説明

移動体通信装置及び走行支援方法

【課題】自車の現在位置に基づいて、自車が後続車両から追突される可能性がある場合に、後続車両との事故を未然に防ぐため及び/又は自車の運転者を保護するために所定の制御を行う移動体通信装置及び走行支援方法を提供すること。
【解決手段】移動体に備えられ、感知器が検出した感知エリアに関する情報を含む情報を受信する通信部と、前記移動体の現在位置及び移動速度を取得し、前記移動体の現在位置が前記感知エリアよりも前記移動体の進行方向手前側であって、前記移動体の移動速度が所定速度以下のときに、所定の制御を行う制御部と、を備えることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車が後続車両から追突される可能性があるときに、追突(衝突)事故の防止、及び/又は自車の運転者の保護を目的として所定の制御を行う移動体通信装置及び走行支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信技術を用いて人と道路と車両とを情報でネットワークすることにより、交通事故や渋滞などといった道路交通問題の解決を目的とした高度道路通信システム(Intelligent Transport Systems、以下「ITS」という。)が研究、開発されている。ITSの中でも特に安全運転支援システム(DSSS)を扱う分野における自動車向け無線通信の形態は路車間通信と車車間通信とに大別できる。車車間通信は車両(車載装置)同士が直接情報の通信を行うのに対し、路車間通信は路側機や光ビーコン等の道路上や道路脇に設置されている機器と車両(車載装置)とが情報の通信を行う。
【0003】
路車間通信により路側機や光ビーコン等の機器から車両に発信される情報には、提供サービスの内容を示す情報を含むシステム情報と、サービスに必要な情報が含まれるものと考えられる。例えば提供サービスとして、追突防止支援システムが含まれている場合には、車載装置が追突防止支援システムを行う(追突防止支援を運転者に提供する)ために必要な情報(例えば追突する可能性がある車両の現在位置や移動速度等を示す情報)が車載装置に提供される。
【0004】
図5は、追突防止支援システムの概念図である。図5において、車両Aは車両Bの方向に向かって進行(走行)しており、車両B〜車両Fは信号待ち(交差点Xの車両B〜車両Fに対する信号機Yの信号表示が赤信号であること)により停車しているものとする。また、車両Aが図5に示す位置に存在するときは、急カーブにより車両Aの運転者が車両Bを直接視認することができない。このような状況において、車両Aの運転者が車両Bを直接視認できる位置まで車両Aが移動したときには、車両Aと車両Bとの車間距離が短く、車両Aを停車しようとしても停車しきれずに車両Bに追突してしまうことが考えられる。
【0005】
そこで追突防止支援システムでは、例えば、カーブやクレスト(例えば坂道の頂上)によって、道路における制限速度に基づいて定められる停止視距(ドライバーが道路上の物体を認めてから停止するまでに必要な距離、詳細は後述)を確保できないエリア(死角エリア)に存在する車両の情報を提供することで、車両Aの運転者が死角エリア(感知エリアP)に存在する車両を視認することができない場合であっても、死角エリア(感知エリアP)に車両が存在することを車両Aの運転者に知らせ、減速を促す等の支援を行うことによって追突事故を防止することが考えられている。
【0006】
感知エリアに存在する車両の情報は感知器情報に含まれ、感知器情報(感知エリアの位置(範囲)を示す情報や、感知エリアに存在する車両の数、種別、速度等の情報を含む情報)は感知器から出力される。感知器から出力された感知器情報は、情報中継・判定装置と、路側機及び/又は光ビーコンとを介して車載装置に提供される。なお、交通信号制御機から出力される情報(交差点情報や信号機情報を含む情報)や、DSSS下位装置から出力される情報(道路線形情報や規制情報を含む情報)も、情報中継・判定装置と、路側機及び/又は光ビーコンとを介して車載装置に提供される。すなわち情報中継・判定装置は、情報源(DSSS下位装置、交通信号制御機、感知器)から出力された情報(受信した情報)を集約・編集して提供ダウンリンク情報(路側機や光ビーコンから車載装置に送信される情報)を路側機や光ビーコンに登録する。
【0007】
ところで上述した追突防止支援システムによれば、感知エリアで停車している車両の存在を自車の運転者に知らせることで、自車と感知エリアに存在する車両とが追突する事故を未然に防ぐことはできるが、渋滞が感知エリアだけに留まらず、感知エリア外であって、且つ自車側に続いているときには、感知器が当該感知エリア外の車両の存在を感知できないので、自車の運転者に感知エリア外に停車している車両(図6における車両H)が存在することを知らせることはできない。
【0008】
従って、車載装置が感知エリアに存在する車両のみに基づいて追突防止支援を行った場合に、運転者がその追突防止支援に従って運転すると、感知エリア外に存在する車両との間で追突事故が発生する恐れが高くなる。
【0009】
特許文献1には、緊急停止時に後方の車両に警告表示を行う車両走行状況表示装置が記載されている。これによれば車両(自車)が高速走行から低速走行に移り、緊急停止しつつある状況と認知され、前方の車両の警告表示が認知されると車両(自車)のハザードランプを点滅させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−200782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている車両走行状況表示装置は、自車の現在位置が何処であるかによらずに、緊急停止時に警告表示を行うものであり、過度な警告表示となってしまうおそれがある。また、警告表示を行うための条件として、前方の車両が警告表示を行っていることが必要となるので、前方に車両が存在していないときや、前方の車両が警告表示を行っていないときには、後続車両に追突されるおそれがあっても警告表示を行わないので追突防止支援としては不十分である。
【0012】
本発明は、上述した問題点に鑑み、自車の現在位置に基づいて、自車が後続車両から追突される可能性がある場合に、後続車両との事故を未然に防ぐため及び/又は自車の運転者を保護するために所定の制御を行う移動体通信装置及び走行支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の移動体通信装置は、移動体に備えられ、感知エリアに関する情報を含む情報を受信する通信部と、前記移動体の現在位置及び移動速度を取得し、前記移動体の現在位置が前記感知エリアよりも前記移動体の進行方向手前側であって、前記移動体の移動速度が所定速度以下のときに、所定の制御を行う制御部と、を備えることを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成の移動体通信装置において、前記感知エリアが渋滞しているときは前記所定の制御を行わないことが望ましい。
【0015】
上記目的を達成するために本発明の移動体通信装置は、移動体に備えられ、感知エリアに関する情報を含む情報を受信する通信部と、前記移動体の現在位置及び移動速度を取得し、前記移動体の現在位置が前記感知エリア内であって、前記移動体の移動速度が所定速度以下のときに、所定の制御を行う制御部と、を備えることを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の移動体通信装置において、前記所定の制御は、前記移動体の存在を後続車両に知らせる制御及び/又は前記移動体の乗員を保護する制御であることが望ましい。
【0017】
上記目的を達成するために本発明の走行支援方法は、感知エリアに関する情報を含む情報を取得するステップと、移動体の現在位置及び移動速度を取得するステップと、前記移動体の現在位置が前記感知エリアよりも前記移動体の進行方向手前側であるか否かを判定するステップと、前記移動体の移動速度が所定速度以下であるか否かを判定するステップと、前記移動体の現在位置が前記感知エリアよりも前記移動体の進行方向手前側であって、前記移動体の移動速度が所定速度以下のときに、所定の制御を行うステップと、を有することを特徴としている。
【0018】
上記目的を達成するために本発明の走行支援方法は、感知エリアに関する情報を含む情報を取得するステップと、移動体の現在位置及び移動速度を取得するステップと、前記移動体の現在位置が前記感知エリア内であるか否かを判定するステップと、前記移動体の移動速度が所定速度以下であるか否かを判定するステップと、前記移動体の現在位置が前記感知エリア内であって、前記移動体の移動速度が所定速度以下のときに、所定の制御を行うステップと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、後続車両に追突される可能性があるときに、所定の制御を行うことで追突事故を防止したり、自車の運転者を保護したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】は、本発明のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】は、本発明のナビゲーション装置の制御部が実行する処理の流れを示す第1のフローチャートである。
【図3】は、本発明のナビゲーション装置の制御部が実行する処理の流れを示す第2のフローチャートである。
【図4】は、本発明のナビゲーション装置の制御部が実行する処理の流れを示す第3のフローチャートである。
【図5】は、追突防止支援システムの概念図である。
【図6】は、視距ラインと感知エリアとの関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について説明するにあたって、まず、感知器情報について図6を参照して説明する。感知器情報とは上述したように感知器から出力される情報であり、感知エリアの範囲を示す情報(感知エリアに関する情報)、感知エリアに存在する車両に関する情報などが含まれる。感知エリアの範囲は設計速度(制限速度を基準に算出される)に基づいて定められる停止視距に基づいて定められる。停止視距は、道路構造令第119条に規定されており、例えば設計速度40kmにおける停止視距は40mと定められている。
【0022】
感知エリアの範囲について具体的に説明すると、本実施形態において感知エリアの始点は、車線の中央線(図6に示す車線の中央を示すライン)上の地点であって、中央線上の1の地点から直線距離で40m(停止視距)先にある同一中央線上の他の地点との間に障害物(曲がり角など)があって、停止視距を確保できなくなった場合における当該他の地点である。また、感知エリアの終点は、感知エリアの始点以後の地点であって、停止視距を確保できるようになった地点である。従って、感知エリアの範囲は、道路形状や対象道路の制限速度に応じて異なることになる。なお、感知エリアは、上述の範囲に限らなくてもよい。
【0023】
感知エリアの始点/終点を示す情報(感知エリアに関する情報)は、光ビーコンの位置座標(光ビーコンからの情報受信時の現在位置でもよい)及び光ビーコンの位置座標からの道程距離(対象地点までの距離で、道路の道なりに沿って計測される距離)、交差点の位置座標及び交差点の位置座標からの道程距離、緯度・経度(感知エリアの始点/終点自体の位置座標)などで示される。すなわち、図6において、車両Gから車両Hに対しては視距ラインL1上に障害物が存在せず停止視距が確保されているのに対して、車両Aから車両Bに対しては視距ラインL2上に障害物が存在しており停止視距が確保されていない。従って、車両Bは感知器によってその存在が検出されるが、車両Hは感知器によってその存在が検出されない。
【0024】
なお、設計速度は道路のおける制限速度としてもよいが、制限速度以上で走っていることを想定し、例えば制限速度+10km/hを設計速度としてもよいし、道路形状に応じて定めることとしてもよい(例えば自車の現在位置が急カーブであれば制限速度よりも遅い速度で走行していると想定されるので制限速度−10km/hを設計速度とする)。
【0025】
次に、感知エリアに存在する車両に関する情報について説明する。感知エリアに存在する車両の情報としては、感知エリアに存在する車両の種別(大型車、中型車又は普通車、自動二輪車など)を示す情報、車両の数を示す情報、車両の現在位置を示す情報、車両の移動速度を示す情報などが含まれている。本発明においては、感知器情報に基づいて後述するように自車の現在位置が感知エリアより手前(自車の進行方向手前)であるか否か、或いは、自車の現在位置が感知エリアであるか否かを判定する。なお、感知器が感知エリアに存在する歩行者などを感知できる場合、歩行者に関する情報(歩行者の数、現在位置、移動速度を示す情報)も含まれてもよい。
【0026】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために本発明の移動体通信装置の一例であるナビゲーション装置を示すものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の装置にも等しく適応し得るものである。例えば、ナビゲーション機能を有しない装置や携帯電話等の移動通信端末であってもよい。なお、以下の説明では、ナビゲーション装置が自動車に取付けられた場合を例示するが、バイク等がナビゲーション装置を備えていてもよい。
【0027】
図1は本発明のナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置20は制御部1と、表示部2と、操作部3と、現在位置検出部4と、速度検出部5と、地図情報記憶部6と、ビーコン通信部7と、ビーコン情報記憶部8と、バッテリ9と、通信部10と、報知部11を備えている。
【0028】
制御部1はナビゲーション装置20全体を総括的に制御する制御手段である。制御部1はCPUとROMとRAM(いずれも不図示)とを含んでいる。ROMには制御部1が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なパラメータやデータが記憶されている。CPUはROMに記憶されている各種プログラムを実行する。RAMは各種処理の過程で得られるデータや各種処理の結果得られるデータを一時的に格納する。これらCPU、RAM、ROM等は、バスを介して接続されている。なお、CPU、ROM及びRAMはこれらの一部または全部を1チップに集積化しても構わない。
【0029】
表示部2は地図画面(目的地への経路、ナビゲーション装置20が搭載された車両(以下、「ナビゲーション装置20が搭載された車両」を「自車」ということもある。)の現在位置を示すマークなどを含む地図画像を表示する画面)やメニュー画面を表示するための表示手段である。
【0030】
操作部3はユーザが目的地を入力したり、メニューを操作したりするための入力操作手段である。なお、操作部3としては、ナビゲーション装置20本体に各種のキーやボタンを設けてもよいし、表示部2にタッチパネル機能を付加してもよい。また、操作部3としてナビゲーション装置20本体を遠隔操作するためのリモートコントローラを操作部3として用いても構わない。
【0031】
現在位置検出部4は自車の現在位置を検出するものであり、GPS受信機、自立航法手段、位置計算用CPU等を含んで構成される。自立航法手段は操角センサ、加速度センサ、距離センサや方位センサなどからなり、自車の走行距離と進行方向とをそれぞれ検出し、これらの値に基づいて現在位置を求める。また、GPS受信機は複数のGPS衛星から送られてくる電波をGPSアンテナで受信して3次元測位処理又は2次元測位処理を行って自車の絶対位置及び進行方向を計算する。ここで進行方向は現時点の自車位置と直前の自車位置とに基づいて計算される。なお、進行方向の検出方法は特に限定されず、例えばタイヤの回転方向から検出することとしてもよいし、方位センサを用いて検出してもよい。また、現在位置検出部4とは別に進行方向検出部を設けて自車の進行方向を検出するものとしてもよい。
【0032】
速度検出部5は自車の移動速度を検出する。移動速度は車速センサや加速度センサの出力から算出してもよいし、GPS履歴間の走行距離とGPS受信時刻の差から算出してもよい。なお、自車の移動速度は現在位置検出部4が検出することとしてもよい。現在位置検出部4が自車の現在位置に加えて移動速度を検出することができる場合には速度検出部5を別途設けない構成とすることができる。その場合、現在位置検出部4に速度検出部5が含まれる構成となる。
【0033】
なお、操角センサ、加速度センサ、速度センサや方位センサなどは、ナビゲーション装置20が備えていてもよいし、車両(自車)が上記各種センサを備えており、ナビゲーション装置20は、上記各種センサの出力を取得するインターフェースを備える構成としてもよい。
【0034】
地図情報記憶部6は目的地への経路探索や誘導を行う際に参照される地図情報が記憶されている。地図情報には、ネットワークデータ(ノードデータ、リンクデータ)が含まれる。また、地図情報には、地図画像が含まれていてもよいし、地図情報に含まれるネットワークデータ(ノードデータ、リンクデータ)に基づき地図画像を表示部2に描画してもよい。また、地図情報は予め地図情報記憶部6に記憶される以外にも、後述する通信部10が路側機などから地図情報を受信し、受信された地図情報が地図情報記憶部6に記憶されてもよい。
【0035】
なお、地図情報記憶部6及び後述するビーコン情報記憶部8としてはNANDフラッシュやSDメモリカードなどの記憶媒体を好適に用いることができる。各記憶部は一つの記憶媒体を共用することとしてもよいし、それぞれが記憶媒体を有することとしてもよい。また、各記憶部はナビゲーション装置20に内蔵しても構わないし、ナビゲーション装置20に着脱可能な構成としても構わない。
【0036】
本発明においては、ネットワークデータに、道路のノードデータ・リンクデータが含まれる。自車が現在走行している道路を特定する際には、制御部1が現在位置検出部4によって検出される自車の現在位置(進行方向や移動速度も加えてもよい)と地図情報とに基づき、マップマッチング処理を行うことで特定することができる。
【0037】
なお、マップマッチング処理については、制御部1が行なってもよいが、現在位置検出部4が行なってもよい。すなわち、GPS受信機及び/又は自律航法手段を用いて検出した現在位置と地図情報とに基づき、マップマッチング処理を行い、マップマッチング処理を行なった現在位置を現在位置として制御部1へ出力してもよい。或いは、制御部1のマップマッチング処理までを含めて現在位置検出部4としてもよい。
【0038】
ビーコン通信部7は道路上に設置された光ビーコンから電波、光、または赤外線を利用して様々な情報を受信する。道路上に設置されたビーコンはその通信範囲を1つの車線幅以内と限定することが可能であり、車線毎にビーコンを設置することによって、特定の車線を走行している車両に対してのみビーコン情報を送信することが可能である。
【0039】
ビーコン通信部7が光ビーコンから受信する情報は、上述したように情報中継・判定装置によって登録された提供ダウンリンク情報であり、システム情報、感知器情報、交差点情報、信号機情報、道路線形情報、規制情報等を含む。なお、これらの情報はビーコン通信部7が光ビーコンから受信する以外にも後述する通信部10がITSを介して路側機等から受信することが可能である。
【0040】
ここで各情報について簡潔に説明する。システム情報は上述したように提供サービスの内容を示す情報を含み、その他に、サービスの提供時間、サービスの稼働状態等を示す情報を含む。制御部1はシステム情報を取得することによって、どのような運転支援サービスを運転者に提供することができるかを判断することができる。本発明においてはシステム情報に提供サービスとして少なくとも追突防止支援システムが含まれるものとし、また、ナビゲーション装置20は運転者に対して追突防止支援を行う機能を備えているものとする。
【0041】
感知器情報は上述したように感知エリアの位置(範囲)を示す情報や、感知エリアに存在する車両の種別、車両・歩行者の数、現在位置、移動速度を示す情報を含む情報である。制御部1は感知器情報を取得することによって、感知エリアの状態(渋滞している、停車車両が存在する、歩行者が存在する等)を判断することができる。
【0042】
交差点情報は、交差点の中心位置座標(緯度・経度)、交差点への進入方向(方路)に対応付けられた信号機の識別番号(信号機番号)、路側機(交差点)を識別するための情報、停止線の位置座標(交差点への進入方向(方路)に対応付けられた停止線の位置(緯度・経度))、交差点の始点や終点となるべき地点(交差点のノード位置座標)のノードデータ等の情報が含まれる。
【0043】
信号機情報は、信号機を識別するための識別情報(信号機番号)、信号機の現在の信号表示情報(信号機の表示色を示す情報)、現在の信号表示が次の信号表示に変更されるまでの時間を示す情報、信号表示の表示順序(信号表示のサイクルを示す情報)等の情報が含まれ、これらの情報は夫々対応付けられている。つまり、信号機情報には信号機の所定時点(現時点又は現時点以降の任意の時点)における信号表示及び/又は所定時点における信号表示が次の信号表示に変更されるまでの時間を特定可能な情報が含まれるということができる。
【0044】
道路線形情報は、対象道路区間(交差点・単路)の道路構造を示す情報であり、例えば光ビーコンから停止線までの道程距離や道路の接続角度等を示す情報が含まれる。
【0045】
規制情報は、対象区間・交差点の交通規制を示す情報であり、規制種別、規制対象車種及び規制時間等を示す情報が含まれる。
【0046】
ビーコン情報記憶部8はビーコン通信部7で受信したビーコン情報を格納する。
【0047】
バッテリ9はナビゲーション装置20の携帯使用時における電源供給手段であり、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池を好適に用いることが可能である。もちろん、バッテリ9として、アルカリマンガン乾電池やマンガン乾電池などの一次電池を用いても構わないし、燃料電池を用いても構わない。
【0048】
通信部10はナビゲーション装置20と通信可能な他の通信装置(以下、「他の通信装置」という。)に情報を送信する送信部(図示せず)と他の通信装置から送信される情報を受信する受信部(図示せず)とを有する。通信方法は無線通信や赤外線通信などの非接触通信とすることが好ましい。他の通信装置としては他の車両に搭載されたナビゲーション装置等の車載通信装置(他の車両に歩行者が乗車している場合において、該歩行者が保持する携帯電話等の移動通信端末でもよい)、路側機、歩行者等(歩行者や自転車の運転者など)が所持する携帯電話等の移動通信端末などを挙げることができる。
【0049】
通信部10が路側機から受信する情報は上述したように情報中継・判定装置によって登録された提供ダウンリンク情報であり、システム情報、感知器情報、交差点情報、信号機情報、道路線形情報、規制情報等を含む。
【0050】
なお、本実施例においては、通信部10は700MHz帯で送信される提供ダウンリンク情報を受信する。送信範囲はおよそ半径300m程度が考えられ、ナビゲーション装置20は、光ビーコンを通過した後(光ビーコンから提供ダウンリンク情報を受信した後)も最新の提供ダウンリンク情報を取得することが可能である。
【0051】
報知部11は各種情報を報知する報知手段である。報知手段は特に制限されないが、例えばスピーカ(不図示)を介して行われる音声案内(音声出力)、表示部2を介して行われる文字や画像等の画面表示が例として挙げられる。なお、音声出力と画面表示を同時に行うこととしてもよい。
【0052】
[第1実施形態]
本発明のナビゲーション装置20の第1実施形態について図2を用いて説明する。図2は本発明のナビゲーション装置20の制御部1が実行する処理の流れを示す第1のフローチャートである。
【0053】
ステップS01において制御部1は通信部10を介して路側機から情報を取得する。路側機から取得する情報は、上述したように情報中継・判定装置によって登録された提供ダウンリンク情報であって、感知器から出力される感知器情報、DSSS下位装置から出力される道路線形情報等の情報、交通信号制御機から出力される交差点情報・信号機情報等が含まれている。
【0054】
なお、光ビーコンは通常、図5及び図6に示すように感知エリアから比較的離れた道路上に設定されていると考えられるのに対し、本発明は自車の現在位置が感知エリアから比較的近い位置にあるときの制御であることから、制御部1は、路側機から情報を取得することとしているが、路側機に限られるものではなく、情報中継・判定装置によって提供ダウンリンク情報を登録されるものであればよい。例えば光ビーコンから取得することとしてもよいし、路側機及び光ビーコンの双方から取得することとしてもよい。
【0055】
なお、路側機から提供ダウンリンク情報を受信する場合、路側機からは広域(例えば半径300m)に提供ダウンリンク情報が送信されることが考えられるため、受信した提供ダウンリンク情報が自車に関するものか否かを判定する必要がある。
【0056】
これは、例えば、現在位置検出部4によって検出された現在位置や進行方向、及び地図情報などに基づいて、自車が走行している道路(車線)の進行方向前方に感知エリアが存在する場合に、自車に関するものとして、ステップS02以降の処理を行なうものとしてもよい。
【0057】
また、光ビーコンから受信する情報に、通信部10で受信する情報のうち自車に関する情報を特定可能な情報が含まれており、当該情報に基づいて、提供ダウンリンク情報が自車に関するものか否かを判定してもよい。
【0058】
ステップS02において制御部1は自車の移動速度が所定速度以下であるか否かを判定する。所定速度は、自車が停車状態に移行すると考えられる任意の速度(例えば10km/h)であり、所定速度以下には停車状態(時速0km/h)も含まれる。自車の移動速度が所定速度以下であれば(ステップS02のY)ステップS03に進み、自車の移動速度が所定速度以下でなければ(ステップS02のN)ステップS01に戻る。
【0059】
すなわち、自車の移動速度が所定速度以下でなければ自車はそのまま走行し続け、後続車両から追突される危険性が低いため次のステップ(ステップS03)に進まない。
【0060】
ステップS03において制御部1は自車の現在位置が感知エリアより手前(自車の進行方向手前)であるか否かを判定する。自車の現在位置が感知エリアより手前であるか否かは、自車の現在位置の座標と感知エリアの始点の座標とをマップマッチングすることによって判定することができる。自車の現在位置が感知エリアよりも手前であれば(ステップS03のY)ステップS04に進み、自車の現在位置が感知エリアよりも手前でなければ(ステップS03のN)ステップS01に戻る。
【0061】
すなわち、自車の現在位置が感知エリアの始点よりも奥側の場合であって、自車の現在位置が感知エリア内であれば、他の車両は路側機や光ビーコンから感知器情報を受信し、受信した情報に基づく追突防止支援を提供されていると考えられるため、次のステップ(ステップS04)に進まない。また、自車の現在位置が感知エリアの始点よりも奥側の場合であって、自車の現在位置が感知エリア外であれば、後続車両の運転者が感知器情報に基づいて衝突防止支援の提供を受けていなくても、自車が後続車両から追突される危険性が低いので、次のステップ(ステップS04)に進まない。
【0062】
ステップS04において制御部1は所定の制御を行う。ここで所定の制御として、自車の存在を後続車両に知らせる制御(他の車両のための制御)と、自車の運転者を守る制御(自車のための制御)とがある。
【0063】
自車の存在を後続車両に知らせる制御としては、通信部10を介して車車間通信で自車の現在位置を示す情報(或いは自車の現在位置を示す情報を含む移動体情報)を送信することや、自動的にハザードランプを点滅させることが考えられる。
【0064】
一方、自車の運転者を守る制御としては、追突されたときに車両が飛ばされないようにするために自動的にサイドブレーキを引く、或いは報知部11を介してサイドブレーキを引くように促すことや、衝突の検知レベルを下げる(例えば、エアバッグが作動する衝突基準レベルを下げることでエアバッグを作動しやすくする)ことが考えられる。
【0065】
本実施形態によれば、後続車両に追突される可能性があるときに、所定の制御を行うことで追突事故を防止したり、自車の運転者を保護したりすることができる。
[第2実施形態]
本発明のナビゲーション装置20の第2実施形態について図3を用いて説明する。図3は本発明のナビゲーション装置20の制御部1が実行する処理の流れを示す第2のフローチャートである。なお、本実施形態のステップS11〜S13、ステップS15はそれぞれ第1実施形態のステップS01〜S03、ステップS04と同様であるため説明を省略する。
【0066】
まず、本実施形態について説明する。本実施形態は、後続車両に搭載されている車載装置が、本願出願人が既に出願済みの発明である特願2011-(以下、「特願2011-」を「先願発明」という。)に記載した追突防止支援を提供する車載装置であるときのナビゲーション装置20の処理を示すものである。すなわち、先願発明によれば、他の車両が感知エリア外に存在していても、感知エリアが渋滞している場合には感知エリア外にも追突する可能性がある車両が存在するものとして走行支援を行うので、後続車両が先行発明の車載装置(ナビゲーション装置)を搭載している場合には、自車の現在位置が感知エリアの手前であっても、感知エリアが渋滞している場合には、所定の制御を行う必要がない。
【0067】
そこでステップS14において制御部1は、感知エリアが渋滞しているか否かを判定する。感知エリアが渋滞していなければ(ステップS14のN)ステップS15に進み、感知エリアが渋滞していなければ(ステップS14のY)ステップS11に戻る。
【0068】
以下に感知エリアが渋滞しているか否かを判定する方法について以下に例示する。
【0069】
感知エリアが渋滞しているか否かを判定する第1の方法は、感知エリアの最後尾(例えば、感知エリアの始点付近)に位置する車両の移動速度に基づく方法である。すなわち、感知エリアの範囲において最後尾に位置する車両の移動速度が所定速度以下(第1実施形態のステップS02における所定速度と同一であってもよいし、異なることとしてもよい)である場合には、感知エリアで渋滞が発生していると考えられる。
【0070】
感知エリアが渋滞しているか否かを判定する第2の方法は、感知エリアの範囲と感知エリアに存在する車両の種類(車種)と各車種車両の台数に基づいて感知エリアにおける車両が占める割合に基づく方法である。すなわち、車種に応じて予め定められる車両占有面積(長さでもよい)と各車種の台数とを乗じて足した車両占有総面積(長さでもよい)が感知エリア面積に対して所定割合(例えば70%以上)である場合には、感知エリアで渋滞が発生していると考えられる。
【0071】
感知エリアが渋滞しているか否かを判定する第3の方法は、感知エリアに存在する車両数に基づく方法である。すなわち、感知エリアにおいて車両の台数が、正常に走行していれば(渋滞でなければ)感知エリアに存在することが考えにくい台数以上(所定台数以上)であれば、各車両の車間距離が近い、すなわち感知エリアで渋滞が発生していると考えられる。
【0072】
なお、感知エリアが渋滞しているか否かを判定するための基準となる所定速度、感知エリア面積に対する車両総面積の割合(所定割合)や、所定台数は固有の値としてもよいし、感知エリアの面積、形状等に基づいて選択或いは算出することとしてもよい。
【0073】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。加えて、後続車両に搭載されている車載装置が、自車に衝突しないように走行支援を行っている場合に、自車に搭載されている車載装置による所定の制御を行わないことによって過度な走行支援を防ぐことができる。
[第3実施形態]
本発明のナビゲーション装置20の第3実施形態について図4を用いて説明する。図4は本発明のナビゲーション装置20の制御部1が実行する処理の流れを示す第3のフローチャートである。なお、本実施形態のステップS21、ステップS22、ステップS24はそれぞれ第1実施形態のステップS01、ステップS02、ステップS04と同様であるため説明を省略する。
【0074】
まず、本実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態とは異なり、後続車両に搭載されている車載装置が一般的な追突防止支援システム(感知器情報に基づく感知エリアに存在する停車車両等に対する衝突防止支援システム)に対応していない場合に好適に適用されるものである。すなわち、後続車両に搭載されている車載装置が追突防止支援システムに対応していない場合には、後続車両の運転者は感知エリア(すなわち死角エリア)に停車車両等が存在することを知ることができない。これによって、感知エリアに存在する車両は後続車両から追突されるおそれが高くなることから、本実施形態では自車の現在位置が感知エリアであるときに所定の制御を行うものである。
【0075】
そこでステップS23において制御部1は自車の現在位置が感知エリア内であるか否かを判定する。自車の現在位置が感知エリア内であれば(ステップS23のY)ステップS24に進み、自車の現在位置が感知エリア内でなければ(ステップS23のN)ステップS21に戻る。
【0076】
自車の現在位置が感知エリア内であるか否かは自車の現在位置を示す情報と感知エリアの始点/終点を示す情報とに基づいて判定することができ、例えば、自車の現在位置座標が感知エリアの始点の位置座標と感知エリアの終点の位置座標との間に位置していれば自車の現在位置が感知エリア内であると判断できる。
【0077】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。特に、後続車両の車載装置が追突防止支援システムに対応していない場合に好適に利用される。
[その他の実施形態]
上述した各実施形態では、感知エリアとしてカーブによって発生する死角を例に説明したが、停止視距を確保することができなくなる原因についてはなんら限定されるものではなく。すなわち、カーブによって発生するものに限られず例えばクレストによって発生する感知エリアも当然に含まれる。
【0078】
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、少なくとも自車の現在位置が感知エリアよりも手前であるときに、所定の制御を行うこととしているが、さらに、自車の現在位置及び/又は後続車両の移動速度に応じて所定の制御を行うか否かを判定することとしてもよい。
【0079】
例えば、自車の現在位置が感知エリアよりも手前であっても、感知エリアの始点の位置から所定距離以上離れたときには所定の制御を行わないこととしてもよい。すなわち、自車の現在位置が感知エリア手前であっても、自車の現在位置が感知エリアから所定距離以上離れた位置であれば、周辺に感知エリアが存在しないので後続車両の運転者の停止視距が確実に確保されていると考えられるからである。
【0080】
所定距離は特に限定されるものではないが、例えば感知エリアと当該感知エリアに関する感知器情報を提供する光ビーコンとの距離(すなわち、自車の現在位置が感知エリアの始点位置及び当該感知エリアに関する感知器情報を提供する光ビーコンの位置よりも手前側)を所定距離とすることが考えられる。これにより、過度な走行支援を防ぐことができる。
【0081】
また、例えば後続車両の移動速度が自車の移動速度よりも遅いとき又は後続車両の移動速度が所定速度以下であるときは、所定の制御を行わないこととしてもよい。すなわち、後続車両の移動速度が自車の移動速度よりも遅ければ後続車両が自車に追突する可能性が低いからである。また、後続車両の移動速度が所定速度以下(第1実施形態のステップS02における所定速度と同一の速度としてもよいし、異なる速度としてもよい。)であれば、後続車両の運転者が自車を認識して低速で走行しているか、或いは自車を認識していないとしても自車を認識してから停車することが容易であると考えられ、後続車両が自車に追突する可能性が低いからである。
【0082】
なお、後続車両の移動速度は、車車間通信により後続車両から送信され、通信部10が受信してもよいし、現在位置が感知エリア内である場合には、感知器情報(感知エリアに存在する車両の現在位置)と現在位置に基づいて、後続車両の有無を判定し、後続車両が存在する場合に当該後続車両の移動速度を特定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、自車が後続車両から追突される可能性があるときに、追突(衝突)事故の防止、及び/又は自車の運転者の保護を目的として所定の制御を行う移動体通信装置及び走行支援方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 制御部
2 表示部
3 操作部
4 現在位置検出部
5 速度検出部
6 地図情報記憶部
7 ビーコン受信部
8 ビーコン情報記憶部
9 バッテリ
10 通信部
11 報知部
20 ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に備えられ、
感知エリアに関する情報を含む情報を受信する通信部と、
前記移動体の現在位置及び移動速度を取得し、前記移動体の現在位置が前記感知エリアよりも前記移動体の進行方向手前側であって、前記移動体の移動速度が所定速度以下のときに、所定の制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする移動体通信装置。
【請求項2】
前記感知エリアが渋滞しているときは前記所定の制御を行わないことを特徴とする請求項1に記載の移動体通信装置。
【請求項3】
移動体に備えられ、
感知エリアに関する情報を含む情報を受信する通信部と、
前記移動体の現在位置及び移動速度を取得し、前記移動体の現在位置が前記感知エリア内であって、前記移動体の移動速度が所定速度以下のときに、所定の制御を行う制御部と、
を備えることを特徴とする移動体通信装置。
【請求項4】
前記所定の制御は、前記移動体の存在を後続車両に知らせる制御及び/又は前記移動体の乗員を保護する制御であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の移動体通信装置。
【請求項5】
感知エリアに関する情報を含む情報を取得するステップと、
移動体の現在位置及び移動速度を取得するステップと、
前記移動体の現在位置が前記感知エリアよりも前記移動体の進行方向手前側であるか否かを判定するステップと、
前記移動体の移動速度が所定速度以下であるか否かを判定するステップと、
前記移動体の現在位置が前記感知エリアよりも前記移動体の進行方向手前側であって、前記移動体の移動速度が所定速度以下のときに、所定の制御を行うステップと、
を有することを特徴とする走行支援方法。
【請求項6】
感知エリアに関する情報を含む情報を取得するステップと、
移動体の現在位置及び移動速度を取得するステップと、
前記移動体の現在位置が前記感知エリア内であるか否かを判定するステップと、
前記移動体の移動速度が所定速度以下であるか否かを判定するステップと、
前記移動体の現在位置が前記感知エリア内であって、前記移動体の移動速度が所定速度以下のときに、所定の制御を行うステップと、
を有することを特徴とする走行支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−50834(P2013−50834A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188069(P2011−188069)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】