説明

積層体の製造方法及び製造ライン

【課題】新たに加工される積層コアの積層高さを許容範囲内に収めることのできる積層体の製造方法及び製造ラインを提供すること。
【解決手段】製造ラインMは、プレス加工ライン10と測定ライン20とを備えて構成する。プレス加工ライン10に、プレス機11を配置して搬送された帯状ワークWから積層鋼板を形成して積層加工する。測定ライン20では、油圧サーボプレス機21を配置する。油圧サーボプレス機21は、仮積層体を本カシメして積層コアを形成するとともに、積層コアの積層高さを測定する。測定した積層高さの測定結果を制御装置17に入力する。制御装置17では、積層高さの測定値が、設定された高さ寸法の許容限界値に近づいた場合に、新たな積層コアを加工する際、積層鋼板の枚数を増減させるように、プレス加工ライン10に指令する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板ワークを積層して形成する積層体の製造方法及び製造ラインに関し、さらに詳しくは、加工された積層体の積層高さを測定し、その測定結果を新たに加工される積層体に反映させて良品の積層体を製造する積層体の製造方法及び製造ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
積層体は、薄板状の鋼板を積層してかしめることによって製造されていた。例えば、電気部品として使用されるモータコアは、積層体として形成されることが多い。積層体を構成する各積層鋼板には、カシメ部が形成され、積み重ねられた積層鋼板のカシメ部を圧着することによって、1個のモータコアが形成されていた。
【0003】
従来、積層体の製造に関して、その技術内容が特許文献1によって知られている。これによると、積層鉄心及びその製造方法は、積層される鉄心片間の隙間をなくして、歪なく、鉄心片のコーティングを破損させず、座崩れも起こさないで製造できるものであって、積層鉄心は、積層される鉄心片のカシメ部の端部に、積層方向に向かって左右交互に貫通孔を穿孔している。カシメ部の折れ曲がった元部が、隣接する鉄心片の貫通孔に位置している。このため、隣接する積層鉄心のカシメ部の傾斜面が接触することがなくなり、傾斜面が接触することによりそれぞれの鉄心片間に隙間ができて積層高さが高くなる、ことを防止することとなっていた。
【特許文献1】特許第2720138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示されている積層鉄心は、積層されるそれぞれの鉄心片間の隙間をなくして、その積層高さが高くなるのを防止しているものの、それぞれの鉄心片には、許容範囲内において板厚のばらつきがある。この板厚のばらつきの積み重ねは、設定された鉄心片の枚数で形成される積層高さのばらつきとなって現れてくる。そのため、設定された積層高さを確保するために、加工前の鉄心片の厚みを測定して、積層枚数を設定することとなっていた。しかし、板厚の測定は、加工前に行なうものであり、積層加工した後に測定するものでなかったから、実際の積層鉄心は、積層高さが、設定された高さの許容範囲から外れる虞が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、積層高さを設定された範囲内で製造できる積層体の製造方法と製造ラインを提供することを目的とする。そのため、本発明に係る積層体の製造方法及び製造ラインは、以下のようにするものである。すなわち、
請求項1記載の発明に係る積層体の製造方法では、加工手段により加工された薄板ワークを積層して積層体を形成し、前記積層体の積層高さを測定手段により測定し、前記測定手段により測定された測定結果を制御手段に入力して前記積層体の積層高さの良否を判定し、測定された前記積層体の積層高さが、設定された高さ寸法の許容限界値に近づいた場合に、設定された高さ寸法に合わせて新たに加工される積層体の積層枚数を調整するように、前記制御手段が前記加工手段に指令することを特徴とするものである。
【0006】
請求項2記載の発明に係る積層体の製造方法では、プレス加工により加工された薄板ワークを積層して仮カシメした仮積層体を形成するプレス加工ラインと、前記仮積層体を本カシメして積層体を形成するとともに、前記積層体の積層高さを測定手段により測定する測定ラインと、前記測定手段により測定された測定結果が入力され前記積層体の積層高さの良否を判定する制御手段と、を備え、測定された前記積層体の積層高さが、設定された高さ寸法の許容限界値に近づいた場合に、前記プレス加工ラインにおいて、設定された高さ寸法に合わせて新たに加工される積層体の積層枚数を調整するように、前記制御手段が前記プレス加工ラインに指令することを特徴とするものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2の発明に係るものであって、前記測定手段は、測定基準となる一定量の圧力が付加された積層体の積層高さを測定することを特徴としている。
【0008】
請求項4記載の発明に係る積層体の製造ラインでは、プレス加工により加工された薄板ワークを積層して仮カシメした仮積層体を形成するプレス加工ラインと、前記仮積層体を本カシメして積層体を形成する加圧機と前記積層体の積層高さを測定する測定手段とを備えた測定ラインと、前記測定ラインで測定された測定結果が入力されるとともに、測定された前記積層体の積層高さが、設定された高さ寸法の許容限界値に近づいた場合に、前記プレス加工ラインにおいて、設定された高さ寸法に合わせて新たに加工される積層体の積層枚数を調整するように、前記プレス加工ラインに指令する制御装置と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項4の発明に係るものであって、前記プレス加工ラインと前記測定ラインとの間に、前記仮積層体を搬送するコンベアが配設されていることを特徴としている。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項4又は5の発明に係るものであって、前記測定ラインに配設される加圧機が、本カシメする圧力に設定された第1の圧力と、測定基準となる圧力に設定された第2の圧力と、に切り替え可能な油圧回路を有して構成された油圧サーボプレス機であることを特徴としている。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項6の発明に係るものであって、前記測定手段が前記油圧サーボプレス機に配設されたリニアスケールを備え、前記リニアスケールで、前記積層体の積層高さが測定されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1の構成による積層体の製造方法によれば、積層体の積層高さを、加工手段により薄板ワークを積層して形成した積層体に対して測定手段で測定することから、設定された積層体の積層高さに対して、各薄板ワークの板厚のばらつきを含んだ最終製品として測定することができる。測定結果において、測定された前記積層体の積層高さが、設定された高さ寸法の許容限界値に近づいた場合に、設定された積層高さ寸法に合わせて、新たに加工される積層体の積層枚数を増減させるように調整することになる。したがって、最終製品を測定して得られた測定結果を、新たに加工される積層体に反映することができることから、新たに加工される積層体の積層高さは、設定された許容範囲内に収まることになる。したがって、加工された積層体の積層高さが良品のものを提供することができる。
【0013】
また、本発明の請求項2の構成の積層体の製造方法によれば、薄板ワークを加工・積層して積層体を形成する際、プレス加工ライン内で加工された仮積層体を、測定ラインで本カシメして積層体として形成している。本カシメされた積層体の積層高さは、測定手段により測定される。測定された積層体の積層高さは、設定された積層体の積層高さに対して、各薄板ワークの板厚のばらつきを含んだ最終製品として測定することができる。測定結果において、測定された前記積層体の積層高さが、設定された高さ寸法の許容限界値に近づいた場合に、設定された高さ寸法に合わせて、新たに加工される積層体の積層枚数を増減させるように調整することになる。したがって、最終製品を測定して得られた測定結果を、新たに加工される積層体に反映することができることから、新たに加工される積層体の積層高さは、設定された許容範囲内に収まることになる。したがって、加工された積層体の積層高さが良品のものを提供することができる。しかも、制御手段が、測定ラインで測定した測定結果をプレス加工ラインに指令することから、プレス加工ラインと測定ラインとを含んだ一つのシステム内で、積層体の積層高さを修正することができて、全自動化を図ることができる。
【0014】
本発明の請求項3の構成によれば、積層体の積層高さを測定する際に、測定基準となる一定量の圧力を付加して測定すれば、測定結果は、基準圧力内での積層高さ値となって表示され、品質を向上することができる。
【0015】
また、本発明の請求項4の構成の積層体の製造ラインによれば、薄板ワークを加工・積層して積層体を形成する際、プレス加工ライン内で加工された仮積層体を、測定ラインに配設された加圧機で本カシメして積層体を形成している。加圧機で本カシメした積層体の積層高さは、測定手段により測定される。測定された積層体の積層高さは、設定された積層体の積層高さに対して、各薄板ワークの板厚のばらつきを含んだ最終製品として測定することができる。測定結果において、測定された前記積層体の積層高さが、設定された高さ寸法の許容限界値に近づいた場合に、設定された高さ寸法に合わせて、新たに加工される積層体の積層枚数を増減させるように調整することになる。したがって、本発明の積層体の製造ラインでは、請求項2の発明の効果と同様、最終製品を測定して得られた測定結果を、新たに加工される積層体に反映することができることから、新たに加工される積層体の積層高さは、設定された許容範囲内に収まることになる。したがって、加工された積層体の積層高さが良品のものを提供することができる。しかも、制御手段が、測定ラインで測定した測定結果をプレス加工ラインに指令することから、プレス加工ラインと測定ラインとを含んだ一つのシステム内で、積層体の積層高さを修正することができて、全自動化を図ることができる。
【0016】
本発明の請求項5の構成によれば、プレス加工ラインと測定ラインとの間にコンベアを配設させていることから、プレス加工ラインで仮カシメした仮積層体を、コンベア上に載せて測定ラインまで搬送することになる。プレス加工ラインを測定ラインと別のラインに構成することによって、プレス加工ラインに配設されるプレス機を小さくすることができ、設備に係るコストを廉価にすることができる。
【0017】
また、本発明の請求項6の構成によれば、測定ラインに配設される加圧機は、仮カシメした積層体を本カシメするために設定する第1の圧力と、測定するために設定する第2の圧力とを切り替え可能に構成する油圧回路を備えている。つまり、仮積層体を本カシメして積層体に形成する場合では、積層する各薄板ワークを密着できるようにかしめることから第1の圧力を大きな圧力にする必要があり、本カシメした積層体を測定する場合には、測定基準とする圧力で測定することから、第2の圧力を第1の圧力より小さな圧力に設定することができる。つまり、加圧機が、第1の圧力と第2の圧力に切り替えることができることによって、加圧機を1台で行えることから、測定ラインをコンパクトに構成して廉価なコストで設備することができる。
【0018】
さらに、本発明の請求項7の構成によれば、測定手段として、油圧サーボプレス機に装着したリニアスケールを使用し、リニアスケールで、積層体の積層高さ測定する。リニアスケールは電気的な信号を制御装置に入力し、制御装置がその測定結果を演算して、その良否の判定をする。これによって、制御装置はプレス加工ラインに、新たに加工される積層体の積層枚数を調整するように指令することができるから、品質を安定させることができる。また、リニアスケールをサーボプレス機に装着することは、短時間で容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の積層体の製造方法と製造ラインの実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、製造ラインMの平面図を示すものであり、図2はプレス加工ライン10の正面図を示すものであり、図3は、製造ラインMの側面図を示すものである。また、図1〜3に示すように、帯状ワークWから打抜かれた単体の薄板ワークを積層鋼板3(図7参照)として説明する。また、積層鋼板3を積層して仮カシメする積層体を仮積層体5とする。仮積層体5は、加工ラインをプレス機11で構成するプレス加工ライン10内で形成される。また、仮積層体5を本カシメする積層体を積層コア1(図7参照)とする。積層コア1は、プレス加工ライン10と平行して配置された測定ライン20で形成される。
【0020】
製造ラインMは、図1及び図3に示すように、プレス加工ライン10と測定ライン20とを備えて構成されている。プレス加工ライン10と測定ライン20とは、前後方向(図1における上下方向)に並列した位置に設置されていて、プレス加工ライン10と測定ライン20とは、コンベア19で接続されている。
【0021】
プレス加工ライン10には、図2に示すように、プレス機11を間にして搬入側にアンコイラ12とダンサローラ13と送り装置14が配置され、搬出側にスクラップコンベア15が配置されている。プレス機11の搬出側後方には、プレス加工ライン10と測定ライン20とを電気的に制御する制御装置17が配置されている。
【0022】
アンコイラ12には、コイル状の帯状ワークWが巻き付けられていて、アンコイラ12は、プレス機11に向かって帯状ワークWを搬送可能に構成されている。ダンサローラ13は、アンコイラ12から搬送された帯状ワークWをループ状に形成して、プレス機11に搬送される帯状ワークWに無理な張力をかけないようにループ状の帯状ワークの上下移動を自動調整可能に構成されている。送り装置14は、プレス機11の一端側に装着されるとともに、帯状ワークWを把持して帯状ワークWをプレス機11に向かって間歇移動で搬送できるように構成されている。スクラップコンベア15は、製品となる積層鋼板3を除いた帯状ワークWをスクラップとして排出するための搬送部として配置されているものである。
【0023】
プレス機11は、帯状ワークWを加工して打抜かれた積層鋼板3を積層するために図示しない複数のステーションを備えて搬送方向に沿って広幅に形成されている。帯状ワークWは、プレス機11の各ステーションで所定の加工を施されながら、搬送方向に沿って順に搬送される。そして所定のステーションにおいて、帯状ワークWから単体の積層鋼板3が打抜かれるとともに残りのスクラップをスクラップコンベア15に搬送する。積層鋼板3は、図7に示すように、上下方向に沿って所定の枚数で積み重ねられた後、プレス機11の最終工程となるステーションでかしめられる。このカシメは仮カシメ段階であり、所定の枚数で積層された積層鋼板3は仮積層体5として形成される。仮積層体5は、各積層鋼板3間の密着度が粗くなっていて、設定された積層高さ寸法内には収められていない。仮積層体5はコンベア19を介して測定ライン20に搬送される。
【0024】
コンベア19の構成は、特に限定するものではないが、実施形態においては、エンドレスに移動するベルトを備えたベルトコンベアが使用されている。コンベア19の一端は、プレス機11の最終ステーションに対向するプレス機11の前面部に配置され、他端は、測定ライン20の搬送部28の一端に対向する位置に配置されている。なお、仮積層体5は、プレス機11の後部に配置されたシリンダ16で押圧されて、コンベア19上をプレス機11から測定ライン20に向かって搬送される。
【0025】
測定ライン20では、油圧サーボプレス機21が配置されている。油圧サーボプレス機21は、図4に示すように、機枠22と、機枠22の上部に配置された油圧ユニット23と、油圧ユニット23に連結されて上下移動可能に配置されるスライド24と、積層コア1を支持するワーク支持台25と、を備えて構成されている。
【0026】
油圧ユニット23は、図5に示す油圧回路30によって作動される。この油圧ユニット23は、本カシメする際に高い圧力で加圧する第1の圧力と、測定する際に低い圧力で加圧する第2の圧力の2段に切り替え可能に構成されている。第1の圧力から第2の圧力に切り替える際には、油圧の圧力を調整することによって行われる。
【0027】
つまり、実施形態の油圧回路30は、図5に示すように、油圧シリンダ31の両端に流入側油圧通路32、流出側油圧通路33を介して接続されるサーボポンプユニット34と、流入側油圧通路32の中間部に配置される圧力センサ35と、流出側油圧通路33の中間部に配置されるバルブ36と、を備えている。サーボポンプユニット34は、油圧の圧力を調整する機能を有し、第1の圧力と第2の圧力とに切り替え可能に構成されている。油圧シリンダ31には、ピストンロッド311が往復移動可能に配置され、ピストンロッド311の先端がスライド24(図4参照)に連結されている。
【0028】
スライド24は、図4に示すように、その側面で機枠22に装着されたスライドガイド26で移動案内されるとともに、スライド24の下面には、仮積層体5を上方から加圧するための加圧ブロック241が装着されている。
【0029】
また、スライド24と機枠22との間には、図6に示すように、リニアスケール27が装着されてスライド24の高さ位置を電気的に検出している。リニアスケール27は、機枠22に縦方向に長尺状に装着された固定部271と、スライド24の一端に装着されて固定部271に対して上下移動可能な可動部272とを備えて構成されている。スライド24が下降して、加圧ブロック241で仮積層体5の上面を加圧することによって、本カシメされた積層コア1の上面位置を電気的に検出する。積層コア1の上面位置を検出することによって、積層コア1の高さが測定されることになる。
【0030】
なお、図1に示すように、測定ライン20では、油圧サーボプレス機21内を挿通する搬送部28が、油圧サーボプレス機21を間にして両側に突出して配置されている。搬送部28の搬入側281においては、その端部がコンベア19と対向する位置に配置されるとともに、搬出側282においては、測定された積層コア1を不良品として排出するか又は良品として搬出するための搬送スペース29が形成されている。
【0031】
次に、製造ラインMの作用について、図2、図4〜5及び図7に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の説明では、設定されている積層コア1の積層高さの基準高さをTとし、加工された積層コア1の積層高さをTSとする。TSは測定された積層コア1の積層高さも含むものとする。
【0032】
アンコイラ12から巻き解された帯状ワークWは、ダンサローラ13でループを形成しつつ送り装置14で把持されてプレス機11内に搬送される。プレス機11では、複数のステーションでそれぞれの加工が行なわれた後、帯状ワークWから積層鋼板3が打抜かれて積層される。積層された各積層鋼板3は、最終ステーションにおいて、仮カシメされた仮積層体5として形成される。仮積層体5は、各積層鋼板3のカシメ部が外れない程度に加圧されている。
【0033】
仮積層体5は、プレス機11の最終ステーションの後方に配置されたシリンダ16によって、前方に押し出されてコンベア19上に移動する。コンベア19上に移動した仮積層体5は、コンベア19で搬送されて、測定ライン20の搬送部28上に移動する。測定ライン20において、搬送部28の搬入側281に移動した仮積層体5は、例えば、図示しないフィンガで把持されて油圧サーボプレス機21内に搬送される。
【0034】
油圧サーボプレス機21内では、搬入された仮積層体5が、スライド24の加圧で本カシメされた積層コア1として形成される。積層コア1は、図7に示すように、各積層鋼板3が上下に隣接する積層鋼板3に隙間なく密着して形成される。製造された積層コア1の積層高さTSは、スライド24の高さ位置が検出されることによって制御装置17内で演算されて検出される。この間の作用を図4に示す油圧サーボプレス機21の正面図及び図8に示すフローチャートに基づいて、さらに詳細に説明する。
【0035】
油圧サーボプレス機21内に仮積層体5が搬入される(S1)。スライド24は、設定された移動開始位置(スライド24の下面に装着された加圧ブロック241の下面の位置)Hに移動する。移動開始位置Hは、予め設定されている積層コア1の積層高さT(基準高さ)より上方の位置(例えば、T+10mm)にある。
【0036】
つまり、スライド24の位置制御(S2)が行なわれて、スライド24が移動開始位置Hに移動する。スライド24が、仮積層体5に向かって移動し、スライド24が仮積層体5の上面から僅かに上方の位置、例えば1mm程度の位置に達すると、仮積層体5の上面から1mm上方の位置にあるかどうかの判定がなされ(S3)、「YES」であれば圧力制御が行われる(S4)。圧力制御(S4)において、油圧回路30内の油圧力が、本カシメできる第1の圧力F1に切り替えられる。第1の圧力F1は積層鋼板3の積層枚数によって異なるが、実施形態では、例えば、1〜10トンの範囲内で設定される。油圧回路30のバルブ36を開き、サーボポンプ34を作動させることにより、流入側油圧通路32から油を油圧シリンダ31内に流入し、流出側油圧通路33から油を排出することによってピストンロッド311を移動させる。これによってスライド24が下降して加圧ブロック241で仮積層体5を加圧する。スライド24の移動が停止した位置において、加圧ブロック241が仮積層体5を数秒間加圧する(S5)。なお、以下、加圧ブロック241の下面をスライド24の下面として説明する。
【0037】
仮積層体5の各積層鋼板3間は隙間なく密着されて、積層コア1が形成される。
【0038】
その後、スライド24が停止している状態(積層コア1を加圧している状態)で、圧力を第2の圧力F2に切り替える(S6)。第2の圧力F2は、第1の圧力より小さい圧力に設定されている。この設定圧力は積層高さTを測定する際の基準圧力となるもので、測定された積層コア1の積層高さTSは、この基準圧力F2で加圧した状態の積層高さTSをとして表される。実施形態では、基準圧力F2は、例えば、1トン以内に設定されている。
【0039】
スライド24が基準圧力F2で積層コア1を加圧している状態で、リニアスケール27がスライド24の下面位置(実際には、加圧ブロック241の下面位置)を検出する(S7)。リニアスケール27で検出されたスライド24の下面位置は、ワーク支持台25からのスライド24の下面との距離を表すこととなる。つまり、積層コア1の積層高さTSを表すこととなる。ワーク高さTSが測定されると、測定されたワーク高さTSの結果に基づいて、新たに加工される積層コア1の積層枚数を増減させるかどうかの判定をすることになる(S8)。
【0040】
また、制御装置17では、測定された積層コア1の積層高さTSが、基準高さとして設定された積層高さTに対して、積層鋼板3の1枚分の板圧t分の上限値又は下限値を超えるとNG品として判定する。積層鋼板3の板圧tは、実施形態においては、例えば、0.2〜0.3mmとする。
【0041】
つまり、判定内容は、S9で示すように、5段階に分けられる。積層コア1の測定高さTSが、
(S9A)測定高さTSが、設定された許容範囲の上限値を超えた(「T+t<TS」)場合、
(S9B)測定高さTSが、設定された許容範囲の下限値を超えた(「T−t>TS」)場合、
(S9C)測定高さTSが、設定された許容範囲の下限値の範囲内にあり、且つ設定された中心値より僅かに低い値(「T−t≦TS<T−t」)との間にある場合、
(S9D)測定高さTSが、設定された許容範囲の中心値に近い値(「T−t<TS<T−t」)場合、
(S9E)測定高さTSが、設定された許容範囲の上限値の範囲内にあり、且つ設定された中心値より僅かに高い値(「T+t<TS≦T+t」)との間にある場合、
のいずれかを選択することとなる。なお、tは、積層コア1の設定された積層高さTの中心値に近い数字を任意に設定したものであり、例えば、tの値は、積層高さTが65〜80mmの場合で、0.02〜0.05mmの範囲で設定される。
【0042】
S9Aの場合、積層コア1の積層高さTSが「T+t<TS」であるから、設定された積層高さTの許容上限値を超えることとなり、NG品として判定される。NG品として判定された積層コア1はNG品ルートを選択(S9A1)することになり、搬送スペース29に移動して排出される。制御装置17には、新たな積層コア1の積層枚数増減指示用プリセット値(以下、単にプリセット値という)を入力して記憶するNカットカウンター(以下、単にカウンターという)が配置されている。この場合、カウンターのプリセット値には、例えば「−1」が入力される(S9A2)。「−1」とされたプリセット値の表示は、設定されている積層高さTが積層鋼板3の1枚分多いために新たに加工される積層コア1に1枚分の積層鋼板3を減らすこと、を示している。したがって、制御装置17は、プレス加工ライン10に、新たに加工される積層コア1に1枚分の積層鋼板3を減らすように指令することとなる。
【0043】
S9Bの場合、積層コア1の積層高さTSが、「T−t>TS」であるから、設定された積層高さTの許容下限値を超えることとなり、NG品として判定される。NG品として判定された積層コア1はNG品ルートを選択(S9B1)することになり、搬送スペース29に移動して排出される。この場合、カウンターのプリセット値(S9B2)には、例えば「+1」が入力される。「+1」とされたプリセット値の表示は、設定されている積層高さTが積層鋼板3の1枚分不足しているために新たに加工される積層コア1に1枚分の積層鋼板3を増やすことを、示している。したがって、制御装置17は、プレス加工ライン10に、新たに加工される積層コア1に1枚分の積層鋼板3を増やすように指令することとなる。
【0044】
S9Cの場合、測定高さTSが、設定された許容範囲の下限値の範囲内にあり、且つ設定された中心値より僅かに低い値(「T−t≦TS<T−t」)との間にあるから、積層コア1はOK品として判定される。OK品として判定された積層コア1はOK品ルートを選択(S9C1)することになり、搬送スペース29に移動して搬出される。この場合、積層コア1がOK品であっても、積層コア1の測定された積層高さTSが、設定された積層高さTに対して低めに形成されたものであり、新たに加工される積層コア1が許容範囲から外れてNG品となる可能性があるため、カウンターのプリセット値には、例えば「+1」が入力される(S9C2)。前述のように、「+1」とされたプリセット値の表示は、設定されている積層高さTが積層鋼板3の1枚分不足しているために新たに加工される積層コア1に1枚分の積層鋼板3を増やすことを、示している。したがって、制御装置17は、プレス加工ライン10に、新たに加工される積層コア1に1枚分の積層鋼板3を増やすように指令することとなる。
【0045】
S9Dの場合、測定高さTSが、設定された許容範囲の中心値付近(「T−t<TS<T−t」)の範囲にあるから、積層コア1はOK品として判定される。OK品として判定された積層コア1はOK品ルートを選択(S9D1)することになり、搬送スペース29に移動して搬出される。カウンターのプリセット値は「プリセット値維持」(S9D2)とされる。「プリセット値維持」の表示は、設定されている積層高さTが、設定された許容範囲の中心位置にあるから新たに加工される積層コア1に対して増減の必要がないことを示している。したがって、制御装置17は、プレス加工ライン10に、新たに加工される積層コア1に積層鋼板3を増減させないことを指令することとなる。
指令することとなる。
【0046】
(S9E)測定高さTSが、設定された許容範囲の上限値の範囲内にあり、且つ設定された中心値より僅かに高い値(「T+t<TS≦T+t」)との間にあるから、積層コア1はOK品として判定される。OK品として判定された積層コア1はOK品ルートを選択(S9E1)することになり、搬送スペース29に移動して搬出される。この場合、積層コア1がOK品であっても、積層コア1の測定された積層高さTSが、設定された積層高さTに対して高めに形成されたものであり、新たに加工される積層コア1が許容範囲から外れてNG品となる可能性があるため、カウンターのプリセット値には、例えば「−1」が入力される(S9E2)。したがって、「−1」とされたプリセット値の表示は、設定されている積層高さTが積層鋼板3の1枚分多くなる可能性があるために新たに加工される積層コア1に1枚分の積層鋼板3を減らすことを、示している。したがって、制御装置17は、プレス加工ライン10に、新たに加工される積層コア1に1枚分の積層鋼板3を減らすように指令することとなる。
【0047】
これで、積層コア1の1個分の判定が終了し、スライド24が上昇する(S10)。スライド24が上昇すると、積層コア1は搬送スペース29に搬出して(S11)、選択されたそれぞれのルートに移動することになる。これによって、積層コア1の測定が終了することとなる。そして次に、油圧サーボプレス機21内に搬入された新たな積層コア1の積層高さTSを測定することとなる。
【0048】
上述のように、実施形態の積層コア1の製造ラインMによれば、プレス加工ライン10、測定ライン20で形成された積層コア1の積層高さTSが測定ラインで測定されることによって、その測定結果をプレス加工ライン10にフィードバックすることができる。つまり、加工された積層コア1の積層高さTSの測定結果が反映されることから、新たに加工される積層コア1の積層高さTSは、設定された積層高さTの許容範囲内に収まることとなって、積層高さTを良品とする積層コア1を確実に搬出することができる。したがって、製造ラインM外で積層コア1の積層高さTSを測定するのではなく、製造ラインM内で積層高さTSを修正して加工することができることから、積層コア1を製造するための全自動化を達成することができる。
【0049】
また、実施形態の製造ラインMによれば、プレス加工ライン10と測定ライン20とを分割して設置し、プレス加工ライン10と測定ライン20との間に、仮積層体5を搬送するコンベア19を設置しているから、プレス加工ライン10内に配置するプレス機11を小さいプレス機11で設置することができ廉価な設備費用で構成することができる。
【0050】
さらに、実施形態の製造ラインMでは、本カシメする第1の圧力F1と測定基準となる第2の圧力F2とを別に設定していることから、積層コア1の積層高さTSを基準圧力F2での測定値とすることができ、品質精度の向上を図ることができる。
【0051】
また、積層コア1の積層高さTSをリニアスケール27で測定することから、容易で正確な測定を行うことが可能となる。
【0052】
なお、本発明の積層体の製造ラインでは、上述の形態に限定するものではない。例えば、積層コアの積層高さを測定する際、第1の圧力と第2の圧力に分割しなくても、本カシメする第1の圧力をかけた状態でその積層高さを測定してもよい。
【0053】
また測定手段として、リニアスケールの代わりに光を投射する光学手段で測定してもよい。
【0054】
さらに、積層コアを形成する積層鋼板の板圧や枚数、仮積層体を加圧する第1の圧力、基準圧力として設定する第2の圧力の数値等は、積層鋼板の材料や積層枚数等によって、適宜決定される。
【0055】
また、本発明の積層体の製造方法や製造ラインで加工される積層体は、積層して形成するものであれば、積層コアに限定するものではなく、他の積層体でも良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態による積層体の製造ラインを示す平面図である。
【図2】同プレス加工ラインを示す正面図である。
【図3】同製造ラインを示す側面図である。
【図4】同測定ラインを示す側面図である。
【図5】図4における油圧サーボプレス機の油圧回路を示す回路図である。
【図6】図4における油圧サーボプレス機のスライド周りを示す拡大正面図である。
【図7】加工された積層コアを示す正面図である。
【図8】積層コアの積層高さを測定してフィードバックする流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
M、製造ライン
1、積層コア
3、積層鋼板
5、仮積層体
10、プレス加工ライン(加工手段)
11、プレス機
17、制御装置(制御手段)
19、コンベア
20、測定ライン
21、油圧サーボプレス機(加圧機)
23、油圧ユニット
24、スライド
241、加圧ブロック
25、ワーク支持台
27、リニアスケール(測定手段)
28、搬送部
30、油圧回路
31、油圧シリンダ
34、サーボポンプユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工手段により加工された薄板ワークを積層して積層体を形成し、
前記積層体の積層高さを測定手段により測定し、
前記測定手段により測定された測定結果を制御手段に入力して前記積層体の積層高さの良否を判定し、
測定された前記積層体の積層高さが、設定された高さ寸法の許容限界値に近づいた場合に、設定された高さ寸法に合わせて新たに加工される積層体の積層枚数を調整するように、前記制御手段が前記加工手段に指令することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
プレス加工により加工された薄板ワークを積層して仮カシメした仮積層体を形成するプレス加工ラインと、
前記仮積層体を本カシメして積層体を形成するとともに、前記積層体の積層高さを測定手段により測定する測定ラインと、
前記測定手段により測定された測定結果が入力され前記積層体の積層高さの良否を判定する制御手段と、を備え、
測定された前記積層体の積層高さが、設定された高さ寸法の許容限界値に近づいた場合に、前記プレス加工ラインにおいて、設定された高さ寸法に合わせて新たに加工される積層体の積層枚数を調整するように、前記制御手段が前記プレス加工ラインに指令することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項3】
前記測定手段は、測定基準となる一定量の圧力が付加された積層体の積層高さを測定することを特徴とする請求項1又は2記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
プレス加工により加工された薄板ワークを積層して仮カシメした仮積層体を形成するプレス加工ラインと、
前記仮積層体を本カシメして積層体を形成する加圧機と前記積層体の積層高さを測定する測定手段とを備えた測定ラインと、
前記測定ラインで測定された測定結果が入力されるとともに、測定された前記積層体の積層高さが、設定された高さ寸法の許容限界値に近づいた場合に、前記プレス加工ラインにおいて、設定された高さ寸法に合わせて新たに加工される積層体の積層枚数を調整するように、前記プレス加工ラインに指令する制御装置と、
を備えていることを特徴とする積層体の製造ライン。
【請求項5】
前記プレス加工ラインと前記測定ラインとの間に、前記仮積層体を搬送するコンベアが配設されていることを特徴とする請求項4記載の積層体の製造ライン。
【請求項6】
前記測定ラインに配設される加圧機が、本カシメする圧力に設定された第1の圧力と、測定基準となる圧力に設定された第2の圧力と、に切替可能な油圧回路を有して構成された油圧サーボプレス機であることを特徴とする請求項4又は5記載の積層体の製造ライン。
【請求項7】
前記測定手段が前記油圧サーボプレス機に配設されたリニアスケールを備え、前記リニアスケールで、前記積層体の積層高さが測定されることを特徴とする請求項6記載の積層体の製造ライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−143125(P2010−143125A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323838(P2008−323838)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000144795)株式会社山田ドビー (34)
【Fターム(参考)】