説明

積重ね板紙状材移送装置

【課題】各種の作業テーブルとパレットとの間の移動が、大きな労力を要することなく半自動的になされる積重ね薄板材移送装置を提供する。
【解決手段】ボール紙、段ボール等の薄板材を多数積重ねた状態の積重ね薄板材3を、作業テーブルBと搬送用のパレットAとの間を相互に移動させる積重ね薄板材移送装置であって、前記パレットA及び作業テーブルBのそれぞれの上面に、多数の微細孔を上下に貫通開口させた多孔板11,41と、各多孔板の下面に備えた圧力空気導入室12,42とを有する空気浮上ユニットを備え、パレットA上と作業テーブルBの各多孔板11,41から圧力空気を噴射させることによって、その空気圧にて積重ね薄板材3を浮上させた状態で、パレットAと作業テーブルBの相互間を移動可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール紙や段ボール等の薄板材を使用した包装用箱の印刷や型抜き等の作業工程において、薄板材を多数積重ねた状態で、各種の作業テーブルと搬送用のパレットとの相互間を移動させるための積重ね薄板材移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボール紙や段ボールを原料とした包装用箱等の製品の少ロット生産においては、例えば、印刷、切断、検査、折り畳み等の各工程が、それぞれの専用の小型機械によってなされ、各工程間における中間製品の搬送は、所定枚数の薄板材を一纏めにして積み上げた積重ね薄板材を単位とてなされ、各種作業工程における所定の作業テーブル上に積重ね薄板材を載せ、作業終了後に作業テーブル上からパレットやコンベア上に載せ換えて次工程に移動させる方法がとられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、各種作業工程における作業テーブルと移送のためのパレットとの間の載せ替え作業は、多数の薄板材を積み重ねた状態で移動させるものであるため、水平方向に滑らせようとすると、薄板材と作業テーブルとの間の摩擦係数が薄板材相互間の摩擦係数より大きいため、最低部の薄板材が残ることとなり、全体の同時移動が困難となる。
【0004】
このため、このような移し替えに際しては、手作業で一纏めの積重ね薄板材を持ち上げなければならず、作業労力を多く要し、しかも積重ね状態が崩れ易く、移し替え後に整理し直さなければならないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来の問題に鑑み、各種の作業テーブルとパレットとの間の移動が、大きな労力を要することなく半自動的になされる積重ね薄板材移送装置の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、ボール紙、段ボール等の薄板材を多数積重ねた状態の積重ね薄板材を、作業テーブルと搬送用のパレットとの間を相互に移動させる積重ね薄板材移送装置であって、前記パレット及び作業テーブルのそれぞれの上面に、多数の微細孔を上下に貫通開口させた多孔板と、該多孔板の下面に備えた圧力空気導入室とを有する空気浮上ユニットを備え、前記パレット上と作業テーブル上の各多孔板から圧力空気を噴射させることによって、その空気圧にて前記積重ね薄板材を浮上させた状態で、該パレット上と作業テーブル上の相互間を移動可能にしたことにある。
【0007】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加えも、前記パレットには、その上に乗せられた積重ね薄板材の外周縁部を押圧して各薄板材の周縁を上下方向に揃える整頓装置を備えたことにある。
【0008】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記パレットは、前記作業テーブルに近接したテーブル接近位置と、該作業テーブルから離れて該パレット上に積重ね薄板材を積み下ろしする積重ね薄板材積み下ろし位置との間を移動可能とし、前記テーブル接近位置にて前記空気浮上ユニットが作動されるようにするとともに、前記積重ね薄板材積み下ろし位置に、前記積重ね薄板材をパレットに対し積み下ろしするハンドリングロボットを備えたことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る積重ね薄板材移送装置においては、ボール紙、段ボール等の薄板材を多数積重ねた状態の積重ね薄板材を、作業テーブルと搬送用のパレットとの間を相互に移動させる積重ね薄板材移送装置であって、前記パレット及び作業テーブルのそれぞれの上面に、多数の微細孔を上下に貫通開口させた多孔板と、該多孔板の下面に備えた圧力空気導入室とを有する空気浮上ユニットを備え、前記パレット上と作業テーブル上の各多孔板から圧力空気を噴射させることによって、その空気圧にて前記積重ね薄板材を浮上させた状態で、該パレット上と作業テーブル上の相互間を移動可能にしたことにより、作業テーブルと積重ね薄板材の最下部の薄板材との間の摩擦抵抗がゼロの状態となり、作業者のわずかな押し作業によって積重ね薄板材全体がパレット対作業テーブル間をスムーズに移動することとなり、従来困難であった、最下部の薄板材を含めた積重ね薄板材全体の移動がスムーズ且つ容易になされる。
【0010】
また、本発明は、前記パレットに、その上に乗せられた積重ね薄板材の外周縁部を押圧して各薄板材の周縁を上下方向に揃える整頓装置を備えることによって、作業テーブル上では大まかな状態で積み上げられた積重ね薄板材が、パレット上で空気浮上され状態であるため、最下部の薄板材を含めた上下方向の整頓が容易におこなわれ、自動的にきれいに揃えられた状態で次工程に送り出すことができる。
【0011】
更に、本発明では、前記パレットは、前記作業テーブルに近接したテーブル接近位置と、該作業テーブルから離れて該パレット上に積重ね薄板材を積み下ろしする積重ね薄板材積み下ろし位置との間を移動可能とし、前記テーブル接近位置にて前記空気浮上ユニットが作動されるようにするとともに、前記積重ね薄板材積み下ろし位置に、前記積重ね薄板材をパレットに対し積み下ろしするハンドリングロボットを備えることにより、前工程からの搬入及び次工程への搬出が、作業者の労力を要することなく、容易且つ確実に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る薄板材移送装置の全体の概略を示す縦断面図である。
【図2】同上のハンドリングロボットを除いた状態の平面図である。
【図3】図1に示す装置のバケットとハンドリングユニット部分を示す斜視図である。
【図4】図1に示す装置のバケット部分の平面図である。
【図5】図1に示す装置において、作業テーブルとパレットとの間を積重ね薄板材が移動している状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る積重ね薄板材移送装置の実施の形態を図面に示した実施例に基づいて説明する。
【0014】
この実施例は、ボール紙からなる薄板材をもって包装用箱を形成する場合などにおける作業工程間の積重ね薄板材搬送装置を示しており、図において、1はメインコンベアであり、このメインコンベア1上には、搬送バケット2が搭載されて循環している。搬送バケット2は、搬送しようとする積重ね薄板材3の平面形状に合わせた形状、本例では長方形をした底板2aと、その四隅に立設した支柱2bとから構成されており、支柱2bは、断面がL型をしており、L型の互いに直行する内側面が、前記長方形の四隅部を構成する配置に立設されている。
【0015】
底板2aにはその左右の面に、凹陥部2cが2箇所ずつ形成されており、この凹陥部2c内を後述するハンドリングロボット20の載荷爪26が上昇できるようになっている。
【0016】
メインコンベア1は、搬送バケット2を所定のステーションで停止させるようになっており、ステーションと作業テーブルBとの間には、両者間にて復動作するスライド装置4が備えられている。
【0017】
作業テーブルBは、包装箱の組み立て前の薄板材に対する印刷ミスを検査する検査工程等、積重ね薄板材3を単位として作業の開始時及び終了時に、該積重ね薄板材を載置するものであり、作業テーブルBの上で行う作業のみならず、印刷、裁断等の作業機に積重ね薄板材を供給するための作業テーブル等各種の作業テーブルを含む。
【0018】
スライド装置4は、2本のレール5,5とその上に乗せたパレットAを往復移動させる爪付チェーン6及び該チェーン6を駆動させるモータ7を備えた駆動装置とから構成されており、パレットAをメインコンベア1に近接した位置と、作業テーブルBに近接した位置との間を往復移動させるようになっている。
【0019】
パレットAには、空気浮上ユニット10が備えられている。この空気浮上ユニット10は、パレットAの上面を構成する多孔板11と、該多孔板11の下の圧力空気導入室12とから構成されている。多孔板11は、微細な連続空隙を全域にわたってほぼ均一な配置に有するセラミック板が使用され、圧力空気導入室12は、上側が解放した平皿状容器13の上側解放部を多孔板11によって閉鎖することによって構成されている。
【0020】
平皿状容器13の底板には、空気導入口14が形成され、これにコンプレッサーからの送気用ダクト15を連結して高圧空気を導入させるようになっている。この送気用ダクト15は、スライド装置4によってパレットAが作業テーブル近接側の停止位置に移動された時、嵌合部15aが上昇して空気導入口14に嵌めあわされるとともに、パレットAがメインコンベア1側に移動される際には嵌合部15aは降下して空気導入口14から外れるようになっている。
【0021】
パレットAには、前述したバケット2と同様に前後面に、凹陥部16が2箇所ずつ形成されており、この凹陥部16内を後述するハンドリングロボット20の載荷爪21が昇降できるようになっている。
【0022】
ハンドリングロボット20は、メインコンベア1のステーションとスライド装置4のメインコンベア1側端部の上方にまたがらせて備えたレール21上を往復移動する水平移動台22と、この水平移動台22から上下動可能に垂下された昇降軸23と、昇降軸23の下端に支持されたハンドリングユニット24とから構成されており、ハンドリングユニット24には、2対の掴みアーム25、25が備えられ、各掴みアーム25,25下端対向面に水平配置に載荷爪26,26が備えられている。掴みアーム25,25は、その下端を互いに接近離反方向に往復移動されるようになっている。
【0023】
パレットAには、多孔板11上に載せられた積重ね薄板材3を上下に揃える整頓装置が備えられている。この整頓装置は、多孔板11上に載せられた積重ね薄板材3の前後左右の面をそれぞれ別々の前後左右から押し板30a,30b,30c,30dを同時に押し付けて、各薄板材が上下方向に揃うように整頓するものである。
【0024】
左右及び後部の押し板30a,30b,30cは、それぞれパレット本体から後方及び左右に突設した張り出し支持部31b,31c,31dに支持させたエアシリンダー32b,32c,32dにより動作されるようになっている。
【0025】
また、前部の押し板30aは、上下に移動する昇降板33に支持させたエアシリンダー32aにより動作されるようになっている。昇降板33は、パレットAの前側両側部に立設した門型支柱34に対して上下動自在に支持されており、エアシリンダー35によって上下に移動されるようになっている。
【0026】
作業テーブルBには、パレットAと同様の空気浮上ユニット40が備えられている。この空気浮上ユニット40は、作業テーブルBの上面を構成する多孔板41と、多孔板41の下面に備えた圧力空気導入室42とから構成されており、多孔板41は、微細な連続空隙を全域にわたってほぼ均一な配置に有するセラミック板が使用され、圧力空気導入室40は、上側が解放した平皿状容器43の上側解放部を多孔板41によって閉鎖することによって構成されている。
【0027】
平皿状容器43の底板には、空気導入口44が形成され、これにコンプレッサーからの送気用ホース45を連結して高圧空気を導入させるようになっている。
【0028】
このように構成される装置の動作について説明すると、所定枚数の薄板材を積み重ねた積重ね薄板材3は、メインコンベア1上を搬送バケット2内に収容されて送られ、ステーションで停止する。この状態でハンドリングロボット20によってバケット2内の積重ね薄板材3をスライド装置上のパレットA上に移し替える。
【0029】
この時のハンドリングロボット20の動作は、両掴みアーム25,23が、両者を互いに離反する側に動作された状態で降下し、載荷爪21がバケット2の底面より低い位置に達した時に降下が停止され、両掴みアーム25,23の下端が接近する側に動作される。これによって載荷爪21は、凹陥部2c下で、積重ね薄板材3下に入り込む。この状態で掴みアーム25,23が上昇し、載荷爪21上に積重ね薄板材3を載せた状態で上昇する。
【0030】
積重ね薄板材3がバケット2外まで上昇した後、自走台車22が移動し、積重ね薄板材3をスライド装置4上に移動させ、ハンドリングユニット24を降下させることによってパレットA上に載せ替える。
【0031】
ハンドリングユニット24は、載荷爪26がパレットAの上面より低い位置まで降下された状態で停止し、両掴みアーム25,25の下端が離反される側に動作されて上昇する。
【0032】
この時、パレットAはスライド装置4のメインコンベア側の端部上にあり、各押し板30a〜30dは後退した状態となっている。
【0033】
パレットAに積重ね薄板材3が搭載されると、スライド装置4が作動し、パレットAをスライド装置4の作業テーブル側端部に移動させて停止する。この状態で作業者が両空気浮上ユニット10,40に圧力空気を送るための操作を行う。これによってパレットAと作業テーブルBの上面の多孔板11,41より圧力空気が噴射され、積重ね薄板材3を浮上させる。これによって積重ね薄板材3の水平方向の移動抵抗がなくなり、作業者が作業テーブルB側に軽く押すことによって積重ね薄板材3全体が作業テーブルB側に移動する。
【0034】
このようにして作業テーブルB上に移動させ、空気浮上ユニット10,40への圧力空気の供給を停止させ、該作業テーブル3上における検査等の所定の作業を行った後、各薄板材を作業テーブルBの空気浮上ユニット上に大まかな状態に積み上げる。
【0035】
しかる後、作業者が両空気浮上ユニット10,40に圧力空気を送るための操作を行う。これによってパレットAと作業テーブルBの上面の多孔板11,41より圧力空気が噴射され、積重ね薄板材3を浮上される。この状態で積重ね薄板材3を作業者がパレットA側に軽く押すことによって積重ね薄板材3全体がパレットA側に移動する。
【0036】
積重ね薄板材3全体がパレットA側に移動させた状態で、パレットAの空気浮上ユニット10に圧力空気を供給しつつ、各押し板30a〜30dを積重ね薄板材3の前後左の面に押し当てる。これによって大まかな状態で積み上げられていた積重ね薄板材3が、各薄板材が上下方向に揃った状態に整頓される。
【0037】
この整頓工程を経た後、スライド装置4によってパレットAをメインコンベア側端部に移動させ、前述したハンドリングロボット20によってメインコンベア1上の搬送バケット2に積み変え、次工程のステーションに送る。
【符号の説明】
【0038】
A パレット
B 作業テーブル
1 メインコンベア
2 搬送バケット
2a 底板
2b 支柱
2c 凹陥部
3 積重ね薄板材
4 スライド装置
5 レール
6 爪付チェーン
7 モータ
10 空気浮上ユニット
11 多孔板
12 圧力空気導入室
13 平皿状容器
14 空気導入口
15 送気用ホース
16 凹陥部
20 ハンドリングロボット
21 レール
22 水平移動台
23 昇降軸
24 ハンドリングユニット
25 掴みアーム
26 載荷爪
30a,30b,30c,30d 押し板
31a,31b,31c 張り出し支持部
32a,32b,32c エアシリンダー
33 昇降板
34 門型支柱
35 エアシリンダー
40 空気浮上ユニット
41 多孔板
42 圧力空気導入室
43 平皿状容器
44 空気導入口
45送気用ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール紙、段ボール等の薄板材を多数積重ねた状態の積重ね薄板材を、作業テーブルと搬送用のパレットとの間を相互に移動させる積重ね薄板材移送装置であって、
前記パレット及び作業テーブルのそれぞれの上面に、多数の微細孔を上下に貫通開口させた多孔板と、該多孔板の下面に備えた圧力空気導入室とを有する空気浮上ユニットを備え、
前記パレット上と作業テーブル上の各多孔板から圧力空気を噴射させることによって、その空気圧にて前記積重ね薄板材を浮上させた状態で、該パレット上と作業テーブル上の相互間を移動可能にしたことを特徴としてなる積重ね薄板材移送装置。
【請求項2】
前記パレットには、その上に乗せられた積重ね薄板材の外周縁部を押圧して各薄板材の周縁を上下方向に揃える整頓装置を備えてなる請求項1に記載の積重ね薄板材移送装置。
【請求項3】
前記パレットは、前記作業テーブルに近接したテーブル接近位置と、該作業テーブルから離れて該パレット上に積重ね薄板材を積み下ろしする積重ね薄板材積み下ろし位置との間を移動可能とし、前記テーブル接近位置にて前記空気浮上ユニットが作動されるようにするとともに、前記積重ね薄板材積み下ろし位置に、前記積重ね薄板材をパレットに対し積み下ろしするハンドリングロボットを備えてなる請求項1又は2に記載の積重ね薄板材移送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86886(P2013−86886A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226315(P2011−226315)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(511248168)日本産業機械株式会社 (2)