説明

神経変性性障害のトランスジェニック動物モデル

【課題】ヒトAD表現型の重要な側面を迅速に示すADのトランスジェニック動物モデルを提供すること。
【解決手段】本発明は、TgCRND8と名付けられたアルツハイマー病のトランスジェニック動物モデルを提供する。そして本発明はまた、このようなモデルを作製するための方法を提供する。このような本発明のTgCRND8と名付けられたアルツハイマー病のトランスジェニック動物モデルによって、アルツハイマー病という疾患の病因論の特徴づけが可能になる。そしてまたアルツハイマー病のための可能性のある処置の開発、および試験のためのシステムを提供することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、アルツハイマー病を含む、神経変性性障害のトランスジェニック非ヒト動物モデルに関する。より詳細には、本発明は、アルツハイマー病の病理モ機構の特徴づけ、ならびに診断、治療および治療用化合物の開発を容易にするマウスモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
以下の説明において、参考は、本明細書の巻末に列挙する特定の文献引用に対してなされており、その全てが本明細書において参考として援用されている。
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、痴呆の最も一般的な原因であり、おそらく遺伝的および環境的決定要因を含む、複雑な病因を有する。アルツハイマー病は、アミロイドβペプチド(Aβ)から形成された脳のアミロイド沈着、神経欠損、および神経原線維変化(NFT)として公知の細胞内沈着(微小管結合蛋白質タウ(τ)の高リン酸化形態から構成される)によって特徴付けられる。
【0004】
多様な家族性アルツハイマー病(FAD)家系の遺伝子解析によって、アミロイドβ−ペプチド(Aβ)の生合成が、この疾患の病因において共通する特徴であることが示されている。第21染色体に関連した家系の場合、変異はエンドプロテアーゼ部分に隣接し、この変異ではAβが、アルツハイマーアミロイド前駆体タンパク質(APP)から切り取られるが、プレセニリン1および2における変異は、AβのC末端境界(いわゆるγセクレターゼ部位)でAPPの切断を強化すると考えられる。第17染色体上のタウ遺伝子は、ADでは変異していないが、ミスセンス置換およびスプライス部位変異が、ADに対するいくつかの病理的に類似性の条件(例えば、前頭側頭痴呆)で存在する。
【0005】
この遺伝子データによって、Aβ生合成が、NFTの生成において最高に達する病理的経路の上流に存在することが示される。初期の議論は、AβアミロイドまたはNFTのいずれが神経の欠損および機能不全を生じるかということに集中していたが、現在では、両方のタイプのタンパク質凝集とも毒性であってADの臨床的表現型に寄与しているようにみえる。
【0006】
天然に存在する動物のAD形態は存在しないが、この疾患のトランスジェニック動物モデルは、ヒト疾患における重要な病理的事象を明確にし、そして順序付ける能力を有する。しかし、労力の大きさにもかかわらず、満足なモデルはほとんど存在しない。
【0007】
特許文献1は、ヒトまたはマウスのAPP695(野生型か、または「スウェーデン型」変異を有するかのいずれか)を発現し、そして一般に出生から1年以内に進行性の神経学的障害を発症するトランスジェニックマウスに関する。特許文献2は、ヒトAPPのカルボキシ末端部分の99〜103アミノ酸をコードする導入遺伝子を有するアルツハイマー病の動物モデルに関する。特許文献3は、トランスジェニックマウスであって、そのゲノムが神経フィラメント遺伝子のエキソンIに挿入されたヒトβAPPのカルボキシ末端の100アミノ酸をコードするDNA配列を含むトランスジェニックマウスに関する。特許文献4は、スウェーデン型変異を有するヒトAPP751をコードする導入遺伝子を保有するトランスジェニックマウスに関する。
【0008】
特許文献5は、ADのトランスジェニック動物モデルに関する。ここでは、この動物は、変異プレセニリン1導入遺伝子、およびAPP695導入遺伝子(スウェーデン型変異を保有する)の両方を保有し、かつ発現する。
【0009】
これらのモデルのいくつかは、生理学的に適切な経路によって、APPおよび/またはその代謝体を生成することができず、そしてその警告を適用しない場合、このトランスジェニック動物は、AD表現型の特定の側面しか示し得ない。神経病理学に関して、ADにおいてみられるアミロイド沈着に非常に密接に類似しているアミロイド沈着、選択的神経欠損(ある場合には)、およびタウの高リン酸化が存在し得るが、NFTの沈着は存在しない。さらに、これらの神経病理学的異常は、8〜9ヶ月齢まで、または6ヶ月齢まで(二遺伝子(bigenic)またはホモ接合性の動物の場合)出現し得ない。これらのモデルの作成において遭遇する他の問題としては、APPの過剰発現に起因する新生児死亡率、複雑な遺伝子背景の使用、および一般には明確な証拠のない進行性の認知機能不全が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,877,399号明細書
【特許文献2】米国特許第6,037,521号明細書
【特許文献3】米国特許第5,894,078号明細書
【特許文献4】米国特許第5,850,003号明細書
【特許文献5】米国特許第5,898,094号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、ヒトAD表現型の重要な側面を迅速に示すADのトランスジェニック動物モデルの必要性が存在する。これによって動物は長期間維持される必要がなくなり、そして診断および治療の化合物が開発され、そしてさらにかなり迅速にそしてコストがかからずにスクリーニングできる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、トランスジェニック哺乳動物を含むADの新しい動物モデルに関する。この動物モデルは、好ましい実施形態において、TgCRND8と名付けられたトランスジェニックマウスを含むが、このトランスジェニックマウスは、3ヶ月齢までにCNSにおいて、高レベルのAβ合成およびアミロイド沈着を示す。さらに、TgCRND8マウスは、アミロイド沈着が開始する時点までに認知の変化を示す。本発明はまた、アルツハイマー病のTgCRND8トランスジェニック動物モデルの生成のための方法を提供する。
アルツハイマー病のTgCRND8トランスジェニックマウスモデルの開発によって、この疾患の病因は、さらに良好に理解され得、そして有効な薬物治療を含む、可能性のある処置が開発され、そして試験され得る。
【0013】
トランスジェニックTgCRND8マウスモデルを、CNSにおけるAβアミロイドタンパク質の発現、ならびに組織学的分析、神経学、および行動不全に基づく、天然に存在するアルツハイマー病表現型に対する類似の大きさによって、特徴付ける。
【0014】
APP遺伝子は、選択的スプライシングを受けて、3つの共通のアイソフォームを生成する。770アミノ酸を含む最長のアイソフォーム(APP770)、および751アミノ酸を含む2番目の長さのアイソフォーム(APP751)は、ほとんどの組織で発現される。695アミノ酸を含む3番目の転写物(APP695)は、脳において主に発現される。慣例により、より短いアイソフォームのコドン位置をいう場合でも、最長のアイソフォーム(APP770)のコドン番号付けを用いる。
【0015】
TgCRND8トランスジェニックマウスは、脳特異的APP695アイソフォームの変異形態を発現する導入遺伝子を含む;この導入遺伝子は、「スウェーデン型(Swedish)」APP変異および「インディアナ型(Indiana)」APP変異の両方を保有する。
【0016】
変異体K595N/M596L(スウェーデン型変異)およびV642F(インディアナ型変異)を含む(APP695のコドン番号付けを用いる)APP695のcDNAを生成した。これらおよび他のAPP変異は、さらに一般的なAPP770コドン番号付けシステムを用いて(すなわち、これらの2つの変異である、K670N/M671L(スウェーデン型変異)およびV717F(インディアナ変異)について)、一般に本明細書(特許請求の範囲を含む)において言及されている。
【0017】
二重変異体APP695cDNAカセットをコスミド発現ベクターであるcosTetに挿入した。このベクターは、Sirian(シリア)ハムスタープリオンタンパク質遺伝子プロモーターを含む。次いで、このベクターをマウスの卵母細胞にマイクロインジェクションして、TgCRND8と名付けられたトランスジェニック系統を作製した。これらのマウスは、3ヶ月齢までに複数の散在性のアミロイド沈着を示し、この時点で空間学習における欠損が明らかになる。
【0018】
本発明のさらなる局面に従って、TgCRND8マウスを、AD関連変異を保有する種々の他のトランスジェニックマウスと交配して、さらに増強されたAD関連神経病理を示す、二重トランスジェニック(bi−transgenic))マウスを産生する。
【0019】
1つの実施形態に従って、本発明は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物であって、そのゲノムは、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種アミロイド前駆体タンパク質695(APP695)ポリペプチドをコードしており、ここで、このポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そしてこの導入遺伝子が発現される、トランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。
【0020】
好ましい実施形態に従って、上記の哺乳動物はマウスであり、そして上記異種APP695はヒトAPP695である。
【0021】
さらなる実施形態に従って、トランスジェニック非ヒト哺乳動物であって、以下:
(a)ゲノムが導入遺伝子を含む第一のトランスジェニック非ヒト哺乳動物を、第二の遺伝子を含むゲノムを有する第二の非ヒト哺乳動物と交配して第一世代の子孫を産生する工程であって、この導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種アミロイド前駆体タンパク質695(APP695)ポリペプチドをコードしており、ここで、このポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そしてこの導入遺伝子が発現され、そしてこの第二の遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ少なくとも1つの選択された変異を有する選択されたタンパク質をコードする、工程;ならびに
(b)この第一世代の子孫から、少なくとも1つの第一導入遺伝子および少なくとも1つの第二遺伝子を含むゲノムを有し、そしてこの少なくとも1つの第一導入遺伝子およびこの少なくとも1つの第二遺伝子の両方を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を選択する工程であって、この第一導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種APP695ポリペプチドをコードし、ここでこのポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そしてこの第二遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ少なくとも1つの選択された変異体を有する上記選択されたタンパク質をコードする、工程、
によって産生される、トランスジェニック非ヒト哺乳動物が提供される。
【0022】
さらなる実施形態に従って、本発明は、以下:
(a)そのゲノムが導入遺伝子を含む第一のトランスジェニックマウスを、第二の遺伝子を含むゲノムを有する第二のマウスと交配して第一世代の子孫を産生する工程であって、この導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつヒトAPP695ポリペプチドをコードしており、ここで、このポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そしてこの導入遺伝子が発現され、そしてこの第二の遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ少なくとも1つの選択された変異を有する選択されたタンパク質をコードする、工程;ならびに
(b)この第一世代の子孫から、少なくとも1つの第一導入遺伝子および少なくとも1つの第二遺伝子を含むゲノムを有し、そしてこの少なくとも1つの第一導入遺伝子およびこの少なくとも1つの第二遺伝子の両方を発現するトランスジェニックマウスを選択する工程であって、この第一導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種APP695ポリペプチドをコードし、ここでこのポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そしてこの第二遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ少なくとも1つの選択された変異を有するこの選択されたタンパク質をコードする、工程、
によって産生される、トランスジェニックマウスを提供する。
【0023】
さらなる実施形態に従って、ADの発生を防止または遅延する有効性について候補化合物をスクリーニングするための方法であって、以下の工程:
(a)本明細書に記載されたような第一のトランスジェニックマウスにおける、選択されたAD関連表現型特徴の出現の前に、このマウスに対してこの候補化合物を投与する工程;および
(b)このマウスにおいてこの選択されたAD関連表現型特徴が出現する年齢を、この化合物を投与しなかった、同じタイプの第二のトランスジェニックマウスにおいてこの特徴が出現する年齢と比較する工程;
を包含し、
ここでこの第二のマウスにおいてこの特徴が出現した年齢と比べた、この第一のマウスにおいてこの特徴が出現した年齢の上昇は、この化合物の有効性を示す、方法が提供される。
【0024】
さらなる実施形態に従って、アルツハイマー病の症状を寛解するのにおける有効性について候補化合物をスクリーニングするための方法であって、以下の工程:
(a)本明細書に記載のような第一のトランスジェニックマウスに対してこの候補化合物を投与する工程;
(b)記憶試験または学習試験においてこのマウスの能力を決定する工程;および
(c)このマウスのこの能力を、この化合物を投与しなかった、同じタイプの第二のトランスジェニックマウスの能力と比較する工程;
を包含し、
ここでこの第二のマウスの能力と比べた、この第一のマウスの改善された能力は、この化合物の有効性を示す、方法が提供される。
【0025】
さらなる実施形態に従って、中枢神経系において異常なAβ沈着を示すトランスジェニック非ヒト哺乳動物を産生する方法であって、以下:
(a)導入遺伝子をこの哺乳動物の受精した卵母細胞に導入する工程であって、この導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種アミロイド前駆体タンパク質695(APP695)ポリペプチドをコードしており、ここで、このポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されている、工程;
(b)偽妊娠哺乳動物中にこの受精卵母細胞を移植する工程;
(c)この受精卵母細胞を生きて誕生した子孫中で発育させる工程;および
(d)ゲノムが導入遺伝子を含む子孫を選択する工程であって、この導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種アミロイド前駆体タンパク質695(APP695)ポリペプチドをコードしており、ここで、このポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そしてこの導入遺伝子が発現される、工程;
を包含する、方法が提供される。
【0026】
さらなる実施形態に従って、異種アミロイド前駆体タンパク質695(APP695)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、ここでこのポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されている、ヌクレオチド配列が提供される。また、プロモーターに作動可能に連結されたこのようなヌクレオチド配列を含む、ベクターも提供される。
本発明はさらに、以下の項目を提供する。
(項目1)ゲノムが導入遺伝子を含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物であって、該導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種アミロイド前駆体タンパク質695(APP695)ポリペプチドをコードしており、ここで、該ポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そして該導入遺伝子が発現される、トランスジェニック非ヒト哺乳動物。
(項目2)前記哺乳動物がマウスである、項目1に記載のトランスジェニック哺乳動物。
(項目3)前記マウスが、(C3H×C57BL6)×C57マウスである、項目2に記載のトランスジェニックマウス。
(項目4)前記異種APP695がヒトAPP695である、項目3に記載のトランスジェニックマウス。
(項目5)前記マウスがその中枢神経系において異常なAβ沈着を示す、項目4に記載のトランスジェニックマウス。
(項目6)前記動物が、アルツハイマー病関連の病状の加速された出現を示す、項目4に記載のトランスジェニックマウス。
(項目7)祖先として項目4に記載のトランスジェニックマウスを有する、トランスジェニックマウス。
(項目8)トランスジェニック非ヒト哺乳動物であって、以下:
(a)項目1に記載の第一のトランスジェニック非ヒト哺乳動物を、第二の遺伝子を含むゲノムを有する第二の非ヒト哺乳動物と交配して第一世代の子孫を産生する工程であって、該第二の遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ少なくとも1つの選択された変異を有する選択されたタンパク質をコードする、工程;ならびに
(b)該第一世代の子孫から、少なくとも1つの第一導入遺伝子および少なくとも1つの第二遺伝子を含むゲノムを有し、そして該少なくとも1つの第一導入遺伝子および該少なくとも1つの第二遺伝子の両方を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を選択する工程であって、該第一導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種APP695ポリペプチドをコードし、ここで該ポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そして該第二遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ少なくとも1つの選択された変異を有する前記選択されたタンパク質をコードする、工程、
によって産生される、トランスジェニック非ヒト哺乳動物。
(項目9)前記選択されたタンパク質が、プレセニリンであり、そして前記選択された変異がAD関連変異である、項目8に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
(項目10)前記選択されたタンパク質が、低密度リポタンパク質レセプター関連遺伝子、α2−マクログロブリン遺伝子およびβ−セクレターゼ遺伝子からなる群より選択され、そして前記選択された変異がAβプロセシング関連変異である、項目8に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
(項目11)前記動物がマウスである、項目10に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物
(項目12)トランスジェニックマウスであって、以下:
(a)項目4に記載の第一のトランスジェニックマウスを、第二の遺伝子を含むゲノムを有する第二のマウスと交配して第一世代の子孫を産生する工程であって、該第二の遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ少なくとも1つの選択された変異を有する選択されたタンパク質をコードする、工程;ならびに
(b)該第一世代の子孫から、少なくとも1つの第一導入遺伝子および少なくとも1つの第二遺伝子を含むゲノムを有し、そして該少なくとも1つの第一導入遺伝子および該少なくとも1つの第二遺伝子の両方を発現するトランスジェニックマウスを選択する工程であって、該第一導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種APP695ポリペプチドをコードし、ここで該ポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そして該第二遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ少なくとも1つの選択された変異を有する該選択されたタンパク質をコードする、工程、
によって産生される、トランスジェニックマウス。
(項目13)前記第二の遺伝子が、内因性変異遺伝子である、項目12に記載のトランスジェニックマウス。
(項目14)前記第二の遺伝子が、導入遺伝子である、項目12に記載のトランスジェニックマウス。
(項目15)前記第二の遺伝子が、AD関連アミノ酸置換を有する選択されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、項目12に記載のトランスジェニックマウス。
(項目16)前記選択されたタンパク質が、プレセニリンである、項目15に記載のトランスジェニックマウス。
(項目17)項目12に記載のトランスジェニックマウスであって、以下:
(a)項目4に記載の第一のトランスジェニックマウスを、導入遺伝子を含むゲノムを有する第二のトランスジェニックマウスと交配して第一世代の子孫を産生する工程であって、該導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種プレセニリン2ポリペプチドをコードしており、ここで該ポリペプチドの239位のメチオニン残基がバリンで置換されている、工程;ならびに
(b)該第一世代の子孫から、少なくとも1つの第一導入遺伝子および少なくとも1つの第二導入遺伝子を含むゲノムを有し、そして該第一導入遺伝子および該第二遺伝子の両方を発現するトランスジェニックマウスを選択する工程であって、該第一導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種アミロイド前駆体タンパク質(APP)ポリペプチドをコードし、ここで該ポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そして該第二導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種プレセニリン2ポリペプチドをコードし、ここで該ポリペプチドの239位のメチオニン残基はバリンで置換されている、工程、
によって産生される、トランスジェニックマウス。
(項目18)項目12に記載のトランスジェニックマウスであって、以下:
(a)項目4に記載の第一のトランスジェニックマウスを、導入遺伝子を含むゲノムを有する第二のトランスジェニックマウスと交配して第一世代の子孫を産生する工程であって、該導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種プレセニリン1ポリペプチドをコードしており、ここで該ポリペプチドの286位のロイシン残基がバリンで置換されている、工程;ならびに
(b)該第一世代の子孫から、少なくとも1つの第一導入遺伝子および少なくとも1つの第二導入遺伝子を含むゲノムを有し、そして該第一導入遺伝子および該第二遺伝子の両方を発現するトランスジェニックマウスを選択する工程であって、該第一導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種アミロイド前駆体タンパク質(APP)ポリペプチドをコードし、ここで該ポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そして該第二導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種プレセニリン1ポリペプチドをコードし、ここで該ポリペプチドの286位のロイシン残基はバリンで置換されている、工程、
によって産生される、トランスジェニックマウス。
(項目19)項目12に記載のトランスジェニックマウスであって、以下:
(a)項目4に記載の第一のトランスジェニックマウスを、導入遺伝子を含むゲノムを有する第二のトランスジェニックマウスと交配して第一世代の子孫を産生する工程であって、該導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種プレセニリン1ポリペプチドをコードしており、ここで該ポリペプチドの146位のメチオニン残基がロイシンで置換されており、そして286位のロイシン残基がバリンで置換されている、工程;ならびに
(b)該第一世代の子孫から、少なくとも1つの第一導入遺伝子および少なくとも1つの第二導入遺伝子を含むゲノムを有し、そして該第一導入遺伝子および該第二遺伝子の両方を発現するトランスジェニックマウスを選択する工程であって、該第一導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種アミロイド前駆体タンパク質(APP)ポリペプチドをコードし、ここで該ポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そして該第二導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種プレセニリン1ポリペプチドをコードし、ここで該ポリペプチドの146位置のメチオニン残基はロイシンで置換されており、そして286位のロイシン残基はバリンで置換されている、工程、
によって産生される、トランスジェニックマウス。
(項目20)ADの発生を防止または遅延するのにおける有効性について候補化合物をスクリーニングするための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)項目1〜19のいずれか1項に記載の第一のトランスジェニックマウスにおける、選択されたAD関連表現型特徴の出現の前に、該マウスに対して該候補化合物を投与する工程;および
(b)該マウスにおいて該選択されたAD関連表現型特徴が出現する年齢を、該化合物を投与しなかった、同じタイプの第二のトランスジェニックマウスにおいて該特徴が出現する年齢と比較する工程;
を包含し、
ここで該第二のマウスにおいて該特徴が出現した年齢と比べた、該第一のマウスにおいて該特徴が出現した年齢の上昇は、該化合物の有効性を示す、方法。
(項目21)前記特徴が行動障害である、項目20に記載の方法。
(項目22)前記特徴が異常なCNSアミロイド沈着である、項目20に記載の方法。
(項目23)アルツハイマー病の症状を寛解するのにおける有効性について候補化合物をスクリーニングするための方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)項目1〜19のいずれか1項に記載の第一のトランスジェニックマウスに対して該候補化合物を投与する工程;
(b)記憶試験または学習試験において該マウスの能力を決定する工程;および
(c)該マウスの該能力を、該化合物を投与しなかった、同じタイプの第二のトランスジェニックマウスの能力と比較する工程;
を包含し、
ここで該第二のマウスの能力と比べた、該第一のマウスの改善された能力は、該化合物の有効性を示す、方法。
(項目24)中枢神経系において異常なAβ沈着を示すトランスジェニック非ヒト哺乳動物を産生する方法であって、該方法は以下:
(a)導入遺伝子を該哺乳動物の受精した卵母細胞に導入する工程であって、該導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種アミロイド前駆体タンパク質695(APP695)ポリペプチドをコードしており、ここで、該ポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されている、工程;
(b)偽妊娠哺乳動物中に該受精卵母細胞を移植する工程;
(c)該受精した卵母細胞を生きて誕生した子孫中で発育させる工程;および
(d)ゲノムが導入遺伝子を含む子孫を選択する工程であって、該導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種アミロイド前駆体タンパク質695(APP695)ポリペプチドをコードしており、ここで、該ポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されており、そして該導入遺伝子が発現される、工程;
を包含する、方法。
(項目25)前記哺乳動物がマウスである、項目24に記載の方法。
(項目26)前記プロモーターが、プリオンタンパク質cos.Tetプロモーターである、項目24に記載の方法。
(項目27)異種アミロイド前駆体タンパク質695(APP695)ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列であって、ここで該ポリペプチドの670位のリジン残基は、アスパラギンで置換され、671位のメチオニン残基は、ロイシンで置換され、そして717位のバリン残基は、フェニルアラニンで置換されている、ヌクレオチド配列。
(項目28)プロモーターに作動可能に連結された項目27に記載のヌクレオチド配列を含む、ベクター。
(項目29)中枢神経系における異常なアミロイド沈着を罹患する哺乳動物において、認識不全を減弱する方法であって、該方法は、認識不全を減弱するのに有効な量のAβペプチドを該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目30)前記異常なアミロイド沈着がAβ沈着である、項目29に記載の方法。
(項目31)前記投与されたペプチドがAβ42である、項目29または30に記載の方法。
(項目32)前記哺乳動物が、アルツハイマー病に罹患しているヒトである、項目29〜31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)中枢神経系において異常なアミロイド沈着を罹患している哺乳動物において認識不全を減弱するための医薬の製造のためのAβペプチドの使用。
(項目34)前記AβペプチドがAβ42である、項目33に記載の使用。
(項目35)前記医薬がアルツハイマー病の予防または処置のための医薬である、項目33または34に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の特定の実施形態が記載されており、参照は、添付の図面に対してなされている。
【図1−1】図1は、11週齢で試験したTgCRND8マウスの水迷路能力を示す。TgCRND8マウス(n=5)は、非Tg同腹仔(n=8)よりも有意に長いエスケープ潜時(パネルA)、および通路探索(パネルB)を有し(それぞれ、F(1,10)=28.8,p<0.001およびF(1,10)=22.0,p<0.01)、そして結果的に、隠したプラットフォームを含む目標の四分区画(TQ:Target Quadrant)への移動が有意に少なかった(F(1,10)=14.9,p<0.01)(パネルC)。Tgマウスと非Tgマウスとの間の泳ぐ速さによって評価した移動能力(パネルD)は匹敵していた(F(1,10)=0.48,p>0.05)。TgCRND8マウスは、隠したプラットフォームがこのプールから取り除かれた場合、探索試行(プローブトライアル)における60秒の泳ぎの間にその探索パターンによって測定した場合、プラットフォーム位置に対する空間的記憶の障害を示した。これらのマウスは、非Tgマウスよりも、TQを探索する傾向が少なく(パネルE)、そしてプラットフォーム位置の正確な帯を横切ることがしばしば有意に少ない(t(10)=2.1,p=0.06)(パネルF)ことが示された。
【図1−2】図1は、11週齢で試験したTgCRND8マウスの水迷路能力を示す。TgCRND8マウス(n=5)は、非Tg同腹仔(n=8)よりも有意に長いエスケープ潜時(パネルA)、および通路探索(パネルB)を有し(それぞれ、F(1,10)=28.8,p<0.001およびF(1,10)=22.0,p<0.01)、そして結果的に、隠したプラットフォームを含む目標の四分区画(TQ:Target Quadrant)への移動が有意に少なかった(F(1,10)=14.9,p<0.01)(パネルC)。Tgマウスと非Tgマウスとの間の泳ぐ速さによって評価した移動能力(パネルD)は匹敵していた(F(1,10)=0.48,p>0.05)。TgCRND8マウスは、隠したプラットフォームがこのプールから取り除かれた場合、探索試行(プローブトライアル)における60秒の泳ぎの間にその探索パターンによって測定した場合、プラットフォーム位置に対する空間的記憶の障害を示した。これらのマウスは、非Tgマウスよりも、TQを探索する傾向が少なく(パネルE)、そしてプラットフォーム位置の正確な帯を横切ることがしばしば有意に少ない(t(10)=2.1,p=0.06)(パネルF)ことが示された。
【図1−3】図1は、11週齢で試験したTgCRND8マウスの水迷路能力を示す。TgCRND8マウス(n=5)は、非Tg同腹仔(n=8)よりも有意に長いエスケープ潜時(パネルA)、および通路探索(パネルB)を有し(それぞれ、F(1,10)=28.8,p<0.001およびF(1,10)=22.0,p<0.01)、そして結果的に、隠したプラットフォームを含む目標の四分区画(TQ:Target Quadrant)への移動が有意に少なかった(F(1,10)=14.9,p<0.01)(パネルC)。Tgマウスと非Tgマウスとの間の泳ぐ速さによって評価した移動能力(パネルD)は匹敵していた(F(1,10)=0.48,p>0.05)。TgCRND8マウスは、隠したプラットフォームがこのプールから取り除かれた場合、探索試行(プローブトライアル)における60秒の泳ぎの間にその探索パターンによって測定した場合、プラットフォーム位置に対する空間的記憶の障害を示した。これらのマウスは、非Tgマウスよりも、TQを探索する傾向が少なく(パネルE)、そしてプラットフォーム位置の正確な帯を横切ることがしばしば有意に少ない(t(10)=2.1,p=0.06)(パネルF)ことが示された。
【図2−1】図2は、二重トランスジェニックマウスTgCRND8×TgPS2(M239V)1379の水迷路能力を示す。2ヶ月齢で試験した場合、二重トランスジェニックマウス(n=5)は、単一のTgPS2(M239V)1379同腹仔(n=8)よりも有意に長い(F(1,11)=8.1,p<0.05、遺伝子型によるエフェクトサイズ(η)=42%))エスケープ潜時(パネルA)、および通路探索(F(1,11)=8.46,p<0.05、η=43%)(パネルB)を有した。隠したプラットフォームをもとのTQと反対の四分区画に移動した場合、逆学習試験の直後には、二重トランスジェニックマウスは、さらに長いエスケープ潜時の傾向を示した(F(1,11)=3.28,p=0.1、η=23%、パネルC)が、その経路探索(パネルD)は、単一TgPS2(M239V)1379マウスとは有意に異ならなかった(F(1,11)=2.46,p>0.05、η=18%)。両方のトランスジェニック群におけるマウスの泳ぐ速度は試験間で匹敵した。5ヶ月齢で再試験した場合、二重トランスジェニックマウスは、単一のTgPS2(M239V)1379同腹仔よりも、有意に長い(F(1,10)=16.6,p<0.01、η=62%(二重トランスジェニックマウスの1匹が死んだ))エスケープ潜時(パネルE)、および有意に長い通路探索(F(1,10)=20.3,p<0.001、η=66%、パネルF)を示した。この有意な欠陥は、この試験における二重トランスジェニックマウスの最初の能力の乏しさ(群×日数相互作用:潜時について、F(2,40)=3.32、p<0.05、そして通路についてF(2,40)=2.85,p=0.07)に起因していた。二重トランスジェニックマウスがなお、単一のT9同腹仔よりも、有意に長い潜時(F(1,10)=28.58,p<0.001、η=74%、パネルG)および、長い通路探索(F(1,10)=27.43,p<0.001、η=73%、パネルH)を示した場合、学習獲得の欠陥は、逆試験において持続した。このマウスは最終的に、逆トレーニング学習の最後には能力を改善したが、両方の測定に関する群×日数相互作用は、α=0.05で有意には達しなかった。
【図2−2】図2は、二重トランスジェニックマウスTgCRND8×TgPS2(M239V)1379の水迷路能力を示す。2ヶ月齢で試験した場合、二重トランスジェニックマウス(n=5)は、単一のTgPS2(M239V)1379同腹仔(n=8)よりも有意に長い(F(1,11)=8.1,p<0.05、遺伝子型によるエフェクトサイズ(η)=42%))エスケープ潜時(パネルA)、および通路探索(F(1,11)=8.46,p<0.05、η=43%)(パネルB)を有した。隠したプラットフォームをもとのTQと反対の四分区画に移動した場合、逆学習試験の直後には、二重トランスジェニックマウスは、さらに長いエスケープ潜時の傾向を示した(F(1,11)=3.28,p=0.1、η=23%、パネルC)が、その経路探索(パネルD)は、単一TgPS2(M239V)1379マウスとは有意に異ならなかった(F(1,11)=2.46,p>0.05、η=18%)。両方のトランスジェニック群におけるマウスの泳ぐ速度は試験間で匹敵した。5ヶ月齢で再試験した場合、二重トランスジェニックマウスは、単一のTgPS2(M239V)1379同腹仔よりも、有意に長い(F(1,10)=16.6,p<0.01、η=62%(二重トランスジェニックマウスの1匹が死んだ))エスケープ潜時(パネルE)、および有意に長い通路探索(F(1,10)=20.3,p<0.001、η=66%、パネルF)を示した。この有意な欠陥は、この試験における二重トランスジェニックマウスの最初の能力の乏しさ(群×日数相互作用:潜時について、F(2,40)=3.32、p<0.05、そして通路についてF(2,40)=2.85,p=0.07)に起因していた。二重トランスジェニックマウスがなお、単一のT9同腹仔よりも、有意に長い潜時(F(1,10)=28.58,p<0.001、η=74%、パネルG)および、長い通路探索(F(1,10)=27.43,p<0.001、η=73%、パネルH)を示した場合、学習獲得の欠陥は、逆試験において持続した。このマウスは最終的に、逆トレーニング学習の最後には能力を改善したが、両方の測定に関する群×日数相互作用は、α=0.05で有意には達しなかった。
【図2−3】図2は、二重トランスジェニックマウスTgCRND8×TgPS2(M239V)1379の水迷路能力を示す。2ヶ月齢で試験した場合、二重トランスジェニックマウス(n=5)は、単一のTgPS2(M239V)1379同腹仔(n=8)よりも有意に長い(F(1,11)=8.1,p<0.05、遺伝子型によるエフェクトサイズ(η)=42%))エスケープ潜時(パネルA)、および通路探索(F(1,11)=8.46,p<0.05、η=43%)(パネルB)を有した。隠したプラットフォームをもとのTQと反対の四分区画に移動した場合、逆学習試験の直後には、二重トランスジェニックマウスは、さらに長いエスケープ潜時の傾向を示した(F(1,11)=3.28,p=0.1、η=23%、パネルC)が、その経路探索(パネルD)は、単一TgPS2(M239V)1379マウスとは有意に異ならなかった(F(1,11)=2.46,p>0.05、η=18%)。両方のトランスジェニック群におけるマウスの泳ぐ速度は試験間で匹敵した。5ヶ月齢で再試験した場合、二重トランスジェニックマウスは、単一のTgPS2(M239V)1379同腹仔よりも、有意に長い(F(1,10)=16.6,p<0.01、η=62%(二重トランスジェニックマウスの1匹が死んだ))エスケープ潜時(パネルE)、および有意に長い通路探索(F(1,10)=20.3,p<0.001、η=66%、パネルF)を示した。この有意な欠陥は、この試験における二重トランスジェニックマウスの最初の能力の乏しさ(群×日数相互作用:潜時について、F(2,40)=3.32、p<0.05、そして通路についてF(2,40)=2.85,p=0.07)に起因していた。二重トランスジェニックマウスがなお、単一のT9同腹仔よりも、有意に長い潜時(F(1,10)=28.58,p<0.001、η=74%、パネルG)および、長い通路探索(F(1,10)=27.43,p<0.001、η=73%、パネルH)を示した場合、学習獲得の欠陥は、逆試験において持続した。このマウスは最終的に、逆トレーニング学習の最後には能力を改善したが、両方の測定に関する群×日数相互作用は、α=0.05で有意には達しなかった。
【図2−4】図2は、二重トランスジェニックマウスTgCRND8×TgPS2(M239V)1379の水迷路能力を示す。2ヶ月齢で試験した場合、二重トランスジェニックマウス(n=5)は、単一のTgPS2(M239V)1379同腹仔(n=8)よりも有意に長い(F(1,11)=8.1,p<0.05、遺伝子型によるエフェクトサイズ(η)=42%))エスケープ潜時(パネルA)、および通路探索(F(1,11)=8.46,p<0.05、η=43%)(パネルB)を有した。隠したプラットフォームをもとのTQと反対の四分区画に移動した場合、逆学習試験の直後には、二重トランスジェニックマウスは、さらに長いエスケープ潜時の傾向を示した(F(1,11)=3.28,p=0.1、η=23%、パネルC)が、その経路探索(パネルD)は、単一TgPS2(M239V)1379マウスとは有意に異ならなかった(F(1,11)=2.46,p>0.05、η=18%)。両方のトランスジェニック群におけるマウスの泳ぐ速度は試験間で匹敵した。5ヶ月齢で再試験した場合、二重トランスジェニックマウスは、単一のTgPS2(M239V)1379同腹仔よりも、有意に長い(F(1,10)=16.6,p<0.01、η=62%(二重トランスジェニックマウスの1匹が死んだ))エスケープ潜時(パネルE)、および有意に長い通路探索(F(1,10)=20.3,p<0.001、η=66%、パネルF)を示した。この有意な欠陥は、この試験における二重トランスジェニックマウスの最初の能力の乏しさ(群×日数相互作用:潜時について、F(2,40)=3.32、p<0.05、そして通路についてF(2,40)=2.85,p=0.07)に起因していた。二重トランスジェニックマウスがなお、単一のT9同腹仔よりも、有意に長い潜時(F(1,10)=28.58,p<0.001、η=74%、パネルG)および、長い通路探索(F(1,10)=27.43,p<0.001、η=73%、パネルH)を示した場合、学習獲得の欠陥は、逆試験において持続した。このマウスは最終的に、逆トレーニング学習の最後には能力を改善したが、両方の測定に関する群×日数相互作用は、α=0.05で有意には達しなかった。
【図3−1】図3は、Aβ42で免疫したTgCRND8マウス(Tg(APP)8;n=12)および非トランスジェニック同腹仔(非Tg;n=20)、ならびにIAPPペプチドで免疫したTgCRND8マウス(Tg(APP)8;n=9)および非トランスジェニック同腹仔(非Tg;n=19)の水迷路能力を示す。Aβ42ペプチドでの免疫は、非Tg同腹仔に比べて、エスケープ潜時および通路探索によって測定した場合、TgCRND8マウスの認識欠陥を有意に減弱した。Aβ42で免疫したTgCRND8マウスは、非Tgマウスよりも全体的に長いエスケープ潜時(パネルA)、および通路探索(パネルC)を有した(潜時および通路について、それぞれ、(F(1,30)=9.71,p<0.01;F(1,30)=10.9,p<0.01)。この差異は、その最初の探索がより長かったこと(群×日数相互作用:潜時について、F(4,120)=2.83、p<0.05;通路についてF(3,120)=4.73,p<0.01)に起因していた。トレーニングの最後の3日間のそれらの能力の比較は群間で有意な差異を示さなかった(潜時について、F(1,30)=0.64、p>0.05;通路についてF(1,30)=1.24,p>0.05)。Aβ42で免疫したTgマウスは、TQの探索がやや短い傾向(F(1,30)=3.71,p=0.06、パネルE)を示したが、その泳ぐ速度は非Tgマウスと有意に異なることはなかった(F(1,30)=1.33,p>0.05)(パネルG)。IAPPで免疫したTgCRND8マウスは、非Tg同腹仔よりも有意に長いエスケープ潜時(パネルB)および通路探索(パネルD)を示した(潜時について、F(1,26)=39.9、p<0.001;通路についてF(1,26)=43.9、p<0.001)。これらのマウスは非Tgマウスとは最初の探索は異ならなかったが、トレーニング中にはその能力は改善しなかった(群×日数相互作用:潜時について、F(4,104)=6.31、p<0.001;通路について、F(4,104)=5.69,p<0.001)。これらのマウスはまた、目標四分区画を探索するのにかかる時間が有意に短かった(F(1,26)=7.39、p<0.05;パネルF)、しかしその泳ぐ速度は免疫によって有意に影響されなかった(F(1,26)=1.73,p>0.05、パネルH)。
【図3−2】図3は、Aβ42で免疫したTgCRND8マウス(Tg(APP)8;n=12)および非トランスジェニック同腹仔(非Tg;n=20)、ならびにIAPPペプチドで免疫したTgCRND8マウス(Tg(APP)8;n=9)および非トランスジェニック同腹仔(非Tg;n=19)の水迷路能力を示す。Aβ42ペプチドでの免疫は、非Tg同腹仔に比べて、エスケープ潜時および通路探索によって測定した場合、TgCRND8マウスの認識欠陥を有意に減弱した。Aβ42で免疫したTgCRND8マウスは、非Tgマウスよりも全体的に長いエスケープ潜時(パネルA)、および通路探索(パネルC)を有した(潜時および通路について、それぞれ、(F(1,30)=9.71,p<0.01;F(1,30)=10.9,p<0.01)。この差異は、その最初の探索がより長かったこと(群×日数相互作用:潜時について、F(4,120)=2.83、p<0.05;通路についてF(3,120)=4.73,p<0.01)に起因していた。トレーニングの最後の3日間のそれらの能力の比較は群間で有意な差異を示さなかった(潜時について、F(1,30)=0.64、p>0.05;通路についてF(1,30)=1.24,p>0.05)。Aβ42で免疫したTgマウスは、TQの探索がやや短い傾向(F(1,30)=3.71,p=0.06、パネルE)を示したが、その泳ぐ速度は非Tgマウスと有意に異なることはなかった(F(1,30)=1.33,p>0.05)(パネルG)。IAPPで免疫したTgCRND8マウスは、非Tg同腹仔よりも有意に長いエスケープ潜時(パネルB)および通路探索(パネルD)を示した(潜時について、F(1,26)=39.9、p<0.001;通路についてF(1,26)=43.9、p<0.001)。これらのマウスは非Tgマウスとは最初の探索は異ならなかったが、トレーニング中にはその能力は改善しなかった(群×日数相互作用:潜時について、F(4,104)=6.31、p<0.001;通路について、F(4,104)=5.69,p<0.001)。これらのマウスはまた、目標四分区画を探索するのにかかる時間が有意に短かった(F(1,26)=7.39、p<0.05;パネルF)、しかしその泳ぐ速度は免疫によって有意に影響されなかった(F(1,26)=1.73,p>0.05、パネルH)。
【図3−3】図3は、Aβ42で免疫したTgCRND8マウス(Tg(APP)8;n=12)および非トランスジェニック同腹仔(非Tg;n=20)、ならびにIAPPペプチドで免疫したTgCRND8マウス(Tg(APP)8;n=9)および非トランスジェニック同腹仔(非Tg;n=19)の水迷路能力を示す。Aβ42ペプチドでの免疫は、非Tg同腹仔に比べて、エスケープ潜時および通路探索によって測定した場合、TgCRND8マウスの認識欠陥を有意に減弱した。Aβ42で免疫したTgCRND8マウスは、非Tgマウスよりも全体的に長いエスケープ潜時(パネルA)、および通路探索(パネルC)を有した(潜時および通路について、それぞれ、(F(1,30)=9.71,p<0.01;F(1,30)=10.9,p<0.01)。この差異は、その最初の探索がより長かったこと(群×日数相互作用:潜時について、F(4,120)=2.83、p<0.05;通路についてF(3,120)=4.73,p<0.01)に起因していた。トレーニングの最後の3日間のそれらの能力の比較は群間で有意な差異を示さなかった(潜時について、F(1,30)=0.64、p>0.05;通路についてF(1,30)=1.24,p>0.05)。Aβ42で免疫したTgマウスは、TQの探索がやや短い傾向(F(1,30)=3.71,p=0.06、パネルE)を示したが、その泳ぐ速度は非Tgマウスと有意に異なることはなかった(F(1,30)=1.33,p>0.05)(パネルG)。IAPPで免疫したTgCRND8マウスは、非Tg同腹仔よりも有意に長いエスケープ潜時(パネルB)および通路探索(パネルD)を示した(潜時について、F(1,26)=39.9、p<0.001;通路についてF(1,26)=43.9、p<0.001)。これらのマウスは非Tgマウスとは最初の探索は異ならなかったが、トレーニング中にはその能力は改善しなかった(群×日数相互作用:潜時について、F(4,104)=6.31、p<0.001;通路について、F(4,104)=5.69,p<0.001)。これらのマウスはまた、目標四分区画を探索するのにかかる時間が有意に短かった(F(1,26)=7.39、p<0.05;パネルF)、しかしその泳ぐ速度は免疫によって有意に影響されなかった(F(1,26)=1.73,p>0.05、パネルH)。
【図3−4】図3は、Aβ42で免疫したTgCRND8マウス(Tg(APP)8;n=12)および非トランスジェニック同腹仔(非Tg;n=20)、ならびにIAPPペプチドで免疫したTgCRND8マウス(Tg(APP)8;n=9)および非トランスジェニック同腹仔(非Tg;n=19)の水迷路能力を示す。Aβ42ペプチドでの免疫は、非Tg同腹仔に比べて、エスケープ潜時および通路探索によって測定した場合、TgCRND8マウスの認識欠陥を有意に減弱した。Aβ42で免疫したTgCRND8マウスは、非Tgマウスよりも全体的に長いエスケープ潜時(パネルA)、および通路探索(パネルC)を有した(潜時および通路について、それぞれ、(F(1,30)=9.71,p<0.01;F(1,30)=10.9,p<0.01)。この差異は、その最初の探索がより長かったこと(群×日数相互作用:潜時について、F(4,120)=2.83、p<0.05;通路についてF(3,120)=4.73,p<0.01)に起因していた。トレーニングの最後の3日間のそれらの能力の比較は群間で有意な差異を示さなかった(潜時について、F(1,30)=0.64、p>0.05;通路についてF(1,30)=1.24,p>0.05)。Aβ42で免疫したTgマウスは、TQの探索がやや短い傾向(F(1,30)=3.71,p=0.06、パネルE)を示したが、その泳ぐ速度は非Tgマウスと有意に異なることはなかった(F(1,30)=1.33,p>0.05)(パネルG)。IAPPで免疫したTgCRND8マウスは、非Tg同腹仔よりも有意に長いエスケープ潜時(パネルB)および通路探索(パネルD)を示した(潜時について、F(1,26)=39.9、p<0.001;通路についてF(1,26)=43.9、p<0.001)。これらのマウスは非Tgマウスとは最初の探索は異ならなかったが、トレーニング中にはその能力は改善しなかった(群×日数相互作用:潜時について、F(4,104)=6.31、p<0.001;通路について、F(4,104)=5.69,p<0.001)。これらのマウスはまた、目標四分区画を探索するのにかかる時間が有意に短かった(F(1,26)=7.39、p<0.05;パネルF)、しかしその泳ぐ速度は免疫によって有意に影響されなかった(F(1,26)=1.73,p>0.05、パネルH)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物、好ましくはげっ歯類、およびより好ましくはマウスを提供し、これは、アルツハイマー病(AD)、アルツハイマー病のレーヴィ体変種、および特定の型のクロイツフェルト−ヤーコプ病(CJD)(これは、痴呆を引き起こす)、アミロイドーシスオランダ型(HCAWA−D)を有する遺伝性小脳性血管障害、および脳出血を引き起こす老年性アミロイド血管症のような多数のヒト障害において見られるものと同様の異常なAβ沈着を示す。
本発明の非ヒトトランスジェニック哺乳動物は、異常なAβ沈着の結果として、組織学的および行動性欠損を示す。特に、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、種々の面のヒトAD関連病態の促進された出現を示し、そしてADの改善された動物モデルを提供する。
【0029】
1つの実施形態に従って、本発明の非ヒト哺乳動物は、異種APP695ポリペプチド、好ましくはヒトAPP695ポリペプチドをコードする導入遺伝子をそのゲノム中に有する哺乳動物を含み、このポリペプチドは、アルツハイマー病アミロイド前駆タンパク質(APP)の「スウェーデン」変異および「インディアナ」変異の両方を保有する。これらの変異の両方は、ヒトにおいて、家族性アルツハイマー病(FAD)に関連する。
【0030】
好ましい実施形態に従って、本発明は、TgCRND8と命名されたトランスジェニックマウスを含み、これは、「スウェーデン」APP変異および「インディアナ」APP変異の両方を保有するAPP695導入遺伝子を有する。
【0031】
導入遺伝子構築物は、ヒト脳における主要なAPPアイソフォーム(APP695)をコードするcDNAカセットに基づく。このカセットは、APP AβドメインのN末端およびC末端境界に隣接して位置する、2つのFAD変異:「スウェーデン」変異(K670N、M671L)および「インディアナ」変異(V717F)を含むように改変される。このカセットは、cosTet(CNSニューロンそしてより少ない程度で星状細胞における位置独立導入遺伝子発現を指向するプリオンプロモーター発現ベクター)に導入された。微小注入は、ハイブリッド遺伝的背景の卵母細胞(C3HおよびC57BL6株を含む)中に行なった。得られたトランスジェニックマウス系統を、TgCRND8と命名した。
【0032】
当業者に理解されるように、導入遺伝子の中枢神経系またはニューロンの発現を指向する、任意のプロモーターが使用され得る。これらとしては、ニューロン特異的エノラーゼ遺伝子プロモーター(37);ヒト血小板由来増殖因子Bサブユニットプロモーター(38)、Thy−1プロモーター(19)および神経フィラメントプロモーター(41)が挙げられる。
【0033】
発現カセットは、好ましくは、脳において発現され、そして好ましくはゲノム中に組み込まれた導入遺伝子コピーに比例して発現される、遺伝子由来のプロモーター配列および遺伝子座位制御領域配列を含む。
【0034】
二重シス変異APP695導入遺伝子カセットの使用は、以前に報告されていない;他のADモデルは、APP751(KM670/761NL+V717I)(19)導入遺伝子またはAPP770(KM670/671NL+V717F)(27)導入遺伝子を使用した。
【0035】
TgCRND8マウスは、生後90日ほども早く、Aβペプチドについて免疫反応性の球状プラークの形態で沈着する大量のCNSアミロイドを示す;このようなプラークは、ヒトADに特徴的である。単離されたプラーク沈着物は、生後66日ほども早く、TgCRND8マウスにおいて明白である。TgCRND8マウスにおけるアミロイド沈着の出現は、任意の以前に報告された単一の導入遺伝子を使用するADの動物モデルよりも、より早く生じる(表1を参照のこと)。
【0036】
アルツハイマー病のマウスモデルの総説が出版され(16)、そしていくつかの例が表1に列挙されている。列挙された特性から注目されるように、TgCRND8マウスは、他の現在利用可能なADの動物モデルに対して予想外かつ実質的な改善を示す。
【0037】
例えば、以前に記載された二重シス変異APP導入遺伝子モデル(「TgAPP22」マウス)(これは、二重変異APP751カセット(KM670/671NL+V717I)を使用した)は、18か月齢でのAβプラークの出現を示し(19)、そしてJ9系統(二重変異APP770カセット(KM670/671NL+V717F))は、8〜10か月でプラークを発生することが報告された(27)。
【0038】
以前に報告された二重導入遺伝子マウス(Tg2576×TgPS1)は、70日齢由来の帯状皮質における最小のプラーク沈着を有したが(39)、最終的に、6か月齢で、十分に形成された沈着物を示した(22)。
【0039】
TgCRND8マウスは、ADの処置の診断化合物および治療化合物の発見および開発のため、ならびに疾患の病原性機構のより良い解明のために有用である。
【0040】
TgCRND8マウスは、Morris水迷路の隠したプラットフォーム(hidden−platform)バージョンによって評価されるように、空間的学習における欠損を示す。コントロールの非トランスジェニック同腹仔に対して測定されるこれらの欠損は、11週齢ほども早くに検出され得る(図1)。
【0041】
本発明はまた、Scheckらのプロトコル(26)を使用して、ヒトAβ42ペプチドでのTgCRND8マウスの免疫化が、実施例5に記載されるように、10〜22週齢で、行動および神経病理の両方において有意な改善を生じることを示してきた。対照的に、Schenkらによって使用されたPDAPPマウスは、行動ではなく、神経病理において改善を示したのみであった(26)。
【0042】
従って、TgCRND8モデルは、Aβ沈着(アルツハイマー病における公知かつ広範に受け入れられた開始事象)の調節が、病理および行動の両方の改善を生じることが示されている第1のAD動物モデルであり、従って、新しい治療を試験するためおよび候補治療化合物をスクリーニングするための最新の最も適切なモデルを提供する。
【0043】
このような治療または化合物は、βAPPのγ−セクレターゼ切断において、またはβAPPのタンパク質分解誘導体の除去を促進する際、PS1の機能を阻害することを目的とし得る。これらのタンパク質分解APP誘導体は、Aβ自身(これは、凝集形態で神経毒性であることが公知である)ならびにαAPPおよびβAPPの残りのγ−セクレターゼ切断から生じるC末端誘導体(C83/C99−βAPP)(これは、神経毒性であることが示唆されている)を含む(25)。
【0044】
本発明のトランスジェニックマウスはまた、新しい診断薬の開発のために有用であり得る。例えば、脳のAβ充填の推定アッセイまたはAβ蓄積に応答するニューロンの損傷の試験は、本明細書中に記載されるトランスジェニックマウスを用いて行なわれ得る。
【0045】
本発明のトランスジェニック非ヒト動物(スウェーデン変異およびインディアナ変異の両方を有するAPP695をコードする導入遺伝子を有する)は、「二重トランスジェニック(bi−transgenic)哺乳動物」を生成するために、導入遺伝子中かまたは内因性遺伝子中かのいずれかで異なる変異を保有する他の系統の哺乳動物と交配され得る。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「二重トランスジェニック哺乳動物」は、ゲノムが、異種APP695ポリペプチド、好ましくはヒトAPP695ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む導入遺伝子(スウェーデンAPP変異およびインディアナAPP変異ならびに選択された第2の遺伝子を保有する)、好ましくは少なくとも1つの選択された変異を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む遺伝子を含む哺乳動物を意味する。
【0047】
第2の遺伝子は、少なくとも1つの選択された変異を保有する内因性遺伝子、または少なくとも1つの選択された変異を保有する同種導入遺伝子もしくは異種導入遺伝子であり得る。選択された変異は、例えば、AD関連変異またはAβプロセシングに関連する遺伝子における変異であり得る。
【0048】
あるいは、選択された第2の遺伝子は、正常な導入遺伝子であり得る。
【0049】
本明細書中に記載されるTgCRND8マウスは、Aβペプチドの促進された合成経路がこれらのマウスにおいて飽和していないという点で、さらなるAD動物モデルの作成のために有用であり、AD動物モデルを、他のトランスジェニックマウスと交配し、アミロイドペプチド合成および沈着のAD関連病理学的プロセスのさらなる増強を有する二重トランスジェニックモデルを得ることが可能である。
【0050】
TgCRND8マウスは、例えば、変異プレセニリン遺伝子、変異APOE4遺伝子、変異ニカストリン(nicastrin)遺伝子またはAPP遺伝子の異なる変異を保有するトランスジェニック動物と交配され得る。
【0051】
好ましい実施形態に従って、本発明は、以下:
(a)変異プレセニリン1タンパク質、好ましくはPS1(L286V)プレセニリン1タンパク質をコードする導入遺伝子を含むトランスジェニックマウス;
(b)変異プレセニリン2タンパク質、好ましくはPS2(M239V)プレセニリン2タンパク質をコードする導入遺伝子を含むトランスジェニックマウス;
(c)2つの変異を有するプレセニリン1タンパク質、好ましくはPS1(M146L+L286L)プレセニリン1タンパク質をコードする導入遺伝子を含むトランスジェニックマウス、
とTgCRND8マウスとを交配することによって生成される二重トランスジェニックマウスを提供する。
【0052】
交配によって生成された第1世代の子孫を、二重特異的マウスを選択するために、従来の方法を使用して、第1および第2の導入遺伝子の両方存在および発現についてスクリーニングする。
【0053】
TgCRND8マウスはまた、Aβプロセシングに関連する遺伝子(例えば、低密度リポタンパク質レセプター関連遺伝子、α2−マクログロブリン遺伝子またはβ−セクレターゼ遺伝子)中に変異を保有するトランスジェニック動物と交配され得る。
【0054】
TgCRND8マウスを、変異ヒトプレセニリン(PS1またはPS2)導入遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスと交配した(表2)。プラーク密度における強力な増加が、TgPS1(L286V)1274(これは、家族性アルツハイマー病(FAD)変異を保有する)と表されるヒト変異プレセニリン導入遺伝子を同時発現するTgCRND8マウスにおいて注目された。従って、TgCRND8×TgPS1(L286V)1274マウスにおいて、死後のAD脳に酷似するアミロイド負担はすでに、62日齢までに存在する(図1A:パネルC中の117日齢のTgCRND8マウスと比較する)。
【0055】
類似の様式で、TgCRND8マウスを、プレセニリン2のFAD変異形態(PS2遺伝子コード領域のアミノ酸残基239におけるメチオニンからバリンへの変異)を保有するマウスと交配することによってもまた、プラーク密度における強力な増加を生じる。TgCRND8マウスおよびTgCRND8×TgPS2(M239V)マウス(ここで、PS2導入遺伝子系統は1379と命名される)の91日齢での比較は、図2に示される。
【0056】
なおより大きい増強は、TgCRND8マウスを、お互いにシスで2つのFAD変異を有するヒト変異プレセニリン導入遺伝子を保有するマウス(Tg(M146L+L286V)6500と表される)と交配することによって得られた。TgCRND8×TgPS1(M146L+L286V)6500マウスにおいて、海馬アミロイド沈着は、30日齢までで検出可能であり(図3)、これは、任意の他の二重APP/PS1−Tgマウス(これは、代表的に6か月齢以降にプラークを発生する)について以前に報告されたよりも、5か月早い(22、23)。
【0057】
これら全ての二重トランスジェニックマウスは、TgCRND8親またはTgPS1親のいずれかと比較した場合、海馬アミロイドプラークのなおより促進された出現を示した(表2)。
【0058】
以前に記載されたTgマウスと比較した、AD関連特徴の促進された出現に加えて、予備分析は、皮質ニューロンの実質的な喪失が、43週齢のTgCRND8×TgPS1(M146L+L286V)6500二重導入遺伝子マウスにおいて明らかであることを示す。
【0059】
8〜10週齢で始まる認識性能における進行性の低下はまた、プレセニリン2(TgPS2(M239V))のFAD対立遺伝子を発現するマウスと、TgCRND8マウス(系統1379)を交配することによって作成された二重導入遺伝子マウスにおいて見られる(図5)。
【0060】
本明細書中に記載されるTgCRND8マウス、および選択された変異(例えば、AD関連変異)を保有する他のマウス系統とのこれらのマウスの交配は、本明細書中にさらに記載されるように、多数の目的に有用である。
【0061】
これらのマウスは、これらのマウスにおいて見られる病理学的指標(例えば、AD関連表現型形質)のいずれかの発生を防止または遅延する際にそれらの効力について潜在的な薬学的化合物をスクリーニングするために使用され得る。従って、ADの発生を防止または遅延する際にそれらの効力について候補化合物をスクリーニングするための方法が提供される。このスクリーニング方法は、選択されたAD関連表現型形質の出現の前に本発明のトランスジェニックマウスに候補化合物を投与する工程、および未処置のトランスジェニックマウスにおけるその形質の出現の齢と、選択された表現型形質が処置されたマウスにおいて出現する齢を比較する工程を包含する。試験するための適切なAD関連形質は、異常な脳の病歴の出現または行動的欠損の出現を含む。行動性欠損は、本明細書中に記載されるように、例えば、水迷路のような記憶試験または学習試験におけるマウスの成績を調査することによって、決定され得る。
【0062】
これらのマウスはまた、選択されたAD関連形質(例えば、異常な脳組織または行動性欠損)の出現後、同様に投与することによって、そしてトランスジェニック動物における候補化合物の効果を比較することによって、ADの症状を軽減する際にそれらの効率について潜在的な薬学的化合物をスクリーニングするために使用され得る。
【0063】
疾患の特定の原因は、疾患の進行および効果を、生理学的および身体的の両方に研究するために、トランスジェニック動物の成長および発達の間に同定され得る。脳において短期間にAβを迅速に過剰発現する本発明のトランスジェニック動物が、ここで作製され、そして研究され、そして薬学的介入、遺伝子標的技術、アンチセンス療法、抗体療法などを含む可能性のある治療法を研究するためのモデルとして使用される。さらに、トランスジェニックインビトロ細胞株はまた、ここで、本発明に従って樹立され、そして疾患に関与する細胞内シグナル伝達系を解明するため、ならびに潜在的な治療化合物を試験および同定するために使用され得る。
【0064】
さらに、本発明のトランスジェニック動物はまた、アルツハイマー病を促進および開始すると疑われている状態または環境危険(例えば、頭部外傷または毒性環境因子)を調査するために使用され得る。この場合、トランスジェニック動物は、特定の状態に曝露され、次いでADをさらに引き起こすそして/または増強する状態の能力の指標として、神経行動学的減退、早過ぎる死、神経膠症などを決定するために観察される。
【0065】
本発明のトランスジェニック動物は、アルツハイマー病のより詳細な特徴付けについて有用であり、進行性の神経病理の病原性および分子事象の配列の決定の解明を導く。トランスジェニック動物は、疾患の病理の種々の提唱された機構を研究するために有用であり、疾患のよりよい処置を導く。
【0066】
本発明のトランスジェニックマウスはまた、ADにおいて有益または有害のいずれかで役割を果たし得る以前に認識されていない遺伝子の同定のために有用である。候補遺伝子を保有するトランスジェニックマウスは、本発明のトランスジェニックマウスと交配され、そしてこのトランスジェニックのAD関連形質に関する候補遺伝子の存在の効果が調査される。候補遺伝子は、アミロイド沈着および障害性うっ血性動作のようなAD関連表現型を遅延または薄める場合、有益であるとしてスコア付けされる。逆に、候補遺伝子は、発現の齢を進行するかまたはアミロイド沈着および障害性うっ血性動作のようなAD関連表現型の浸透を増強する場合、ADの発生を支持するとしてスコア付けされる。
【0067】
さらに、本発明のトランスジェニックマウスは、家族性ADの潜在的な遺伝子治療(例えば、さらなるコピーの正常なプレセニリン遺伝子の投与による遺伝子治療)を試験するために有用である。
【0068】
本発明は、トランスジェニックマウスの生成に限定されず、そしてヒトアルツハイマー病の非ヒト動物モデルを提供することが当業者によって理解される。このようなモデルは、胚発生、成長および発達の間のβAPPおよびAβペプチドの役割の同定、ならびにアルツハイマー病に関与するようなβAPPおよびAβペプチドの機能の理解を提供する。
【0069】
マウスはしばしば、トランスジェニック動物モデルとして使用される。なぜなら、これらは、飼うのが容易であり、比較的安価で、そして繁殖が容易であるためである。しかし、他の非ヒトトランスジェニック動物(例えば、これらに限定されないが、サル、ヒツジ、ウサギおよびラット)がまた、本発明に従って作製され得る。トランスジェニック動物は、連続する世代に継代される導入遺伝子を保有する(すなわち、クローニングされた遺伝子が導入され、そして安定して組み込まれた)動物である。本発明において、ヒトAPP695cDNAがクローニングされ、そして2つのFAD変異(「スウェーデン」変異(K670N、M671L)および「インディアナ」変異(V717F))を含むように改変された。次いで、この構築物をマウスのゲノムに安定して組み込んだ。
【0070】
本明細書中に詳細に説明される方法に加えて、特定の遺伝子配列を保有するトランスジェニック動物モデルを作製する方法がいくつか存在する。
【0071】
ヒトAPP遺伝子配列の特定の変更/変異の生成は、1つの戦略である。変更は、インビトロで使用される種々の酵素学的方法および化学的方法によって達成され得る。最も一般的な方法の1つは、DNA配列における正確に設計された欠失、挿入および点変異を作製するために、変異原として特定のオリゴヌクレオチドを使用する方法である。第2に、野生型ヒト遺伝子および/またはヒト化マウス遺伝子は、相同組換えによって挿入され得る。野生型または変異または人工プロモーターエレメントを使用するゲノムまたはミニ遺伝子構築物として、変更されたかまたは変異(単一または複数の)ヒト遺伝子を挿入することはまた可能である。内因性マウス遺伝子のノックアウトは、相同組換えによって内因性遺伝子の人工的に改変されたフラグメントの挿入によって達成され得る。この技術において、変異対立遺伝子は、相同組換えによって、胚性幹細胞に導入される。研究されている遺伝子の1つの対立遺伝子においてノックアウト変異を含む胚性幹細胞は、初期マウス胚に導入される。得られたマウスは、移植ES細胞および宿主細胞の両方に由来する組織を含むキメラである。キメラマウスを、変異が生殖系列に組み込まれたか否かを評価するために、交尾させる。各々がノックアウト変異にヘテロ接合性であるこれらのキメラマウスを、ホモ接合性のノックアウトマウスを生成するために交尾させる。
【0072】
遺伝子ノックアウトを生成する遺伝子標的化は、変更されそして正常なコピーを置換するために使用される遺伝子の機能をインビボで評価することを可能にする。改変としては、変異終止コドンの挿入、DNA配列の欠失、またはCreリコンビナーゼのような酵素によって認識される組換えエレメント(lox p部位)の包含が挙げられる。Cre−lox系は、所定の遺伝子の除去または遺伝子配列の特定の一部の除去を可能にする。
【0073】
遺伝子を不活化するために、マウス配偶子の化学的またはX線変異誘発が適用され、その後受精が続く。次いで、異種接合性子孫が、サザンブロッティングによって同定され得、投薬による1つの対立遺伝子の喪失、またはRFLPマーカーを使用する1つの親対立遺伝子を遺伝することの失敗を示す。
【0074】
トランスジェニックマウスを作製するために、目的のヒト遺伝子の変更されたバージョンは、標準的技術の卵母細胞の微小注入もしくはトランスフェクションまたは幹細胞へのトランスフェクションを使用して、マウス生殖系列に挿入され得る。あるいは、内因性遺伝子を不活化または置換することが望ましい場合、幹細胞を使用する相同組換えは、上記のように適用され得る。
【0075】
卵母細胞注入について、1つ以上のコピーの変更/変異ヒトAPP遺伝子配列は、ちょうど受精したマウス卵母細胞の前核に挿入され得る。次いで、この卵母細胞は、偽妊娠仮母親に再移植される。次いで、生産マウスは、変更されたAPP遺伝子配列の存在についてテールDNAの分析を使用して成分についてスクリーニングされ得る。導入遺伝子は、YACもしくは染色体フラグメントとして注入される完全ゲノム配列、天然プロモーターもしくは異種プロモーターのいずれかを有するcDNA、または最適な発現に必要であることが見出されている全てのコード領域および他のエレメントを含むミニ遺伝子のいずれかであり得る。
【0076】
初期胚のレトロウイルス感染はまた、変更された遺伝子を挿入するために行なわれ得る。この方法において、変更された遺伝子は、キメラを生成するための発生の初期段階の間にマウス胚を直接感染するために使用されるレトロウイルスベクターに挿入され、キメラのいくつかは、生殖系列伝達を生じる。
【0077】
幹細胞を使用する相同組換えは、遺伝子移入細胞のスクリーニングが、まれな相同組換え事象を同定することを可能にする。一旦同定されると、これらは、マウス胚盤胞の注入によってキメラを生成するために使用され、そして得られたマウスの比率は、組換え系統からの生殖伝達を示す。この遺伝子標的化方法論は、遺伝子の不活化が望ましい場合、特に有用である。例えば、遺伝子の不活化は、選択マーカーに隣接するエキソン由来の配列を含むDNAフラグメントを設計することによって、行なわれ得る。相同組換えは、エキソンの真ん中にマーカー配列の挿入を生じ、遺伝子を不活化する。次いで、個々のクローンのDNA分析は、相同組換え事象を認識するために使用され得る。
【0078】
目的の変異を含むオリゴヌクレオチドを注入すること、および得られた細胞をPCRによってスクリーニングすることによって、マウス生殖系列において変異を作製することはまた可能である。
【0079】
当業者は、本発明のトランスジェニック哺乳動物を生成するために使用されるような核酸構築物が、脳における増加したAβ生成を生じる変異APP695タンパク質をコードする任意の適切な核酸配列を含み得ることを容易に理解する。このような核酸配列は、好ましくは全長変異APP695cDNAであるが、タンパク質の所望の変異形態が発現されそしてAβ生成が顕著に増加する限り、このような配列の他の変更された誘導体を含み得る。
【実施例】
【0080】
(実施例)
実施例は例示のために記載され、発明の範囲を制限することを意図していない。
【0081】
この開示および実施例において言及されているが、明確には記載されていない合成化学、タンパク質生化学およびペプチド生化学、分子生物学、組織学ならびに免疫学の方法は、科学論文に報告されそして当業者に周知である。
【0082】
(実施例1−TgCRND8トランスジェニックマウス)
90塩基対の5’非翻訳領域、695アミノ酸残基コード領域(「APP695」)および271bpの3’非翻訳領域を含むヒトβ−アミロイド前駆体タンパク質(1)(βAPP)cDNAカセットを変異誘発して、互いにシスの、家族性アルツハイマー病(FAD)に関連する2つの変異を導入した。第一の変異は、隣接する2つのコドンに影響するジヌクレオチドの変化(APP770転写物のコドン/ヌクレオチド番号付け(1)を用いると、ヌクレオチド1785および1786でKM670/671NL:GA→TC)である、「Swedish」変異(2)であった。第二の変異は、V717F置換を産生する単一ヌクレオチドの変化(3)であった(APP770転写物(1)のコドン/ヌクレオチド番号付けを用いると、ヌクレオチド1924でG→T)。Kunitz Protease Inhibitorドメインをコードするエキソン7および8を欠くAPP695転写物は、脳で発現される主要な転写物である。βAPP二重変異体cDNAカセットを、プリオンタンパク質コスミド発現ベクターcosTet(10)に挿入した。
【0083】
生じた組換え体コスミドクローンを培養で増殖させ、溶解してスーパーコイルDNAを得て、そしてPrP遺伝子調節エレメントおよびAPPコード領域を含む哺乳動物のDNA挿入物を、制限エンドヌクレアーゼNot1を用いた消化によって、この分子クローンの原核生物ベクター配列から切り出した。アガロースゲル電気泳動して、このトランスジーンNot1 DNAフラグメントを精製した後、精製したDNAを、標準のプロトコール(29)を用いてマウスの受精した卵母細胞((C3Hマウス×C57BL6マウス)の交配から誘導した)にマイクロインジェクションした。養母に移植後、生産児うちトランスジーン陽性子孫を、SyrianハムスターPrP遺伝子(30)の3’非翻訳領域由来のDNAプローブフラグメントを用いて、尾部のDNAのハイブリダイゼーション分析によってスクリーニングした。
【0084】
APP特異的抗体(Senetek Inc,,Boehringer−Mannheim)を、トランスジーン陽性の子孫でのトランスジーンの発現を確証するために用いた。0.32Mショ糖中で作製した10%脳ホモジネートを、Laemlli緩衝液で希釈し、超音波処理し、そして10〜20%トリシン(tricine)勾配ゲル(Novex)で電気泳動した。ニトロセルロースに転写後、ヒトAPPおよびPS1を、C末端特異的MabおよびN末端特異的Mabを用いて検出し、ECL(Amersham)によって発色させた。結果を図6に示す。120kDaおよび100kDaの全長の成熟APPホロタンパク質および未成熟APPホロタンパク質に加えて、ウエスタンブロット分析は、TgCRND8マウスの脳の抽出物における、より低い分子量種およびより低い発現レベルのAPPを示した。6E10抗血清(α−セクレターゼ切断部位に対してN末端に位置する)および抗体369を用いたこれらの種の検出は、これらがAPPのC末端に由来することを示す。これらは、過剰発現によって高レベルで蓄積され、そしてβ−セクレターゼ部位(いわゆるβ−stub)で始まるC末端フラグメント(CTF)に対応する、APPプロセシング中間体のようであった。老年期のTgCRND8マウスでは、動物が老化するのにつれて増加するレベルの4kDaの種もまた、検出されたが、齢の一致した非Tg同腹仔でもTg2576マウスでもこれは検出されなかった。4kDaの免疫応答性種は、これらの動物の生涯の間に高レベルに蓄積するAβペプチドに対応する。
【0085】
卵母細胞へのDNAトランスジーンのマイクロインジェクションは、上に記載のように、マウスゲノム中にトランスジーンの無作為な挿入を導く。挿入したトランスジーンの制限エンドヌクレアーゼマッピングは、これらが、頭−尾(head−to−tail)アレイで挿入され、1アレイあたりのトランスジーン数(コピー数)は、一倍体ゲノムあたり100を超えるまでトランスジーンコピーに達することを証明する(24)。
【0086】
ヒトAPPを発現するトランスジェニックマウスは、最適なアミロイド生成のために、好ましくは内在性発現レベルの5〜6倍のAPPの過剰発現を示すはずである。脳でのAPP発現を、マウスAPPおよびヒトAPPの両方を認識する22C11(Roche Diagnostics)のようなAPP指向性抗体を用いたウエスタンブロット分析によって決定する。
【0087】
プリオンタンパク質cos.Tetベクターについての以前の研究は、トランスジーンの発現レベルがコピー数と並行して増加するような、トランスジーンアレイの位置非依存性の発現を示している(4,40)。それゆえ、このベクターを使用する場合、所望の高レベルのAPP発現を有するトランスジェニックマウスを、高いトランスジーンコピー数(好ましくは、少なくとも30コピー)を有するトランスジーン陽性マウスを、ハイブリダイゼーション分析(30)で同定することによって、最初に同定し得る。
【0088】
FVB/N遺伝的バックグラウンドを有するマウスは、APP過剰発現のほとんど明らかになっていない影響に起因して、成体早期で早死にする傾向があるとはいえ、この傾向は、C57系統およびC3H系統由来の遺伝的バックグラウンドにおいて弱まる。それゆえ、TgCRND8マウスは、Aβペプチドレベルを、生存率を損なうことなしに許容させ得ることを確立する。
【0089】
(TgCRND8マウスでの神経病理学的変化)
免疫染色を、APPのAβタンパク質分解フラグメントと反応するヒト特異的抗体4G8を用い、ホルマリン固定し、パラフィンワックス包埋した脳材料からの切片を用いて行った。この免疫組織化学的手順のための標準プロトコールは、別に記載されている(17,20,23)。単離したプラーク沈着物は、生後60日という早期にTgCRND8マウスにおいて可視化になり、びまん性アミロイド斑の頑強な沈着物は90日齢から可能になる。高密度の中心を有する斑は、4〜5ヶ月齢で明らかであり、これらの型の沈着物の多くは、コンゴ−レッド(β−シートリッチアミロイド沈着物中にインターカレートされる試薬)で染まり、偏光下で緑/金複屈折をもたらす。同様の複屈折沈着物は、ヒトADの脳サンプルに存在する。アミロイド沈着物は、TgCRND8マウスにおいて、ヒトアルツハイマー病によって重大な影響を受ける領域である海馬および大脳皮質(特に前頭皮質)に顕著であった。散発性ADでは通常免れるが、ADの重症な早発型症例でのびまん性Aβ沈着物によって穏やかに影響を受け得る小脳もまた、1年齢のTgCRND8マウスおよび6ヶ月齢で変異体PS1または変異体PS2を同時発現するTgCRND8マウスにおいて、穏やかに影響を受ける。
【0090】
APPは、(ハムスターPrP遺伝子と同様に)TgCRND8マウスにおいて全身性に発現したが、腎臓、骨格筋、および心筋はPrP mRNAの発現が知られている部位であるにもかかわらず、アミロイド沈着物は、顕症のCNS沈着物を有する老化した動物の腎臓、骨格筋、および心筋における免疫染色によって視覚的に明らかではなかった。
【0091】
(TgCRND8マウスでの行動的変化)
TgCRND8マウスの空間学習を、(32)に記載の十分に確立されたパラダイムのMorris水迷路(31)を用いて評価した。TgCRND8マウスの行動分析は、11週齢という早期の水迷路の場所識別(同じ空間的位置の隠したプラットフォーム)バージョンにて評価された、それらの空間情報獲得の重大な認知欠損を明らかにした。トレーニングの間、マウスは有意に遅い学習速度を示し、この学習速度は、より長いエスケープ潜時および探索通路ならびに隠したプラットフォームを含む四分区画の偶然のレベル探索に反映される(図1)。TgCRND8マウスはまた、探索足跡(probe trail)で試験する場合、空間記憶の欠損を示した。この試行の間、隠したプラットフォームを取り外し、そしてマウスに60秒間その位置を探索させた。非Tgマウスは、プラットフォーム位置に対する明らかで選択的な空間の偏りを示し(図1,EおよびF)、TgCRND8マウスの探索は、非Tg同腹仔よりも全体にわたりかつTQ四分区画に隣接して含まれ、そしてプラットフォーム位置の周りの環状部を有意に少なく横断した。APP陽性マウスおよび非Tgマウスの両方の泳ぐ能力は、試験の間は同等であり、従って、学習の尺度は偏らなかった。
【0092】
(実施例2−TgCRND8×TgPS1(L286V)1274二重トランスジェニックマウス)
TgCRND8マウスを、TgPS1(L286V)系統1274と称されるFAD関連変異体プレセニリン1遺伝子を有するトランスジェニックマウスと交配させた。これらの子孫を離乳させ、そしてゲノムDNAの調製のために尾部の生検を取り出した。精製された尾部のDNAを、ナイロン膜上にニ連の「ドット−ブロット」アレイで固定化し、そしてcDNAクローンから切り出したヒトAPPコード領域の遺伝子特異的プローブまたはcDNAクローンから切り出したヒトPS1クローニング領域プローブフラグメントを用いてハイブリダイズさせた。これらのDNA制限フラグメントを、α−32p−dCTP(33)で無作為にプライミングすることによって標識した。二連のナイロン膜を、APPまたはPS1のいずれかのハイブリダイゼーションプローブとともにインキュベートし、そして65℃の温度で0.1% ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl suphate)、0.1×クエン酸ナトリウム生理食塩水の溶液(これは、マウスのゲノム内で内在性PS1遺伝子およびAPP遺伝子に由来するシグナルを最少化するような「ストリンジェント」なハイブリダイゼーション後の洗浄に対応する)中で洗浄した。二重トランスジェニックマウスを、対応する尾部のDNAサンプルがAPP遺伝子特異的プローブおよびPS1遺伝子特異的プローブの両方にハイブリダイズするという事実によって同定した。
【0093】
(TgCRND8×TgPS1(L286V)1274二重トランスジェニックマウスでの神経病理学的変化)
アミロイド沈着は、生じた二重トランスジェニックマウスにおいて増強された。これらのマウスは、62日齢まで、死後のヒトADの脳に非常に似ているアミロイド負荷量を示した。
【0094】
老化したマウスにおいて、アミロイド沈着物は、一連トランスジェニックマウスにおいて通常免れる構造体(例えば、小脳)に及ぶに十分に顕症であった。
【0095】
(実施例3−TgCRND8xTgPS2(M239V)1379二重トランスジェニックマウス)
TgCRND8マウスをまた、同様のプリオンタンパク質コスミド発現ベクターcosTet中に変異プレセニリン2対立遺伝子を発現する、TgPS2(M239V)系統1379と名づけたトランスジェニック系統と交配した。二重トランスジェニックマウスTgCRND8xTgPS2(M239V)1379マウスは、PS2コード領域DNAハイブリダイゼーションプローブを、PS1コード領域ハイブリダイゼーションプローブの代わりに使用したことを除いて、上に記載のTgCRND8xTgPS1(L286V)1274マウスとして遺伝子型を特定した。
【0096】
これらの二重トランスジェニックマウスは、生後91日までにAβペプチドに対して免疫反応性の球状プラークの形態で、大量のCNSのアミロイド沈着を呈した。これらのアミロイド沈着は、ヒトアルツハイマー病によって重大な影響を受ける領域である海馬および大脳皮質に局在した。通常、小脳は重症な早発型アルツハイマー病の症例においてのみ、散在性Aβ沈着によって影響を受け;これは、マウスにおいて最も重いプラーク負荷で影響を受ける。
【0097】
(TgCRND8xTgPS2(M239V)1379二重オトランスジェニックマウスでの行動変化)
TgCRND8xTgPS2(M239V)1379二重トランスジェニックマウスを2ヶ月齢で試験し、そして空間学習の獲得において40%範囲内にエフェクトサイズを有する有意な認知欠陥を示した(図2、パネルAおよびB)。しかしながら、以下の逆試験の間、最初は下位であったけれども、この二重トランスジェニックマウスは、試験の最後まで比較し得る能力を示した(導入遺伝子型によって説明される分散の約20%)(図2、パネルCおよびC)。5ヶ月齢での再試験の間、同様の二重トランスジェニックマウスは、獲得試験および逆試験の間に有意に高い学習欠陥を示した(それぞれ60%および70%の導入遺伝子型に起因するエフェクトサイズ)(図2、パネルEおよびF)。また、この二重トランスジェニックマウスは、任意の年齢で試験したこれらの泳ぐ速度において、TgPS2(m239V)1379マウスと相違しなかった。変異したPS2遺伝子の存在中の変異したヒトAPPの発現は、同系統の同様の組み合わせから由来した非トランスジェニックマウスと同様の様式で行動するTgPS2(M239V)1379マウスの能力と比較して、2ヶ月齢程度の早さで空間学習および記憶の障害を起こす。この障害は加齢に伴いかつ5ヶ月齢までに進行する。このマウスは、常に新しい空間情報の獲得の欠陥を示す。
【0098】
(実施例4−TgCRND8xTg(M146L+L286V)6500二重トランスジェニックマウス)
TgCRND8マウスを、PS1(M146L+L286V)の2つの変異を有するトランスジェニックマウスと交配した(34)。このPS1二重変異体マウスを、先に記載のように(35)、標準プロトコールによって作製した。二重トランスジェニックマウスを、上に記載のTgCRND8xTgPS1(L286V)1274二重トランスジェニックマウスのための、2つの独立したDNAプローブを用いたハイブリダイゼーションによる尾部のDNAの遺伝子型分析によって同定した。
【0099】
生じた2つの二重トランスジェニックマウスは、43日齢までに多発性の散在性Aβ(AB)アミロイドプラークを呈し、1ヶ月齢までに皮質におけるAβ(AB)アミロイド沈着の斑点を示した。43日齢で現れるこのプラークのいくつかは、コンゴ−レッド色素性である(すなわち、コンゴ−レッド試薬で染色し得る)。
【0100】
(実施例5−TgCRND8マウスでのAβに対する能動免疫は認知欠陥を変化させる)
TgCRND8マウスの群および非トランスジェニック同腹仔の群を、Schenkら(36)による記載のように、合成Aβ42ペプチドで免疫した。TgCRND8マウスおよび非トランスジェニック同腹仔のコントロール群を、コントロールアミロイド生成性ペプチド(糖尿病の病因と関連する島状のアミロイドポリペプチド(IAPP))で免疫した。水迷路試験でのこれらの2つのトランスジェニック群の能力を、上に記載のように、非Tg同腹仔の能力と比較した。この結果を図3に示す。
【0101】
図3に見えるように、Aβ42ペプチドを用いた免疫は、免疫の初期段階でTgCRND8マウスの認知障害を減衰した。Aβ42または1APPを用いて免疫にしたTgCRND8マウス(6週齢で免疫を開始した)の水迷路能力を、11週齢で試験した。Aβ42ペプチドを用いた免疫は、非Tg同腹仔と比較して、逃避潜伏時間の長さ(パネルA)および通路探索の長さ(パネルD)によって計測したように、TgCRND8マウスの認知欠陥を有意に減少させた。Aβ42で免疫したTgCRND8マウスは、非Tgマウスよりも全体に長い逃避潜伏時間(パネルA)および通路探索(パネルD)、(潜伏時間および通路それぞれ、F(1,30)=9.71,p<0.01;F(1,30)=10.9,p<0.01)を示し、この違いは、これらの最初のより長い探索(群x日数の相互作用:潜伏時間について、F(4,120)−2.83,p<0.05;通路について、F(3,120)=4.73,p<0.01)に起因した。トレーニング最後の3日間のこれらの能力比較は、群間に有意差を示さなかった(潜伏時間について、F(1,30)=0.64,p>0.05;通路について、F(1,30)=1.24,p>0.05)。Aβ42で免疫したTgCRND8マウスは、TQを探索する傾向はわずかに少ないが(F(1,30)=3.71,p=0.06,パネルE)、それらの泳ぐ速度(パネルG)は、非Tgマウスと有意な差(F(1,30)=1.33,p>0.05)がないことを示した。IAPPで免疫したTgCRND8マウスは、これらの非Tg同腹仔より有意に長い逃避潜伏時間(パネルB)および通路探索(パネルC)を示した(潜時について、F(1.26)=39.9,p<0.001;通路について、F(1,26)=43.9,p<0.001)。トランスジェニックマウスは、非Tgマウスと最初の探索において差異はなかったけれども、これらはトレーニングの間に能力を改善しなかった(群x日数の相互作用:潜伏時間について、F(4,104)=6.31,p<0.001;通路について、F(4,104)=5.69,p<0.001)。これらはまた、標的四分区画の探索に有意にわずかな時間を費やしたが(F(1,26)=7.39,p<0.05,パネルF)、これらの泳ぐ速度は免疫によって影響を受けなかった(F(1,26)=1.73,p>0.05,パネルH)。
【0102】
まとめると、6週でのAβ42ペプチドを用いたTgCRND8マウスの免疫に続く8週での追加免疫は、11週齢で施行した水迷路のパラダイムにおいて、TgCRND8マウスの認知能力を有意に改善した。一方、IAPPで免疫したマウスは、非Tg同腹仔と比較して空間情報の獲得において有意に障害を示し(図3)、そしてこの障害は、非免疫のTgCRND8マウスにおいて見られるのと類似の性質であった(データは示していない)。
【0103】
Aβ42またはIAPPペプチドを用いた免疫は、このマウスの泳ぐ能力に影響しなかった。これらの発見は、Aβ42を用いた免疫(コントロールIAPPペプチドではなく)が、水迷路での能力改善し、そしてこの改善が、海馬のAβアミロイドプラークの最初の沈着が起こる時期と一致し得ることを示す。これらの発見はまた、TgCRND8における認知の欠陥が、不可逆性の認知欠陥に起因しないことを確立する。
【0104】
本発明は、明細書中に記載の実施形態の特徴で制限されないが、全ての改変および修飾を特許請求の範囲内に含む。
【0105】
【数1−1】

【0106】
【数1−2】

【0107】
【数1−3】

【0108】
【数1−4】

【0109】
【数1−5】

【0110】
【数1−6】

【0111】
【表1】

【0112】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノムが導入遺伝子を含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物であって、該導入遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含み、かつ異種アミロイド前駆体タンパク質695(APP695)ポリペプチドをコードしている、トランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項2】
乳動物において認識不全を減弱するための医薬の製造のためのAβペプチドの使用。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【公開番号】特開2009−178162(P2009−178162A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68078(P2009−68078)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【分割の表示】特願2002−503093(P2002−503093)の分割
【原出願日】平成13年6月19日(2001.6.19)
【出願人】(501318567)ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント (8)
【Fターム(参考)】