種蒔き装置
【課題】一度に多くの所定の位置に正確に種蒔きができるとともに、軽量でありながら、剛性に富み、尚且つ内ケースの種子収納孔に収納された種子が、外ケースの種子放出孔から確実に放出できる種蒔き装置の提供。
【解決手段】上方が開口する外ケースと、この外ケースに摺動可能に収納された内ケースとを備え、内ケースの底部に裸種子を所定個数収納可能な種子収納孔を等間隔に透設し、外ケースの底部には前記種子収納孔の最大径より大径の種子放出孔を種子収納孔と同じ等間隔に透設し、外ケースの一側壁を着脱可能にし、この着脱可能な側壁とこの側壁に対面する内ケースの側壁との間に種子収納孔と種子放出孔とを合致させない方向に内ケースを押圧付勢する押圧付勢手段を設け、内ケースの底部の下面で、種子収納孔の半周部分を覆うスイーパーシートを、その円弧状部分内ケースの上手側に位置するように貼着した。
【解決手段】上方が開口する外ケースと、この外ケースに摺動可能に収納された内ケースとを備え、内ケースの底部に裸種子を所定個数収納可能な種子収納孔を等間隔に透設し、外ケースの底部には前記種子収納孔の最大径より大径の種子放出孔を種子収納孔と同じ等間隔に透設し、外ケースの一側壁を着脱可能にし、この着脱可能な側壁とこの側壁に対面する内ケースの側壁との間に種子収納孔と種子放出孔とを合致させない方向に内ケースを押圧付勢する押圧付勢手段を設け、内ケースの底部の下面で、種子収納孔の半周部分を覆うスイーパーシートを、その円弧状部分内ケースの上手側に位置するように貼着した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種蒔き装置、中でも厚みが薄い種子や非常に細かな種子を蒔く種蒔き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
花や野菜等の育苗する場合、一般に、複数のポットが縦横に整列配置された状態で合成樹脂により一体に形成されたトレーや複数のポットが着脱可能に整列配置された状態のポットに種子を蒔いて苗の成育をさせるようにしている。
このようなトレーでは、予め、一つ一つのポット内へ所定量の床土を入れて1個又は所定数の種子をまき、トレーをハウス内へ入れ、散水等の管理をして生育をするようにしている。
【0003】
こういった作業は、大規模農家においては、大掛かりな専用の種蒔き用のプラント等を設置することができるため、これらの作業の大部分を自動化することも可能ではあるが、中規模乃至小規模の農家の場合、これらの作業は殆ど手作業となる。
こうした手作業のなかで種蒔き作業は、個々の育苗ポットに所定数以上の種子が入ったときには、個々の育苗ポットにおいて発芽後に苗の間引き等の点検作業が必要になるし、反対に種子が入らない育苗ポットが発生した場合には、歩留りが悪くなり、採算性にも悪影響を与えることから、その作業には正確性が要求される。
かかる意味において、この種蒔き作業は、最も面倒で時間がかかるものであった。
【0004】
上記問題点に鑑み、本出願人は、先に、上方が開口する外ケースと、この外ケースに摺動可能に収納された内ケースとを備え、内ケースの底部に裸種子を所定個数収納可能な種子収納孔を等間隔に透設し、外ケースの底部には前記種子収納孔より大径の種子放出孔を種子収納孔と同じ等間隔に透設するとともに、外ケースの一側壁を着脱可能にし、この着脱可能な側壁とこの側壁に対面する内ケースの側壁との間に種子収納孔と種子放出孔とを合致させない方向に内ケースを押圧付勢する押圧付勢手段を設け、裸種子を蒔くに際しては押圧付勢手段の押圧付勢力に抗して内ケースを摺動させ、種子収納孔と種子放出孔とを合致させることにより、種子収納孔に収納された裸種子を種子放出孔から所定の場所に放出して種蒔きするようにした種蒔き装置を提案している(特許文献1)。
【0005】
ところがこうした先の提案にかかる種蒔き装置では、厚みが薄い種子や非常に細かな種子の場合、内ケースを摺動させるとき、内ケースの種子収納孔に収納された種子が、内ケースと外ケースとの摺擦部分に入り込んでしまい、その種子を傷つけたり潰してしまったりするという問題があった。
こうした問題を解消するには内ケースの底面と外ケース底部上面との間に隙間がないよう張り付いた状態にすればよいが、こうした場合には内ケースのすべりが悪くなってしまうという問題がある。
【0006】
また、厚みが薄い種子や非常に細かな種子の場合、機械では播種できないので、裸種子の周囲をコーティングして粒径を大きくして扱いやすくした、所謂コート種子も販売されている。
ところが、この種のコート種子は価格が裸種子に比べて一般的に2〜3倍であり、採算性の面で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−136444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み提案されたもので、種子収納孔に収納された小さな1粒の種子でも傷つけたり潰したりすることなく、一度に多くの所定の位置に正確に種蒔きができるとともに、軽量でありながら、剛性に富み、尚且つ、内ケースの種子収納孔に収納された種子が、小さな裸種子でも内ケースと外ケースとの摺擦部分に入り込むことがなく、外ケースの種子放出孔から確実に放出できる種蒔き装置を提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明にかかる種蒔き装置は、上方が開口する外ケースと、この外ケースに摺動可能に収納された内ケースとを備え、内ケースの底部に裸種子を所定個数収納可能な種子収納孔を等間隔に透設し、外ケースの底部には前記種子収納孔の最大径より大径の種子放出孔を種子収納孔と同じ等間隔に透設し、外ケースの一側壁を着脱可能にし、この着脱可能な側壁とこの側壁に対面する内ケースの側壁との間に種子収納孔と種子放出孔とを合致させない方向に内ケースを押圧付勢する押圧付勢手段を設け、内ケースの底部の下面で、種子収納孔の半周部分を覆うスイーパーシートを、その円弧状部分内ケースの上手側に位置するように貼着し、種子を蒔くに際しては押圧付勢手段の押圧付勢力に抗して内ケースを摺動させる時に、内ケースと外ケースとが対面する部分に入り込もうとする種子を前記スイーパーシートで種子放出孔側に押し出しながら、種子収納孔と種子放出孔とを合致させることにより、種子収納孔に収納された種子を種子放出孔から所定の場所に放出して種蒔きするように構成したことを最も主要な特徴とするものである。
【0010】
本発明にかかる種蒔き装置は、内ケースの底部に穿設される種子収納孔が、その底部で広がる傾斜状周面に形成してあること、種子収納孔の傾斜状周面の角度が10度から30度の範囲で設定してあることや、外ケースの底部下面に底板補強用桟材を格子状に設けたことも特徴とするものである。
【0011】
また、本発明にかかる種蒔き装置は、外ケースの底部下面に格子状に設けられた底板補強用桟材の一部が種蒔き装置の位置規定部を兼ねていること、内ケースの内部空間に補強用桟材を格子状に設け、底部に当接する補強用桟材に種子が流通可能な連通部を設けたこと、内ケースの底部に形成される種子収納孔が、外ケースの底部に穿設された種子放出孔と合致する範囲内に複数個設けたことや、外ケースの四囲の一側壁部分を着脱可能にし、当該側壁部分から内ケースを交換可能に構成にしたことも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる種蒔き装置によれば、先ず、内ケースの底の下面で、種子収納孔の半周部分を覆うスイーパーシートを、その円弧状部分内ケースの上手側に位置するように貼着し、種子を蒔くに際しては押圧付勢手段の押圧付勢力に抗して内ケースを摺動させる時に、内ケースと外ケースとが対面する部分に入り込もうとする種子を前記スイーパーシートで種子放出孔側に押し出しながら、種子収納孔と種子放出孔とを合致させることにより、種子収納孔に収納された種子を種子放出孔から所定の場所に放出して種蒔きするように構成してある。
【0013】
したがって、内ケースを摺動させる時に、厚みが薄い種や非常に細かな裸種子の場合には、これが内ケースと外ケースとが対面する部分に入り込もうとするが、こうした厚みが薄い種子や非常に細かな裸種子のようなものでも、前記スイーパーシートがこれ捕らえて、種子放出孔側に押し出し、種子収納孔と大径の種子放出孔とが合致したときに、このスイーパーシートで押し出されてきた種子が種子収納孔から大径の種子放出孔と通じて所定の位置に落下供給される。
【0014】
これにより、種子収納孔に収納した小さな1粒の裸種子や厚みの薄い種子でも、傷つけたり潰したりすることなく、一度に複数の所定の位置に正確に種蒔きができる。
このとき、内ケースの種子収納孔がその底部で広がる傾斜状周面に形成してあるものでは、種子の形状が例えば葱の種のように角張ったものでも、種子収納孔で絡んだり詰まったりすることがなく確実に種子放出孔から放出されて蒔くことができる利点がある。
【0015】
また、内ケースの内部空間に補強用桟材を格子状に設けて内ケース剛性を高めることにより、その底部の厚みを薄くすることができるので、さらに小さな1粒の裸種子でも種子収納孔に正確に収納できる利点がある。
外ケースの底部下面に底板補強用桟材を格子状に設けたり、内ケースの内部空間に補強用桟材を格子状に設けたりしたものでは、内外のケースの底部の剛性を高めて軽量化が図れる。
そして、底板補強用桟材の1部が種蒔き装置の位置規定部を兼ねるようにしたものでは、上記効果に加えて、種蒔き装置を育苗ポットに位置合わせを簡単に且つ正確に行うことができる利点がある。
【0016】
加えて、外ケースの底部下面に底板補強用桟材を格子状に設け、底板補強用桟材の1部が種蒔き装置の位置規定部を兼ねるようにしたものでは、底板補強用桟材により内ケースの底部の強度が高くなり、歪みを生じないので、種蒔き装置の軽量化をはかれ、種蒔き作業性を向上させることができる利点もある。
【0017】
さらに、内ケースの底部に形成される種子収納孔が、外ケースの底部に穿設された種子放出孔と合致する範囲内に複数個設けたものでは、上記効果に加えて、極小の種子でも正確に種蒔きすることができる利点がある。
【0018】
しかも、裸種子を潰したり傷つけたりすることなく使用することができるので、歩留まりもよく、高価なコート種子を使用しなくてもすみ、その経済性を大幅に向上させることができる利点もある。
【0019】
また、外ケースの四囲の一側壁部分を着脱可能にし、当該側壁部分から内ケースを交換可能に構成にしたものでは、種の形態に合わせて内ケースを交換することでき、外ケースの共通化によるコスト削減が可能になるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】は本発明に係る種蒔き装置の使用状態の分解斜視図である。
【図2】は本発明に係る種蒔き装置の使用状態の側面図である。
【図3】は本発明に係る種蒔き装置の縦断正面図である。
【図4】は本発明に係る種蒔き装置の縦断側面図である。
【図5】は本発明に係る種蒔き装置の種子収納孔部分を拡大した縦断面図である。
【図6】は本発明に係る種蒔き装置の使用状態の種子収納孔と種子放出孔との位置関係を示すスイーパーシート部分の平面図である。
【図7】は本発明に係る種蒔き装置の使用状態の種子収納孔と種子放出孔との位置関係を示すスイーパーシート部分を拡大した断面図である。
【図8】は本発明に係る種蒔き装置の使用状態の種子収納孔と種子放出孔とが合致した種蒔き時の位置関係を示すスイーパーシート部分を拡大した平面図である。
【図9】は本発明に係る種蒔き装置の種子収納孔部分の変形例を示す拡大平面図である。
【図10】は本発明に係る種蒔き装置の内ケースの変形例を示す斜視図である。
【図11】は本発明に係る種蒔き装置の内ケースの変形例の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明にかかる最も好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る種蒔き装置の使用状態の分解斜視図、図2は側面図であって、図中符号1は種蒔き装置を全体的に示す。
この種蒔き装置1は、育苗用トレー2の上方に載置して使用されるもので、外ケース3と、この外ケース3に摺動可能に収納された内ケース4を備えてなる。
育苗用トレー2は、合成樹脂により四隅を脚部5で支えられた矩形の上面から栽培ポット6を等間隔で縦横に設けた周知構造のものとなっている。
【0022】
上記種蒔き装置1の外ケース3及び内ケース4は、図3及び図4に示すように形成されている。
即ち、外ケース3は合成樹脂により上方が開口する浅い箱状に形成され、底部7には前記栽培ポット6の中心間隔と同じ等間隔で後述する内ケース4の底部16に透設される種子収納孔22の最大径より大きな種子放出孔8が穿設されている。
【0023】
また、外ケース3の四囲の一側壁(図1、図3上右方の側壁)9部分は着脱可能になっており、当該一側壁9部分の着脱構造は、前記側壁9を形成する部分から前後の側壁部分10と底部7に回りこむ部分とを一体に形成し、前後の側壁10部分に回り込む部分を固定部11として、当該固定部11が対面する前後の側壁10にビス12で止めつける構造になっている(図1参照)。
【0024】
一側壁9部分を形成する底部7に回りこむ部分13の端部には後述する位置規定具14の一部を形成する板状の突片15が垂下されている(図3参照)。
また、外ケース3の底面の下面には図3及び図4に示すように、底板補強用桟材31が格子状に設けてあり、この底板補強用桟材31の一部17が下方に突出され、前記突辺15と協働して種蒔き装置1を使用するときの位置規制具14を構成している。
上記位置規定具14は、前記突出する部分が前記育苗用トレー2の端縁部分に当接することにより、外ケース3の底部7に穿設された種子放出孔8が育苗用トレー2に形成された各ポット6のそれぞれの中心に位置するようになっている。
【0025】
因みに、外ケース3の底面の下面に、底板補強用桟材31を格子状に設けることにより、外ケース3の底部7の強度が高められることから厚みを薄くしても可能に撓むのが防止されるので、当該外ケース3の底部7の厚みを薄くして種蒔き装置1の軽量化を図ることができる。
上記種蒔き装置1の内ケース4は、合成樹脂で浅い箱状に形成され、図4に示すように底部16の前後の側縁部分にそって凸条19が形成されている。
この凸条19部分が外ケース3の隅部に形成されたガイド溝20に案内されることにより、外ケース3の一側壁9部分に対面する内ケース4の側壁21が外ケース3の一側壁9部分に接離する方向(図1上左右方向)に摺動可能に収納されている(図3参照)。
【0026】
また、内ケース4には、前記外ケース3の底部に穿設された種子放出孔8と同じ間隔で小径の種子収納孔22が透設されている。
この種子収納孔22は、図5に示すように、内ケース4の底部16の上面近傍部分(t1)はストレートの孔35にするとともに、その下方部分は底部で広がる傾斜状周面36にして下端(底面)部分が種子収納孔22の最大径Dとなっている。
上記傾斜状周面36の角度θは、10度から30度の範囲で設定されが、望ましくは20度である。
【0027】
すなわち、傾斜状周面36の角度θが10度未満の場合には、種子収納孔22内での種の絡み防止効果が見られず、30度を超える場合には種子が内ケース4の底面と外ケース3の底面との間に挟みこまれる現象が見られた。
また、例えば種子を1つだけ収納するものではその種子の大きさ(直径)に合わせた直径の円形と底部16の厚みが設定され、扁平で厚みの薄い種の場合にその厚みに合わせて底部16の厚みTが設定される。
【0028】
したがって、種子を1つ収納するものでは底部16の厚みTも薄いものとなるが、内ケース4の内部空間は前後にわたって複数の補強用桟材24が設けられてその剛性を高めてあるので、この補強用桟材24により、薄く形成された底部16が撓んだり、歪んだりするのが確実に防止される。
【0029】
因みに、本例では内ケース4の底部16の厚みTが4mm、内ケース4の底部の上面近傍部分(t1)が0.5mm、内ケース4の底部16の上面の種子収納孔22の径dが4.2mmφ、種子収納孔22の傾斜状周面33の角度θが20度、内ケース4の底部16の下面に穿設された種子収納孔22の径(最大径)が5.4mmφとなっている。
また、外ケース3の底部7に形成される種子放出孔8は8mmφにしてある。
【0030】
また、種子収納孔22群の前後方向の外方で、内ケース4の前後方向の側壁25と底部との隅部及びその近傍は種子貯留部26に形成されており、当該部分の補強用桟材24はその一部が切り欠かれて連通部27が形成され、この連通部27により種子貯留部26が連通されている(図1参照)。
【0031】
そして、外ケース3の内方に摺動可能に収納された内ケース4は、押圧付勢手段28により通常は種子収納孔22と種子放出孔8とが合致しないように付勢されている。
この押圧付勢手段28は、図1及び図3に示すように、外ケース3の着脱可能な一側壁9部分と、これに対面する内ケース4の側壁21との間に、外ケース3の着脱可能な一側壁9を遊嵌した状態で貫通し内ケース4の側壁21に固定されたボルト29に支持されたコイルスプリング30を設け、このコイルスプリング30の張力により、外ケース3の着脱可能な一側壁9部分と内ケース4の側壁21とが離間する方向に押圧付勢するように構成してある。
【0032】
一方、内ケース4の底部16の下面で、種子収納孔22部分には、図1及び図6乃至図8に示すようにスイーパーシート32が設けてある。
このスイーパーシート32は、約0.3mmの厚みの薄い合成樹脂シートを中心部分に種子収納孔22より若干大きな径の孔を有する円盤状に形成したものを半割の円弧状に形成し、この半割り円弧状の半割り部分33が外ケース3の種子放出孔8側に位置するように貼着して形成したものである。
【0033】
つまり、種子収納孔の半周部分を覆うスイーパーシート32は、その円弧状の半割り部分33が内ケース4の上手側に位置するように内ケース4の底部16の下面に貼着されている。
このように、スイーパーシート32を半割りの薄い合成樹脂シートにすると、内ケース4の底部16の下面と、この面が対面する外ケース3の底部の上面との間がスイーパーシート32の厚み分浮き上がるので、内ケース4は軽い力で摺動操作させることができることになる。
【0034】
上記のように構成された種蒔き装置1を使用する手順を次に説明する。
先ず、内ケース4の裸種子貯留部26に裸種子(図示せず)を入れ、種蒔き装置1を紙梳きの要領で揺り動かすことにより、種子貯留部26の裸種子を内ケース4の底部16の全体に薄く広げて、種子収納孔22に所定数の種子を収納させるのであるが、種子収納孔22はその大きさが所定数の種子だけを収納できる大きさであることから、当該種子収納孔22には正確に所定数の種子だけが収納される。
次に、種子収納孔22のそれぞれに種を収納させた種蒔き装置1を、各ポット6内へ所定量の床土を入れた育苗用トレー2の上方に載せる。
【0035】
このとき、位置規定具14で外ケース3が、育苗用トレー2への載置位置が規定されるので外ケース3の底部7に穿設された種子放出孔8は育苗用トレー2に形成された各ポット6の中心に位置する状態で載置される。
然る後、押圧付勢手段28の押圧付勢力に抗して内ケース4を摺動させ、図6及び図7の状態から図8の状態に種子収納孔22と種子放出孔8とを合致させることにより、種子収納孔22に収納された種子は外ケース3の種子放出孔8から育苗用トレー2の各ポット6の中央に放出されて種蒔きが終了する。
【0036】
ここで、押圧付勢手段28の押圧付勢力に抗して内ケース4を摺動させる時に、内ケース4と外ケース3とが対面する部分に入り込もうとする厚みの薄い種子でも、前記スイーパーシート32の半割り部分33で種子放出孔8側に押し出されながら移動し、種子収納孔22と種子放出孔8とが合致すると、種子収納孔22に収納された種子は、種子収納孔22の周面が下方に広がる傾斜状周面36となっているために、この種子収納孔22に詰まることなく、種子放出孔8に落下し、この種子放出孔8から所定の場所に余すところなく放出されるので、正確に種蒔きを行うことができる。
【0037】
因みに、栽培する種類の変更により種子の大きさが変わる場合には、外ケース3の着脱可能な一側壁9を前後の側壁10に止着しているビス12を外して内ケース4を取り外し、大きさの異なる種子収納孔22を有する内ケース4を逆の手順で取り替えるだけで簡単に変更することができる。
【0038】
また、上記実施の形態では育苗用トレー2を複数のポット-6を一体に形成したものにしてあるがこうしたものに限られず、植栽地に直接裸種子を蒔く場合にも使用することができるのはいうまでもないことである。
なお、種子収納孔22と種子放出孔8を形成する外ケース3及び内ケース4の各底部7・16を透明にすると、裸種子を蒔く位置を確認できる利点もある。
さらに上記底板補強用桟材31は格子状のものに限られず、外ケース3の底部7の下面に平行状に形成することも可能である。
【0039】
さらに、上記実施の形態では外ケース3の底面の下面に底板補強用桟材31を格子状に設け、この底板補強用桟材31の一部17を下方に突出させることにより、種蒔き装置1を使用するときの位置規制具14を構成するようにしてあるが、この位置規制具14は、底板補強用桟材31と別に形成することができるのはいうまでもないことである。
【0040】
加えて、上記実施の形態では内ケース4の底部16に穿設する種子収納孔22は図上、一つにしてあるが、こうしたものに限られず、例えば図9に示すように、外ケース3の底部7に穿設された種子放出孔8と合致する範囲内に複数個設けることにより、極小の種子でも一つの種子収納孔22に1つずつ収納して種子放出孔8から蒔くことができるので、大きな一つの種子収納孔22に複数の種子を収納して種蒔きをするときのように複数の種子が種子収納孔22内で絡み合って種子放出孔8に落ちなくなるようなことがなく、所定の数の種子を正確に種蒔きすることできるようにすることもできる利点がある。
【0041】
また、上記実施の形態では、内ケース4の内部空間に、前後にわたって複数の補強用桟材24を略等間隔に設けるようにしてあるが、図10に示すように、前後の補強用桟材24に加えて、左右方向に補強用桟材38を等間隔に設けて内ケース4の底部16の強度をさらに高めることにより、底部16の厚さを薄くして細かな裸種子も種蒔きに対応させることができる。
【0042】
この場合、図11に示すように、当該左右の補強用桟材38の内ケース4の底部16に当接する部分には種子が均一に供給されるための、種子貯留部26からの種子が流通可能な連通部39を設ける必要がある。
【符号の説明】
【0043】
1・・・種蒔き装置
3・・・外ケース
4・・・内ケース
7・・・外ケースの底部
8・・・種子放出孔
10・・・外ケースの前後の側壁
14・・・位置規定具
16・・・内ケースの底部
22・・・種子収納孔
24・38・・・内ケースの底部の補強用桟材
26・・・種子貯留部
27・39・・・連通部
28・・・押圧付勢手段
31・・・底板補強用桟材
32・・・スイーパーシート
33・・・半割り部分
36・・・傾斜状周面
【技術分野】
【0001】
本発明は、種蒔き装置、中でも厚みが薄い種子や非常に細かな種子を蒔く種蒔き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
花や野菜等の育苗する場合、一般に、複数のポットが縦横に整列配置された状態で合成樹脂により一体に形成されたトレーや複数のポットが着脱可能に整列配置された状態のポットに種子を蒔いて苗の成育をさせるようにしている。
このようなトレーでは、予め、一つ一つのポット内へ所定量の床土を入れて1個又は所定数の種子をまき、トレーをハウス内へ入れ、散水等の管理をして生育をするようにしている。
【0003】
こういった作業は、大規模農家においては、大掛かりな専用の種蒔き用のプラント等を設置することができるため、これらの作業の大部分を自動化することも可能ではあるが、中規模乃至小規模の農家の場合、これらの作業は殆ど手作業となる。
こうした手作業のなかで種蒔き作業は、個々の育苗ポットに所定数以上の種子が入ったときには、個々の育苗ポットにおいて発芽後に苗の間引き等の点検作業が必要になるし、反対に種子が入らない育苗ポットが発生した場合には、歩留りが悪くなり、採算性にも悪影響を与えることから、その作業には正確性が要求される。
かかる意味において、この種蒔き作業は、最も面倒で時間がかかるものであった。
【0004】
上記問題点に鑑み、本出願人は、先に、上方が開口する外ケースと、この外ケースに摺動可能に収納された内ケースとを備え、内ケースの底部に裸種子を所定個数収納可能な種子収納孔を等間隔に透設し、外ケースの底部には前記種子収納孔より大径の種子放出孔を種子収納孔と同じ等間隔に透設するとともに、外ケースの一側壁を着脱可能にし、この着脱可能な側壁とこの側壁に対面する内ケースの側壁との間に種子収納孔と種子放出孔とを合致させない方向に内ケースを押圧付勢する押圧付勢手段を設け、裸種子を蒔くに際しては押圧付勢手段の押圧付勢力に抗して内ケースを摺動させ、種子収納孔と種子放出孔とを合致させることにより、種子収納孔に収納された裸種子を種子放出孔から所定の場所に放出して種蒔きするようにした種蒔き装置を提案している(特許文献1)。
【0005】
ところがこうした先の提案にかかる種蒔き装置では、厚みが薄い種子や非常に細かな種子の場合、内ケースを摺動させるとき、内ケースの種子収納孔に収納された種子が、内ケースと外ケースとの摺擦部分に入り込んでしまい、その種子を傷つけたり潰してしまったりするという問題があった。
こうした問題を解消するには内ケースの底面と外ケース底部上面との間に隙間がないよう張り付いた状態にすればよいが、こうした場合には内ケースのすべりが悪くなってしまうという問題がある。
【0006】
また、厚みが薄い種子や非常に細かな種子の場合、機械では播種できないので、裸種子の周囲をコーティングして粒径を大きくして扱いやすくした、所謂コート種子も販売されている。
ところが、この種のコート種子は価格が裸種子に比べて一般的に2〜3倍であり、採算性の面で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−136444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点に鑑み提案されたもので、種子収納孔に収納された小さな1粒の種子でも傷つけたり潰したりすることなく、一度に多くの所定の位置に正確に種蒔きができるとともに、軽量でありながら、剛性に富み、尚且つ、内ケースの種子収納孔に収納された種子が、小さな裸種子でも内ケースと外ケースとの摺擦部分に入り込むことがなく、外ケースの種子放出孔から確実に放出できる種蒔き装置を提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明にかかる種蒔き装置は、上方が開口する外ケースと、この外ケースに摺動可能に収納された内ケースとを備え、内ケースの底部に裸種子を所定個数収納可能な種子収納孔を等間隔に透設し、外ケースの底部には前記種子収納孔の最大径より大径の種子放出孔を種子収納孔と同じ等間隔に透設し、外ケースの一側壁を着脱可能にし、この着脱可能な側壁とこの側壁に対面する内ケースの側壁との間に種子収納孔と種子放出孔とを合致させない方向に内ケースを押圧付勢する押圧付勢手段を設け、内ケースの底部の下面で、種子収納孔の半周部分を覆うスイーパーシートを、その円弧状部分内ケースの上手側に位置するように貼着し、種子を蒔くに際しては押圧付勢手段の押圧付勢力に抗して内ケースを摺動させる時に、内ケースと外ケースとが対面する部分に入り込もうとする種子を前記スイーパーシートで種子放出孔側に押し出しながら、種子収納孔と種子放出孔とを合致させることにより、種子収納孔に収納された種子を種子放出孔から所定の場所に放出して種蒔きするように構成したことを最も主要な特徴とするものである。
【0010】
本発明にかかる種蒔き装置は、内ケースの底部に穿設される種子収納孔が、その底部で広がる傾斜状周面に形成してあること、種子収納孔の傾斜状周面の角度が10度から30度の範囲で設定してあることや、外ケースの底部下面に底板補強用桟材を格子状に設けたことも特徴とするものである。
【0011】
また、本発明にかかる種蒔き装置は、外ケースの底部下面に格子状に設けられた底板補強用桟材の一部が種蒔き装置の位置規定部を兼ねていること、内ケースの内部空間に補強用桟材を格子状に設け、底部に当接する補強用桟材に種子が流通可能な連通部を設けたこと、内ケースの底部に形成される種子収納孔が、外ケースの底部に穿設された種子放出孔と合致する範囲内に複数個設けたことや、外ケースの四囲の一側壁部分を着脱可能にし、当該側壁部分から内ケースを交換可能に構成にしたことも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる種蒔き装置によれば、先ず、内ケースの底の下面で、種子収納孔の半周部分を覆うスイーパーシートを、その円弧状部分内ケースの上手側に位置するように貼着し、種子を蒔くに際しては押圧付勢手段の押圧付勢力に抗して内ケースを摺動させる時に、内ケースと外ケースとが対面する部分に入り込もうとする種子を前記スイーパーシートで種子放出孔側に押し出しながら、種子収納孔と種子放出孔とを合致させることにより、種子収納孔に収納された種子を種子放出孔から所定の場所に放出して種蒔きするように構成してある。
【0013】
したがって、内ケースを摺動させる時に、厚みが薄い種や非常に細かな裸種子の場合には、これが内ケースと外ケースとが対面する部分に入り込もうとするが、こうした厚みが薄い種子や非常に細かな裸種子のようなものでも、前記スイーパーシートがこれ捕らえて、種子放出孔側に押し出し、種子収納孔と大径の種子放出孔とが合致したときに、このスイーパーシートで押し出されてきた種子が種子収納孔から大径の種子放出孔と通じて所定の位置に落下供給される。
【0014】
これにより、種子収納孔に収納した小さな1粒の裸種子や厚みの薄い種子でも、傷つけたり潰したりすることなく、一度に複数の所定の位置に正確に種蒔きができる。
このとき、内ケースの種子収納孔がその底部で広がる傾斜状周面に形成してあるものでは、種子の形状が例えば葱の種のように角張ったものでも、種子収納孔で絡んだり詰まったりすることがなく確実に種子放出孔から放出されて蒔くことができる利点がある。
【0015】
また、内ケースの内部空間に補強用桟材を格子状に設けて内ケース剛性を高めることにより、その底部の厚みを薄くすることができるので、さらに小さな1粒の裸種子でも種子収納孔に正確に収納できる利点がある。
外ケースの底部下面に底板補強用桟材を格子状に設けたり、内ケースの内部空間に補強用桟材を格子状に設けたりしたものでは、内外のケースの底部の剛性を高めて軽量化が図れる。
そして、底板補強用桟材の1部が種蒔き装置の位置規定部を兼ねるようにしたものでは、上記効果に加えて、種蒔き装置を育苗ポットに位置合わせを簡単に且つ正確に行うことができる利点がある。
【0016】
加えて、外ケースの底部下面に底板補強用桟材を格子状に設け、底板補強用桟材の1部が種蒔き装置の位置規定部を兼ねるようにしたものでは、底板補強用桟材により内ケースの底部の強度が高くなり、歪みを生じないので、種蒔き装置の軽量化をはかれ、種蒔き作業性を向上させることができる利点もある。
【0017】
さらに、内ケースの底部に形成される種子収納孔が、外ケースの底部に穿設された種子放出孔と合致する範囲内に複数個設けたものでは、上記効果に加えて、極小の種子でも正確に種蒔きすることができる利点がある。
【0018】
しかも、裸種子を潰したり傷つけたりすることなく使用することができるので、歩留まりもよく、高価なコート種子を使用しなくてもすみ、その経済性を大幅に向上させることができる利点もある。
【0019】
また、外ケースの四囲の一側壁部分を着脱可能にし、当該側壁部分から内ケースを交換可能に構成にしたものでは、種の形態に合わせて内ケースを交換することでき、外ケースの共通化によるコスト削減が可能になるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】は本発明に係る種蒔き装置の使用状態の分解斜視図である。
【図2】は本発明に係る種蒔き装置の使用状態の側面図である。
【図3】は本発明に係る種蒔き装置の縦断正面図である。
【図4】は本発明に係る種蒔き装置の縦断側面図である。
【図5】は本発明に係る種蒔き装置の種子収納孔部分を拡大した縦断面図である。
【図6】は本発明に係る種蒔き装置の使用状態の種子収納孔と種子放出孔との位置関係を示すスイーパーシート部分の平面図である。
【図7】は本発明に係る種蒔き装置の使用状態の種子収納孔と種子放出孔との位置関係を示すスイーパーシート部分を拡大した断面図である。
【図8】は本発明に係る種蒔き装置の使用状態の種子収納孔と種子放出孔とが合致した種蒔き時の位置関係を示すスイーパーシート部分を拡大した平面図である。
【図9】は本発明に係る種蒔き装置の種子収納孔部分の変形例を示す拡大平面図である。
【図10】は本発明に係る種蒔き装置の内ケースの変形例を示す斜視図である。
【図11】は本発明に係る種蒔き装置の内ケースの変形例の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明にかかる最も好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る種蒔き装置の使用状態の分解斜視図、図2は側面図であって、図中符号1は種蒔き装置を全体的に示す。
この種蒔き装置1は、育苗用トレー2の上方に載置して使用されるもので、外ケース3と、この外ケース3に摺動可能に収納された内ケース4を備えてなる。
育苗用トレー2は、合成樹脂により四隅を脚部5で支えられた矩形の上面から栽培ポット6を等間隔で縦横に設けた周知構造のものとなっている。
【0022】
上記種蒔き装置1の外ケース3及び内ケース4は、図3及び図4に示すように形成されている。
即ち、外ケース3は合成樹脂により上方が開口する浅い箱状に形成され、底部7には前記栽培ポット6の中心間隔と同じ等間隔で後述する内ケース4の底部16に透設される種子収納孔22の最大径より大きな種子放出孔8が穿設されている。
【0023】
また、外ケース3の四囲の一側壁(図1、図3上右方の側壁)9部分は着脱可能になっており、当該一側壁9部分の着脱構造は、前記側壁9を形成する部分から前後の側壁部分10と底部7に回りこむ部分とを一体に形成し、前後の側壁10部分に回り込む部分を固定部11として、当該固定部11が対面する前後の側壁10にビス12で止めつける構造になっている(図1参照)。
【0024】
一側壁9部分を形成する底部7に回りこむ部分13の端部には後述する位置規定具14の一部を形成する板状の突片15が垂下されている(図3参照)。
また、外ケース3の底面の下面には図3及び図4に示すように、底板補強用桟材31が格子状に設けてあり、この底板補強用桟材31の一部17が下方に突出され、前記突辺15と協働して種蒔き装置1を使用するときの位置規制具14を構成している。
上記位置規定具14は、前記突出する部分が前記育苗用トレー2の端縁部分に当接することにより、外ケース3の底部7に穿設された種子放出孔8が育苗用トレー2に形成された各ポット6のそれぞれの中心に位置するようになっている。
【0025】
因みに、外ケース3の底面の下面に、底板補強用桟材31を格子状に設けることにより、外ケース3の底部7の強度が高められることから厚みを薄くしても可能に撓むのが防止されるので、当該外ケース3の底部7の厚みを薄くして種蒔き装置1の軽量化を図ることができる。
上記種蒔き装置1の内ケース4は、合成樹脂で浅い箱状に形成され、図4に示すように底部16の前後の側縁部分にそって凸条19が形成されている。
この凸条19部分が外ケース3の隅部に形成されたガイド溝20に案内されることにより、外ケース3の一側壁9部分に対面する内ケース4の側壁21が外ケース3の一側壁9部分に接離する方向(図1上左右方向)に摺動可能に収納されている(図3参照)。
【0026】
また、内ケース4には、前記外ケース3の底部に穿設された種子放出孔8と同じ間隔で小径の種子収納孔22が透設されている。
この種子収納孔22は、図5に示すように、内ケース4の底部16の上面近傍部分(t1)はストレートの孔35にするとともに、その下方部分は底部で広がる傾斜状周面36にして下端(底面)部分が種子収納孔22の最大径Dとなっている。
上記傾斜状周面36の角度θは、10度から30度の範囲で設定されが、望ましくは20度である。
【0027】
すなわち、傾斜状周面36の角度θが10度未満の場合には、種子収納孔22内での種の絡み防止効果が見られず、30度を超える場合には種子が内ケース4の底面と外ケース3の底面との間に挟みこまれる現象が見られた。
また、例えば種子を1つだけ収納するものではその種子の大きさ(直径)に合わせた直径の円形と底部16の厚みが設定され、扁平で厚みの薄い種の場合にその厚みに合わせて底部16の厚みTが設定される。
【0028】
したがって、種子を1つ収納するものでは底部16の厚みTも薄いものとなるが、内ケース4の内部空間は前後にわたって複数の補強用桟材24が設けられてその剛性を高めてあるので、この補強用桟材24により、薄く形成された底部16が撓んだり、歪んだりするのが確実に防止される。
【0029】
因みに、本例では内ケース4の底部16の厚みTが4mm、内ケース4の底部の上面近傍部分(t1)が0.5mm、内ケース4の底部16の上面の種子収納孔22の径dが4.2mmφ、種子収納孔22の傾斜状周面33の角度θが20度、内ケース4の底部16の下面に穿設された種子収納孔22の径(最大径)が5.4mmφとなっている。
また、外ケース3の底部7に形成される種子放出孔8は8mmφにしてある。
【0030】
また、種子収納孔22群の前後方向の外方で、内ケース4の前後方向の側壁25と底部との隅部及びその近傍は種子貯留部26に形成されており、当該部分の補強用桟材24はその一部が切り欠かれて連通部27が形成され、この連通部27により種子貯留部26が連通されている(図1参照)。
【0031】
そして、外ケース3の内方に摺動可能に収納された内ケース4は、押圧付勢手段28により通常は種子収納孔22と種子放出孔8とが合致しないように付勢されている。
この押圧付勢手段28は、図1及び図3に示すように、外ケース3の着脱可能な一側壁9部分と、これに対面する内ケース4の側壁21との間に、外ケース3の着脱可能な一側壁9を遊嵌した状態で貫通し内ケース4の側壁21に固定されたボルト29に支持されたコイルスプリング30を設け、このコイルスプリング30の張力により、外ケース3の着脱可能な一側壁9部分と内ケース4の側壁21とが離間する方向に押圧付勢するように構成してある。
【0032】
一方、内ケース4の底部16の下面で、種子収納孔22部分には、図1及び図6乃至図8に示すようにスイーパーシート32が設けてある。
このスイーパーシート32は、約0.3mmの厚みの薄い合成樹脂シートを中心部分に種子収納孔22より若干大きな径の孔を有する円盤状に形成したものを半割の円弧状に形成し、この半割り円弧状の半割り部分33が外ケース3の種子放出孔8側に位置するように貼着して形成したものである。
【0033】
つまり、種子収納孔の半周部分を覆うスイーパーシート32は、その円弧状の半割り部分33が内ケース4の上手側に位置するように内ケース4の底部16の下面に貼着されている。
このように、スイーパーシート32を半割りの薄い合成樹脂シートにすると、内ケース4の底部16の下面と、この面が対面する外ケース3の底部の上面との間がスイーパーシート32の厚み分浮き上がるので、内ケース4は軽い力で摺動操作させることができることになる。
【0034】
上記のように構成された種蒔き装置1を使用する手順を次に説明する。
先ず、内ケース4の裸種子貯留部26に裸種子(図示せず)を入れ、種蒔き装置1を紙梳きの要領で揺り動かすことにより、種子貯留部26の裸種子を内ケース4の底部16の全体に薄く広げて、種子収納孔22に所定数の種子を収納させるのであるが、種子収納孔22はその大きさが所定数の種子だけを収納できる大きさであることから、当該種子収納孔22には正確に所定数の種子だけが収納される。
次に、種子収納孔22のそれぞれに種を収納させた種蒔き装置1を、各ポット6内へ所定量の床土を入れた育苗用トレー2の上方に載せる。
【0035】
このとき、位置規定具14で外ケース3が、育苗用トレー2への載置位置が規定されるので外ケース3の底部7に穿設された種子放出孔8は育苗用トレー2に形成された各ポット6の中心に位置する状態で載置される。
然る後、押圧付勢手段28の押圧付勢力に抗して内ケース4を摺動させ、図6及び図7の状態から図8の状態に種子収納孔22と種子放出孔8とを合致させることにより、種子収納孔22に収納された種子は外ケース3の種子放出孔8から育苗用トレー2の各ポット6の中央に放出されて種蒔きが終了する。
【0036】
ここで、押圧付勢手段28の押圧付勢力に抗して内ケース4を摺動させる時に、内ケース4と外ケース3とが対面する部分に入り込もうとする厚みの薄い種子でも、前記スイーパーシート32の半割り部分33で種子放出孔8側に押し出されながら移動し、種子収納孔22と種子放出孔8とが合致すると、種子収納孔22に収納された種子は、種子収納孔22の周面が下方に広がる傾斜状周面36となっているために、この種子収納孔22に詰まることなく、種子放出孔8に落下し、この種子放出孔8から所定の場所に余すところなく放出されるので、正確に種蒔きを行うことができる。
【0037】
因みに、栽培する種類の変更により種子の大きさが変わる場合には、外ケース3の着脱可能な一側壁9を前後の側壁10に止着しているビス12を外して内ケース4を取り外し、大きさの異なる種子収納孔22を有する内ケース4を逆の手順で取り替えるだけで簡単に変更することができる。
【0038】
また、上記実施の形態では育苗用トレー2を複数のポット-6を一体に形成したものにしてあるがこうしたものに限られず、植栽地に直接裸種子を蒔く場合にも使用することができるのはいうまでもないことである。
なお、種子収納孔22と種子放出孔8を形成する外ケース3及び内ケース4の各底部7・16を透明にすると、裸種子を蒔く位置を確認できる利点もある。
さらに上記底板補強用桟材31は格子状のものに限られず、外ケース3の底部7の下面に平行状に形成することも可能である。
【0039】
さらに、上記実施の形態では外ケース3の底面の下面に底板補強用桟材31を格子状に設け、この底板補強用桟材31の一部17を下方に突出させることにより、種蒔き装置1を使用するときの位置規制具14を構成するようにしてあるが、この位置規制具14は、底板補強用桟材31と別に形成することができるのはいうまでもないことである。
【0040】
加えて、上記実施の形態では内ケース4の底部16に穿設する種子収納孔22は図上、一つにしてあるが、こうしたものに限られず、例えば図9に示すように、外ケース3の底部7に穿設された種子放出孔8と合致する範囲内に複数個設けることにより、極小の種子でも一つの種子収納孔22に1つずつ収納して種子放出孔8から蒔くことができるので、大きな一つの種子収納孔22に複数の種子を収納して種蒔きをするときのように複数の種子が種子収納孔22内で絡み合って種子放出孔8に落ちなくなるようなことがなく、所定の数の種子を正確に種蒔きすることできるようにすることもできる利点がある。
【0041】
また、上記実施の形態では、内ケース4の内部空間に、前後にわたって複数の補強用桟材24を略等間隔に設けるようにしてあるが、図10に示すように、前後の補強用桟材24に加えて、左右方向に補強用桟材38を等間隔に設けて内ケース4の底部16の強度をさらに高めることにより、底部16の厚さを薄くして細かな裸種子も種蒔きに対応させることができる。
【0042】
この場合、図11に示すように、当該左右の補強用桟材38の内ケース4の底部16に当接する部分には種子が均一に供給されるための、種子貯留部26からの種子が流通可能な連通部39を設ける必要がある。
【符号の説明】
【0043】
1・・・種蒔き装置
3・・・外ケース
4・・・内ケース
7・・・外ケースの底部
8・・・種子放出孔
10・・・外ケースの前後の側壁
14・・・位置規定具
16・・・内ケースの底部
22・・・種子収納孔
24・38・・・内ケースの底部の補強用桟材
26・・・種子貯留部
27・39・・・連通部
28・・・押圧付勢手段
31・・・底板補強用桟材
32・・・スイーパーシート
33・・・半割り部分
36・・・傾斜状周面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口する外ケースと、この外ケースに摺動可能に収納された内ケースとを備え、内ケースの底部に裸種子を所定個数収納可能な種子収納孔を等間隔に透設し、外ケースの底部には前記種子収納孔の最大径より大径の種子放出孔を種子収納孔と同じ等間隔に透設し、外ケースの一側壁を着脱可能にし、この着脱可能な側壁とこの側壁に対面する内ケースの側壁との間に種子収納孔と種子放出孔とを合致させない方向に内ケースを押圧付勢する押圧付勢手段を設け、内ケースの底部の下面で、種子収納孔の半周部分を覆うスイーパーシートを、その円弧状部分内ケースの上手側に位置するように貼着し、種子を蒔くに際しては押圧付勢手段の押圧付勢力に抗して内ケースを摺動させる時に、内ケースと外ケースとが対面する部分に入り込もうとする種子を前記スイーパーシートで種子放出孔側に押し出しながら、種子収納孔と種子放出孔とを合致させることにより、種子収納孔に収納された種子を種子放出孔から所定の場所に放出して種蒔きするように構成したことを特徴とする種蒔き装置。
【請求項2】
内ケースの底部に穿設される種子収納孔が、その底部で広がる傾斜状周面に形成してあることを特徴とする請求項1に記載の種蒔き装置。
【請求項3】
種子収納孔の傾斜状周面の角度が10度から30度の範囲で設定してあることを特徴とする請求項2に記載の種蒔き装置。
【請求項4】
外ケースの底部下面に底板補強用桟材を格子状に設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3にいずれか1項に記載の種蒔き装置。
【請求項5】
外ケースの底部下面に格子状に設けられた底板補強用桟材の一部が種蒔き装置の位置規定部を兼ねていることを特徴とする請求項4に記載の種蒔き装置。
【請求項6】
内ケースの内部空間に補強用桟材を格子状に設け、底部に当接する補強用桟材に種子が流通可能な連通部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の種蒔き装置。
【請求項7】
内ケースの底部に形成される種子収納孔が、外ケースの底部に穿設された種子放出孔と合致する範囲内に複数個設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の種蒔き装置。
【請求項8】
外ケースの四囲の一側壁部分を着脱可能にし、当該側壁部分から内ケースを交換可能に構成にしたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の種蒔き装置。
【請求項1】
上方が開口する外ケースと、この外ケースに摺動可能に収納された内ケースとを備え、内ケースの底部に裸種子を所定個数収納可能な種子収納孔を等間隔に透設し、外ケースの底部には前記種子収納孔の最大径より大径の種子放出孔を種子収納孔と同じ等間隔に透設し、外ケースの一側壁を着脱可能にし、この着脱可能な側壁とこの側壁に対面する内ケースの側壁との間に種子収納孔と種子放出孔とを合致させない方向に内ケースを押圧付勢する押圧付勢手段を設け、内ケースの底部の下面で、種子収納孔の半周部分を覆うスイーパーシートを、その円弧状部分内ケースの上手側に位置するように貼着し、種子を蒔くに際しては押圧付勢手段の押圧付勢力に抗して内ケースを摺動させる時に、内ケースと外ケースとが対面する部分に入り込もうとする種子を前記スイーパーシートで種子放出孔側に押し出しながら、種子収納孔と種子放出孔とを合致させることにより、種子収納孔に収納された種子を種子放出孔から所定の場所に放出して種蒔きするように構成したことを特徴とする種蒔き装置。
【請求項2】
内ケースの底部に穿設される種子収納孔が、その底部で広がる傾斜状周面に形成してあることを特徴とする請求項1に記載の種蒔き装置。
【請求項3】
種子収納孔の傾斜状周面の角度が10度から30度の範囲で設定してあることを特徴とする請求項2に記載の種蒔き装置。
【請求項4】
外ケースの底部下面に底板補強用桟材を格子状に設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3にいずれか1項に記載の種蒔き装置。
【請求項5】
外ケースの底部下面に格子状に設けられた底板補強用桟材の一部が種蒔き装置の位置規定部を兼ねていることを特徴とする請求項4に記載の種蒔き装置。
【請求項6】
内ケースの内部空間に補強用桟材を格子状に設け、底部に当接する補強用桟材に種子が流通可能な連通部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の種蒔き装置。
【請求項7】
内ケースの底部に形成される種子収納孔が、外ケースの底部に穿設された種子放出孔と合致する範囲内に複数個設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の種蒔き装置。
【請求項8】
外ケースの四囲の一側壁部分を着脱可能にし、当該側壁部分から内ケースを交換可能に構成にしたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の種蒔き装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−115191(P2010−115191A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185482(P2009−185482)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(594125211)株式会社阪中緑化資材 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(594125211)株式会社阪中緑化資材 (4)
【Fターム(参考)】
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