説明

種子毛除装置

【課題】装置の大型化を招くことなく確実にかつ均一な毛除作業が自動化できる構成を備えた種子毛除装置を提供する。
【解決手段】種子表面を覆う野毛を除去するための種子毛除装置1であって、メッシュ状の周面を備えた回転可能なドラム2と、上記ドラム2内で回転可能に支持され、該ドラム内周面に倣ってなびかせることにより該内周面に圧接可能な先端部3Aを有する発泡性の弾性体3とを備え、上記ドラム内で上記弾性体3を回転させて上記先端部3Aを上記内周面に倣ってなびかせて該弾性体3の先端部3Aと上記内周面との間で上記種子Sを擦り合わせることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子毛除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
麦や野菜などの種子には、その表面に野毛と称される比較的鋭いトゲ状の毛により表面が覆われているものがある。
このような種子は播種作業時に行われる一株当たりの粒数揃えや袋への注入時に個々の毛が絡み合いやすいことが原因して作業性が悪い。
【0003】
そこで、従来では、各作業の前に野毛を手揉みにより除去することが行われていたが、作業性がさほど良いものではなく、機械化が要望されていた。
野毛の除去を自動化するための種子毛除装置としては、ベルトコンベヤ上に搭載された種子をベルトコンベヤと異なる速度で回転する毛取りローラとを設け、毛取りローラにより種子の野毛を摩擦力によって擦り取るようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
上記特許文献において、毛取りローラにより野毛を擦り取られた種子は、周面に多数の種子毛排出口を有した回転可能なドラム内に導入され、ドラムの外周部からのエアーブローによって、擦り取られた野毛がドラム外部に排出されると野毛のない状態で回収される。
【0005】
野毛ではないものの、野毛と同様に種子の表面に付着した汚れ等を除去する装置としては、種子や豆などを撹拌パドルを備えたドラム内に導入し、ドラム内に研磨剤を混在させて撹拌することにより汚れの洗浄を行う構成もある(例えば、特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−33405号公報
【特許文献2】特開2006−288335号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来提案されている野毛を除去する装置の場合、野毛を擦り取るための構成に加えて、擦り取った野毛を排出するための構成である、送風機構が必要となり、種子毛除装置として大がかりとなる虞があった。しかも、野毛の除去位置がベルトコンベヤと毛取りローラとの対向位置に限られてしまう。このため、全ての種子を対象とした均一な野毛の除去さらには野毛の除去が確実に行なえない虞もある。また、研磨剤などを用いた際には研磨剤を種子表面から除去するための洗浄が必要となり、このための設備や作業時間が必要となるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上記従来の種子毛除装置における問題に鑑み、装置の大型化を招くことなく確実にかつ均一な毛除作業が自動化できる構成を備えた種子毛除装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)種子表面を覆う野毛を除去するための種子毛除装置であって、
メッシュ状の周面を備えた回転可能なドラムと、
上記ドラム内で回転可能に支持され、該ドラム内周面に倣ってなびかせることにより該内周面に圧接可能な先端部を有する発泡性の弾性体とを備え、
上記ドラム内で上記弾性体を回転させて上記先端部を上記内周面に倣ってなびかせて該弾性体の先端部と上記内周面との間で上記種子を擦り合わせることを特徴とする種子毛除装置。
【0010】
(2)上記弾性体の先端部と上記ドラムの内周面との間で擦り合わされる種子は、その表面から除去された野毛が上記ドラムのメッシュ部から外部に自然落下させることを特徴とする(1)に記載の種子毛除装置。
【0011】
(3)上記ドラムには、周面の一部に開口部が設けられ、該開口部には開閉可能な蓋が設けられて上記種子の導入および排出が可能であることを特徴とする(1)または(2)に記載の種子毛除装置。
【0012】
(4)上記弾性体として、上記種子よりも小さい口径を有する多孔質のスポンジが用いられることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の種子毛除装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メッシュ状の周面を備えたドラム内においてドラム内周面に倣ってなびくことができる先端部を有した弾性体を回転させることにより、弾性体の先端部が形状復元力によってドラムの内周面に対して圧接しながら回転する。これにより、先端部とドラム内周面との間で種子が擦られて種子の野毛を擦り取ることができる。
特に、擦り取られた野毛はドラムの周面に形成されているメッシュ部から自然落下するので、送風機構などの強制的な排出手段を用いることがない。これによって構成の簡略化ができる。
しかも、弾性体の先端部が回転しながらドラムの内周面に圧接するので、その圧接力が均一であることにより野毛を均一かつ確実に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面により本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明による種子毛除装置によって野毛を除去される種子を示す図である。同図(A)において種子Sは、その表面が野毛S1により覆われている。
【0015】
この状態の種子Sを、後で説明する種子毛除装置1によって野毛S1が除去あるいは擦られることにより、同図(B)に示すように、表面の野毛S1が概ね除去されるかあるいは先端の鋭いトゲが破壊される。
野毛が除去あるいは鋭い先端部が破壊された種子Sは、野毛同士が絡むことがないので、播主作業のための粒数えが容易となり、また、袋内面への引っかかりなどが解消される。
【0016】
図2は、本発明による種子毛除装置1を示す図である。
図2において種子毛除装置1は、メッシュ状の周面を備えた回転可能なドラム2を備えている。
ドラム2は、直径が200φ、軸方向長さが500mmのステンレス製円筒が用いられ、その周面に設けられているメッシュは、0.5φで、かつ、24個/インチ□の条件で設けられている。
ドラム2の周方向の一部には、周面の厚さ方向に貫通する開口2Aが設けられており、開口2Aは、開閉可能な蓋部材2Bにより通常、閉じられている。
蓋部材2Bは、開放されると開口2Aを露呈し、種子の導入や排出ができる。
【0017】
ドラム2の内部には弾性体3が装備されている。
弾性体3は、ドラム2と同心で設けられている従動プーリ4と同軸上で一体化されて回転可能に支持されている部材である。
従動プーリ4には駆動モータMにより回転駆動される駆動プーリ5との間にベルト6が掛け回されて駆動プーリ5に連動するようになっている。
【0018】
弾性体3は、表1に示す機械的特性が選択されたネオプレンスポンジなどを用いた発泡性からなる多孔質部材であり、先端部3Aがドラム2の内周面に倣ってなびくことができる長さを有している。つまり、弾性体3は、先端部がドラム2の内周面に倣ってなびくことで弾性復元力が生じ、その力によってドラム2の内周面に圧接しながら回転することができる。この場合の圧接力は、弾性体3の先端部3Aとドラム2の内周面との間に入り込んだ種子の移動を妨げない圧力とされている。
【0019】
【表1】

【0020】
弾性体3の多孔質を構成する口径は、種子の大きさよりも小さい値に設定されており、種子が不用意に外部に排出されないようにするとともに種子が孔縁部に引っかかり易い構成とされている。
【0021】
本実施形態においては、上記構成の種子毛除装置1を用いて、図3に示す手順により野毛の除去作業が行われる。
図3(A)は、ドラム2内に種子Sを導入する状態を示している。この状態では、弾性体3の先端部3Aがドラム2の開口2Aから外れた位置に移動させられ、そして、ドラム2に装備されている蓋部材2Bを開放して開口2Aから種子Sがドラム2の内部に導入される。
【0022】
図3(B)〜図3(F)は、導入された種子Sの毛除作業を示している。
毛除作業時には、ドラム2の開口2Aが蓋部材2Bにより塞がれた状態でドラム2が停止した状態に維持されながら、ドラム2の内部に位置する弾性体3が回転を開始する。
弾性体3は、駆動プーリ5に対してベルト6を介して連動する従動プーリ4が回転を開始すると、先端部3Aがドラム2の内周面に倣ってなびきながら回転する。
この状態での先端部3Aは、形状復元力によってドラム2の内周面に圧接しながら回転し、ドラム3の内周面との間に入り込んだ種子が擦られることになり、野毛が摩擦力によって剥ぎ取られ、あるいは鋭い先端が破壊される。
【0023】
本実施形態では、種子として人参生種を対象とした場合に、300回/分の回転条件で3分間の毛除作業が行われる。この作業時間に関しては、種子の量にも影響されるが、概ね弾性体3の先端部3Aとドラム2の内周面との間で種子の全てが対象として擦られるのに必要な時間として実験結果によって設定される。
【0024】
弾性体3の先端部3Aとドラム2の内周面との間で擦られることで種子Sから脱落した野毛S1は、ドラム2の周面に有するメッシュ部から自然落下する。
【0025】
種子Sは弾性体3の多孔部の孔縁に引っかかりながらドラム2の内面を移動することができ、これにより停止状態のドラムとの間で効率よく擦られることになる。また、孔縁に引っかからない種子は、先端部3Aとの間の摩擦力によりドラム内周面との間で転動することができる。これにより種子は、弾性体3の先端部3Aの移動時にドラム2の周面に有するメッシュ部で全面を擦られて野毛が除去される。この状態が図3(D)に示されている。このときには、ドラム2の下方に野毛回収用のトレイ7が配置される。
ドラム2の内部から自然落下することによりトレイ7上に排出された野毛S1は、トレイ7が引き出されることで外部に回収される。
【0026】
回収後のトレイ7は、再度ドラム2の下方に配置され(図3(F))、ドラム2が開口2Aを下向きとするように回転されるとともに、弾性体3は回転を維持される(図3(G))。
下向きにされた開口2Aは蓋部材2Bが開放され、弾性体3が回転されることにより内部の種子Sをトレイ7上に落下させることができる。これにより、野毛S1を除去あるいは鋭い先端が破壊された種子Sのみが回収できることになる。
【0027】
種子の回収後、ドラム2が図3(A)に示す状態に復帰され、開口2Aが上側に位置することで再度の種子導入を可能にする(図3(H))。
【0028】
本実施形態においては、弾性体3の回転を利用するだけでドラム2の周面から野毛S1の自然落下が行えるので、送風機構などの強制的な排出構造を用いる必要がなく、これによって、簡単な構成による野毛S1の毛除作業が行える。
【0029】
しかも弾性体3の先端部3Aをドラム内周面に倣ってなびかせるだけであるので、そのなびく範囲の長さを最適化することで内周面に対して種子Sが擦られる時間を最適化して野毛S1の除去効率を高めることができる。
【0030】
さらに、弾性体3の多孔質部を構成する孔部の孔縁に種子Sを引っかけながら移動させることができるので、ドラム内周面との間の相対速度を大きくして擦られる力を大きくすることもできる。これにより、野毛S1の除去効率をさらに高めることができる。
【0031】
なお、図に示した実施形態においては、弾性体3が単一部材とした場合を示しているが、本発明では、これに限らず、図示しないが例えば、ドラム2の内部で周方向に沿って複数配置することもできる。この場合には、先端部の長さを各弾性体で異ならせて野毛の除去に要する時間を異ならせて擦り取れるようにして、一片の先端部を設けた場合よりもさらに効率よく野毛の除去作業を行うようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による種子毛除装置に用いられる種子の状態を示す図である。
【図2】本発明による種子毛除装置の腰部構成を説明するための図である。
【図3】図2に示した種子毛除装置による野毛の除去作業の状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
1 種子毛除装置
2 ドラム
2A 開口
2B 蓋部材
3 弾性体
3A 先端部
S 種子
S1 野毛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子表面を覆う野毛を除去するための種子毛除装置であって、
メッシュ状の周面を備えた回転可能なドラムと、
上記ドラム内で回転可能に支持され、該ドラム内周面に倣ってなびくことにより該内周面に圧接可能な先端部を有する発泡性の弾性体とを備え、
上記ドラム内で上記弾性体を回転させて上記先端部を上記内周面に倣ってなびかせて該弾性体の先端部と上記内周面との間で上記種子を擦り合わせることを特徴とする種子毛除装置。
【請求項2】
上記弾性体の先端部と上記ドラムの内周面との間で擦り合わされる種子は、その表面から除去された野毛が上記ドラムのメッシュ部から外部に自然落下させることを特徴とする請求項1に記載の種子毛除装置。
【請求項3】
上記ドラムには、周面の一部に開口部が設けられ、該開口部には開閉可能な蓋が設けられて上記種子の導入および排出が可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の種子毛除装置。
【請求項4】
上記弾性体として、上記種子よりも小さい口径を有する多孔質のスポンジが用いられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の種子毛除装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−278880(P2009−278880A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131762(P2008−131762)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000229977)日本プラントシーダー株式会社 (10)
【Fターム(参考)】