説明

空冷式蒸気復水装置

【課題】外気導入部から導入された外気に噴霧された噴霧水の濃淡をなくすことができる空冷式蒸気復水装置を提供すること。
【解決手段】外気導入部1aから蒸気復水器室1に導入された外気を送風機5によって蒸気復水器2に吹き付けて空冷する空冷式蒸気復水装置において、外気導入部1aに、複数の通気孔を均一に配した空気整流部材3を配置し、この空気整流部材3のすべての通気孔の出口部分に、複数のノズルチップ4aを一定間隔で配した水噴霧ノズル4を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン等からの排気蒸気を通す蒸気復水器を空冷して排気蒸気を復水させる空冷式蒸気復水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン等からの排気蒸気を復水させる空冷式蒸気復水装置として、特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
図5は、この特許文献1の空冷式蒸気復水装置を示す断面図である。この空冷式蒸気復水装置は、蒸気復水器室21に設置された蒸気復水器22と、蒸気復水器室21に冷却用空気を供給する空気通路23とを備える。空気通路23にはその外気導入部23aから導入された外気に水を噴霧する水噴霧ノズル24が設けられている。水噴霧によって湿度と温度が調節された外気(冷却用空気)は、送風機25によって蒸気復水器室21内の蒸気復水器22に吹き付けられ、これによって蒸気復水器22が冷却され、蒸気が復水する。
【0004】
このように特許文献1の空冷式蒸気復水装置は、水の蒸発潜熱を利用して外気を冷却し冷却用空気とするもので、外気導入部から導入された外気の冷却により、冷却用空気と蒸気との温度差をとれるようにし、蒸気復水器の伝熱面積の縮小化や夏頃の高温時の冷却能維持を狙ったものである。
【0005】
しかし、このような空冷式蒸気復水装置において、外気導入部での外気の流入速度及び流入量は、外部の気流や導入後の流路の影響を受け、一定でない。このため、外気(冷却用空気)中において水噴霧ノズルから噴霧した噴霧水(ミスト)の濃淡が発生し、全体として噴霧水が十分に蒸発せず、送風機周りの結露や腐食が生じることがあった。また、外気(冷却用空気)中において噴霧水の濃淡があると、その蒸発効率が悪いため、水の消費量が大となる問題もあった。
【0006】
また、例えばごみ処理施設における蒸気タービンの排気蒸気量は常に変動し、一方、外気条件によって蒸発可能な噴霧水量も変動する。このような条件変動に対応できないと、噴霧水過多による送風機周りの結露の発生や、噴霧水不足による排気蒸気の真空度低下(圧力上昇)が発生して蒸気タービン発電量が低下するといった問題が生じる。
【0007】
また、例えばごみ処理施設には蒸気タービンによる発電設備の他、冷却水を必要とする多くの機器が設置されており、冷却排水の再冷却のため、専用の冷却塔が別個に設置されている。この冷却塔も外気により蒸発冷却を行うものであり、基本的な冷却原理は上述の空冷式蒸気復水装置と同じであるが、各種冷却排水の再冷却には上述のとおり冷却塔が別個に設置されており、冷却塔の設置スペースの確保や、冷却塔からの白煙発生及び白煙の結露による周囲の濡れ対策が個別に必要となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−142067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、外気導入部から導入された外気に噴霧された噴霧水の濃淡をなくすことができる空冷式蒸気復水装置を提供することにある。
【0010】
他の課題は、排気蒸気量や外気条件の変動に対応して、適切な量の水を噴霧することができる空冷式蒸気復水装置を提供することにある。
【0011】
さらに他の課題は、他の機器で使用される冷却水用の水を冷却する冷却塔を兼用した空冷式蒸気復水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、外気導入部から蒸気復水器室に導入された外気を送風機によって蒸気復水器に吹き付けて空冷する空冷式蒸気復水装置において、前記外気導入部に、複数の通気孔を均一に配した空気整流部材を配置し、この空気整流部材のすべての通気孔の出口部分に、複数のノズルチップを一定間隔で配した水噴霧ノズルを配置したことを特徴とするものである。
【0013】
このように本発明では、外気導入部に空気整流部材を配置したことで、外気導入部から導入された外気を整流して均一な流れとすることができる。さらに、空気整流部材のすべての通気孔の出口部分に水噴霧ノズルを配置したことで、整流された外気に均一に水を噴霧することができ、噴霧水の濃淡を実質的になくすことができる。したがって、噴霧水の蒸発効率が向上し、その噴霧水を完全に蒸発させることができるとともに、送風機周りの結露を防止することができる。
【0014】
本発明において、空気整流部材としては、空気導入口と均一に配した複数の通気孔とを有するダクトサイレンサーを使用することができる。
【0015】
また、本発明においては、空気整流部材のすべての通気孔の出側部分に配置した水噴霧ノズルのそれぞれに遮断弁を設けるとともに、蒸気復水器の入口部分の真空度、及び送風機の入口部分の温湿度に応じて遮断弁を操作し、水噴霧に使用する水噴霧ノズルの本数を増減させる制御装置を設けることができる。
【0016】
このように、噴霧水量を増減させる場合、水噴霧ノズル1本あたりの噴霧水量を増減させるのではなく、水噴霧ノズルの本数を増減させることで、噴霧水の粒径等の噴霧状態に影響を及ぼす噴霧圧力を変更することなく、噴霧水量を増減させることができる。
【0017】
この噴霧水量(水噴霧ノズルの本数)の増減は、蒸気復水器の入口部分の真空度、及び送風機の入口部分の温湿度に応じて遮断弁を操作することによって行う。具体的には、蒸気復水器の入口部分の真空度、つまり蒸気タービン等の排気蒸気真空度が目標値より高ければ水噴霧ノズルの本数を減じる。また、蒸気復水器の入口部分の真空度が低下しても、送風機の入口部分の空気の相対湿度が高ければ、これ以上の噴霧水量増は空気冷却に寄与しないので水噴霧ノズルの本数は増加させない。
【0018】
このように、蒸気復水器の入口部分の真空度と送風機の入口部分の温湿度とのバランスに応じて水噴霧ノズルの本数を増減させることで、常に適正な量の水を噴霧することができる。
【0019】
また、本発明では、送風機を収容するケーシング内に冷却水用伝熱管を配置し、この冷却水用伝熱管に水を導入してその水を冷却することもできる。このように、冷却水用伝熱管を配置することで、他の機器で使用する冷却水用の水を冷却することができ、別途プラント機器冷却用に冷却塔を設置する必要がなくなり、効率的な運転ができ、かつ冷却塔からの白煙発生等の問題も解消できる。
【0020】
なお、一般的に冷却水用伝熱管による冷却水の熱交換量は、蒸気復水器による熱交換量の1/20程度であり、ほとんど蒸気復水器の冷却性能に影響することはない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、空冷式蒸気復水装置において外気導入部から導入された外気に噴霧された噴霧水の濃淡をなくすことができる。したがって、噴霧水の蒸発効率が向上し、その噴霧水を完全に蒸発させることができるとともに、送風機周り等の結露を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の空冷式蒸気復水装置の第1実施例を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】水噴霧ノズルの制御系統を示す説明図である。
【図4】本発明の空冷式蒸気復水装置の第2実施例を示す断面図である。
【図5】従来の空冷式蒸気復水装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の空冷式蒸気復水装置の第1実施例を示す断面図、図2は、図1のA−A断面図である。
【0025】
図1に示すように、蒸気復水器室1に蒸気復水器2が設置されている。蒸気復水器2はその上部に蒸気分配管2aを有し、この蒸気分配管2aに蒸気タービン等の排気蒸気が導入される。排気蒸気は、蒸気分配管2aから分岐する複数の復水管(フィンチューブ)2bに分配され、復水管2bが空冷されることによって冷却され復水する。その復水は、各復水管2bの下部に接続された復水集合管2cに流れ込み、蒸気復水器室1の外に排出される。
【0026】
復水管2bを空冷するために、蒸気復水器室1の下部に設けた外気導入部1aから外気が導入される。導入された外気は、外気導入部1aに配置された空気整流部材3によって整流され、整流された外気に、水噴霧ノズル4のノズルチップ4aから水が噴霧される。水噴霧によって湿度と温度が調節された外気(冷却用空気)は、送風機5によって蒸気復水器2の各復水管2bに吹き付けられ、これによって各復水管2bが空冷される。なお、外気は送風機5が稼働することによって、外気導入部1aから自然に吸い込まれて蒸気復水器室1内に導入される。
【0027】
図2に示すように、空気整流部材3には複数の通気孔3aが均一に設けられており、外気導入部1aから導入された外気は各通気孔3aに分配され、各通気孔3aにおける通気速度及び通気量がほぼ均一となるように整流される。例えば、各通気孔3aにおける通気速度は7〜10m/s程度である。なお、空気整流部材3としては空気導入口と上記のような通気孔とを有するダクトサイレンサーを使用することができる。
【0028】
空気整流部材3の通気孔3aの出口部分には、そのすべてに水噴霧ノズル4が配置されている。それぞれの水噴霧ノズル4には、複数のノズルチップ4aが一定間隔(等間隔)で配置されている。ノズルチップ4aから噴霧される噴霧水の粒径は、20〜30μm程度とすることが好ましい。
【0029】
このように、外気導入部1aに空気整流部材3を配置したことで、外気導入部1aから導入された外気は空気整流部材3によって整流され均一な流れとなる。さらに、空気整流部材3のすべての通気孔3aの出口部分に、複数のノズルチップ4aを一定間隔で配した水噴霧ノズル4を配置したことで、通気孔3a毎に噴霧水の濃淡はなく一様となり、蒸発負荷も一様となる。したがって、噴霧水の蒸発効率が向上し、噴霧水は送風機5に達するまでに蒸発し、送風機5周りの結露発生を防止できる。また、外気導入部1aから導入された外気は、噴霧水の均一かつ確実な蒸発によって一様に冷却され、冷却効率も向上する。具体的には、噴霧水を確実に蒸発させることで、例えば夏場の気温35℃、相対湿度60%の条件下では、導入した外気の温度を約5℃低下させることができる。
【0030】
図3は、水噴霧ノズル4の制御系統を示す。噴霧用の水は、水タンク6からストレーナ7を経由してポンプ8によってノズルヘッダ9に供給され、各水噴霧ノズル4に供給される。ポンプ8の吐出圧力は4〜6MPaと高圧が必要で、一般的にはプランジャポンプが使用される。このポンプ8の吐出圧力は一次圧力調節弁10で一定に調節される。
【0031】
各水噴霧ノズル4から噴霧される噴霧水の平均粒径を20〜30μmとするには、ポンプ8の吐出圧力を4〜6MPaの高圧に一定に保つ必要があり、各水噴霧ノズル4からの噴霧水量を減少させるためにポンプ8の吐出圧力を低下させると噴霧水の粒径が大きくなり、その蒸発効率が低下する。
【0032】
したがって、本実施例では、噴霧水量を増減させる場合、水噴霧ノズル1本あたりの噴霧水量を増減させるのではなく、使用する水噴霧ノズルの本数を増減させるようにしている。このために各水噴霧ノズル4に遮断弁11を設けている。
【0033】
使用する水噴霧ノズル4の本数は、蒸気復水器2の入口部分の真空度、すなわち蒸気タービン等の排気蒸気の真空度と、送風機5の入口部分の温湿度とによって決定される。
【0034】
具体的には、蒸気復水器2の入口部分の真空度(蒸気タービン等の排気蒸気の真空度)が低下した場合は、制御装置12が遮断弁11を操作し、使用する水噴霧ノズル4の本数を増加させる。使用する水噴霧ノズル4が増加すると噴霧水量が増加して、導入された外気の温度が低下するとともに、送風機5の入口部分の相対湿度が上昇するが、蒸発効率上、この相対湿度は上限が90〜95%となるように噴霧水量を設定する。
【0035】
一方、蒸気復水器2の入口部分の真空度(蒸気タービン等の排気蒸気の真空度)が目標値より高い場合は、使用する水噴霧ノズルの本数を減少させる。
【0036】
なお、上述した水噴霧ノズル4の増減は、使用する水噴霧ノズル4の配置の均一性を損なわないような形で行う。
【0037】
以上のように、噴霧水量を増減させる際に使用する水噴霧ノズル4の本数を増減させることで、ポンプ8の吐出圧力(噴霧圧力)を変化させる必要がない。したがって、噴霧水の粒径等、噴霧状態に悪影響を与えることなく噴霧水量を増減させて噴霧水量を常に適正な範囲とすることができる。その結果、噴霧水は送風機周り等に結露することなく完全に蒸発する。
【実施例2】
【0038】
図4は、本発明の空冷式蒸気復水装置の第2実施例を示す断面図である。この実施例は、上述の第1実施例に、他の機器で使用された冷却排水を冷却して再度冷却水として使用するための構成を付加したものである。
【0039】
具体的には、送風機5を収容するケーシング5a内に冷却水用伝熱管(フィンチューブ)13を配置し、この冷却水用伝熱管13に冷却排水を導入して冷却するようにしたものである。
【0040】
このように、冷却水用伝熱管13で他の機器の冷却排水を冷却可能とすることで、別途プラント機器冷却用に冷却塔を設置する必要がなくなり、効率的な運転ができ、かつ冷却塔からの白煙発生等の問題も解消できる。
【0041】
なお、冷却水用伝熱管13には、水噴霧ノズル4からの水噴霧により湿球温度近くまで冷却された冷却用空気が接触するので、少ない伝熱面積で冷却可能であり、送風機5の送風抵抗に与える影響は小さい。
【符号の説明】
【0042】
1 蒸気復水器室
1a 外気導入部
2 蒸気復水器
2a 蒸気分配管
2b 復水管(フィンチューブ)
2c 復水集合管
3 空気整流部材
3a 通気孔
4 水噴霧ノズル
4a ノズルチップ
5 送風機
5a ケーシング
6 水タンク
7 ストレーナ
8 ポンプ
9 ノズルヘッダ
10 一次圧力調節弁
11 遮断弁
12 制御装置
13 冷却水用伝熱管(フィンチューブ)
21 蒸気復水器室
22 蒸気復水器
23 空気通路
23a 外気導入部
24 水噴霧ノズル
25 送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気導入部から蒸気復水器室に導入された外気を送風機によって蒸気復水器に吹き付けて空冷する空冷式蒸気復水装置において、
前記外気導入部に、複数の通気孔を均一に配した空気整流部材を配置し、
この空気整流部材のすべての通気孔の出口部分に、複数のノズルチップを一定間隔で配した水噴霧ノズルを配置したことを特徴とする空冷式蒸気復水装置。
【請求項2】
空気整流部材として、空気導入口と均一に配した複数の通気孔とを有するダクトサイレンサーを配置した請求項1に記載の空冷式蒸気復水装置。
【請求項3】
空気整流部材のすべての通気孔の出側部分に配置した水噴霧ノズルのそれぞれに遮断弁を設けるとともに、蒸気復水器の入口部分の真空度、及び送風機の入口部分の温湿度に応じて遮断弁を操作し、水噴霧に使用する水噴霧ノズルの本数を増減させる制御装置を設けた請求項1又は2に記載の空冷式蒸気復水装置。
【請求項4】
送風機を収容するケーシング内に冷却水用伝熱管を配置し、この冷却水用伝熱管に水を導入して冷却するようにした請求項1〜3のいずれかに記載の空冷式蒸気復水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−169285(P2010−169285A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10069(P2009−10069)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)