説明

種菌供給装置

【課題】種菌重量を測定する方法以外で種菌の供給量を正確に把握し、加圧気体により固体培養原料に粉粒体の種菌を少量であっても安定的に供給できる種菌供給装置とすることを課題とする。
【解決手段】回転数を増減できる種菌供給ローター7と、種菌が通過する配管に種菌の通過量に相当して変動する静電気の発生量を測定する非接触センサー6と、静電気の発生量に応じて信号を出す警報手段と、種菌供給ローター7の回転数を増減して静電気の発生量を調整する制御手段を設けた種菌供給装置1により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧エアーにより固体培養原料に粉体又は粒体(以下「粉粒体」という)の種菌を供給する種菌供給装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に特許文献1で加圧エアーを用いて種菌を供給する容積式の種菌供給装置を提案し、特許文献2で種菌供給装置内の種菌重量を測定して、種菌供給量を制御又は警報を出力する種菌供給装置を提案した。さらに、本出願人は、特許文献3で固体培養原料供給経路内に種菌を供給する種菌供給装置を提案した。
【0003】
特許文献1の中でも、種菌を供給するローター表面に横溝を設けた種菌供給装置が少量の種菌を定量供給することに適していて、特許文献3の使用形態に最も合致している。近年、加圧エアーにより固体培養原料に粉粒体の種菌を供給する種菌供給装置は、作業環境の改善や省力化に貢献している。特に、味噌業界では商品に「無添加」の表示をする場合には、増量剤の使用が制限されるために糸状菌の胞子のみを種菌として安定供給することが望まれている。
【0004】
しかし、種菌を安定供給する特許文献2の技術は、種菌供給装置本体を風袋として種菌重量を測定しているが、種菌の重量が種菌供給装置本体の重量に比較して極端に軽いために精度が悪く、作業者が種菌供給装置に触れただけで誤動作するなどの理由から現在でも普及していない。
【0005】
【特許文献1】特開平08−308554号公報
【特許文献2】特開2002−136284号公報
【特許文献3】特開2004−159532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の種菌重量を測定する方法以外で種菌の供給量を正確に把握し、加圧エアーにより固体培養原料に粉粒体の種菌を少量であっても安定的に供給できる種菌供給装置とすることを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
加圧エアーにより粉粒体を輸送すると、粉粒体と配管内面とが、又は粉粒体と粉粒体とが摩擦及び衝突することにより静電気を帯びる。この静電気の量は配管内面を通過する粉粒体の量に相関がある。本発明では、静電気の量を非接触センサーで測定することで種菌の供給量を正確に把握することとした。通常、種菌を輸送する配管は内径4mm程度の樹脂チューブを使用する。本発明で使用する静電気の量を測定するセンサーは、種菌の流れを妨げないようにチューブを包含するように種菌とは非接触で設ける。
【0008】
まず、本発明の種菌供給装置では、配管を通過する種菌の通過量に相当して変動する静電気の発生量を測定する非接触センサーと、静電気の発生量に応じて信号を出す警報手段を設ける。警報は、一般的なランプやブザーで知らせることとする。また、警報の出力は、希望する種菌供給量の80%以下又は120%以上、好ましくは90%以下又は110%以上に相当する静電気の発生量を非接触センサーで検知した場合に行えば良い。
【0009】
また、本発明の種菌供給装置では、回転数を増減できる種菌供給ローターと、配管を通過する種菌の通過量に相当して変動する静電気の発生量を測定する非接触センサーと、種菌供給ローターの回転数を増減して静電気の発生量を調整する制御手段を設ける。設定する静電気の発生量は希望する種菌供給量に相当する値とする。安定的に種菌を供給するには種菌供給ローターの回転数を設定した静電気の発生量になるように連続的に増減する。
【0010】
さらに、本発明の好適な種菌供給装置では、警報手段と制御手段を共に設けて、種菌供給ローターの回転数を設定した静電気の発生量になるように連続的に増減し、許容範囲の静電気の発生量又は予め設定した許容範囲の種菌供給ローターの回転数を逸脱した場合には警報を出力するようにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の種菌供給装置は、種菌の通過量に相当して変動する静電気の発生量を測定する非接触センサーを設けて種菌の供給量を正確に把握し、静電気の発生量で警報を出力又は種菌供給ローターの回転数を増減することで、粉粒体の種菌を少量であっても安心して安定的に供給できる。したがって、固体培養原料に均一な種菌の散布ができ、再現性のある固体培養が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面によって本発明の種菌供給装置を具体的に説明する。図1は本発明の種菌供給装置の全体ブロック図であり、図2は本発明の種菌供給装置における種菌供給ローターの斜視図である。
【0013】
本発明の種菌供給装置1は、種菌を収容する種菌ホッパー2、容積式供給機構3、加圧エアー供給チューブ4、種菌供給チューブ5及び非接触センサー6で構成されている。容積式供給機構3は、種菌供給ローター7をモーター8で回転させて種菌ホッパー2内の種菌を排出する。容積式供給機構3には加圧エアー供給チューブ4と種菌供給チューブ5が接続されていて加圧エアーで種菌供給チューブ5内を種菌が移送される。種菌が通過する配管である種菌供給チューブ5には静電気の発生量を測定する非接触センサー6を設け、種菌供給チューブ5末端は固体培養原料が連続的に移動している経路(図示せず)に接続されている。
【0014】
次に、警報手段と制御手段について説明する。警報手段は種菌の供給量が異常である場合に作業者に知らせる手段であり、制御手段は設定された種菌の供給量を維持するための手段である。
【0015】
警報手段は、変換器9、シーケンサ10、ランプ11及びブザー12の電気部品で構成されている。種菌供給チューブ5内を種菌が通過する量に相当して変動する静電気の発生量を測定する非接触センサー6で測定し、変換器9でシーケンサ10に入力できるように電気信号を変換する。非接触センサー6で測定した静電気の発生量が許容範囲にあるかどうかをシーケンサ10で判断して許容範囲にない場合はランプ11を点灯させてブザー12を鳴らす。
【0016】
制御手段は、変換器9、シーケンサ10及びスピードコントローラ13の電気部品で構成されている。まず警報手段と同様に、種菌供給チューブ5内を種菌が通過する量に相当して変動する静電気の発生量を測定する非接触センサー6で測定し、変換器9でシーケンサ10に入力できるように電気信号を変換する。次に、非接触センサー6で測定した静電気の発生量と予め設定している希望する種菌供給量に相当する静電気の発生量とをシーケンサ10で比較して、予め設定している静電気の発生量になるようにシーケンサ10からスピードコントローラ13に対して連続的に出力する。スピードコントローラ13はモーター8を介して種菌供給ローター7の回転をコントロールする。
【0017】
図1の本発明の種菌供給装置は、警報手段と制御手段を共に設けているが、予め連続的に制御される種菌供給ローター7の回転数の許容範囲を決めて、その範囲を超えた場合には警報を出力するようにすればさらに安心である。
【実施例】
【0018】
この実施例では種菌を固体培養原料に散布せず、種菌供給チューブ5の末端から排出された種菌をすべて回収してその重量を随時測定しながら確認した。まず、種菌ホッパー2に糸状菌の胞子のみの種菌100g(見掛比重0.4)を投入した。希望する種菌供給量を2g/minとして、種菌供給ローター7の溝の容積から単純計算すると回転数は8rpmであったためスタート時はこの回転から始めることとした。各設定は次のようにした。種菌供給量が2g/minに相当する静電気の発生量を変換器9で変換して、このときのシーケンサ10への入力値をDC12mAとした。静電気の発生量とシーケサ10への入力値は正比例させた。したがって、種菌供給量が2g/minに相当する静電気の発生量を調整するためには変換器9からの出力をDC12mAに調整すれば良いことになる。また、警報の設定は、種菌供給量が2g/minに相当する静電気の発生量の90%以下又は110%以上とした。つまり、変換器9からの出力がDC10.8mA以下又はDC13.2mA以上でランプ11が点灯し、ブザー12が鳴るようにした。なお、警報は種菌供給ローター7が回転を開始してから30秒間はシーケンサ10から出力しないようにした。
【0019】
種菌供給ローター7が回転を開始してから30秒以後は40分を経過するまで種菌供給ローター7の回転数が8.5±0.5rpmで推移した。この間の種菌供給量は丁度2g/minであり、制御手段が機能していることが確認できた。また、40分を経過した時点で種菌供給ローター7の動力であるモーター8の電源を切って容積式供給機構3からの種菌の排出を強制的に停止したところ3秒以内でランプ11が点灯し、ブザー12が鳴った。
【0020】
この実施例から、静電気の発生量を測定する非接触センサー6を設けて種菌の供給量を正確に把握し、静電気の発生量で警報を出力又は種菌供給ローター7の回転数を増減することで、種菌を少量であっても安心して安定的に供給できることが実証できた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の種菌供給装置の全体ブロック図である。
【図2】本発明の種菌供給装置における種菌供給ローターの斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1 種菌供給装置
2 種菌ホッパー
3 容積式供給機構
4 加圧エアー供給チューブ
5 種菌供給チューブ
6 非接触センサー
7 種菌供給ローター
8 モーター
9 変換器
10 シーケンサ
11 ランプ
12 ブザー
13 スピードコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧エアーにより種菌を供給する種菌供給装置において、配管を通過する種菌の通過量に相当して変動する静電気の発生量を測定する非接触センサーと、静電気の発生量に応じて信号を出す警報手段を設けたことを特徴とする種菌供給装置。
【請求項2】
加圧エアーにより種菌を供給する種菌供給装置において、回転数を増減できる種菌供給ローターと、配管を通過する種菌の通過量に相当して変動する静電気の発生量を測定する非接触センサーと、種菌供給ローターの回転数を増減して静電気の発生量を調整する制御手段を設けたことを特徴とする種菌供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate