説明

移植機における縦送りベルトローラ

【課題】
苗載せ台に形成された開口部に、縦送りベルトを配設して苗載せ台に載置した苗を縦送りする移植機において、縦送りベルトローラの表面に縦送りベルトの裏面と噛合する突起部を高く形成できるようにして、ベルトローラに巻回した縦送りベルトをスリップすることなく回動させて苗載せ台に載置した苗の縦送りを円滑にする。
【解決手段】
縦送りベルト15を巻回するベルトローラ19、20を、ローラ軸方向に抜く抜き型で成型して、側端側に縮小するテーパー状となったベルトローラ19、20の表面に、縦送りベルト15の裏面に噛合する突起部27を一体形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植機における苗載せ台に設けた苗縦送り装置の縦送りベルトローラに係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、田植機等の移植機においては、苗載せ台に形成した開口部に、苗縦送り装置の縦送りベルトを配設して、苗載せ台に載置されたマット苗を縦送りベルトの回動により苗載せ台の下端側に向けて縦送りするものが知られている。
【0003】
このような縦送りベルトは、苗載せ台の下面側に設けた駆動側のベルトローラと従動側のベルトローラとの間に巻回して、駆動側ベルトローラの回転に伴って回動するようになっている。そして回転するベルトローラに対して縦送りベルトがスリップしないように、ベルトローラの表面には縦送りベルトの裏面に設けた溝に噛合する突起部を設けることが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが従来のベルトローラは、プラスチック成型用の上下に割る割り型で成型していたので、円筒状に形成されるベルトローラの外周面に縦送りベルトと噛合する複数の突起部を設けるが容易でなく、ことに縦送りベルトとのスリップを確実に防止するため突起部を高く形成するのは難しいという問題があった。
【0005】
また、従来は縦送りベルトは、ベルトローラに対して横ズレを起さないようにするため、縦送りベルトとベルトローラとの接触面に段部を設けていた。このため縦送りベルトの裏面側の円周上に連続した段部が形成されるので、この段部によって縦送りベルトの曲げ柔軟性が乏しくなってベルトローラへの追従性が低下するという別の問題があった。
【0006】
本発明は上記のような問題点を解消すべく創作されたものであって、その目的とするところは、縦送りベルトローラの表面に縦送りベルトの裏面と噛合する突起部を高く形成できるようにして、縦送りベルトのスリップを確実に防止すると共に、縦送りベルトのベルトローラへの追従性を良好にして、縦送りベルトの横ズレを防止することができる移植機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため本発明が講じた技術的手段は、苗載せ台に形成された開口部に、縦送りベルトを配設して苗載せ台に載置した苗を縦送りする移植機において、上記縦送りベルトを巻回するベルトローラを、ローラ軸方向に抜く抜き型で成型して、側端側に縮小するテーパー状となったベルトローラの表面に、縦送りベルトの裏面に噛合する突起部を一体形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、苗載せ台に形成された開口部に、縦送りベルトを配設して苗載せ台に載置した苗を縦送りする移植機において、上記縦送りベルトを巻回するベルトローラを、ローラ軸方向に抜く抜き型で成型して、側端側に縮小するテーパー状となったベルトローラの表面に、縦送りベルトの裏面に噛合する突起部を一体形成したことから、縦送りベルトローラの表面には、縦送りベルトの裏面と噛合する突起部を抜き型によって一体状に高く形成することができるので、ベルトローラに巻回した縦送りベルトはスリップすることなく回動して苗載せ台に載置した苗を円滑に縦送りすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明の実施の形態を、図面に示された一実施例に基いて詳細に説明する。
まず、図1〜図2において、1は移植機として例示した乗用田植機の植付部であって、該植付部1は、走行機体の後部に装備したリンク機構2の後端に昇降フレーム3を介して昇降およびローリング自在に支持されている。
【0010】
4は上記植付部1のドライブケースであって、このドライブケース4から左右方向に延設されたシャフトケース5には、複数のプランタケース6、6…が後方に向けて所定間隔毎に取付固定されており、プランタケース6の後部には、植付作動するプランタアーム7を備えたロータリケース8が装着されている。
【0011】
上記プランタケース6の上方には、往復横送りされる苗載せ台9が前高後低状に架設されており、苗載せ台9の底面には、載置されたマット苗をエプロン10上に送り出す縦送り装置11が配設されていて、走行機体からPTO軸12を経て伝達された動力が、上記縦送り装置11の駆動系と苗載台9の横送り駆動系およびプランタアーム7の駆動系との三系統に分割されている。13は田面を滑走するフロートである。
【0012】
上記苗載せ台9は仕切リブ14によって複数の苗載せ面9a、9a…に仕切られており、各苗載せ面9aには、それぞれ縦送り装置11を構成する2条の縦送りベルト15、15が上下方向に配置されている。すなわち苗載せ台9の下部側に開口部16が形成されており、この開口部16の上下位置にローラ軸17、18が平行状に配設されている。19は上記ローラ軸17に取付けた縦送りベルトローラとしての駆動側ベルトローラ、20はローラ軸18に取付けた従動側ベルトローラであって、この両ベルトローラ19、20の間に縦送りベルト15が巻回されている。
【0013】
21はローラ軸17、18と平行状の縦送りシャフトであって、回転する上記縦送りシャフト21に設けた駆動カムが縦送りレバー22を間欠的に叩き上げることによりローラ軸17を回動せしめ、これに連動してローラ軸17に固定された駆動側ベルトローラ19が縦送りベルト15を回動させて、苗載台9上の苗を適正量だけ縦送りしてエプロン10上に送り出すようになっている。23は苗載せ台9に設けた苗押えである。
【0014】
上記両ベルトローラ19、20は、図3(イ)に示すように、その両端側に大径のローラ部24、24が形成されており、このローラ部24、24の中間部位が小径の連結部25となっていて、その軸心位置にローラ軸17(18)を挿通する貫通孔26が形成されている。
【0015】
上記大径のローラ部24には、縦送りベルト15の裏面側に噛合する軸心方向の突起部27が、外周面全域に等間隔に形成されており、小径の連結部25には、ローラ軸17(18)の固定孔に挿通する固定ピンの挿通孔28が形成されている。そして、連結部25の径Bを突起部27の根元の径Aより小さく形成することにより、図3(ロ)で示すように固定ピンとして割りピン29を挿通孔28に挿通しても、割りピン29の頭部29a が縦送りベルト15の底面に当接することはなくベルトローラ19(20)を固定できるようになっている。
【0016】
そして上記ベルトローラ19(20)をローラの軸方向に抜く抜き型で成型することにより、ローラ部24の外周面に軸心方向の突起部27が所定のピッチで一体形成されている。したがって円筒状のローラ部24であっても、その外周面に突起部27を高く形成できると共に、抜き型の抜き勾配により、ローラ部24が側端側に縮小する傾斜角αのテーパー状となっている。
【0017】
また図4は上記ベルトローラ19(20)を連結部25の位置から左右対称状のローラ部24に分割可能に形成したものである。すなわち、分割した左右のローラ部24には、軸心位置から半割状に分割した連結部25の一半部25a がそれぞれ一体状に突出形成されており、連結部25の分割面には係止爪30および係止溝31が形成されていて、分割した対称状のローラ部24を組合わせ一体状のベルトローラ19(20)としてローラ軸17(18)に挿通固定できるようになっている。
【0018】
そして上記ローラ部24を軸方向に抜く抜き型で成型することにより、ローラ部24の外周面に軸心方向の突起部27を高く形成できると共に、抜き型の抜き勾配により、ローラ部24が側端側に縮小するテーパー状となっている。
【0019】
また、縦送りベルト15は、図5〜図6に示すように、その表面に苗の底面と接する多数の係止突起32が形成され、裏面側にはローラ部24に設けた突起部27と噛合する段部33が形成されている。上記段部33には、ローラ部24、24に接する縦送りベルト15の両側部に、突起部27の進入する溝部34が突起部27のピッチに合わせて所定間隔ごとに形成されていて、ベルトローラ19、20に巻回された縦送りベルト15は、この段部33に突起部27が噛合してベルトローラ19、20の回転に伴って回動するようになっている。
【0020】
本発明は上記のように構成したので、縦送りベルト15を巻回する駆動側のベルトローラ19と従動側のベルトローラ20は、ローラ部24、24の表面に縦送りベルト15の段部33と噛合する軸心方向の突起部27を、ローラの軸方向に抜く抜き型により高く形成できるので、両ベルトローラ19、20に巻回した縦送りベルト15はスリップすることなく回動して円滑に苗を縦送りすることができ、しかも高い突起部27のあるベルトローラ19、20を容易に製作することができる。
【0021】
また、ベルトローラ19、20は、抜き型の抜き勾配により側端側に縮小するテーパー状となっているので、両ベルトローラ19、20に巻回した縦送りベルト15は、ローラ部24に形成した高い突起部27が縦送りベルト15の段部33と噛合するのと相俟って、縦送りベルト15のベルトローラ19、20への追従性が良好となり、縦送りベルト15の横ズレを確実に防止することができる。
【0022】
また、ベルトローラ19、20の組付け時には、固定ピンの挿通孔28を設けた連結部25の径Bが、ローラ部24に設けた突起部27の根元の径Aより小さく形成されているので、従来のように止めネジ等を縦送りベルト15の底面よりも中へねじ込む必要はなく、割りピン29で簡単に固定できて組立て工数を削減することができる。
【0023】
さらに、ベルトローラ19、20を分割可能に形成したものでは、同じ形状のローラ部24を成型して組合わせればよいので、抜き型が簡単になって一層生産効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】植付部の側面図である。
【図2】苗載せ台の背面図である。
【図3】(イ)ベルトローラの縦断正面図である。(ロ)割りピンで固定したベルトローラの縦断正面図である。(ハ)ローラ部の側面図である。
【図4】(イ)ベルトローラを左右対称状に分割したローラ部の平面図である。(ロ)同上縦断正面図である。(ハ)ローラ部の組み立て状態を示す縦断正面図である。
【図5】(イ)縦送りベルトの段部を示す裏面図である。(ロ)図(イ)のA―A断面図である。
【図6】ベルトローラに巻回した縦送りベルトの全体側面図である。
【符号の説明】
【0025】
9 苗載せ台
15 縦送りベルト
16 開口部
19 駆動側のベルトローラ
20 従動側のベルトローラ
27 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載せ台に形成された開口部に、縦送りベルトを配設して苗載せ台に載置した苗を縦送りする移植機において、上記縦送りベルトを巻回するベルトローラを、ローラ軸方向に抜く抜き型で成型して、側端側に縮小するテーパー状となったベルトローラの表面に、縦送りベルトの裏面に噛合する突起部を一体形成したことを特徴とする移植機における縦送りベルトローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−81555(P2006−81555A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363336(P2005−363336)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【分割の表示】特願2001−12946(P2001−12946)の分割
【原出願日】平成13年1月22日(2001.1.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】