説明

移送装置

移送装置は、外側及び内側を有する第1のシート部と、外側及び内側を有する第2のシート部とを備え、これらの内側は互いに向き合うように配置される。外側はそれぞれ、高摩擦係数表面を有する。第1のシート部及び第2のシート部は、解除可能に共に結合され、それによって第1のシート部の第2のシート部に対する相対運動を制限する。結合が解除されると、第1のシート部及び第2のシート部は互いに対して動くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、物体又は患者のような人物を動かすための移送装置に関し、より詳細には、ある表面から別の表面へ患者を移送することを含む、患者を動かすことに特に適した移送装置であって、患者を動かすことを担当している看護人に対する負担又はストレスを低減することのできる移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、患者が医療施設に担架で搬送されるとき、患者は通常、担架から手術台又は治療用の救急処置室のベッドのような別の支持面に移送される。さらに、治療の後、患者を手術台又はベッドから担架に移送しなければならない。そして、担架は患者を病室又はICUに運ぶ。その後、ここで患者は再びベッド上に移送される。患者は、医療施設での滞在中に何回も移送される可能性があり、これらの移送の全ては通常手動で行われる。
【0003】
重症の患者又は歩行不可能な患者に対応するとき、人物の扱いが困難である場合がある。肥満患者の場合、移送は、2人の看護人をもってしても非常に困難である可能性があり、潜在的に1人又は複数人の看護人に背部に対する負担又はストレスをもたらすおそれがある。意識がない患者を含む歩行不可能な患者、特に背部損傷又は頸部損傷を有する患者は、特に注意して、また患者の状態に悪影響を与えないか又は患者の状態を悪化させないように扱わなければならない。さらに、意識がないか又はあまりに弱っていて自分で動くことができない患者は、単にベッドのような表面上で位置を変えてもらうことを必要とする場合がある。意識がない患者又は弱っている患者は、患者の肺内に流体が蓄積されるのを回避するために、通常は、ある程度傾斜しているベッドの角度に起因して、ベッドから滑り落ちる傾向を有し得る。
【0004】
患者を動かすことに対する現在の解決策は、患者の下にシート又は板のような摩擦係数が低い装置を置き、その後、患者を該装置上で、例えば次の表面へと動かし、次いで該装置を取り除くことを含む。しかしながら、重症の患者に関しては、これは組織外傷又は組織損傷をもたらすおそれがある。最近では、膨張式エアパレットが使用されている。これらの装置のうちのいずれもが直面している1つの問題は、装置を患者の下に配置することである。他方の問題は、装置が、患者を動かすことを意図していないときに、患者が動くのを該装置が可能にし得るという安全上の問題をもたらすおそれがあるということである。
【0005】
したがって、移送又は位置変更が望ましいときに患者を動かすことを容易にする移送装置が必要とされている。この移送装置は、患者を動かす看護人の背部に対する負担及びストレスを低減することができるが、患者の移送又は位置変更が望ましくないときに、意図されずに患者が動く可能性を最小化又は低減する。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、物体又は患者のような人物を、動かすことが望ましいときに容易に動かすことを可能にするが、移送が望ましくないときに、物体又は人物の望まれていない動きを排除するとまではいかないが、低減する装置を提供する。
【0007】
本発明の一形態において、移送装置が、外側及び内側を有する第1のシート部と、外側及び内側を有する第2のシート部とを備え、各内側は互いに向き合うように配置される。第1のシート部は、第2のシート部に解除可能に直接的に又は間接的に結合され、その結合は、第1のシート部の第2のシート部に対する、側方運動、長手方向運動、又は回転運動のような並進運動を制限し、結合が解除されると、第1のシート部は、第2のシート部に対して動くか又は並進することができる。
【0008】
一態様において、移送装置は、第1のシート部と第2のシート部との間に形成される閉鎖室をさらに備える。この閉鎖室は、該閉鎖室に追加されるか又は該閉鎖室から取り除かれる媒体を含み、摩擦のような力を生成する。この力は、第1のシート部及び第2のシート部を、同様に直接的に又は間接的に共に結合する。例えば、媒体は、閉鎖室内に形成される真空圧を含むことができる。この場合、第1のシート部及び第2のシート部の内側が直接的に又は中間部材を通じて間接的に共に摩擦結合されて、第1のシート部の第2のシート部に対する相対運動を制限する。真空圧のような媒体が取り除かれると、第1のシート部及び第2のシート部は分離され、第1のシート部及び第2のシート部は、互いに対して並進するか又は動くことができる。
【0009】
他の適切な媒体の例は、2つのシート部を直接的に若しくは間接的に結合するための、2つのシート部間で生成される電荷、又は、後で例えば酸素を含む解除媒体のような別の媒体を加えることによって解除される接着結合のような化学結合を含む。
【0010】
代替的に、第1のシート部及び第2のシート部は、例えば縫合によって共に機械的に結合することができ、それによって第1のシート部の第2のシート部に対する相対運動を制限する。
【0011】
他の態様において、外側のそれぞれが高摩擦係数を有する一方、内側のうちの少なくとも一方は低摩擦係数表面を有する。
【0012】
別の態様において、移送装置は、折り重ねられて第1のシート部及び第2のシート部を形成するシートから形成される。例えば、シートは、折られると共にその端部において接合されて、閉じたループを形成することができ、さらに、メビウスの帯におけるように半回転分ひねることができる。
【0013】
さらに別の態様によれば、低摩擦係数表面は、シリコン(又はテフロン(登録商標)、UHMWPE等のような他の滑らかなポリマー)表面、又は、例えば散布によって塗布することのできるコーティングによって形成される。
【0014】
さらなる態様において、第1のシート部及び第2のシート部の外側表面のそれぞれは、ゴム引き表面又は同様の可撓性高摩擦表面を含み、それによって高摩擦係数表面を形成する。高摩擦係数表面は、実質的に切れ目なく続くことができるか、又は、高摩擦材料のパッチ若しくは領域のような別個のエリアから若しくはメッシュ生地から形成することができる。例えば、ゴム系コーティング又はゴム系構造又はゴム系生地を、例えば散布、成形、接着によって外側表面に付着させることができる。代替的に又は付加的に、表面変化を外側において提供するか又は該外側内に形成して高摩擦係数表面を形成することができる。このような表面変化は、畝、隆起、円錐構造若しくはプリズム構造を含むことができるか、又は、単に粗表面又はざらつきのある表面から形成することができる。
【0015】
さらに別の態様において、移送装置は、真空圧を解放するための真空解放装置を備える。例えば、真空解放装置は、つまみ又は引っ張り片又は引っ張り弦等を含むことができる。この真空解放装置は、引かれると、第1のシート部及び第2のシート部のうちの一方において隙間又は孔を形成する。代替的に、真空解放装置は、再密封可能なバルブのようなバルブを含むことができ、それによって移送装置を再使用することができる。
【0016】
本発明の別の形態では、移送装置は、それぞれが外側表面及び内側表面を有する上側部及び下側部を有する可撓性材料の閉じたループを備える。外側表面が高摩擦係数表面を含む一方、内側表面のうちの少なくとも一方は低摩擦係数表面を含む。閉じたループの端部は密閉されて、閉鎖室を形成する。閉鎖室は密閉されて真空圧を保持するが、真空圧が選択的に解放されるのを可能にするようになっている。真空圧が閉鎖室内で形成さると、真空圧は、上側部及び下側部の内側表面が直接的に又は中間部材を通じて共に摩擦結合されるようにループの上側部と下側部との間で垂直抗力を生成して、ループの上側部のループの下側部に対する側方相対運動を制限する。真空圧が開放されると、内側表面は、互いに対して又は中間部材に対して並進することができる。このようにして、上側部及び下側部は互いに対して並進することができる。
【0017】
一態様において、内側表面のうちの一方は、シリコン表面又は他の滑らかなポリマーを含み、それによって低摩擦係数表面を形成する。
【0018】
さらに他の態様において、外側表面のそれぞれは、ゴム系表面又はゴム状表面を含み、それによって高摩擦係数表面を形成する。
【0019】
さらなる一態様において、移送装置は、真空圧を解放するための真空解放装置を備える。
【0020】
本発明の別の形態によれば、移送システムは、共に結合される第1の移送装置及び第2の移送装置を備え、これらの移送装置のそれぞれは、上側シート部及び下側シート部を備える。上側シート部及び下側シート部のそれぞれは、解除可能に共に結合されて、上側シート部及び下側シート部の側方相対運動を制限する。
【0021】
したがって、本発明は、移送又は動かすことが望ましいときに物体又は患者のような人物の移送を容易にするが、移送又は動かすことが望ましくないときの物体又は患者の望ましくない転移の可能性を低減する移送装置を提供する。
【0022】
本発明のこれらの及び他の課題、利点、目的、及び特徴は、図面と共になされる以下の説明を熟読することから、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の移送装置の斜視図である。
【図2】移送装置の上側シート部及び下側シート部が分離されているときを示す図1の移送装置の側面図である。
【図3】移送装置の室内で真空圧を生成するために移送装置の室から取り出されている流体を示す、図2と同様の図である。
【図4】真空圧を解放するための流体の移送装置内への導入を示す、図3と同様の図である。
【図5】高摩擦表面を有する移送装置の外側表面を概略的に示す、図1の線V−Vに沿った断面図である。
【図6】直接的に共に結合されている、移送装置の上側シート部及び下側シート部の内側表面を示す、図5と同様の図である。
【図7】分離されている、移送装置の上側シート部及び下側シート部の内側表面を示す、図6と同様の図である。
【図8】パッドを組み込む本発明の移送装置上で位置決めされる患者の平面図である。
【図9】移送装置の側部においてガセットを組み込む移送装置の別の実施形態の平面図である。
【図10】図9の線X−Xに沿った断面図である。
【図11】下側シート部から分離されている上側シート部を示す、図9の移送装置の側面図である。
【図11A】移送装置を通じて延びる流路を示す、移送装置の側面図である。
【図11B】図11Aの分解図である。
【図11C】中間部材を組み込む、本発明の移送装置の分解斜視図である。
【図12】上側シート部及び下側シート部の機械的結合を組み込む移送装置の別の実施形態の平面図である。
【図13】図12の移送装置の断面図である。
【図14】各新規患者が最初に担架又はベッド上に置かれるときに移送装置を提供されることができるように、例えば担架又はベッドの最上面上で複数の移送装置を積み重ねて使用することができる、積み重ね構成において位置決めされる本発明の複数の移送装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1を参照すると、符号10は本発明の移送装置を全体的に指定している。以下で、より十分に説明するように、移送装置10は、物体又は患者を動かすことが望ましいときに動かすことを容易にするが、物体又は患者を動かすことが望ましくないときに物体又は患者の動きを制限又は最小化するように構成されている。さらに、移送装置は通常、物体又は患者よりも先に支持面上に置かれ、物体又は患者を動かすこと又は移送することが望ましくなるまで、物体又は患者の動きの量を制限するように構成される。物体又は患者を移送すること又は動かすことが望ましいとき、移送装置は、物体又は患者が動かされるか又は移送されることを可能にする。決して限定を意図するのではなく、説明を簡単にするために、移送装置の以下の説明は、患者を動かすか又は移送するための該移送装置の使用に関してなされている。ただし、移送装置10は、前述したように、機器、パレット、マットレス、又は任意の他の物体のような様々な物体を動かすために使用することができることを理解されたい。
【0025】
図2〜図4を参照すると、移送装置10は、上側シート部12及び下側シート部14を備えている。用語「シート」は、本明細書においては、その最も広い意味において使用され、例えば、硬質材料、半硬質材料、又は可撓性材料を含む、幅が広く薄い1つの材料を含むことを理解されたい。さらに、用語「シート」は、膜のような非常に薄い可撓性シートを含む、種々の厚さを有する複数の材料を含む。加えて、用語「シート部」は、シートのちょうど一部又は一片を指すのに使用される。
【0026】
図示されている実施形態では、上側シート部12及び下側シート部14は、プラスチックのような薄い可撓性シート材料から形成されている。シート部12及び14は、薄い可撓性材料の単一のシートから又は薄い可撓性材料の2枚以上のシートから形成することができる。そして、これらのシート部は、シームによって共に固定され、たとえば溶接、接着、縫合等によって形成される。さらに、上側シート部及び下側シート部は、シートの端部が共に接合されている材料のループから形成されているように図示されているが、材料のシートの端部同士を、片方をひねって接合することによって、メビウスの帯によって設けることができる。
【0027】
以下で、より十分に説明するように、上側シート部12及び下側シート部14は、直接的に、又は、別のシート部を含むインサートのような中間部材を通じて間接的に、解除可能に共に結合されている。さらに、この結合を提供するために上側シート部と下側シート部との間に媒体が導入され、その後、該媒体は、結合を解除するために取り除かれる。用語「媒体」は、その最も広い意味において使用され、例えば、2つのシート部を解除可能に共に結合する任意の物質又は環境を含む。本願は、真空圧環境、静電環境、接着剤のような化学物質、又はステッチのような機械的結合器を含む適切な媒体の幾つかの例を提供するが、他の媒体を使用することができることを理解されたい。
【0028】
図5〜図7において最も良く見られるように、上側シート部12は、外側12a及び内側12bを含んでいる。同様に、下側シート部14は、外側14a及び内側14bを含んでいる。内側12b及び14bは、互いに向き合うように配置されている。任意選択的に、内側12b及び14bのうちの少なくとも一方は、低い摩擦係数を有する表面を有し、それによって、上側シート部12は、下側シート部14に対して滑動することができる。さらに、内側12b及び14bの両方が、低い摩擦係数を有する表面を有することができる。代替的に、以下でより十分に説明するように、低摩擦表面を、上側シート部と下側シート部との間に位置決めされる中間部材上に設けることができる。
【0029】
対照的に、外側12a及び14aはそれぞれ、「粘着性がより高い」か又は低摩擦内側表面(例えば内側12b若しくは14b又は中間部材)より高い摩擦係数を有する外側表面を有している。その結果、人物が載せられているとき、下側シート部は概して、移送装置10が支持されている支持面Sに対して滑動しない。代わりに、上側シート部12は、上側シート部と下側シート部との間の低摩擦係数に起因して下側シート部14に対して並進し、力が上側シート部に加えられる方法に従って、図7において見られるように左又は右のいずれかの方への転移運動又は回転運動(又はそれらの組み合わせ)をもたらす。
【0030】
代替的に、上側シート部12は、長手方向において、下側シート部14に対して並進することができる。これは、例えば、患者をベッドにおいて上方に動かすか又は下方に動かすときに役立ち得る。さらに、上側シート部は、下側シート部に対して回転することができる。この回転運動は、ベッドのような表面上での患者の回転を容易にし、人物がベッドから降りるのを助けることができる。これは、重症の患者に特に適切であり得る。
【0031】
加えて、上側シート部12及び下側シート部14は、解除可能に共に結合されて、上側シート部の下側シート部に対する相対的な並進(側方、長手方向、又は回転)運動を制限するようになっている。さらに、前述したように、シート部の外側すなわち外側表面は、上側シート部と下側シート部との間に設けられる低摩擦表面と比べて、より高い摩擦係数を有するか又は「粘着性を有する」。その結果、2つのシート部が、直接的に共に結合されるか、又は後述する中間部材を通じて間接的に結合される場合、移送装置は、直ちに利用可能な移送表面を提供しない。しかしながら、上側シート部及び下側シート部の結合が解除されると、内側は互いに対して(又は中間部材に対して)滑動することができ、上側シート部は下側シート部に対して動くか又は並進することができ、これによって移送装置が移送表面を提供する。
【0032】
図5〜図7に示された図示されている実施形態では、上側シート部の内側と下側シート部の内側とは共に、例えば、シート部間で内側間において形成された閉鎖室16内で形成又は生成される真空圧によって生成された解放可能な圧縮力によって、選択的に直接的に摩擦結合される。代替的に、上側シート部の内側と下側シート部の内側とは共に、図12及び図13を参照してより十分に説明される、縫合等の機械的連結によって選択的に結合される。
【0033】
結合が真空圧によって生成される場合、真空圧は、移送装置10の形成時に生成することができる。例えば、真空は、シート部の端部がプレス成形又は接着によって、若しくは熱溶接/ヒートシーリングによって密閉されるときに得ることができる。この場合、真空は、シート部のうちの一方において孔又は隙間のような真空解放装置を作成することによって解放することができる。これは、単に移送装置に穴を開けることによって、又は移送装置が形成されるときに移送装置において形成されるか若しくは設けられる真空解放装置によって行うことができる。例えば、図8において最も良く見られるように、シート部のうちの1つは、引かれると裂けてシート部において開口を形成し、それによって流体が閉鎖室16内に入るのを可能にするつまみ又は引っ張り弦又は引っ張り片24を含むことができる。
【0034】
代替的に、真空圧は、上側シート部12又は下側シート部14のうちの一方において設けられる再密封可能な開口すなわち隙間20を通じて、移送装置を形成した後に生成することができる。このように、流体は、開口を通じた吸引を適用し、それによって空気のような流体を閉鎖室16から排出することによって、強制的に閉鎖室から出される。真空圧を生成した後、開口は密閉される。移送が望ましいとき、開口は再び開けられる。例えば、隙間20にバルブ22を設けて、解放可能に開口を密閉することができ、さらに、それによって移送装置を1回よりも多く使用することができる。使い捨ての応用形態を含む全ての応用形態において、バルブは任意選択であることを理解されたい。
【0035】
低摩擦係数表面は、シリコンコーティングのような滑らかなポリマーコーティングによって形成することができる。このコーティングは、例えば、散布法又は浸漬法又は他のコーティング法によって、それぞれの上側シート部及び下側シート部の内側のうちの1つ又は両方に塗布することができる。低摩擦係数表面は、幾つか例を挙げると、水、油又はシリカを含む他の媒体によって提供することができる。該媒体は、シート部間において真空によって保持される。
【0036】
高摩擦係数表面は、ゴム系コーティング、ゴム系表面、若しくはゴム系材料から、又は、それぞれのシート部の外側において若しくは該外側内に形成される表面構造から形成することができる。例えば、適切な高摩擦表面は、散布によって塗布することができるか、又は別のシート若しくは層の形態で接着によって付着させることができる。表面構造は、プレス成形を含む成形によって形成することができるか、又は、表面をマスキングし、次いで高摩擦コーティングを外側表面上に散布することから形成することができる。
【0037】
代替的に、シート又はシート形成装置10は、SARAN(商標)ラップ、ポリエチレン、又は帯電防止材料若しくは静電気散逸性材料(ESD型材料)のような、高摩擦表面を有する材料から形成することができる。
【0038】
SARAN(商標)ラップ、すなわちサランポリ塩化ビニリデン又はサラン樹脂及びフィルム(PVDC)は、「粘着性がある」か又は高摩擦の外側表面を提供するであろう。そしてその内側は、上述したように、コーティングを施され、より低い摩擦係数の1つ又は複数の表面が内側において形成される。
【0039】
ポリエチレン(PE)は、主にその密度及び分岐に基づいて、幾つかの異なるカテゴリに分類される。PEの機械的性質は、分岐、結晶構造、及び分子量の程度及びタイプのような可変要素に大きく依存する。適切なポリエチレンの例は、UHMWPE(超高分子量PE)、HMWPE(高分子量ポリエチレン)、HDPE(高密度PE)、HDXLPE(高密度架橋PE)、PEX(架橋PE)、MDPE(中密度PE)、LDPE(低密度PE)、LLDPE(直鎖状低密度PE)、VLDPE(超低密度PE)、又はUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)を含む。
【0040】
例えば、UHMWPEは、百万単位で数えられる、通常310万〜567万に達する分子量を有する。高分子量では結果的に、高密度ポリエチレンよりも低い密度(例えば0.935g/cc〜0.930g/cc)によって証明されているように、連鎖を束ねて結晶構造にする際の効率が低くなる。高分子量は結果的に、非常に丈夫な材料をもたらす。UHMWPEは、任意の触媒技術を通じて作成することができるが、チーグラー触媒が最も一般的である。
【0041】
HDPEは、0.941g/cc以上の密度によって定義される。HDPEは、低度の分岐、ひいてはより強い分子間力及び抗張力を有する。HDPEは、クロム/シリカ触媒、チーグラー−ナッタ触媒、又はメタロセン触媒によって生成することができる。分岐の不足は、触媒の適切な選択(たとえばクロム触媒又はチーグラー−ナッタ触媒)及び反応条件によって確保される。
【0042】
PEXは、熱可塑材をエラストマーに変える、ポリマー構造に導入されたる架橋結合を含む中〜高密度ポリエチレンである。ポリマーの高温特性が改善され、その流れが低減され、その耐化学性が向上する。
【0043】
MDPEは、0.926g/cc〜0.940g/ccの密度範囲によって定義される。MDPEは、クロム/シリカ触媒、チーグラー−ナッタ触媒、又はメタロセン触媒によって生成することができる。MDPEは、良好な衝突・落下耐性を有する。MDPEはまた、HDPEよりも切欠き脆性が低く、応力亀裂耐性がHDPEよりも良好である。
【0044】
LLDPEは、0.915g/cc〜0.925g/ccの密度範囲によって定義され、実質的に直鎖状ポリマーであり、著しい数の短い分岐を有し、通例、エチレンと短鎖アルファオレフィン(たとえば1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン)との共重合によって作成される。LLDPEは、LDPEよりも高い抗張力を有する。LLDPEは、LDPEよりも高い衝撃・穿刺耐性を示す。
【0045】
LDPEは、0.910g/cc〜0.940g/ccの密度範囲によって定義される。LDPEは、高度な短鎖分岐及び長鎖分岐を有する。これは、同様に連鎖が束ねられて結晶構造とならないことを意味する。したがって、これは、瞬間の双極子によって誘起される双極子引力がより弱いため、より弱い分子間力を有する。これは、結果的に抗張力の低下と延性の向上とをもたらす。LDPEは、遊離基重合によって作成される。長鎖を有する高度な分岐によって、溶融LDPEに、固有の望ましい流動性が与えられる。
【0046】
VLDPEは、0.880g/cc〜0.915g/ccの密度範囲によって定義され、実質的に直鎖状ポリマーであり、高レベルの短鎖分岐を有し、通例、エチレンと短鎖アルファオレフィン(たとえば1−ブテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン)との共重合によって作成される。VLDPEは、最も一般的には、メタロセン触媒を使用して生成される。これは、これらの触媒によって示されるコモノマー混入の程度がより高いためである。
【0047】
適切な帯電防止材料(この材料では初期電荷が抑制される)又は静電気散逸性材料(この材料では初期電荷は存在しないか又は低い)(ESD型材料)もシートとして使用することができる。これらは、人との接触に対する又は人との接触からの放電を防止すると考えられ、商標HYDEL(登録商標)又はTECAFORM(登録商標)の下で市販されている。ESD型材料は、内部すなわち内側表面に使用することもでき、その結果、静電荷が形成されず、過大な「摩擦結合」又は静電気によるまといつきがもたらされる。
【0048】
上述したように、上側シート部12及び下側シート部14は、可撓性材料の単一のシートから形成することができる。該シートは、折り重ねられ、次いでその長手方向の端部において接合されて材料の閉じたループ18を形成し、さらに、その対向する端部において接合されて閉鎖室16を形成する。代替的に、前述したように、上側シート部12及び下側シート部14は、メビウスの帯によって形成することができる。さらに、移送装置10は、移送装置を形成するときに作成することのできる側方部すなわちガセットを組み込むことができる。図9及び図10において最も良く見られるように、ガセット28は、移送装置の長手方向、すなわち長い方の側部において形成することができる。上側シート部及び下側シート部が真空によって結合されている結合状態にあるとき、図10において最も良く見られるように、ガセット28を、上側シート部及び下側シート部との間において折ることができる。移送又は動かすことが望ましく且つ結合が解除されるとき、ガセットは、上側シート部の下側シート部に対する動きの範囲を増大する。ガセットが完全に伸張されると、上側シート部をさらに転移することによって回転効果がもたらされる。理解されるであろうが、ガセットが大きければ大きい程、移送装置が回転し始める前の上側シート部の下側シート部に対する動きの範囲は広くなる。これらのガセットは、移送装置の長手方向、すなわち長い側部に沿って図示されているが、移送装置の対向する端部において形成することができ、これは、移送装置が、患者をベッドのような表面において上下に動かすように構成される場合に適切であり得ることを理解されたい。付加的に、ガセット28は、移送装置の側部及び端部に沿って設けることができる。この構成は、回転運動が望ましい場合に特に適切であり得る。代替的に又は付加的に、ある角度で配置されるか又は移送装置の対角線に沿って配置されるガセットを設けることができる。該ガセットは、最上シートすなわち上側シート部の下側シート部に対する動きに対して、ある方向制御を提供するように設けることができる。
【0049】
好ましい形態では、上述したように、上側シート部12及び下側シート部14は、ヒートシール可能なプラスチックを含む、プラスチックのような可撓性材料から形成される。上述したように、適切なプラスチックは、UHMWPE(超高分子量PE)、HMWPE(高分子量ポリエチレン)、HDPE(高密度PE)、HDXLPE(高密度架橋PE)、PEX(架橋PE)、MDPE(中密度PE)、LDPE(低密度PE)、LLDPE(直鎖状低密度PE)、VLDPE(超低密度PE)、又はUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)のようなポリエチレン含むことができる。さらに、シート部を形成する材料は、色、すなわち着色顔料を有することができるか又は透明若しくは不透明であり得る。たとえば、移送装置は、その用途に応じて色分けすることができる。
【0050】
上記の説明では、ループ18が、上側シート部12及び下側シート部14を形成する材料の単一のシートから形成されるものとして説明されたが、複数のシート(2枚以上のシート)を使用してループ18を形成することができることを理解されたい。
【0051】
真空圧が閉鎖室全体に及び、吸引が適用される局所領域においてのみ生成されるのではないことを確実にするために、移送装置10は任意選択的に、複数の流路すなわち通路10aを備え、該流路すなわち通路10aは、閉鎖室16内に延び、好ましくは閉鎖室16を横断して延びる。流路すなわち通路10aは、内側12b及び14bのうちの一方に接して若しくは該一方において設けられる隆起部12c及び14cによって形成することができるか(図11A及び図11B)、又は、閉鎖室内に挿入される別のシート部のような中間部材若しくはインサート16a(図1Aにおいて仮想線で示されている)によって設けることができる。例えば、インサートは、真空圧が閉鎖室内に、好ましくは閉鎖室全体にわたって及ぶことを可能にする複数の隆起部又は凹部又は通路を備える別のシート部を含むことができる。図示されている実施形態では、中間部材16aは、非平面表面を形成する複数の相互接続網16bを有する格子型シートを含んでいる。該格子型シートは、上側シート部12と下側シート部14との間に通路16cを作成する。さらに、上述したように、中間部材は、低摩擦材料を含むか、少なくとも1つの側部において低摩擦表面を有し、上側シート部と下側シート部との間に低摩擦表面を提供することができる。
【0052】
操作時に理解されるであろうが、移送装置10が最初に支持面上に配置されるとき、閉鎖室16は真空圧を有する。前述したように、この真空圧は、移送装置10の形成工程中に生成することができるか、又は流体、通常は空気を閉鎖室16から排出することによって生成することができる。真空圧が生成されると、それぞれのシート部の内側12b及び14bは、実質的に直接的に共に結合されるか又は間接的に中間部材を通じて結合されて、たとえ横力が移送装置の最上表面に加えられても、上側シート部の下側シート部に対する動きを制限する。この点において、患者を移送装置上に置くことは安全である。しかしながら、移送が望ましい場合、真空圧を、(例えば、つまみ24を引くことによって)シート部のうちの一方において孔若しくは開口を形成することによって又はバルブ22を開くことによって解放することができる。それによって、上側シート部12及び下側シート部14の内側12b及び14bはもはや摩擦結合せず、その代わりに、解除されて上側シート部12の下側シート部14に対する並進を可能にする。この並進は、側方並進、長手方向並進、又は回転並進とすることができ、横力が上側シート部に加えられるときに、張力の形態で直接的に、又は、移送装置と共に使用することができるスライドシートによって生成されるせん断力によって間接的に生じる。通常、上側シート部は、概して支持面に平行であり、且つ、少なくともちょうど2つのシート部の相対運動転移が生じている間に、下側シート部の少なくとも一部が占めている平面に平行である平面において動く。さらなる転移が生じると、上述したように、移送装置は回転することができる。
【0053】
任意選択的に、空気を閉鎖室内にポンプで送って真空圧を解放し、さらに任意選択的に、閉鎖室を膨張させるために使用することのできる、気圧よりも大きい圧力を提供することができる。例えば、CO2カートリッジを設け、任意選択的に装置に結合することができ、これによってCO2を閉鎖室16に供給することができる。
【0054】
移送が達成されると、移送装置を患者の下から取り除くことができるか、又は再び減圧して、上側シート部の下側シート部に対する側方の動きを制限することができる。上述したように、移送装置10は、開口が再密閉されて、患者が再び移送される必要があるときの次の使用のために、真空が再びもたらされることを可能にするように構成することができる。
【0055】
使い捨て移送装置が望ましい場合、またさらに、該使い捨て移送装置を用いる移送が一回のみと予定されている場合、真空は、上記で説明したように、単に移送装置に穴を開けることによって、又は、シート部のうちの一方と共に一体的に形成することができるつまみ若しくはひものような引っ張り装置によって解放することができる。この引っ張り装置は、多数の形態をとることができる。
【0056】
加えて、移送を容易にするために、移送装置10は、シート部のうちの一方若しくは両方のいずれかと共に一体的に形成することができるか、又は、移送装置に固定されるストラップによって形成することができる1つ若しくは複数の把手を組み込むことができる。任意選択的に、真空解放装置は、それぞれの把手の近くに又は該把手に隣接して配置することができる。したがって、介護人が真空圧を解放するとき、介護人は、即座に把手を掴んで患者の移送を制御することができる。
【0057】
上述したように且つ図12及び図13に示されているように、本発明は、機械的結合又は電荷結合若しくは静電結合によって解除可能に共に結合される上側シート部112及び下側シート部114を有する移送装置110も含む。例えば、上側シート部112及び下側シート部114は、壊されて引き出されると、シート部を解除する複数のステッチ130によって共に結合することができる。複数のステッチ130は、移送装置110の長さに沿って、間隔を置いた複数の位置に形成することができる。代替的に、ステッチ130は、移送装置110の幅にわたって延びるように形成することができる。
【0058】
電荷結合が使用される場合、電荷結合は、電荷が2つのシート部間から放電されるように電荷を接地することによって解除することができる。
【0059】
代替的に、結合は、中和化されるときに別の作用物質によって解除を行う接着剤によって、又は摩擦係数を変える化学反応によって達成することができる。例えば、酸素にさらされるとその接着力を失う接着剤を使用することができ、これは、真空圧と併用すると特に適切であり得る。
【0060】
図14を参照すると、複数の移送装置(10又は110)から形成された移送装置システム26を設けることができる。上記複数の移送装置は、積み重ねられ、さらに、相互接続されて担架又はベッド等のような表面上に移送装置の供給品を形成することができる。移送装置10、110は、例えば不連続の位置において、例えばつまみ又は共通のコネクタによって相互接続することができるが、移送が望ましいときに、例えば引くことによって共通コネクタ又は互いから容易に外される。任意選択的に、1つ又は複数のつまみは、軽く引くか又は引っ張ることで、破損点まで引き伸ばすことができるプラスチックの薄いウェブから形成することができる。代替的に、移送装置は、その端と端とを取り付けることができ、それによって、例えば診察台を覆うために、現在使用されているシートと同様に、移送装置を巻いて提供することができる。
【0061】
上述したように、移送装置10(110)は、一回の移送のために使用することができるか、又は、患者の施設での滞在中に複数回患者を移送するために使用することのできる使い捨て移送装置として形成することができる。
【0062】
移送装置は、本発明の目的のために、たとえば移送装置を追跡することができるように、RFID又はバーコードのような識別装置を組み込むことができる。
【0063】
任意選択的に、移送装置10(110)を別の表面と共に使用することができる。例えば、移送装置10(110)は、移送シート、吸収性シート、若しくは移送装置を囲むか若しくは移送装置を部分的に覆う材料のようなシート、又は詰め物と共に使用することができる。さらに、他方の表面は加熱又は冷却を提供することができる。図8を参照すると、移送装置10(110)は、吸収性パッドのようなパッド32を組み込むことができる。
【0064】
したがって、本発明は、動かすこと又は移送が望ましいときに物体又は人物を動かすか又は移送するために使用することができるが、動かすこと又は移送が望ましくないときに動きを制限するか又は最小化するようになっている移送装置を提供する。さらに、移送装置は、単独で又は装置上に置かれる移送シートと共に使用することができる。患者は、該シート上に置かれることになる。前述したように、移送装置は、患者を表面上で動かすために、又は、患者を、担架、簡易ベッド、ベッド、台等のような1つの表面からベッド、簡易ベッド、担架、台等のような別の表面へ移送するために使用することができる。
【0065】
本発明の幾つかの形態を図示及び説明してきたが、今や他の形態が当業者には明らかであろう。さらに、前述したように、移送装置を主に患者に関連して説明してきたが、移送装置は、様々な物体を動かすか又は移送するために使用することができる。したがって、図面に示されていると共に上記で説明された実施形態は、例示の目的のためのものに過ぎず、均等論を含む特許法の原理の下で解釈される以下の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するようには意図されていないことが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側及び内側を有する第1のシート部と、
外側及び内側を有する第2のシート部であって、該第2のシート部の該内側は前記第1のシート部の前記内側と向き合う第2のシート部と
を備え、
前記第1のシート部は、前記第2のシート部に解除可能に直接的に又は間接的に結合され、該結合は、前記第1のシート部の前記第2のシート部に対する並進運動を制限し、該結合が解除されると、前記第1のシート部は、前記第2のシート部に対して可動である、患者移送装置。
【請求項2】
前記第1のシート部と前記第2のシート部との間に形成された室をさらに備え、該室は、内部に設けられた媒体を有し、該媒体は、前記第1のシート部を前記第2のシート部に解除可能に直接的に又は間接的に結合する、請求項1に記載の患者移送装置。
【請求項3】
前記第1のシート部の前記第2のシート部に対する並進運動を制限するために、前記媒体は、前記第1のシート部を前記第2のシート部に摩擦結合する真空圧を含み、該真空圧が解放されると、前記第1のシート部は、前記第2のシート部に対して並進可能である、請求項2に記載の患者移送装置。
【請求項4】
前記真空圧は、前記第1のシート部の前記内側を前記第2のシート部の前記内側に直接的に摩擦結合する、請求項3に記載の患者移送装置。
【請求項5】
中間部材をさらに備え、前記真空圧は、前記中間部材を通じて前記第1のシート部を前記第2のシート部に間接的に摩擦結合する、請求項3に記載の患者移送装置。
【請求項6】
前記患者移送装置は、前記室内に複数の流路を形成するようになっており、該流路は、前記室の少なくとも一部にわたって延び、前記室全体にわたる前記真空圧の分散を促進する、請求項3に記載の患者移送装置。
【請求項7】
前記内側のうちの一方は複数の隆起部を備え、それによって前記流路を形成する、請求項6に記載の患者移送装置。
【請求項8】
前記室内に位置決めされた第3のシート部をさらに備え、該第3のシート部は、内部に形成された複数の隆起部すなわち通路を有し、前記流路を形成する、請求項6に記載の患者移送装置。
【請求項9】
前記真空圧を解放するための真空解放装置をさらに備える、請求項3に記載の患者移送装置。
【請求項10】
前記真空解放装置はつまみを備え、該つまみが引かれると、前記第1のシート部又は前記第2のシート部において隙間を生成する、請求項9に記載の患者移送装置。
【請求項11】
シートをさらに備え、該シートは、折られて前記第1のシート部及び前記第2のシート部を形成する、請求項1に記載の患者移送装置。
【請求項12】
前記内側のうちの少なくとも一方は、低摩擦係数表面を有する、請求項1に記載の患者移送装置。
【請求項13】
前記低摩擦係数表面は、滑らかなポリマー表面を含む、請求項12に記載の患者移送装置。
【請求項14】
前記第1のシート部及び前記第2のシート部の前記外側のそれぞれは、前記内側のうちの少なくとも一方よりも高い摩擦係数を有する表面を含む、請求項1に記載の患者移送装置。
【請求項15】
前記外側のそれぞれは、ゴム又はゴム状表面を含み、それによってより高い摩擦係数を有する前記表面を形成する、請求項14に記載の患者移送装置。
【請求項16】
前記第1のシート部及び前記第2のシート部のうちの少なくとも一方は、帯電防止材料又は静電気散逸性材料を含む、請求項1に記載の患者移送装置。
【請求項17】
前記第1のシート部及び前記第2のシート部のうちの少なくとも一方は、サランポリ塩化ビニリデンを含む、請求項1に記載の患者移送装置。
【請求項18】
前記第1のシート部及び前記第2のシート部のうちの少なくとも一方は、ポリエチレン材料を含む、請求項1に記載の患者移送装置。
【請求項19】
前記患者移送装置は第1の患者移送装置を含み、該第1の患者移送装置は第2の患者移送装置と共同し、該第2の患者移送装置は前記第1の患者移送装置に結合される、請求項1に記載の患者移送装置。
【請求項20】
前記第1のシート部又は前記第2のシート部に結合された把手をさらに備える、請求項1に記載の患者移送装置。
【請求項21】
前記第1のシート部及び前記第2のシート部は機械的に結合される、請求項1に記載の患者移送装置。
【請求項22】
前記第1のシート部及び前記第2のシート部は、複数のステッチによって機械的に結合される、請求項21に記載の患者移送装置。
【請求項23】
前記シートはメビウスの帯を形成する、請求項11に記載の患者移送装置。
【請求項24】
前記第1のシート部と前記第2のシート部との間に配置された中間部材をさらに備え、該中間部材は、前記第1のシート部を前記第2のシート部に解除可能に結合する、請求項1に記載の患者移送装置。
【請求項25】
外側及び内側を有する第1のシート部と、
外側及び内側を有する第2のシート部であって、該第2のシート部の前記内側は前記第1のシート部の前記内側と向き合う第2のシート部と
を備え、
前記第1のシート部は、前記第2のシート部に直接的に又は間接的に摩擦結合され、該摩擦結合は、前記第1のシート部の前記第2のシート部に対する並進運動を制限し、該摩擦結合が低減されると、前記第1のシート部は前記第2のシート部に対して動くことができる、患者移送装置。
【請求項26】
前記第1のシート部及び前記第2のシート部のうちの一方の前記内側は、低摩擦表面を含む、請求項25に記載の患者移送装置。
【請求項27】
前記第1のシート部と前記第2のシート部との間に設けられた媒体をさらに備え、該媒体は前記摩擦結合を提供する、請求項25に記載の患者移送装置。
【請求項28】
前記媒体は真空圧を含む、請求項27に記載の患者移送装置。
【請求項29】
前記媒体は接着剤を含む、請求項27に記載の患者移送装置。
【請求項30】
前記媒体は静電荷を含む、請求項29に記載の患者移送装置。
【請求項31】
前記第1のシート部と前記第2のシート部との間に位置決めされた中間部材をさらに備え、該中間部材は、前記第1のシート部を前記第2のシート部に結合する、請求項25に記載の患者移送装置。
【請求項32】
前記第1のシート部及び前記第2のシート部のうちの少なくとも一方は、ポリエチレン、サランポリ塩化ビニリデン、及び帯電防止材料又は静電気散逸性材料から成る群から選択される材料を含む、請求項25に記載の患者移送装置。
【請求項33】
シートをさらに備え、該シートは、前記第1のシート部及び前記第2のシート部を形成する、請求項25に記載の患者移送装置。
【請求項34】
前記シートは、閉じたループを形成する、請求項33に記載の患者移送装置。
【請求項35】
上側部及び下側部を有する可撓性材料の閉じたループを備え、前記上側部及び前記下側部はそれぞれ外側表面及び内側表面を有し、該閉じたループは、対向する端部を有し、
前記外側表面のそれぞれは高摩擦係数表面を含み、
前記閉じたループの前記対向する端部は閉じられ、それによって該端部と前記上側部及び前記下側部との間に閉鎖室を形成し、
前記閉鎖室は、密閉されて真空圧を保持するが、該真空圧が選択的に解放されることを可能にするようになっており、前記閉鎖室内で前記真空圧が形成されると、該真空圧は、前記上側部及び前記下側部が直接的に又は間接的に摩擦結合されるように前記上側部と前記下側部との間に垂直抗力を生成し、それによって前記上側部の前記下側部に対する並進運動を制限し、前記真空圧が解放されると、前記上側部及び前記下側部は互いに対して並進することができる、患者移送装置。
【請求項36】
前記患者移送装置は、前記閉鎖室の少なくとも一部を通じて延びる複数の流路を形成するようになっている、請求項35に記載の患者移送装置。
【請求項37】
前記内側表面のうちの一方は、複数の隆起部すなわち通路を備え、それによって前記流路を形成する、請求項36に記載の患者移送装置。
【請求項38】
前記内側表面のうちの少なくとも一方は、低摩擦表面を含む、請求項35に記載の患者移送装置。
【請求項39】
前記真空圧を選択的に解放するための真空解放装置をさらに備える、請求項35に記載の患者移送装置。
【請求項40】
共に結合される第1の患者移送装置及び第2の患者移送装置を備えた患者移送システムであって、
前記第1の患者移送装置及び前記第2の患者移送装置のそれぞれは、
第1のシート部と、
第2のシート部と
を備え、
前記第1のシート部及び前記第2のシート部は解除可能に共に結合され、それによって該第1のシート部の該第2のシート部に対する相対並進運動を制限し、前記結合は解除可能であり、前記第1のシート部及び前記第2のシート部は互いに対して並進可能である、患者移送システム。
【請求項41】
前記第1の患者移送装置及び前記第2の患者移送装置は、少なくとも1つのつまみによって共に結合される、請求項40に記載の患者移送装置。
【請求項42】
前記第1の患者移送装置及び前記第2の患者移送装置のそれぞれは把手を備える、請求項40に記載の患者移送装置。
【請求項43】
前記第1のシート部及び前記第2のシート部のそれぞれは外側を備え、該外側のうちの少なくとも一方は高摩擦係数表面を含む、請求項40に記載の患者移送装置。
【請求項44】
前記結合は摩擦結合を含む、請求項40に記載の患者移送装置。
【請求項45】
前記第1の患者移送装置及び前記第2の患者移送装置のそれぞれの内側間に形成された室をさらに備え、該室は真空圧を形成するようになっており、該真空圧は、前記第1のシート部と前記第2のシート部との間の前記摩擦結合を生成する、請求項44に記載の患者移送システム。
【請求項46】
前記第1の患者移送装置及び前記第2の患者移送装置のそれぞれは、真空解放装置を備える、請求項45に記載の患者移送システム。
【請求項47】
患者を動かす方法であって、
外側及び内側を有する第1のシート部と、外側及び内側を有する第2のシート部とを有し、該第2のシート部の該内側は該第1のシート部の該内側に向き合っており、前記外側のそれぞれは高摩擦係数表面を有する移送装置を準備することと、
前記第1のシート部の前記第2のシート部に対する並進運動を制限するように、前記第1のシート部を前記第2のシート部に結合することと、
表面上で前記移送装置を支持することと、
前記移送装置の前記第1のシート部上で患者を位置決めすることと、
前記患者が動かされるか又は移送されることになっているときに前記結合を解除することと
を含み、
前記第1のシート部は、前記第2のシート部に対して可動であり、それによって前記患者を前記支持面に対して動かす方法。
【請求項48】
前記結合は摩擦結合を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記移送装置を準備することは、
前記上側シート部と前記下側シート部との間に室を形成することと、
該室内に真空圧を形成することによって前記結合を形成することと
を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記結合は、機械的な結合を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記結合は接着結合を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記結合は電荷結合を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
外側及び内側を有する第1のシート部と、
外側及び内側を有する第2のシート部であって、該第2のシート部の該内側は前記第1のシート部の前記内側と向き合う第2のシート部と
を備え、
前記第1のシート部は、前記第2のシート部に解除可能に結合され、該結合は、前記第1のシート部の前記第2のシート部に対する動きを制限し、前記結合が解除されると、前記第1のシート部は前記第2のシート部に対して可動である移送装置。
【請求項54】
前記第1のシート部と前記第2のシート部との間に媒体をさらに備え、該媒体は前記結合を生成する、請求項53に記載の移送装置。
【請求項55】
前記第1のシート部と前記第2のシート部との間に形成された室をさらに備え、前記媒体は、前記室内に形成された真空圧を含み、前記第1のシート部及び前記第2のシート部は、直接的に又は間接的に共に摩擦結合されて、前記第1のシート部の前記第2のシート部に対する相対運動を制限し、前記真空圧が解放されると、前記第1のシート部は、前記第2のシート部に対して並進可能である、請求項54に記載の移送装置。
【請求項56】
前記移送装置は、前記室内に複数の流路を形成するようになっており、該流路は、前記室の少なくとも一部にわたって延びて、前記室全体にわたる前記真空圧の分散を促進する、請求項55に記載の移送装置。
【請求項57】
前記真空圧を解放するための真空解放装置をさらに備える、請求項55に記載の移送装置。
【請求項58】
前記真空解放装置は、つまみ又は牽引用の弦を備え、該つまみ又は該牽引用の弦が引かれると、前記第1のシート部又は前記第2のシート部に隙間を生成する、請求項57に記載の移送装置。
【請求項59】
シートをさらに備え、該シートは折られて前記第1のシート部及び前記第2のシート部を形成する、請求項53に記載の移送装置。
【請求項60】
前記内側のうちの少なくとも一方は、低摩擦係数表面を有する、請求項53に記載の移送装置。
【請求項61】
前記低摩擦係数表面は、滑らかなポリマー表面を含む、請求項60に記載の移送装置。
【請求項62】
前記第1のシート部及び前記第2のシート部の前記外側表面のそれぞれは、高摩擦係数表面を含む、請求項53に記載の移送装置。
【請求項63】
前記第1のシート部及び前記第2のシート部は、機械的に結合される、請求項53に記載の移送装置。
【請求項64】
物体を動かす方法であって、
第1のシート部及び第2のシート部を有し、前記第1のシート部は外側及び内側を有し、前記第2のシート部は外側及び内側を有し、前記第2のシート部の前記内側は前記第1のシート部の前記内側に向き合っており、前記外側のそれぞれは高摩擦係数表面を有する移送装置を準備することと、
前記第1のシート部の前記第2のシート部に対する並進運動を制限するように、前記第1のシート部を前記第2のシート部に直接的に又は間接的に結合することと、
表面上で前記移送装置を支持することと、
前記移送装置の前記第1のシート部上で物体を位置決めすることと、
前記物体が動かされるか又は移送されることになっているときに前記結合を解除することと
を含み、
前記第1のシート部は、前記第2のシート部に対して可動であり、それによって前記物体を前記支持面に対して動かす方法。
【請求項65】
前記結合は摩擦結合を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記移送装置を準備することは、
前記第1のシート部と前記第2のシート部との間に室を形成することと、
該室内に真空圧を形成することによって前記結合を形成することと
を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記結合は、機械的な結合又は接着結合又は電荷結合を含む、請求項64に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−520016(P2010−520016A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552653(P2009−552653)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/011815
【国際公開番号】WO2008/108782
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION