説明

積分ルックアップテーブルを用いる適応型ガンマ補正装置

【課題】 ハードウェアの規模増大を招くことなく、リアルタイムに複雑な分布ヒストグラムからガンマ補正を決定する。
【解決手段】 分布ヒストグラムにより輝度信号を積分するようにする。R,G,B画像信号を受けて輝度信号を出力するマトリックス部60と、この輝度信号の分布レベルを比較した後、各レベルに対応する分布の数を計数して輝度信号の分布ヒストグラムを得るヒストグラム抽出部62と、この輝度信号分布ヒストグラムを累算して積分するヒストグラム積分部64と、その積分曲線を用いて前記入力された映像信号を補正する積分ルックアップテーブルと、出力された補正信号をガンマ処理して最終の輝度信号を出力するガンマ決め部68とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はビデオカメラのCCD(チャージカップルドデバイス)から出力された輝度信号を補正するためのガンマ補正装置に係り、更に詳しくはビデオカメラのCCDから出力された輝度信号の分布ヒストグラムを積分したルックアップテーブル(以下、LUTという)を用いて信号のダイナミック範囲を効率よく用いるための適応型ガンマ補正装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ガンマとは、ビデオカメラなどの光電変換系または電光変換系における入/出力特性をX、Y軸に表示するときの直線部分の傾きをいう。TVでは、被写体の輝度に対するカメラの出力電圧に応じる陰極線管の輝度との対数比をガンマと表示する。
【0003】ガンマ補正装置は入力信号のレベルに対して出力信号が指数曲線を満足する非直線回路で構成される。図1は従来のガンマ補正装置を示すブロック図であって、ノイロ(Neuro)ガンマ補正装置を示す。図1に示された従来のガンマ補正装置は、画像信号のR,G,B信号を受けて輝度信号を抽出するマトリックス部10、マトリックス部10から出力された輝度信号を用いて輝度信号の特徴量を抽出する特徴量抽出部12、特徴量抽出部12から出力された特徴量(暗い部分、中間部分、明るい部分)を用いてガンマを決めるガンマ決め部14、マトリックス部10から出力される輝度信号とガンマ決め部14から出力されるガンマを用いて利得を向上させる利得向上部16で構成される。
【0004】このような従来のノイロガンマ補正装置の動作は次のとおりである。マトリックス部10は入力されたR,G,B信号から輝度信号を抽出する。この抽出された輝度信号は輝度信号のレベルを検査して1フレームに含まれている輝度信号の暗い部分、中間部分、明るい部分の数を計算する。ここで、逆光状態と判断される場合、フレームに含まれている低い発生頻度の画像データの輝度レベルを圧縮し、高い発生頻度の画像データの輝度レベルを伸長させる方法を用いてガンマ処理を行うことにより、輝度信号のダイナミック範囲を拡大する方法を用いる。
【0005】逆光状態で被写体を撮影する場合、画像の明るい部分では入射光量が増大してホワイトクリップ領域も拡大するが、暗い部分では入射光量が減少するため、画像の階調表現が不可能になる。すなわち、若干暗い画像データと非常に暗い画像データとを区別しにくいため、いずれも同じ暗さで表示される。この場合、100%のダイナミック範囲を用いるとしても、中間輝度部に分布する信号データの量はわずかである。実際に信号データの大部分は低輝度部と高輝度部に集中的に分布する。
【0006】上述した問題を解決するため、従来の技術ではノイロガンマ補正装置を採用した。図2は被写体の逆光撮影時、輝度信号の分布特性を示すグラフである。図2を参照するに、輝度信号の範囲を3等分して低輝度、中間輝度及び高輝度に分けた後、1段階の画像データの補正を行う。すなわち、輝度信号の分布密度が高い場合には入力信号を最大3倍まで拡張させるが、輝度信号の分布密度が低い場合には入力信号を圧縮させる。
【0007】図3は逆光状態で画像補正に対する入/出力特性の関係を示すグラフである。図3を参照するに、正常光状態の画像では1:1バイパスラインの入/出力特性指数曲線を有するが、逆光状態などの特殊な撮影条件では直線“α”のような入/出力特性曲線を有する。輝度信号分布を平坦化する1次補正を行うときは、“β”のような入/出力特性曲線が得られる。
【0008】さらに、1段階の画像補正後の2段階の画像補正を行うと、結果として図4に示された入/出力特性曲線が得られる。このような補正は図1に示された利得向上部16により行われ、従来のノイロガンマ補正装置は、輝度成分の特徴量に応じて利得向上の程度を調整する。しかしながら、従来のノイロガンマ補正装置は画像データの特徴量を輝度成分の分布に応じて3等分、すなわち、暗い部分、中間部分及び明るい部分に分けて処理することにより、図5(A)に示された輝度信号の分布時には逆光補正の機能は行われない。これは、輝度信号が低輝度部分と中間輝度部分との間に分布しているか、高輝度部分と中間輝度部分との間に分布しているので、各部分間の相対的な分布の差が明確にならないためである。
【0009】かつ、図5(B)に示されたように、輝度信号の分布の差が3以上の場合、画像の補正作業は円滑に行われない。したがって、従来の装置から前記問題点を解決するためには現在の3段階の輝度レベルを数十段階の分割及び利得向上部分とする必要がある。しかしながら、リアルタイム動作及びハードウェアのサイズによる制約により、信号処理段階を多数化することは非常に困難である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上述した問題点を解決するために創出されたものであり、複合輝度信号の平坦でないヒストグラムを有する被写体の画像データを適宜に補正することのできるLUTを用いる適応型ガンマ補正装置を提供することをその目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために本発明によるガンマ補正装置は、R,G,B画像信号を受けて輝度信号を出力するマトリックス部と、前記マトリックス部から出力された輝度信号の分布レベルを比較した後、各レベルに対応する分布の数を計数して輝度信号の分布ヒストグラムを得るヒストグラム抽出部と、前記ヒストグラム抽出部から出力された輝度信号分布ヒストグラムを累算して積分するヒストグラム積分部と、前記ヒストグラム成分部から得られた積分曲線を用いて前記入力された映像信号を補正する積分LUTと、前記積分LUTから出力された補正信号をガンマ処理して最終の輝度信号を出力するガンマ決め部とを含むことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、添付した図面に基づき本発明の実施の形態を詳しく説明する。図6は本発明による適応型ガンマ補正装置の構成を示すブロック図である。図6を参照するに、ガンマ補正装置は、画像信号のR,G,B信号を受けて輝度信号を出力するマトリックス部60、マトリックス部60から出力された輝度信号を用いて輝度信号の分布ヒストグラムを抽出するヒストグラム抽出部62、ヒストグラム抽出部62から出力されたヒストグラムを用いて積分するヒストグラム積分部64、ヒストグラム積分部64の出力を用いて入力された画像信号を現在の画面に好適な画像に補正する積分LUT66、及び積分LUT66からガンマを決めて補正された画像を出力させるガンマ決め部68で構成される。
【0013】図7は図6に示されたヒストグラム抽出部62の詳細図であり、256個の比較器70とこれに各々対応する256個の計数器72で構成される。図6に示されたマトリックス部60から出力された輝度信号のレベルに応じて比較器70でレベルを比較して一致すると、計数器72の該当値を増加させる。すなわち、1フレーム内のビデオ信号のレベルを各基準値と比較して各レベルに該当するピクセルの数を抽出する。
【0014】図8は図6に示されたヒストグラム積分部64の詳細図であり、図7に示された計数器72から出力されたピクセルの数を低準位レベルの計数器(0)から高準位レベルの計数器(255)に順次に出力して図8に示された累算器80で累算して積分する。この際、各計数器の出力に応じて累算された値を図6に示された積分LUT66に貯蔵する。
【0015】図9は本発明による逆光状態の画像信号の輝度分布を示すグラフであり、図10は図9の積分LUTの入/出力特性を示すグラフである。次に、図6乃至図10を参照して本発明の動作を説明する。比較器を用いて輝度信号の分布ヒストグラムを抽出するヒストグラム抽出部62の場合、逆光状態のような特殊な画像状態のもとに1フレームの画面で明るい部分と暗い部分が極度に対照をなし、中間部分による画像データはほとんど存在しないので、抽出されたヒストグラムの特性は図9のように示される。
【0016】図10に示された積分LUT66は1つの入力映像の補正された入/出力特性を提供し、DRAM、SRAM、FRAM及びEEPROMなどを用いて入/出力特性を得る装置を構成する。すなわち、本発明によるガンマ補正装置は、従来のノイロガンマ補正装置が輝度信号のレベルを分けて計数した後、逆光状態の場合には入力された輝度信号のレベルに応じて入力輝度信号の一定量の利得を向上させることにより画像を補正する方法とは異なり、輝度信号の分布から得られたLUTを用いてより適宜な入/出力特性を適応的に得ることができる。
【0017】図10に示された入/出力特性を参照するに、0〜255間の全体輝度信号の分布のうち、入力信号Yとしての60以下の暗い光信号は高い分布の輝度信号を有するため、細密なものまで表示するようにその範囲を拡大させる。さらに、図9に示されたヒストグラムを参照するに、60〜200間の輝度信号レベルにおける輝度信号は存在しないため、入力信号が激しく変わるとしても、出力には変化がない。
【0018】図10に示された入/出力特性曲線を参照するに、200〜255間の輝度信号が入力されると、輝度信号の影響に応じて相対的に増幅された比率で輝度信号の出力を形成させる。その結果、入力された輝度信号の分布が高い部分は輝度信号の変化量を細密に表示し、分布が低い部分または分布のない部分では簡略に表示するので、ダイナミック範囲を効率よく用いることができる。
【0019】さらに、本発明によるガンマ補正装置は積分による方式を用いるので、図5(A)及び図5(B)に示された複雑でかつ不均一な輝度信号の分布でも適宜な動作を行うことができる。以上のような画像補正動作に応じて平坦化された出力を図4に示されたようにガンマ曲線を用いて補正する。
【0020】
【発明の効果】上述したように本発明によれば、ダイナミック範囲を効率するための積分方式は、従来のノイロガンマ補正装置の入/出力特性の圧縮及び伸長とは異なり、圧縮及び伸長の範囲が非常に増大するので、ノイロガンマ補正装置で逆光補正を不可能にする、複合的に分布された輝度信号レベルでも、適宜な入/出力特性曲線が得られる。
【0021】かつ、従来のガンマ補正装置は、莫大なハードウェアの規模増大及びリアルタイム処理の難解性により複合的に分布している輝度信号レベルから入/出力特性曲線を得ることが困難であるが、本発明によれば、別途のハードウェアの規模増大やリアルタイム処理などの問題を発生することなく、入/出力特性曲線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のガンマ補正装置を示すブロック構成図である。
【図2】逆光撮影時の輝度信号の分布特性を示すグラフである。
【図3】逆光状態の画像補正に対する入/出力特性の関係を示すグラフである。
【図4】理想的な画像補正後の入/出力特性を示すグラフである。
【図5】(A),(B)は従来のガンマ補正装置で逆光補正が不可能な例を示すグラフである。
【図6】本発明による適応型ガンマ補正装置の構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示されたヒストグラム抽出部の詳細図である。
【図8】図6に示されたヒストグラム積分部の詳細図である。
【図9】本発明による逆光状態の画像信号の輝度分布を示すグラフである。
【図10】図9の積分LUTの入/出力特性を示すグラフである。
【符号の説明】
60 マトリックス部
62 ヒストグラム抽出部
64 ヒストグラム積分部
66 積分LUT
68 ガンマ決め部
72 計数器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガンマ補正装置において、R,G,B画像信号を受けて輝度信号を出力するマトリックス部と、前記マトリックス部から出力された輝度信号の分布レベルを比較した後、各レベルに対応する分布の数を計数して輝度信号の分布ヒストグラムを得るヒストグラム抽出部と、前記ヒストグラム抽出部から出力された輝度信号分布ヒストグラムを累算して積分するヒストグラム積分部と、前記ヒストグラム積分部から得られた積分曲線を用いて前記入力された映像信号を補正する積分ルックアップテーブルと、前記積分ルックアップテーブルから出力された補正信号をガンマ処理して最終の輝度信号を出力するガンマ決め部とを含むことを特徴とする適応型ガンマ補正装置。
【請求項2】 前記ヒストグラム抽出部は多数の比較器と該比較器に対応する計数器で構成されて1フレーム内のビデオ信号のレベルを比較して各レベルに該当するピクセルの数を抽出することを特徴とする請求項1に記載の適応型ガンマ補正装置。
【請求項3】 前記ヒストグラム積分部は前記低準位レベルの計数器と前記高準位レベルの計数器の値を順次に累算して積分することを特徴とする請求項2に記載の適応型ガンマ補正装置。
【請求項4】 前記積分ルックアップテーブルはRAMを用いて入/出力特性を補正することを特徴とする請求項1に記載の適応型ガンマ補正装置。
【請求項5】 前記積分ルックアップテーブルはEEPROMを用いて入/出力特性を補正することを特徴とする請求項1に記載の積分ルックアップテーブルを用いた適応型ガンマ補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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