説明

穀粒蛋白質含量の増加を有するコムギ植物の作出及び使用の方法

本発明は、穀粒蛋白質含量の増加を有するコムギ植物を作出する新規の方法を提供する。該方法は、除草剤耐性、コムギアセトヒドロキシ酸合成酵素大サブユニット(AHASL)蛋白質をコードする遺伝子を導入する工程を含む。本発明は、高蛋白質穀粒を産生するコムギ植物及びそれらから得られるヒト・動物用食品を更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業分野、詳細には、穀粒蛋白質含量が増加したコムギ植物を作出し、且つ使用する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コムギの穀粒蛋白質含量は栄養価の向上に重要であるとともに、パンを製造するための主要な寄与因子でもある(Dick & Youngs(1988)”Evaluation of durum wheat,semolina,and pasta in the United States,”In:Durum wheat:Chemistry and technology,AACC,St.Paul,MN,pp.237− 248;Finney et al(1987)”Quality of hard,soft,and durum wheats”.In E.G.Heyne(ed.)Wheat and wheat improvement,Agron.Monogr.13,2nd ed.ASA,CSSA,and SSSA,Madison,WI,pp.677−748;Khan et al(2000)Crop ScL 40:518−524)。コムギの穀粒蛋白質含量は、高穀粒蛋白質を有するコムギに対する品質にふさわしい価格により、コムギ栽培者にとって重要な特性でもある(Olmos et al.(2003)Theor.Appl.Genet.107:1243−1251)。高穀粒蛋白質含量のための育種では多くの尽力が注がれているが、その特性及び環境との相互作用を制御する遺伝的特徴の複雑性により、その進展が遅れている。研究により、穀粒蛋白質含量に対するいくつかのQTLsが同定されている(Turner,et al.(2004)J.Cereal Sci.40:51−60;Joppa et al.(1997)Crop Sci.37:1586−158;Perretant et al.(2000)Theor.Appl.Genet.100:1167−1175;Prasad et al.(1999)Theor.Appl.Genet.99:341−345;Groos et al.(2003)Theor.Appl.Genet.106:1032−1040;Groos et al.(2004)J.Cereal Sci.40:93−100;Shewry et al.(1997)J.Sci.Food Agric.73:397−406)。穀粒蛋白質含量の1〜2%の向上は、コムギの特定のクラス又はタイプ内では有意な増加であるとみなされた(Tokatilidis et al.(2004)Field Crops Res.86:33−42;Olmos et al.(2003)Theor.Appl.Genet.107:1243−1251;Mesfin et al.(2000)Euphytica 116:237−242)。穀粒蛋白質含量は、環境条件、例えば、土壌肥沃度、気温、窒素栄養、降雨又は温度に影響される(Bhullar & Jenner(1985)Aust.J.Plant Physiol.12:363−375;Wardlaw& Wrigely(1994)Aust.J.Plant Physiol.21:695−703;Daniel & Triboi(200O)J.Cereal Sci.32:45−56;Metho et al.(1999)J.Sci.Food Agric.79:1823−1831)。研究では、収量に対する高蛋白質の負の作用があることも示されている(Cox et al.(1985)Crop Sci.25:430−435;Day et al.(1985)J.Plant Nutrition 8:555−566);しかし、他の研究では両方の特性を有するコムギを育種することが可能であることを示唆している(Day et al.(1985)J.Plant Nutrition 8:555−566;Johnson et al.(1978)”Breeding progress for protein and lysine in wheat,”In:Proceedings of the Fifth International Wheat Genetics Symposium,New Delhi,India,pp.825−835)。確かに、穀粒蛋白質に作用する単一遺伝子の形質又は密接に関連する形質を有することは、特に、該形質又は密接に関連する形質が迅速で費用対効果の大きい選抜を可能とする場合、パンの製造及びパンコムギの栄養価を向上する有意な利点を与えるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Turner,et al.(2004)J.Cereal Sci.40:51−60
【非特許文献2】Joppa et al.(1997)Crop Sci.37:1586−158
【非特許文献3】Perretant et al.(2000)Theor.Appl.Genet.100:1167−1175
【非特許文献4】Prasad et al.(1999)Theor.Appl.Genet.99:341−345
【非特許文献5】Groos et al.(2003)Theor.Appl.Genet.106:1032−1040
【非特許文献6】Groos et al.(2004)J.Cereal Sci.40:93−100
【非特許文献7】Shewry et al.(1997)J.Sci.Food Agric.73:397−406
【非特許文献8】Tokatilidis et al.(2004)Field Crops Res.86:33−42
【非特許文献9】Olmos et al.(2003)Theor.Appl.Genet.107:1243−1251
【非特許文献10】Mesfin et al.(2000)Euphytica 116:237−242
【非特許文献11】Bhullar & Jenner(1985)Aust.J.Plant Physiol.12:363−375
【非特許文献12】Wardlaw& Wrigely(1994)Aust.J.Plant Physiol.21:695−703
【非特許文献13】Daniel & Triboi(200O)J.Cereal Sci.32:45−56
【非特許文献14】Metho et al.(1999)J.Sci.Food Agric.79:1823−1831
【非特許文献15】Cox et al.(1985)Crop Sci.25:430−435;Day et al.(1985)J.Plant Nutrition 8:555−566)
【非特許文献16】Day et al.(1985)J.Plant Nutrition 8:555−566
【非特許文献17】Johnson et al.(1978)”Breeding progress for protein and lysine in wheat,”In:Proceedings of the Fifth International Wheat Genetics Symposium,New Delhi,India,pp.825−835
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、穀粒蛋白質含量が増加した穀粒を産生するコムギ植物を作出する方法を提供する。本発明は、コムギ植物がコムギ(Triticum aestivum)AHASL1A蛋白質ではアミノ酸位置579においてセリンからアスパラギンへの置換を含むAHASL1A蛋白質をコードするAHASL1A遺伝子の少なくとも1つのコピーをそのゲノムに含むという驚くべき発見に基づく。このアミノ酸置換は、対応するセリンからアスパラギンへの置換がシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)AHASL1A蛋白質のアミノ酸位置653であるため、本明細書ではS653N置換とも称される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の方法は、S653N置換を含むAHASL1A蛋白質をコードするコムギAHASL1A遺伝子の少なくとも1つのコピーを植物に導入する工程を含む。このような遺伝子は、例えば、他家受粉、突然変異生成及び形質転換のような方法によって導入され得る。本発明の方法は、AHASL1A S653N遺伝子含むコムギ植物又はその子孫植物を生育して穀粒を産生させる工程と、コムギ植物又はその子孫植物によって産生された穀粒の蛋白質含量を定量する工程とを更に含み得る。該方法は、例えば、有効量のAHAS阻害除草剤を植物及び/又は植物が生育しており、或いは生育される土壌若しくは他の基材に塗布することにより、コムギAHASL1A S653N遺伝子を含む植物を選抜する工程を更に含み得る。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、コムギ植物、植物器官、植物組織及び植物細胞及び高蛋白質穀粒並びに本発明のコムギ植物によって産生される高蛋白質穀粒に由来するヒト及び動物用食品を更に提供する。ヒト及び動物用食品を生産するために本発明の高蛋白質穀粒を使用する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】BW255−2及び対照BW255系統のコムギ植物から調製された酵素抽出物を用いて、バリン及びロイシンによるAHAS活性のフィードバック阻害を定量するためのin vitro研究の結果を示すグラフ表示である。BW255−2系統はAHASL1A S653N対立遺伝子に対してホモ接合性である。BW255はAHASL1A遺伝子においてホモ接合性野生型であり、BW255−2系統を作出するために突然変異誘発された親系統である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、穀粒蛋白質含量が増加した穀粒を含むコムギ植物を作出し、且つ使用する方法を提供する。本発明は、植物へのS653N置換を含むAHASL1A蛋白質をコードするコムギAHASL1A遺伝子の少なくとも1つのコピーをコムギ植物に導入する工程を含む。このような遺伝子は、例えば、他家受粉、突然変異生成及び形質転換のような方法によって導入され得る。本発明の方法は、AHASL1A S653N遺伝子含むコムギ植物又はその子孫植物を生育して穀粒を産生させる工程と、コムギ植物又はその子孫植物によって産生された穀粒の蛋白質含量を定量する工程とを更に含み得る。本発明の方法によって作出されるコムギ植物及びその子孫植物は、コムギAHASL1A S653N遺伝子を欠いたコムギ植物と比べ、高穀粒蛋白質含量を含む。
【0009】
本発明の方法は、穀粒蛋白質含量が増加した新規コムギ品種の開発に用途を見出す。本発明の方法は、容易に選抜可能な除草剤耐性特性に関連する高蛋白質コムギ特性により、選抜において強固な利点を提供するため、既存の方法と比べ、本発明の方法は、高蛋白質コムギを開発するのに必要な育種作業を大幅に低減する。更に、コムギAHASL1A S653N遺伝子に対する選択分子マーカーは当該技術分野において公知であり、従って、穀粒蛋白質含量が増加したコムギに対するマーカー支援育種手法に役立ち得る。米国特許出願公開第2005/0208506号を参照されたい(参照して本明細書に組み込まれる)。高蛋白質特性の選抜の容易性によって与えられる利点に加え、穀粒蛋白質含量の増加は穀粒収量と相関しない。従って、本発明の方法は、蛋白質含量が増加した穀粒を産生するコムギ植物を提供し、これらの植物は、同様の野生型植物と比べ、1エーカー当たりで生産される穀粒蛋白質の量を増加させるのに用いられ得る。最終的に、本発明の高蛋白質特性は、更に高い穀粒蛋白質含量を有するコムギ系統を開発するため、すでに穀粒蛋白質含量が高い既存のパンコムギの胚原質と組み合わせられ得る。
【0010】
本発明は、高蛋白質コムギ植物及びこれらの植物によって産生される高蛋白質穀粒を提供する。そのような高蛋白質穀粒はヒト及び動物用の様々な食品及び飼料品に用途を見出す。特に、本発明のコムギ植物によって産生される穀粒は、特に、パン製造に用いる高蛋白質コムギ粉の生産に用途を見出す。従って、本発明は、本発明の高蛋白質コムギ植物によって産生される穀粒を製粉する工程を含む、高蛋白質コムギ粉を作出する方法を提供する。
【0011】
本発明の高蛋白質コムギ植物は、野生型コムギ植物と比べ、除草剤耐性の増大も含む。特に、本発明の高蛋白質コムギ植物は、野生型コムギ植物と比べ、AHAS酵素の活性を妨害する、少なくとも1つの除草剤に対する耐性の増大を有する。本発明の高蛋白質コムギ植物は、コムギAHASL1A S653N遺伝子又はポリヌクレオチドの少なくとも1つのコピーを含む。そのようなコムギAHASL1A蛋白質は、アミノ酸位置579又は等価な位置においてアスパラギンを含む。野生型AHASL1A蛋白質では、位置579においてセリンが見出される。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の周知のAHASL1A蛋白質における対応位置がアミノ酸653であるため、セリン579からアスパラギンへの置換を含むAHASL1A蛋白質をコードするAHASL1A遺伝子は、植物AHASL配列の確立した命名法に準拠するため、AHASL1A S653N遺伝子と称される。
【0012】
本発明は、穀粒蛋白質含量の増加を有する穀粒を含むコムギ植物を作製する方法を提供する。一実施形態では、該方法は、突然変異生成により、特に、内在性コムギAHASL1A遺伝子を突然変異誘発してコムギAHASL1A S653N遺伝子を生じさせることにより、植物へのS653N置換を含むAHASL1A蛋白質をコードするコムギAHASL1A遺伝子の少なくとも1つのコピーをコムギ植物に導入する工程を含む。本発明の高蛋白質コムギ植物を作出するため、当該技術分野において公知の任意の突然変異生成法が用いられてもよい。そのような突然変異生成法は、例えば、以下の突然変異原:放射線、例えば、X線、ガンマ線(例えば、コバルト60又はセシウム137)、中性子、(例えば、原子炉におけるウラン235による核分裂の産物)、ベータ放射線(例えば、リン32又は炭素14のような放射性同位体から放射される)及び紫外線(2500〜2900nmが好ましい)並びに化学的突然変異原、例えば、メタンスルホン酸エチル(EMS)、塩基類似体(例えば、5−ブロモ−ウラシル)、関連化合物(例えば、8−エトキシカフェイン)、抗生物質(例えば、ストレプトニグリン)、アルキル化剤(例えば、硫黄マスタード、ナイトロジェンマスタード、エポキシド、エチレンアミン、スルファート、スルホナート、スルホン、ラクトン)、アジド、ヒドロキシルアミン、亜硝酸又はアクリジンの任意の1つ又はそれ以上の使用を含み得る。コムギAHASL1A S653N遺伝子を含むコムギ植物は、除草剤耐性突然変異を含む植物細胞を選抜し、AHASL1A S653N遺伝子を含む植物を選抜し、それらから植物を再生する組織培養法を用いることによっても作出され得る。例えば、米国特許第5,773,702号及び第5,859,348号を参照されたい(両方ともその全体を参照して本明細書に組み込まれる)。突然変異育種の更なる詳細については、「品種開発の原則(Principals of Cultivar Development)」Fehr,1993 Macmillan Publishing Companyに見出され得る(その開示内容は参照して本明細書に組み込まれる)。
【0013】
一実施形態では、本発明は、コムギAHASL1A S653N遺伝子又はポリヌクレオチドの1,2,3,4又はそれ以上のコピーを含む高蛋白質コムギ植物を提供する。例えば、高蛋白質コムギは、天然コムギAHASL1A遺伝子座においてAHASL1A S653N遺伝子の1又は2つのコピーを含み得、また、付加的或いは代替的に、天然コムギAHASL1Aプロモーター、又は、特に、登熟期間中に植物における発現を促進することが可能な別のプロモーター、例えば、種子優先或いは胚優先のプロモーター(seed−preferred or an embryo−preferred promoter)のようなプロモーターに作動可能に結合したAHASL1A S653Nポリヌクレオチドの1,2,3又はそれ以上のコピーを含み得る。
【0014】
本発明は、穀粒蛋白質含量の増加を有する穀粒を含むコムギ植物を作出する方法を提供する。本発明の一実施形態では、該方法は、植物細胞における発現を促進するプロモーターに作動可能に結合したヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドコンストラクトで植物細胞を形質転換する工程と、該形質転換植物細胞から形質転換植物を再生する工程とを含む。該ヌクレオチド配列は、アミノ酸位置579又は等価な位置においてアスパラギンを含むコムギAHASL1A蛋白質をコードする。コムギAHASL1A蛋白質をコードするヌクレオチド配列及びコムギAHASL1A S653N遺伝子を含むコムギ植物は過去に開示されている。WO 2004/106529及び米国特許出願公開第2004/0237134号 第2004/0244080号、第2005/0044597号、第2006/0010514号及び第2006/0095992号を参照されたい;これらはすべて参照して本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、該方法は、コムギAHASL1A S653N遺伝子の少なくとも1つのコピーを含むコムギ植物の別のコムギ植物との他家受粉を伴う従来の植物育種を含み、AHASL1A S653N遺伝子を含む親植物の除草剤耐性特徴を含む子孫植物(F1又はF2)を選抜する工程を更に含んでもよい。該方法は、AHASL1A S653Nに対してホモ接合性のコムギ系統を作出するため、F1植物の自家受粉及び次代の子孫植物(F2)の選抜を場合により含み得る。所望により、該方法は、一又はそれ以上の次世代(即ち、F2,F3,F4等)の自家受粉及びAHASL1A S653Nに対してホモ接合性の次代の子孫植物(即ち、F3,F4,F5等)の選抜を更に含み得る。明示しない限り、或いは使用の文脈から明らかでない限り、本明細書で用いられるような「子孫」という用語は、植物の直接の子孫に限定されず、次世代の子孫を含む。
【0015】
本発明の方法は、少なくとも1つのコムギAHASL1A S653N遺伝子を含むコムギ植物の使用を含む。そのようなコムギ植物には、限定されないが、特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−3955の基で2002年1月15日に米国バージニア州20110−2209、マナッサス(Manassas)、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)に寄託されたコムギ植物、2002年3月19日に米国バージニア州20110−2209、マナッサス(Manassas)、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)に寄託された特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−4113;及び2002年3月28日に米国バージニア州20110−2209、マナッサス(Manassas)、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)に寄託された特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−4257;ATCC特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−3955,PTA−4113及び/又はPTA−4257に関するコムギ植物の突然変異、組換え型若しくは遺伝子操作型の誘導体;ATCC特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−3955,PTA−4113及び/又はPTA−4257に関する植物の任意の子孫;並びにこれらの植物の任意の1つ又はそれ以上の子孫であるコムギ植物が含まれる。ATCC特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−3955,PTA−4113及びPTA−4257を有する任意のコムギ植物のそのような突然変異、組換え型又は遺伝子操作誘導体並びにそれらの子孫は、好ましくはATCC特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−3955,PTA−4113又はPTA−4257を有するコムギ植物の除草剤耐性特徴を含む。ATCC特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−3955,PTA−4113及びPTA−4257を有するコムギ植物並びにそれらの誘導体及び子孫は、米国特許出願公開第2004/0237134号、第2004/0244080号及び第2006/0095992号に述べられている;これらはすべて参照して本明細書に組み込まれる。
【0016】
ATCC特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−3955,PTA−4113及びPTA−4257を有する各コムギ系統の少なくとも2500個の種子の寄託は、それぞれ2002年1月3日、2002年3月4日及び2002年1月3日に米国バージニア州20110、マナッサス(Manassas)、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)の特許寄託機関(Patent Depository)になされた。これらの寄託の各々は少なくとも30年の期限でなされ、寄託の試料の提供に対する直近の要請の少なくとも5年後にATCCに受理される。これらの寄託体は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約(Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure)の条項に従って維持される。加えて、これらの寄託体は、試料の生存能の指標の提供を含む、37C.F.R.§§1.801−1.809の要求事項をすべて満たす。
【0017】
本明細書で用いられるように、別段の記載がない限り、或いは文脈から明らかでない限り、「植物」という用語は、限定されないが、植物細胞、植物プロトプラスト、植物が再生可能な植物細胞組織培養物、植物カルス、植物塊、植物において無傷の植物細胞又は植物の部分、例えば、胚、花粉、胚珠、子葉、葉、茎、花、枝、葉柄、果実、根、根端、葯などを含む。更に、種子は植物であると理解される。
【0018】
「高蛋白質コムギ植物」とは、本明細書で開示される方法によって作出され、本発明のコムギAHASL1A S653N遺伝子の少なくとも1つのコピーをそのゲノムに含まない類似コムギ植物のレベルを超えて増加した穀粒蛋白質含量レベルを有する穀粒を産生し、或いは産生することが可能なコムギ植物を意味するものとする。本発明の好ましい実施形態では、高蛋白質コムギ植物はTriticum aestivumコムギ植物である。
【0019】
本発明の高蛋白質コムギ植物によって産生される穀粒は、本明細書で「高蛋白質穀粒」と称される。
【0020】
本発明の「高蛋白質特性」とは高穀粒蛋白質含量であり、コムギ植物のゲノムにおける本発明のコムギAHASL1A S653N遺伝子又はポリヌクレオチドの存在によるものである。そのようなAHASL1A S653N遺伝子には、限定されないが、Triticum aestivum L.,T.monococcum L.,T.turgidum L.(限定されないが、亜種ペルシャコムギ(carthlicum)、デュラム(durum)、ノハラフタツブコムギ(dicoccoides)、エンマーコムギ(dicoccum)、ポーランドコムギ(polonicum)及びturanicum)及びT.spelta L.を含む、Aゲノムを有する任意のコムギ種由来のAHASL1A S653N遺伝子が含まれる。
【0021】
本発明は、穀粒蛋白質含量が増加した穀粒を産生する高蛋白質コムギ植物を提供する。通常、穀粒蛋白質含量は成熟乾燥穀粒の重量パーセントとして求められる。一般に、本発明のコムギ植物によって産生される穀粒の蛋白質含量は、コムギAHASL1A S653N遺伝子の少なくとも1つのコピーを含まない類似対照コムギ植物より少なくとも約4,5,6又は7%高い。好ましくは、本発明のコムギ植物によって産生される穀粒の蛋白質含量は、類似対照コムギ植物より少なくとも約8,9,10又は11%高い。より好ましくは、本発明のコムギ植物によって産生される穀粒の蛋白質含量は、類似対照コムギ植物より少なくとも約12,13,14又は15%高い。更に好ましくは、本発明のコムギ植物によって産生される穀粒の蛋白質含量は、類似対照コムギ植物より少なくとも約15,16,17又は18%高い。更に一層好ましくは、本発明のコムギ植物によって産生される穀粒の蛋白質含量は、類似対照コムギ植物より少なくとも約19,20,21又は22%高い。最も好ましくは、本発明のコムギ植物によって産生される穀粒の蛋白質含量は、類似対照コムギ植物より少なくとも約23%高い。
【0022】
本発明は、穀粒蛋白質含量又は他の穀粒構成要素、例えば、含水量及び個々のアミノ酸の濃度を求めるための特定の方法に依存しない。穀粒蛋白質含量、水分及び個々のアミノ酸を求めるには、当該技術分野において公知の任意の方法を用いることができる。例えば、AOACインターナショナルの公定分析法(2005)、第18版、AOACインターナショナル、米国メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg)、公定法990.03(粗蛋白質)、930.15(水分)及び982.30(アミノ酸/蛋白質効率比)を参照されたい;参照して本明細書に組み込まれる。
【0023】
本明細書で用いられるように、植物の「誘導体」又は「誘導コムギ植物」は、本発明の高蛋白質コムギ植物の子孫又はクローンであるコムギ植物であり、高蛋白質コムギ植物から継承されたコムギAHASL1A S653N遺伝子の少なくとも1つのコピーを含み、別段の記載がない限り、或いは文脈から明らかでない限り、やはり本明細書で定義づけされるような高蛋白質コムギ植物である。そのような誘導体又は誘導コムギ植物には、有性及び/又は無性生殖から生じる高蛋白質コムギ植物の子孫が含まれ、従って、非トランスジェニック及びトランスジェニックコムギ植物が含まれる。
【0024】
本発明は、除草剤耐性又は除草剤抵抗性コムギ植物である高蛋白質コムギ植物に関する。「除草剤耐性」又は「除草剤抵抗性」植物とは、通常であれば正常又は野生型植物を枯死させ、或いはその生育を阻害する濃度において少なくとも1つの除草剤に対して耐性又は抵抗性である植物であるということである。本発明の高蛋白質コムギ植物は除草剤耐性又は除草剤抵抗性AHASL蛋白質、特に、AHASL1A S653Nを含む。「除草剤耐性AHASL蛋白質」又は「除草剤抵抗性AHASL蛋白質」とは、AHAS活性を妨害することが知られている、少なくとも1つの除草剤の存在下、野生型AHASL蛋白質のAHAS活性を阻害することが知られている除草剤の濃度又はレベルにおいて、そのようなAHASL蛋白質が野生型AHASL蛋白質のAHAS活性と比べ、高いAHAS活性を示すということである。更に、そのような除草剤耐性又は除草剤抵抗性AHASL蛋白質のAHAS活性は、本明細書で「除草剤耐性」又は「除草剤抵抗性」AHAS活性と称される場合がある。
【0025】
本発明では、「除草剤耐性(herbicide−tolerant)」及び「除草剤抵抗性(herbicide−resistant)」という用語は置き換え可能に用いられ、同意義及び同等範囲を有するものとする。同様に、「除草剤耐性(herbicide−tolerance)」及び「除草剤抵抗性(herbicide−resistance)」という用語は置き換え可能に用いられ、同意義及び同等範囲を有するものとする。同様に、「イミダゾリノン抵抗性(imidazolinone−resistant)」及び「イミダゾリノン抵抗性(imidazolinone−resistance」)という用語は置き換え可能に用いられ、それぞれ「イミダゾリノン耐性(imidazolinone−tolerant)」及び「イミダゾリノン耐性(imidazolinone−tolerance)」という用語と同等の意味及び同等の範囲であるものとする。
【0026】
本発明は、除草剤抵抗性コムギAHASLポリヌクレオチド及び除草剤抵抗性コムギAHASL蛋白質、特に、コムギAHASL1A S653N遺伝子若しくはポリヌクレオチド及びコムギAHASL1A S653N蛋白質の使用を包含する。「除草剤抵抗性AHASLポリヌクレオチド」とは、除草剤抵抗性AHAS活性を含む蛋白質をコードするポリヌクレオチドであるものとする。「除草剤抵抗性AHASL蛋白質」とは、除草剤抵抗性AHAS活性を含む蛋白質又はポリペプチドであるものとする。
【0027】
更に、除草剤耐性又は除草剤抵抗性AHASL蛋白質をコードするヌクレオチド配列で植物又はその祖先を形質転換することにより、除草剤耐性又は除草剤抵抗性AHASL蛋白質を植物に導入することができることが理解される。そのような除草剤耐性又は除草剤抵抗性AHASL蛋白質は、除草剤耐性又は除草剤抵抗性AHASLポリヌクレオチドにコードされる。代替的には、除草剤耐性又は除草剤抵抗性AHASL蛋白質は、植物又はその祖先のゲノムにおける内在性AHASL遺伝子の天然由来又は誘発突然変異の結果として植物に生じてもよい。
【0028】
本発明は、少なくとも1つの除草剤、詳細には、AHAS酵素の活性を妨害する除草剤、より詳細には、イミダゾリノン系又はスルホニルウレア系除草剤に対する耐性を含む高蛋白質コムギ植物及び植物組織、植物細胞及びその穀粒を提供する。除草剤の好ましい量又は濃度は、「有効量」又は「有効濃度」である。「有効量」及び「有効濃度」とは、それぞれ、類似野生型植物、植物組織、植物細胞、小胞子又は宿主細胞を死滅させ、或いはその成長を阻害するのに十分な量及び濃度であるが、前記量では本発明の除草剤抵抗性植物、植物組織、植物細胞、小胞子及び宿主細胞を死滅させ、或いはそれらの成長を著しく阻害しない。典型的には、除草剤の有効量は、対象とする雑草を枯死させるために農業生産システムにおいて日常的に用いられる量である。そのような量は当業者には公知であり、或いは当該技術分野において公知の方法を用いて容易に求めることができる。更に、農業生産システムにおける除草剤の有効量は、例えば、下述の実施例1における小胞子培養系のような植物培養系に対する除草剤の有効量と実質的に異なり得ることが理解される。
【0029】
本発明の除草剤は、除草剤の存在下、AHAS活性が低下するように、AHAS酵素の活性を妨害する除草剤である。そのような除草剤もまた本明細書で「AHAS阻害除草剤」又は単に「AHAS阻害剤」とも称される場合がある。本明細書で用いられるように、「AHAS阻害除草剤」又は「AHAS阻害剤」は、AHAS酵素の活性を妨害する単一の除草剤を意味するものではない。従って、別段の記載がない限り、或いは文脈から明らかでない限り、「AHAS阻害除草剤」又は「AHAS阻害剤」は1つの除草剤又は2,3,4若しくはそれ以上の除草剤の混合物でよく、それらの各々がAHAS酵素の活性を妨害し得る。
【0030】
「類似野生型コムギ植物」とは、本明細書で開示される高蛋白質穀粒及び除草剤抵抗性特性を欠いたコムギ植物とするものである。従って、「野生型」という用語の使用は、植物、植物組織、植物細胞又は他の宿主細胞がそのゲノムに組換えDNAを欠き、且つ/或いは本明細書で開示されるものと異なる除草剤抵抗性特性を有さないということを示唆するものではない。
【0031】
本発明の植物は非トランスジェニック及びトランスジェニック植物を共に含む。「非トランスジェニック植物」とは、そのゲノムに組換えDNAを欠いた植物を意味するものとする。「トランスジェニック植物」とは、そのゲノムに組換えDNAを含む植物を意味するものとする。そのようなトランスジェニック植物は、組換えDNAを植物のゲノムに導入することによって作製され得る。そのような組換えDNAがトランスジェニック植物のゲノムに組み込まれると、該植物の子孫も組換えDNAを含む。少なくとも1つの祖先トランスジェニック植物の少なくとも一部分の組換えDNAを含む子孫植物もトランスジェニック植物である。
【0032】
本発明は、コムギAHASL1A蛋白質の既知の保存領域内にある、アミノ酸位置579におけるアミノ酸置換を有するAHASL1A蛋白質を含むコムギ植物を含む。下記表4を参照されたい。そのようなアミノ酸位置は、アミノ酸が、例えば、アミノ酸配列のN末端に付加されるのか、或いは該N末端から除去されるのかにより、変化し得るということを当業者は理解するであろう。従って、本発明は、前述の位置又は等価な位置(例えば、「アミノ酸位置579又は等価な位置」)におけるアミノ酸置換を有するコムギAHASL1A蛋白質を包含する。「等価な位置」とは、例示のアミノ酸位置と同じ保存領域内にある位置を意味するものとする。下記表4を参照されたい。コムギAHASL1A蛋白質のアミノ酸579と等価な位置がシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)AHASL1A蛋白質のアミノ酸653であるため、本発明の分野において十分に受け入れられている命名法に従うように、アミノ酸位置579におけるセリンからアスパラギンへの置換を有するコムギAHASL1A蛋白質は、本明細書ではシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)AHASL1A蛋白質のアミノ酸配列に基づくコムギAHASL1A S653N蛋白質とも称される。同様に、コムギAHASL1A S653N蛋白質をコードする遺伝子又はポリヌクレオチドは、本明細書ではコムギAHASL1A S653N遺伝子又はコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドと称される。
【0033】
本発明は、AHAS酵素の活性を妨害する少なくとも1つの除草剤に対する耐性又は抵抗性の亢進を含む高蛋白質コムギ植物に関する。そのようなAHAS阻害除草剤には、イミダゾリノン系除草剤、スルホニルウレア系除草剤、トリアゾロピリミジン系除草剤、ピリミジニルオキシベンゾアート系除草剤、スルホニルアミノ・カルボニルトリアゾリノン系除草剤又はこれらの混合物が含まれる。AHAS阻害除草剤はイミダゾリノン系除草剤であることが好ましい。本発明では、イミダゾリノン系除草剤には、限定されないが、PURSUIT(登録商標)(イマゼタピル)、CADRE(登録商標)(イマザピック)、RAPTOR(登録商標)(イマザモックス)、SCEPTER(登録商標)(イマザキン)、ASSERT(登録商標)(イマゼタベンズ)、ARSENAL(登録商標)(イマザピル)、前述の任意の除草剤の誘導体及び前述の2つ若しくはそれ以上の除草剤の混合物、例えば、イマザピル/イマザモックス(ODYSSEY(登録商標))が含まれる。より具体的には、イミダゾリノン系除草剤は、限定されないが、2−(4−イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−imidiazolin−2−イル)−ニコチン酸、[2−(4−イソプロピル)−4−][メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)−3−キノリンカルボン]酸、[5−エチル−2−(4−イソプロピル−]4−メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)−ニコチン酸、2−(4−イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)−5−(メトキシメチル)−ニコチン酸、[2−(4−イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−]イミダゾリン−2−イル)−5−メチルニコチン酸及びメチル[6−(4−イソプロピル−4−]メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)−m−トルイル酸とメチル[2−(4−イソプロピル−4−メチル−5−]オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)−p−トルイル酸との混合物から選択され得る。5−エチル−2−(4−イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)−ニコチン酸及び[2−(4−イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−]イル)−5−(メトキシメチル)−ニコチン酸が好ましい。[2−(4−イソプロピル−4−]メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)−5−(メトキシメチル)−ニコチン酸が特に好ましい。
【0034】
スルホニルウレア系除草剤には、限定されないが、クロルスルフロン、メトスルフロンメチル、スルホメツロンメチル、クロリムロンエチル、チフェンスルフロンメチル、トリベヌロンメチル、ベンスルフロンメチル、ニコスルフロン、エタメツスルフロンメチル、リムスルフロン、トリフルスルフロンメチル、トリアスルフロン、プリミスルフロンメチル、シノスルフロン、アミドスルフロン(amidosulfiuon)、フラザスルフロン、イマゾスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、ハロスルフロン、アジムスルフロン、シクロスルフロン、エトキシスルフロン、フラザスルフロン、フルピルスルフロンメチル、ホラムスルフロン、ヨードスルフロン、オキサスルフロン、メソスルフロン、プロスルフロン、スルホスルフロン、トリフルオキシスルフロン、トリトスルフロン、前述の任意の除草剤の誘導体及び前述の2つ若しくはそれ以上の除草剤の混合物が含まれる。本発明のトリアゾロピリミジン系除草剤には、限定されないが、クロランスラム、ジクロスラム、フロラスラム、フルメツラム、メトスラム及びペノキススラムが含まれる。本発明のピリミジニルオキシベンゾアート系除草剤には、限定されないが、ビスピリバック、ピリチオバック、ピリミノバック、ピリベンゾキシム及びピリフタリドが含まれる。スルホニルアミノ・カルボニルトリアゾリノン系除草剤には、限定されないが、フルカルバゾン及びプロポキシカルバゾンが含まれる。
【0035】
ピリミジニルオキシベンゾアート系除草剤はピリミジニルチオベンゾアート系除草剤と密接に関連し、米国雑草学会(Weed Science Society of America)により、後者の名称の見出しを元に一般化されるものと理解される。従って、本発明の除草剤には、限定されないが、上述のピリミジニルオキシベンゾアート系除草剤を含むピリミジニルチオベンゾアート系除草剤が更に含まれる。
【0036】
本発明は、高蛋白質コムギ植物を作出するため、コムギAHASL1A S653N遺伝子の少なくとも1つのコピーをコムギ植物のゲノムに導入する工程を含む、高蛋白質コムギ植物を作出する方法を提供する。本発明の一実施形態では、本発明のコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドに作動可能に結合したプロモーターを含むポリヌクレオチドコンストラクトでコムギ植物を形質転換することにより、コムギAHASL1A S653N遺伝子の少なくとも1つのコピーがコムギ植物に導入される。該方法は、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトを少なくとも1つの植物細胞に導入する工程と、そこから形質転換植物を再生する工程とを含む。該方法は、植物細胞における遺伝子発現を促進することが可能なプロモーターの使用を更に含む。好ましくは、そのようなプロモーターは、特に、蛋白質蓄積が生じることが知られている期間に、成長段階のコムギ穀粒において発現を促進するプロモーターである。そのようなプロモーターには、例えば、構成的プロモーター及び種子優先の(seed−preferred)プロモーターが含まれる。この方法によって作出されるコムギ植物は、類似の非形質転換コムギ植物と比べ、AHAS活性、特に、除草剤耐性AHAS活性の増大及び穀粒蛋白質含量の増加を含む。
【0037】
本明細書での「ポリヌクレオチドコンストラクト」という用語の使用は、本発明を、DNAを含むポリヌクレオチドコンストラクトに限定するものではない。ポリヌクレオチドコンストラクト、特に、リボヌクレオチド及びリボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドとの組合せからなるポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドも、本明細書で開示される方法において用いられてもよいということを当業者は理解するであろう。従って、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトは、植物を形質転換するための本発明の方法において用いることが可能なポリヌクレオチドコンストラクトを包含し、これには、限定されないが、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド及びそれらの組合せからなるポリヌクレオチドコンストラクトが含まれる。そのようなデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドは天然分子及び合成類似体を含む。本発明のポリヌクレオチドコンストラクトは、一本鎖形態、二本鎖形態、ヘアピン、ステム・ループ構造などを含むがこれらに限定されない、あらゆる形態のポリヌクレオチドコンストラクトも包含する。更に、本明細書で開示される各ヌクレオチド配列は該例示ヌクレオチド配列の相補体も包含することも当業者には理解される。
【0038】
更に、本発明のポリヌクレオチドの植物における発現のため、典型的には、該ポリヌクレオチドは対象とする植物における遺伝子発現を促進することが可能なプロモーターに作動可能に結合されることが理解される。本発明の方法は特定のプロモーターに依存しない。該方法は、当該技術分野において公知であって、対象とする植物における遺伝子発現を促進することが可能な任意のプロモーターの使用を包含する。
【0039】
一部の実施形態では、本発明の方法は、コムギ植物における発現のための発現カセットに供されるコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドでコムギ植物を形質転換する工程を含む。該カセットはコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドに作動可能に結合した5’及び3’調節配列を含む。「作動可能に結合」とは、プロモーターと第二の配列との機能的結合を意味し、該プロモーター配列は該第二の配列に対応するDNA配列の転写を開始・媒介する。一般に、作動可能に結合とは、結合される核酸配列が連続的であるということであり、必要な場合、連続的に同じリーディングフレーム内に2つの蛋白質コード領域を結合する。該カセットは生物に同時形質転換される、少なくとも1つの追加遺伝子を更に含んでもよい。代替的には、該追加遺伝子は複数の発現カセットに供せられ得る。
【0040】
そのような発現カセットは、調節領域の転写調節下となるコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドの挿入のための複数の制限部位を備える。該発現カセットは選択マーカー遺伝子を更に含んでもよい。
【0041】
該発現カセットは5’−3’転写方向に、植物において機能的な転写・翻訳開始領域(即ち、プロモーター)、本発明のコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチド及び転写・翻訳終止領域(即ち、終止領域)を含む。該プロモーターは植物宿主及び/又はコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドに対して天然又は類似或いは外来性又は異種であってもよい。加えて、該プロモーターは天然配列、又は代替的には、合成配列であってもよい。該プロモーターが植物宿主に対して「外来性」又は「異種」である場合、該プロモーターが導入される天然植物に該プロモーターは見出されないということである。該プロモーターがコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドに対して「外来性」又は「異種」である場合、該プロモーターは、作動可能に結合されるコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドに対する天然プロモーターではないということである。本明細書で用いられるように、キメラ遺伝子は、コード配列に対して異種である転写開始領域に作動可能に結合したコード配列を含む。
【0042】
異種プロモーターを用いてコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドを発現させることが好ましいかもしれないが、天然プロモーター配列を用いてもよい。そのようなコンストラクトは植物又は植物細胞におけるコムギAHASL1A S653N蛋白質の発現レベルを変化させ得る。従って、植物又は植物細胞の表現型が変わる。
【0043】
該終止領域は、転写開始領域に対して天然であってもよく、作動可能に結合されるコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドに対して天然であってもよく、植物宿主に対して天然であってもよく、或いは別の供給源に由来していてもよい(即ち、プロモーター、対象とするコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチド、植物宿主又はそれらの任意の組合せに対して外来性又は異種)。好都合な終止領域は、アグロバクテリウムツメファシエンス(A.tumefaciens)のTiプラスミドから得られ、例えば、オクトピン合成酵素及びノパリン合成酵素終止領域である。Guerineauら(199I)Mol.Gen.Genet.262:141−144;Proudfoot(1991)Cell 64:671−674;Sanfaconら(1991)Genes Dev.5:141−149;Mogenら(1990)Plant Cell 2:1261−1272;Munroeら(1990)Gene 91:151−158;Ballasら(1989)Nucleic Acids Res.17:7891−7903;及びJoshiら(1987)Nucleic Acid Res.15:9627−9639も参照されたい。
【0044】
適宜、遺伝子は形質転換植物における発現増大のために最適化されてもよい。即ち、発現向上のための植物優先(plant−preferred)コドンを用いて遺伝子を合成することができる。例えば、宿主優先(host−preferred)コドンの使用の考察については、Campbell及びGowri(1990)Plant Physiol.92:1−11を参照されたい。植物優先(plant−preferred)遺伝子を合成する方法は当該技術分野において利用可能である。例えば、米国特許第5,380,831号及び第5,436,391号並びにMurrayら(1989)Nucleic Acids Res.17:477−498を参照されたい。これらは参照して本明細書に組み込まれる。
【0045】
更なる配列の修飾が細胞宿主における遺伝子発現を亢進させることが周知である。これらには、疑似ポリアデニリル化シグナル、エクソン・イントロンスプライス部位シグナルをコードする配列、トランスポゾン様反復配列及び遺伝子発現に有害となってもよい、他のそのような十分に特徴づけられた配列の除去が含まれる。配列のG−C含量は、宿主細胞に発現される既知の遺伝子を参考にして計算することにより、所定の細胞宿主に平均的なレベルに調整されてもよい。可能な場合、予測されるヘアピン二次mRNA構造を回避するため、配列は修飾される。
【0046】
遺伝子発現を亢進させるためのヌクレオチド配列を植物発現ベクターに用いることもできる。これらには、トウモロコシAdhIのイントロン、イントロン1遺伝子(Callis et al.Genes and Development 1:1183−1200,1987)並びにタバコモザイクウイルス(TMV)、トウモロコシクロロティックモットルウイルス及びアルファルファモザイクウイルス由来のリーダー配列(W配列)(Gallie et al.Nucleic Acid Res.15:8693−8711,1987及びSkuzeski et al.Plant Mol.Biol.15:65−79,1990)が含まれる。トウモロコシのShrunken−1遺伝子座の第一イントロンは、キメラ遺伝子コンストラクトにおける遺伝子の発現を増大させることが示されている。米国特許第5,424,412号及び第5,593,874号は遺伝子発現コンストラクトにおける特定のイントロンの使用を開示しており、Gallieら(Plant Physiol.106:929−939,1994)も組織特異的ベースで遺伝子発現を調節するのにイントロンが有用であることを示している。AHAS小サブユニット遺伝子の発現を更に亢進させ、或いは最適化するため、本発明の植物発現ベクターはマトリックス結合領域(MARs)を含むDNA配列も含んでもよい。そのような改変発現系で形質転換された植物細胞は、次に、本発明のヌクレオチド配列の過剰発現又は構成的発現を示してもよい。
【0047】
該発現カセットは発現カセットコンストラクトに5’リーダー配列を更に含んでもよい。そのようなリーダー配列は翻訳を促進するように作用することができる。翻訳リーダーは当該技術分野において公知であり、ピコルナウイルスリーダー、例えば、EMCVリーダー(脳心筋炎5’非コード領域)(Elroy−Stein et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6126−6130);ポチウイルスリーダー、例えば、TEVリーダー(タバコエッチウイルス)(Gallie et al.(1995)Gene 165(2 ):233−238)、MDMVリーダー(トウモロコシ萎縮モザイクウイルス)(Virology 154:9−20)及びヒト免疫グロブリン重鎖結合蛋白質(BiP)(Macejak et al.(1991)Nature 353:90−94);アルファルファモザイクウイルスの外殻蛋白質mRNA由来の非翻訳リーダー(AMV RNA 4)(Jobling et al.(1987)Nature 325:622−625);タバコモザイクウイルスリーダー(TMV)(Gallie et al.(1989)in Molecular Biology of RNA,ed.Cech(Liss,New York),pp.237−256);並びにトウモロコシクロロティックモットルウイルスリーダー(MCMV)(Lommel et al(1991)Virology 81:382−385)を含む。Della−Cioppaら(1987)Plant Physiol.84:965−968も参照されたい。翻訳を促進することが公知の他の方法、例えば、イントロンなども用いることができる。
【0048】
該発現カセットを調製する際、適切な配向、また、必要に応じて適切なリーディングフレームでのDNA配列を提供するため、種々のDNA断片が操作されてもよい。これを目的として、DNA断片を結合するのにアダプター又はリンカーが用いられてもよく、或いは好都合な制限部位、余分なDNAの除去、制限部位の除去などを付与するため、他の操作が関与してもよい。これを目的として、in vitroでの突然変異生成、プライマー修復、制限、アニーリング、再置換、例えば、トランスバージョン及びトランジションが関与してもよい。
【0049】
本発明の実施において多くのプロモーターを用いることができる。プロモーターは所望の結果に基づいて選択することができる。核酸は植物における発現のための構成的、組織優先(tissue−preferred)又は他のプロモーターと結合され得る。
【0050】
そのような構成的プロモーターには、例えば、WO 99/43838及び米国特許第6,072,050号に開示されているRsyn7プロモーターのコアプロモーター及び他の構成的プロモーター;コアCaMV 35Sプロモーター(Odell et al.(1985)Nature 313:810−812);ライスアクチン(McElroy et al.(1990)Plant Cell 2:163−171);ユビキチン(Christensen et al.(1989)Plant Mol.Biol.12:619−632及びChristensen et al.(1992)Plant Mol.Biol.18:675−689);pEMU(Last et al.(1991)Theor.Appl.Genet.81:581−588);MAS(Velten et al.(1984)EMBO J.3:2723−2730);ALSプロモーター(米国特許第5,659,026号)などが含まれる。他の構成的プロモーターには、例えば、米国特許第5,608,149号;第5,608,144号;第5,604,121号;第5,569,597号;第5,466,785号;第5,399,680号;第5,268,463号;第5,608,142号;及び第6,177,611号が含まれる。
【0051】
組織優先の(tissue−preferred)プロモーターは、特定の植物組織内でのAHASL1発現の亢進を目的とするのに用いられ得る。そのような組織優先の(tissue−preferred)プロモーターには、限定されないが、葉優先の(leaf−preferred)プロモーター、根優先の(root−preferred)プロモーター、種子優先の(seed−preferred)プロモーター及び茎優先の(stem−preferred)プロモーターが含まれる。組織優先の(tissue−preferred)プロモーターには、Yamamotoら(1997)Plant J.12(2):255−265;Kawamataら(1997)Plant Cell Physiol.38(7):792−803;Hansenら(1997)Mol.Gen Genet.254(3):337−343;Russellら(1997)Transgenic Res.6(2):157−168;Rinehartら(1996)Plant Physiol.112(3):1331−1341;Van Campら(1996)Plant Physiol.112(2):525−535;Canevasciniら(1996)Plant Physiol.112(2):513−524;Yamamotoら(1994)Plant Cell Physiol.35(5):773−778;Lam(1994)Results Probl.Cell Differ.20:181−196;Orozcoら(1993)Plant Mol Biol.23(6):1129−1138;Matsuokaら(1993)Proc Natl.Acad.Sci.USA 90(20):9586−9590;及びGuevara−Garciaら(1993)Plant J.4(3):495−505が含まれる。そのようなプロモーターは、必要であれば微弱な発現のために改変され得る。
【0052】
一実施形態では、対象とする核酸は発現のために葉緑体を標的とする。この方法では、対象とする核酸は葉緑体に直接挿入されず、発現カセットは、対象とする遺伝子産物を葉緑体に誘導するため、葉緑体輸送ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む葉緑体標的配列を更に含む。そのような輸送ペプチドは当該技術分野において公知である。葉緑体標的配列に関し、「作動可能に結合」とは、輸送ペプチドをコードする核酸配列(即ち、葉緑体標的配列)がコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドに結合し、該2つの配列が連続的で同じリーディングフレーム内にあるようになるということである。例えば、Von Heijneら(1991)Plant Mol.Biol.Rep.9:104−126;Clarkら(1989)J.Biol.Chem.264:17544−17550;Della−Cioppaら(1987)Plant Physiol.84:965−968;Romerら(1993)Biochem.Biophys.Res.Commun.196:1414−1421;及びShahら(1986)Science 233:478−481を参照されたい。本発明のAHASL1蛋白質は天然葉緑体輸送ペプチドを含むが、本発明の成熟AHASL1A蛋白質をコードするヌクレオチド配列の5’末端に葉緑体標的配列を作動可能に結合することにより、当該技術分野において公知の任意の葉緑体輸送ペプチドが、本発明の成熟AHASL1A蛋白質のアミノ酸配列に融合され得る。
【0053】
葉緑体標的配列は当該技術分野において公知であり、リブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼ(Rubisco)の葉緑体小サブユニット(de Castro Silva Filho et al.(1996)Plant Mol.Biol.30:769−780;Schnell et al.(1991)J.Biol.Chem.266(5):3335−3342);5−(エノールピルビル)シキミ酸−3−リン酸合成酵素(EPSPS)(Archer et al.(1990)J.Bioenerg.Biomemb.22(6):789−810);トリプトファン合成酵素(Zhao et al.(1995)J.Biol.Chem.270(11):6081−6087);プラストシアニン(Lawrence et al.(1997)J.Biol.Chem.272(33 ):20357−20363);コリスミ酸合成酵素(Schmidt et al.(1993)J.Biol.Chem.268(36):27447−27457);及び集光性クロロフィルa/b結合蛋白質(LHBP)(Lamppa et al.(1988)J.Biol.Chem.263:14996−14999)を含む。Von Heijneら(1991)Plant Mol.Biol.Rep.9:104−126;Clarkら(1989)J.Biol.Chem.264:17544−17550;Della−Cioppaら(1987)Plant Physiol.84:965−968;Romerら(1993)Biochem.Biophys.Res.Commun.196:1414−1421;及びShahら(1986)Science 233:478−481も参照されたい。
【0054】
葉緑体の形質転換のための方法も当該技術分野において公知である。例えば、Svabら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:8526−8530;Svab及びMaliga(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:913−917;Svab及びMaliga(1993)EMBO J.12:601−606を参照されたい。該方法は、選択マーカーを含むDNAのパーティクルガンによる送達及び相同組換えによる色素体ゲノムへのDNAの標的化に依存する。加えて、核にコードされ、色素体へ方向づけられるRNAポリメラーゼの組織優先の(tissue−preferred)発現による、色素体に運ばれるサイレントトランス遺伝子のトランス活性化により、色素体の形質転換を行うことができる。そのようなシステムは、McBrideら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:7301−7305において報告されている。
【0055】
葉緑体を標的とする対象とする核酸は、植物核とこの細胞小器官とのコドン使用の相違を考慮し、葉緑体における発現のために最適化されてもよい。このように、対象とする核酸は葉緑体優先の(chloroplast−preferred)コドンを用いて合成されてもよい。例えば、米国特許第5,380,831号を参照されたい。これは参照して本明細書に組み込まれる。
【0056】
本明細書で開示されるように、本発明は、AHAS阻害除草剤に対する抵抗性を含む高蛋白質コムギ植物を作出する方法を提供する。該コムギ植物は、コムギAHASL1A S653N遺伝子の少なくとも1つのコピーをそのゲノムに含む。そのような遺伝子は、内在性遺伝子又は本明細書で開示されるようなトランス遺伝子であってもよい。加えて、一部の実施形態では、所望の表現型を有するコムギ植物を作出するため、コムギAHASL1A S653N遺伝子は、他の除草剤抵抗性AHASL1遺伝子を含む、任意の組合せの対象とするポリヌクレオチド配列を積み重ねることができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、例えば、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)の毒素蛋白質のような抗虫活性及び/又は殺虫活性を有するポリペプチドをコードする、他の任意のポリヌクレオチドを積み重ねられてもよい(米国特許第5,366,892号;第5,747,450号;第5,737,514号;第5,723,756号;第5,593,881号;及びGeiser et al.(1986)Gene 48:109に述べられている)。生じる組合せは任意の1つの対象とするポリヌクレオチドの複数コピーも含み得る。
【0057】
本発明の発現カセットは、形質転換細胞の選抜のための選択マーカー遺伝子を含み得る。本発明の選択マーカー遺伝子を含む選択マーカー遺伝子は、形質転換細胞又は組織の選抜のために用いられる。マーカー遺伝子には、限定されないが、抗生物質抵抗性をコードする遺伝子、例えば、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NEO)及びヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)をコードする遺伝子並びに除草性化合物、例えば、グルホシナートアンモニウム、ブロモキシニル、イミダゾリノン及び2,4−ジクロロフェノキシアセタート(2,4−D)に対する抵抗性を付与する遺伝子が含まれる。Yarranton(1992)Curr.Opin.Biotech.3:506−511;Christophersonら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6314−6318;Yaoら(1992)Cell 71:63−72;Reznikoff(1992)Mol.Microbiol.6:2419−2422;The OperonにおけるBarkleyら(1980),pp.177−220;Huら(1987)Cell 48:555−566;Brownら(1987)Cell 49:603−612;Figgeら(1988)Cell 52:713−722;Deuschleら(1989)Proc.Natl.Acad.Aci.USA 86:5400−5404;Fuerstら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2549−2553;Deuschleら(1990)Science 248:480−483;Gossen(1993)Ph.D.論文、ハイデルベルク大学(University of Heidelberg);Reinesら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1917−1921;Labowら(1990)Mol.Cell.Biol.10:3343−3356;Zambrettiら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3952−3956;Baimら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5072−5076;Wyborskiら(1991)Nucleic Acids Res.19:4647−4653;Hillenand−Wissman(1989)Topics Mol.Struc.Biol.10:143−162;Degenkolbら(1991)Antimicrob.Agents Chemother.35:1591−1595;Kleinschnidtら(1988)Biochemistry 27:1094−1104;Bonin(1993)Ph.D.論文、ハイデルベルク大学(University of Heidelberg);Gossenら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547−5551;Olivaら(1992)Antimicrob.Agents Chemother.36:913−919;Hlavkaら(1985)Handbook of Experimental Pharmacology,Vol.78(Springer−Verlag社、ベルリン);Gillら(1988)Nature 334:721−724を全体的に参照されたい。そのような開示内容は参照して本明細書に組み込まれる。
【0058】
上記一覧の選択マーカー遺伝子は限定的なものではない。本発明において任意の選択マーカー遺伝子を用いることができる。
【0059】
コムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドコンストラクト及び発現カセットは、ベクターにおいてコムギ植物を形質転換するのに用いられ得る。コムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドは、単独で、或いは植物における除草剤抵抗性を付与する際のAHAS酵素の小サブユニット(AHASS)をコードするヌクレオチド配列と組合せ、ベクターにおいて用いられ得る。米国特許第6,348,643号を参照されたい;これは参照して本明細書に組み込まれる。
【0060】
本発明は、また、蛋白質含量の増加を有する穀粒を産生するとともに除草剤抵抗性であるトランスジェニックコムギ植物を作出する方法に関し、該方法は、コムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドに作動可能に結合した、植物における発現を促進するプロモーターを含むポリヌクレオチドコンストラクトで植物を形質転換する工程を含む。
【0061】
本発明は、また、非トランスジェニックコムギ植物、本発明の方法によって作出されるトランスジェニックコムギ植物並びにそのような非トランスジェニック及びトランスジェニックコムギ植物の後代及び他の子孫に関し、それらの植物はAHAS酵素を妨害する除草剤、特に、イミダゾリノン系及びスルホニルウレア系除草剤に対する抵抗性の亢進又は増大を示し、蛋白質含量が増加した穀粒を産生する。
【0062】
本発明の高蛋白質コムギ植物は、コムギAHASL1A S653N遺伝子の少なくとも1つのコピーに加え、1つ又はそれ以上の追加AHASLポリヌクレオチドをそのゲノムに含み得る。除草剤耐性AHASL蛋白質をコードする内在性遺伝子を含むヌクレオチド配列及び除草剤耐性AHASL蛋白質をコードする内在性遺伝子を含む除草剤耐性植物は、本発明のポリヌクレオチド及び植物並びに当該技術分野において公知のポリヌクレオチド及び植物を含む。例えば、米国特許第5,013,659号、第5,731,180号、第5,767,361号、第5,545,822号、第5,736,629号、第5,773,703号、第5,773,704号、第5,952,553号及び第6,274,796号を参照されたい;これらはすべて参照して本明細書に組み込まれる。
【0063】
多くの植物形質転換ベクター及び植物を形質転換する方法を利用できる。例えば、An,G.ら(1986)Plant Pysiol.,81:301−305;Fry,J.ら(1987)Plant Cell Rep.6:321−325;Block,M.(1988)Theor.Appl Genet.76:767−774;Cousinsら(1991)Aust.J.Plant Physiol.18:481−494;Chee,P.P.及びSlightom,J.L.(1992)Gene 118:255−260;Christouら(1992)Trends.Biotechnol.10:239−246;D’Halluinら(1992)Bio/Technol.10:309−314;Dhirら(1992)Plant Physiol.99:81−88;Casasら(1993)Proc.Nat.Acad Sci.USA 90:11212−11216;Christou,P.(1993)In Vitro Cell.Dev.Biol.−Plant;29P:119−124;Daviesら(1993)Plant Cell Rep.12:180−183;Dong,J.A.及びMchughen,A.(1993)Plant Sci.91:139−148;Franklin,C.I.及びTrieu,T.N.(1993)Plant.Physiol.102:167;Golovkinら(1993)Plant Sci.90:41−52;Guo Chin Sci.Bull.38:2072−2078;Asanoら(1994)Plant Cell Rep.13;Ayeres N.M.及びPark,W.D.(1994)Crit.Rev.Plant.Sci.13:219−239;Barceloら(1994)Plant.J.5:583−592;Beckerら(1994)Plant.J.5:299−307;Borkowskaら(1994)Acta.Physiol Plant.16:225−230;Christou,P.(1994)Agro.Food.Ind.Hi Tech.5:17−27;Eapenら(1994)Plant Cell Rep.13:582−586;Hartmanら(1994)Bio−Technology 12:919923;Ritalaら(1994)Plant.Mol.Biol.24:317−325;並びにWan,Y.C.及びLemaux,P.G.(1994)Plant Physiol.104:3748を参照されたい。
【0064】
本発明の方法は、ポリヌクレオチドコンストラクトを植物に導入する工程を含む。「ポリヌクレオチドコンストラクトを導入する」とは、該コンストラクトが植物の細胞の内部にアクセスできるように、ポリヌクレオチドコンストラクトを植物に提示することを意味するものとする。本発明の方法は、ポリヌクレオチドコンストラクトを植物に導入するための特定の方法に依存せず、単に、ポリヌクレオチドコンストラクトが植物の少なくとも1つの細胞の内部にアクセスするということである。ポリヌクレオチドコンストラクトを植物に導入する方法は当該技術分野において公知であり、限定されないが、安定形質転換法、一過性形質転換法及びウイルス媒介法を含む。
【0065】
「安定形質転換」とは、植物に導入されるポリヌクレオチドコンストラクトが植物のゲノムに組み込まれ、その子孫に継承されることが可能であるということである。「一過性形質転換」とは、植物に導入されるポリヌクレオチドコンストラクトが植物のゲノムに組み込まれないということである。
【0066】
植物及び植物細胞の形質転換のため、コムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドは、標準的技法を用いて、植物又は植物細胞におけるヌクレオチド配列の発現に適した、当該技術分野において公知の任意のベクターに挿入される。ベクターの選択は、好ましい形質転換法及び形質転換される標的植物種に依存する。本発明の一実施形態では、コムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドは、植物細胞における高レベルの発現で周知の植物プロモーターに作動可能に結合され、次に、このコンストラクトはイミダゾリノン系除草剤の影響を受けやすい植物及びそれが再生した形質転換植物に導入される。該形質転換植物は、非形質転換植物を枯死させ、或いは著しく損傷するであろう、あるレベルのイミダゾリノン系除草剤への曝露に対して耐性である。この方法は如何なる植物種にも適用可能であるが、作物、特に、通常、少なくとも1つの除草剤、特に、イミダゾリノン系除草剤の存在下で生育される作物に適用される場合に最も利益がある。
【0067】
植物発現カセットを構築し、外来性核酸を植物に導入する方法は、当該技術分野において公知であり、過去に報告されている。例えば、外来性DNAは腫瘍誘発(Ti)プラスミドベクターを用いて植物に導入され得る。外来性DNAの送達のために用いられる他の方法は、PEG媒介プロトプラスト形質転換、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション ウィスカー並びにDNAの直接取込みのためのバイオリスティックス又は微粒子銃の使用を含む。そのような方法は当該技術分野において公知である(Vasilらに付与された米国特許第5,405,765号;Bilang et al.(1991)Gene 100:247−250;Scheid et al.(1991)Mol.Gen.Genet.,228:104−112;Guerche et al.,(1987)Plant Science 52:111−116;Neuhause et al.,(1987)Theor.Appl Genet.75:30−36;Klein et al.,(1987)Nature 327:70−73;Howell et al.,(1980)Science 208:1265;Horsch et αl.,(1985)Science 227:1229−1231;DeBlock et al.,(1989)Plant Physiology 91 :694−701;Methods for Plant Molecular Biology(Weissbach and Weissbach,eds.)Academic Press,Inc.(1988)及びMethods in Plant Molecular Biology(Schuler and Zielinski,eds.)Academic Press,Inc.(1989))。形質転換の方法は、形質転換される植物細胞、使用ベクターの安定性、遺伝子産物の発現レベル及び他のパラメータに依存する。
【0068】
ヌクレオチド配列を植物細胞に導入し、続いて植物ゲノムに挿入する他の好適な方法には、Crosswayら(1986)Biotechniques 4:320−334のようなマイクロインジェクション;Riggsら(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5602−5606に報告されているようなエレクトロポレーション;Townsendら、米国特許第5,563,055号、Zhaoら、米国特許第5,981,840号に述べられているようなアグロバクテリウム媒介形質転換;Paszkowskiら(1984)EMBO J.3:2717−2722に報告されているような遺伝子直接導入;及び、例えば、Sanfordら、米国特許第4,945,050号;Tomesら、米国特許第5,879,918号;Tomesら、米国特許第5,886,244号;Bidneyら、米国特許第5,932,782号;Tomesら(1995)「微粒子銃による無傷植物細胞へのDNA直接導入(Direct DNA Transfer into Intact Plant Cells via Microprojectile Bombardment)」、植物細胞、組織及び器官の培養:基本的方法(Plant Cell,Tissue,and Organ Culture:Fundamental Methods)、Gamborg及びPhillips(編)(Springer−Verlag社、ベルリン);McCabeら(1988)Biotechnology 6:923−926に述べられているような弾道粒子加速;並びにLec1形質転換(WO 00/28058)が含まれる。Weissingerら(1988)Ann.Rev.Genet.22:421−477;Sanfordら(1987)Particulate Science and Technology 5:27−37(タマネギ);Christouら(1988)Plant Physiol.87:671−674(ダイズ);McCabeら(1988)Bio/Technology 6:923−926(ダイズ);Finer及びMcMullen(1991)In Vitro Cell Dev.Biol.27P:175−182(ダイズ);Singhら(1998)Theor.Appl.Genet.96:319−324(ダイズ);Dattaら(1990)Biotechnology 8:736−740(コメ);Kleinら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4305−4309(トウモロコシ);Kleinら(1988)Biotechnology 6:559−563(トウモロコシ);Tomes、米国特許第5,240,855号;Buisingら、米国特許第5,322,783号及び第5,324,646号;Tomesら(1995)「微粒子銃による無傷植物細胞へのDNA直接導入(Direct DNA Transfer into Intact Plant Cells via Microprojectile Bombardment)」、植物細胞、組織及び器官の培養:基本的方法(Plant Cell,Tissue,and Organ Culture:Fundamental Methods)、Gamborg(編)(Springer−Verlag社、ベルリン)(トウモロコシ);Kleinら(1988)Plant Physiol.91:440−444(トウモロコシ);Frommら(1990)Biotechnology 8:833−839(トウモロコシ);Hooykaas−Van Slogterenら(1984)Nature(ロンドン)311:763−764;Bowenら、米国特許第5,736,369号(穀類);Bytebierら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:5345−5349(ユリ科);De Wetら(1985)、胚珠組織の実験的操作(The Experimental Manipulation of Ovule Tissues)、Chapmanら(編)(Longman社、ニューヨーク)、pp.197−209(花粉);Kaepplerら(1990)Plant Cell Reports 9:415−418及びKaepplerら(1992)Theor.Appl.Genet.84:560−566(ウィスカー媒介形質転換);D’Halluinら(1992)Plant Cell 4:1495−1505(エレクトロポレーション);Liら(1993)Plant Cell Reports 12:250−255並びにChristou及びFord(1995)Annals of Botany 75:407−413(コメ);Osjodaら(1996)Nature Biotechnology 14:745−750(アグロバクテリウムツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)によるトウモロコシ)も参照されたい。;これらはすべて参照して本明細書に組み込まれる。
【0069】
本発明のコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドは、植物をウイルス又はウイルス核酸に接触させることにより、植物に導入されてもよい。一般的に、そのような方法は、本発明のポリヌクレオチドコンストラクトをウイルスDNA又はRNA分子内に取り込む工程を含む。初めに、コムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドはウイルスポリ蛋白質の一部として合成されてもよく、次に、これはin vivo又はin vitroにて蛋白質分解によって処理され、所望の組換え蛋白質を生成してもよいということが理解される。更に、本発明のプロモーターは、ウイルスRNAポリメラーゼによる転写に用いられるプロモーターも包含するということが理解される。ポリヌクレオチドコンストラクトを植物に導入し、ウイルスDNA又はRNA分子を含む、そこでコードされる蛋白質を発現させる方法は当該技術分野において公知である。例えば、米国特許第5,889,191号、第5,889,190号、第5,866,785号、第5,589,367号及び第5,316,931号を参照されたい;これらは参照して本明細書に組み込まれる。
【0070】
形質転換された細胞は従来の方法に従って植物に生育されてもよい。例えば、McCormickら(1986)Plant Cell Reports 5:81−84を参照されたい。次に、これらの植物は生育され、同じ形質転換株又は異なる株と受粉されてもよく、その結果生じる、所望の表現型特性の構成的発現を有する交配種が特定される。所望の表現型特性の発現が確実に安定に維持・継承されるように、2又は3世代が生育されてもよく、次に、所望の表現型特性の発現が確実になされているように、種子が収穫される。このように、本発明は、そのゲノムに安定に組み込まれた本発明のポリヌクレオチドコンストラクト、例えば、本発明の発現カセットを有する形質転換種子(「トランスジェニック種子」とも称する)を提供する。
【0071】
本発明の高蛋白質コムギ植物は雑草を防除する方法に用途を見出す。従って、本発明は、本発明の高蛋白質コムギ植物近傍の雑草を防除する方法を更に提供する。該方法は、有効量の除草剤を雑草及び高蛋白質コムギ植物に塗布する工程を含み、高蛋白質コムギ植物は類似野生型コムギ植物と比べ、少なくとも1つの除草剤、特に、イミダゾリノン系又はスルホニルウレア系除草剤に対する抵抗性の増大を有する。
【0072】
除草剤、特に、イミダゾリノン系及びスルホニルウレア系除草剤に対する抵抗性の増大を有する高蛋白質コムギ植物を提供することにより、植物の生育を亢進させ、栄養競合を低減するため、植物を雑草から防御するための多彩な製剤が用いられ得る。除草剤はそれ自体で、出芽前、出芽後、栽植前に、また、本明細書で述べる植物を取り囲む領域における雑草の栽植時防除に用いることができ、或いは他の添加剤を含むイミダゾリノン系除草剤製剤を用いることができる。除草剤は種子処理としても用いることができる。それは有効濃度又は有効量の除草剤であり、或いは有効濃度又は有効量の除草剤を含む組成物が、播種前又は播種時に直接種子に塗布され得る。イミダゾリノン系又はスルホニルウレア系除草剤製剤又は組成物に見出される添加剤には、他の除草剤、浄化剤、補助剤、展着剤、固着剤、安定剤などが含まれる。除草剤製剤は湿性又は乾燥調製物であり得、限定されないが、流動性粉末、エマルジョン及び液体濃縮物を含み得る。除草剤及び除草剤製剤は、従来の方法、例えば、噴霧、灌注、散布、被覆などに従って塗布することができる。
【0073】
本発明は、有性生殖を含む従来の植物育種によって高蛋白質コムギ植物を作出する方法を提供する。該方法は、F1子孫を作出するため、コムギAHASL1A S653N遺伝子又はポリヌクレオチドの少なくとも1つのコピーをそのゲノムに含む第一の親コムギ植物を第二の親コムギ植物と交配する工程を含む。該第一の植物は本発明の任意の高蛋白質コムギ植物でよく、例えば、コムギAHASL1A S653N遺伝子の少なくとも1つのコピーを含むトランスジェニックコムギ植物又は及びコムギAHASL1A S653N遺伝子を含む非トランスジェニックコムギ植物、例えば、WO 2004/106529並びに米国特許出願公開第2004/0237134及び第2004/0244080号(これらはすべて参照して本明細書に組み込まれる)に開示されているような突然変異生成によって作出されるコムギ植物を含む。該第二の親コムギ植物は、該第一の植物と交配されると、生存可能な子孫コムギ植物(即ち、種子)を産生することができる任意のコムギ植物でよい。典型的であるが必然的ではなく、該第一及び第二の親コムギ植物は同種コムギである。該方法はF1子孫を自家受粉させてF2子孫を作出する工程を更に含み得る。加えて、本発明の方法は、F1又はF2子孫植物の該第一又は第二の親コムギ植物と同じ系統又は遺伝子型の植物との戻し交配の第一又はそれ以降の世代を更に含み得る。或いは、第一の交配のF1子孫又は任意の後続交配種は、該第一又は第二の植物といずれとも異なる系統又は遺伝子型の第三のコムギ植物と交配され得る。本発明の方法は、例えば、コムギAHASL1A S653N遺伝子を含む子孫コムギ植物に有効量の除草剤を塗布することにより、或いはAHASL1A S653N遺伝子を検出する標準的方法、例えば、PCRのような方法により、該第一の植物の除草剤抵抗性特性を含む植物を選抜する工程を更に含み得る。
【0074】
本発明は、AHAS阻害除草剤の使用に関わる方法を提供する。これらの方法では、AHAS阻害除草剤は当該技術分野において公知の任意の方法によって塗布され得、これには、限定されないが、種子処理、土壌処理及び葉面処理が含まれる。
【0075】
塗布前、AHAS阻害除草剤は、通例の製剤、例えば、溶液、エマルジョン、懸濁剤、粉剤、粉末、糊剤及び顆粒に変換され得る。使用形態は個々の使用目的に依存し、各場合、本発明による化合物の微細且つ均一な分布を確実にする必要がある。
【0076】
製剤は、既知の方法(例えば、概説では、米国特許第3,060,084号、欧州特許出願707 445号(液体濃縮物)、Browning「凝集(Agglomeration)」、化学工学(Chemical Engineering)、1967年12月4日、147−48、ペリーの化学技術者ハンドブック(Perry’s Chemical Engineer’s Handbook)、第4版、McGraw−Hill社、ニューヨーク、1963,8−57頁及び以下参照として、WO 91/13546、米国特許第4,172,714号、米国特許第4,144,050号、米国特許第3,920,442号、米国特許第5,180,587号、米国特許第5,232,701号、米国特許第5,208,030号、英国特許第2,095,558号、米国特許第3,299,566号、Klingman、科学としての雑草防除(Weed Control as a Science)、John Wiley and Sons,Inc.、ニューヨーク、1961,Hanceら、雑草防除ハンドブック(Weed Control Handbook)、第8版、Blackwell Scientific Publications社、オックスフォード、1989並びにMollet,H.,Grubemann,A.、配合技術(Formulation technology)、Wiley VCH Verlag GmbH、ワインハイム(Weinheim)(ドイツ)、2001,2.D.A.Knowles、農芸化学的配合の化学及び技術(Chemistry and Technology of Agrochemical Formulations)、Kluwer Academic Publishers社、ドルドレヒト(Dordrecht)、1998(ISBN 0−7514−0443−8)を参照されたい)、例えば、農薬の配合に好適な助剤、例えば、溶剤及び/又は担体、所望により、乳化剤、界面活性剤及び分散剤、防腐剤、消泡剤、抗凍結剤で、種子処理の配合には更に場合により着色剤及び/又は結合剤及び/又はゲル化剤で活性化合物を伸長させることによって調製される。
【0077】
好適な溶剤例は、水、芳香族溶剤(例えば、Solvesso製品、キシレン)、パラフィン(例えば、鉱油留分)、アルコール(例えば、メタノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例えば、シクロヘキサノン、ガンマ−ブチロラクトン)、ピロリドン(NMP,NOP)、アセタート(グリコールジアセタート)、グリコール、脂肪酸ジメチルアミド、脂肪酸及び脂肪酸エステルである。原則として溶剤混合物も用いられてもよい。
【0078】
好適な担体例は、研削天然鉱物(例えば、カオリン、粘土、タルク、チョーク)及び研削合成鉱物(例えば、高分散シリカ、ケイ酸塩)である。
【0079】
好適な乳化剤は、非イオン性及びアニオン系乳化剤である(例えば、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、アルキルスルホン酸塩及びアリールスルホン酸塩)。
【0080】
好適な分散剤例は、リグニン−亜硫酸廃液及びメチルセルロースである。
【0081】
用いられる好適な界面活性剤は、リグノスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、脂肪アルコールスルホン酸塩、脂肪酸及び硫酸化脂肪アルコールグリコールエーテルのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩並びにアンモニウム塩、更に、スルホン化ナフタレン及びナフタレン誘導体のホルムアルデヒドとの凝縮物、ナフタレン又はナフタレンスルホン酸のフェノール及びホルムアルデヒドとの凝縮物、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、エトキシル化イソオクチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、トリブチルフェニルポリグリコールエーテル、トリステアリルフェニルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテルアルコール、アルコール及び脂肪アルコールエチレンオキシド凝縮物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、エトキシル化ポリオキシプロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテルアセタール、ソルビトールエステル、リグノ亜硫酸塩廃液並びにメチルセルロースである。
【0082】
直接噴霧可能な溶液、エマルジョン、糊剤又は油中分散液の調製に好適な物質は、中〜高沸点の鉱油留分、例えば、ケロシン又はディーゼル油、更に、コールタール油並びに植物又は動物由来油、脂肪族、環状及び芳香族炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレン又はそれらの誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、イソホロン、高極性溶剤、例えば、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン又は水である。
【0083】
抗凍結剤、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール及び殺菌剤も製剤に加えることができる。
【0084】
好適な消泡剤は、例えば、シリコン又はステアリン酸マグネシウム系の消泡剤である。
【0085】
好適な防腐剤は、例えば、ジクロロフェン及びエンジルアルコールヘミホルマール(enzylalkoholhemiformal)である。
【0086】
種子処理製剤は結合剤及び場合により着色剤を更に含んでもよい。
【0087】
処理後、活性物質の種子への付着を向上させるため、結合剤を加えることができる。好適な結合剤はブロックコポリマーEO/PO界面活性剤であるが、ポリビニルアルコール(polyvinylalcoholsl)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリエチレンアミン、ポリエチレンアミド、ポリエチレンイミン(Lupasol(登録商標)、Polymin(登録商標))、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリビニルアセタート、チロース及びこれらのポリマーから得られるコポリマーでもよい。
【0088】
場合により、製剤中に着色剤も含まれ得る。種子処理製剤に好適な着色剤又は染料は、ローダミンB,C.I.顔料赤色112,C.I.溶剤赤色1、顔料青色15:4、顔料青色15:3、顔料青色15:2、顔料青色15:1、顔料青色80、顔料黄色1、顔料黄色13、顔料赤色112、顔料赤色48:2、顔料赤色48:1、顔料赤色57:1、顔料赤色53:1、顔料橙色43、顔料橙色34、顔料橙色5、顔料緑色36、顔料緑色7、顔料白色6、顔料茶色25、塩基性紫色10、塩基性紫色49、酸性赤色51、酸性赤色52、酸性赤色14、酸性青色9、酸性黄色23、塩基性赤色10、塩基性赤色108である。
【0089】
好適なゲル化剤例はカラギーン(Satiagel(登録商標))である。
【0090】
粉末、展着用の物質及び散布可能な生成物は、活性物質を固体担体と混合し、或いは同時研削することによって調製され得る。
【0091】
顆粒、例えば、被覆顆粒、含浸顆粒及び均質顆粒は、活性化合物を固体担体に結合することによって調製され得る。固体担体例は、土類鉱物、例えば、シリカゲル、ケイ酸塩、タルク、カオリン、アタクレー(attaclay)、石灰石、石灰、チョーク、赤土、黄土、粘土、白雲石、珪藻土、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、研削合成物質、肥料、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、ウレア及び植物由来の生成物、例えば、穀粉、樹皮粉、樹木粉及び堅果殻粉、セルロース粉末並びに他の固体担体である。
【0092】
一般的に、該製剤は0.01〜95重量%、好ましくは、0.1〜90重量%のAHAS阻害除草剤を含む。この場合、AHAS阻害除草剤は90〜100重量%、好ましくは、95〜100重量%の純度にて用いられる(NMRスペクトルによる)。種子処理を目的として、それぞれの製剤は2〜10倍希釈され、0.01〜60重量%の活性化合物重量、好ましくは、0.1〜40重量%の使用可能な調製物の濃度となり得る。
【0093】
AHAS阻害除草剤は、そのように、その製剤形態又はそれから調製される使用形態、例えば、直接噴霧可能な溶液、粉末、懸濁液若しくは分散液、エマルジョン、油中分散液、糊剤、散布可能な生成物、展着用の物質又は噴霧、微粒化、散布若しくは流込による顆粒の形態にて用いられ得る。その使用形態は使用目的に完全に依存する。その使用形態は、本発明に従って、各場合にAHAS阻害除草剤の可能な限りに微細な分布を確実にすることを目的とする。
【0094】
水性使用形態は、水を加えることにより、エマルジョン濃縮物、糊剤又は水和剤(噴霧可能な粉末、油中分散液)から調製され得る。エマルジョン、糊剤又は油中分散液を調製するため、そのような状態の、或いは油又は溶剤中に溶解された物質は、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤又は乳化剤によって水中にて均質化され得る。しかし、活性物質、湿潤剤、粘着付与剤、分散剤又は乳化剤、並びに、適宜、溶剤又は油からなる濃縮物を調製することも可能であり、そのような濃縮物は水による希釈に適する。
【0095】
即時使用可能な調製物中の活性化合物の濃度は、比較的広範な範囲内にて多様であり得る。概して、その濃度は0.0001〜10重量%、好ましくは、0.01〜1重量%である。
【0096】
AHAS阻害除草剤は超微量プロセス(ultra−low−volume process)(ULV)にても良好に用いられてもよく、95重量%超の活性化合物を含む製剤を適用し、更に、添加剤を含まない活性化合物を適用することが可能である。
【0097】
以下は製剤例である。
【0098】
1.葉面用途の水による希釈用の生成物。種子処理を目的として、そのような生成物は希釈され、或いは希釈されずに種子に塗布されてもよい。
A)水溶性濃縮物(SL,LS)
10重量部のAHAS阻害除草剤が90重量部の水又は水溶性溶剤中に溶解される。代替として湿潤剤又は他の助剤が加えられる。AHAS阻害除草剤は水による希釈と同時に溶解し、それにより、10%(w/w)AHAS阻害除草剤を含む製剤が得られる。
B)分散性濃縮物(DC)
20重量部のAHAS阻害除草剤が、10重量部の分散剤、例えば、ポリビニルピロリドンを加えた70重量部のシクロヘキサノン中に溶解される。水による希釈によって分散液が得られ、それにより、20%(w/w)AHAS阻害除草剤を含む製剤が得られる。
C)乳化性濃縮物(EC
15重量部のAHAS阻害除草剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム及びヒマシ油エトキシレート(各場合、5重量部)を加えた7重量部のキシレン中に溶解される。水による希釈によってエマルジョンが得られ、それにより、15%(w/w)AHAS阻害除草剤を含む製剤が得られる。
D)エマルジョン(EW,EO,ES)
25重量部のAHAS阻害除草剤が、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム及びヒマシ油エトキシレート(各場合、5重量部)を加えた35重量部のキシレン中に溶解される。この混合物は、乳化機(例えば、Ultraturrax)によって30重量部の水に導入され、均質なエマルジョンになされる。水による希釈によってエマルジョンが得られ、それにより、25%(w/w)AHAS阻害除草剤を含む製剤が得られる。
E)懸濁剤(SC,OD,FS)
攪拌ボールミルにて、20重量部のAHAS阻害除草剤が、10重量部の分散剤、浸潤剤及び70重量部の水若しくは有機溶剤を加えて粉砕され、微細なAHAS阻害除草剤懸濁液が得られる。水による希釈によってAHAS阻害除草剤の安定した懸濁液が得られ、それにより、20%(w/w)AHAS阻害除草剤を含む製剤が得られる。
F)水分散性顆粒及び水溶性顆粒(WG,SG)
50重量部のAHAS阻害除草剤が、50重量部の分散剤及び浸潤剤を加えて微細に粉砕され、技術的装置(例えば、押出し、噴霧塔、流動床)によって水分散性及び水溶性顆粒として作製される。水による希釈によってAHAS阻害除草剤の安定した分散液又は溶液が得られ、それにより、50%(w/w)AHAS阻害除草剤を含む製剤が得られる。
G)水分散性粉末及び水溶性粉末(WP,SP,SS,WS)
75重量部のAHAS阻害除草剤が、25重量部の分散剤、浸潤剤及びシリカゲルを加えたローター・ステーターミルにて微細に粉砕される。水による希釈によってAHAS阻害除草剤の安定した分散液又は溶液が得られ、それにより、75%(w/w)AHAS阻害除草剤を含む製剤が得られる。
I)ゲル製剤(GF)
攪拌ボールミルにて、20重量部のAHAS阻害除草剤が、10重量部の分散剤、1重量部のゲル化剤浸潤剤及び70重量部の水若しくは有機溶剤を加えて粉砕され、微細なAHAS阻害除草剤懸濁液が得られる。水による希釈によってAHAS阻害除草剤の安定した懸濁液が得られ、それにより、20%(w/w)AHAS阻害除草剤を含む製剤が得られる。このゲル製剤は種子処理としての使用に適する。
【0099】
2.葉面用途の希釈されずに適用される生成物。種子処理を目的として、そのような生成物は希釈されて種子に塗布されてもよい。
A)散布可能粉末(DP,DS)
5重量部のAHAS阻害除草剤が微細に粉砕され、95重量部の微細に粉砕されたカオリンと密に混合される。これにより、5%(w/w)AHAS阻害除草剤を有する散布可能な生成物が得られる。
B)顆粒(GR,FG,GG,MG)
0.5重量部のAHAS阻害除草剤が微細に粉砕され、95.5重量部の担体と結合され、それにより、0.5%(w/w)AHAS阻害除草剤を含む製剤が得られる。現行の方法は、押出し、噴霧乾燥又は流動床である。これにより、葉面用途に希釈されずに適用される顆粒が得られる。
【0100】
従来の種子処理製剤には、例えば、流動性濃縮物FS、溶液LS、乾燥処理用粉末DS、スラリー処理用の水分散性粉末WS、水溶性粉末SS及びエマルジョンES/EC並びにゲル製剤GFが含まれる。これらの製剤は希釈され、或いは希釈されずに種子に塗布され得る。種子への塗布はいずれも直接種子に播種前に行われる。
【0101】
好ましい実施形態では、FS製剤が種子処理に用いられる。典型的には、FS製剤は、1〜800g/lの活性成分、1〜200g/lの界面活性剤、0〜200g/lの抗凍結剤、0〜400g/lの結合剤、0〜200g/lの色素及び最大1リットルの溶剤、好ましくは、水を含んでもよい。
【0102】
種子処理では、本発明による高蛋白質コムギ植物の種子は、除草剤、好ましくは、アミドスルフロン、アジムスルフロン、ベンスルフロン、クロリムロン、クロルスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、エタメトスルフロン、エトキシスルフロン、フラザスルフロン、フルピルスルフロン、ホラムスルフロン、ハロスルフロン、イマゾスルフロン、ヨードスルフロン、メソスルフロン、メトスルフロン、ニコスルフロン、オキサスルフロン、プリミスルフロン、プロスルフロン、ピラゾスルフロン、リムスルフロン、スルホメツロン、スルホスルフロン、チフェンスルフロン、トリアスルフロン、トリベヌロン、トリフロキシスルフロン、トリフルスルフロン、トリトスルフロン、イマザメタベンズ、イマザモックス、イマザピック、イマザピル、イマザキン、イマゼタピル、クロランスラム、ジクロスラム、フロラスラム、フルメツラム、メトスラム、ペノキススラム、ビスピリバック、ピリミノバック、プロポキシカルバゾン、フルカルバゾン、ピリベンゾキシム、ピリフタリド、ピリチオバック及びそれらの混合物のようなAHAS阻害除草剤からなる群より選択される除草剤或いはAHAS阻害除草剤を含む製剤で処理される。より好ましくは、本発明による高蛋白質コムギ植物の種子はイミダゾリノン系除草剤で処理される。
【0103】
「種子処理」という用語は、当該技術分野において公知のあらゆる好適な種子処理法、例えば、種子粉衣、種子被覆、種子消毒、浸種、種子ペレット成形を含む。
【0104】
本発明の一変形例に従って、本発明の更なる主題は、特に、播種機への適用による土壌を処理する方法である:組成物/製剤としてAHAS阻害除草剤を含む、いずれもの顆粒状製剤(例えば、場合により、1つ若しくはそれ以上の固体又は液体の農薬として許容可能な担体、並びに/或いは、場合により、1つ又はそれ以上の農薬として許容可能な界面活性剤を含む顆粒状製剤)。この方法は、例えば、穀類、トウモロコシ、綿花、ヒマワリの播種床に、好都合に用いられる。
【0105】
本発明は、アミドスルフロン、アジムスルフロン、ベンスルフロン、クロリムロン、クロルスルフロン、シノスルフロン、シクロスルファムロン、エタメトスルフロン、エトキシスルフロン、フラザスルフロン、フルピルスルフロン、ホラムスルフロン、ハロスルフロン、イマゾスルフロン、ヨードスルフロン、メソスルフロン、メトスルフロン、ニコスルフロン、オキサスルフロン、プリミスルフロン、プロスルフロン、ピラゾスルフロン、リムスルフロン、スルホメツロン、スルホスルフロン、チフェンスルフロン、トリアスルフロン、トリベヌロン、トリフロキシスルフロン、トリフルスルフロン、トリトスルフロン、イマザメタベンズ、イマザモックス、イマザピック、イマザピル、イマザキン、イマゼタピル、クロランスラム、ジクロスラム、フロラスラム、フルメツラム、メトスラム、ペノキススラム、ビスピリバック、ピリミノバック、プロポキシカルバゾン、フルカルバゾン、ピリベンゾキシム、ピリフタリド及びピリチオバックから選択される、少なくとも1つのALS阻害剤を含む種子処理製剤を被覆され、或いはそれを含む種子も含む。該ALS阻害剤はイミダゾリノン系除草剤であることが好ましい。
【0106】
種子という用語は、あらゆる種類の種子及び植物珠芽を包含し、限定されないが、真正種子、種子片、吸枝、球茎、球根、果実、塊茎、穀粒、挿し穂、切芽(cut shoots)などを含み、好ましい実施形態では、真正種子を意味する。
【0107】
一般的に、「〜を被覆される及び/又は含む」という用語は、活性成分の大部分が塗布時に繁殖生成物の表面上にあるが、塗布方法により、活性成分が多かれ少なかれ、繁殖生成物に浸透してもよいということを意味する。前記繁殖生成物が植えられる(植え直される)と、それは活性成分を吸収してもよい。
【0108】
AHAS阻害除草剤又はAHAS阻害除草剤を含む製剤による種子処理の適用は、植物の播種前及び植物の出芽前、種子に噴霧或いは散布することによって行われる。
【0109】
種子処理では、対応する製剤は、有効量のAHAS阻害除草剤又はAHAS阻害除草剤を含む製剤で種子を処理することによって塗布される。本明細書では、概して、塗布量は、種子100kg当たり0.1g〜10kgの阻害剤(a.i)(或いは阻害剤(a.i)の混合物又は製剤)、好ましくは、種子100kg当たり1g〜5kg、特に、種子100kg当たり1g〜2.5kgである。レタスのような特定の作物では、その量はより多い。
【0110】
本発明の高蛋白質コムギ植物は、望ましくない植物に対抗し、或いは雑草を防除する方法に用途を見出し、該方法は、播種前及び/又は発芽前、本発明による高蛋白質コムギ植物の種子をAHAS阻害除草剤に接触させる工程を含む。該方法は、例えば、田畑の土壌又は温室の培養土に種子を播種する工程を更に含み得る。該方法は、特に、種子近傍における望ましくない植物に対抗し、或いは雑草を防除することに用途を見出す。
【0111】
望ましくない植物の防除は、雑草を枯死させ、且つ/或いは雑草の正常な成長を遅延させ、又は阻害することを意味するものと理解される。広義の雑草は望まれない場所で成長するあらゆる植物を意味するものと理解される。
【0112】
本発明の雑草は、例えば、双子葉及び単子葉雑草を含む。双子葉雑草は、限定されないが、Sinapis属、Lepidium属、Galium属、Stellaria属、Matricaria属、Anthemis属、Galinsoga属、Chenopodium属、Urtica属、Senecio属、Amaranthus属、Portulaca属、Xanthium属、Convolvulus属、Ipomoea属、Polygonum,属、Sesbania属、Ambrosia属、Cirsium属、Carduus属、Sonchus属、Solanum属、Rorippa属、Rotala属、Lindernia属、Lamium属、Veronica属、Abutilon属、Emex属、Datura属、Viola属、Galeopsis属、Papaver属、Centaurea属、Trifolium属、Ranunculus属及びTaraxacum属の雑草を含む。単子葉雑草は、限定されないが、Echinochloa属、Setaria属、Panicum属、Digitaria属、Phleum属、Poa属、Festuca属、Eleusine属、Brachiaria属、Lolium属、Bromus属、Avena属、Cyperus属、Sorghum属、Agropyron属、Cynodon属、Monochoria属、Fimbristyslis属、Sagittaria属、Eleocharis属、Scirpus属、Paspalum属、Ischaemum属、Sphenoclea属、Dactyloctenium属、Agrostis属、Alopecurus属及びApera属の雑草を含む。
【0113】
加えて、本発明の雑草は、例えば、望まれない場所で生育する作物を含み得る。例えば、主に大豆植物を含む田畑に自生するトウモロコシ植物は、トウモロコシ植物が大豆植物の田畑において望まれない場合、雑草とみなされ得る。
【0114】
冠詞“a(1つの)”及び“an(1つの)”は本明細書では1つ又は2つ以上(即ち、少なくとも1つ)の冠詞の文法上の対象を指すのに用いられる。例として、“an element(1つの要素)”は1つ又はそれ以上の要素を意味する。
【0115】
本明細書で用いられるように、単語“comprising(含む)”又は“comprises(含む)”若しくは“comprising(含む)”のような変形は、記載の要素、整数若しくは工程又は要素、整数若しくは工程の群の包含を意味するが、他の任意の要素、整数若しくは工程又は要素、整数若しくは工程の群の除外を意味するものではない。
【0116】
以下の実施例は例示目的で示されるものであって、限定目的で示されるものではない。
【実施例1】
【0117】
(穀粒蛋白質含量の増加を有するコムギ系統)
【0118】
標準的な突然変異生成法及び従来の植物育種法を用いてコムギ系統を作出した。突然変異生成の目的は、イミダゾリノン系除草剤に対する耐性を有するコムギ系統を開発することにあった。これらのコムギ系統におけるイミダゾリノン耐性に関与する突然変異は、グアニンからアデニンへの単一ヌクレオチド変更であり、これは、AGCからAACへのコドン変更と、TaAHASL1A S653Nと命名される、AHASL(アセトヒドロキシ酸合成酵素大サブユニット)蛋白質におけるセリンからアスパラギンへの単一アミノ酸置換とをもたらす。AHAS酵素は分岐鎖アミノ酸であるバリン、ロイシン及びイソロイシンの生合成における第一工程を触媒し(Stidham and Singh(1991)”Imidazolinone −Acetohydroxyacid Synthase Interactions,”In:The Imidazolinone Herbicides,Ch.6,Shaner,D.,and O’Connor,S.,eds.;CRC Press,Boca Raton,Florida,U.S.A.,pp.71−90)、植物においてこれらのアミノ酸によるフィードバック調節を受ける。AHAS遺伝子における単一点突然変異は、突然変異AHAS酵素に対するこれらの除草剤の結合部位を変更することにより、イミダゾリノン系除草剤に対する耐性を付与するが、分岐鎖アミノ酸によるフィードバック調節及び該酵素の正常な生合成機能への影響を認めない(Newhouse et al,(1992)Plant Physiol.100:882−886)(図1)。
【0119】
除草剤耐性を示すコムギ系統の選抜プロセスの間、穀粒組成試験を行い、これらの試験から高穀粒蛋白質含量を見出した。これらの試験は異なる地理的位置(カリフォルニア州、ミネソタ州、ノースダコタ州、ワシントン州及びカナダ)で1999年から2004年まで行った(表2)。この特性を示す5系統(BW255−2,BW238−3,K42,Teal15A及びElsaxEM2)は独立して異なる遺伝資源に由来し、独立した突然変異生成事象によるものであり、1系統(ElsaxEM2)は突然変異誘発されていたアインコーン(Einkorn)コムギ(Triticum monococcum)からの遺伝子移入によって得られた。
【0120】
パーセント蛋白価はそれらの親に比べ、BW255−2,BW238−3,K42,Teal15A及びElsaxEM2の方が高かった(表1)。数年及び複数地点での有意な増加は、それぞれの親系統と比べ、3〜13%の範囲であり(表2)、或いはそれぞれの親と比べ、全系統の複数地点及び数年にわたり、実際の増加は0.4〜2.1%であり、平均1.3%であった。分岐状の変更アミノ酸であるバリン、イソロイシン及びロイシン並びに必須アミノ酸ンであるリシン、メチオニン、シスチン及びスレオニンのアミノ酸価は、通常、有意に高かったが、一部の例外があった(表2)。それぞれの親系統と比べ、平均増加率は6〜11%の範囲であり(表2)、或いはそれらの親と比べ、全アミノ酸価にわたり、実際の増加率は0.02〜0.09%であり、平均0.04%であった。2003年及び2004年に生育させた野外試験では、突然変異体BW255−2及びBW238−3の穀粒収量及び試験重量値は、それら各々の親系統と有意に異なることはなかった(表3)。同様に、BW255−2及び親BW255系統に対して提示されるフィードバック阻害結果(図1)は、他の系統と同程度であり、分岐鎖アミノ酸の生合成の調節を変化させえた、フィードバック阻害に対する突然変異の影響がなかったことを示す。
【0121】
本実施例において提示される試験において用いられる除草剤耐性コムギ系統はM5世代又はそれ以降の世代であり、AHASL1A S653N形質に対してホモ接合性である。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

【0124】
【表3】

【0125】
イミダゾリノン系除草剤に対して抵抗性であるパンコムギ系統からの穀粒蛋白質含量、分岐鎖及び必須アミノ酸価は、それら各々の親系統と比べ、有意に増加していた。コムギ(Triticum aestivum)AHASL1A S653N遺伝子を有する、独立して得られた4系統及びTriticum monococcum L.からの同じ突然変異の遺伝子移入によって得られた別の1系統はすべて、それら各々の親系統と比べ、穀粒蛋白質形質の増加を示した。これらの結果は、穀粒蛋白質の増加がコムギAHASL1A S653N突然変異に起因し、また、これらのAHASL1A S653N系統において、親と比べ、穀粒収量の減少もフィードバック阻害反応の変化もなかったことを示す。これまでに検討したAHASL1A S653Nコムギ系統はすべて、アスパラギン653に対するAACコドンを含むが、アスパラギン653に対するAATコドンを含むコムギ系統も蛋白質含量の増加を有する穀粒を産生することが期待される。
【0126】
S653N突然変異によって付与される穀粒蛋白質含量増加の利点は、AHASL1A遺伝子のみに限定される。AHASL1D及びAHASL1B相同遺伝子に生じるS653N突然変異を有するコムギ系統は、穀粒蛋白質の増加を示さなかった(データは示さない)。
【実施例2】
【0127】
(除草剤抵抗性コムギAHASL蛋白質)
【0128】
本発明は、コムギAHASL1A S653Nポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの使用を開示する。除草剤抵抗性AHASLポリペプチドを含む植物は過去に同定されており、除草剤抵抗性を付与するアミノ酸置換の部位であるAHASLポリペプチドの多くの保存領域が報告されている。Devine及びEberlein(1997)「改変標的部位に基づく除草剤抵抗性の生理学的、生化学的及び分子態様(Physiological,biochemical and molecular aspects of herbicide resistance based on altered target sites)」、除草剤活性:毒物学、生化学的及び分子生物学(Herbicide Activity:Toxicology,Biochemistry and Molecular Biology)、Roeら(編)、159−185頁、IOS Press社、アムステルダム;並びにDevine及びShukla(2000)Crop Protection 19:881−889を参照されたい。
【0129】
本発明のコムギAHASL1A S653N配列及び当業者には周知の方法を用いて、これらの保存領域において同定された部位にてS653N置換及び1,2,3若しくはそれ以上の追加アミノ酸置換を有する除草剤抵抗性AHASLポリペプチドをコードする追加ポリヌクレオチドを生成することができる。表4は、AHASL蛋白質の保存領域、これらの保存領域内の除草剤抵抗性を付与することが知られているアミノ酸置換及びコムギ(Triticum aestivum)AHASL1蛋白質を示す。
【0130】
【表4】

【0131】
1Devine及びEberlein(1997)「改変標的部位に基づく除草剤抵抗性の生理学的、生化学的及び分子態様(Physiological,biochemical and molecular aspects of herbicide resistance based on altered target sites)」、除草剤活性:毒物学、生化学的及び分子生物学(Herbicide Activity:Toxicology,Biochemistry and Molecular Biology)、Roeら(編)、159−185頁、IOS Press社、アムステルダム;並びにDevine及びShukla(2000)Crop Protection 19:881−889から引用の保存領域
2アミノ酸番号はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)AHASLポリヌクレオチドのアミノ酸配列に対応する。
3野生型コムギ(Triticum aestivum)AHASL1のアミノ酸配列は、同じ保存領域を含む。
4Bernasconiら(1995)J.Biol.Chem.270(29):17381−17385
5Wright及びPenner(1998)Theor.Appl.Genet.96:612−620
6Boutsalisら(1999)Pestic.Sci.55:507−516
7Guttieriら(1995)Weed Sci.43:143−178
8Guttieriら(1992)Weed Sci.40:670−678
9Kolkmanら(2004)Theor.Appl.Genet.109:1147−1159
10Hartnettら(1990)「突然変異アセト乳酸合成酵素遺伝子を担持する除草剤抵抗性植物(Herbicide−resistant plants carrying mutated acetolactate synthase genes)」、農薬抵抗性の管理:基礎的研究から実用的方策へ(Managing Resistance to Agrochemicals:Fundamental Research to Practical Strategies)、Greenら(編)、American Chemical Soc.Symp.,Series No.421、米国ワシントンDC
11Simpson(1998)Down to Earth 53(1):26−35
12Whiteら(2003)Weed Sci.51:845−853
13Bruniard(2001)ヒマワリ(Helianthus annuus L.)におけるイミダゾリノン抵抗性、交差抵抗性パターンの特徴及び分子マーカーの同定(Inheritance of imidazolinone resistance,characterization of cross−resistance pattern,and identification of molecular markers in sunflower(Helianthus annuus L.)、米国ノースダコタ州(ND)ファーゴ(Fargo)、ノースダコタ州立大学(North Dakota State University)博士号論文、1−78頁
14Devine及びEberlein(1997)「改変標的部位に基づく除草剤抵抗性の生理学的、生化学的及び分子態様(Physiological,biochemical and molecular aspects of herbicide resistance based on altered target sites)」、除草剤活性:毒物学、生化学的及び分子生物学(Herbicide Activity:Toxicology,Biochemistry and Molecular Biology)、Roeら(編)、159−185頁、IOS Press社、アムステルダム
15Chang及びDuggleby(1998)Biochem J.333:765−777
16Leeら(1999)FEBS Lett.452:341−345
【実施例3】
【0132】
(アリゾナ州及びカリフォルニア州での野外試験における高蛋白質コムギ系統の成績)
北半球での3地点(米国カリフォルニア州及びアリゾナ州)において、AHASL1A S653(At)N突然変異を含む春コムギ系統(Triticum aestivum)及び同質遺伝型非変異親系統を冬期にわたって(2005〜2006年)生育させた。AHASL1A S653N突然変異コムギ系統が、それらの適応帯域外で下限光周期の次善な(即ち、日が短い)条件下の環境において、それらの親系統と比べて生育穀粒の増加を示すかを判断するため、各系統の穀粒蛋白質含量を測定した。
【0133】
(エントリー及び地点)
遺伝的に異なる2つの遺伝子型のホモ接合性AHASL1A(S653N)突然変異体、Kirchauff−K42(オーストラリアの春コムギ系統、本明細書では“K42”とも称する)とBW238−3(北米の春コムギ系統)とを、それらの同質遺伝型非変異親系統(それぞれ、Kirchauff,BW238)と共に、米国南西部において2005〜2006年の冬期にわたり、3地点において隣接する大区画の土地(単一反復(single repetition))で生育させた。2地点はアリゾナ州ユマ(Yuma)に近く、一方、第三の地点はカリフォルニア州ディヌーバ近傍であった。それらの場所に2005年11月に植え付け、2006年7月に収穫した。
【0134】
(区画寸法及び播種量)
播種量:種子100g/35m2
区画寸法:2×1.75m×10m(一代表例)
幅10mのオオムギ細帯域により、区画を分離した。
【0135】
(農業成績及び穀粒収穫)
すべての区画を同一の農耕法に付した。イミダゾリノン系除草剤で処理した区画はなかった。Kirchauff系統とBW238系統の遺伝子型の差異を判定するため、生育習性及び成長高について区画を評価した。Kirchauff−K42及びその同質遺伝型親系統Kirchauffは、BW238−3系統及びその同質遺伝型親系統BW238より高く生育し、より少ない分蘖を示した。各地点における野外にて観察した際、AHASL1A S653N突然変異を含む系統と、それら各々の同質遺伝型非変異親系統との間に農業成績の有意差は検出されなかった。表5はカリフォルニア州ディヌーバにおける全4系統の生育習性を概示する。
【0136】
【表5】

【0137】
(結果及び考察)
アリゾナ州ユマ(Yuma)の2地点及びカリフォルニア州ディヌーバからの穀粒試験重量、SDS沈降価及び蛋白質含量パーセントを、それぞれ表6〜8に示す。表9は全3地点にわたる結果を概示する。穀粒蛋白質含量結果を3地点にわたって平均化すると、Kirchauff−K42はその同質遺伝型親対照系統より5%高い穀粒蛋白質濃度を示した(表9)。同様に、穀粒蛋白質含量を3地点にわたって平均化すると、BW238−3はその同質遺伝型親対照系統より5.1%高い穀粒蛋白質濃度を示した(表9)。平均穀粒試験重量は、その非変異親系統と比べ、Kirchauff−K42の方がわずかに重く、一方、BW238−3の穀粒試験重量はその非変異親系統と有意に異なることはなかった(表9)。グルテン力及び製パン性を予測するのに用いられるSDS沈降価も、変異AHASL1A系統とそれぞれの親対照群との間で有意に異なることはなかった。
【0138】
これらの結果は、AHASL1A S653N突然変異を含む6倍体パンコムギ系統が、それらの適応帯域外及び通常の生育季節外にて生育させた場合でも、親対照系統より高い穀粒蛋白質含量を有する穀粒を産生するということを示す。
【0139】
【表6】

【0140】
*コムギに対するSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)沈降試験は、デュラム及びパンコムギにおいてグルテン力及び製パン性を予測するための、米国穀物化学者協会(American Associate of Cereal Chemists(AACC))に国際的に承認された方法である。Morrisら(2007)J.Sci.Food Agric.87:607−615を参照されたい。
親系統の穀粒蛋白質含量に対するS653N系統の穀粒蛋白質含量の増加パーセント。KirchauffとBW238は、それぞれK42,BW238−3の親系統である。
【0141】
【表7】

【0142】
【表8】

【0143】
【表9】

【0144】
*ユマ(Yuma)2試験(表6及び7)及びディヌーバ試験(表8)の平均値
標準偏差
@親系統の平均穀粒蛋白質含量に対するS653N系統の平均穀粒蛋白質含量の増加パーセント。KirchauffとBW238は、それぞれK42,BW238−3の親系統である。
【実施例4】
【0145】
(高蛋白質コムギ系統から産生される穀粒の製パン性試験)
AHASL1A突然変異体における穀粒蛋白質の増加が製パン性に影響を及ぼすかどうかを判定するため、上記実施例3において開示した野外試験における3地点のうちの2地点(1地点はカリフォルニア州ディヌーバに、1地点はアリゾナ州ユマ(Yuma)にある)において生育させた穀粒の試料を、独立した実験施設による多くのコムギ及び小麦粉試験方法に付した。挽き割りコムギ及び小麦粉試料を生成するため、各エントリー(AHASL1A及び親同質遺伝型系統)からの穀粒試料を実験室製粉工程(Buhler実験室製粉機(Buhler Laboratory Flour Mill))に付した。次に、多くの標準的なコムギ品質パラメータを求めるため、コムギ及び製粉試料を多くの品質試験(含水量、蛋白質含量、灰分及びフォーリングナンバー)に付した。各試料の加工及び製パン特性を判定するため、専門的標準試験、例えば、単穀粒評価システム(Single Kernel Characterization System)(SKCS)、ファリノグラフ及びパンブレッドベーキング試験(Pan Bread bake test)を行った。これらの方法は、「コムギ及び小麦粉の試験方法 コムギ及び小麦粉の品質理解の指針(Wheat and Flour Testing Methods.A Guide to Understanding Wheat and Flour Quality)」、(2004)Wheat Marketing Center,Inc.及びNorth American Export Grain Association,Inc.、米国、に述べられている;これは参照して本明細書に組み込まれる。これらの試験の結果を以下の表10〜13に示す。
【0146】
AHASL1A S653N突然変異系統はすべて、穀粒蛋白質の増加を示したが、パン焼きデータの点から、それらの親同質遺伝型系統と有意に異なる突然変異系統はなかった(表10〜13)。グルテン力及び製パン性を予測するのに用いられるSDS沈降価(上記実施例3を参照)も突然変異AHASL1A系統とそれぞれの親対照との間で有意に異なることがなかったため、これは予期されたことであった。
【0147】
製パン性に影響を及ぼさずに穀粒蛋白質を増加させることができることは、小麦産業にとって望ましい特性である。従って、本発明の突然変異AHASL1A系統は、蛋白質含量の増加を有すると同時に、対照コムギ系統由来の小麦粉の製パン性を維持する小麦粉の生産に有用性を見出す。突然変異AHASL1Aコムギ系統の穀粒由来の小麦粉も、対照又は野生型コムギ系統の穀粒から製粉される小麦粉から生産される焼製品と比べ、蛋白質含量の増加を有する焼製品の生産に用途を見出す。
【0148】
【表10】

【0149】
CMDTY、品目 HWS、硬質で白色の春コムギ 及び HRS、硬質で赤色の春コムギ
LOC、場所
PRO、湿度8.5%でのコムギ中蛋白質(%)
MOI、湿度(%)
TW、試験重量
TKW、1000穀粒重量(グラム)
硬質、穀粒の硬質度(−20〜120の指数)
FN、フォーリングナンバー(秒)。FNは下降する攪拌機(falling stirrer)に対する小麦粉及び水ペーストの抵抗性を測定することによって定量される粘度の尺度である。
SKCS、単穀粒評価システム。このシステムでは、穀粒重量(mg)、穀粒径(mm)、含水量(%)及び穀粒の硬度(−20〜120の指数)について、300穀粒を個々に分析する。
【0150】
【表11】

【0151】
CMDTY、品目 HWS、硬質で白色の春コムギ 及び HRS、硬質で赤色の春コムギ
LOC、場所
PRO、湿度14%での小麦粉中蛋白質(%)
MOI、湿度(%)
灰分、小麦粉灰分(%)
ABS、吸収(%):ファリノグラフ曲線を500ブラベンダーユニット(BU)線に集中させるのに必要な水の量
ピーク、ピーク時間(分):水の添加時から始まり、生地が最大粘稠度に達するまでの生地の生成時間
安定性、安定時間(分):生地が最大粘稠度を維持する時間
MTI、耐混捏度指数(分):混合時の生地の軟化度を示す。
【0152】
【表12】

【0153】
CMDTY、品目 HWS、硬質で白色の春コムギ 及び HRS、硬質で赤色の春コムギ
LOC、場所
Vol cc、焼きパンブレッドの体積(立方センチメートル)
Vol、比体積は体積と重量との比率である。
穀粒、パンブレッドを内部の均一なパン粉粒について評点する。
触感、パンブレッドを触感について評点する。
色、小麦粉の色はミノルタ社製色彩色差計(Minolta Chroma Meter)を用いて小麦粉試料の白色度を測定することによって定量し、スケールと比較する。
ABS、吸収
【0154】
【表13】

【0155】
CMDTY、品目 HWS、硬質で白色の春コムギ 及び HRS、硬質で赤色の春コムギ
LOC、場所
【0156】
本明細書で言及されるすべての発行物及び特許出願は、本発明が関連する当業者のレベルを示唆するものである。すべての発行物及び特許出願は、とりわけ、そして個々に参照により組み込まれるものと示唆される場合と同程度まで、本明細書に組み込まれている。上記の発明は理解の明瞭化の目的のため、ある程度詳細に記載されているが、ある一定の変更及び修正が、添付する特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で実施されてもよいことは明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高蛋白質コムギ植物を作出する方法であって、
(a)少なくとも1つのコムギAHASL1A S653N遺伝子のコピーをコムギ植物に導入する工程、
(b)穀粒を産生するため、前記AHASL1A S653N遺伝子を含む前記コムギ植物又はその子孫植物を生育する工程、
(c)前記コムギ植物又はその子孫植物によって産生される穀粒の蛋白質含量を定量する工程、
を含み、前記コムギ植物又はその子孫植物が、前記コムギAHASL1A S653N遺伝子を欠いたコムギ植物によって産生される穀粒と比べ、増大した蛋白質レベルを有する穀粒を産生する方法。
【請求項2】
前記コムギAHASL1A S653N遺伝子が、アミノ酸位置579又は等価な位置においてアスパラギンを含むAHASL1A蛋白質をコードする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コムギAHASL1A S653N遺伝子が、コムギ(Triticum aestivum)又はヒトツブコムギ(Triticum monococcum)AHASL1A S653N遺伝子である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コムギAHASL1A S653N遺伝子を含むコムギ植物を選抜する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記選抜工程が、前記コムギAHASL1A S653N遺伝子が導入された後、前記コムギ植物にAHAS阻害除草剤を適用する工程を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記コムギAHASL1A S653N遺伝子が、他家受粉によって前記高蛋白質コムギ植物に導入される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記他家受粉が、少なくとも1つのF1子孫を作出するため、第一の親コムギ植物を第二の親コムギ植物と交配させる工程を含み、前記第一の親コムギ植物が、少なくとも1つの前記AHASL1A S653N遺伝子のコピーを含み、前記高蛋白質コムギ植物が、前記第一の親コムギ植物及び前記第二の親コムギ植物の子孫である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第一の親コムギ植物が、
(a)アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−3955,PTA−4113又はPTA−4257を有するコムギ植物;
(b)ATCC特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−3955,PTA−4113又はPTA−4257を有する前記コムギ植物の突然変異、組換え型又は遺伝子操作誘導体;
(c)ATCC特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−3955,PTA−4113又はPTA−4257を有する前記植物の任意の子孫;並びに
(d)任意の1つ又はそれ以上のこれらの植物の子孫であるコムギ植物
からなる群より選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第一の親コムギ植物が、ATCC特許寄託受託番号(Patent Deposit Designation Number)PTA−3955,PTA−4113又はPTA−4257を有する前記コムギ植物の除草剤抵抗性特性を含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の親コムギ植物が前記交配に対する花粉ドナーであり、前記第二の親コムギ植物が花粉アクセプターであり、前記F1子孫が前記第二の親コムギ植物において作出される請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第二の親コムギ植物が前記交配に対する花粉ドナーであり、前記第一の親コムギ植物が花粉アクセプターであり、前記F1子孫が前記第一の親コムギ植物において作出される請求項7に記載の方法。
【請求項12】
AHAS阻害除草剤に対する抵抗性が増大したコムギ植物を選抜するために、前記高蛋白質コムギ植物を、有効量のAHAS阻害除草剤を前記F1子孫に適用することによって選抜する請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記第一の親コムギ植物が、前記AHASL1A S653N遺伝子に対してヘテロ接合性又はホモ接合性である請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記交配によって作出された前記F1子孫を、F2子孫を作出するため、生育し、自家受粉できるようにする請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記高蛋白質コムギ植物を、AHAS阻害除草剤に対する抵抗性が増大した、少なくとも1つのコムギ植物を選抜するために、有効量のAHAS阻害除草剤を前記F2子孫に適用することによって前記F2子孫から選抜する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コムギAHASL1A S653N遺伝子を、突然変異生成によって前記高蛋白質コムギ植物に導入し、有効量のAHAS阻害除草剤に対する抵抗性を有するコムギ植物を選抜する請求項1に記載の方法。
【請求項17】
更に、前記AHASL1A S653N遺伝子を含むコムギ植物を選抜する工程を含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記コムギAHASL1A S653N遺伝子を、形質転換によって前記高蛋白質コムギ植物に導入する請求項1に記載の方法であって、
形質転換コムギ細胞を作出するために、植物細胞における発現を促進するプロモーターに作動可能に結合したコムギAHASL1A S653Nポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドコンストラクトを、コムギ植物の少なくとも1つの細胞に導入する工程、
前記形質転換コムギ細胞を形質転換コムギ植物に再生する工程、
を含み、
前記形質転換コムギ植物が前記高蛋白質コムギ植物である方法。
【請求項19】
AHAS阻害除草剤に対する抵抗性の増大を含む形質転換コムギ細胞を選抜するため、有効量のAHAS阻害除草剤を前記形質転換コムギ細胞に適用する工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プロモーターが、構成的プロモーター及び種子優先の(seed−preferred)プロモーターからなる群より選択される請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記高蛋白質コムギ植物が、イミダゾリノン系除草剤、スルホニルウレア系除草剤、トリアゾロピリミジン系除草剤、ピリミジニルオキシベンゾアート系除草剤及びスルホニルアミノ・カルボニルトリアゾリノン系除草剤からなる群より選択される、少なくとも1種のAHAS阻害除草剤に対する抵抗性の亢進を有する請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記イミダゾリノン系除草剤が、[2−(4−イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−)イミダゾリン−2−イル]−ニコチン酸、2−(4−イソプロピル)−4−メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル]−3−キノリンカルボン酸、[5−エチル−2−(4−イソプロピル−4−メチル−)−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル]−ニコチン酸、2−(4−イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)−5−(メトキシメチル)−ニコチン酸、2−(4−イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)−5−メチルニコチン酸及びメチル6−(4−イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル)−m−トルイル酸とメチル[2−(4−)イソプロピル−4−メチル−5−オキソ−2−イミダゾリン−2−イル]−p−トルイル酸との混合物並びにそれらの混合物からなる群選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記高蛋白質コムギ植物の種が、コムギ(Triticum aestivum)である請求項1に記載の方法。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の方法によって作出される高蛋白質コムギ植物。
【請求項25】
請求項24に記載の高蛋白質コムギ植物によって産生される高蛋白質穀粒。
【請求項26】
請求項25に記載の高蛋白質穀粒を含むヒト又は動物用の食品。
【請求項27】
請求項25に記載の高蛋白質穀粒を製粉する工程を含む、高蛋白質小麦粉を生産する方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法によって生成される高蛋白質小麦粉。
【請求項29】
請求項28に記載の高蛋白質小麦粉を含む、ヒト又は動物用の食品。

【図1】
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【公表番号】特表2009−538632(P2009−538632A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513452(P2009−513452)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/070070
【国際公開番号】WO2007/140451
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508352241)ビーエーエスエフ、アグロケミカル、プロダクツ、ベスローテン、フェンノートシャップ (1)
【Fターム(参考)】