説明

積層された床敷物

本明細書では、種々の床敷物およびその製造方法が開示される。一実施形態では、繊維質正面および裏面を備える一次バッキング層を含み、前記繊維質正面は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドから形成された複数の連続性フィラメントを含むかさ高加工連続フィラメント糸から形成されている、床敷物が開示される。また、かさ高加工連続フィラメント糸を一次バッキング材料にタフトまたは植設するステップを含み、前記糸は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドを含む多成分繊維から形成された複数の連続性フィラメントを含む、床敷物の製造方法も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペットやカーペットタイルなどの、積層された床敷物、および積層された床敷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
敷設自在なカーペットやバッキングのあるカーペットタイルなどのカーペット類は通常、パイル糸が上向きに突き出す繊維質またはパイルの使用面を有する、タフテッドカーペット材料または融着カーペット材料として調製される。カーペットタイルは、典型的なカーペットでは重いバッキング層が必要ないため、普通のタフテッドカーペットまたは繊維質正面を有する他のカーペットの製造とは異なる。カーペットタイルでは、カーペットタイルを、敷設自在なカーペットタイルとして機能し得るよう据え付けるために、堅い安定化した塊体の熱可塑性バッキング層が必要となる。一般に、バッキング層は、充填材(たとえば、石灰石)含有量が多く、寸法の安定性を付与するために、ガラス繊維、ポリエステル、またはこれらの組合せなどの様々なスクリム材料と共に用いられる。一般に、熱可塑性バッキング層は、1または複数のポリ塩化ビニル層である。
【0003】
一例として、タフテッドカーペットタイルは、一般に、ポリエステルやポリプロピレンなどの一次バッキングベースシート材料を含み、Nylon(登録商標)などの複数のタフテッド糸がその一次バッキングに通されて、ループパイルまたはカットパイル(カーペットパイル)の使用面をなしている。一次バッキングは、カーペット糸をタフトするため、また製品の所要の上布とするために使用される。EVA(ポリエチレン-酢酸ビニル)やカルボキシル化スチレン-ブタジエン-スチレンなどのラテックスタイプの材料のプレコートを裏側(裏面)に適用して、糸を一次バッキングに接着させ、また一次バッキングのバッキング層への固定を助けることができる。バッキング層は、第一のPVC層と、ファイバーグラス層と、第二のPVC層(再バッキング層)とからなるものでよく、第一の層のPVCは、一次バッキングをファイバーグラス層に接着させており、ファイバーグラス層は、カーペットタイルの寸法安定性を確保し、第二の層のPVCは、その上の層を糊付けし、カーペットタイルの最後のバッキングとなる。
【0004】
上記カーペットタイルの別の構造では、PVC層がビチューメン層で置き換えられる。
【0005】
融着カーペットは、ナイロンまたは適切な他の繊維材料の複数のカットパイル糸が接着層、詳細には、PVCやホットメルト接着剤などの熱可塑性樹脂に植設されており、熱可塑性樹脂は、ファイバーグラス、Nylon(登録商標)、ポリプロピレン、ポリエステルなどの織り材料または不織材料の強化材層または基部層にさらに積層されていてもよいことを除き、一般に、タフテッドカーペットに類似したバッキングを有する。前記の複数の繊維糸は、接着性基層に接着され、そこから一般にまっすぐ上に伸びて、使用面をなす。
【0006】
上記構造は、カーペットおよびカーペットタイルが環境に優しくない材料から作られるという不利点を有する。たとえば、繊維質表面またはパイル表面に使用されるNylon(登録商標)は、石油から作られ、再生不能な資源である。
【0007】
より環境に優しい材料から形成されるカーペットまたはカーペットタイルを提供することが望ましいいということになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一目的は、上記不利点の1つまたは複数を事実上克服する、または少なくとも改善する、または少なくとも、適切な代用品を提供することである。
【0009】
定義
以下は、本発明についての記述を理解する助けとなり得る一部の定義である。一般の定義とするものであり、本発明の範囲をそれら用語だけに決して限定すべきではないが、以下の記述がより深く理解されるように提示する。
【0010】
文脈上別な見方が必要となり、またはそうでないと明記しない限り、本明細書で単数の完全体、ステップ、または要素として列挙する本発明の完全体、ステップ、または要素は、列挙した完全体、ステップ、または要素の単数形および複数形の両方を明らかに包含する。
【0011】
本明細書では終始、文脈上別な見方が必要とならない限り、単語「comprise(含む)」または「comprises(含む)」や「comprising(含む)」などの変形語は、記載するステップもしくは要素もしくは完全体またはステップもしくは要素もしくは完全体の群の包含を意味するが、他のいかなるステップもしくは要素もしくは完全体または要素もしくは完全体の群の除外を意味しないと理解される。すなわち、本明細書においては、用語「comprising」は、「主として含むが、必ずしも単独でではない」を意味する。
【0012】
本明細書で提供する情報および引用する参考文献は、読者の理解を助けるために提供するにすぎず、参考文献または情報のいずれかが本発明の先行技術であることを容認する性質のものでない。
【0013】
用語「フィラメント」とは、極限または不定の長さの撚り線を意味する。
【0014】
用語「糸」とは、絡み合わされ、撚り合わされ、もしくは寄せ集められていてもよいし、またはそうでなくてもよい、いくつものフィラメントの集合を意味する。
【0015】
用語「テクスチャー加工」とは、その結果として、そのフィラメントが捲縮され、ループにされ、または別な形で改変されて、カバー性、回復性、かさが増し、または異なる表面テクスチャーもしくは手触りが与えられる、フィラメントの任意の操作を意味する。「かさ高加工連続フィラメント」は、1または複数の「テクスチャー加工」操作にかけられたフィラメントであるということになる。
【0016】
「バイオベース」とは、該当する材料が、生物体に由来する物質から作られていることを意味する。
【0017】
バイオベース繊維とは、本明細書では、ポリマーまたは2種以上のポリマーのブレンドもしくはアロイからなり、前記ポリマーの1種または複数が、その高分子を構成する成分の少なくとも1つとして、究極的には、生物学的な再生可能供給源から完全または部分的に得られる物質を有する繊維であると定義される。そうした供給源は、たとえば、植物、または根、茎、葉、花、種子など、前記植物の部分でよい。
【0018】
本発明のカーペットまたはカーペットタイルの説明を、「層」に関して示してきたが、加工の後、カーペットタイルは、個々の層が、必ずしも容易に見分けられず、または互いに脱着できない、接着された単一の一体構造であることは理解されよう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第一の態様によれば、繊維質正面および裏面を備える一次バッキング層を含み、前記繊維質正面は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドから形成された複数の連続性フィラメントを含むかさ高加工連続フィラメント糸から形成されている、床敷物が提供される。
【0020】
本発明の第二の態様によれば、
かさ高加工連続フィラメント糸を一次バッキング材料にタフトまたは植設するステップを含み、前記糸は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドを含む多成分繊維から形成された複数の連続性フィラメントを含む、床敷物の製造方法が提供される。
【0021】
本発明の第三の態様によれば、
繊維質正面および裏面を備え、前記繊維質正面は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドから形成された複数の連続性フィラメントを含むかさ高加工連続フィラメント糸から形成されている、一次バッキングと、
前記一次バッキングの裏面上の硬化したプレコート層と、
前記一次バッキングに固定されたバッキング層と
を含む床敷物が提供される。
【0022】
本発明の第4の態様によれば、
かさ高加工連続フィラメント糸を一次バッキングにタフトまたは植設し、前記糸は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドを含む多成分繊維から形成された複数の連続性フィラメントを含むステップと、
プレコーティング組成物を適用することにより、前記一次バッキング層の裏面にプレコートを施すステップと、
前記プレコートを施した一次バッキング層にバッキング層を適用するステップと、
前記プレコーティング組成物を硬化させるステップと
を含む、床敷物の製造方法が提供される。
【0023】
本発明の第5の態様によれば、
熱可塑性樹脂プラスチゾルの第一の層で、支持材表面上をコーティングするステップと、
場合により、寸法の安定したシート材料を前記第一の層の上部表面上に載せ、前記層を加熱して、前記層をゲル化させ、前記シート材料を所定位置に配置するステップと、
場合により、熱可塑性樹脂プラスチゾルの第二の層を前記第一の層のゲル化した表面上に適用するステップと、
かさ高加工連続フィラメント糸を一次バッキング材料にタフトまたは植設し、前記糸は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドを含む多成分繊維から形成された複数の連続性フィラメントを含むステップと、
前記一次バッキングの裏面にプレコートを施すステップと、
場合により、プレコート層を熱可塑性樹脂プラスチゾルでコーティングするステップと、
前記プレコートを施した一次バッキングを前記の第一または第二の熱可塑性樹脂層のプラスチゾルの上部表面上に重ねるステップと、
そのように形成された床敷物を加熱して、前記熱可塑性樹脂層を溶融させ、一体となって溶融したバッキング層にするステップと、
前記床敷物を冷却するステップと、
場合により、前記床敷物を切断してカーペットタイルにするステップと
を含む、床敷物の製造方法が提供される。
【0024】
本発明の第6の態様によれば、第5の態様の方法によって製造した床敷物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、繊維質正面および裏面を備える一次バッキング層を含み、前記繊維質正面は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドから形成された複数の連続性フィラメントを含むかさ高加工連続フィラメント糸から形成されている、床敷物に関する。
【0026】
本発明はまた、かさ高加工連続フィラメント糸を一次バッキング材料にタフトまたは植設するステップを含み、前記糸は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドを含む多成分繊維から形成された複数の連続性フィラメントを含む、床敷物の製造方法に関する。
【0027】
また、
繊維質正面および裏面を備え、前記繊維質正面は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドから形成された複数の連続性フィラメントを含むかさ高加工連続フィラメント糸から形成されている、一次バッキングと、
前記一次バッキングの裏面上の硬化したプレコート層と、
前記一次バッキングに固定されたバッキング層と
を含む床敷物も提供される。
【0028】
また、
かさ高加工連続フィラメント糸を一次バッキングにタフトまたは植設し、前記糸は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドを含む多成分繊維から形成された複数の連続性フィラメントを含むステップと、
プレコーティング組成物を適用することにより、前記一次バッキング層の裏面にプレコートを施すステップと、
前記プレコートを施した一次バッキング層にバッキング層を適用するステップと、
前記プレコーティング組成物を硬化させるステップと
を含む、床敷物の製造方法も提供される。
【0029】
また、
熱可塑性樹脂プラスチゾルの第一の層で、支持材表面上をコーティングするステップと、
場合により、寸法の安定したシート材料を前記第一の層の上部表面上に載せ、前記層を加熱して、前記層をゲル化させ、前記シート材料を所定位置に配置するステップと、
場合により、熱可塑性樹脂プラスチゾルの第二の層を前記第一の層のゲル化した表面上に適用するステップと、
かさ高加工連続フィラメント糸を一次バッキング材料にタフトまたは植設し、前記糸は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドを含む多成分繊維から形成された複数の連続性フィラメントを含むステップと、
前記一次バッキングの裏面にプレコートを施すステップと、
場合により、プレコート層を熱可塑性樹脂プラスチゾルでコーティングするステップと、
前記プレコートを施した一次バッキングを前記の第一または第二の熱可塑性樹脂層のプラスチゾルの上部表面上に重ねるステップと、
そのように形成された床敷物を加熱して、前記熱可塑性樹脂層を溶融させ、一体となって溶融したバッキング層にするステップと、
前記床敷物を冷却するステップと、
場合により、前記床敷物を切断してカーペットタイルにするステップと
を含む、床敷物の製造方法も提供される。
【0030】
また、この方法によって製造した床敷物も提供される。
【0031】

バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーは、BASFから入手可能なUltramid Balance 6,10とするのが適切である。この材料は、60%を越えるヒマシ油由来のセバシン酸を主原料とするポリアミド6,10であり、ヒマシ油それ自体はトウゴマ(Ricinus Communis)の種子から得られる、再生可能な資源である。ポリマーは、63%バイオベースであることが適切である。一実施形態では、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーは、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種のポリマーとブレンドされる。バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーとブレンドするのに適するポリマーとしては、その限りでないが、ナイロン6,6またはナイロン6,12が挙げられる。
【0032】
バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドかさ高加工連続フィラメント(BCF)糸は、ポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンドを含有するポリマー溶融物を溶融紡糸して、少なくとも1本のフィラメントを生成し、その少なくとも1本のフィラメントを延伸段階に送り、そこでフィラメントを延伸および延長した後、テクスチャー加工することにより調製できる。
【0033】
一実施形態では、工程は、継続的に行う。別の実施形態では、工程は、順を追った独立した操作として行う。
【0034】
適切には、ポリマー溶融物は、紡糸より前にその中に着色剤を分散させてあるものでもよく、着色剤は、少なくとも1種の顔料および/またはポリマーに可溶性の染料から選択される。あるいは、得られる紡糸フィラメント、延伸フィラメント、またはかさ高加工連続糸を染色してもよい。少なくとも1種の分散した着色剤は、適切ないかなる顔料でもよく、有機および/または無機の部類から選択することができる。一実施形態では、顔料は、キナクリドンマゼンタPR202、ペリレンレッドPR178、べんがらPR101、亜鉛鉄黄PY119、ニッケルアゾイエローPY150、フタロシアニングリーンPG7、フタロシアニンブルーPB15:1、二酸化チタンPW6、およびカーボンブラックPBlk7の中から選択される少なくとも1種の顔料である。着色剤を加える範囲は通常、それより少ないと外観もしくは耐光性が適切でない機能最少量または彩色が飽和に達する機能最大量によって制約される。前述の無機および有機着色剤のそれぞれで異なるが、典型的な最少量は0.05wt%となり、典型的な最大量は2.5wt%となり得る。
【0035】
ポリマー溶融物は、少なくとも1種の安定剤を含むことが適切である。これに関して、安定剤は、適切ないかなる安定剤でもよい。一実施形態では、安定剤は、ヨウ化第一銅、ヨウ化カリウム、および臭化カリウムの混合物、または他の適切な安定剤である。適切な他の安定剤としては、ベンザトリアゾールまたはヒンダードアミン系の安定剤が挙げられる。一実施形態では、銅(I)カチオンが10ppm〜100ppmの間の範囲で含まれていてよい。別の実施形態では、ハロゲン化物アニオンが100ppm〜5000ppmの間の範囲で含まれていてよい。別の実施形態では、ベンザトリアゾールまたはヒンダードアミンが0.1wt%〜2.0wt%の間の範囲で含まれていてよい。
【0036】
ポリマー性溶融物に加えてもよい取捨選択可能な他の添加剤として、その限りでないが、帯電防止剤、酸化防止剤、抗微生物剤、防炎剤、艶消剤、および滑剤の1つまたは複数が挙げられる。
【0037】
上記着色剤、安定剤、および添加剤のいずれかまたはすべては、直接計量してポリマー溶融物に混ぜることができる。上記着色剤、安定剤、および添加剤のいずれかまたはすべては、当業者によく知られている用語であるマスターバッチの形でポリマー溶融物に混ぜることができる。マスターバッチ中に使用される担体樹脂は、連続性フィラメントを生成するものと同じポリマーであることが好ましいが、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドと十分に混和性の任意の繊維形成ポリマーでもよい。機能変性ポリエステル、およびナイロン6,6やナイロン6,12などの機能変性または未変性ポリアミドなどの樹脂も、担体樹脂として使用することができる。着色剤および/または安定剤および/または添加剤は、これらが適切に分散するように担体に配合することが適切である。着色剤および/または安定剤および/または添加剤、ならびに調製されたマスターバッチは、0.2wt%未満の含水率に乾燥させることが適切である。
【0038】
工程のスピードおよび温度は、処理量の経済性を最大限に高めながらも、形成された繊維の物理的性質が最適になるように選択することが適切である。
【0039】
ポリマー性溶融物の紡糸スピードは、約400m/分〜1500m/分、たとえば、約1100m/分とすることが適切である。一実施形態では、押出機によって、溶融したポリマー材料が紡糸ヘッドに供給され、紡糸ヘッドは、いくつもの小さなオリフィスを備える紡糸口金を含み、溶融したポリマー材料は、そこから押し出されてフィラメントを形成し、次いで急冷チャンバーに適切に通され、そこで急冷ガス(たとえば、空気、蒸気、または窒素などの不活性ガス)があてがわれて、フィラメントが冷却され、凝固する。急冷ガスは、フィラメント走行に対して垂直方向にフィラメントに向けることが適切である。
【0040】
フィラメントを収束させてマルチフィラメント糸にした後で、糸を延伸段階に送ることが適切である。延伸は、接触点上、またはロール周りのいずれかであることが適切である。これに関して、通常、延伸は、離れたゴデットロールのペアまたは異なる回転スピードで作動するペア(コンビ)で行う。フィラメントは、スピードの差、糸温度、および糸スピードに応じた所望の延伸比で、ロール間で延伸する。ロールは、同一または同様の温度に加熱して、テクスチャー加工前にフィラメント温度を上げることが適切である。一実施形態では、延伸によって、また結晶成長および形態学的な整列を可能にすることにより、たとえば、繊維を、少なくとも1つのローラに対して繰り返し一時的に滞在させることにより、繊維を配向化にかけるが、これによってフィラメント中の分子が異方性に配向され、それによって横方向の強度を向上させることができる。
【0041】
延伸比が2:1〜4:1であることが適切であり、延伸比がおよそ3以下であることがより好ましい。フィラメントは、1500m/分以下のスピードで延伸段階に送り、記載したその複数のスピードで送り出され、それによってテクスチャー加工が実際に実現できることが適切である。テクスチャー加工は、流体ジェットテクスチャー加工ユニットによって行い、フィラメントは、テクスチャー加工糸が抜き出される速度より早い速度でこのユニットに供給することが適切である。あるいは、テクスチャー加工は、機械的捲縮加工によって行う。テクスチャー加工は、繊維のかさを増すことが適切である。施されたテクスチャー加工は、単に配向によって誘発される線収縮を上回る乾熱収縮を誘発するのに十分であることが適切である。テクスチャー加工の後、糸は、自然に、または湿熱環境を適用して加速するやり方でバランスを整えることができる。
【0042】
前述の工程の間のいくつかの適切な段階で、必要に応じて、糸を、液体仕上剤を塗布する仕上げアプリケータと接触させる。仕上剤は、単一の時点で適用しても、または複数の段階で適用してもよい。
【0043】
テクスチャー加工された、またはテクスチャー加工および仕上げ加工された糸は、(たとえば、Gilbosユニットまたは適切な設計の1つにおける)複数の色の空気交絡によって、またはケーブル撚糸、空気撚糸、または製紐によって、同じまたは異なる種類の他の糸と適切に組み合わせて、より大きな集成体を形成して、求められるデザインおよび美的要件の仕上げ化工糸とすることができる。
【0044】
次いで、テクスチャー加工された、またはテクスチャー加工および仕上げ加工された糸を包装材に巻き付けることができる。
【0045】
上記工程ステップは、一続きに行ってもよいし、または別々に行ってもよい。工程ステップは、途切れなく行うことが好ましい。
【0046】
限定はしないが、通常、各糸は、デニールが15〜21、靱性が2.5〜3.5グラム/デニール、破断時の伸びが30%超となる。デニールは、長さ9,000mでのグラム数であると定義される。
【0047】
一次バッキング層
一次バッキングは、タフトされた繊維質層または融着された材料でよい。タフトされた繊維質層を使用するとき、この繊維質層は、材料において隙間を挟みながら繊維にタフトする従来のタフティング機に一次バッキング材料を供給することにより調製できる。タフティングは、通常、加工の間、房を材料の上側の場所に保持するバックステッチによって、生じる房が裏面から突き出るように行う。
【0048】
一次バッキングは、織りまたは不織の合成または非合成繊維から形成されることが適切である。タフテッド正面などの繊維質正面または使用面と、カーペットタイルのタフティングがなされるループ表面もしくはタフテッド表面などの繊維質裏側表面とを備えた、織りポリプロピレンバッキングなどの熱可塑性バッキングまたは不織ポリエステルを使用することが適切である。PVCバッキング付き床敷物を作製する場合は、ゲル化工程の際の熱による縮みがそれほどでなく、したがってドレープが十分でないためにタイルが持ち上がるリスクが最小限に抑えられることから、Lutradur(登録商標)などのポリエステルを使用することが好ましい。他の適切なバッキングとして、Nylon(登録商標)、ファイバーグラス、綿、ジュート、レーヨン、紙、天然または合成ゴム、スポンジゴムまたはフォームラバー、ポリクロロプレン、アクリロニトリル-ブタジエンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、石油樹脂、ビニルポリマー(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、これらのコポリマーまたは混合物など)、ポリブテン樹脂、ポリイソブテン-ブタジエン樹脂、およびこれらのコポリマーおよび混合物が挙げられる。
【0049】
糸は、床敷物に用いる他の繊維質材料および糸と一緒に使用することができる。そのような繊維質材料および糸は、合成、天然、または合成と天然の組合せの繊維、たとえば、その限りでないが、ナイロンのような他のポリアミド、ポリプロピレンのようなオレフィン、羊毛および羊毛混紡品、綿、アクリル、アクリル-ナイロン混紡品、ポリエステル糸、ならびにこれらの組合せおよび混紡品を挙げることができる。糸/繊維質材料は、一次バッキングと共に表糸または裏糸を構成するのに使用することができる。
【0050】
融着カーペットタイルでは、カーペットタイルに用いる繊維質材料および糸は、ファイバーグラス、Nylon(登録商標)、ポリプロピレン、ポリエステルといった織り材料や不織材料などの基材に積層されていてもよい、PVCやホットメルト接着剤などの材料に植設される。
【0051】
一次バッキング層は、バッキング層に適用するより前に、本発明のラテックスまたは適切な別のプレコーティング組成物でプレコートを施すことができる。通常は、プレコートを適用して、ループ裏を覆い、ループを閉じ込める。
【0052】
ラテックス
ラテックスは、EVAラテックスまたは別のビニルポリマーラテックスもしくはアクリル様ポリマーラテックスでよい。たとえば、ラテックスは、アクリル酸やメタクリル酸とアルキルアクリレートやアルキルエステル(アクリル酸エチルやアクリル酸メチルなど)のコポリマー、アクリル-スチレンコポリマー、アクリロニトリル-スチレンコポリマー、塩化ビニリデン-アクリロニトリルコポリマー、およびこれらの組合せでよい。ラテックスは、ハロゲン化されていないことが適切である。使用することのできる適切な他のラテックス材料として、他のビニル-短鎖カルボン酸コポリマー、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-ブタジエン、カルボキシル化スチレン-ブタジエン、カルボキシル化スチレン-ブタジエン-スチレンが挙げられる。ウレタン、PVC、アクリル、または塩化ビニリデンを使用してもよい。
【0053】
プレコーティング組成物/ラテックスは、増粘剤、抗菌剤、難燃剤、および/または界面活性剤をさらに含んでよい。適切な抗菌剤は、亜鉛オマジン(亜鉛2-ピリジンチオール-1-オキシド)である。適切な難燃剤は、水酸化アルミニウムである。適切な界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0054】
一実施形態では、アクリルモノマーまたはメタクリルモノマーとスチレンモノマーから得られる少なくとも1種のコポリマー、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルから得られる少なくとも1種のコポリマー、少なくとも1種の増粘剤、および水を含むプレコーティング組成物を使用する。アクリルモノマーまたはメタクリルモノマーとスチレンモノマーから得られるコポリマーは、BASF CorporationによってAcronal(登録商標)S 728 naとして供給されているものなどのアクリレート/スチレンコポリマー分散液であることが適切である。Acronal(登録商標)S 728 naは、アクリル酸ブチル/スチレンコポリマー分散液であり、49〜51%w/wの量の水および約49〜51%w/wの量の専売コポリマーを含有する。この分散液は、引火点が300°F(149℃)より高く、乳白色でかすかなエステル様臭気を伴い、pHが約6.5〜7.5であり、融点が212℃(760mmHg)であり、蒸気圧が23mbar(20℃)であり、相対密度が1.04(20℃)であり、粘度が200〜700mPa.sであり、水に混和性である。このコポリマーは、製紙業界では伝統的にコーティングに使用されているが、これまでカーペットタイルの調製においては使用されていない。プレコーティング組成物に加える前に、コポリマーを水で固体25%に希釈することが適切である。上で指摘したように、プレコーティング組成物は、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルから得られるコポリマーも含有してよい。このコポリマーは、床敷物の製造において適切に使用されたPVCなどの熱可塑性材料へのアクリルスチレン粘着を促進する。適切なポリマーは、BASF Aktiengesellschaftから入手可能なAcronal(登録商標)AX 8281 APである。この分散液は、白色であり、かすかな臭気を伴い、pH値が7〜8であり、密度が20℃で約1.02g/cm3であり、動的粘度が300〜1500mPa.s(23℃)であり、固形分が48.5〜51.5%である。このポリマー分散液は、水に混和性である。こうしてアクリルを加えると、水溶液のガラス温度が上昇する。このアクリル樹脂は、単独で使用すれば、非常に安定性を欠く。アクリレート/スチレンコポリマーと一緒に混ぜると、組成物のバッキング層への粘着/固着が可能になる。約20%乾燥重量のAcronal(登録商標)を加えることが適切である(16%体積)。プレコーティング組成物は、増粘剤を含有することが適切である。増粘剤は、ポリマー分散液に適する増粘剤、たとえば、カルボキシル基を含んでいるアクリルコポリマーであることが適切である。適切な増粘剤は、BASF Aktiengesellschaftから入手可能なLatekoll(登録商標)Dであり、粘性が低く、乳白色のアニオン性分散液である。Latekoll(登録商標)Dは、固形分(IS0 1625)が約25±1%であり、pH値が2.3〜3.3であり、23℃、せん断速度250s-1での粘度が2〜10mPa.sであり、20℃での密度が約1.05g/cm3である。増粘剤は、プレコーティング組成物が、一次バッキング層にある穴に吸い込まれないようにする助けとなる。増粘剤は、樹脂に加える前に、水で予め希釈して、均質な溶液にすることが適切である。
【0055】
上述のプレコーティング組成物は、アクリルモノマーまたはメタクリルモノマーとスチレンモノマーから得られるコポリマーと、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルから得られるコポリマーとをまず混合した後、水で予め希釈しておいた増粘剤を加え、続いて追加の水を加えることにより調製できる。(S728の乾燥重量の)約20%のAX8281 Acronal(登録商標)をAcronal(登録商標)S728に加えることが適切であり、1〜2wt%(5%まで)の増粘剤を加えることが適切である。一次バッキングの裏抜けが起こる場合があるので、過剰の増粘剤を加えないことが重要である。組成物が局部的に濃厚になり過ぎることがあるので、水を加えた後、基本材料に増粘剤を加えないことも重要である。凝固が生じ、溶液に効果がなくなるので、水/増粘剤溶液をAcronal(登録商標)に加えるのを素早くしすぎないことも重要である。AX8281の量は、S728の乾燥重量の10%から40%まで、たとえば20〜35%の範囲でよい。存在する場合、抗菌剤、難燃剤、および界面活性剤は、水および増粘剤を加えた後、混合サイクルの終わりに加えることができる。
【0056】
ラテックス/プレコーティング組成物の一次バッキング層への適用
ラテックス/プレコーティング組成物は、ローラコーティング、吹付け、または発泡形成によって一次バッキングに適用することができる。850g/m2のカーペットに使用するラテックス/プレコーティングの量は、100g/m2までとすることができる。ラテックス/プレコーティング組成物は、タフティングがなされた裏側層などの一次バッキングの裏側の繊維を閉じ込めるのに役立ち、遮断層として、繊維質カーペットを下にあるバッキングと隔てる働きをする。プレコーティングは、加熱して、固体遮断層になるのに十分な水を飛ばし、可能な架橋がなされるようにすることが適切である。
【0057】
プレコーティング層は、厚さが、通常は実に薄い。厚さは、乾燥時で約0.005mm〜0.1mmであることが適切である。厚さは、スプレーノズルおよび噴霧圧力の使用によって適切に制御する。プレコーティング層は、ループまたは繊維を含んでいる一次バッキングの裏側表面に直接載せ、また当てることが適切であり、ループ裏を完全に覆い、凹凸がわからないようにループを閉じ込める量で適用する。加工の間、コポリマーを硬化させ、架橋する。その結果得られる、プレコートが施された製品は、非常に柔軟である。
【0058】
バッキング層
床敷物は、床敷物に安定性および敷設自在な特性を付与するバッキング層を含んでよい。
【0059】
バッキング層を適用する前に、所望であれば、カーペット繊維をせん断することが可能である。せん断を行って、正面の表面上の閉じたループ、すなわちタフテッド糸をカットし、カットされたタフテッド糸を、正面の使用面繊維の高さと同じ一般高さにする。
【0060】
バッキング層は、熱可塑性ポリマー、または一次バッキングについて上述したものなどの適切な他のバッキング材料の1または複数の層から形成されるものでよい。一実施形態では、熱可塑性樹脂は、ハロゲン化ビニルである。適切なハロゲン化ビニルは、PVC(ポリ塩化ビニル)である。適切な他のバッキングとして、ビチューメン、アタクチックポリプロピレン、ポリオレフィン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、熱可塑性エラストマー、ポリウレタン、PVC/ラテックス、ビチューメンで裏打ちされたラテックスおよびポリウレタン、ポリアミン、ジュート、ウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、天然または合成のゴム、ポリクロロプレンが挙げられる。バッキング層は、フォーム、スポンジ、または固体の形態にすることができる。フォームの形態にすると、バッキング層によって、弾力性および/または安定性が加わる。
【0061】
バッキング層は、使用するポリマー、可塑剤、安定剤、および充填材の性質に応じて、一定範囲の特性を有してよい。
【0062】
一般に、カーペットの製造には約2.88kg/m2のPVCが必要となる。取捨選択可能な本発明のプレコーティング組成物を使用すると、2.88kg/m2をなお使用することも可能であるが、PVCの量を約1kg〜2kg/m2に減らすことが望まれ、1.5kg〜1.6kg/m2が特に適切であり、それでも柔軟性が保持される。ビチューメンタイルについては、2.8kg/m2のビチューメンペーストを加えることが適切である。
【0063】
本発明の一実施形態によるバッキング組成物
一実施形態では、バッキングは、PVCなどの熱可塑性ポリマーと共に充填材および可塑剤を含む組成物から形成される。本発明の一実施形態では、カーペットタイルの製造に、PVCプラスチゾルの充填材として再利用ガラスを使用することが提唱される。一実施形態では、熱可塑性樹脂、エポキシ化ダイズ油とヒマシ油の酢酸エステルの混合物である可塑剤、および充填材を含む、床敷物調製用組成物を使用する。別の実施形態では、熱可塑性樹脂、少なくとも1種の可塑剤、および再利用ガラスを含む、床敷物調製用組成物を使用する。
【0064】
充填材は、石灰石もしくは再利用ガラス、または再利用ガラスと石灰石両方の任意の比率の組合せでよい。特に好ましい実施形態では、充填材は再利用ガラスである。使用することのできるガラスは、比重が2.0〜2.5であり、石灰石は比重が2.7であるので、ガラスは、石灰石より少ない体積しか必要とならない。たとえば、1357kgのPVCペーストでは、約825kgの石灰石充填材が必要となるのに対し、再利用ガラスは611kgしか必要とならない。
【0065】
再利用ガラス繊維は、粒径が砂粒より小さいことが適切であり、ボールミルの使用によって、丸いガラス粒子になるように調製する。再利用ガラス繊維は、通常は、不活性な副産物(消費廃棄物)であり、可塑剤油を少しも吸収しないのに対し、石灰石は、使用すると、約17wt%の可塑剤油を吸収することもある。
【0066】
再利用ガラスは、Recycled Glass Mediums Australia Pty Ltd(95 Wisemans Ferry Road Somersby NSW 2250, Australia)から、0.106mm未満から10mmまで、たとえば、2.5mm〜1.5mm、1.5mm〜0.75mm、0.75mm〜0.3mm、および0.3mm〜0.106mmの粒径範囲で入手可能なEnviro-glassでよい。
【0067】
一実施形態では、300μm以下の微細繊維(fines)を使用し、大部分の粒子が200ミクロン未満である微細繊維が好ましい。
【0068】
製品は、破砕ガラス(無色、青色、琥珀色系混合、緑色系混合)、無臭の無機固体、融点が800℃より高く、比重が約2.5(この値は包括的であり、製品の測定比重は2でよい)である磨砕および部類分けされたガラスでよく、通常は水に不溶性である。
【0069】
再利用ガラスは、以下の化学組成のソーダ石灰シリカガラスを含有してもよい。
NazO+K2O+Li20 12〜15%
CaO+MgO 10〜13%
Al2O3 1〜2%
他の酸化物(SiO2を除く) 0〜1%
結合シリカ 残余(遊離のシリカを含まない)
【0070】
プラスチゾルの合計混合物に対して約40〜70wt%の再利用ガラスを使用してよい。50〜61wt%を使用することが適切である。
【0071】
可塑剤は、標準のフタル酸エステル可塑剤、たとえば、DINP、DEHP、DOP、PEG 100、またはPEG 200でよい。
【0072】
特に好ましい可塑剤は、エポキシ化ダイズ油とヒマシ油誘導体の組合せである。エポキシ化ダイズ油が冬を越す(すなわち、低温で油が凝固する)ことを考えると、必要な粘性を得ることは難しく、その結果として、単独で使用すると、プラスチックの移行が起こってしまう。エポキシ化ダイズ油は、貯蔵寿命も長くない。ヒマシ油誘導体によって、粘性が良好となり、ダイズ油の吸収および移行が回避される。適切な組成物は、30%のヒマシ油および70%のダイズ油を含む。可塑剤の適切な範囲は、40〜20wt%のヒマシ油および60〜80wt%のダイズ油である。粘度を下げる必要に応じて、アルコールなどの粘度調整剤が存在してもよい。適切な粘度調整剤は、エタノールである。一実施形態では、5〜10wt%のエタノールが存在してよい。
【0073】
エポキシ化ダイズ油とヒマシ油誘導体の組合せは、相乗的に作用する。この組合せは、室温で混合することが適切である。
【0074】
適切なダイズ可塑剤は、Swift and Company Limited (372 Wellington Road, Mulgrave, Victoria 3170, Australia)から入手可能なLankroflex E2307(ESBO)AGなどのエポキシ化ダイズ油である。Lankroflex E2307は、純粋なエポキシ化ダイズ油を含有し、オキシラン酸素分が最小で6.6%であり、ヨウ素価が最大2.5であり、粘度(30℃)が最大350c-Poiseであり、酸価が最大0.4KOH mg/gであり、含水率が最大0.1%であり、比重(25℃)が0.992±0.01であり、屈折率(25℃)が1.470±0.002であり、色度が最大-120APHAである、低臭エポキシ可塑剤である。Lankroflex E2307は、かすかな脂肪臭を伴う透明、黄色、油性の液体であり、常温で液体である。この製品は、沸点が100kPaで200℃より高く、引火点が約314℃であり、比重が25℃で0.99であり、水に不溶性であり、粘度が25℃で350センチポアズである。
【0075】
ヒマシ油誘導体は、Danisco Emulsifiersから入手可能なGrindsted(登録商標)Soft-n-Safe/Cなどの、完全に水素添加されたヒマシ油から作られたモノグリセリドの酢酸エステルであることが適切である。この製品は、アセチル化度が約0.9であり、ヨウ素価が最大4であり、酸価が最大3であり、けん化価が約435であり、透明な液体の形態である。この製品は、オクタデカン酸,12-(アセチルオキシ),ビス(アセチルオキシ)プロピルエステル(約85%)およびオクタデカン酸,2,3-ビス(アセチルオキシ)プロピルエステル(約10%)を含有する。この製品は、室温で液体であり、水に不溶性であり、300℃を越えると分解し、引火点が100℃より高く、際立った臭いはなく、密度が20℃で1.0030g/mlであり、蒸気圧が123.6℃で1.05×10-4Torrである。
【0076】
好ましいバッキング層は、再利用ガラスと、ダイズ油/ヒマシ油の組合せとを含む組成物から形成される。これによって、より再生可能であり、より化石原料主体でない製品が得られる。このような組合せにおいて、組成物は、約60%までの熱可塑性樹脂(化石原料起源)を含んでよい。
【0077】
取捨選択可能な添加剤および層
一次バッキング、およびバッキング層またはラテックス/プレコーティング組成物は、難燃剤(flame or fire retardant)、石灰石やバライトなどの不活性充填材、酸化カルシウム、カーボンブラック、抗菌剤、界面活性剤、脱泡剤、増粘剤、分散剤、エラストマー、酸化防止剤、着色剤、硬化剤、可塑剤、UV/熱安定剤、粘度調整剤、架橋剤、および/または粘着性付与剤のいずれか1種または複数を含んでよい。
【0078】
熱可塑性樹脂と合わせて可塑剤を使用すると、必要な柔軟性、耐久性、および硬さが得られる。熱安定剤が存在すると、熱可塑性樹脂が安定し、熱分解が妨げられ、UV安定剤は、熱可塑性樹脂を安定化して、UV光に曝されて起こる分解を防ぎ、酸化カルシウムは、混合工程から水分が確実に除去されるようにし、炭酸カルシウム(石灰石)は、充填材となって、削減されたコストで熱可塑性成形材料混合物の体積を増し、粘度調整剤は、粘性を維持して、確実に混合物が十分に混合され、懸濁したままとなるようにする(固体の沈降を緩慢にする)。
【0079】
床敷物は、一次バッキングおよびバッキング層に、薄織物(tissue)、メッシュ生地(mesh)、フリースもしくはスクリムシート材料、またはこれらの組合せなどの、ガラス、ファイバーグラス、ポリエステル、Nylon(登録商標)、またはポリプロピレンの1または複数の織り層または不織層を含んでよい。スクリム材料は、一次バッキングに近接して、またはそれに密着させて用いることができる。ガラス繊維または薄織物材料は、熱可塑性樹脂バッキング層内に用いて、寸法安定性を付与し、カーペットタイルの敷設特性を向上させることができる。たとえばフォームでできたクッション層が含まれてもよい。
【0080】
バッキング層の裏面には、それに付着させた可剥性保護層と共に接着剤をあてがうことができ、使用の際、保護層は剥がされ、床敷物は床表面に施用され、または感圧接着剤で施用される。
【0081】
バッキング層の適用およびカーペットタイルの調製
床敷物は、適切ないかなる方法で調製してもよい。
【0082】
たとえば、熱可塑性樹脂の層は、一次バッキング層の裏面上に、ウェットプラスチゾルとして所定の厚さで適用/注型することができる。コーティングされた材料は、ドクターブレードで平らにされるが、ドクターブレードは、熱可塑性樹脂層をならし、滑らかにし、熱可塑性樹脂層を、いかなるガラススクリムおよび一次バッキングともかみ合わせる。
【0083】
あるいは、バッキング層は、フルオロカーボン、ガラス繊維エンドレスベルト、Teflon(登録商標)コーティングされたファイバーグラスベルト、ステンレス鋼支持シートなどの剥離可能な支持体上に、注型によって予備成形することもできる。次いで、プレコートが施された一次バッキング層を、液体のバッキング層へと押し当てる。
【0084】
バッキング層を適用した後、カーペットを適切に加熱して、熱可塑性樹脂を溶融/ゲル化および硬化させ、冷却し、場合により切断してカーペットタイル断片にする。加熱は、加熱装置、放射パネル、または加熱素子の使用によるものでよい。加熱によって、熱可塑性材料は硬化し、タフテッドカーペットについては、バックステッチが所定の位置に固着され、一次バッキングは、一次バッキングの繊維がバッキング層に埋め込まれることにより、バッキング層に接着される。カーペットタイルは、50℃〜170℃、たとえば、90℃〜160℃、100℃〜150℃、または140℃〜150℃の範囲内の硬化温度に加熱することができる。たとえば、PVCについては、50℃で可塑剤が融解し、粒子状に拡散し始め、約50℃でゲル化が始まり、約130℃まで続き、その時点で粒子が膨らみ、130℃〜170℃の間でゲル化段階が終了する。91℃で、ポリマーは、途切れのない塊へと移行する。
【0085】
カーペットタイルの仕上げ加工に適する装置は、所望の温度で作動し、一次バッキングおよびバッキング層がそこを通過して加熱されて、バッキング層のプラスチック変形がもたらされる、チャンバーを備えた加熱装置と、一次バッキング、バッキング、および任意の追加のクッション層が、加熱装置によって加熱された後に送り届けられる、それに力をかけて層を接着させるための、一対のプレスローラと、加熱装置と操作可能に関連付けられた制御装置とを含み、制御装置は、チャンバー内の温度を維持して、バッキング層がローラによって相対的に変形して層を接着するようなバッキング層の加熱をもたらすように設定されている、装置でよい。
【0086】
ゲル化の間またはゲル化した後に、カーペットの裏側に刻み目、波形などをしぼ付けして、摩擦強化表面(現場に置かれたときにずれに耐え、所定位置に留まる)を形成し、層を単一の成果物に統合するのを助けるエンボスロールに、カーペットをくぐらせることができる。次いで、統合されたカーペット材料を、適切な切断手段によって適切な長さの断片(たとえば、正方形)に切断することができる。積層された構造物は、たとえば約105℃に冷却して、支持体から構造物を取り外せるようにすることができる。次いで、構造物を加熱装置に通し、約100℃に上昇させてから、熱可塑性樹脂層をしぼ付けするエンボスロールによってかみ合わせることができる。
【0087】
一実施形態では、バッキング層は、PVCなどの熱可塑性樹脂の層、ファイバーグラススクリム、およびPVCなどの第二の熱可塑性樹脂層から形成される。第一の層の熱可塑性樹脂は、一次バッキングをファイバーグラス層に接着させ、層の厚さは、ドクターブレードによって適切に制御される。ファイバーグラス層は、カーペットタイルの寸法安定性を確保するためのものである。第二の層の熱可塑性樹脂は、その上の層を糊付けし、カーペットタイルの最後のバッキングとなる。この層の厚さも、ドクターブレードによって適切に制御される。
【0088】
バッキング層は、途切れなく一次バッキングに適用して、必要に応じて後から切断してカーペットタイルにすることのできる、不確定の長さの材料を製造することができる。
【0089】
各層の厚さは、使用するのが固体層かフォーム層かに応じて変わり得る。たとえば、第一のPVC層の範囲は、そのPVCバッキングの重量に応じて決まり、すなわち、2.64kg/m2であれば0.88mmの2重層、2kg/m2であれば0.67mmの2重層であり、1.5kg/m2であれば0.5mmの2重層となる。全体としてのカーペット厚さは、約4 mm〜12mmの間、たとえば、フォームバッキングなしで約6mm、フォームバッキング付きで約10mmにすることが適切であり得る。
【0090】
施用
得られる床敷物は、家庭および/または商業用途で床敷物として使用するのに適する。設置に感圧接着剤が必要となる場合があり、床タイルが準備されている場合、床タイルは、必要に応じて、取り替えてもよいし、または使い回してもよい。この床敷物は、寸法安定性を備え、実質的に反り、すべり、ゆがみ、伸び、または縮みがなく、煤煙排出量が少ない。この床敷物は、耐汚染性でもあり、汚れ率(stain factor)は5であり、これに比べ、以前のナイロンは汚れ率が2である。
【0091】
(実施例)
(実施例1)
BASFから入手可能なUltramid Balance(登録商標)バイオベースナイロン6,10樹脂を乾燥させ、溶融紡糸し、延伸し、エアージェットテクスチャー加工して、三つ葉型断面(tri-lobe cross-section)の60フィラメントを含んでいる1000デニールのかさ高加工連続フィラメント糸を製造した。溶融紡糸段階の際、種々の顔料を含有する調合マスターバッチを加えることにより、4色の糸を製造した。4色は、濃褐色(「レーズン」)、淡い灰色(「ホークグレー」)、中間の灰色(「エレファント」)、および濃い灰色(「シール」)とした。紡糸スピードは、1100m/分とし、延伸比は約2.7:1とした。紡糸段階の際、糸に仕上げ用油を適用して、糸に約0.45%wtの仕上げ剤を載せた。製造した4種の糸の靱性および破断までの伸度は、以下のとおりである。
【0092】
【表1】

【0093】
(実施例2)
実施例1で使用した6,10樹脂を90%wtおよび硫酸相対溶液粘度(sulfuric acid relative solution viscosity)が3.1であるナイロン6,6樹脂を10%含む糸を、実施例1と同様の方法を使用して製造した。ナイロン6,10およびナイロン6,6を、溶融紡糸段階の際に溶融ブレンドした。製造されたかさ高加工連続糸は、デニールが600であり、三つ葉型断面の30フィラメントからなるものであった。
【0094】
(実施例3)
実施例1および2で準備した糸を使用して、カーペットタイルを調製した。得られるカーペットタイルは、以下の性状試験、すなわち、染色堅牢度、タフロック(Tuflock)、リッソン、キャスタチェア、寸法安定性、ヘキサポッド、および限界熱流束(Critical Heat Flux)に合格することがわかった。
【0095】
本発明について、好ましい実施形態に関して述べてきたが、本発明は、その好ましい実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の真意および範囲内で、様々な変更形態および等価な構成形態(arragements)を包含するものであることは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質正面および裏面を備える一次バッキング層を含み、前記繊維質正面は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンド、を含む多成分繊維から形成された複数の連続性フィラメントを含むかさ高加工連続フィラメント糸から形成されている、床敷物。
【請求項2】
かさ高加工連続フィラメント糸を一次バッキング材料にタフトまたは植設するステップを含み、前記糸は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンド、から形成された複数の連続性フィラメントを含む、床敷物の製造方法。
【請求項3】
繊維質正面および裏面を備え、前記繊維質正面は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンド、を含む多成分繊維から形成された複数の連続性フィラメントを含む、かさ高加工連続フィラメント糸から形成されている、一次バッキングと、
前記一次バッキングの裏面上の硬化したプレコート層と、
前記一次バッキングに固定されたバッキング層と
を含む床敷物。
【請求項4】
かさ高加工連続フィラメント糸を一次バッキングにタフトまたは植設するステップであって、前記糸は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンド、を含む多成分繊維から形成された複数の連続性フィラメントを含む、ステップと、
プレコーティング組成物を適用することにより、前記一次バッキング層の裏面にプレコートを施すステップと、
前記プレコートを施した一次バッキング層にバッキング層を適用するステップと、
前記プレコーティング組成物を硬化させるステップと
を含む、床敷物の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂プラスチゾルの第一の層で、支持材表面上をコーティングするステップと、
場合により、寸法の安定したシート材料を前記第一の層の上部表面上に載せ、前記層を加熱して、前記層をゲル化させ、前記シート材料を所定位置に配置するステップと、
場合により、熱可塑性樹脂プラスチゾルの第二の層を前記第一の層のゲル化した表面上に適用するステップと、
かさ高加工連続フィラメント糸を一次バッキング材料にタフトまたは植設するステップであって、前記糸は、バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマー、またはバイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーを、前記バイオベースのポリヘキサメチレンセバクアミドポリマーと相溶性の、80wt%までの少なくとも1種の他のポリマーと合わせたブレンド、を含む多成分繊維から形成された複数の連続性フィラメントを含む、ステップと、
前記一次バッキングの裏面にプレコートを施すステップと、
場合により、プレコート層を熱可塑性樹脂プラスチゾルでコーティングするステップと、
前記プレコートを施した一次バッキングを前記の第一または第二の熱可塑性樹脂層のプラスチゾルの上部表面上に重ねるステップと、
そのように形成された床敷物を加熱して、前記熱可塑性樹脂層を溶融させ、一体となって溶融したバッキング層にするステップと、
前記床敷物を冷却するステップと、
場合により、前記床敷物を切断してカーペットタイルにするステップと、
を含む、床敷物の製造方法。
【請求項6】
請求項2、4または5に記載の方法によって製造された床敷物。

【公表番号】特表2013−512052(P2013−512052A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541283(P2012−541283)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001631
【国際公開番号】WO2011/066619
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512144645)インターフェース・オーストラリア・ピーティーワイ・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】