説明

移植機

【課題】機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上になる畦越え作業や、機体の後部に昇降自在に連結した植付作業機が圃場から脱出するぎりぎりの状態(植終い)までの植付作業を、オペレータが乗用型田植機に搭乗した状態で行なえるようにする。
【解決手段】ピッチングセンサ69が検出する機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上になった時、植付作業中であれば検知体として作用するセンターフロート23の基準姿勢を前下り状態に姿勢変更して植付作業を継続し、植付作業中でなければセンターフロート23が接地しない所定の低位置に植付作業機5を位置させる制御手段61を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の後部に植付作業機を昇降自在に連結すると共に、植付作業機の底部に後支点周りに上下揺動する整地体と検知体とを兼ねるフロートを備えた乗用型田植機等の移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移植機の一例である乗用型田植機を畦越えさせる場合には、先ず乗用型田植機に搭乗したオペレータがステアリングハンドルの左側に備える副変速レバーを低速位置に操作して、ベルト伝動装置である副変速装置を低速伝動状態に切り替えると共に、主変速レバーを作業速度位置に操作してミッションケース内の主変速装置を低速伝動状態に切り替えた後、オペレータは乗用型田植機から降りた状態で、機体の左側部に備える減速レバーを減速位置に操作してミッションケース内の畦越え用の減速装置を減速側に切り替え、次いで、前記減速レバーと同様に機体の左側部に設けたクラッチレバーを伝動切り位置から伝動入り位置に操作して、副変速装置を伝動状態とすることによって乗用型田植機を超低速で前進させながら、オペレータが機体前方側から畦越えアームを押え持つことで機体前部の浮き上がりを防止して、当該乗用型田植機の畦越え作業を安全且つ楽に行なえるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−148号公報(第4−5頁、図1−図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した特許文献1のものは、植付条数が4条程度の小型且つ軽量の乗用型田植機に採用されているものの、機体の総重量が重くなる植付条数が6条以上の乗用型田植機では、機体前部の浮き上がりを防止すべく畦越えアームを押え持つには相応の腕力が必要となり、殆ど採用されていないのが実状である。また、減速レバーに連係する畦越え用の減速装置の構造や畦越えレバー等の構成が複雑となりコスト高になると共に、畦越え作業を頻繁に行わなければならない時は、オペレータは何度も乗用型田植機に乗降しなければならず作業性の面で改良の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決することを目的としたものであって、機体の後部に昇降自在に連結した植付作業機の底部に後支点周りに上下揺動するフロートを備え、このフロートの上下揺動姿勢が基準姿勢となるように植付作業機を自動的に昇降制御する移植機において、機体の前後方向の傾斜を検出するピッチングセンサが所定の傾斜角以上の機体の前上がり傾斜を検出した時、植付作業中であれば植付作業を継続し、植付作業中でなければフロートが接地しない所定の低位置に植付作業機を位置させる制御手段を設けたことを第一の特徴としている。
そして、機体の後部に昇降自在に連結した植付作業機の底部に後支点周りに上下揺動するフロートを備え、このフロートの上下揺動姿勢が基準姿勢となるように植付作業機を自動的に昇降制御する移植機において、機体の前後方向の傾斜を検出するピッチングセンサが所定の傾斜角以上の機体の前上がり傾斜を検出した時、植付作業中であれば植付作業を継続し、植付作業中でなければ、植付を停止した状態でフロートを接地させた植付作業機の自動昇降制御を実行する制御手段を設けたことを第二の特徴としている。
更に、前記ピッチングセンサが検出する機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上になった時、植付作業中であればフロートの基準姿勢を前下り状態に姿勢変更することを第三の特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、機体の前後方向の傾斜を検出するピッチングセンサが所定の傾斜角以上の機体の前上がり傾斜を検出した時、植付作業中であれば植付作業を継続し、植付作業中でなければフロートが接地しない所定の低位置に植付作業機を位置させる制御手段を設けたことによって、例えば移植機を畦越えさせる場合のように、機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上になっても、移植機が圃場から脱出するぎりぎりの状態(植終い)まで植付作業を継続することができると共に、植付作業を停止した状態で移植機を畦越えさせる場合は、ピッチングセンサにより機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上であることを検出すると、フロートが接地しない所定の低位置に植付作業機を自動的に昇降させて機体後部の重心位置を低くしながらフロートの破損を防止することができるので、それによって機体前部の浮き上がりを防止しながら安全な圃場からの脱出が可能となる。また、オペレータが移植機から降りることなく畦越え作業が行なえるので作業性も向上する。
そして、請求項2の発明によれば、機体の前後方向の傾斜を検出するピッチングセンサが所定の傾斜角以上の機体の前上がり傾斜を検出した時、植付作業中であれば植付作業を継続し、植付作業中でなければ、植付を停止した状態でフロートを接地させた植付作業機の自動昇降制御を実行する制御手段を設けたことによって、例えば移植機を畦越えさせる場合のように、機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上になっても、移植機が圃場から脱出するぎりぎりの状態(植終い)まで植付作業を継続することができると共に、植付作業を停止した状態で移植機を畦越えさせる場合は、ピッチングセンサにより機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上であることを検出すると、植付作業機が非接地状態であっても自動的に接地し、圃場に接地するフロートでもって機体前部の浮き上がりを支えることができるので、それによって機体前部の浮き上がりを防止しながら安全な圃場からの脱出が可能となる。また、オペレータが移植機から降りることなく畦越え作業が行なえるので作業性も向上する。
更に、請求項3の発明によれば、例えばピッチングセンサが検出する機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上となる状態で移植機を畦越えさせる場合は、移植機が圃場から脱出するぎりぎりの状態(植終い)まで植付作業を継続しようとすると、フロートの先端が畦際の傾斜面に到達した瞬間に当該フロートが基準姿勢を越えて極端な前上がり状態となり、このフロートの前上がり姿勢に連動する植付作業機の急上昇により浮き苗が発生してしまうが、ピッチングセンサが検出する機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上になった時、植付作業中であればフロートの基準姿勢を前下り状態に姿勢変更することによって、上述のフロートの姿勢に連動する植付作業機の植終いにおける急上昇を阻止して浮き苗の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、圃場Fにおいて植付作業中の移植機の一例である乗用型田植機1の側面図であって、該乗用型田植機1の機体フレーム2の後部には、アクチュエータとしての油圧シリンダ3を備える昇降リンク機構4が設けてあり、この昇降リンク機構4を介して作業機である植付作業機5を昇降作動可能に連結すると共に、機体フレーム2の下部には、左右一対の前輪6と後輪7を備えている。
【0007】
そして、機体フレーム2の前部には、エンジンE等を覆うボンネット8を備えており、エンジンEから出力される動力を、油圧式無段変速装置H(図2参照)とトランスミッションケースT内の動力伝達装置により、走行伝動系と植付伝動系とに分岐して左右一対の前輪6と後輪7、及び植付作業機5に伝達するように構成している。尚、トランスミッションケースTの左右一側には、エンジンEの動力により駆動する図示しない油圧ポンプが設けてあり、この油圧ポンプから供給される圧油により後述する油圧コントロールバルブ53(図4参照)を介して油圧シリンダ3の伸縮動作を制御している。
【0008】
また、機体フレーム2の後部上方には、オペレータが着座する座席9が設けてあり、この座席9の前方には各種モニタを表示する操作パネル11を装備すると共に、該操作パネル11の上部にステアリングハンドル12、該ステアリングハンドル12の下方には、操縦部13の床面を形成するステップ14を設けている。
【0009】
更に詳しくは、昇降リンク機構4の後端には、リンクホルダ15が取付けてあり、このリンクホルダ15に備える図示しないローリング軸に、植付作業機5をローリング可能に支持する角パイプ状の植付フレーム16を横設している。そして、植付フレーム16に立設した左右一対の苗載台支持フレーム17によって、前高後低状の傾斜姿勢で左右往復動可能に苗載台18を支持している。
【0010】
そして、植付フレーム16の後側下部には、複数の植付伝動ケース19を所定の間隔を存して取り付けてあり、この植付伝動ケース19に内装した図示しないチェン伝動機構及び植付駆動軸等を介して、当該植付伝動ケース19の後端部に組付けられた植付装置(ロータリケース)21の両端部に備える左右一対の移植杆22が回転駆動する。即ち、植付装置21には、自らの回転に伴って移植杆22を所定の軌跡に沿って回転運動させることができる図示しない遊星ギヤ機構を内装しており、それによって苗載台18上に並置されているマット苗から一株分の苗を掻取って連続的に圃場Fに移植することができるようになっている。
【0011】
また、植付伝動ケース19の下方には、植付作業機5を所望の高さに制御するための油圧感知フロート(検知体)として作用すると共に、圃場面を整地する整地フロート(整地体)を兼ねるセンターフロート23(図6参照)と、左右の前輪6と後輪7の車輪跡を消して圃場面を整地する整地フロートであるサイドフロート24を支持しており、これらセンターフロート23とサイドフロート24の下面が圃場面に接地して滑走する状態まで植付作業機5を下降させた後、機体を走行させながらの移植作業が行なえるようになっている。尚、センターフロート23及びサイドフロート24は、植付作業機5の底部、即ち植付伝動ケース19下方の後支点P周りに上下揺動自在に支持されている。
【0012】
そして、上述した後輪7とセンターフロート23(サイドフロート24)との前後空間S、即ち植付作業機5の前方には、複数の整地ロータ25を植付作業機5の略全幅にわたってロータ軸26に軸支した整地装置27を配設してあり、当該整地ロータを圃場面に接地させた状態で回転駆動することによって、移植杆22による苗植え付け位置前方の荒れた圃場面や枕地等の荒れた圃場面を整地できるようになっている。
【0013】
また、操作パネル11の左側には、図1及び図2に示すように、主変速レバー31をレバーガイド32に挿通して設けると共に、この主変速レバー31の下方にトランスミッションケースTが配置されている。そして、トランスミッションケースTの左側面には、油圧式無段変速装置Hが取り付けてあり、機体の走行速度は油圧式無段変速装置Hによる主変速と、トランスミッションケースT内に構成される副変速ギヤの切換え(副変速機構)による副変速とによって決定されるようになっている。
【0014】
更に詳しくは、主変速レバー31の基端部には、該主変速レバー31の前進側〜後進側の変速操作位置を検出するための主変速レバーポテンショメータ33を設けると共に、この主変速レバーポテンショメータ33による主変速レバー31の変速操作位置の検出結果に基づいて、油圧式無段変速装置Hの操作アーム34を連動して作動させるべく、該操作アーム34にロッド35を介して電動シリンダ36のロッド側36aを連結する一方、電動シリンダ36のモータユニット側36bを上述したレバーガイド32の取付部材37に支承している。
【0015】
そして、図3に示すように、レバーガイド32に形成したガイド溝32aに沿って主変速レバー31を前後及び左右に揺動操作することによって、油圧式無段変速装置Hの変速操作を行うことができるようになっている。即ち、主変速レバー31は、油圧式無段変速装置HをニュートラルとするニュートラルポジションNから前方側Fに操作することにより、油圧式無段変速装置Hを前進側に操作して前進速度を増加させ、一方主変速レバー31をニュートラルポジションから後方側Rに操作することにより、油圧式無段変速装置Hを後進側に操作して後進速度を増加させるように設定してある。
【0016】
一方、操作パネル11の右側には、トランスミッションケースT内に構成した副変速機構を切換え操作するための副変速レバー38と、この副変速レバー38と略並行の外側方に、エンジンEの回転数を調節するためのスロットルレバー39とをレバーガイド41を介して突設してある。
【0017】
また、ステアリングハンドル12の右側近傍には、植付作業機5の昇降操作と植付クラッチの入切操作を行うことができる上下及び前後揺動可能な操作具として、手を離すと元の位置(中立位置)に自動復帰するクイックアップレバー42を備えており、このクイックアップレバー42の上下方向の操作によって植付作業機5の昇降、及び図示しない植付クラッチの入切がなされると共に、該クイックアップレバー42の前後方向の操作によって左右の線引きマーカ43L,43Rの振出し方向(作動開始順序)を選択できるようになっている。
【0018】
そして、図4に示すように、植付作業機5を昇降させる油圧シリンダ3の伸縮動作を制御する油圧コントロールバルブ53の近傍には、上述したクイックアップレバー42の上方または下方への操作を検出するクイックアップレバー上げスイッチ42a(図5参照)、とクイックアップレバー下げスイッチ42b(図5参照)の入り作動に基づいて回転駆動するリフタカムモータ54を配設してあり、このリフタカムモータ54の出力軸に固設したピニオンギヤ54aと、リフタカム55の一側に形成したセクタギヤ55aとを歯合させると共に、図示しないバルブ操作板の係合ピンと係合する第1カム部をリフタカム55に設け、この第1カム部がバルブ操作板の係合ピンに係合した状態で、リフタカム55がスリーブ軸56を中心として回動するように構成することによって、当該リフタカム55をリフタカムモータ54の回転駆動に応じて、上げ・固定・自動(下降)・植付の4ポジションに移動制御できるように構成している。即ち、リフタカム55の各ポジションへの回動により、油圧コントロールバルブ53を上げ・固定・自動位置に制御すると共に、油圧コントロールバルブ53の下げ位置において、クイックアップレバー上げスイッチ42aまたはクイックアップレバー下げスイッチ42bの入り作動による植付クラッチの入り切りを可能にしている。
【0019】
また、乗用型田植機1には、上述した油圧コントロールバルブ53を上げ・固定・自動位置に制御する制御手段として、図5に示すブロック図のような制御部61を備えている。この制御部61は、CPU、ROM、RAM等を備えて構成されており、当該制御部61の入力側に接続される各種センサ及びスイッチ類、及び出力側に接続される出力装置について以下説明する。
【0020】
制御部61の入力側には、植付作業機5を昇降操作するクイックアップレバー42の上方、または下方への操作を検出するクイックアップレバー上げスイッチ42aとクイックアップレバー下げスイッチ42b、植付作業機5へ動力を伝達する植付クラッチの入切操作を可能にする作業機準備スイッチ62、リフタカム55の回動角度を検出するリフタ(作業機操作)カムポテンショメータ63、植付作業機5の上昇高さを検出するリフタ角ポテンショメータ64、警報停止スイッチ65、詳細は後述する畦際(畦越え)制御を可能にする畦越スイッチ66、油圧感知フロートであるセンターフロート23の基準姿勢を設定する基準値調節ダイヤル67、図示しないオルタネータの出力パルスをカウントすることによりエンジンEの回転数を検知するエンジン回転パルスユニット68、機体の前後方向の傾斜を検出するピッチングセンサ69、及び基準値調節ダイヤル67によって調整されるセンターフロート23の基準姿勢を検出する感知ワイヤポテンショメータ71を所定の入力インタフェース回路を介して接続している。
【0021】
一方、制御部61の出力側には、乗用型田植機1による植付作業が行なわれていることを表示する植付モニタ72、植付作業機5の水平自動制御が実行されていることを表示する水平自動モニタ73、乗用型田植機1による畦越え作業が行なわれていることを表示する畦越モニタ74、前記畦越え作業中に機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上になった時、オペレータに注意を促す警報ブザー75、上述のリフタカムモータ54、及び基準値調節ダイヤル67の設定変更に連動してセンターフロート23(フロート感度調節ワイヤ86)の出量を調節する感知ワイヤモータ87(図6参照)を所定の出力インタフェース回路を介して接続している。
【0022】
ところで、座席9下方の機体フレーム2の一側には、油圧コントロールバルブ53の取付ブラケット82を設けている。そして、前記取付ブラケット82からプレート状のベース83を後方に向けて延出してあり、このベース83に、リフタカムモータ54と、図6に示すように、基準値調節ダイヤル67の設定変更に連動してセンターフロート23(フロート感度調節ワイヤ86)の出量を調節する感知ワイヤモータ87を装着すると共に、該感知ワイヤモータ87に備えるピニオンギヤ88に歯合するセクタギヤ89を回動可能に軸着している。更にこのセクタギヤ89の回動方向の両端部にピン91,92を固設してあり、この後側のピン91から油圧コントロールバルブ連動ワイヤ93、連係リンク94、戻しスプリング95等を介して、油圧コントロールバルブ53の作動アーム96と接続すると共に、前側のピン92からはフロート感度調節ワイヤ86、感知プレート97等を介してセンターフロート23と接続することにより油圧感知機構Dを形成している。
【0023】
更に詳しくは、上述した油圧コントロールバルブ53の自動位置において、圃場に追従して上下揺動するセンターフロート23に油圧感知機構Dを連動させて油圧コントロールバルブ53を操作することで、当該センターフロート23の姿勢を一定に保つべく植付作業機5を昇降させるように構成している。つまり、油圧コントロールバルブ53が自動位置にあって、センターフロート23が圃場に接地していなければ、センターフロート23の前部は下方に揺動して植付作業機5は下降するようになっており、この植付作業機5の非接地状態からの下降は、前記油圧コントロールバルブ53の自動位置での下降動作を利用している。
【0024】
次に、上述した制御部61による乗用型田植機1の畦際(畦越え)制御を図7から図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0025】
図7は、畦際(畦越え)制御の第一実施例を示すフローチャートであって、先ず、ステップS1では、植付作業機5へ動力を伝達する植付クラッチの入切操作を可能にする作業機準備スイッチ62が入り状態にあるか切り状態にあるかを判断し、切り状態にあれば元に戻り、入り状態にあればステップS2に進む。
【0026】
ステップS2では、畦際(畦越え)制御を可能にする畦越スイッチ66が入り状態にあるか切り状態にあるかを判断し、切り状態にあれば元に戻り、入り状態にあればステップS3に進む。
【0027】
ステップS3では、ピッチングセンサ69が検出する機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角(所定値)よりも小さいか、あるいは所定の傾斜角(所定値)以上になっているかを判断し、所定の傾斜角(所定値)よりも小さければ元に戻り、所定の傾斜角(所定値)以上になっていればステップS4に進む。
【0028】
ステップS4では、植付作業機5が植付作業状態にあるか否かをリフタカムポテンショメータ63によって判断し、植付作業状態以外であればステップS5に進み、図8に示すように機体のみが前上がり傾斜した植付作業状態にあればステップS10に進む。
【0029】
ステップS5では、リフタ角ポテンショメータ64によって検出される植付作業機5の高さが所定の高さ、即ち図9に示すようにセンターフロート23が接地しない所定の高さにあるか否かを判断し、所定の高さにあればステップS6に進んでその高さ位置で植付作業機5を固定して元に戻り、所定の高さになければステップS7に進む。
【0030】
ステップS7では、リフタ角ポテンショメータ64によって検出される植付作業機5の高さが上述した所定の高さよりも高い位置にあるか低い位置にあるかを判断し、高い位置にあればステップS8に進んで植付作業機5を自動昇降制御状態として元に戻り、低い位置にあれば植付作業機5を上昇させる制御を実行して元に戻る。
【0031】
一方、ステップS10では、検知体として作用するセンターフロート23の基準姿勢を、フロート感度調節ワイヤ86の出量を調節する感知ワイヤモータ87により前下り状態に姿勢変更せしめてステップS11に進む。
【0032】
ステップS11では、リフタ角ポテンショメータ64によって検出する植付作業機5の
上方変化量(リフト角)が、所定値よりも小さいか、あるいは所定値以上になっているかを判断し、所定値よりも小さければ元に戻り、所定値以上になっていればステップS12に進む。また、本願の植付作業機5の昇降制御は、ポテンショメータ等の検知体を用いて検出するセンターフロート23の上方揺動の検出値に基づいて、植付作業機5の昇降用アクチュエータである油圧シリンダ3を電磁バルブを介して作動させるように構成してもよく、その場合は、圃場面に接地するセンターフロート23の上方揺動をポテンショメータ等の検知体を用いて直接的に検出し、このポテンショメータ等の検知体の検出値によって植付作業機5の上方変化量(上昇高さ)を判断すればよい。
【0033】
そして、ステップS12では、検知体として作用するセンターフロート23の基準姿勢を、予め基準値調節ダイヤル67で設定していた元の状態に戻す制御を実行するように畦際(畦越え)制御を構成している。
【0034】
以上説明した畦際(畦越え)制御の第一実施例によれば、機体の前後方向の傾斜を検出するピッチングセンサ69が所定の傾斜角以上の機体の前上がり傾斜を検出した時、植付作業中であれば植付作業を継続し、植付作業中でなければセンターフロート23が接地しない所定の低位置(少なくとも植付作業機5昇降可能範囲の半分よりも下方で、且つセンターフロート23が接地しない高さ)に植付作業機5を位置させる制御手段61を設けたことによって、例えば乗用型田植機1を畦越えさせる場合のように、機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上になっても、乗用型田植機1が圃場から脱出するぎりぎりの状態(植終い)まで植付作業を継続することができると共に、植付作業を停止した状態で乗用型田植機1を畦越えさせる場合は、ピッチングセンサ69により機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上であることを検出すると、センターフロート23が接地しない所定の低位置に植付作業機5を位置させて機体後部の重心位置を低くしながらセンターフロート23(サイドフロート24)の破損を防止することができるので、それによって機体前部の浮き上がりを防止しながら安全な圃場からの脱出が可能となる。また、オペレータが乗用型田植機1から降りることなく畦越え作業が行なえるので作業性も向上する。
【0035】
また、図10は、畦際(畦越え)制御の第二実施例を示すフローチャートであって、先ず、ステップS1では、植付作業機5へ動力を伝達する植付クラッチの入切操作を可能にする作業機準備スイッチ62が入り状態にあるか切り状態にあるかを判断し、切り状態にあれば元に戻り、入り状態にあればステップS2に進む。
【0036】
ステップS2では、畦際(畦越え)制御を可能にする畦越スイッチ66が入り状態にあるか切り状態にあるかを判断し、切り状態にあれば元に戻り、入り状態にあればステップS3に進む。
【0037】
ステップS3では、ピッチングセンサ69が検出する機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角(所定値)よりも小さいか、あるいは所定の傾斜角(所定値)以上になっているかを判断し、所定の傾斜角(所定値)よりも小さければ元に戻り、所定の傾斜角(所定値)以上になっていればステップS4に進む。
【0038】
ステップS4では、植付作業機5が植付作業状態にあるか否かをリフトカムポテンショメータ64によって判断し、植付作業状態以外であればステップS5に進み、図8に示すように機体のみが前上がり傾斜した植付作業状態にあればステップS7に進む。
【0039】
ステップS5では、リフタカム55の回動角度を検出するリフタ(作業機操作)カムポテンショメータ63の検出値によって植付作業機5が自動昇降制御状態にあるか、あるいは植付作業機5が固定位置か上昇動作中であるかを判断し、植付作業機5が自動昇降制御状態にあれば元に戻り、植付作業機5が固定位置か上昇動作中であればステップS6に進んで植付作業機5を自動昇降制御状態として元に戻る。
【0040】
一方、ステップS7では、検知体として作用するセンターフロート23の基準姿勢を、フロート感度調節ワイヤ86の出量を調節する感知ワイヤモータ87により前下り状態に姿勢変更せしめてステップS8に進む。
【0041】
ステップS8では、リフタ角ポテンショメータ64によって検出する植付作業機5の
上方変化量(リフト角)が、所定値よりも小さいか、あるいは所定値以上になっているかを判断し、所定値よりも小さければ元に戻り、所定値以上になっていればステップS9に進む。
【0042】
そして、ステップS9では、検知体として作用するセンターフロート23の基準姿勢を、予め基準値調節ダイヤル67で設定していた元の状態に戻す制御を実行するように畦際(畦越え)制御を構成している。
【0043】
以上説明した畦際(畦越え)制御の第二実施例によれば、機体の前後方向の傾斜を検出するピッチングセンサ69が所定の傾斜角以上の機体の前上がり傾斜を検出した時、植付作業中であれば植付作業を継続し、植付作業中でなければ、植付を停止した状態でセンターフロート23を接地させた植付作業機5の自動昇降制御を実行する制御手段61を設けたことによって、例えば乗用型田植機1を畦越えさせる場合のように、機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上になっても、乗用型田植機1が圃場から脱出するぎりぎりの状態(植終い)まで植付作業を継続することができると共に、植付作業を停止した状態で乗用型田植機1を畦越えさせる場合は、ピッチングセンサ69により機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上であることを検出すると、植付作業機5が非接地状態であっても自動的に接地し、圃場に接地するセンターフロート23でもって機体前部の浮き上がりを支えることができるので、それによって機体前部の浮き上がりを防止しながら安全な圃場からの脱出が可能となる。また、オペレータが乗用型田植機1から降りることなく畦越え作業が行なえるので作業性も向上する。
【0044】
更に、ピッチングセンサが検出する機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上となる状態で乗用型田植機1を畦越えさせる場合は、乗用型田植機1が圃場から脱出するぎりぎりの状態(植終い)まで植付作業を継続しようとすると、センターフロート23の先端が畦際の傾斜面に到達した瞬間に当該センターフロート23が基準姿勢を越えて極端な前上がり状態となり、このセンターフロート23の前上がり姿勢に連動する植付作業機5の急上昇により浮き苗が発生してしまうが、ピッチングセンサ69が検出する機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上になった時、上述した畦際(畦越え)制御の第一実施例(ステップS10)と第二実施例(ステップS7)では、植付作業中であればセンターフロート23の基準姿勢を前下り状態に姿勢変更することによって、上述のセンターフロート23の姿勢に連動する植付作業機5の植終いにおける急上昇を阻止して浮き苗の発生を防止できるようにしてある。
【0045】
そしてこの時、リフタ角ポテンショメータ64によって検出される植付作業機5の上方変化量、即ち植付作業機5を昇降作動させる昇降リンク機構4のリフト角が所定値以上になると、第一実施例(ステップS12)と第二実施例(ステップS10)では、検知体として作用するセンターフロート23の基準姿勢を予め基準値調節ダイヤル67で設定していた元の状態に戻すので、それによって図11に示す如くセンターフロート23とサイドフロート24の底面が接地するように植付作業機5が昇降制御され、両フロート23,24を接地させながら安全かつ安定した圃場Fからの脱出が可能となる。
【0046】
また、図12は、畦越え警報制御を示すフローチャートであって、先ず、ステップS1では、植付作業機5へ動力を伝達する植付クラッチの入切操作を可能にする作業機準備スイッチ62が入り状態にあるか切り状態にあるかを判断し、入り状態にあればステップS2に進み、切り状態にあればステップS3に進んで乗用型田植機1による畦越え制御が行なわれているか否かを表示する畦越モニタ74に消灯出力して元に戻る。
【0047】
ステップS2では、畦際(畦越え)制御を可能にする畦越スイッチ66が入り状態にあるか切り状態にあるかを判断し、入り状態にあればステップS4に進み、切り状態にあればステップS3に進んで畦越モニタ74に消灯出力して元に戻る。
【0048】
ステップS4では、ピッチングセンサ69によって機体の前上がり傾斜を検出したか否かを判断する。この場合の機体の前上がり傾斜は、上述した畦際(畦越え)制御の第一実施例と第二実施例で検出する所定の傾斜角(所定値)よりも小さい値であって、この機体の前上がり傾斜を検出したならばステップS5に進み、検出していなければステップS6に進んで畦越モニタ74に点灯出力して元に戻る。
【0049】
一方、ステップS5では、畦越モニタ74に点滅出力すると共に、警報ブザー75に出力してステップS7に進む。即ち、ステップS5では、畦際(畦越え)作業中にあることを畦越モニタ74の点滅と警報ブザー75の出力によってオペレータに知らしめことができるので、オペレータは、畦際(畦越え)作業中における植付作業機5の自動昇降動作に備えながら安全な作業が行なえる。
【0050】
そして、ステップS7では、警報停止スイッチ65が入り状態にあるか切り状態にあるかを判断し、警報停止スイッチ65が入り状態にあればステップS8に進んで警報ブザー75への警報出力を停止して元に戻り、警報停止スイッチ65が切り状態にあれば元に戻る制御を実行するように構成している。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】植付作業状態の乗用型田植機の側面図。
【図2】主変速レバーの連係構造を示す側面図。
【図3】操作パネル周辺の平面図。
【図4】油圧コントロールバルブ周辺の構成を示す側面図。
【図5】制御部のブロック図。
【図6】油圧感知機構の構成を示す側面図。
【図7】畦際(畦越え)制御の第一実施例を示すフローチャート。
【図8】植付作業状態で畦越えに入る乗用型田植機の側面図。
【図9】畦越えする乗用型田植機の側面図。
【図10】畦際(畦越え)制御の第二実施例を示すフローチャート。
【図11】フロートを接地させた状態で畦越えする乗用型田植機の側面図。
【図12】畦越え警報制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0052】
5 植付作業機
23 フロート
61 制御手段
69 ピッチングセンサ
P 後支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の後部に昇降自在に連結した植付作業機(5)の底部に後支点(P)周りに上下揺動するフロート(23)を備え、このフロート(23)の上下揺動姿勢が基準姿勢となるように植付作業機(5)を自動的に昇降制御する移植機(1)において、機体の前後方向の傾斜を検出するピッチングセンサ(69)が所定の傾斜角以上の機体の前上がり傾斜を検出した時、植付作業中であれば植付作業を継続し、植付作業中でなければフロート(23)が接地しない所定の低位置に植付作業機(5)を位置させる制御手段(61)を設けたことを特徴とする移植機。
【請求項2】
機体の後部に昇降自在に連結した植付作業機(5)の底部に後支点(P)周りに上下揺動するフロート(23)を備え、このフロート(23)の上下揺動姿勢が基準姿勢となるように植付作業機(5)を自動的に昇降制御する移植機(1)において、機体の前後方向の傾斜を検出するピッチングセンサ(69)が所定の傾斜角以上の機体の前上がり傾斜を検出した時、植付作業中であれば植付作業を継続し、植付作業中でなければ、植付を停止した状態でフロート(23)を接地させた植付作業機(5)の自動昇降制御を実行する制御手段(61)を設けたことを特徴とする移植機。
【請求項3】
前記ピッチングセンサ(69)が検出する機体の前上がり傾斜が所定の傾斜角以上になった時、植付作業中であればフロート(23)の基準姿勢を前下り状態に姿勢変更する請求項1または請求項2に記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−278923(P2009−278923A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134862(P2008−134862)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】