説明

礼装用白手袋

【課題】従来品と同等の風合いや使用感を損なうことなく、冬期や寒冷地など寒さの厳しい状況下における各種式典等においても快適な着用が可能で、かつ安価な構造を備える礼装用白手袋を提供する。
【解決手段】手のひら側部分の輪郭形状と甲側部分の輪郭形状をそれぞれ有する白色生地4、5が縫合されて白手袋が形成される。白色生地4、5は、少なくとも一層の防風フィルム層を中間層12として含む積層構造とされ、これにより、冬期や寒冷地など寒さの厳しい状況下における各種式典等においても快適な着用が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は礼装用白手袋に関し、さらに詳細には、冬期や寒冷地における公的・私的な各種式典において着用する礼服あるいは各種制服と共に手指に嵌めて使用される礼装用白手袋の防寒技術に関する。
【背景技術】
【0002】
手袋は、装飾用、礼装用ないしは防寒用等に用いられる被服用手袋と、各種作業時に用いられる作業用手袋に大別され、こられの手袋はそれぞれ目的に応じて種々の構造のものが開発され使用されている。
【0003】
礼装用手袋は、公的・私的な各種式典において着用する礼服、あるいは警察官・消防士・自衛官・鉄道関係者・ホテル従業員等の各種制服と共に、季節を問わず一年を通じて、手指に嵌めて使用されるものである。
【0004】
この種の礼装用手袋としては、その用途柄、格式や礼節が重んじられることから、機能よりも外観形態が重視されて、薄手の白手袋が一般的である。
【0005】
これら白手袋は、薄手の一枚ものの綿スムス手袋あるいはナイロン製手袋が主流で、機能的には保温性に乏しく、春、夏および秋期の使用には問題ないが、冬期や寒冷地での使用においては、使用者は寒さを我慢することを強いられるのが現状である。
【0006】
この点に関して、分厚い防寒手袋を代用できない使用者は、防寒対策の次善策として、使い捨てカイロを併用したり、薄手の医療用プラスチック手袋を白手袋の内側に嵌めたりして寒さを凌いでいるというのが実情であり、いずれの方法も、嵩張って快適な使用感を損なうとともに、機能的にも手指が使いづらく、手袋本来の機能を犠牲にするという不具合があった。
【0007】
なお、本出願人の知る限りにおいて、このような従来の問題点に着目した先行技術文献は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、従来品と同等の風合いや使用感を損なうことなく、冬期や寒冷地など寒さの厳しい状況下における各種式典等においても快適な着用が可能で、かつ安価な構造を備える礼装用白手袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の礼装用白手袋は、手のひら側部分の輪郭形状と甲側部分の輪郭形状をそれぞれ有する白色生地が縫合されてなる縫い手袋であって、上記白色生地は、少なくとも一層の防風フィルム層を中間層として含む積層構造とされていることを特徴とする。
【0011】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記白色生地は、表面層、中間層および裏面層が一体的に積層形成されてなり、上記中間層が上記防風フィルム層からなる。
【0012】
(2)上記表面層がナイロン、上記中間層がポリウレタン、および上記裏面層が起毛ポリエステルからなり、上記表面層と中間層とが接着剤により接着されるとともに、上記中間層と裏面層とが接着剤および熱により接着されてなることを特徴とする。
【0013】
(3)上記表面層の厚みが0.20mm〜0.40mm、上記中間層の厚みが0.005mm〜0.015mm、および上記裏面層の厚みが0.20mm〜0.60mmにそれぞれ設定されて、上記白色生地の厚みが0.405mm〜1.015mmに設定されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の礼装用手袋によれば、手のひら側部分の輪郭形状と甲側部分の輪郭形状をそれぞれ有する白色生地が縫合されてなる縫い手袋であって、上記白色生地は、少なくとも一層の防風フィルム層を中間層として含む積層構造とされているから、以下に列挙するような効果が得られ、従来品と同等の風合いと使用感を損なうことなく、冬期や寒冷地など寒さの厳しい状況下における各種式典等において快適な着用が可能な礼装用白手袋を安価に提供することができる。
【0015】
(1)構成材料である白色生地が、少なくとも一層の防風フィルム層を中間層として含む積層構造とされているから、薄手の生地であるにも関わらず、上記防風フィルム層により外気の侵入が完全に遮断されて、使用者の自己体温の低下が軽減ないしは防止され、これにより防寒機能が有効に発揮される。
【0016】
その結果、礼装用白手袋本来の機能(薄手の生地による風合いと使用感)を損なうことなく、冬期や寒冷地など寒さの厳しい状況下における各種式典等においても快適な着用が可能な礼装用白手袋を提供することができる。
【0017】
(2)上記中間層の防風フィルム層の外気侵入防止効果により、雨や雪等の水分が手袋内部に浸透するのも有効に防止されて、防寒効果はさらに高められる。
【0018】
(3)上記表面層が従来の礼装用白手袋と同様の材料(ナイロン、綿等)からなることにより、使用者は従来の礼装用手袋と同様な感触での使用が可能となる。
【0019】
(4)上記裏面層が起毛ポリエステルからなることにより、使用者の手指の感触(肌触り)は非常に柔らかくて保温性も高く、上記防風フィルム層による防寒効果(外気遮断効果)とも相まって、より大きな防寒効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態1である礼装用白手袋の外観構成を示し、図1(a)は手の甲側面を示す正面図、図1(b)は手のひら側面を示す正面図である。
【図2】同礼装用白手袋を構成する生地を示し、図2(a)は同生地の層構造を分解して示す斜視図、図2(b)は同生地の積層構造を示す正面断面図である。の積である。
【図3】同礼装用白手袋の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0022】
本発明に係る礼装用白手袋を図1〜図3に示し、この白手袋は、具体的には冬期や寒冷地における公的・私的な各種式典において着用する礼服あるいは各種制服と共に手指に嵌めて使用されるもので、その使用例を図3に示す。図3(a)は消防士が制服U着用と共に白手袋1A、1Bを使用する場合、図3(b)は除幕式等の式典におけるテープカット時に、礼服Fと共にともに白手袋1A、1Bを使用する場合をそれぞれ示している。
【0023】
左右の白手袋1A、1Bは左右対称の同一構造を備え、手のひら側部分2の輪郭形状を有する白色生地4と、甲側部分3の輪郭形状を有する白色生地5とが、互いの外周輪郭部分に沿って縫合されてなる縫い手袋で、5本の指部分6a、6b、6c、6d、6eを備える。
【0024】
上記白色生地4,5は、表面層10および裏面層11の間に少なくとも一層の中間層12(図示の実施形態においては一層)が介装されて、一体的に積層形成されてなる。上記中間層12は、具体的には防風フィルム層とされる。
【0025】
上記表面層10は、表生地として白手袋1A、1Bの表面部を形成する層で、具体的には、白手袋1A、1Bの白色表面を形成するとともに、従来周知の礼装用白手袋と同等の表面特性を付与する。この表面層10の構成材料としては、上記二つの機能を発揮付与する材料が用いられ、好適には、ナイロンや綿などが使用される。図示の実施形態の表面層10は、従来の礼装用白手袋の単体生地としても多用されているナイロンにより形成されてなる。
【0026】
また、表面層10の厚みt10は、好適には0.20mm〜0.40mmに設定され、図示の実施形態においてはt10=約0.3mm(180〜190g/m2)に設定されている(( )内の数値は素材としての厚み)。
【0027】
裏面層11は、裏生地として白手袋1A、1Bの内部保温部を形成する層で、この裏面層11の構成材料としては、保温性の高い材料が用いられ、好適には、ポリエステル、アクリル、綿などが使用され、目的に応じてこれらの材料表面に起毛処理が施される。図示の実施形態の裏面層11は起毛処理が施された起毛ポリエステルにより形成されてなる。
【0028】
また、裏面層11の厚みt11は、好適には0.20mm〜0.60mmに設定され、図示の実施形態においては、t11=約0.5mm(180〜190g/m2)に設定されている(( )内の数値は素材としての厚み)。
【0029】
中間層12は、薄肉フィルム生地として白手袋1A、1Bの防風部を形成する層で、具体的には上述したように防風フィルム層とされる。この中間層12の構成材料としては、防風性の高い材料が用いられ、好適には、ポリウレタンや塩化ビニルなどが使用される。図示の実施形態の表面層10は防風性にも優れる薄い膜状のポリウレタンつまりポリウレタンフィルムにより形成されてなる。
【0030】
また、中間層12の厚みt12は、好ましくは0.005mm〜0.015mmに設定され、図示の実施形態においては、t12=約0.01mm(25〜30g/m2)に設定されている(( )内の数値は素材としての厚み)。
【0031】
なお、この中間層12の厚みt12は、白色生地4、5全体の厚みt(t10+t11+t12)を考慮しつつ、具体的な用途に応じて、防風機能が有効に発揮され得る範囲内において適宜増減調整される。
【0032】
ちなみに、白色生地4、5の厚みt(t10+t11+t12)は、好ましくは0.405mm〜1.015mmに設定され、図示の実施形態においては、t=約0.81mm(385〜410g/m2)に設定されている(( )内の数値は素材としての厚み)。
【0033】
上記白色生地4、5の厚みt(t10+t11+t12)は、種々の厚みの白色生地4、5を用いて白手袋1A、1Bの試作品を製作して、これら試作品を複数の被験者(使用者として)の手指に実際に嵌めてもらい、その装着感や使用感を調べるべく、従来周知の一般的な礼装用白手袋の場合と比較しつつ行った試験結果から得られた数値範囲である。
【0034】
上記試験結果から得られた白色生地4、5の厚みtは、従来周知のナイロン生地単体からなる礼装用白手袋(従来品)の厚みの2.0倍〜3、5倍に相当することになるが、その白手袋1A、1Bの風合いや装着感・使用感は、従来品となんら遜色のないものが得られることが試験的に判明している。
【0035】
上記白色生地4、5を構成する表面層10、中間層12および裏面層11の積層方法は、構成材料特性を考慮した適宜接着技術が適用され、図示の実施形態においては、表面層10と中間層12とが接着剤(図示省略)により接着されるとともに、上記中間層12と裏面層11とが接着剤(図示省略)および熱により接着されて、白色生地4、5の積層構造bが形成されている。
【0036】
しかして、以上のように構成された白手袋1A、1Bにおいては、手のひら側部分2の輪郭形状と甲側部分3の輪郭形状をそれぞれ有する白色生地4、5が縫合されてなり、これら白色生地4、5は、少なくとも一層(図示の場合は一層)の防風フィルム層を中間層12として含む積層構造とされているから、従来品と同等の厚みによる風合いと使用感を損なうことなく、冬期や寒冷地など寒さの厳しい状況下における各種式典等において快適な着用が可能である。
【0037】
すなわち、白手袋1A、1Bの構成材料である白色生地4、5が、一層の防風フィルム層を中間層12として含む積層構造とされているから、薄手の生地であるにも関わらず、防風フィルム層12により外気の侵入が完全に遮断されて、使用者の自己体温の低下が軽減ないしは防止され、これにより防寒機能が有効に発揮される。
【0038】
その結果、図示の実施形態の白手袋1A、1Bは、礼装用白手袋本来の機能(薄手の生地による風合いと使用感)を損なうことなく、冬期や寒冷地など寒さの厳しい状況下における各種式典等においても快適に着用することができる。
【0039】
また、上記中間層12である防風フィルム層の外気侵入防止効果により、雨や雪等の水分が手袋1A、1B内部に浸透するのも有効に防止されて、防寒効果はさらに高められる。
【0040】
さらに、上記表面層10が従来の礼装用白手袋と同様の材料(ナイロン、綿等)からなるので、使用者は従来の礼装用手袋と同様な風合い・感触での使用が可能となる。
【0041】
また、上記裏面層11が起毛ポリエステルからなるので、使用者の手指の感触(肌触り)は非常に柔軟で柔らかく、上記防風フィルム層12の防寒効果(外気遮断効果)とも相まって、より大きな防寒効果が得られる。
【0042】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれに限定されることなく、その範囲において種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
U 制服
F 礼服
t 白色生地の厚み
10 表面層の厚み
11 裏面層の厚み
12 中間層の厚み
1A、1B 白手袋
2 手のひら側部分
3 甲側部分
4 白色生地
5 白色生地
10 表面層
11 裏面層
12 中間層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
手のひら側部分の輪郭形状と甲側部分の輪郭形状をそれぞれ有する白色生地が縫合されてなる縫い手袋であって、
前記白色生地は、少なくとも一層の防風フィルム層を中間層として含む積層構造とされている
ことを特徴とする礼装用白手袋。
【請求項2】
前記白色生地は、表面層、中間層および裏面層が一体的に積層形成されてなり、
前記中間層が前記防風フィルム層からなる
ことを特徴とする請求項2に記載の礼装用白手袋。
【請求項3】
前記表面層がナイロン、前記中間層がポリウレタン、および前記裏面層が起毛ポリエステルからなり、
前記表面層と中間層とが接着剤により接着されるとともに、前記中間層と裏面層とが接着剤および熱により接着されてなる
ことを特徴とする請求項2に記載の礼装用白手袋。
【請求項4】
前記表面層の厚みが0.20mm〜0.40mm、前記中間層の厚みが0.005mm〜0.015mm、および前記裏面層の厚みが0.20mm〜0.60mmにそれぞれ設定されて、前記白色生地の厚みが0.405mm〜1.015mmに設定されている
ことを特徴とする請求項2または3に記載の礼装用白手袋。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−2012(P2013−2012A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132744(P2011−132744)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(599037609)株式会社柏田製作所 (3)
【Fターム(参考)】