説明

空撮計画支援装置

【課題】撮影対象を安全な飛行コースから撮影可能な空撮計画の立案を支援する空撮計画支援装置を得る。
【解決手段】相手方からの脅威の存在等が予測される空域を空域制限情報DBとしてデータベース化して保持しておき、対象目標を空撮するにあたって飛行可能空域を算出する際に、まず対象目標を所定の条件で空撮することのできる撮影可能空域を算出した後に、この空域制限情報DBに示された空域を進入制限が設けられた空域として撮影可能空域から除外する。そして、その結果を空撮時における飛行可能空域としてグラフィカルに表示する。また、一連の飛行通過点の位置情報入力に基づき飛行コースを描き、この飛行コースが上記した飛行空域内にあるか否かを検証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空撮計画支援装置に係り、特に対象目標の航空写真を撮影する際に、安全に撮影可能な撮影計画の立案を支援する空撮計画支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、航空写真を撮影する際は、あらかじめ飛行計画とリンクさせて撮影計画を立案する。すなわち、撮影対象の領域あるいは対象目標を直上から撮影することを前提に、これら領域あるいは対象をカバーするように飛行コースを設定し、具体的な飛行計画を作成する。そして、地形や撮影機材等の条件をもとに飛行コース内での撮影ポイントや撮影間隔を設定し、撮影計画に反映する。
【0003】
これら一連の計画作成にあたっては、基本的に、飛行コースを事前に指定し対象の撮影が可能かどうかを判断していく。すなわち、まず、例えば地図紙面上で飛行計画が立案され、その飛行計画のもとで撮影対象の領域あるいは対象目標を最も効率的に撮影できるように撮影計画が立案される。従って、計画全体を立案する際には熟練を要するとともに、また撮影欠落領域を発生させないよう事前に綿密なチェックが必要となるため、これら計画作成を支援するための装置が開示されている(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照。)。
【0004】
特許文献1には、設定済みの飛行コースに対して、この飛行コース上の撮影開始位置を再設定することによって撮影欠落領域の割合が所望値以下になるような撮影計画をシミュレーションする手法が開示されている。また、特許文献2には、地形や航空機の揺れを考慮して指定のサイドラップ値及びオーバーラップ値を満たすように撮影コースの計算を行なう装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−141452号公報(第6ページ、図1)
【特許文献2】特開2006−145357号公報(第28ページ、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、対象を空撮する際には、可能な限り対象に接近してその直上あるいは近傍から撮影することが望ましい。しかしながら、航空路の設定、地形、障害物の存在等により、必ずしも撮影対象の直上や近傍に飛行コースを設定できるとは限らない。また、対象に接近する場合においても、例えば、この撮影対象に対して相手方が警戒レーダや地対空誘導弾等による防御手段を有していると判断される場合には、これら相手方の有する防御手段の最新の状況に基づきその脅威等を回避できる距離を維持しながらの空撮計画でなければならない。
【0006】
さらに、対象目標を撮影する上でより良い撮影ポイントを見つけ出すには、飛行コースを先に決めてから撮影ポイントを決めるのではなく、安全に飛行できる空域の中で撮影に最適な飛行コースの設定ができるよう、計画立案時に支援できることが望まれていた。
【0007】
本発明は、上述の事情を考慮してなされたものであり、撮影対象を安全な飛行コースから撮影可能な空撮計画の立案を支援することのできる空撮計画支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の空撮計画支援装置は、所定の空域に対する進入制限を設定した空域制限情報を有し、航空写真を撮影する際の撮影計画の立案を支援する空撮計画支援装置であって、あらかじめ航空機毎の飛行諸元、撮影機材毎の撮影諸元、標高データを含む地図情報、及び航空路情報を含む飛行情報を保持しこれらを管理するデータベース手段と、空撮に用いる前記航空機、前記撮影機材、及び空撮対象の指定操作を含む操作員による空撮条件の入力を受けつける操作入力手段と、この操作入力手段からの空撮条件に基づき前記データベース手段を参照して前記空撮対象の撮影可能空域を算出する空撮条件処理手段と、前記空域制限情報に基づき前記撮影可能空域内の飛行可能空域を算出する飛行空域算出手段と、この飛行可能空域を2次元または3次元で表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、撮影対象を安全な飛行コースから撮影可能な空撮計画の立案を支援することのできる空撮計画支援装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明に係る空撮計画支援装置を実施するための最良の形態について、図1乃至図4を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明に係る空撮計画支援装置の一実施例を示すブロック図である。この空撮計画支援装置は、図1に例示したように、操作部11、空撮条件処理部12、飛行空域算出部13、表示処理部14、表示器15、通信部16、及びデータベース管理部17から構成されている。また、データベース管理部17が管理するデータベースとして、航空機諸元DB18、撮影機材諸元DB19、地図情報DB20、飛行情報DB21、及び空域制限情報DB22を備えている。
【0012】
操作部11は、空撮条件の入力操作、及び飛行通過点の位置情報の入力操作を含む操作員による各種の操作を受けつける。入力される空撮条件は、空撮に用いる航空機及び撮影機材の指定、ならびに空撮対象とする目標の位置や領域に関する情報に加え、例えば画像分解能やオーバーラップ率等、取得する空撮画像の条件を示すパラメータを含み、空撮条件処理部12に送出される。また、飛行通過点の位置情報は、例えば緯度/経度及び高度情報を組み合わせた3次元の位置情報として表され、飛行コースを描くためのものとして飛行空域算出部13に送出される。
【0013】
空撮条件処理部12は、操作部11からの空撮条件に基づきデータベース管理部17が管理する航空機諸元DB18、撮影機材諸元DB19、地図情報DB20、及び飛行情報DB21を検索・参照し、空撮対象とする目標の撮影可能空域を算出する。航空機諸元DB18には、空撮に用いることのできる航空機の機種、及び各機種毎の航続距離、飛行速度、飛行可能高度等といった飛行性能諸元があらかじめデータベース化され保持されている。撮影機材諸元DB19には、同じく空撮に用いることのできる各種撮影機材名、及び各機材毎の撮影角度範囲、分解能、可動範囲等の諸元が保持されている。
【0014】
地図情報DB20は、所定の地域についての標高情報を含む地形図であり、例えば数値地図としてデータベース化され保持されている。飛行情報DB21は、例えば航空路誌や航空路図誌といった航空路情報に加え、飛行場、航空保安施設、管制・計器進入方式等についての情報が保持されている。
【0015】
飛行空域算出部13は、空撮条件処理部12で算出した目標の撮影可能空域内において、空域制限情報DB22によって進入制限されない空域を飛行可能空域として算出する。空域制限情報DB22には、相手方の防空情報、例えば相手方の警戒レーダの覆域情報や地対空誘導弾の射程覆域情報等といった、相手方からの脅威の存在等が予測される空域情報が保持される。飛行可能空域は、撮影可能空域内でこれら脅威の存在等の予測される空域を除外した空域であり、飛行空域算出部13は、この飛行可能空域を算出する。また、操作部11からの複数の飛行通過点の位置情報に基づいて飛行コースを描き、描いた飛行コースがこの飛行可能空域内にあるか否かを検証する。
【0016】
表示処理部14は、飛行空域算出部13で算出した飛行可能空域及び飛行コースの2次元及び3次元表示を含む各種表示画面の表示データを作成する。表示器15は、表示処理部14で作成した各種表示画面の表示データを受けとり画面に表示する。通信部16は、通信回線により他システム等と接続するためのインターフェースであり、これを経由して他システム等と空域制限情報DB22の更新データを含む各種データを授受する。データベース管理部17は、上述した航空機諸元DB18、撮影機材諸元DB19、地図情報DB20、飛行情報DB21、及び空域制限情報DB22の各データベースの登録、参照、及び更新を管理する。
【0017】
上記した構成の空撮計画支援装置は、例えばパーソナルコンピュータやワークステーションといった、汎用的に用いられるコンピュータ上にインプリメントすることができる。このような空撮計画支援装置を実現するためのコンピュータシステムの構成の一例を図2に例示する。このコンピュータシステムは、CPU201、メモリ202、入力装置203、表示装置204、HDD205、外部記憶装置206、及び通信装置207から構成されている。
【0018】
CPU201はこのコンピュータシステム全体の制御を行なうものであり、メモリ202に展開された各種機能を実現するためのプログラムに従って各種の処理を実行する。入力装置203は、マンマシンインターフェースとしての例えばキーボードやマウス等、及びデータ授受のための例えばFDやCD等のデータメディアドライブからなり、上記した空撮条件、及び飛行通過点の位置情報の入力操作等、操作員の行なう各種操作を受けつけるとともに、データベースの電子データ等を受けつける。
【0019】
表示装置204は、例えばCRT表示器やLCD表示器からなり、操作員の入力操作に伴う文字表示、算出した飛行可能空域や飛行コース等の2次元及び3次元グラフィック表示を含む各種表示を行なう。HDD205には各種機能を実現するための各種プログラムが記憶されており、これらプログラムは機能実行要求時にメモリ202に転送されて実行される。外部記憶装置206は大容量の記憶装置であり、上記した航空機諸元DB18、撮影機材諸元DB19、地図情報DB20、飛行情報DB21、及び空域制限情報DB22のデータベースを含む各種データを記憶する。通信装置207は、例えばモデムやLANアダプタといった通信インターフェースからなり、通信回線に接続して他装置とのデータ通信を行なう。
【0020】
次に、前出の図1及び図2、ならびに図3のフローチャート及び図4の説明図を参照して、上述のように構成された空撮計画支援装置の動作について説明する。図3は、本発明に係る空撮計画支援装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0021】
図3において、まず、航空機諸元DB18、撮影機材諸元DB19、地図情報DB20、及び飛行情報DB21をあらかじめ設定するとともに最新の内容に更新しておく。データの設定及び更新は、データベース管理部17の管理のもとで行なわれる。また、空域制限情報DB22も、同じくデータベース管理部17の管理のもと、通信部16を経由して送られてくるデータ等に基づき最新の内容に更新される(ST301)。
【0022】
次に、操作員等によって空撮条件が入力されると、操作部11は、これを受けつける。空撮条件には、空撮に用いる航空機の機種、撮影機材名、空撮の対象の位置情報、及び取得する空撮画像のパラメータ条件等が含まれる。空撮の対象については、ピンポイント指定またはエリア指定のどちらでもよく、また複数の対象を同時に指定し入力することも可能としている。入力された空撮条件は、操作部11において入力処理された後、空撮条件処理部12に送出される(ST302)。
【0023】
空撮条件処理部12は、操作部11からの空撮条件を受けとり、データベース管理部17の管理のもとで各データベースを参照しながら対象目標の撮影可能空域を算出する。すなわち、空撮に用いる航空機の諸元については航空機諸元DB18を、撮影機材の諸元については撮影機材諸元DB19をそれぞれ検索・参照して自機の飛行特性、撮影機材の分解能や撮影範囲等を取得するとともに、空撮対象の位置情報に基づき地図情報DB20及び飛行情報DB21を検索・参照して空撮対象周辺の地形や航空路等を識別した上で、指定されたパラメータ条件を満足する空撮画像を取得することのできる空域を、撮影可能空域として算出する。また、複数の対象が指定された場合には、これらの空撮画像を同時に取得することのできる空域を撮影可能空域とすることもできる。そして、算出された撮影可能空域は、飛行空域算出部13に送出される(ST303)。
【0024】
この空撮条件処理部12で算出された撮影可能空域内からであれば、空撮条件を満足する空撮画像を取得することができる。しかし、より安全に空撮を行なうには、空撮中における相手方からの脅威の存在等も考慮に入れる必要がある。相手方からの脅威の存在等が予測される空域については、最新の内容に更新されながら空域制限情報DB22に保持されている。
【0025】
飛行空域算出部13では、この空域制限情報DB22に示された空域を進入制限が設けられた空域として扱い、空域制限情報DB22を参照しながら、空撮条件処理部12で算出された撮影可能空域内から、この空域制限情報DB22に示された空域を除いた空域を算出する。そして、これを飛行可能空域とし、空撮の際に飛行することのできる空域としている。算出結果は表示処理部14に送出され、例えば3次元のグラフィカルな表示のための表示データが生成された後、表示器15に送出されて表示される(ST304)。
【0026】
また、この飛行可能空域が表示された後に、操作員から飛行コースを示すウェイポイントや飛行通過点等の一連の位置情報が入力されると、これらの入力された情報は操作部11での入力処理後、飛行空域算出部13に送出される(ST305)。飛行空域算出部13では、これら一連の位置情報に基づいて飛行コースを描く。そして、この飛行コースが算出済の飛行可能空域内にあるかを検証し、その結果を飛行コースとともに、飛行可能空域の表示に重畳させて表示器15にグラフィカルに表示する(ST306)。
【0027】
飛行可能空域及び飛行コースの表示画面の一例を簡素にモデル化して図4に示す。この図4の事例では、空撮の対象目標周辺の地形を背景として、対象目標、飛行可能空域、飛行コース等をグラフィカルに3次元表示している。さらに算出された撮影可能空域、空域制限情報DB22に基づく進入制限が設けられた空域等、装置内に保持されている各種のデータを同時に重畳表示させることができるものとしている。
【0028】
操作員はこれら表示に基づき、例えば予定外の回避行動が必要となった場合などを含め、種々の飛行コースの検証を繰り返す(ST307)。検証の終了後は(ST307のY)、検証を終えた飛行コースを後続の処理等に備えて装置内に保持しておく(ST308)。そして、装置動作の終了が指示されるまで、上述した動作を繰り返す。
【0029】
以上説明したように、本実施例においては、相手方からの脅威の存在等が予測される空域を空域制限情報DBとしてデータベース化して保持しておき、対象目標を空撮するにあたって飛行可能空域を算出する際に、まず対象目標を所定の条件で空撮することのできる撮影可能空域を算出した後に、この空域制限情報DBに示された空域を進入制限が設けられた空域として撮影可能空域から除外している。すなわち、撮影可能空域内で相手方からの脅威の存在等が予測され難いより安全な空域を算出し、これを空撮時における飛行可能空域として表示している。これにより、安全な空域内の飛行コースから撮影可能な空撮計画の立案を支援することができる。
【0030】
また、一連の飛行通過点の位置情報入力に基づき飛行コースを描き、この飛行コースが上記した飛行空域内にあるか否かを検証している。これにより、空撮に最適な飛行コース設定を行なうことができるとともに、安全な空撮計画をより確実なものとすることができる。加えて、例えば予定外の回避行動のための飛行コース等についての検証も行なうことができ、飛行コースの計画の立案全体を、より平易なものとすることができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施例のそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る空撮計画支援装置の一実施例を示すブロック図。
【図2】本発明に係る空撮計画支援装置を実現するためのコンピュータシステムの構成の一例を示すブロック図。
【図3】本発明に係る空撮計画支援装置の動作を説明するためのフローチャート。
【図4】表示画面の一例をモデル化して示す図。
【符号の説明】
【0033】
11 操作部
12 空撮条件処理部
13 飛行空域算出部
14 表示処理部
15 表示器
16 通信部
17 データベース管理部
18 航空機諸元DB
19 撮影機材諸元DB
20 地図情報DB
21 飛行情報DB
22 空域制限情報DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空域に対する進入制限を設定した空域制限情報を有し、航空写真を撮影する際の撮影計画の立案を支援する空撮計画支援装置であって、
あらかじめ航空機毎の飛行諸元、撮影機材毎の撮影諸元、標高データを含む地図情報、及び航空路情報を含む飛行情報を保持しこれらを管理するデータベース手段と、
空撮に用いる前記航空機、前記撮影機材、及び空撮対象の指定操作を含む操作員による空撮条件の入力を受けつける操作入力手段と、
この操作入力手段からの空撮条件に基づき前記データベース手段を参照して前記空撮対象の撮影可能空域を算出する空撮条件処理手段と、
前記空域制限情報に基づき前記撮影可能空域内の飛行可能空域を算出する飛行空域算出手段と、
この飛行可能空域を2次元または3次元で表示する表示手段と
を備えたことを特徴とする空撮計画支援装置。
【請求項2】
前記所定の空域に対する進入制限は、相手方の防空情報に基づき設定したことを特徴とする請求項1に記載の空撮計画支援装置。
【請求項3】
前記空撮条件処理手段の算出する撮影可能空域は、前記空撮条件に複数の空撮対象が含まれる場合にはこれら空撮対象を同時に撮影できる空域とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空撮計画支援装置。
【請求項4】
前記飛行空域算出手段は、連続する複数の飛行通過点の位置情報を受けつけ、これらにより描かれる飛行コースが前記算出した飛行可能空域内に含まれるか否かを検証することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の空撮計画支援装置。
【請求項5】
さらに通信手段を有するとともに、前記データベース手段は前記空域制限情報も併せて管理し前記通信手段経由でこの空域制限情報の更新データを受けとり更新することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の空撮計画支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−203097(P2008−203097A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39727(P2007−39727)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)