やショートを起こした場合でも、アンテナ回路に電力が供給され続ける。このため、作業中に回路の一部が漏電やショートを起こした場合に、人体にショックや火傷等を与える危険性があるとともに、アンテナ回路に過大な電流が流れ続け、リーダーライタ装置が過負荷により、発熱、焼損、発火を引き起こす危険性も高い。
本発明の磁界延長型アンテナは、電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置のアンテナが発生した高周波磁界を、誘導コイルが非接触で受けて、共振回路により電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置が出力する高周波磁界に同調させることで高い誘導起電圧を発生させている。このため、磁界延長型アンテナの導電性ラインの一部が人体に接触、あるいは、ショートした場合は、瞬間的に磁界延長型アンテナの静電容量が変化し、共振コイルの共振周波数が変動し、導電性ラインに発生する誘導起電圧が大きく低下する。これにより、導電性ラインが漏電、ショートを起こした際も人体に対してショックや火傷等の損傷を与える危険性がない。また、非接触で駆動しているRFIDリーダーライタに過負荷が生じる危険性も避けられるため、磁界延長型アンテナを作業用手袋に組み込む事により、屋外など水に濡れる可能性の高い作業環境下でも、安全に作業を行う事が可能なRFID認識用手袋となる。
【0016】
磁界延長型アンテナを手袋に組み込む場合、作業により手袋自体の破損、汚損だけでなく、摩耗、屈曲疲労、物理衝撃などにより、磁界延長型アンテナの導電性ラインの断線や絶縁、防水性が損なわれる事が想定されるが、磁界延長型アンテナと電磁誘導型RFIDリーダーライタが非接触であることから、磁界延長型アンテナと電磁誘導型RFIDリーダーライタを簡単に着脱可能な構造とすることで、磁界延長型アンテナ付きの手袋のみ交換する事が容易に可能となる。また、磁界延長型アンテナ付きの手袋自体も複雑な回路を必要としないため低コストで製造することが可能であり、メンテナンス性に優れている。
【0017】
連続した1つの導電性ラインにより形成した複数のループコイルを手袋の第一関節部分より先端の指の腹部分や手のひらに設置するため、通常の作業時には屈曲が少なく耐久性に優れている。また複数のループコイルでRFID記憶媒体を認識するため、電磁誘導型RFIDリーダーアンテナ単体の場合と比較して広範囲の領域の認識を可能とし、RFID記憶媒体を認識させるための動作を必要としなくても作業中手が移動する位置にRFID記憶媒体を設置することで無意識に認識ができるため作業効率の低下を防ぐことができる。
【0018】
親指とそれ以外の指に配置する導電性ラインで構成するループコイルの巻き方向を反転することにより、親指とその他の指の腹の部分をあわせた時各指に配置したループコイルから発生する磁束が相互に強調する方向に働くため、指先でRFID記憶媒体を保持した時もRFID記憶媒体を認識できるRFID認識用手袋として使用することができる。逆に、親指とそれ以外の指に配置する導電性ラインで構成するループコイルの巻き方向を同じ方向にした場合は、親指とその他の指の腹の部分をあわせた時各指に配置したループコイルから発生する磁束が打ち消しあうため、指先でRFID記憶媒体を保持した時にRFID記憶媒体を認識しないRFID認識用手袋として使用することができる。
【0019】
磁界延長型アンテナを構成する導電性ラインは、電気抵抗が0.01〜1Ω/m、外径が0.01〜1mmで表面が絶縁されたものを使用し、導電性ラインで構成するループコイルの巻き数は2回以上とし、また各コイル部を形成する導電線のコイル1周は周長10mm以上300mm以下であることにより、電磁誘導型RFIDリーダーアンテナからループコイルを経由して電磁波を効率よく伝搬できることにより、複数の指および手のひらで同時に認識できるRFID認識用手袋として使用することができる。
【0020】
導電性ラインの外径が0.01〜1mmの範囲であることにより屈曲しやすく手袋をはめた作業を行う場合の違和感がほとんど無く、また手の屈曲と同等の曲げ状態では優れた耐久性が得られる。
【0021】
RFID認識用手袋を使用すれば、作業を中断することなくRFID記憶媒体の情報を取得できる。さらに、このRFID情報をBluetoothや無線LANや携帯電話などの無線により送信する、もしくはデータを様々な媒体に保存しておき、作業終了後にその情報を転送することで様々な作業工程を管理することができる。

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る実施形態に関する概略平面図(正面図、裏面図)
【図2】本発明の手袋、導電性ラインからなるループコイル(手の甲)、RFIDリーダーライタの配置を示す概念図
【図3】実施形態に使用したループコイルの拡大図
【図4】親指とその他の指でRFID記憶媒体を掴んだ時に認識できるループコイルの拡大図
【図5】RFID認識手袋による容器把持動作の認識試験結果
【図6】手袋で作業状態を管理できるシステムの概略図
【図7】本発明の手袋を使用して営農情報を管理するシステム要素の構成図
【図8】薬剤アイテム表示部のPDA画面表示内容を示す図
【図9】営農情報DBの作業履歴表示部の画面表示内容を示す図
【図10】営農情報DBの農作物栽培管理実績帳票印刷部の印刷内容を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたっての好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は、連続した1つの導電性ラインで形成した複数のループコイルを手袋の所定の指の先端部分と手のひらおよび手の甲部分に配置し、手の甲部分に配置したループコイルに非導通状態で電磁誘導型RFIDリーダーライタを設置して、1つのリーダーで手の複数の場所でRFID記憶媒体を認識できるRFID認識用手袋の概略平面図である。
【0025】
複数のループコイルは、非導通状態で電磁誘導型RFIDリーダーライタより電磁波を受信する誘導コイルとRFID記憶媒体と通信する1個もしくは複数のループコイルより構成される。誘導コイルは手の甲部分に設置しているが各種作業時の妨げにならない場所であれば手の甲以外の場所でもよい。
ループコイルは、手のひらおよび指の第一関節より先端の腹の位置に設置するのが好ましく、少なくとも親指、中指もしくは人差し指の2カ所以上に設置することが適している。
【0026】
導電性ラインを手袋に搭載する方法として、縫製による固定法、接着剤による固定法、粘着剤による固定法がある。そして、これらの固定方法を組み合わせたものであってもよく、さらには一般的な手袋をはめた各種の作業において作業を妨げずに導電性ラインが手袋から剥離や脱落しない固定方法であればこれら以外の方法でもよい。
【0027】
図3は、図1の実施形態に使用した連続した1つの導電性ラインで形成した誘導コイルとループコイルおよび電磁誘導型RFIDリーダーライタと通信周波数をあわせるためのLC共振回路の図である。誘導コイルとループコイルを構成する導電性ラインの電気抵抗や長さに対応してLC共振回路の構成を変更して共振周波数を13.56MHzに設定する。導電性ラインの電気抵抗や長さが共振周波数13.56MHzに対応している場合は、連続した1つの導電性ラインで形成した誘導コイルとループコイルだけで構成することも可能である。
【0028】
導電性ラインには、導体外径0.24mmで電気抵抗0.597Ω/mの錫メッキ軟銅撚線(日立電線製UL10625)を使用しているが、導電性ラインの導電素材の外径は使用時の屈曲耐久性や取り扱いやすさより0.01〜1mmの範囲であればよく、好ましくは0.05〜0.5mmの範囲がよい。0.01mmより小さい外径の場合は強度が低いため破損する場合があり、また耐久性も低いため適さない。また外径が1mmより大きい場合は屈曲時の屈曲抵抗が高いため、手袋に設置して作業する場合に硬くて取り扱い性が劣る。
【0029】
導電性ラインは単線、もしくは単線を複数本束ねた線のいずれでも良いが、使用時の屈曲耐久性より3本以上の複数本の導電線を撚り等の方法で束ねた材料、もしくは合成繊維の芯材に導電線を螺旋状に複数本巻き付けた材料が好ましい。複数本の導電素材を束ねる、もしくは撚り合わせて導電性ラインを構成する場合は、導電素材の外径が0.01mmより小さい場合であっても導電性ラインの外径が0.01〜1mmの範囲であればよく、逆に導電素材の外径が1mm以下であっても導電性ラインの外径が1mmより大きくなると好ましくない。
【0030】
導電性ラインの導電素材としては、銅、銀、アルミニウムなどの単一金属、もしくは銅合金やステンレスなどの複数の金属を複合した合金、さらには錫メッキ等により金属に被覆したもの、非導電素材に電気伝導素材をメッキや含浸して導電性を発現した複合素材などがあるが、電気抵抗が0.01〜10Ω/mの範囲の導電素材であればよく、好ましくは0.01〜1Ω/mの範囲がよい。
【0031】
図3の4回巻きのループコイルを5箇所(a;周長724mm,b;周長254.5mm,c;周長90mm,d;周長80mm,)作成し、各ループコイルは図1の手の甲(ループコイルa)、親指(ループコイルc)、人差し指と薬指(ループコイルd)、手のひら(ループコイルb)に配置できるように合成皮革の手袋に設置した。またRFIDリーダーはアートテクノロジー製ASI4400を使用し、手の甲部分のコイルと重複する状態で電気的に絶縁された状態で配置した。
【0032】
手のひらや指先など各ループコイルを設置する場所により許容領域が異なるため、ループコイルはコイルの大きさは異なっていても良い。ループコイルの数は、各ループコイルの認識距離や認識領域が大きく低下しない10個以下が好ましい。またループコイルのコイル巻き数は電磁波が発生できる数であればよいが、発生する磁束の強さとループコイル配置部の屈曲性より2〜10回の範囲が好ましい。
【0033】
誘導コイルの巻き数は、その他のコイルと同等以上とする。またに誘導コイルは電磁誘導型RFIDリーダーアンテナの通信周波数にあわせるためのLC共振回路を設置している。図3では電磁誘導型RFIDリーダーアンテナ(アートテクノロジー製ASI4400)の周波数13.56MHzに合うようにコンデンサーを設置してLC共振回路を構成している。
【0034】
図1の手袋を手にはめ、HF帯の外径10mmのコイン型ICタグ(日立化成工業製TG−P47612−N)およびカード型(85.6mm×54.0mm)ICタグ(日立化成工業製IC−P47631)を手のひら、親指、人差し指に接近させたところ、いずれの位置でも10mm以下の距離でICタグを認識できており、本発明の手袋はRFID認識用手袋としての性能があることを確認できた。
【0035】
図3のループコイルによる実施例1の手袋を手に装着し、コイン型ICタグを親指と人差し指で保持したところ、ICタグを認識できなかった。これに対し図4のループコイルによる実施例2の手袋を手に装着し同様に親指と人差し指でコイン型ICタグを保持したところ、100%認識できた。
親指とそれ以外の指に配置する導電性ラインで構成するループコイルの巻き方向を制御することにより、ICタグを指で保持した状態を認識できるRFID認識用手袋として使用することができる。
【0036】
コインタグ(Φ=10mm)を樹脂容器に設置し、図1の手袋を手に装着して容器を掴む試験を行った。図5に複数の男性(7名)による試験結果を示すが、いずれの場合も容器を掴んだ時にコインタグを認識しており、この手袋を着用することにより容器を掴む動作を測定できることが分かる。
【0037】
手袋で作業状態を管理できるシステム構成の概略図が図6であり、データの流れを示すフローチャートが図7である。
RFID認識用手袋で得られた信号は電磁結合によりRFIDリーダーライタに送られ、図6に示すRFID通信制御ユニットの通信部からBluetoothにより、装着したPDAを経由し、無線LANによりデータベースソフトに送られ、そこで作業状態を判定、登録する。
手袋からPDAへの通信手段はBluetooth以外に無線LANでもよい。また、手袋からデータベースソフトに情報を伝達する手段はPDA以外にも、ポータブルパソコン、携帯電話等の無線手段、RFID通信制御ユニットの通信部から直接データベースソフトへの送信、さらにはRFID通信制御ユニットにてメモリー等の記憶媒体に一度データを保存した後に転送する方法でもよく、手袋で得られた情報が確実に伝達される方法であればよい。
【0038】
実際の作業事例として、農薬ビン(A,Bの2種類)、プラスチック容器、はかり、じょうろ、水道蛇口、ビニールハウスの出入り口にコイン型およびカード型ICタグを設置し、RFID認識手袋を装着してビニールハウス内で農薬散布を行った。その結果、農薬ビン(A)からプラスチック容器に農薬を移す場合は、「農薬ビン(A)」、「はかり」、「プラスチック容器」の使用ログが記録され、希釈してビニールハウス内で農薬散布するときは、「プラスチック容器」、「水道蛇口」、「じょうろ」、「ビニールハウスの出入り口」の使用ログが記録されるなど、RFID認識手袋を装着して農作業を行うことにより、自動的に作業状況を記録していけることが分かった。
また、RFID認識手袋は作業性がよいため、通常の手袋を使用する場合と比較して作業性に問題ないことが分かった。
【0039】
システム運用事例として農薬Aをビニールハウス内に散布し、その際の情報出力例を図8、図9、図10に示す。農作業をしながらRFID認識用手袋で収集されるタグ履歴は、PDAを経由して営農DBに送られる。散布現場で農薬Aについての詳細情報を確認したい場合、また、作業履歴を確認したい場合、PDAを使用して営農DBより必要な情報を取得し、照会画面で確認することができる(図8)。営農DBにためこまれた一日分の作業ログは作業パターン記録部のログパターンと照らし合わせて作業パターンが決定され、作業実績として営農DBに記憶される。記憶された実績について農薬Aの散布目的、使用量、単位を編集することも可能である。作業実績は作業履歴照会画面で確認でき(図9)、農作物栽培の記録を栽培管理実績帳票として印刷できる(図10)ので、JAなどの農業管理団体へ栽培物を出荷する際の提出物とすることもできる。
【0040】
農薬散布や肥料散布以外にも収穫や選果作業などの農業関係だけでなく、冷凍庫や化学薬品処理などの工程管理に適したシステムであり、漁業や各種工場、流通やサービス業など様々な各種作業の工程管理や効率化のための情報収集が可能なシステムであることが分かる。

【符号の説明】
【0041】
1 手袋
2 導電性ライン
3 RFIDリーダーライタ
11 誘導コイル(手の甲)
12 ループコイル(手のひら)
13 ループコイル(親指部)
14 ループコイル(人差し指)
15 ループコイル(薬指)
16 共振調整用コンデンサー
21 RFID記憶媒体
22 PDA
23 無線LAN通信アクセスポイント
24 営農情報管理DBサーバ
25 農薬瓶
26 農薬散布器
31 試薬容器(Φ=40mm)
41 RFID通信制御ユニット
42 RFID通信制御ユニットの通信部
43 PDAの営農情報記憶部
44 PDAの薬剤アイテム表示部
45 営農DBサーバのDB
46 営農DBサーバの農作業パターン決定部
47 営農DBサーバの農作業パターン記録部
48 営農DBサーバの作業履歴の画面表示部
49 営農DBサーバの農作物栽培管理実績の帳票印刷部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFID記憶媒体と電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置との間で非接触に情報の送受信を行う非接触通信システムに用いられる磁界延長型アンテナであって、無給電の誘導コイルと、誘導コイルの両端に接続された共振調整用コンデンサーと誘導コイルの両端に接続した連続した1つの導電性ラインにより形成されるとともに、誘導コイルから離れた所定部位に配置した2個以上のループコイルとを備え、前記リーダーライタ装置をリーダーライタ装置のアンテナが前記誘導コイルに重なるように非接触で配置することにより、1台のリーダーライタ装置を使用して、前記ループコイルを配置した複数の部位で前記RFID記憶媒体との非接触通信が可能になることを特徴とする磁界延長型アンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載の磁界延長型アンテナにおける誘導コイルを手の甲または手首部分に、複数のループコイルを手の平あるいは指先など手袋の所定部位に組み込む事で、誘導コイル上に非接触で配置した電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置により、前記ループコイルを配置した手袋の複数部位でのRFID記憶媒体との非接触通信が可能になることを特徴とするRFID認識用手袋。
【請求項3】
2個以上の複数のループコイルを親指とそれ以外の指に配置し、かつ、親指とそれ以外の指に配置したループコイルの巻き方向を反転することにより、親指とそれ以外の指で前記RFID記憶媒体を保持した時にRFID記憶媒体を認識できることを特徴とする請求項2記載のRFID認識用手袋。
【請求項4】
ループコイルの数や、誘導コイルおよびループコイルの巻き数、周長、導電性ラインの全長を適切に設定することで共振周波数を調整することにより、連続した1つの導電性ラインのみでRFID記憶媒体と電磁誘導型RFIDリーダーライタ装置との間で非接触に情報の送受信ができることを特徴とする請求項2,3記載のRFID認識用手袋。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載のRFID認識用手袋からRFID記憶媒体に関する情報を取得する取得手段と、取得したRFID記憶媒体に関する情報を保存する保存手段と、保存されたRFID記憶媒体に関する情報を用いた作業パターンを決定する決定手段とを備える作業工程管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−57145(P2013−57145A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196705(P2011−196705)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(597157439)株式会社アートホールディングス (5)
【出願人】(507213983)
【Fターム(参考)】