説明

移動用変圧器装置

【課題】移動用変圧器装置のケーブル収納に関するものであり、作業者が容易にケーブルの収納や取り出しを行うことができ、かつコストの低いケーブル収納部を備えた移動用変圧器装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る移動用変圧器装置は、荷台を持つ車両と、前記荷台の後部にスペースが出来るように搭載された移動用変圧器装置本体と、前記車両の背面側の前記移動用変圧器装置本体に設けられたケーブルコネクタと、前記ケーブルコネクタの上部に取り付けられたケーブルサポートと、前記ケーブルコネクタに接続され、前記ケーブルサポートに巻き付けられて収納されるケーブルとを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の変圧器の交換,修理等の工事にあたり、無停電で工事を行なう場合に使用する移動用変圧器に係り、特に、柱上設置型変圧器の無停電工事に使用する移動用変圧器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータをはじめとする各種電子機器および家庭内における電子化された高性能な電化製品の普及に伴い、今日社会生活において電気に対する依存度は非常に高いものとなっており、工事停電や故障停電のみならず、一瞬の停電も許されない状況となっている。このような状況の中で、最近では、工事停電を避けるため、例えば、柱上変圧器の交換とか配電線の補修工事に際しては、移動用変圧器装置等を駆使して、需要家に対して無停電で電力供給を行いながら機器の交換や補修作業を可能とした、いわゆる無停電工法が採用されるようになった。
【0003】
そして、無停電工法に使用する移動用変圧器装置としては、特許文献1に示されるように、車両の荷台に搭載される移動用変圧器装置本体と、本体の上部に設けられ、上面が開口した高圧ケーブル収納ケースと、このケースに収納され、ケースの側壁の孔、切込み等の空所を通り、一端が本体内の高圧機器に接続された高圧ケーブルとを備えるといったことが開示されている。
【0004】
この特許文献1の例では、移動用変圧器装置本体の上部に高圧ケーブル収納ケースを設けているので、高圧ケーブルを収納するための収納ドラムを別途設ける必要がなく、装置が一体化されて小形になり、床面積の小さな荷台を用いることができるとともに、軽量化が図れるといったことが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、車両の荷台の後部に支柱を設け、その支柱の上部にケーブルガイド用ローラを備え、荷台の後端部にケーブルが巻回されるドラムが備えられた移動用変電所が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−224921号公報
【特許文献2】実開平2−133107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示される移動用変圧器装置は、高圧ケーブル収納ケースが移動用変圧器装置本体の上部に設けられているので、高圧ケーブル収納ケースからのケーブルの取り出しや、工事終了後のケーブルの収納といった作業が非常に煩雑なものとなっていた。
【0008】
より詳しく説明すると、ケーブルの取り出しは、ケーブルが捩れて収納されていると絡まったりして非常に取り出し難くなることがあった。そして、収納は取り出し時のことを考慮してケーブルを綺麗に束ねなければならず手間が掛かる作業となっていた。
【0009】
また、高圧ケーブル収納ケースが移動用変圧器装置本体の上部に設けられているため、作業者が荷台に乗った状態でケーブルの上げ下げの作業をしなければならず、身体的負担を伴う作業となっていた。
【0010】
また、特許文献2の例では、ケーブルの巻き取り作業は比較的容易に行えるが、ケーブルガイド用ローラやドラムといった設備を車両の荷台に設置しなければならず、車両の荷台といった限られたスペースを有効に活用することができないといった問題があった。また、ケーブルガイド用ローラやドラムといった設備を設置するためのコストが増加するといった問題もあった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、ケーブルの収納作業が容易に行うことができる移動用変圧器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載の移動用変圧器装置は、荷台を持つ車両と、前記荷台の後部にスペースが出来るように搭載された移動用変圧器装置本体と、前記車両の背面側の前記移動用変圧器装置本体に設けられたケーブルコネクタと、前記ケーブルコネクタの上部に取り付けられたケーブルサポートと、前記ケーブルコネクタに接続され、前記ケーブルサポートに巻き付けられて収納されるケーブルとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の移動用変圧器装置によれば、移動用変圧器装置本体を車両の荷台の中央付近に搭載したので車両の荷台の前後部に作業スペースが確保でき、かつ移動用変圧器装置本体の後面に支持棒を備えたケーブルサポートを備えたので、作業者が車両後部の作業スペースに乗り、ケーブルサポートにケーブルを巻き付けることによってケーブルの収納を容易に行うことができる。そしてケーブルをケーブルサポートから取り出す時も、ケーブルが絡まったりすることがなく、容易にケーブルを取り出すことができる。
【0014】
また、作業者の胸の高さの位置にケーブルサポートを設けたので楽な姿勢でケーブルの収納作業を行うことができ、作業者の身体的負担を減らすことが可能となった。
【0015】
また、ケーブルサポートの内側に支持棒が設けられ、空間が形成されている。この空間にケーブルを束ねることで、車両の移動による振動でもケーブルがケーブルサポートから外れることがないといった利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の移動用変圧器装置の側面図である。
【図2】図2は本発明の移動用変圧器装置の背面図である。
【図3】図3は本発明のケーブルサポートの三面図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について図1および図2を用いて説明する。
【0018】
図1は本発明による移動用変圧器装置1の側面図であり、車両2の荷台3の中央付近に移動用変圧器装置本体4が搭載された状態を示している。このように搭載することで、荷台3には前部スペース5と後部スペース6を設けることができる。そして、移動用変圧器装置本体4には、変圧器,開閉器,監視制御装置等が収納されている。
【0019】
図2は本発明による移動用変圧器装置1の背面図である。移動用変圧器装置本体4の後面(車両搭載状態での車両の背面側)には、高圧ケーブルコネクタ7および低圧ケーブルコネクタ8が設けられている。これらのコネクタには、それぞれ高圧ケーブル9および低圧ケーブル10が接続されている。
【0020】
高圧ケーブルコネクタ7および低圧ケーブルコネクタ8の下方にはケーブルブラケット11が備えられている。このケーブルブラケット11は高圧ケーブル9および低圧ケーブル10を固定できる構造になっている。
【0021】
高圧ケーブルコネクタ7および低圧ケーブルコネクタ8の上方に、ケーブルサポート12がボルト(図示せず)によって取付けられている。このケーブルサポート12は左右対称の形状のものがペアで取り付けられている。
【0022】
ペアで取り付けられたケーブルサポート12の外側付近とその下方に振れ止13が合計4箇所設けられている。振れ止13は丸棒や丸パイプをコの字状に曲げられたものが用いられている。
【0023】
次に、図3を用いてケーブルサポート12について説明する。ケーブルサポート12は薄板の鉄板がコの字状に折り曲げられ、その内側に支持棒14が2本取り付けられ、かつ支持棒14はケーブルサポート12に空間15ができるように取付けられている。支持棒14は、コの字状に折り曲げられた板のたわみを防止し、後述するケーブルを支持するために設けられている。
【0024】
ケーブルサポート12のコの字状に折り曲げられた板の角部はR加工が施され、概略扇形の形状となっている。このR加工は、ケーブルサポート12が移動用変圧器装置本体4に取付けられたときに外側のRが大きく、内側のRが小さくなるように左右対称となっている。
【0025】
次に、高圧ケーブル9を例として、ケーブルの収納方法について説明する。高圧ケーブルコネクタ7に接続された高圧ケーブル9は下方に下ろされ、ケーブルブラケット11によって固定される。そこから、上方に引き上げられケーブルブラケット11と高圧ケーブルコネクタ7の間に通され、さらに上方に引き上げられケーブルサポート12に巻き付けられる。
【0026】
そして、下方に下ろされ高圧ケーブル9は高圧ケーブルコネクタ7とケーブルブラケット11との間に通される。この手順が繰り返され、高圧ケーブルコネクタ7とケーブルブラケット11の間を中心にして8の字を描くようにケーブルが巻き付けられて収納される。低圧ケーブル10も高圧ケーブル9と同様の手順でケーブルの収納が行われる。
【0027】
また、ケーブルの巻き付け時には、それぞれのケーブルは振れ止13の内側に入れられ収納される。このように収納することで、車両移動時でもケーブルが車両側面から外側に飛び出すことがなく、安全に車両を運行することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 移動用変圧器装置
2 車両
3 荷台
4 移動用変圧器装置本体
5 前部スペース
6 後部スペース
7 高圧ケーブルコネクタ
8 低圧ケーブルコネクタ
9 高圧ケーブル
10 低圧ケーブル
11 ケーブルブラケット
12 ケーブルサポート
13 振れ止
14 支持棒
15 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台を持つ車両と、
前記荷台の後部にスペースが出来るように搭載された移動用変圧器装置本体と、
前記車両の背面側の前記移動用変圧器装置本体に設けられたケーブルコネクタと、
前記ケーブルコネクタの上部に取り付けられたケーブルサポートと、
前記ケーブルコネクタに接続され、前記ケーブルサポートに巻き付けられて収納されるケーブルとを備えたことを特徴とする移動用変圧器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−200066(P2012−200066A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61912(P2011−61912)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【出願人】(000163419)株式会社きんでん (37)