説明

積層材料の製造方法

【目的】液体紙容器の積層材料の製造工程において、内層側の積層フィルムの最下層のポリエチレン層に添加されブリーディングした添加剤に起因する、外層側の積層フィルムの紙層面との接着不良を改善し、また、押出しラミネート加工法で使用する接着層の合成樹脂として、積層材料の製造後のパージングが容易なポリエチレンを用いる。
【構成】液体紙容器の積層材料の製造工程において、内層側の積層フィルムの最上層のアルミニウム箔層(22)上にアンカー剤塗布層(21)を設け、この内層側の積層フィルム(20)のアンカー剤塗布層(21)面と、外層側の積層フィルム(10)の最下層の紙層面(13)とを、押出しラミネート加工法によりポリエチレンを製膜しながら、このポリエチレン層(30)を接着層として積層する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液体内容物を収容する液体紙容器の周壁を形成する積層材料の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】液体紙容器は、従来、清酒、牛乳、果汁飲料などの液体食品に広く使用されてきた。また、最近では、消費者の環境意識の高まりに伴って、環境問題を配慮したパッケージが求められるようになり、プラスチック容器などに代わって、液体洗剤、柔軟剤などや、さらには、エマルジョンタイプの接着剤などの非食品にも使用されるようになってきた。これらの液体容器の周壁を形成する積層材料の製造方法は、まず、外層側の紙層を含む積層フィルムと内層側のアルミニウム箔を含む積層フィルムを別個に作製し、次に、外層側の積層フィルムの最下層の紙層面と、内層側の積層フィルムの最上層のアルミニウム箔層面とを、押出しラミネート加工法により金属と接着性を有するエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)やアイオノマー(IO)などの合成樹脂を用いて、これらの製膜層を接着層として積層したものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来から最内層に用いられていた低密度ポリエチレン(LDPE)の他に、最近、液体紙容器の非食品分野への適用が活発になるにつれて、内容物に対する耐性(耐アルカリ性、耐酸性、耐浸透性など)が求められ、最内層に耐性の良好な線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレンやポリエチレンを含む共押出しフィルムなども用いられるようになってきた。これらのポリエチレンには、製膜時の加工適性を改善する目的で、スリップ剤や可塑剤などの添加物を添加することが多く、これらの添加剤は、経時によってフィルム表面にブリーディングしてくる。例えば、図2(a)及び(b)に示すアルミニウム箔を含む内層側の積層フィルムの場合に、アルミニウム箔層(51)/二軸延伸ポリエチレンテレフタレート層(52)/ポリエチレン層(53)構成の内層側の積層フィルム(50)の巻取り(150)を、保管して置くと、アルミニウム箔層(51)とポリエチレン層(53)が接触した状態となり、ポリエチレン層上にブリーディングした添加剤(54)によって、内側に巻かれた積層フィルム(50)のアルミニウム箔層(51)面が汚染されることがあった。アルミニウム箔層が汚染された内層側の積層フィルムを、押出しラミネート加工法により、金属と接着性のよいエチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)層やアイオノマー(IO)層などの樹脂を使用して、外層側の積層フィルムの最下層の紙層面に積層していた。しかし、アルミニウム箔層の表面の汚染度合いにより、接着性の点で問題が生じる場合があった。また、押出機に、エチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)やアイオノマー(IO)などの金属に対して接着性のある樹脂を使用したのち、他の樹脂に切り換える場合(パージング)には、どうしても、切り換えに非常に長い時間を必要としていた。
【0004】本発明は、上述の従来の問題点を解決したものであり、内層側の積層フィルムのポリエチレンに添加剤が添加されていても、エチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)やアイオノマー(IO)などのような金属と接着性を有する樹脂を使用することなく、また、押出しラミネート加工法により他の樹脂に切り換えが容易なポリエチレンを用いて、外層側の積層フィルムの最下層の紙層面と、内層側の積層フィルムの最上層のアルミニウム箔層面とを積層することを可能とした液体紙容器の積層材料の製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、液体紙容器の積層材料の製造工程において、図1(a)、(b)、(c)及び(d)に示すように、内層側の積層フィルム(20)の最上層のアルミニウム箔層(22)上にアンカー剤塗布層(21)を設け、この内層側の積層フィルム(20)のアンカー剤塗布層(21)面と、外層側の積層フィルム(10)の最下層の紙層(13)面とを、押出しラミネート加工法によりポリエチレンを製膜しながら、このポリエチレン層(30)を接着層として積層することを特徴とする積層材料(40)の製造方法である。
【0006】上述のアンカー剤塗布層は、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン、アルキルチタネート、ポリウレタンなどのアンカー剤を用いグラビア印刷法、ロールコーターなどにより形成するものである。
【0007】
【作用】本発明の液体紙容器の積層材料の製造工程においては、内層側の積層フィルムの最上層のアルミニウム箔層上には、アンカー剤塗布層が設けられているため、内層側の積層フィルムが巻取り状で保管されているときに、最下層のポリエチレン層に添加されていたスリップ剤や可塑剤などの添加物が表面にブリーディングしてきても、このブリーディングした添加物が、当接する内側に巻かれた内層側の積層フィルムのアルミニウム箔層と直接に接触することがなく、アルミニウム箔層面がブリーディングした添加剤によって汚染されることが防げる。そして、外層側の積層フィルムの紙層と内層側の積層フィルムの添加剤の影響を受けにくいアンカー剤塗布層とが、押出しラミネート加工法でポリエチレンより接着されるため、外層側の積層フィルムと内層側の積層フィルムとの接着性が良好となる。
【0008】さらに、外層側の積層フィルムと内層側の積層フィルムとは、押出しラミネート加工法により、切り換えが容易なポリエチレンを製膜しながら、このポリエチレン層(30)を接着層として積層するため、積層材料の製造後の押出機の樹脂の切り換え(パージング)が、従来のエチレンメタクリル酸コポリマーをポリエチレンに切り換えた場合に要する時間と比較すると、極めて短時間で、容易となる。
【0009】
【実施例】まず、坪量320g/m2 の板紙上に、押出しラミネート加工法で20μm厚の低密度ポリエチレン層を形成し、この低密度ポリエチレン層上にUVインキで文字と絵柄をオフセット印刷法で印刷して、図1(b)に示す印刷層(11)/低密度ポリエチレン(12)/紙層(13)構成の外層側の積層フィルム(10)を作製した。これとは別個に、9μm厚のアルミニウム箔と12μm厚の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムとを、ドライラミネート加工法でポリウレタン系接着剤を用いて積層し、さらに、この二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層面に、押出しラミネート加工法で60μm厚の低密度ポリエチレン層を形成し、そして、アルミニウム箔層面上にアンカー剤ポリエチレンイミンをグラビア印刷法で塗布して、図1(c)に示すアンカー剤塗布層(21)/アルミニウム箔層(22)/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層(23)/低密度ポリエチレン層(24)構成の内層側の積層フィルム(20)を作製した。これら外層側及び内層側の積層フィルム(10及び20)は、それぞれロール状に巻取り保管した。
【0010】次に、図1(a)に示すように、前述した印刷層/低密度ポリエチレン層/紙層構成の外層側の積層フィルム(10)を巻出部(110)に装填し、アンカー剤塗布層/アルミニウム箔層/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層/低密度ポリエチレン層構成の内層側の積層フィルム(20)を巻出部(120)に装填し、この内層側の積層フィルム(20)の最上層のアンカー剤塗布層面と、外層側の最下層の紙層面とを、押出しラミネート加工装置(100)により、Tダイ(130)から押し出される溶融ポリエチレンを製膜しながら、このポリエチレン層(30)を接着層として積層して、図1(d)に示す印刷層(11)/低密度ポリエチレン層(12)/紙層(13)/ポリエチレン層(30)/アンカー剤塗布層(21)/アルミニウム箔層(22)/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層(23)/低密度ポリエチレン層(24)構成の本実施例の液体紙容器の積層材料(40)を作製した。本実施例の積層材料の製造工程において、外層側の積層フィルムと内層側の積層フィルムとの接着性に関するトラブルは、全く発生しなかった。また、本実施例の積層材料を作製後、押出機の樹脂をポリエチレンからグレードの異なるポリエチレンに切り換えたが、従来のエチレンメタクリル酸コポリマーをポリエチレンに切り換えに要した時間を比較すると、4分の1の時間で切り換えが完了した。
【0011】さらに、前述の本実施例の液体紙容器の積層材料を用いて、打抜加工によりブランク板を作製し、このブランク板をサック貼り機で背貼りしてスリーブを作製し、このスリーブを充填機に装填して、口栓付け工程、製箱工程、内容物充填工程、密封工程を経て、液体紙容器を作製したが、外層側の積層フィルムと内層側の積層フィルムとの接着性に関するトラブルは、全く発生しなかった。
【0012】
【発明の効果】本発明の積層材料の製造方法を用いて、液体紙容器の積層材料を作製すると、内層側の積層フィルムの上層のアルミニウム箔層は、アンカー剤塗布層で覆われているため、巻取り状で保管されているときに、最下層のポリエチレン層に添加されていた添加物が表面にブリーディングしてきても、アルミニウム箔層と接触することがなく、アルミニウム箔層面がブリーディングした添加剤によって汚染されることがない。そして、外層側の積層フィルムの紙層と内層側の積層フィルムのアンカー剤塗布層とが、ポリエチレン層で接着されるため接着性が良好である。
【0013】また、外層側の積層フィルムと内層側の積層フィルムとの積層は、押出しラミネート加工法により、他の合成樹脂と切り換えが容易なポリエチレンを用いて行われるため、積層材料の製造後の押出機の樹脂の切り換え(パージング)が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の一実施例の液体紙容器の積層材料の押出しラミネート加工装置による製造工程を示す説明図であり、(b)は、外層側の積層フィルムの構成を示す断面図であり、(c)は、内層側の積層フィルムの構成を示す断面図であり、(d)は、積層材料の構成を示す断面図である。
【図2】(a)は、従来の内層側の積層フィルムの巻取りの側面図であり、(b)は、そのA部分の拡大図で、内層側の積層フィルムの最下層のポリエチレン層の添加物がブリーディングして、最上層のアルミニウム箔層に付着する状態を示す説明図である。
【符号の説明】
10……外層側の積層フィルム
11……印刷層
12,30……低密度ポリエチレン層
13……紙層
20,50……内層側の積層フィルム
21……アンカー剤塗布層
22,51……アルミニウム箔層
23,52……二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層
24,53……線状低密度ポリエチレン層
40……積層材料
54……ブリーディングした添加剤
100……押出しラミネート加工装置
110……外層側の積層フィルム巻出部
120……内層側の積層フィルム巻出部
130……Tダイ
140……積層材料巻取部
150……内層側の積層フィルム巻取り

【特許請求の範囲】
【請求項1】液体紙容器の積層材料の製造工程において、内層側の積層フィルムの最上層のアルミニウム箔層上にアンカー剤塗布層を設け、この内層側の積層フィルムのアンカー剤塗布層面と、外層側の積層フィルムの最下層の紙層面とを、押出しラミネート加工法によりポリエチレンを製膜しながら、このポリエチレン層を接着層として積層することを特徴とする積層材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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