説明

積層型ガス流路形成装置の組付方法

【課題】シート部材とセパレータとの位置合わせを簡略化でき、組付性を改善できるガス流路形成装置の組付方法を提供する。
【解決手段】部分的に切除可能な材料で形成されたシート部材3と、シート部材3に積層されるセパレータ2とを用い、シート部材3とセパレータ2とを積層して積層体7を形成し、シート部材3のうちの少なくとも一方の表面に対向する表面流路をシート部材3とセパレータ2とで積層体7の内部に形成する。シート部材に対して切除可能な切除手段300を積層体7の積層方向に沿って積層体7に対して相対的に移動させることにより、積層体7を構成するシート部材3を貫通状態に部分的に切除し、表面流路に連通すると共にシート部材3を貫通するシート部材貫通流路をシート部材3に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート部材及びセパレータを厚み方向に積層させる構造をもつ積層型ガス流路形成装置の組付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型ガス流路形成装置に係る従来技術について、燃料電池に用いられている加湿装置を例にとって説明する。燃料電池に設けられている電解質は過剰に乾燥していると、発電性能を目標どおり発揮できない。そこで、燃料電池に供給される酸化剤ガスを加湿するための加湿装置(特許文献1)が設けられている。
【0003】
従来、このような加湿装置では、厚み方向に貫通する貫通孔をもつシート部材と、厚み方向に貫通する貫通孔をもつセパレータとを用い、セパレータの貫通孔とシート部材の貫通孔とが対向して連通するようにシート部材及びセパレータを位置合わせした状態で積層させている。そしてシート部材のうち一方の表面に対向する第1表面流路と、シート部材のうち他方の表面に対向する第2表面流路とが形成されている。
【特許文献1】特開平10−172592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来技術によれば、組付時には、前記したように、セパレータの貫通孔とシート部材の貫通孔とが対向して連通するように、シート部材及びセパレータを位置合わせした状態で積層させている。しかしながら複数枚のセパレータとの貫通孔と複数枚のシート部材の貫通孔とが対向して連通するように正確に位置合わせすることは、時間を必要とする。このため加湿装置の組み付け時間が長くなる傾向がある。
【0005】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、シート部材とセパレータとの位置合わせを簡略化でき、組付性を改善できるガス流路形成装置の組付方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)様相1の本発明に係るガス流路形成装置の組付方法は、部分的に切除可能な材料で形成されたシート部材と、シート部材に積層されるセパレータとを用い、シート部材とセパレータとを積層して積層体を形成し、シート部材のうちの少なくとも一方の表面に対向する表面流路をシート部材とセパレータとで積層体の内部に形成する積層工程と、
シート部材に対して切除可能な切除手段を積層体の積層方向に沿って積層体に対して相対的に移動させることにより、表面流路に連通すると共にシート部材を厚み方向に貫通するシート部材貫通流路をシート部材に形成する切徐工程とを順に実施することを特徴とするものである。
【0007】
この場合、シート部材及びセパレータを積層して積層体を形成した後に、シート部材に対して切除可能な切除手段を用い、切除手段を積層体の積層方向に沿って積層体に対して相対的に移動させる。この結果、積層体を構成するシート部材を貫通状態に部分的に切除する。従って、表面流路に連通すると共にシート部材を貫通するシート部材貫通流路をシート部材に形成する。
【0008】
(2)様相2の本発明に係るガス流路形成装置の組付方法は、シート部材と、シート部材に積層され部分的に切除可能な材料で形成されたセパレータとを用い、シート部材とセパレータとを積層して積層体を形成し、シート部材のうちの少なくとも一方の表面に対向する表面流路をシート部材とセパレータとで積層体の内部に形成する積層工程と、
セパレータに対して切除可能な切除手段を積層体の積層方向に沿って積層体に対して相対的に移動させることにより、表面流路に連通すると共にセパレータを厚み方向に貫通するセパレータ貫通孔をセパレータに形成する切徐工程とを順に実施することを特徴とするものである。
【0009】
この場合、シート部材及びセパレータを積層して積層体を形成した後に、セパレータに対して切除可能な切除手段を用い、切除手段を積層体の積層方向に沿って積層体に対して相対的に移動させる。この結果、積層体を構成するセパレータを貫通状態に部分的に切除する。従って、表面流路に連通すると共にセパレータを貫通するセパレータ貫通流路をセパレータに形成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シート部材及びセパレータを積層して積層体を形成した後に切除工程を行ない、シート部材貫通孔又はセパレータ貫通孔を形成するため、シート部材とセパレータとの位置合わせを簡略化できる。故にガス流路形成装置の組付性を改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
シート部材はセパレータと共に表面流路を形成するものであり、湿分保持可能な膜、あるいは、イオン伝導可能な膜を採用できる。流路形成部材として機能できるセパレータは、シート部材と共に表面流路を形成するものである。
【0012】
シート部材を切除する様相1に係る本発明によれば、セパレータは、機械的切除力、熱、高エネルギ密度ビーム等の切除手段により切除可能な材質で形成されていても良いし、切除困難又は切除不可能な材質で形成されていても良い。セパレータを切除する様相2に係る本発明によれば、セパレータは機械的切除力、熱、高エネルギ密度ビーム等の切除手段により切除可能な材質で形成されている。
【0013】
切除手段としては、機械的切除力によりシート部材またはセパレータを部分的に切除可能な機械的切除力発生手段、熱によりシート部材またはセパレータを部分的に切除可能な熱発生手段、シート部材またはセパレータに照射される高エネルギ密度ビームのうちの少なくともいずれかである形態を例示することができる。機械的切除力発生手段としては、打ち抜き力、切り抜き力、切削力等を発生する手段が例示される。このようなものとして、切削可能な切除工具、押抜工具、ドリル工具等を例示できる。熱発生手段としては、ヒータを搭載した工具を例示できる。高エネルギ密度ビームとしてはレーザビーム、電子ビームを例示できる。レーザビームとしてはYAGレーザビーム、CO2レーザビーム等を例示できる。
【0014】
切除工程を実施する前のセパレータ及び/又はシート部材には、セパレータ及び/又はシート部材の切除部分を切除容易化させる切除促進部が形成されている形態を例示することができる。切除促進部としては溝等の凹部を例示できる。なお切除促進部のみの材質を変えても良い。
【0015】
シート部材は湿分保持可能な膜である形態を例示することができる。この場合、表面流路は、シート部材の一方の表面に対向する第1表面流路と、シート部材の他方の表面に対向する第2表面流路とで形成されており、そして第1表面流路及び第2表面流路のいずれか一方には高湿度ガスが流れ、第1表面流路及び第2表面流路のいずれか他方には高湿度ガスよりも相対的に湿度が低い低湿度ガスが流れる加湿装置に適用されている形態を例示することができる。
【0016】
また、シート部材はイオン伝導可能な膜である形態を例示することができる。この場合、表面流路は、シート部材の一方の表面に対向する第1表面流路と、シート部材の他方の表面に対向する第2表面流路とで形成されており、そして、第1表面流路及び第2表面流路のいずれか一方には燃料が流れ、第1表面流路及び第2表面流路のいずれか他方には酸化剤ガスが流れる燃料電池に適用されている形態を例示することができる。
【0017】
さらに、積層工程を経た積層体のシート部材は、セパレータの端よりも外側に位置する露出部分を有している形態を例示することができる。この場合、切除工程では、露出部分を切除する露出部分切除操作を行うことが好ましい。露出部分切除操作で用いる切除手段は、シート部材貫通流路を形成する切除手段と同一または別のものとすることができる。また、露出部分切除操作で用いる切除手段は、セパレータ貫通流路を形成する切除手段と同一または別のものとすることができる。露出部分切除操作としては、シート部材貫通流路を形成すると同時にまたは時間的にずらして行うことができる。また、露出部分切除操作で用いる切除手段は、セパレータ貫通流路を形成すると同時にまたは時間的にずらして行うことができる。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1について図1〜図5を参照しつつ具体的に説明する。本実施例は燃料電池100に用いられる加湿装置1(ガス流路形成装置)に適用したものである。燃料電池用の加湿装置1は、第1エンドプレート11と第2エンドプレート12との間にセパレータ2を厚み方向に積層して形成されている。
【0019】
図2は、側辺2r、2sを有するセパレータ2の一方の表面2aの平面視を示す。図2に示すようにセパレータ2は耐熱性・耐薬品性を有する樹脂製であり、一方の表面2aに形成された案内突起21fをもつ第1表面流路21(表面流路)と、セパレータ2の厚み方向に貫通すると共に第1表面流路21に連通するように対角位置に形成された2つの第1貫通流路22(セパレータ貫通流路)とを有する。セパレータ2の第1表面流路21と第1貫通流路22との間に形成された係合凹部4には、シーリング部材8が取り付けられている。シーリング部材8は、セパレータ2の第1表面流路21と第1貫通流路22とを連通させる連通路88を形成する。
【0020】
図3はセパレータ2の他方の表面2cの平面視を示す。図3に示すようにセパレータ2は、他方の表面2cに形成された案内突起25fをもつ第2表面流路25(表面流路)と、厚み方向に貫通すると共に第2表面流路25に連通するように対角位置に形成された2つの第2貫通流路26(セパレータ貫通流路)とを有する。セパレータ2の第2表面流路25と第2貫通流路26との間に形成された係合凹部4には、同様なシーリング部材8が取り付けられている。シーリング部材8の連通路88は、セパレータ2の第2表面流路25と第2貫通流路26とを連通させる。
【0021】
図4は切除工程を実施する前の積層体7の要部を示す。図4に示すように、加湿装置1となる積層体7では、シーリング部材8を取り付けた複数のセパレータ2が膜3(シート部材)と共に厚み方向に積層されている。セパレータ2と膜3との間には、ゴムや軟質樹脂等のシール材料で形成された開口91cを有する第1シール91が設けられている。膜3とセパレータ2との間には、ゴムや軟質樹脂等のシール材料で形成された開口92cを有する第2シール92が設けられている。図4に示すように2つのセパレータ2の間には、第1シール91及び第2シール92を介して、水分を透過可能な高分子樹脂材料であるイオン交換膜で形成された膜3が介在している。ここで、セパレータ2の第1表面流路21は膜3の一方の表面3aに対向する。セパレータ2の第2表面流路25は膜3の他方の表面3cに対向する。膜3により第1表面流路21及び第2表面流路25が仕切られている。
【0022】
図1に示すように、第1表面流路21は、燃料電池100の酸化剤極101から排出された湿度が相対的に高い発電後の空気オフガス(高湿度ガス)を矢印Y1方向(下向き)に流すためのものである。第2表面流路25は、燃料電池100の酸化剤極101に向かう湿度が相対的に低い発電前の空気(低湿度ガス)を矢印Y2方向(上向き)流すためのものである。
【0023】
図1に示すように、燃料電池100の酸化剤極101から排出された湿度が相対的に高い空気オフガス(高湿度ガス)は、第1入口61、上側の第1貫通流路22、第1表面流路21、下側の第1貫通流路22、第1出口62の順に流れる。このとき第1表面流路21を流れる湿度が相対的に高い空気オフガスは、膜3に接触するため、膜3に湿分を与え、膜3を吸湿させる。
【0024】
図1に示すように、燃料電池100の酸化剤極101に向かう湿度が相対的に低い発電前の空気(低湿度ガス)は、第2入口63、下側の第2貫通流路26、第2表面流路25、上側の第2貫通流路26、第2出口64の順に流れ、燃料電池100の酸化剤極101に向かい、発電反応に使用される。このとき、第2表面流路25を流れる湿度が相対的に低い発電前の空気は、湿潤状態の膜3に接触するため、膜3から湿分を与えられ、膜3により加湿される。
【0025】
さて、加湿装置1を形成する形態について更に説明を加える。まず、部分的に切除可能な高分子材料で形成された水分保持可能な複数枚の膜3と、セパレータ貫通孔として機能する第1貫通流路22及び第2貫通流路26をもつ複数枚のセパレータ2とを厚み方向に積層し、これにより図4に示す積層体7を形成する。この場合、図4に示すように、膜3のうちの一方の表面3aに対向する第1表面流路21が膜3とセパレータ2とで積層体7の内部に形成されると共に、膜3のうちの他方の表面3cに対向する第2表面流路25が膜3とセパレータ2とで積層体7の内部に形成されている。
【0026】
次に切徐工程を実施する。即ち、膜3を部分的に切除可能な切除手段として、切除工具300を用いる。切除工具300は、機械的なせん断力により膜3を部分的に切除可能な機械的切除力発生手段として機能する。切除工具300を、積層体7を構成しているセパレータ2の第1貫通流路22及び第2貫通流路26に矢印X1方向に向けて挿入させることにより、積層体7の積層方向(矢印X方向)に沿って積層体7に対して相対的に移動させる。
【0027】
この結果、積層体7を構成する膜3の部分3rを切除工具300の刃300aにより貫通状態に部分的に切除して穿孔する。これにより膜3を厚み方向に貫通する第1膜貫通流路31(シート部材貫通流路)を膜3に形成する。第1膜貫通流路31は第1表面流路21及び第1貫通流路22に連通する。同様に、膜3を貫通する第2膜貫通流路32(シート部材貫通流路)を膜3に形成する。第2膜貫通流路32は第2表面流路25及び第2貫通流路26に連通する。
【0028】
このように膜3を厚み方向に貫通する第1膜貫通流路31及び第2膜貫通流路32を膜3に穿孔により形成すれば、膜3の第1膜貫通流路31とセパレータ2の第1貫通流路22とを精度良く逐一位置合わせする必要がない。同様に、膜3の第2膜貫通流路32とセパレータ2の第2貫通流路26とを精度良く逐一位置合わせする必要がない(図1参照)。故に加湿装置1の組み付け時間の短縮化に有利である。
【0029】
また本実施例によれば、図4に示すように、組み付け前の膜3のサイズはセパレータ2のサイズよりも大きく設定されており、組み付け前の膜3の端3fはセパレータ2の端2fよりも外側に位置して露出し、露出部分を形成してい。このため切除工具300に一体的に取り付けられている刃300cにより、刃300aの作動と同時に、組み付け前の膜3の端3fを機械的なせん断力により切除する。切除工具300は吸引孔300mを有する。吸引孔300mは図略の吸引装置に接続されている。切除工程において切除滓が発生したとしても、切除滓を吸引孔300mから吸引除去し易い。
【0030】
なお本実施例によれば、切除工具300の刃300cは刃300aと一体的に設けられており、膜3の端3fを切除すると同時に第1膜貫通流路31及び第2膜貫通流路32を膜3に形成するが、これに限らず、刃300cと刃300aとが別体として設けられており、膜3の端3fを切除する工程と、第1膜貫通流路31及び第2膜貫通流路32を膜3に形成する工程とを時間的にずらして実行しても良い。
【実施例2】
【0031】
図6及び図7は実施例2を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。図1〜図3を準用する。以下、実施例1と相違する部分を中心として説明する。本実施例によれば、セパレータ2は、切除可能な高分子系材料(樹脂)で可撓性を有するように形成されている。セパレータ2には、切除部分2rを切除容易化させるリング溝状をなす切除促進部2tが形成されている。そして、部分的に切除可能且つ湿分保持可能な高分子材料で形成された複数枚の膜3と、複数枚のセパレータ2とを厚み方向に積層して積層体7(図6参照)を形成する。
【0032】
図6に示すように、加湿装置1となる積層体7では、膜3のうちの一方の表面3aに対向する第1表面流路21(表面流路)が膜3とセパレータ2とで積層体7の内部に形成されている。また、膜3のうちの他方の表面3cに対向する第2表面流路25(表面流路)が膜3とセパレータ2とで積層体7の内部に形成されている。
【0033】
次に切徐工程を実施する。即ち、膜3に対して切除可能な切除手段として、切除工具300を用いる。切除工具300は、機械的なせん断力により膜3を部分的に切除可能な機械的切除力発生手段として機能する。切除工具300をセパレータ2にこれを貫通するように矢印X1方向に挿入させることにより、積層体7の積層方向(矢印X方向)に沿って積層体7に対して相対的に移動させる。この結果、積層体7を構成するセパレータ2の切除部分2r及び膜3の切除部分3rを切除工具300の刃300aにより貫通状態に部分的に切除する。ここで、セパレータ2の切除部分2rを切除容易化させるリング溝状をなす切除促進部2tがセパレータ2に形成されているため、セパレータ2の切除部分2rの切除は容易化される。この結果、図7に示すように、セパレータ2を厚み方向に貫通する第1貫通流路22及び第2貫通流路26(セパレータ貫通孔)をセパレータ2に形成する。更に、膜3を厚み方向に貫通する第2膜貫通流路31及び第2膜貫通流路32(シート部材貫通流路)を膜3に形成する。
【0034】
このようにすれば、膜3の第1膜貫通流路31とセパレータ2の第1貫通流路22とを精度良く逐一位置合わせする必要がない。同様に、膜3の第2膜貫通流路32とセパレータ2の第2貫通流路26とを精度良く逐一位置合わせする必要がない(図7参照)。故に組み付け時間の短縮化に有利である。
【0035】
本実施例によれば、図6に示すように、組み付け前の膜3のサイズはセパレータ2のサイズよりも大きく設定されており、組み付け前の膜3の端3fはセパレータ2の端2fよりも外側に位置している。このため切除工具300に一体的に取り付けられている刃300cにより、刃300aの作動と同時に、組み付け前の膜3の端3fを機械的なせん断力により切除する。
【0036】
なお本実施例によれば、切除工具300の刃300cは刃300aと一体的に設けられており、膜3の端3fを切除すると同時に第1膜貫通流路31及び第2膜貫通流路32を膜3に形成するが、これに限らず、刃300cと刃300aとが別体として設けられており、膜3の端3fを切除する工程と、第1膜貫通流路31及び第2膜貫通流路32を膜3に形成する工程とを時間的にずらして実行しても良い。
【実施例3】
【0037】
図8は実施例3を示す。本実施例は実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。以下、実施例1と相違する部分を中心として説明する。本実施例によれば、積層型ガス流路形成装置として機能できる燃料電池に適用した例である。
【0038】
図8に示すように、セパレータ2Sの一方の表面2aには、酸化剤ガス(一般的には空気)が流れる第1表面流路21が形成されている。第1表面流路21(表面流路)に対向するように、酸化剤極300がセパレータ2Sと膜3との間に配置されている。第1表面流路21を流れた酸化剤ガスは酸化剤極300の内部を流れる。酸化剤極300は、触媒を有する酸化剤極用の触媒層301と、ガス拡散機能および集電機能を有する酸化剤極用のガス拡散層302とにより形成されている。
【0039】
図8に示すように、セパレータ2Sの他方の表面2cには、燃料ガスが流れる第2表面流路25(表面流路)が形成されている。第2表面流路25に対向するように、燃料極400がセパレータ2Sと膜3との間に配置されている。第2表面流路25を流れた燃料ガスは燃料極400の内部を流れる。燃料極400は、触媒を有する燃料極用の触媒層401と、ガス拡散機能および集電機能を有する燃料極用のガス拡散層402とにより形成されている。図8に示すように、セパレータ2Sと共に、燃料極400、イオン伝導性を有する膜3、酸化剤極300を厚み方向に積層させることにより、燃料電池100が構成されている。
【0040】
実施例1の場合と同様に、図8に示すように、第1表面流路21と第1貫通流路22との間に位置するように係合凹部4が形成されている。係合凹部4には連通路88を有するシーリング部材8が取り付けられている。
【0041】
そして、部分的に切除可能な高分子材料で形成されたイオン伝導性をもつ複数枚の膜3と、セパレータ貫通孔として機能する第1貫通流路22及び第2貫通流路26をもつ複数枚のセパレータ2とを厚み方向に積層し、積層体7(図8参照)を形成する。
【0042】
次に切徐工程を実施する。即ち、膜3に対して切除可能な切除手段として、切除工具300を用いる。切除工具300は、機械的なせん断力により膜3を部分的に切除可能な機械的切除力発生手段として機能する。切除工具300をセパレータ2の第1貫通流路22及び第2貫通流路26に矢印X1方向に挿入させる。これにより積層体7の積層方向(矢印X方向)に沿って積層体7に対して相対的に移動させる。この結果、図8に示すように、膜3の部分3rを切除工具300の刃300aにより貫通状態に部分的に切除する。これにより膜3を貫通する第1膜貫通流路31(シート部材貫通流路)を膜3に形成する。
【0043】
このようにすれば、膜3の第1膜貫通流路31とセパレータ2の第1貫通流路22とを精度良く逐一位置合わせする必要がない。同様に、膜3の第2膜貫通流路とセパレータ2の第2貫通流路とを精度良く逐一位置合わせする必要がない。故に、組み付け作業が容易化し、組み付け時間の短縮化に有利である。
【0044】
本実施例によれば、組み付け前の膜3のサイズはセパレータ2のサイズよりも大きく設定されており、組み付け前の膜3の端3fはセパレータ2の端2fよりも外側に位置している。このため切除工具300に一体的に取り付けられている刃300cにより、刃300aの作動と同時に、組み付け前の膜3の端3fを機械的なせん断力により切除する。なお刃300cと刃300aとを別体として設け、膜3の端3fを切除する工程と、第1膜貫通流路31及び第2膜貫通流路32を膜3に形成する工程とを時間的にずらして実行しても良い。
【0045】
(他の例)
上記した各実施例によれば、膜3又はセパレータ2を部分的に熱により切除可能なヒータを有する工具を用いても良い。更にレーザビーム又は電子ビーム等の高エネルギ密度ビームを照射して膜3又はセパレータ2を部分的に切除しても良い。上記した各実施例によれば、切除工具300の刃300cは刃300aと一体的に設けられており、膜3の端3fを切除すると同時に第1膜貫通流路31及び第2膜貫通流路32を膜3に形成するが、これに限らず、膜3のサイズが適切であれば、刃300cにより膜3の端3fを切除する操作を廃止しても良い。切除工具300は吸引孔300mを有するが、有していなくても良い。セパレータは樹脂製、カーボン製、金属製でも良く、要請される性能及びコストを考慮して選択する。セパレータが加湿装置に適用されるときには、導電性は必要とされないが、セパレータが燃料電池に適用するときには導電性を有することが好ましい。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明はガス流路形成装置に利用することができる。殊に、加湿装置、燃料電池に利用することができる。燃料電池としては、車両用、定置用、携帯用、電気機器用、電子機器用等の燃料電池に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】加湿装置の構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】セパレータの一方の表面を示す平面図である。
【図3】セパレータの他方の表面を示す平面図である。
【図4】切除工程を実施する前の加湿装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図5】切除工程を実施した後の加湿装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図6】実施例2に係り、切除工程を実施する前の加湿装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図7】実施例2に係り、切除工程を実施した後の加湿装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図8】実施例3に係り、切除工程を実施する前の燃料電池の要部を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1は加湿装置(ガス流路形成装置)、2はセパレータ、21は第1表面流路、22は第1貫通流路(セパレータ貫通孔)、25は第2表面流路、26は第2貫通流路(セパレータ貫通孔)、3は膜(シート部材)、31は第1膜貫通流路(シート部材貫通流路)、32は第2膜貫通流路(シート部材貫通流路)、100は燃料電池(ガス流路形成装置)、300は切除工具(切除手段,機械的切除力発生手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的に切除可能な材料で形成されたシート部材と、前記シート部材に積層されるセパレータとを用い、前記シート部材と前記セパレータとを積層して積層体を形成し、前記シート部材のうちの少なくとも一方の表面に対向する表面流路を前記シート部材と前記セパレータとで前記積層体の内部に形成する積層工程と、
前記シート部材に対して切除可能な切除手段を前記積層体の積層方向に沿って前記積層体に対して相対的に移動させることにより、前記表面流路に連通すると共に前記シート部材を厚み方向に貫通するシート部材貫通流路を前記シート部材に形成する切徐工程とを順に実施することを特徴とする積層型ガス流路形成装置の組付方法。
【請求項2】
シート部材と、前記シート部材に積層され部分的に切除可能な材料で形成されたセパレータとを用い、前記シート部材と前記セパレータとを積層して積層体を形成し、前記シート部材のうちの少なくとも一方の表面に対向する表面流路を前記シート部材と前記セパレータとで前記積層体の内部に形成する積層工程と、
前記セパレータに対して切除可能な切除手段を前記積層体の積層方向に沿って前記積層体に対して相対的に移動させることにより、前記表面流路に連通すると共に前記セパレータを厚み方向に貫通するセパレータ貫通流路を前記セパレータに形成する切徐工程とを順に実施することを特徴とする積層型ガス流路形成装置の組付方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記切除手段は、機械的切除力により前記シート部材を部分的に切除可能な機械的切除力発生手段、熱により前記シート部材を部分的に切除可能な熱発生手段、前記シート部材に照射される高エネルギ密度ビームのうちの少なくともいずれかであることを特徴とする積層型ガス流路形成装置の組付方法。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記シート部材は湿分保持可能な膜であり、前記表面流路は、前記シート部材の一方の表面に対向する前記第1表面流路と、前記シート部材の他方の表面に対向する第2表面流路とで形成されており、
前記第1表面流路及び前記第2表面流路のいずれか一方には高湿度ガスが流れ、前記第1表面流路及び前記第2表面流路のいずれか他方には高湿度ガスよりも相対的に湿度が低い低湿度ガスが流れる加湿装置に適用されていることを特徴とする積層型ガス流路形成装置の組付方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項において、前記シート部材はイオン伝導可能な膜であり、前記表面流路は、前記シート部材の一方の表面に対向する第1表面流路と、前記シート部材の他方の表面に対向する第2表面流路とで形成されており、
前記第1表面流路及び前記第2表面流路のいずれか一方には燃料が流れ、前記第1表面流路及び前記第2表面流路のいずれか他方には酸化剤ガスが流れる燃料電池に適用されていることを特徴とする積層型ガス流路形成装置の組付方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項において、前記切除工程を実施する前記セパレータ及び/又は前記シート部材には、前記セパレータ及び/又は前記シート部材の切除部分を切除容易化させる切除促進部が形成されていることを特徴とする積層型ガス流路形成装置の組付方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちのいずれか一項において、前記積層工程を経た前記積層体の前記シート部材は、前記セパレータの端よりも外側に位置する露出部分を有しており、前記切除工程では、前記露出部分を切除する露出部分切除操作を行うことを特徴とする積層型ガス流路形成装置の組付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−236780(P2006−236780A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49660(P2005−49660)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】