説明

移植機

【課題】植付爪9が大きく増減速される速度変更される速度変更点で爪ケース13のギクシャク作動を抑制して、植付爪9の先端部の動きを滑らかにすると共に、植付駆動軸10に対する負荷を軽減し植付作業をスムーズに行うことができる移植機を提供する。
【解決手段】植付伝動ケース7の植付駆動軸10に設けた回転ケース11の両端部に植付軸12を軸支し、該植付軸12に植付爪9を有する一対の爪ケース13を設け、回転ケース11に対して相対回転する爪ケース13の植付爪9によって、苗載台6aから苗を掻取り土中に植付ける回転植付部8を備えた移植機であって、前記回転植付部8の植付軸12を中心として植付爪9の反対側に、爪ケース13の回転バランスをとる回転バランスウェイト15を爪ケース13と一体回転をするように設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台から苗を掻取って圃場に植え付ける田植機等の移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転ケースの両端部に設けられる一対の植付爪を回転ケースの回転に伴って苗載台から苗を掻取り土中に植付ける回転式の植付機構を備える移植機は、植付爪が適正な植付爪軌跡を描いて周期運動するように、回転ケース内に非円形ギヤ列、偏心ギヤ列等の不等速伝達機構を組み込み、該不等速伝達機構によって植付爪支持ケース(爪ケース)の姿勢をコントロールするように構成されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、近年の移植機では、前の植付株間を10〜20ミリ程度の標準株間を基準にして植える標準株間植付けに対し、植付け苗の成育条件( 日照、通気等)等を考慮し植付株間を20〜25ミリ程度に広げた疎植株間で植えることにより苗の分けつを促し、増収を図るようにする広株間植付けが行なわれる。
従来、上記のように標準株間植付けと広株間植付けを行なうことができる移植機は、エンジン動力を植付機構に伝達するミッションケースの伝動経路中に、株間変速機構と植付機構を等速または不等速回転させる回転変速機構を設けている。この回転変速機構は株間変速機構の小株間側(標準株間植付け)への変速操作に伴い等速回転に切替わり、広株間側への変速操作に伴い不等速に切替わるように構成されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−180562号公報
【特許文献2】特開2004−313039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で示される移植機は、回転ケースを有する植付駆動軸の慣性に起因する先行回転による振動衝撃を取るブレーキ機構を付設し、植付爪軌跡の全範囲において植付爪がガタツキ作動をすることなく植付作業を行なう利点がある。然しながら、上記のようにブレーキ機構を付加した移植機は、植付駆動軸を植付爪軌跡の所定位置でタイミングよく制動及制動解除させる構造が複雑でコスト高になると共に、制動調整等の作業が煩雑になる等の欠点がある。
【0005】
また上記特許文献2で示される移植機は、標準株間植付けと広株間植付けをミッションケースの変速レバーによって切換え選択し、広株間側への変速操作により回転植付部を不等速回転させるように構成しているので、植付機構の植付周期を変えることなく一周期中の植付動作速度を不等速変化させて、植付走行時における植付爪の土中動作速度を速くし、苗の引き摺りを防止することができる。然し、この植付機構は回転ケースが不等速回転されるため、植付爪軌跡の上下位置に設定される最速位置での植付爪の慣性により駆動負荷の変動が大きくなって振動が増大するという欠点を有している。
【0006】
即ち、上記いずれの植付機構も、植付爪軌跡の増速から減速に又は減速から増速に変更する増減速変更点において、植付爪を備えた爪ケースの重心変位による起振力が増大し、爪ケースがギクシャク作動をしたり慣性による振動を発生し、また植付駆動軸に回転ケースを介して衝撃的な負荷を掛けるため大きな駆動力を必要とする等の問題がある。さらに、植付機構の植付周期を変えることなく回転変速機構を変速操作して一周期中の植付動作速度を不等速変化させて広株間植付けを行う際には、図12で示す標準株間植付けの等速回転植付爪軌跡に加え、図13で示すように広株間植付け時には植付爪軌跡の上下位置での植付爪速度が不等速運動により高速化されるため、爪ケースの重心変位による起振力がより増大すると共に、植付爪の動きが爪ケースのギクシャク作動によって滑らかさを欠いた植付作業になる等の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の移植機は、第1に、植付伝動ケース7の植付駆動軸10に設けた回転ケース11の両端部に植付軸12を軸支し、該植付軸12に植付爪9を有する一対の爪ケース13を設け、回転ケース11に対して相対回転する爪ケース13の植付爪9によって、苗載台6aから苗を掻取り土中に植付ける回転植付部8を備えた移植機において、前記回転植付部8の植付軸12を中心として植付爪9の反対側に、爪ケース13の回転バランスをとる回転バランスウェイト15を爪ケース13と一体回転をするように設けたことを特徴としている
【0008】
第2に、回転バランスウェイト15を機体左右方向で、回転ケース11と爪ケース13の間に設けたことを特徴としている
【0009】
第3に、回転バランスウェイト15を、一端に爪ケース13を有して回転ケース11に軸支される植付軸12の他端に取付けたことを特徴としている
【0010】
第4に、回転バランスウェイト15を隣接する爪ケース13の植付爪9の植付爪軌跡と側面視で一部ラップさせて設けたことを特徴としている
【0011】
第5に、回転バランスウェイト15を、植付爪9に対設されるフォーク9aの最引き込み姿勢で回転バランス調整を行なうことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明による移植機は次のような効果を奏する。回転植付部の植付軸を中心に植付爪の反対側に、爪ケースの回転バランスをとる回転バランスウェイトを爪ケースと一体回転をするように設けたことにより、植付爪軌跡の上下位置で植付爪速度が増減速変更点において、爪ケースのギクシャク作動や慣性による振動を抑制し、植付爪の先端部の動きを滑らかにすると共に、植付駆動軸に対する衝撃的な負荷を軽減し植付作業をスムーズに行うことができる。
【0013】
回転バランスウェイトを機体左右方向で、回転ケースと爪ケースの間に設けたことにより、回転ケースと爪ケースの間に形成したウェイト空間部に、回転バランスウェイトを爪ケースと植付軸を中心とする対称位置で重量を等しくするように構成することができる。また回転バランスウェイトを外側に大きく突出させることなく回転ケースに近接させて回動させることができる。
【0014】
回転バランスウェイトを、一端に爪ケースを有して回転ケースに軸支される植付軸の他端に取付けたことにより、隣接する爪ケースとの干渉を考慮することなく、爪ケースとの回転バランスを最適にするように回転バランスウェイトの形状を設定することができる。また爪ケースと回転バランスウェイトとの全体重心位置を植付軸の中途で回転ケースの中心部に置くことができ、回転時に植付軸のスラスト荷重を低減させ回転植付部の回転運動をスムーズに行わせることができる。
【0015】
回転バランスウェイトを隣接する植付爪軌跡と干渉しない位置で一部ラップさせるように設けることにより、回転バランスウェイトを植付軸を中心とする対称位置で爪ケースと回転バランスをとり易くすることができると共に、隣接する植付爪との干渉を防止し回転植付部にコンパクトに纏めて構成することができる。
【0016】
植付爪が植付爪軌跡の最速位置でフォークが最引き込み姿勢になるとき、回転バランス調整を行なうことにより、植付軸を介して対向する回転バランスウェイトが高速で姿勢変更する際の爪ケースの大きな慣性を低減させるので、植付爪の動きを滑らかにした植付作業をスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1において符号1は乗用田植機(移植機)であって、前輪1aと後輪1bを左右に有する走行機体2の前側にボンネットで覆われるエンジン3を搭載して後方に操縦部4を設置し、機体後部に構成される3点リンク方式の昇降機構5に植付装置6を装着している。この植付装置6は前高後低状に傾斜させてマット苗を左右に並列状に載置する苗載台6aを有し、該苗載台6aの下端部位置において後述する複数の植付伝動ケース7の後部端に構成される回転植付部8が有する植付爪9の植付け作動によって、横方向に往復作動する苗載台6aから1株毎の苗を掻取って圃場に植付けることができる。
【0018】
上記植付装置6は、昇降機構5の後部に取付支持される植付フレーム6bに前記複数の植付伝動ケース7を左右方向に所定間隔を有して後方に延出しており、各植付伝動ケース7の後端部に横向きに突出させて軸支した植付駆動軸10に、植付爪9を備えた回転植付部8を取付支持している。
この回転植付部8は、上記植付駆動軸10に中間部が軸支される回転ケース11と、該回転ケース11の両端部に軸支されて側方に向けて突出する植付軸12に軸支した爪ケース13とからなり、該爪ケース13の前壁部に植付爪9を着脱自在に設けている。そして、回転植付部8には本発明に係わる回転バランスウェイト15を後述する構成によって設けており、図12,図13で示すように植付爪9の先端が描く植付爪軌跡に基づく回転をスムーズに行なうようにしている。
【0019】
先ず植付装置6の伝動構成について説明すると、エンジン動力は走行機体3の後部に設置される図9〜図11で示す構成によりミッションケース16の入力軸17に入力され、各種の伝動軸,伝動ギヤ等の伝動機構の最終段に後方に向けて軸支されるPTO軸19によって、植付装置6の各植付伝動ケース7を接続する図示しない植付入力軸に入力し、前記植付駆動軸10が回転駆動される。
尚、上記植付入力軸は各植付伝動ケース7に内装されるチェン伝動機構を介し植付駆動軸10を回転駆動すると共に、苗載台6aを苗送り機構を介し横方向に往復作動させ且つ苗の繰り出し作動をする。
【0020】
上述した伝動系により植付駆動軸10が回転すると、回転植付部8の回転ケース11は図2で示す矢印方向に回転し、これに基づき爪ケース13が回動し植付爪9が植付爪軌跡を描いて苗載台6aから1株毎の苗の掻取りを行い圃場に植付けることができる。
上記回転植付部8は従来のものと同様に回転ケース11内の不等速伝動機構により、植付駆動軸10の駆動に伴って回転ケース11が回転すると、回転ケース11に内装される中間ギヤが太陽ギヤの周囲を公転しながら自転すると共に、遊星ギヤが逆回りに自転し、それに伴って爪ケース13が植付駆動軸10を中心として公転しつつ植付軸12を中心として逆方向に不等速自転する。これにより爪ケース13は、回転ケース11が回転しても前下方を向く姿勢を以って図12,図13で示す植付爪軌跡を描くことができる。
【0021】
即ち、この植付爪軌跡は植付爪9の先端が苗載台6aの下端部から苗を掻取った後、前方に膨らむ円弧を描きながら土中の植付位置Pに達し、その後は直線的に上昇するという半月状の静止軌跡(走行停止時の先端運動軌跡)を描くように設定される。また、対をなして隣接する一方の植付爪9が苗載台6aから苗を掻取るとき、それと同時に他方の植付爪9が植付けを実行し、他方の植付爪9が苗載台6aから苗を掻取るとき、それと略同時に一方の植付爪9が植付けを実行するよう植付爪9の位置および軌跡が設定される。また植付爪9は対設するフォーク9aを進退作動自在に構成しており、苗の掻取り時点で最引き込み姿勢にされる。そして、回転ケース11が一回転する毎に二回の植付けを実行することを可能にしている。
【0022】
この植付爪軌跡は図9〜図11で後述するミッションケース19の伝動構成によって、
増減速域と最速位置が設定される。即ち、植付爪軌跡(植付爪の静止軌跡)において、各回転ケース11に設けられる植付爪9の個数が2である本実施形態においては従来のものと同様に、植付動力伝動経路に後述する不等速変換機構35及び減速機構30が介設されることにより、植付駆動軸10を不等速に回転させて植付爪9の先端速度に図13に示す増速域D〜A,B〜Cと減速域A〜B,C〜Dを発生させる。これにより、各植付爪9の掻取運動速度および土中運動速度が増速される一方、掻取苗を保持している中間運動域の運動速度が減速される。
【0023】
また、各増速域D〜A,B〜Cには略180度ずらして二つの最速位置A,Cを存在させ、各減速域A〜B,C〜Dには略180度ずらして二つの最遅位置を存在させる。一方の最速位置は植付爪9が苗を植付けた直後となるように設定され、他方の最速位置は植付爪9が苗を掻取るときに合致するように設定される。
尚、図12で示す植付爪軌跡は標準植付爪軌跡は、回転ケース11内の不等速伝動機構による植付爪速度の増減が示してある。そして、機体の走行に伴いランニング軌跡を図14で後述するように描くことができる。
【0024】
次にミッションケース6について図9〜図11を参照し説明する。このミッションケース16は特許文献2で示されるものと同様な構成によって、エンジン入力軸20に入力された動力を、エンジン入力軸20に回転自在に支持された筒軸21と、該筒軸21に並列する中間伝動軸22と、該中間伝動軸22に並列する株間変速軸23と、該株間変速軸23に回転自在に支持された筒軸24と、該筒軸24に回転自在に支持される筒軸25とを経由してPTO軸19に伝動する。
【0025】
入力軸20と筒軸21との間には、主クラッチ機構26が構成されており、その入り切り動作に応じて、走行動力及び植付動力が断続される。主クラッチ機構26の伝動下手側となる筒軸21には、走行動力を取り出すギヤ27と、植付動力を取り出す伝動ギヤ28とが一体的に設けられており、伝動ギヤ28は常時噛合するギヤ29を介して、中間伝動軸22に植付動力を伝動している。
【0026】
上記中間伝動軸22と株間変速軸23の伝動上手側端部との間に、第一株間変速機構30を構成している。図10,図11で示すように第一株間変速機構30は、中間伝動軸22に一体的に設けられる二枚のギヤ31,32と、株間変速軸23にスプライン嵌合する変速ギヤ33とを備えた構成になっている。変速ギヤ33は、三つのギヤ部33a,33b,33cを有し、各ギヤ部33a,33b,33cが二枚のギヤ31,32に対して選択的に噛み合うことにより、三段の株間変速を可能にしている。
【0027】
また筒軸24の伝動下手側端部には、第二株間変速機構35を構成する変速ギヤ36をスプライン嵌合し、該変速ギヤ36は、中間伝動軸22に回転自在に支持されるギヤ37に噛み合う位置と、図11で示す側面の噛合歯36aが筒軸25の噛合歯25aに噛み合う位置とに変速操作されて二段の変速を行うことができる。これにより第二株間変速機構35による二段の変速と、第一株間変速機構30による三段の変速とを組み合せることによって、六段階の株間調整を行うことができるようになっている。
【0028】
上記ギヤ37には、不等速伝達機構38を構成する偏心ギヤ39が一体的に設けられている。この偏心ギヤ39は、筒軸25に一体的に設けられる偏心ギヤ40に常時噛合される。つまり、第二株間変速機構35のギヤ36,37同士を噛み合わせた場合には、筒軸24の動力が不等速伝達機構38を経由して筒軸25に伝動されることになる。これにより、植付動力の等速・不等速の切換えができるだけでなく、第二株間変速機構35の変速ギヤ36を回転変速機構として利用し、上述した等速・不等速の切換えを行うことを可能にしている。そして、株間変速軸23の回転はベベルギヤ39から、これに噛合するベベルギヤ39aを介してPTO軸19に伝動される。
【0029】
尚、上記第二株間変速機構35の変速は、ミッションケース16にスライド自在に軸支されたシフタ軸41の一端に設けた変速レバー42の傾倒操作によって、シフタ軸41のシフタフォーク43に係合する変速ギヤ36を左右動させて行うことができる。また第一株間変速機構30の変速は、上記のものと同様な構成からなる図示しない変速レバーの傾倒操作によって、シフタ軸のシフタフォークに係合する変速ギヤ33を左右動させて行うようにしている。
【0030】
次に、図14を参照し上記ミッションケース16の変速機構及び回転植付部8によって植付爪9が走行植付作業時に描くランニング軌跡について説明する。
先ず、同図で示すランニング軌跡R1は、不等速変速をしないで等速変速の回転ケース11内の不等速伝動機構でのみ植付爪速度の増減を与えて株間を広く設定(車速に対する植付速度を遅くする。)した場合のランニング軌跡であり、このときは土中における植付爪9の運動速度が不足することから、機体進行に伴う植付爪9の土中前方移動量を大きくして植付位置Pから爪引き上げ軌跡r2を後方になだらかに描くので、植え付けた苗が植付爪9によって引き摺られる可能性がある。
これに対しランニング軌跡R2は、さらにミッションケース6内の不等速伝動機構で不等速変速をした図13で示す植付爪速度の増減を加えて株間を広く設定した場合のランニング軌跡であり、植付爪9が苗を植付けた直後に最速位置を存在させているため、土中における植付爪9の運動速度が増速される。これにより機体進行に伴う植付爪9の土中前方移動量が小さくなり植付位置Pから爪引き上げ軌跡r2を鋭角状に描くので、苗を植え付けた植付爪9の引き上げ速度を速くして植付爪9と植付苗との干渉を回避することができ、不等速回転による広株間植付けを良好に行うことができる。
【0031】
以上のように植付爪軌跡及びランニング軌跡を描いて植付作業を行なう移植機1は、回転植付部8の植付駆動軸10を中心に植付爪9を有する爪ケース13と回転バランスを取る回転バランスウェイト(以下単にウェイトと言う)15を設けた回転バランス構造を備えた構成にしている。これにより特に植付駆動軸10を不等速回転させて植付爪軌跡をコントロールするとき、植付爪9を備えた爪ケース13の重心変位による起振力をウェイト15によって相殺し、回転植付部8の回転時の振動を低減させると共に、植付駆動軸10の回転を滑らかにしスムーズな植付作業を行うことができるようにしている。
先ず図2〜図4で示す第1実施形態に係わる回転バランス構造について説明すると、回転ケース11の両端部に植付軸12によって軸支されて対をなす爪ケース13は、軸支側(基部側)に対し植付爪9を取付ける先端部側を側方に偏寄させ、平面視でく字状に形成することにより、図3で示すように回転ケース11の側面と爪ケース13との間にを形成し、該ウェイト空間部51にウェイト15を介装する構成としている。
【0032】
上記ウェイト15は肉厚なウェイト部52と該ウェイト部52の一側に延設した平板状の取付部53とからなり、ウェイト部52は爪ケース13に取付けた状態でウェイト空間部51で隣接する植付爪9の外側に位置し、側面視で両端部を爪ケース13の上下に臨ませたく字形状をなして中間部を可及的に近接させ、且つ外周形状は外周面が描く植付時の軌跡が隣接する爪ケース13と接触しないく字状の外形状に形成している。
そして、ウェイト空間部51に設置されるウェイト15は、側面視において植付爪軌跡の一部にラップさせるように設けることにより、ウェイト15はウェイト空間部51内にコンパクトに収めながら重量を大きくする形状とし、全体として爪ケース13と植付軸12を中心とする対称位置で重量が等しくなるように構成している。
【0033】
また図2,図4で示すようにウェイト15は取付部53を、爪ケース13の内側面で植付軸12に嵌挿させた状態において、その両側に長孔状の取付孔55,56を穿設しており、該取付孔55,56に挿入されるボルト57,58と取付座59によって爪ケース13に取付固定するようにしている。
図示例のウェイト取付構造は、爪ケース13の側面に対し上記のようにセットしたウェイト15の取付部53に取付座59を重ねた状態において、ボルト58を挿入して締着することにより、ウェイト15を爪ケース13に挟持固定することができる。また取付座59の他端部には、カム状の外周面を有するナット60を介装して位置決めする位置決め部61を形成しており、該位置決め部61に介装されるナット60に取付部53の取付孔55に挿入したボルト57を締着することができる。
【0034】
この際ウェイト15は植付軸12を支点に取付孔55,56の長孔の範囲で回動することができ、植付軸12を中心にウェイト15の重心位置と爪ケース13の重心位置とが釣り合う位置を定めて回転バランス調整をし、この位置でナット60の外周面を前記位置決め部61に接当させ位置決めした状態で、ボルト57及びボルト58を締着しウェイト15の取付固定を行なう。
これにより爪ケース13の重心に対するウェイト15の取付け調節を、爪ケース13の重心位置と植付軸12を基準として簡単に行うことができる。また上記回転バランス調整はウェイト15の重心位置を、爪ケース13の重心と植付軸12の中心とを結ぶ延長線上に置くように設けて調節設定することが望ましい。
【0035】
さらに、回転バランス調整は、植付爪9に対設されるフォーク9aを引き込み姿勢にした状態でウェイト15をバランス調整することが望ましい。即ち、フォーク9aの引き込み姿勢位置は、図13で前記した植付爪軌跡の上下で植付爪9が最高速位置にあるので、この位置においてウェイト15をバランス調整することにより、高速で姿勢変更する際の爪ケース13の大きな慣性を植付軸12を介して対向するウェイト15が相殺するように作用する。これにより爪ケース13は高速で大きく姿勢変更する際にも振動を抑制して植付爪9の先端部の動きを滑らかにすることができ、植付駆動軸10に対する衝撃的な負荷を軽減し植付作業をスムーズに行うことができる。
【0036】
以上のように構成される植付機構を備えた移植機1は、植付駆動軸10を中心に回転ケース11が回転しこれに基づき植付軸12を中心に爪ケース13が回動するとき、植付爪9を有する爪ケース13の重量と植付軸12を介して回転バランスとるウェイト15を爪ケース13と一体回転をするように設けたことにより、該爪ケース13と植付軸12を支点とする重量バランスを等しくすることを可能にする。これによりウェイト15は爪ケース13に対する植付軸12を中心とする回転バランス位置を簡単に設定することができる。また特に前記した植付爪軌跡の上下位置で植付爪9が大きく姿勢変更される姿勢変更点において、爪ケース13のギクシャク作動や慣性による振動を抑制して植付爪9の先端部の動きを滑らかにすると共に、植付駆動軸10に対する衝撃的な負荷を軽減し植付作業をスムーズに行うことができる等の特徴がある。
【0037】
次に、回転バランス構造の別実施形態について説明する。尚、前記実施形態のものと同様な構成及び作用については説明を省略する。先ず図5,図6で示す第2実施形態に係わる回転バランス構造は、回転ケース11の両端部で対をなす爪ケース13の先端側の外側面に、ウェイト15を側面からボルト60によって位置決め調節及び着脱自在に取付固定している。このウェイト15はウェイト部52を前記実施形態のものと略同様な形状となし、取付部53に複数穿設した長孔状の取付孔62にボルト63を挿入し、上記爪ケース13の外側面に回転バランス位置を定めて締着固定される。
【0038】
これにより、ウェイト15は爪ケース13の外側面に取付固定して隣接する植付爪9の先端部植付爪軌跡と側面視でラップさせるので、ウェイト15を隣接する爪ケース13及びウェイト15と干渉させない程度で充分に近接させた適正形状と肉厚を形成することができ、爪ケース13に対する最適な重量バランスを容易に設定することができる。
また組み付けや製作を行い易い簡潔な構成にすることができると共に、既存の移植機1に対しても回転植付部8の構成を大幅に変更することなく、後付け作業によっても簡単に設置することができる等の利点がある。
【0039】
図7,図8で示す第3実施形態に係わる回転バランス構造は、一端に爪ケース13を有する植付軸12を延長させて回転ケース11から突出させた軸端に、ウェイト15を取付部に穿設した取付孔を前記回転バランス位置を定めて嵌挿しボルト65によって取付固定することにより、回転ケース11を爪ケース13とウェイト15で挟んだ状態で、ウェイト15を回転ケース11と植付伝動ケース7との間に形成される空間を有効利用して設けている。尚、67はフォーク9aを進退作動させるカム筒軸であり、回転ケース11側に固定支持され植付軸12を回転自在に嵌挿している。
【0040】
この構成によれば、ウェイト15は回転ケース11を挟んで爪ケース13を有する植付軸12の他端に設けるので、隣接する爪ケース13との干渉を考慮することなく、爪ケース13との回転バランスを最適にするようにウェイト15の形状及び取付位置を容易に設定することができる。また植付軸12は両側で略等しくした重量の植付爪9とウェイト15が、互いの重心位置を植付軸12の中心に一致するように設けることがでる。また両者の全体重心位置を植付軸12の中途で回転ケース11の略中心に置くことができて、植付軸12回転時のスラスト荷重を抑制できるので軸支部の耐久性が向上すると共に、回転植付部8のスムーズな回転運動を行うことができる等の特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係わる移植機の全体側面図である。
【図2】移植機の回転植付部の構成を示す全体側面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図2の回転バランス構造を拡大をして示す側面図である。
【図5】第2実施形態に係わる回転バランス構造の全体側面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】第3実施形態に係わる回転バランス構造の要部の構造を示す側面図である。
【図8】図7の平断面図である。
【図9】移植機のミッションケースの構成を示す断面図である。
【図10】ミッションケースの要部の構成を示す部分断面図である。
【図11】ミッションケースの要部の構成を示す部分断面図である。
【図12】等速回転時の植付爪増減速を示す側面図である。
【図13】不等速回転時の植付爪増減速を示す側面図である。
【図14】植付爪のランニング軌跡である。
【符号の説明】
【0042】
1 移植機(乗用田植機)
2 走行機体
6 植付装置
6a 苗載台
7 植付伝動ケース
8 回転植付部
9 植付爪
9a フォーク
10 植付駆動軸
11 回転ケース
12 植付軸
13 爪ケース
15 回転バランスウェイト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付伝動ケース(7)の植付駆動軸(10)に設けた回転ケース(11)の両端部に植付軸(12)を軸支し、該植付軸(12)に植付爪(9)を有する一対の爪ケース(13)を設け、回転ケース(11)に対して相対回転する爪ケース(13)の植付爪(9)によって、苗載台(6a)から苗を掻取り土中に植付ける回転植付部(8)を備えた移植機において、前記回転植付部(8)の植付軸(12)を中心として植付爪(9)の反対側に、爪ケース(13)の回転バランスをとる回転バランスウェイト(15)を爪ケース(13)と一体回転をするように設けた移植機。
【請求項2】
回転バランスウェイト(15)を機体左右方向で、回転ケース(11)と爪ケース(13)の間に取付けた請求項1記載の移植機。
【請求項3】
回転バランスウェイト(15)を、一端に爪ケース(13)を有して回転ケース(11)に軸支される植付軸12の他端に設けた請求項1記載の移植機。
【請求項4】
回転バランスウェイト(15)を隣接する爪ケース(13)の植付爪(9)の植付爪軌跡と側面視で一部ラップさせて設けた請求項1又は2又は3記載の移植機。
【請求項5】
回転バランスウェイト(15)を、植付爪(9)に対設されるフォーク(9a)の最引き込み姿勢で回転バランス調整を行なう請求項1又は2又は3又は4記載の移植機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−72112(P2009−72112A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244089(P2007−244089)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】