説明

移動体搭乗者の心身状態調整装置及び心身状態調整装置の制御方法

【課題】移動体搭乗者の心身状態調整装置及び心身状態調整装置の制御方法に関し、パーソナル化された制御により移動体と搭乗者との繋がりを健全に維持して、移動体及び搭乗者の健康を維持,増進させる。
【解決手段】移動体に搭乗する搭乗者の心身情報を検出する心身情報検出手段3aと、心身情報検出手段3aで検出された心身情報を解析して搭乗者の心身状態を把握する心身情報解析手段3cと、搭乗者の心身状態の目標状態を設定する目標状態設定手段3bと、心身情報解析手段3cで把握された該心身情報と目標状態設定手段3bで設定された該目標状態とに基づいて、搭乗者の心身状態を目標状態に調整するための刺激信号を発生させる刺激信号発生手段6cと、心身情報解析手段3c,目標状態設定手段3b及び刺激信号発生手段6cにおける各機能のうちの少なくとも一つを搭乗者毎に最適化(パーソナル化)する最適化手段6a,6b,6cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車,列車,船舶,飛行機,宇宙船等の移動体に搭乗した搭乗者の心身状態を調整する装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、社会の複雑多様化に伴い、ストレスに起因する人体への健康障害が社会問題として提起されつつある。そして、このようなストレスを緩和するための技術として、「1/f揺らぎ」を応用した技術が注目されている。
「揺らぎ」とは、ある波動が刻々と変化する際に観察される僅かな波形のズレ(空間的,時間的変化や動きが部分的に不規則な動き)のことを指し、波の大きさが周波数に逆比例している波動を「1/f揺らぎ」と呼ぶ。1/f揺らぎは、小川のせせらぎ音やそよ風の風圧,木目の形状,小鳥のさえずり音といった自然界に存在する波動のみならず、人の体(以下、生体という)から発せられる波動にも観察されるものである。例えば、心電図の心拍の間隔を調べると、健康な人が安静にしている状態において、心拍の間隔は平均値±10%の変動があり、揺らぎが観察される。この揺らぎを波動とみなしてスペクトル解析すると、パワースペクトルが周波数fに反比例する1/f揺らぎを観測することができる。
【0003】
そして、1/f揺らぎを有する音楽を聴くことによって、身体に癒しの効果が与えられることが明らかになっている。これは、生体のリズムが1/f揺らぎの状態にあり、生体リズムと同調する音楽に快適さを感じるものと推測されている。なお、1/f揺らぎの状態は、個々人によって若干異なるものである。
一方、車両の運転者の眠気やストレス等の心身状態に応じて車内環境を調整する種々の技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、運転者の作業量や生理量(例えば頭部振動等)に基づいて運転者の緊張度をその心身状態として推定するとともに、現在の運転状況に好ましい基準となる緊張度を推定し、これらに応じて運転者の緊張を緩和または活性化する構成が開示されている。このような構成により、運転者に適度な緊張感を維持させて運転を円滑に遂行させることができるようになっている。
【0005】
また、特許文献2には、運転者の生体信号(例えば運転者の脳波,心拍,皮膚電位等)を検知するとともにカーオーディオによる音的情報の出力状態を検知し、これらの情報に基づいてカーオーディオによる音的情報の出力方法を決定し自動出力する構成が記載されている。これにより、運転者が覚醒しているときには運転者に煩わしさを感じさせることなく、運転者が眠気を感じたときには意外性のある注意喚起を行うことができるようになっている。
【0006】
このように、車両の搭乗者の心身状態を把握した上で搭乗者に対し何らかの刺激を付与することによって、搭乗者の心身状態を制御する様々な手法が展開されている。
【特許文献1】特開2003−245357号公報
【特許文献2】特開2004−254750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載された作業量,生理量や特許文献2に記載された生体信号等の、個人が発する心身情報のうち、どの情報がその個人の心身状態の変化を最もよく反映しているかは、個人及び個人を取り巻く環境に依存している。
しかし、上述の特許文献1,2に記載の技術では、このような個人毎の心身情報の出力特性の差異が考慮されていないため、心身状態の把握精度が十分でない場合が考えられる。例えば、不特定多数の個人を心身状態の把握対象とするような場合には、必ずしも各個人毎の心身状態を把握できるとは限らない。また、同一の個人であっても、状況に応じて心身情報の出力特性が変化することが考えられ、心身状態の把握精度を向上させ難いという課題がある。
【0008】
また、上記の特許文献1,2に記載の技術では、搭乗者へ与えられた刺激によってどの程度の影響が搭乗者の心身状態へ及ぼされたのかを把握することは不十分であり、刺激の付与効果を向上させることが困難である。つまり、刺激に対する反応性は個々人で異なるものであるにも関わらず、従来の手法によれば、一般的な傾向として統計的に把握されたデータに基づいて刺激の付与方法や付与量が決定されている。そのため、制御が画一的となってしまい、個々人に適した心身状態の制御が困難となる。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、パーソナル化された制御により移動体と搭乗者とのつながりを健全に維持して、移動体及び搭乗者の健康を維持,増進させることのできる心身状態調整装置及び心身状態調整装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、移動体に搭乗する搭乗者の心身情報を検出する心身情報検出手段と、該心身情報検出手段で検出された該心身情報を解析して該搭乗者の心身状態を把握する心身情報解析手段と、該搭乗者の該心身状態の目標状態を設定する目標状態設定手段と、該心身情報解析手段で把握された該心身情報と該目標状態設定手段で設定された該目標状態とに基づいて、該搭乗者の該心身状態を該目標状態に調整するための刺激信号を発生させる刺激信号発生手段と、該心身情報解析手段,該目標状態設定手段及び該刺激信号発生手段における各機能のうちの少なくとも一つを該搭乗者毎に最適化(パーソナル化)する最適化手段とを備えたことを特徴としている。
ここでいう移動体には、自動車,列車,船舶,飛行機,宇宙船等、人が搭乗する乗物全般が含まれる。
【0011】
なお、該刺激信号を受けて該移動体の室内環境を調節する室内環境調節手段を備えることが好ましい。この場合、該室内環境調節手段は、該刺激信号発生手段が発生させた該刺激信号に基づき、該移動体の室内環境を調整する。例えば、該移動体室内の空気振動(音,音声)や移動体振動(座席シートの振動),室内気温,室内湿度,該室内の揮発性物質濃度(室内の香り)を変更することにより、該移動体の室内環境を調整する。
【0012】
請求項2記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、請求項1記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置において、該心身情報検出手段が、該搭乗者から得られる複数の該心身情報を検出するとともに、該最適化手段が、該搭乗者に応じて該複数の該心身情報のうちの少なくとも一つを選択することを特徴としている。
請求項3記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、請求項2記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置において、該最適化手段が、該複数の該心身情報のうち該搭乗者の心身状態の変化が最も反映されている最適化心身情報を抽出し、該心身情報解析手段が、該最適化手段によって抽出された該最適化心身情報に基づいて該搭乗者の該心身状態を解析することを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、請求項1〜3の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置において、該刺激信号発生手段が、該搭乗者の該心身状態を該目標状態に調整するための複数の刺激信号発生態様を有するとともに、該最
適化手段が、該搭乗者に応じて該複数の刺激信号のうちの少なくとも一つを選択することを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、請求項4記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置において、該最適化手段が、該複数の刺激信号発生態様のうち該搭乗者の心身状態に最も反映される刺激信号発生態様を選択することを特徴としている。
請求項6記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、請求項1〜5の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置において、該心身情報解析手段において解析された該心身状態を該搭乗者へ報知するための複数の報知態様を有する報知手段を備えるとともに、該最適化手段が、該搭乗者に応じて該複数の報知態様のうちの少なくとも一つを選択することを特徴としている。
【0015】
請求項7記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、請求項1〜6の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置において、予め搭乗者に適した複数の該目標状態を記憶する記憶手段を備え、該目標状態設定手段が、該記憶手段に記憶された該複数の該目標状態のうちの少なくとも一つを選択することを特徴としている。
請求項8記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、請求項1〜7の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置において、該搭乗者に適した該目標状態を学習する学習手段を備えたことを特徴としている。
【0016】
請求項9記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、請求項1〜8の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置において、該心身情報解析手段が、非線形解析手法を用いて該心身状態を解析することを特徴としている。
請求項10記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、請求項1〜9の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置において、該心身情報解析手段が、少なくとも該搭乗者の運動パターン及び癖のうちの何れか一つを該搭乗者の心身状態として解析することを特徴としている。
【0017】
請求項11記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、請求項1〜10の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置において、該心身情報検出手段が、該搭乗者のバイタルサインを該心身情報として検出することを特徴としている。
請求項12記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、請求項1〜11の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置において、該搭乗者による該移動体の運転操作を検出する運転操作検出手段を備え、該心身情報検出手段が、該運転操作検出手段で検出された該運転操作に基づいて該搭乗者の心身状態を把握することを特徴としている。
【0018】
請求項13記載の本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置は、請求項1〜12の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置において、該移動体の運動状態に相関する物理量を検出する移動体情報検出手段と、該移動体情報検出手段で検出された該物理量に基づいて該移動体の健康状態を解析する移動体情報解析手段とを備え、該刺激信号発生手段が、該移動体情報解析手段で解析された該移動体の該健康状態に基づいて該刺激信号を発生させることを特徴としている。
【0019】
請求項14記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、移動体に搭乗する搭乗者の心身情報を検出する第1ステップと、該心身情報を解析して該搭乗者の心身状態を把握する第2ステップと、該搭乗者の該心身状態の目標状態を設定する第3ステップと、該心身状態及び該目標状態に応じて、該移動体の室内環境を調整する第4ステップと、該第2,第3及び第4ステップのうちの少なくとも一つのステップの制御内容を該搭乗者毎に最適化(パーソナル化)する第5ステップとを備えたことを特徴としている。
【0020】
なお、該第4ステップでは、該心身状態及び該目標状態に応じて、該移動体の室内空間における、少なくとも空気振動,移動体振動,気温,湿度及び揮発性物質濃度のうちの何れかを変更することが好ましい。
請求項15記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、請求項14記載の心身状態調整装置の制御方法において、該第1ステップにおいて、該搭乗者から得られる複数の該心身情報を検出し、該第5ステップにおいて、該搭乗者に応じて該複数の該心身情報のうちの少なくとも一つを選択することを特徴としている。
【0021】
請求項16記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、請求項15記載の心身状態調整装置の制御方法において、該第5ステップにおいて、該複数の該心身情報のうち該搭乗者の心身状態の変化が最も反映されている最適化心身情報を抽出し、該第2ステップにおいて、該第5ステップで抽出された該最適化心身情報に基づいて該搭乗者の該心身状態を解析することを特徴としている。
【0022】
請求項17記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、請求項14〜16の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法において、該第4ステップにおいて、該移動体の室内環境を調整する複数の環境調整態様を用意するとともに、該第5ステップにおいて、該搭乗者に応じて該複数の環境調整態様のうちの少なくとも一つを選択することを特徴としている。
【0023】
請求項18記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、請求項17記載の心身状態調整装置の制御方法において 該第5ステップにおいて、該複数の環境調整態様のうち該搭乗者の心身状態に最も反映される環境調整態様を選択することを特徴としている。
請求項19記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、請求項14〜18の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法において、該解析された該心身状態を該搭乗者へ報知するための複数の報知態様を用意する第6ステップを備え、該第5ステップにおいて、該搭乗者に応じて該第6ステップで用意された該複数の報知態様のうちの少なくとも一つを選択することを特徴としている。
【0024】
請求項20記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、請求項14〜19の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法において、搭乗者に適した複数の該目標状態を記憶する第7ステップを備え、該第3ステップにおいて、複数の目標状態のうちの少なくとも一つを搭乗者に適した目標状態として選択することを特徴としている。
請求項21記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、請求項14〜20の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法において、該搭乗者に適した該目標状態を学習する第8ステップを備えたことを特徴としている。
【0025】
請求項22記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、請求項14〜21の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法において、該第2ステップにおいて、非線形解析手法を用いて該心身状態を解析することを特徴としている。
請求項23記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、請求項14〜22の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法において、該第2ステップにおいて、少なくとも該搭乗者の運動パターン及び癖のうちの何れか一つを該搭乗者の心身状態として解析することを特徴としている。
【0026】
請求項24記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、請求項14〜23の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法において、該第1ステップにおいて、該搭乗者のバイタルサインを該心身情報として検出することを特徴としている。
請求項25記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、請求項14〜24の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法において、該搭乗者による該移動体の運転操作を検出する第9ステップを備え、該第2ステップにおいて、該第9ステップで検出された該運転操作に基づいて該搭乗者の心身状態を把握することを特徴としている。
【0027】
請求項26記載の本発明の心身状態調整装置の制御方法は、請求項14〜25の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法において、該移動体の運動状態に相関する物理量を検出する第10ステップと、該物理量に基づいて該移動体の健康状態を解析する第11ステップとを備え、該第4ステップにおいて、該移動体の該健康状態に基づいて該移動体の室内環境を調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項1)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項14)によれば、搭乗者毎に最適化された制御を行うことができ、個々人で異なる健康状態やその維持,増進方法に合わせて心身状態を調整することができる。
また、本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項2)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項15)によれば、搭乗者の心身状態を把握するための心身情報を選択することができる。つまり、個々人によって異なる、健康状態の変化を反映する情報を複数種類の中から選択することができる。
【0029】
例えば、ストレス(心身状態の一つ)の増加によって脈波を変動させやすい人もいれば、ハンドルの捌き方(ハンドルを握る力の大きさや、ハンドルを回す速さ,加速度等)を荒くしてしまいがちな人もいる。そのため、個々人のストレスの度合いを正確に把握するためには、各個人毎に、ストレスに対する反応性,応答性の高い心身情報を用いることが好ましいことになる。本心身状態調整装置及び心身状態調整装置の制御方法によれば、このような各個人毎に異なる特性を考慮して、心身情報を選択することが可能となる。
【0030】
また、本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項3)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項16)によれば、心身状態の変動に対する反応性,応答性が最も高い心身情報に基づく解析によって、搭乗者の心身状態を容易に解析することができるようになり、解析結果の信頼性を向上させることができる。
また、本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項4)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項17)によれば、搭乗者の心身状態を目標状態に調整するための刺激信号発生態様を選択することができる。つまり、個々人によって異なる、健康状態を変化させるための刺激の種類や刺激の与え方を複数種類の中から選択することができる。
【0031】
例えば、音楽を聴くことによってストレスが解消されやすい人もいれば、芳香剤の香りによってストレスが解消されやすい人もいる。そのため、個々人の心身状態を目標状態へ制御する上で制御効率を高めるためには、各個人毎に、心身状態に対する作用性,影響性の高い刺激信号発生態様を用いることが好ましいことになる。本心身状態調整装置及び心身状態調整装置の制御方法によれば、このような各個人毎に異なる特性を考慮して、刺激信号発生態様を選択することが可能となる。
【0032】
また、本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項5)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項18)によれば、心身状態に対する作用性,影響性の最も高い刺激信号発生態様によって、制御の信頼性を向上させることができ、搭乗者の心身状態を目標状態にすることが容易となる。
また、本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項6)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項19)によれば、搭乗者の心身状態への影響の少ない報知態様を選択することができる。例えば、搭乗者の感受性が強い場合には、解析結果の報知によって、搭乗者の心身状態が解析された心身状態から変化してしまうことがある行、本構成によれば、搭乗者の心身状態を悪化させない程度の穏やかな報知を行うことができ、結果として制御の信頼性を向上させることができる。
【0033】
また、本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項7)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項20)によれば、記憶手段に記憶された典型的な目標状態を制御目標として設定することにより、演算負荷を軽減することができる。また、その目標状態を複数備えたことにより、個々の搭乗者に応じて、あるいは、運転環境に応じて、制御すべき心身状態を変更することができる。
【0034】
例えば、降雨下での運転時には、晴天下での運転時よりもやや緊張するように心身状態の目標を設定することによって、運転環境に適した制御となる。また、個々人の年齢や性別,運転の熟練度等に応じて目標状態を設定すれば、個々人にとって快適な運転環境を提供することができる。
また、本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項8)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項21)によれば、目標状態を学習することによって制御精度を高めることができ、より適切に搭乗者の心身状態を個々人に適した目標状態となるように調整することができる。
【0035】
また、本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項9)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項22)によれば、心身情報に内在する非線形性をうまく取り出し、心身状態を適切に把握,調整することができる。
また、本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項10)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項23)によれば、搭乗者の意識的な応答,反応を排除することができ、搭乗者の心身状態をより正確に解析することができる。
【0036】
また、本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項11)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項24)によれば、非侵襲的に搭乗者から心身情報を検出することができる。つまり、心身情報を検出することによって生じうる心身情報自体の変化を抑制することができる。
また、本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項12)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項25)によれば、より非侵襲的に搭乗者の心身情報を検出することができる。例えば、搭乗者によるハンドル操作量やアクセル操作量等の運転操作量の情報を心身情報とみなし、その特性を解析することによって求められる操作の丁寧さや粗雑さに基づいて、搭乗者の心身状態を把握することができる。
【0037】
また、本発明の移動体搭乗者の心身状態調整装置(請求項13)及び心身状態調整装置の制御方法(請求項26)によれば、移動体の健康状態に合わせて搭乗員の心身状態を調整することができ、より快適な移動体内環境を提供することができる。例えば、移動体(自動車等)のタイヤ空気圧やブレーキパッドの摩擦係数等を移動体の整備情報として検出し、空気圧の適正度やブレーキの効き具合等の移動体の健康状態を解析する。これにより、空気圧が適正範囲内においてやや低い場合やブレーキパッドのやや摩耗してきた場合に、搭乗者の心身状態を通常時よりもリラックスさせることによって走行(飛行)速度を上昇させ過ぎないように制御して、移動体の健康状態と搭乗者の心身状態との良好な協調関係を形成,維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図5は本発明の第1実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置を示すもので、図1は本装置の全体構成を示すブロック図、図2は本装置における心身状態の判定内容を説明するための模式図、図3は本装置における心身状態の解析制御を示すフローチャート、図4は本装置における心身状態の報知制御を示すフローチャート、図5は本装置における刺激付与制御を示すフローチャートである。
【0039】
[構成]
(A)全体構成
まず、本発明に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置10の全体構成を説明する。
図1に示すように、本心身状態調整装置10は、生体情報センサ(心身情報検出手段)1Aと、生体情報センサ1Aで検出された情報に基づいて搭乗者(運転者や同乗者,同乗するペット等を含む)の心身状態を制御するための制御装置7と、心身状態を報知するための報知装置(報知手段)8と、搭乗者へ刺激を付与して心身状態を調整する刺激付与装置9とを備えて構成される。なお、本実施形態では、制御対象が運転者である場合を具体的代表例として例示する。
【0040】
生体情報センサ1Aとは、運転者の心身情報を検出するセンサであり、ここでは、運転者のバイタルサインを検出するセンサとして、脈拍センサ1Aa,圧力センサ1Ab及び心拍センサ1Acが例示されている。
なお、バイタルサインとは一般に、生命徴候として身体状態の把握の最も基本となる身体的な信号のことを意味するが、ここでいうバイタルサインとは、身体から検出される生命徴候としての物理量のうち、運転者のリラックス状態,ストレス状態等の精神的な状態との相関を有するものを意味している。例えば、呼吸数,心拍数,体温,皮膚表面温度,皮膚電位,脈波(脈拍数),脳波,血流量,唾液などの体液成分,呼吸気中や血中の酸素飽和度,血糖値,体動,心電,電気伝導度,体重(着座面への圧力),まばたきの回数,発汗量,ハンドルを握る力の強さ,その他身体が発する電磁波や化学物質等が挙げられる。これらのバイタルサインの大きさやその変化,変動の傾き等の情報が、生体情報センサ1Aによって心身情報として検出されるようになっている。
【0041】
脈拍センサ1Aa及び圧力センサ1Abは、ともに移動体のハンドル(本発明においては、ステアリング,操縦桿,操縦輪等の操舵制御装置を総称して、ハンドルと記載する)に取り付けられている。脈拍センサ1Aaは運転者の脈波を検出し、圧力センサ1Abは移動体のハンドルを握る力の強さ(握力,圧力)を検出する。また、心拍センサ1Acは運転者用シートの背もたれ部に取り付けられて、運転者の心拍を検出する。これらの各センサ1Aa,1Ab,1Acで検出された情報は、制御装置7へ入力されるようになっている。
【0042】
制御装置7は、搭乗者健康状態判定部3と、搭乗者・移動体データベース5aと、刺激データベース5bと、第1パーソナル化部6a,第2パーソナル化部6b及び第3パーソナル化部(刺激信号発生手段)6cとを備えて構成された電子制御装置(コンピュータ)であり、移動体のインパネ内部に設けられている。なお、制御装置7及び上述の各センサ1Aa,1Ab,1Acは、ワイヤハーネスを介して接続されている。
【0043】
搭乗者・移動体データベース(以下、単にデータベースとも呼ぶ)5aは、搭乗者及び移動体に関する情報を記憶するデータベースとしてのメモリ装置である。ここには例えば、運転者の心身状態の目標値(目標状態)や平常時における運転者の各心身情報の揺らぎの傾き(すなわち、各運転者毎に異なる個々人の個性,特性),運転者の心身状態が反映されやすい心身情報の種類,複数の報知態様等が記憶されている。
【0044】
ここで、データベース5aに記憶されている、平常時の運転者の各心身情報の揺らぎの傾きについて説明する。まず、運転者が移動体を購入した際や既存の移動体に本心身状態調整装置を設置する際に、予め平常時(移動体の停止時あるいは平穏な走行時)に運転者の心身情報のあらゆる信号(ここでは、脈波,握力,心拍)を測定しておく。これらの信号に対し、必要であればフィルター処理,カオス解析,ウェーブレット解析等による前処理を施した後、Detrended Fluctuation Analysis(DFA)やマルチフラクタル解析等のフラクタル解析により、フラクタル指数を求めておく。そしてこの平常時のフラクタル指数を、運転者の心身状態の目標値(基準値)F0として、データベース5aに記憶しておく。
【0045】
このようなフラクタル指数は、時間のスケールと信号の揺らぎの大きさとの相関(両者をプロットしたグラフの傾き)から典型的に導き出されるものなので、本発明では「揺らぎの傾き」をフラクタル指数と同義の言葉として使用する。
また、上記の手法のうち、DFAとは、時系列データを特定のスケール(ウィンドウサイズ)で分割し、各ウィンドウ内においてトレンドを差し引いた後の揺らぎの大きさを求め、この揺らぎの大きさと時間スケールとの相関をlog-logプロットする解析法であり、以下にその手法を詳述する。
【0046】
1.まず、N個の値からなる時系列データx(i),i=1,2,…Nからその平均値Xavrを引いたものを積算して新たな時系列データy(k),k=1,2,…Nを作成する。平均値Xavr及び時系列データy(k)は、以下に示す式1,式2のように記述される。
【数1】

【0047】
2.上記の時系列データy(k)を時間軸(k)上で時間スケール(ウィンドウサイズ)nの領域に分ける。すなわち、時系列データy(k)をn個のデータからなるウィンドウで分割する。
3.各ウィンドウ内における時系列データy(k)に、m次の多項式(ここで、mは0,1,2,…といった整数であり、典型的にはm=1が用いられる)を最小二乗法によりあてはめることにより、各ウィンドウ内でのトレンドyn(k)を求める。
【0048】
4.時系列データy(k)からこのトレンドyn(k)を差し引いた後の揺らぎの大きさFL(n)を以下の式3に従って求める。
【数2】

5.ウィンドウサイズnを変化させたときの揺らぎの大きさFL(n)を求め、log10nとlog10FL(n)との関係をグラフ上にプロットする。これをDFAプロットと呼ぶ。このプロットに直線をあてはめる(直線近似する)ことができれば、その直線の傾きがもとの時系列データx(i)のフラクタル指数となる。
【0049】
本データベース5aには、以上のような初期作業が施されている。なお、この目標値F0は、運転者に依存して変化するものであるが、1に近い値であれば平均的に健やかな状態にあると考えられる。
また、刺激データベース5bは、本装置10によって運転者へ与えられる刺激の種類や刺激方法(刺激付与態様)の情報を記憶するデータベースである。本実施形態では、この刺激データベース5bに複数の様々な音(音声や音楽,メロディー等)が記憶されており、例えば、モーツアルトやベートーベン等のクラシック音楽や、歌謡曲や、鳥のさえずりや波の音等の自然音等の多種多様な音を記憶している。
【0050】
なお、これらのデータベース5a,5bの各機能は、例えばハードディスクやその他の記憶媒体等により実現される。
搭乗者健康状態判定部3は、運転者の心身状態を判定する制御部(CPU,中央処理装置)である。また、第1パーソナル化部6a,第2パーソナル化部6b及び第3パーソナル化部6cは、本装置10の機能を運転者毎に最適化(パーソナル化)するための最適化手段である。
【0051】
報知装置8は、本装置10における判定結果や報知内容を搭乗者へ表示して報知するためのモニタ装置及び音声で報知するための音響装置やスピーカである。ここでは、後述する運転者の心身状態や移動体の健康状態が報知されるようになっている
刺激付与装置9は、運転者へ刺激を付与するための装置である。報知装置8及び刺激付与装置9は、ワイヤハーネスを介して制御装置7に接続されている。本実施形態では、報知装置8の音響機器が刺激付与装置9の機能も兼用している。なお、本実施形態では、制御装置7から入力される刺激信号(電気信号)に応じて、様々な音楽を流すようになっており、例えば、心拍が低下して心身状態が過剰にリラックスしていると把握されたとき、興奮させる曲で心拍を高める。これについては後述する。
【0052】
(B)構成の詳細
続いて、制御装置7の構成の詳細を説明する。
搭乗者健康状態判定部3は、運転者の心身情報データを解析する解析部(心身状態解析手段)3a,運転者の心身状態の目標状態を設定する搭乗者目標状態設定部3b及び運転者の現在の心身状態を判定する判定部3cを備えて構成される。
【0053】
(B−1)解析部3aの構成
解析部3aは、様々な解析手法を用いて生体情報センサ1Aにより得られた心身情報を解析し、運転者の心身状態を把握するようになっている。
具体的には、心身情報の解析には、スペクトル解析(FFT解析),フラクタル解析,カオス解析,ウェーブレット解析等の公知の解析手法(非線形解析手法を含む)が用いられ、各心身情報に適切な解析手法が選択されるようになっている。例えば、心拍や脈波といった周期性のある信号には、スペクトル解析(FFT解析),フラクタル解析,カオス解析といった手法が主として用いられる。一方、握力といった体動や癖のように間欠的な(周期性があるとはみなしにくい)信号には、ウェーブレット解析や、フラクタル解析のうちでもマルチフラクタル解析等が主として用いられる。
【0054】
心拍(生体リズム)を用いてフラクタル解析を行う場合について代表して詳述する。まず、人間の心拍を、生体の状態や周りの環境変化に影響を受けて微妙に変化する「波動」であると考える。例えば、心電図計等によって電圧変動として測定される波動である。この波動は、周期や振動の大きさが常に一定でないため、変動を定量的に解析することが難しい。
【0055】
そこで、この波動を周期波動(繰り返し波形)とみなして、心拍変動の周期を計測し、波形のピーク間の時間間隔を生体リズムの周期として抽出する。そして、この周期の時系列に対して、フラクタル解析を行い、波動の揺らぎの複雑性を定量的に把握する。
なお一般に、心拍波動をはじめとする生体信号(生体リズム)は、ノイズを多く含むとともに、平均値や分散等の統計量が時間とともに変化する非定常の信号であるから、まず、心拍の信号からノイズとトレンド(時系列に存在する非定常な変動成分)の除去を行う。その後、時間軸に対する心拍の信号の揺らぎの大きさを計算する。
【0056】
この結果得られた揺らぎ成分の大きさと時間のスケールとの間には相関関係があり、例えば縦軸に揺らぎ成分の大きさ(変動のパワー)の対数をとり横軸に時間のスケール(変動の周波数)の対数をとってグラフ上にプロットする(いわゆるlog-logプロット)と、揺らぎ成分及び周波数の関数グラフは、略直線状になる。このような特性を利用して、解析部3aは揺らぎの傾きの大きさF1を算出し、これを心身状態の指標として把握するようになっている。
【0057】
なお、時系列データの種類によっては、この相関関係が1本の直線で近似できない場合がある。この場合は、局所的に直線があてはめられるように時間軸(周波数軸)をいくつかの領域に分け、各領域での揺らぎの傾きを求めればよい。あるいは、マルチフラクタル解析法により、連続的な揺らぎの傾きの大きさF1のスペクトルを求めてもよい。このような場合、揺らぎの傾きの大きさF1は一つ以上の数値の組合せから構成されるので、そのうち代表的な一つを選択して目標値F0と比較してもよいし、逆に複数個のF1に対してそれぞれ複数個の目標値F0を設定してもよい。
【0058】
なお、解析部3aは、生体情報センサ1Aで検出された各心身情報のそれぞれについて、揺らぎの傾きの大きさ(解析値)F1を算出する。また、ここで算出された各解析値F1は、搭乗者目標状態設定部3b及び第1パーソナル化部6aへ入力されるようになっている。
【0059】
(B−2)搭乗者目標状態設定部3bの構成(1/f揺らぎ)
搭乗者目標状態設定部(目標状態設定手段)3bは、運転者の心身状態の目標状態(すなわち、制御目標となる運転者の心身の状態であって、移動体,運転者及び同乗者にとって健康上望ましい状態)を設定する。
【0060】
近年の研究により、例えば、リラックスした状態の人間の心拍変動において、変動のパワーが心拍波動の周波数に対して傾きが絶対値1の状態となることが報告されている。このような状態を1/f揺らぎと呼び、1/f揺らぎ状態にあることが生体にとって好ましい心身状態であることが判明している。したがって、運転者の心身状態も1/f揺らぎ状態となるように設定されることが好ましく、心身状態が1/f揺らぎ状態となるように目標状態を設定する。本実施形態では、データベース5aに記憶された平常時の運転者の心身状態の目標値F0がこの目標状態として設定されるようになっている。
【0061】
なお、簡略的な設定として、揺らぎの傾きの目標値F0をF0=1に設定してもよい。揺らぎの傾き(フラクタル指数)F0は、揺らぎに長期的な正の相関があるほど大きくなり、揺らぎが規則的で負の相関があるほど0に近づく特性がある。つまり、フラクタル指数F0がF0=1の状態とは、揺らぎが適度に不規則な、自然な揺らぎ挙動の状態である。
また、運転状況によっては、適度な緊張状態を維持していることが好ましく、緊張状態から開放されている1/f揺らぎ状態となることは逆に好ましくない結果を生む場合も考えられる。そこで、個々人の差異に応じて運転に必要な適度な緊張状態を維持する揺らぎの傾き(揺らぎ成分の大きさと周波数fとの対応関係における傾きを1/fnと表現したときの、指数nであって、いわゆるフラクタル指数)の値を求めて、その値における1/f揺らぎ状態となるように、目標状態を設定してもよい(目標状態のパーソナル化)。
【0062】
例えば、トンネル内や夜間の移動体走行時には、通常時よりも運転者が適度に緊張状態を保って運転に集中していることが好ましい。そのため、目標状態として設定される揺らぎの傾きF0を1よりもやや小さい値に設定することが考えられる。なお、このような目標状態のパーソナル化の過程において、望ましい目標状態の値を学習する構成としても良く、これについては後述する。
【0063】
(B−3)判定部3cの構成
判定部3cは、解析部3aで求められたリアルタイムの心身情報解析結果と、搭乗者目標状態設定部3bで設定された目標状態とを比較して、現在の運転者の心身状態MBを判定する。
具体的には、搭乗者目標状態設定部3bにおいて目標状態として設定されたフラクタル指数の目標値F0と、解析部3aで算出されたフラクタル指数の解析値(すなわち、心拍変動の揺らぎの傾き)F1とを比較して、図3に示すように、F1とF0とがほぼ一致していれば(F0−α≦F1≦F0+α)、運転者の心身状態MBは「適正状態である」と判定する。なお、ここでいうαとは、F1とF0との類似の度合いを判定するための予め設定された所定値である。
【0064】
また、F1がF0よりも小さければ(F1<F0−α)、その乖離の程度が大きくなるに従い、「ストレスを感じている」,「ややストレスを感じている」,「非常にストレスを感じている」と判定する。逆に、F1がF0よりも大きければ(F1>F0+α)、その乖離の程度が大きくなるに従い、「ややリラックスしている」,「リラックスしている」,「過剰にリラックスしている」と判定するようになっている。つまり、心身状態を7段階に分類して判定する。なお、このような分類や所定値αの設定は一例であって、分類をさらに細分化する等、種々変更して実施してもよい。
【0065】
(B−4)第1パーソナル化部6aの構成(センサ選択のパーソナル化)
第1パーソナル化部6aは、生体情報センサ1Aから入力される心身情報のうち、運転者の心身状態の変化が最も反映されている情報[最適心身情報(最適化心身情報)]を抽出して、心身状態を個人に応じて的確に把握する。具体的には、脈波,握力及び心拍のうち、運転者のストレスの状態が鋭敏に反映されている情報がどれであるかを推定して、個々人に合わせて選択(パーソナル化)するようになっている。
【0066】
本実施形態では、平常時(移動体の停止時あるいは平穏な走行時)における運転者の各心身情報の揺らぎの傾き(すなわち、各運転者毎に異なる個々人の個性,特性)が予めデータベース5aに記憶されている。これが、運転者の心身状態の基準値となる。そして、第1パーソナル化部6aは、これらの平常時の運転者の心身情報の揺らぎの傾きと解析部3aで解析された各心身情報の揺らぎの傾きとを比較して、各心身情報のうち平常時からの変動が最も大きい心身情報(最適心身情報)を選択する。つまりここでは、検出された心身情報のうち最も反応性の高いと推定される情報が抽出されるようになっている。
【0067】
なお、本実施形態では、センサ選択のパーソナル化が、検出された情報の反応性に基づいて選択されるが、例えば、事前に運転者にアンケートやテストを行っておき、統計的に推定される最適心身情報を選択するような構成としてもよいし、運転者が自ら好みの情報を選択するような構成としてもよい。
【0068】
(B−5)第2パーソナル化部6bの構成(報知方法のパーソナル化)
第2パーソナル化部6bは、報知装置8によって運転者へ報知される心身状態の報知方法を個人に応じて変更する制御部である。具体的には、データベース5aに記憶された複数の報知態様の中から、運転者の心身状態MBに基づいて一つの報知態様を選択して、報知装置8に対して指示するようになっている。これにより、例えば、運転者の心身状態MBがストレスを感じている場合には、穏やかな色調の表示で報知するとともに、優しい音声で報知するといった制御がなされることになる。
【0069】
なお、解析部3aにおいて、心身情報の解析から運転者の感受性を把握する構成を追加して、把握された運転者の感受性に基づいて、報知方法を変更することも考えられる。つまり、感受性の高い運転者に対しては、穏やかな表示で報知するとともに、優しい音声で報知するといった制御を行う。これにより、より個々人に適した報知方法を選択することができる。また、報知によって与えられる心身状態への影響を小さくすることができる。
【0070】
(B−6)第3パーソナル化部6cの構成(刺激付与方法のパーソナル化)
第3パーソナル化部6cは、第1パーソナル化部6aで抽出された心身情報から算出された運転者の心身状態MBに基づいて、刺激データベース5bに記憶された複数の刺激付与態様のうち一つ以上の刺激方法を選択し、刺激信号を発生させて刺激付与装置9に指示を出し、刺激を運転者へ付与するための制御部である。具体的には、第3パーソナル化部6cは、運転者の心身状態MBを目標状態にするべく、複数の刺激信号発生態様のうち運転者の心身状態MBの変化が最も反映される刺激信号発生態様を選択するようになっている。
【0071】
つまり、例えば、緊張度やイライラが高まり(ストレス状態となり)フラクタル指数が低下したら、1/f性を回復させるモーツアルトの楽曲や自然音を流すという刺激を付与するための刺激信号発生態様(リラックス音楽モード)が選択される。逆に、運転者が過剰にリラックスし、運転に必要な緊張度さえ欠いたら、テンポのよい歌謡曲が選択されて、運転者が健やかな心身状態を保持できるような刺激信号発生様態(緊張音楽モード)が選択されるようになっている。また、例えば運転者の心身状態MBと目標状態との差異が大きいほど(すなわち、心身状態の調整量が大きいほど)、音楽のボリュームを大きくするような選択がなされるようになっている。
【0072】
[作用]
本発明の第1実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置は上述のように構成されて、以下に示すフローチャートに従って制御が実施される。
(解析フロー)
まず、制御装置7内において、運転者の心身情報を解析する解析フローが図3に示すように実施される。
【0073】
ステップA10では、データベース5aに記憶された、平常時における運転者の心身状態に関する基本的な情報(目標値F0)が読み出されて把握される。
次に、ステップA20では、移動体に運転者が搭乗した時点から(つまり、実際の走行時において)、各情報センサ1Aa,1Ab,1Acにより、運転者の心身情報が3種類検出される。
【0074】
ステップA30では、各情報センサ1Aa,1Ab,1Acで検出された各心身情報が、解析部3aにおいて各種解析手法を用いて解析され、解析値F1がそれぞれ算出される

ステップA40では、第1パーソナル化部6aにおいて、ステップA30で解析して得られた運転者の各解析値F1と、ステップA10で把握された各目標値F0とが比較される。そして、各心身情報から得られた数値(F1,F0)の組み合わせを対比して、それらのうち最も反応性(応答性)が高いと推定される心身情報を抽出する。つまり、最適心身情報が選択される。なお、ステップA40では、運転者の心身状態の変化を鋭敏に反映して変化するこの最適心身情報を選択したら、そのような最適心身情報を重要な心身情報(運転者の心身状態を把握するのに適した情報)としてデータベース5aに記憶して、次回以降の制御において、その最適心身情報のみを計測,解析するようにしてもよい。これにより、制御装置7での解析負担を軽減することができる。もちろん重要でないと判定された心身情報も、状況の変化に伴って無視できなくなる可能性があるので、定期的にそのチェックをする必要がある。
【0075】
ステップA50では、判定部3cにおいて、ステップA40で選択された最適心身情報の解析値F1と、データベースに記憶された基準値(目標値)F0とが比較されて、図2に示すように、この最適情報の解析値F1の目標値F0からの乖離の程度により、心身状態が判定される。例えば、運転者の解析値F1がF0±αの範囲内にあれば、運転に適正な心身状態にある判定する。そして、適正であると判定された場合にはステップA60に進み、そうでなければステップA70に進む。
ステップA60では、現在の運転者の心身状態が運転に適正であることが、報知装置8により運転者に対して報知されることになる。一方、ステップA70では、次に説明する表示フローが実施される。
【0076】
(表示フロー)
制御装置7で把握された心身状態を運転者へ報知する表示フローは、図4に示すように実施される。
【0077】
ステップB10では、第2パーソナル化部6bにおいて、データベース5aから複数の報知方法が読み込まれる。つまり、運転者の心身状態に応じて適正に報知できるように、ソフトな(穏やかな)表示方法やハードな(心理的に強く訴えるような)表示方法等が読み込まれる。
ステップB20では、先の解析フローのステップA30で解析された解析値F1が読み込まれる。
【0078】
ステップB30では、ステップB20で読み込まれた解析値F1に基づき、運転者の心身状態に基づいてステップB10で読み込んだ複数の報知様態の中から一つが選択されて、報知装置8に対して指示がなされる。例えば、運転者の心身状態レベルMBが低く、ストレスを感じていると推定される場合には、穏やかな色調で表示がなされるとともに、優しい音声で報知される。
【0079】
ステップB40では、ステップB30でなされた指示に基づき、報知装置8において心身状態が運転者へ報知される。
続いて、ステップB50の刺激フローへと進む。
【0080】
(刺激フロー)
制御装置7で把握された心身状態を調整するための刺激を運転者へ付与する刺激フローは、図5に示すように実施される。
ステップC10では、第3パーソナル化部6cにおいて、刺激データベース5bから複数の刺激付与方法が読み込まれる。ここでは、音響装置による音声付与方法とともに、音声様態(音)が読み込まれる。
ステップC20では、先の解析フローのステップA30で選択された解析値F1が読み込まれる。
【0081】
ステップC30では、ステップC20で読み込まれた解析値F1に基づき、ステップC10で読み込んだ複数の刺激付与様態の中から一つが選択されて、刺激付与装置9に対して指示がなされる。つまりここでは、第3パーソナル化部6cで選択された刺激信号発生態様(例えば、リラックス音楽モードや緊張音楽モード等)に応じて生成された刺激信号(例えば、モーツアルトの楽曲や自然音,テンポのよい歌謡曲等)が刺激付与装置9へ伝達される。例えば、運転者の心身状態レベルMBが低い場合には、モーツアルトの楽曲や自然音を流すという刺激信号発生態様が選択される。また、心身状態レベルMBが高い場合には、テンポのよい歌謡曲が選択される。
【0082】
ステップC40では、ステップC30でなされた指示に基づき、刺激付与装置9によって運転者に対して刺激(音)が付与される。つまり、上記のような本装置による制御の効果として、運転者の心身状態レベルMBが0に近づくことになり、ストレス状態とリラックス状態との適度なバランスが保たれることになる。
【0083】
[効果]
本心身状態調整装置10によれば、以下のような効果を奏する。
まず、制御装置7には、第1パーソナル化部6a,第2パーソナル化部6b及び第3パーソナル化部6cの3つの最適化手段が設けられているため、運転者毎に最適化された制御を行うことができ、個々人で異なる健康状態やその維持,増進方法に合わせて心身状態を調整することができる。そして、運転者が安全に移動体を運転することの一助となることができる。
【0084】
また、第1パーソナル化部6aの働きにより、運転者の心身状態を把握するための心身情報を選択することができる。つまり、個々人によって異なる、健康状態の変化を反映する情報を複数種類の中から選択することができる。例えば、ストレスの増加によって脈波を変動させやすい人もいれば、ハンドルの捌き方(ハンドルを握る力の大きさや、ハンドルを回す速さ,加速度等)を荒くしてしまいがちな人もいる。そのため、個々人のストレスの度合いを正確に把握するためには、各個人毎に、ストレスに対する反応性,応答性の高い心身情報を用いることが好ましいことになる。このような各個人毎に異なる特性を考慮して、心身情報を選択することが可能となる。
【0085】
また、第1パーソナル化部6aにおいて、運転者の平常時における心身情報と生体情報センサ1Aで検出された心身情報とを比較するようになっているため、心身状態の変動に対する反応性,応答性が最も高い最適心身情報を選択することができる。
また、心身状態の変動に対する反応性,応答性が最も高い心身情報に基づく解析によって、運転者の心身状態を容易に解析することができるようになり、解析結果の信頼性を向上させることができる。
【0086】
また、運転者の心身状態を制御するための刺激付与態様を第3パーソナル化部6cにおいて選択することができる。つまり、個々人によって異なる心身状態に対する作用性,影響性の最も高い刺激付与態様を選択することによって、制御の信頼性を向上させることができ、運転者の心身状態を目標状態にすることが容易となる。
例えば、運転者の心身状態レベルMBが低い場合にはモーツアルトの楽曲や自然音が選択され、一方、心身状態レベルMBが高い場合にはテンポのよい歌謡曲が選択されるため、心身状態の制御効率を高めることが可能となる。
【0087】
また、第2パーソナル化手段6bを備えたことにより、運転者の心身状態への影響の少ない報知態様を選択することができる。例えば、運転者の感受性が強い場合には、解析結果の報知によって、運転者の心身状態が解析された心身状態から変化してしまうことがあるが、本構成によれば、運転者の心身状態を変化させない程度の穏やかな報知を行うことができ、結果として制御の信頼性を向上させることができる。
【0088】
また、心身情報を非線形解析手法により解析するので、刺激と心身情報との間の非線形関係を迅速且つ正確に解析することができ、運転者の心身状態を適切に調整することが可能となる。
また、ハンドルを握る握力等といった、運転者の体動や癖により心身状態を把握するので、運転者の意識的な応答,反応を排除することができ、運転者の心身状態をより正確に解析することができる。
【0089】
また、運転者の心身状態を検出するセンサ類は、移動体に取り付けられて運転者に直接装着されないので、非侵襲的に搭乗者から心身情報を検出することができる。つまり、心身情報を検出することによって生じうる心身情報自体の変化を抑制することができる。なお、当該センサ類は、運転者に違和感のない範囲において、その身体に装着されていてもよい。
【0090】
〔第2実施形態〕
[構成]
次に、第2実施形態について説明する。図6,図7は本発明の第2実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置を示すもので、図6は本装置の全体構成を示すブロック図、図7は本装置における心身状態の解析制御を示すフローチャートである。なお、第1実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付して説明を一部省略する。
【0091】
図6に示すように、第2実施形態に係る心身状態調整装置20は、第1実施形態の構成に加えて、新たに学習部(学習手段)11及び刺激変更装置12を備えており、第1実施形態に係る心身状態調整装置10とは運転者の心身状態の目標状態を設定する手法が異なっている。
刺激変更装置12は、制御装置7によって運転者へ付与される刺激をキャンセル(停止),作動及び変更するための装置であり、刺激付与ボタン12aと、刺激停止ボタン12bと刺激変更ボタン12cと、制御方向設定スイッチ12dとを備えて構成されている。運転者によるこれらの刺激付与ボタン12a,刺激停止ボタン12b,刺激変更ボタン12c及び制御方向設定スイッチ12dの操作信号は、制御装置7及び学習部11へ入力されるようになっている。
【0092】
刺激付与ボタン12aは、運転者へ刺激が付与されていない場合であって、運転者が刺激を欲している場合に操作されて、制御装置7に刺激を付与させるためのボタンである。つまり、刺激付与ボタン12aは、制御装置7における「刺激を付与しない」との判定結果を覆させるように機能する。刺激付与ボタン12aが操作されると、制御装置7は刺激付与装置9による刺激の付与を開始するようになっている。
【0093】
一方、刺激停止ボタン12bは、運転者へ刺激が付与されている場合であって、運転者が刺激を欲していない場合に操作されて、制御装置7に刺激の付与を終了させるためのボタンである。つまり、刺激停止ボタン12bは、制御装置7における「刺激を付与する」との判定結果を覆させるように機能する。刺激付与ボタン12aが操作されると、制御装置7は刺激付与装置9による刺激の付与を停止するようになっている。
【0094】
また、刺激変更ボタン12cは、制御装置7によって与えられる刺激を変更するためのボタンである。刺激変更ボタン12cが操作されると、制御装置7は刺激付与装置9による刺激付与態様を変更する。なお本実施形態では、揺らぎの傾きの目標値F0を変更することにより、刺激付与態様を変更するようになっている。
制御方向設定スイッチ12dは、刺激付与ボタン12a及び刺激変更ボタン12cの操作によって、運転者の意志で刺激付与態様を変更する場合に、運転者の意志としての制御方向(刺激の付与によって制御される心身状態の方向性)を入力するためのスイッチである。例えば、制御方向設定スイッチ12dがダイヤル式の回転スイッチとして備えられ、運転者の主観としてよりリラックスしたい場合には、リラックス側へ回転操作されるとともに、より緊張感を高めたい場合にはストレス側へ回転操作されるようになっている。
【0095】
一方、学習部11は、運転者に適した目標状態を学習する制御部であり、運転者への刺激の付与による心身状態の変化に応じて、揺らぎの傾きの目標値F0を補正(すなわち、学習)するようになっている。
具体的には、制御装置7が刺激を付与している状態で、刺激停止ボタン12bの操作信号が入力された場合、学習部11は搭乗者目標状態設定部3bにおいて設定されていた揺らぎの傾きの目標値F0と解析部3aで解析されていた運転者の心身状態の解析値F1とを読み取り、データベース5aに記憶されている目標値F0を解析値F1に近づけるように補正する。つまり、運転者によって刺激の付与がキャンセルされた時点で、その運転者の主観では心身状態が良好な状態であるとみなして、現在の解析値F1を目標状態の指標として学習する。
【0096】
また、制御装置7が刺激を付与している状態で、刺激変更ボタン12cの操作信号が入力された場合、学習部11は、制御方向設定スイッチ12dの操作量を読み取り、データベース5aに記憶されている目標値F0を運転者の意志としての制御方向へ変更する。
また同様に、制御装置7が刺激を付与していない状態で、刺激付与ボタン12aの操作信号が入力された場合、学習部11は、制御方向設定スイッチ12dの操作量を読み取り、データベース5aに記憶されている目標値F0を運転者の意志としての制御方向へ変更する。つまり、運転者によって刺激の変更または付与が要求された時点で、その運転者の主観では心身状態が良好な状態ではないとみなして、目標状態の指標を制御方向設定スイッチ12dで設定された制御方向側へ修正学習する。
【0097】
なお、運転者の刺激付与ボタン12aの操作によって刺激が与えられた後の運転者の心身状態の解析値を読みこみ、この運転者の積極的な刺激変更後の解析値に目標値F0を近づけるように補正してもよい。つまりこの場合、運転者の主観で刺激を変更された後の心身状態が、より運転者にとって良好な心身状態であるとみなして学習が行われることになる。
このように学習された目標状態は、新たな目標値F0として順次更新されてデータベース5aに記憶されるようになっている。
【0098】
[作用・効果]
本第2実施形態の制御装置7における制御内容を、図7に示すフローチャートにより説明する。
まず、ステップD10では、初期作業として、予め設定された典型的な運転者の心身状態の目標値(基準値)F0がデータベース5aから読み込まれる。
ステップD20では、移動体に運転者が搭乗した時点から(つまり、実際の走行時において)、各情報センサ1Aa,1Ab,1Acにより、運転者の心身情報が3種類検出される。
【0099】
ステップD30では、各情報センサ1Aa,1Ab,1Acで検出された各心身情報が、解析部3aにおいて各種解析手法を用いて解析され、解析値F1がそれぞれ算出される。
ステップD40では、第1パーソナル化部6aにおいて、ステップD30で解析して得られた運転者の各解析値F1と、ステップD10で把握された各目標値F0とが比較される。そして、各心身情報のうち最も反応性の高いと推定される情報が抽出される。つまり、最適心身情報が選択される。
【0100】
ステップD50では、判定部3cにおいて、ステップD40で選択された最適心身情報の解析値F1と、データベースに記憶された基準値(目標値)F0とが比較され、図2に示すように、この最適情報の解析値F1の目標値F0からの乖離の程度により、心身状態が判定される。例えば、運転者の解析値F1がF0±αの範囲にあれば、運転に適正な心身状態にあると判定される。そして、適正であると判定された場合にはステップD60に進み、そうでなければステップD100に進む。
【0101】
ステップD60では、第2パーソナル化部6bにより、現在の運転者の心身状態が運転に適正であることが、報知装置により運転者に対して報知される。この場合、制御装置7は、運転者の心身状態が適正であって刺激の付与が不要であると判断していることになる。
続くステップD70では、制御装置7において、運転者が刺激付与ボタン12aを操作したか否かが判定される。ここで、本来は運転者の心身状態が適正であると判定されたにも関わらず、運転者が刺激付与ボタン12aにより刺激付与装置9の作動を選択した場合には、運転者の主観では、現在の心身状態、つまり目標値F0が適正でないと判断されることになる。
【0102】
そこでステップD80では、制御方向設定スイッチ12dの回転操作量に基づき、目標値F0が運転者の意志としての制御方向へ変更され、修正学習される。つまりここで修正された目標値F0は、データベース5aへ記憶される。
続くステップD90では、第3パーソナル化部6cにおいて、ステップD40で解析された解析値F1と修正学習された目標値F0とに基づき、運転者へ刺激が付与される。
【0103】
一方、ステップD100では、第2パーソナル化部6bにより、現在の運転者の心身状態が運転に適正でないことが、報知装置8により運転者に対して報知される。この場合、制御装置7は、運転者の心身状態が適正ではなく刺激の付与が必要であると判断していることになる。そしてステップD110では、第3パーソナル化部6cにおいて、運転者の心身状態に応じて、刺激付与装置9により刺激が付与される。
【0104】
ステップD120では、制御装置7において、運転者が刺激停止ボタン12bまたは刺激変更ボタン12cを操作したか否かが判定される。ここで、本来は運転者の心身状態が不適正と判定されたにも関わらず、運転者が刺激停止ボタン12bにより刺激付与装置9の作動をキャンセルした場合には、運転者の主観では、現在の心身状態、つまり目標値F0が適正であると判断されることになる。また同様に、運転者が刺激変更ボタン12cによりその刺激を変更した場合には、その刺激により調整されるべき運転者の目標値F0が適していないと判断されることになる。
【0105】
そこでステップD130では、運転者が刺激停止ボタン12bを操作して刺激付与装置9の作動をキャンセルした場合には、目標値F0を現在の心身情報の解析値F1に近づくように補正する。また、運転者が刺激変更ボタン12cを操作して刺激付与装置9による刺激を変更した場合には、制御方向設定スイッチ12dの回転操作量に基づき、目標値F0が運転者の意志としての制御方向へ変更され、修正学習される。そして、その目標値F0がデータベースに記憶される。
【0106】
このように、本第2実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置20によれば、目標状態を学習することによって、より適切に搭乗者の心身状態を個々人に適した目標状態となるように調整することができる。また、学習過程においてデータベース5aに記憶されている目標状態を修正するため、例えば運転者が移動体を購入した際に行われる初期作業としての平常時の入力データが乏しい場合であっても、学習を繰り返すことで精度の高い目標状態を設定することができるようになる。
【0107】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態について説明する。図8〜図10は本発明の第3実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置を示すもので、図8は本装置の全体構成を示すブロック図、図9は移動体の健康状態を説明するための時系列グラフであって、(a)は1/f性のある揺らぎを有する移動体及び運転者の時系列グラフ、(b)は1/f性を失った揺らぎを有する移動体及び運転者の時系列グラフであり、図10は本装置における移動体の健康状態の判定内容を説明するための模式図である。なお、第1実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付して説明を一部省略する。
【0108】
[構成]
(A)全体構成
図8に示すように、第3実施形態に係る心身状態調整装置30は、移動体に取り付けられて種々の情報を検出するセンサ1と、搭乗者の心身状態や移動体の健康状態を制御するための制御装置7と、心身状態,健康状態を報知するための報知装置(報知手段)8と、搭乗者へ刺激を付与して心身状態を調整する刺激付与装置(刺激付与手段)9とを備えて構成される。
【0109】
センサ1は、生体情報センサ(心身情報検出手段)1A,移動体情報センサ(移動体情報検出手段,運転操作検出手段)1B及び環境情報センサ(環境情報検出手段)1Cとからなっている。
生体情報センサ1Aとは、第1実施形態に係る運転者の心身情報を検出するセンサであり、ここでは、運転者のバイタルサインを検出するセンサとして、脈拍センサ1Aa,圧力センサ1Ab及び心拍センサ1Acが例示されている。
【0110】
移動体情報センサ1Bとは、運転者による操作量や移動体に係る物理量(移動体情報)を検出するセンサである。ここでは、ハンドルの操作量(操舵角)を検出する舵角センサ1Baと移動体の走行速度を検出する移動体速度センサ1Bbとが例示されている。
なお、その他の移動体情報としては、操舵角速度,移動体間距離,移動体室内温度,移動体室内湿度等が考えられる。これらを検出するために、例えば、加速度を検出する加速度センサ,運転者のアクセル操作を検出するアクセルセンサ,運転者のブレーキ操作を検出するブレーキセンサ,燃費を検出する燃費センサ,タイヤの磨耗を検出するタイヤセンサ等を備えて、これらの中から適宜選択して用いるとよい。
【0111】
環境情報センサ1Cとは、搭乗者及び移動体の外部環境に係る物理量(環境情報)を検出するセンサである。ここでは、移動体室外の気温を検出する温度センサ1Caと、湿度を検出する湿度センサ1Cbとが例示されている。
なお、その他の環境情報としては、天候,時刻等が考えられ、これらを検出,測定するセンサやタイマを適宜設けてもよい。
これらの各種センサで検出された情報は、制御装置7へ入力されるようになっている。
【0112】
(B)構成の詳細
制御装置7は、健康状態判定部2と、搭乗者・移動体データベース5aと、刺激データベース5bと、第1パーソナル化部6a,第2パーソナル化部6b及び第3パーソナル化部6cとを備えて構成される。健康状態判定部2は、運転者の心身状態及び移動体の健康状態を判定する制御部である。
【0113】
健康状態判定部2は、搭乗者健康状態判定部3と移動体健康状態判定部4とを備えて構成される。搭乗者健康状態判定部3は、第1実施形態に記載の通り、運転者の心身の健康状態を判定する制御部である。また、移動体健康状態判定部4は、移動体の健康状態(走行状態や整備状態,移動体室内環境等)を判定する制御部である。
移動体健康状態判定部4は、移動体状態把握部(移動体状態把握手段)4aと移動体目標状態設定部4bとを備えて構成される。
【0114】
(B−1)移動体状態把握部4aの構成
移動体状態把握部4aは、様々な解析手法を用いて移動体情報センサ1Bにより得られた移動体情報を解析し、移動体の健康状態を把握するようになっている。
移動体の健康状態とは、移動体情報の1/f揺らぎ性のことをいう。移動体の1/f揺らぎは、心身情報の解析と同様に、公知の解析手法(非線形解析手法を含む)を用いて把握する。本実施形態では、第1実施形態における運転者の心身状態の揺らぎの傾きの大きさF1の算出と同様に、移動体の揺らぎの傾き(解析値)F3が算出されるようになっている。
【0115】
ここで、移動体の健康状態を把握することの意味について説明する。
例えば、全く信号や渋滞のない大自然の中のドライブ中に、運転者の心身情報と移動体の移動体情報とを測定して解析すると、図9(a)に示すように、運転者から検出された心身情報の時系列データと移動体から得られた移動体情報の時系列データとの双方が1/f揺らぎを示すとともに、両者が略同調した揺らぎを示す。つまり、運転者の心身状態が心身情報から解析されるのと同様に、移動体の健康状態は移動体情報から解析されるのである。
【0116】
なお、このような移動体と運転者との揺らぎの同調状態では、運転者が移動体との一体感を感じ、良好な心身状態が得られることが知られている。
ところが、都心の渋滞した道路においては、頻繁に走行と停止とが繰り返され、例えば移動体の走行速度を解析すると、図9(b)に示すように、1/f性の失われた時系列となる。このような状態では、運転者の心身状態も緊張状態となって1/f性が失われ、運転者はストレスを感じる。つまり、運転者の心身状態の緊張が運転操作,移動体挙動に反映されて、移動体情報の1/f揺らぎ性が低下してしまう。言わば、人が他者との関係において自由さを失いストレスを感じるように、移動体も周囲に他移動体が存在する状況においては、互いの距離を程良く保つべく本来の大らかさを失うのである。
【0117】
このように、移動体の健康状態とは、移動体単体が健全な状態にある(例えば、故障がない状態や性能が高い状態)かどうかを示すのでなく、運転者との関係性のバロメータとしての意味を持っている。したがって、移動体の健康状態を改善することが、延いては運転者の心身状態を良好なものとすることに繋がる。
ここで、心身情報の時系列データと移動体情報の時系列データとが同調するとは、両者が厳密に同じ形状を示すことを意味するのではなく、両者が時間的に相似な関係にあればよい。例えば、渋滞した道路上でブレーキを踏むタイミングの時系列データのフラクタル指数と、ドライバの心拍変化のフラクタル指数とが近い値を示していれば、両者は同調していると見なすことができる。しかも、その値が運転にとって適正な領域の値であれば、運転者と移動体とが一体となっており、かつ渋滞中といえども両者が非常に健全な状態に保たれているということができる。
【0118】
(B−2)移動体目標状態設定部4bの構成
上記のような考察に基づき、移動体目標状態設定部4bは、移動体状態把握部4aで把握された移動体の健康状態が1/f揺らぎ状態となるように目標状態F2を設定する。本実施形態では、揺らぎの傾きの目標値F2がF2=1に設定される。ここで設定される目標値F2は、移動体の好ましい目標状態として、データベース5aに予め設定されている。
【0119】
なお、移動体の走行環境によっては、移動体の健康状態が適度に緊張状態を維持していることが好ましい場合もある。そこで、環境条件に応じて移動体の揺らぎの傾きの値を目標状態として設定してもよい。この場合、環境情報センサ1Cで検出された環境情報に応じて揺らぎの傾きの目標値F2の値を設定する。例えば、渋滞時や混雑道路の走行時,狭い道路の通行時,雨天下等では、移動体の緊張度を増加させるべく、目標値F2を1よりも小さく設定することが考えられる。
【0120】
(B−3)判定部3cの構成
判定部3cは、第1実施形態と同様に、運転者の揺らぎの目標値F0と解析値F1とを比較することによって運転者の心身状態MBを判定するとともに、移動体の揺らぎの目標値F2と解析値F3とを比較することによって移動体の健康状態CHを判定する。例えばここでは、図10に示すように、移動体の健康状態CHを7段階(レベル−3〜+3)に分類して判定を行う。
【0121】
(B−4)第1パーソナル化部6aの構成(センサ選択のパーソナル化)
第1パーソナル化部6aは、第1実施形態と同様に、生体情報センサ1Aから入力される心身情報のうち、運転者の心身状態の変化が最も反映されている情報(最適心身情報)を抽出して、心身状態を個人に応じて的確に把握する。具体的には、脈波,握力及び心拍のうち、運転者のストレスの状態が鋭敏に反映されている情報がどれであるかを推定して、個々人に合わせて選択(パーソナル化)するようになっている。
【0122】
また、第1パーソナル化部6aは、移動体情報センサ1Bから入力される移動体情報のうち、移動体の健康状態の変化が最も反映されている情報(最適移動体情報)を抽出する。
本実施形態では、平常時(移動体の停止時あるいは平穏な走行時)における運転者の各心身情報及び移動体情報の揺らぎの傾き(すなわち、各運転者毎に異なる個々人の個性,特性と、各移動体毎に異なる移動体特性等)が予めデータベース5aに記憶されている。これが、運転者の心身状態,移動体の健康状態の基準値となる。
【0123】
そして、第1パーソナル化部6aはまず、平常時の運転者の心身情報の揺らぎの傾きと解析部3aで解析された各心身情報の揺らぎの傾きとを比較して、各心身情報のうち平常時からの変動が最も大きい心身情報を選択する。
次に、第1パーソナル化部6aは、平常時の移動体情報の健康状態の揺らぎの傾きと移動体状態把握部4aで算出された各移動体情報の揺らぎの傾きとを比較して、各移動体情報のうち平常時からの変動が最も大きい移動体情報を選択する。
つまりここでは、検出された情報のうち反応性の高いと推定される心身情報及び移動体情報のみが抽出されるようになっている。
【0124】
(B−5)第3パーソナル化部6cの構成
第3パーソナル化部6cは、第1パーソナル化部6aで抽出された運転者の心身状態MB及び移動体の健康状態CHに基づいて、刺激付与装置9に指示を出して、刺激を運転者へ付与する制御部である。具体的には、第3パーソナル化部6cは、運転者の心身状態MB及び移動体の健康状態CHを目標状態にするべく、複数の刺激付与態様のうち運転者の心身状態MBの変化が最も反映される刺激付与態様を選択するようになっている。
【0125】
例えば、運転者の心身状態MBレベルと移動体の健康状態CHレベルとの平均値が0よりも小さい場合(例えば、運転者の心身状態MBレベルが1,移動体の健康状態CHレベルが−3の場合)には、運転者及び移動体のストレス状態を解消すべく、音楽を流すとともに緊張を解すような芳香剤の香りを漂わせるという刺激付与態様を選択する。逆に、運転者の心身状態MBレベルと移動体の健康状態CHレベルとの平均値が0よりも大きい場合には、アップテンポの音楽を流すとともに気力を高めるような芳香剤の香りを供給するという刺激付与態様を選択する。
【0126】
[作用]
本発明の第3実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置は上述のように構成されているので、以下のように作用する。
まず、生体情報センサ1Aにおいて、3種類の運転者の心身情報(脈拍,握力及び心拍)が検出され、制御装置7へ入力される。また、移動体情報センサ1B及び環境情報センサ1Cにおいて、移動体情報及び環境情報が検出され、制御装置7へ入力される。
【0127】
入力された各心身情報は、解析部3aにおいてフラクタル解析により解析されて、解析値(揺らぎの傾き)F1がそれぞれの心身情報に対して算出される。また、移動体情報は、移動体状態把握部4aにおいてフラクタル解析により解析され、解析値(揺らぎの傾き)F3がそれぞれの移動体情報に対して算出される。
続いて、第1パーソナル化部6aにおいて、データベース5aに記憶された各心身情報の平常時の揺らぎの傾きと算出された解析値F1との比較により、各心身情報のうち平常時からの変動が最も大きい(すなわち、反応性の高い)心身情報が選択される。同様に、各移動体情報の平常時の揺らぎの傾きと算出された解析値F3との比較により、各移動体情報のうち平常時からの変動の最も大きい移動体情報が選択される。
【0128】
また、搭乗者目標状態設定部3bでは、運転者の心身状態の目標状態として、揺らぎの傾きの目標値F0がF0=1に設定され、同様に移動体目標状態設定部4bにおいて、目標値F2がF2=1に設定される。
続いて判定部3cにおいて、運転者の心身状態MBが判定されるとともに、移動体の健康状態CHが判定されるとともに、第3パーソナル化部6cにおいて、運転者の心身状態MB及び移動体の健康状態CHを目標状態にするべく、刺激付与態様が選択される。その結果、刺激付与装置9によって運転者へ刺激が与えられて、運転者の心身状態MB及び移動体の健康状態CHがともに目標状態へ近づく。つまり、運転者の心身状態の揺らぎの1/f性が回復されるとともに、移動体の健康状態の揺らぎの1/f性も回復されることになる。
【0129】
[効果]
このように、本第3実施形態の心身状態調整装置によれば、より非侵襲的に搭乗者の心身情報を解析することができる。例えば、搭乗者によるハンドル操作量やアクセル操作量等の運転操作量の情報を心身情報とみなし、その特性を解析することによって求められる操作の丁寧さや粗雑さに基づいて、搭乗者の心身状態を把握することができる。
【0130】
また、移動体の健康状態に合わせて搭乗員の心身状態を調整することができ、より快適な移動体内環境を提供することができる。例えば、移動体のタイヤ空気圧やブレーキパッドの摩擦係数等を移動体情報として検出し、空気圧の適正度やブレーキの効き具合等の移動体の健康状態を解析すれば、空気圧が適正範囲内においてやや低い場合やブレーキパッドのやや摩耗してきた場合に、搭乗者の心身状態を通常時よりもリラックスさせることによって移動体の走行速度を上昇させ過ぎないように制御して、移動体の健康状態と搭乗者の心身状態との良好な協調関係を形成,維持することができる。
【0131】
例えば、降雨下での運転時には、晴天下での運転時よりもやや緊張するように心身状態の目標を設定することによって、運転環境に適した制御となる。また、個々人の年齢や性別,運転の熟練度等に応じて目標状態を設定すれば、個々人にとって快適な運転環境を提供することができる。
【0132】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
<変形例1>
例えば、上記の第1実施形態では、搭乗者目標状態設定部3bにおいて、運転者の心身状態の目標値としての揺らぎの傾きF0が設定されるようになっているが、このような設定手法を、センシング対象と心身状態との間の相関関係を用いる手法に代替してもよい。
【0133】
つまり、予め心身情報のあらゆるシグナルを解析して得られる定量的な指標(運転者の心拍数,ハンドルにかかる圧力の時系列データの平均値・標準偏差・フラクタル指数、リャプノフ指数、等)と、運転者の心身状態(眠気、イライラ度、危険予知能力、等)との間の相関関係を関数あるいはマップの形で算出しておく手法を用いる。
このような相関関係は運転者個々人に依存しているため、例えば運転者が走行中に主観的に感じる心身状態を記録し、これと定量的な指標との相関関係を確立しておく。
【0134】
相関関係は、心身状態と定量的な指標とが1対1に対応する場合は、1次の回帰分析による数学的な記述をすることができる。一方、両者が複数ある場合は、多変量統計解析やニューラルネットワークによる学習を行って、どの定量的指標の組み合わせが最も良く心身状態を反映しているかを判定することになる。
次に、このようにして確立された相関関係に基づいて、運転者に与える心身状態の表示方法や刺激方法が心身状態に及ぼす影響を把握する。
【0135】
すなわち、予め様々な表示や刺激下での運転者の各種生体信号を測定し、心身状態がどのように変化するかを調べる。向上した場合は、その表示方法や刺激方法が運転者に適していると考え、反対に悪化した場合は適していないものとして、それぞれデータベース5aに保存しておく。データベース5aには、運転者個人の好み(嗜好性)も、アンケートをとる等して、予め入力しておく。そして、このデータベース5aに記憶された情報に基づいて、運転者への報知方法や刺激付与方法を決定する。
【0136】
なお、これら相関関係に関するデータベースは、定期的に見直しを行うことが好ましい。
このような相関関係をデータベース5aに記憶しておけば、運転者の心身状態の解析に係る基準値を、個々人毎に最適化することができる。
【0137】
<変形例2>
また、上記の第1〜第3実施形態では、生体情報センサ1Aとして脈波センサ1Aaや圧力センサ1Abや心拍センサ1Acを用いて、脈波,握力,心拍を検出したが、他に、体温,呼吸,皮膚電位,体動等を検出して、これらの中から適宜選択して用いるべく、図11に示すように、移動体の適宜の場所に、温度センサ(赤外線センサ)1Ad,呼吸センサ1Ae,皮膚電位センサ1Af,体動センサ1Ag,重量センサ1Ah,カメラ1Ai等を備え、これらの中から適宜選択して用いてもよい。例えば、温度センサ1Adをハンドルのクラクション部分に取り付けて運転者の体温を検出してもよいし、または、シートの座位部に体動センサ1Agや重量センサ1Ahを埋め込んで、運転者の貧乏ゆすりやシートに対する座り具合(後ろまで深く座っているか、前の方のみで軽く座っているか)といった運転者の動き(癖)を検出してもよいし、さらには、カメラ1Aiをバックミラー近傍に備えて、運転者の瞬きの間隔といった運転者の動き(癖)を検出してもよい。
【0138】
また、運転者の運動パターンを検出するために、タッチセンサ1Ajを用いてもよい。つまり、バックミラー,サイドミラー調整用スイッチ,窓開閉スイッチ,シート調整スイッチ等にタッチセンサ1Ajを取り付けて、移動体搭乗時にそれらタッチセンサ1Ajに接触する順序をモニタリングして、平常時の運動パターンと異なるか否かで心身状態を判定してもよい。ここで、運動パターンとは、運転者の行動の順序を意味している。そして、通常、行動順序は定型化されるものであって、平常時であればその決まった型をとると考えられる。このような思想の下、定型化された運動パターンとは異なる運動パターンでなされた場合には、運転者は平常時ではないとして、定型化された運動パターンとの差異に応じて、心身状態を判定する。
なお、図11に図示し説明したセンサやその設置場所は一例であって、これに限定されない。
【0139】
本変形例2の具体的な実施例を以下に詳述する。
自動車の運転者の心身状態を把握するため、運転席の背もたれにシート型センサ(株式会社ジェピコ製)を設置し、バイタルサインとして、心拍,呼吸,体動の各信号を同時測定した。心身状態の検出及び解析は、以下の手順で行った。
【0140】
1.サンプリング周波数100Hzにて生体情報(上記のバイタルサイン)を検出する。
2.検出された生体情報の時系列データにローパスフィルタをかけ、15Hz以上の成分をカットする。
3.フィルタを通した信号について、ウェーブレット変換を施す。
4.こうして得られたウェーブレット係数についてヒルベルト変換を施す。
5.ヒルベルト変換後の信号の絶対値xに下記の非線形解析を施して、三つの情報量(P,F,FS)を得る。
【0141】
(1)データのヒストグラムを作成し、スケーリングされたガンマ分布曲線をあてはめる。その際のピーク位置Pを求める。なお、ガンマ分布は以下の式4,式5で表される。ここで、b,νはパラメータである。
【数3】

(2)データ(絶対値x)についてDFAによるフラクタル解析を施し、揺らぎの大きさF及び揺らぎの傾き(フラクタル指数)FSを求める。
【0142】
図13(a)〜(d)に、停車中の体動信号についての解析結果を示す。ここで、被験者となる運転者は40歳台の男性(運転歴22年)であり、運転者の揺らぎの傾きの目標値F0をF0=1と設定した。また、解析に用いたウェーブレット変換は、スケール=6の3次Daubechiesである。また、揺らぎの大きさFとしては、DFAにおけるウィンドウサイズ=4での揺らぎの大きさの常用対数を採用し、揺らぎの傾きFSとしては、DFAプロットの局所的な傾きの最小値を採用した。
【0143】
図13における四つのグラフは、典型的な心身状態に対応する時間領域をつなぎ合わせてプロットしたものである。図13(a)は被験者の体動信号の時間変化、図13(b)はピーク位置Pの時間変化、図13(c)は揺らぎの大きさFの時間変化、図13(d)は揺らぎの傾きFSの時間変化を表している。
【0144】
これらの図中におけるピーク位置P,揺らぎの大きさF及び揺らぎの傾きFSは、2秒ごとに12秒間の体動信号を解析して求めたものである。また、時間領域1〜5はそれぞれ、1:イライラして貧乏ゆすりをしている状態,2:過度に緊張した静寂状態,3:運転者の心身状態を目標値に近づけるために、刺激として運転者の好みの楽曲(ポップス)を流している状態,4:楽曲を停止した状態,5:3とは異なる好みの楽曲(ポップス)を流している状態、に相当する。
【0145】
これらの図13(a)〜(d)に示すように、イライラや緊張静寂状態では、揺らぎの傾きFSが0.5以下の小さい値をとる傾向があるのに対し、好みの楽曲が流れている場合には揺らぎの傾きFSが目標値1に近づいていることがわかる。このように、運転者に合った刺激付与により、適正な心身状態への調整が達成されている。
【0146】
また、上記の解析によって得られたピーク位置P,揺らぎの大きさF及び揺らぎの傾きFSの関係を3次元空間内にプロットした結果を図14に示す。この図からは、イライラ状態,緊張静寂状態及び健全状態のそれぞれの心身状態に対応する領域が、プロットされた3次元空間内で明瞭に区別することができることがわかる。このような心身状態の判別は、運転者の心拍や呼吸の信号からは困難であったので、体動信号がこの運転者にとって最もふさわしい(パーソナル化された)心身情報とみなすことができる。
【0147】
さらに本実施例では、心身状態を把握する指標として、フラクタル指数FSの他に、ガンマ分布のピーク位置Pを用いることもできる。この場合、目標値はp〜0.5である。図13(b)から明らかなように、不適正な心身状態(時間領域1,2,4)ではピーク位置PがP>1.0であるのに対して、健やかな心身状態(時間領域3,5)ではピーク位置Pが目標値に近づいている。
【0148】
<変形例3>
さらに、上記の第1〜第3実施形態において、刺激付与装置9は、刺激として音を与えることに限らず、映像や内装の色やウィンドウの透過度(遮光性)や香りや振動や温度や湿度や移動体の操作方法の指示音声等を与えてもよい。詳述すると、例えば、図12に示すように、エアコンの送風口内部に香発生装置9′を配設するとともに、多種の芳香剤を刺激様態として備えて、心身状態にあったものを放香してもよい。または、シートに振動装置9″を埋設して、運転者の心身状態に応じて振動を与えてもよい。
【0149】
そして、このような刺激付与装置9,9′,9″のうち少なくとも一つを選択して、運転者に刺激を与えるようにしてもよい。これによれば、健康状態を変化させるための刺激の種類や刺激の与え方を複数種類の中から選択することができる。例えば、音楽を聴くことによってストレスが解消されやすい人もいれば、芳香剤の香りによってストレスが解消されやすい人もいる。そのため、個々人の心身状態を目標状態へ制御する上で制御効率を高めるためには、各個人毎に、心身状態に対する作用性,影響性の高い刺激付与態様を用いることが好ましいことになる。このような各個人毎に異なる特性を考慮して、刺激付与態様を選択することが可能となる。さらに、異種の刺激様態(例えば、音と香り)を組み合わせることによって、効果的に運転者の心身状態に作用させることが可能となる。
なお、本装置によって搭乗者へ与えられる刺激は、必ずしも運転者自身が明確に認識しうる強度である必要はない。
【0150】
<変形例4>
また、上記の第1〜第3実施形態において、報知装置8として、ベルやランプを備えて、ベルによる鳴動や、ランプによる点滅等の報知様態で運転者の心身状態を報知してもよい。例えば、運転者が適正な心身状態にあるときはベルによる鳴動やランプによる点滅は行われず、心身状態がストレス状態にあるときは、ストレス度が強くなるに従い、大きな音で鳴動したり、短い間隔で点滅したりするとよい。
【0151】
<変形例5>
さらに、第1実施形態の目標状態の設定方法に第2実施形態の目標状態の設定方法を組み合わせてもよい。
つまり、第2実施形態において、予め設定される目標状態として、典型的な目標値を用いるのではなく、第1実施形態のように個々人で検出された心身情報に応じて算出された目標状態を用い、この目標状態を学習補正してもよい。これによれば、典型的な目標状態を制御目標として設定すれば、演算負荷を軽減することができることに比べて演算負荷は増大するが、運転者のあるべき心身状態をより適正に設定することができる。
【0152】
なお、上述の第1〜第3実施形態では、本装置の制御対象として、移動体の搭乗者のうち、運転者の心身状態を制御する場合について詳述したが、移動体の同乗者や同乗するペットの心身状態を制御する構成としてもよい。
また、本発明では、搭乗者毎に各種手段の最適化(パーソナル化)を行うことに特徴があるので、搭乗者が複数の場合や別の者が運転する場合には、最適化に関わる者を認証する認証手段を設けておくことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の第1実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置における心身状態の判定内容を説明するための模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置における心身状態の解析制御を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置における心身状態の報知制御を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置における心身状態の刺激付与制御を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置の全体構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置における心身状態の解析制御を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第3実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置の全体構成を示すブロック図である。
【図9】移動体の健康状態を説明するための時系列グラフであって、(a)は1/f性のある揺らぎを有する移動体及び運転者の時系列グラフ、(b)は1/f性を失った揺らぎを有する移動体及び運転者の時系列グラフである。
【図10】本発明の第3実施形態に係る移動体搭乗者の心身状態調整装置における移動体の健康状態の判定内容を説明するための模式図である。
【図11】本発明の変形例としての移動体搭乗者の心身状態調整装置を説明するための斜視図である。
【図12】本発明の変形例としての移動体搭乗者の心身状態調整装置を説明するための斜視図である。
【図13】本発明の変形例2における具体的解析結果をプロットした図であり、(a)は被験者の体動信号の時間変化、(b)は該体動信号に所定の非線形解析を施した後に得られたピーク位置の時間変化、(c)は該体動信号の揺らぎの大きさの時間変化、(d)は該体動信号の揺らぎの傾きの時間変化を表している。
【図14】本発明の変形例2における具体的解析結果の数値を3次元空間内にプロットした図である。
【符号の説明】
【0154】
1 センサ
1A 生体情報センサ(心身情報検出手段)
1B 移動体情報センサ(移動体情報検出手段,運転操作検出手段)
1C 環境情報センサ(環境情報検出手段)
2 健康状態判定部
3 搭乗者健康状態判定部
3a 解析部(心身情報解析手段の一つ)
3b 搭乗者目標状態設定部(目標状態設定手段)
3c 判定部(刺激信号発生手段,心身情報解析手段の一つ)
4 移動体健康状態判定部
4a 移動体状態把握部(移動体状態把握手段)
4b 移動体目標状態設定部
5a 搭乗者・移動体データベース
5b 刺激データベース
6a 第1パーソナル化部(最適化手段の一つ)
6b 第2パーソナル化部(最適化手段の一つ)
6c 第3パーソナル化部(最適化手段の一つ)
7 制御装置
8 報知装置(報知手段)
9,9′,9″ 刺激付与装置
10,20,30 心身状態調整装置
11 学習部(学習手段)
12 刺激変更装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭乗する搭乗者の心身情報を検出する心身情報検出手段と、
該心身情報検出手段で検出された該心身情報を解析して該搭乗者の心身状態を把握する心身情報解析手段と、
該搭乗者の該心身状態の目標状態を設定する目標状態設定手段と、
該心身情報解析手段で把握された該心身情報と該目標状態設定手段で設定された該目標状態とに基づいて、該搭乗者の該心身状態を該目標状態に調整するための刺激信号を発生させる刺激信号発生手段と、
該心身情報解析手段,該目標状態設定手段及び該刺激信号発生手段における各機能のうちの少なくとも一つを該搭乗者毎に最適化する最適化手段と
を備えたことを特徴とする、移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項2】
該心身情報検出手段が、該搭乗者から得られる複数の該心身情報を検出するとともに、
該最適化手段が、該搭乗者に応じて該複数の該心身情報のうちの少なくとも一つを選択する
ことを特徴とする、請求項1記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項3】
該最適化手段が、該複数の該心身情報のうち該搭乗者の心身状態の変化が最も反映されている最適化心身情報を抽出し、
該心身情報解析手段が、該最適化手段によって抽出された該最適化心身情報に基づいて該搭乗者の該心身状態を解析する
ことを特徴とする、請求項2記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項4】
該刺激信号発生手段が、該搭乗者の該心身状態を該目標状態に調整するための複数の刺激信号発生態様を有するとともに、
該最適化手段が、該搭乗者に応じて該複数の刺激信号のうちの少なくとも一つを選択する
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項5】
該最適化手段が、該複数の刺激信号発生態様のうち該搭乗者の心身状態に最も反映される刺激信号発生態様を選択する
ことを特徴とする、請求項4記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項6】
該心身情報解析手段において解析された該心身状態を該搭乗者へ報知するための複数の報知態様を有する報知手段を備えるとともに、
該最適化手段が、該搭乗者に応じて該複数の報知態様のうちの少なくとも一つを選択する
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項7】
予め搭乗者に適した複数の該目標状態を記憶する記憶手段を備え、
該目標状態設定手段が、該記憶手段に記憶された該複数の該目標状態のうちの少なくとも一つを選択する
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項8】
該搭乗者に適した該目標状態を学習する学習手段を備えた
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項9】
該心身情報解析手段が、非線形解析手法を用いて該心身状態を解析する
ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項10】
該心身情報解析手段が、少なくとも該搭乗者の運動パターン及び癖のうちの何れか一つを該搭乗者の心身状態として解析する
ことを特徴とする、請求項1〜9の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項11】
該心身情報検出手段が、該搭乗者のバイタルサインを該心身情報として検出する
ことを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項12】
該搭乗者による該移動体の運転操作を検出する運転操作検出手段を備え、
該心身情報検出手段が、該運転操作検出手段で検出された該運転操作に基づいて該搭乗者の心身状態を把握する
ことを特徴とする、請求項1〜11の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項13】
該移動体の運動状態に相関する物理量を検出する移動体情報検出手段と、
該移動体情報検出手段で検出された該物理量に基づいて該移動体の健康状態を解析する移動体情報解析手段とを備え、
該刺激信号発生手段が、該移動体情報解析手段で解析された該移動体の該健康状態に基づいて該刺激信号を発生させる
ことを特徴とする、請求項1〜12の何れか1項に記載の移動体搭乗者の心身状態調整装置。
【請求項14】
移動体に搭乗する搭乗者の心身情報を検出する第1ステップと、
該心身情報を解析して該搭乗者の心身状態を把握する第2ステップと、
該搭乗者の該心身状態の目標状態を設定する第3ステップと、
該心身状態及び該目標状態に応じて、該移動体の室内環境を調整する第4ステップと、
該第2,第3及び第4ステップのうちの少なくとも一つのステップの制御内容を該搭乗者毎に最適化する第5ステップと
を備えたことを特徴とする、心身状態調整装置の制御方法。
【請求項15】
該第1ステップにおいて、該搭乗者から得られる複数の該心身情報を検出し、
該第5ステップにおいて、該搭乗者に応じて該複数の該心身情報のうちの少なくとも一つを選択する
ことを特徴とする、請求項14記載の心身状態調整装置の制御方法。
【請求項16】
該第5ステップにおいて、該複数の該心身情報のうち該搭乗者の心身状態の変化が最も反映されている最適化心身情報を抽出し、
該第2ステップにおいて、該第5ステップで抽出された該最適化心身情報に基づいて該搭乗者の該心身状態を解析する
ことを特徴とする、請求項15記載の心身状態調整装置の制御方法。
【請求項17】
該第4ステップにおいて、該移動体の室内環境を調整する複数の環境調整態様を用意するとともに、
該第5ステップにおいて、該搭乗者に応じて該複数の環境調整態様のうちの少なくとも一つを選択する
ことを特徴とする、請求項14〜16の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法。
【請求項18】
該第5ステップにおいて、該複数の環境調整態様のうち該搭乗者の心身状態に最も反映される環境調整態様を選択する
ことを特徴とする、請求項17記載の心身状態調整装置の制御方法。
【請求項19】
該解析された該心身状態を該搭乗者へ報知するための複数の報知態様を用意する第6ステップを備え、
該第5ステップにおいて、該搭乗者に応じて該第6ステップで用意された該複数の報知態様のうちの少なくとも一つを選択する
ことを特徴とする、請求項14〜18の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法。
【請求項20】
搭乗者に適した複数の該目標状態を記憶する第7ステップを備え、
該第3ステップにおいて、複数の目標状態のうちの少なくとも一つを搭乗者に適した目標状態として選択する
ことを特徴とする、請求項14〜19の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法。
【請求項21】
該搭乗者に適した該目標状態を学習する第8ステップを備えた
ことを特徴とする、請求項14〜20の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法。
【請求項22】
該第2ステップにおいて、非線形解析手法を用いて該心身状態を解析する
ことを特徴とする、請求項14〜21の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法。
【請求項23】
該第2ステップにおいて、少なくとも該搭乗者の運動パターン及び癖のうちの何れか一つを該搭乗者の心身状態として解析する
ことを特徴とする、請求項14〜22の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法。
【請求項24】
該第1ステップにおいて、該搭乗者のバイタルサインを該心身情報として検出する
ことを特徴とする、請求項14〜23の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法。
【請求項25】
該搭乗者による該移動体の運転操作を検出する第9ステップを備え、
該第2ステップにおいて、該第9ステップで検出された該運転操作に基づいて該搭乗者の心身状態を把握する
ことを特徴とする、請求項14〜24の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法。
【請求項26】
該移動体の運動状態に相関する物理量を検出する第10ステップと、
該物理量に基づいて該移動体の健康状態を解析する第11ステップとを備え、
該第4ステップにおいて、該移動体の該健康状態に基づいて該移動体の室内環境を調整することを特徴とする、請求項14〜25の何れか1項に記載の心身状態調整装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−130454(P2007−130454A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277374(P2006−277374)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)