説明

空気の処理及び清浄化のための装置及び方法

【課題】
【解決手段】室内空気の生物的汚染を低減し、密閉空間における壁面及び表面を清浄化する方法であって、空気流を、処理ゾーンを通って上方に流し、実質的に水平に配列された有孔表面上で、500mV以上のレドックス電位を有するブライン溶液流と接触させることで、ブラインと空気が混合する活性層を前記実質的に水平に配列された有孔表面上に形成する段階;並びに前記処理ゾーンを出る処理済み空気を、清浄化されるべき空間に送り込む段階を有する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気の処理及び清浄化のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染された空気を処理するために一般に使用される方法は、オゾン又は紫外線による空気の濾過、空気のイオン化及び滅菌に基づくものである。
【0003】
(特許文献1)には、好ましくは200mVから450mVの範囲のレドックス(還元−酸化)電位を有するハライドブラインである濃厚塩溶液と室内空気流を接触させることで、室内空気の微生物レベルを低下させる方法が記載されている。その文献は、好適な曝気条件下でそのようなレドックス電位を発生させることができる、ある種のブラインを特定しており、さらに代替手段として又は追加的に、ブラインを電解槽中で電解することで、ブラインのレドックス電位を適切に調節することを提案している。(特許文献1)は、病院等の各種施設で上記の方法を実施するための充填カラムスクラバー(空気とブライン溶液を、カラムを満たしている固体材料と接触させる)も具体的に記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/026363号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
200〜約450mVの範囲のレドックス電位を有するブラインを用いる、(特許文献1)に記載の好ましい処理方法の下で動作させることによって、室内空気の生物汚染のレベルが効果的に低下することが示されている。しかしながら、ある種の施設では、密閉空間での壁面及び他の表面を定期的に浄化することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
空間内の空気を、カラムを通って上方に流し、実質的に水平に配列された有孔表面上で、レドックス電位が500mVを超えるブライン溶液の下降流と接触させることで、ブラインと空気が混合する活性層を前記有孔表面上に形成することで、密閉空間の清浄化が可能であることが認められた。本明細書で使用する場合、「清浄化」という用語は、殺菌又は殺真菌効果を示す処理を示す。ハロゲン類、ハロゲンのオキシ化合物、酸素又は電解ブライン溶液で生成するそれらのラジカル等の各種酸化剤種が、活性層中のブラインに接触する空気中に放出されるものと考えられている。上記化学種は、処理された空気流によって、密閉空間における壁面及び他の表面(例えば、前記密閉空間中に置かれた装置及び物品の表面)上へと運ばれて、生物的汚染の低減を達成し、前記壁面及び表面の清浄化を行う。
【0007】
したがって、本発明は、室内空気の生物的汚染を低減し、密閉空間における壁面及び表面を清浄化する方法であって、空気流を、処理ゾーンを通って上方に流し、前記処理ゾーン内に置かれた実質的に水平に配列された有孔表面上で、500mV以上のレドックス電位を有するブライン溶液流と接触させることで、ブラインと空気が混合する活性層を前記有孔表面上に形成する段階;並びに前記処理ゾーンを出る処理済み空気を、清浄化されるべき空間に送り込む段階を有する方法を提供する。処理ゾーンは、最も好適には、ブライン溶液流が下方に流れる、垂直方向に置かれたカラムによって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の空気処理装置の好ましい実施形態の縦断面図を模式的に示す図である。
【図2】図1AのX−X線で沿った本発明の空気処理装置の断面図を示す図である。
【図3】時間に対する、本発明に従って処理された空気中のカビの量を表す棒グラフである。
【図4A】対照室、及び本発明に従って電解ブラインで処理した貯蔵室に置いたシャーレの写真である。
【図4B】対照室、及び本発明に従って電解ブラインで処理した貯蔵室に置いたシャーレの写真である。
【図4C】対照室、及び本発明に従って電解ブラインで処理した貯蔵室に置いたシャーレの写真である。
【図4D】対照室、及び本発明に従って電解ブラインで処理した貯蔵室に置いたシャーレの写真である。
【図5】本発明に従って電解ブラインで処理した空気に曝露したシャーレの写真である。
【図6】空気に対するプレートの曝露時間の関数としての、本発明に従って電解ブラインで処理した空気に曝露されたシャーレに形成されたコロニーの直径を示すグラフである。
【図7】本発明に従って電解ブラインで処理した空気に曝露したシャーレの写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「処理済み空気」という用語は、活性層を通過した空気を示す。本明細書で使用される「ブライン溶液」という用語は、希釈、濃縮された、ほぼ飽和又は飽和の塩溶液、すなわち、中に溶けている塩の濃度が0.1%(w/w)以上、好ましくは1.0%以上、より好ましくは10%又は20%(w/w)以上、そして最高でその温度における飽和濃度の溶液を指す。組成的には、本発明で有効な濃縮塩溶液は、式MX、MX及びMXによって表される1以上の水溶性塩を含む水溶液であることができ、式中Xは塩素、臭素、ヨウ素、硫酸及び硝酸アニオンからなる群から選択され、Mは金属カチオンを示し、それは最も好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛並びにこれらの混合物からなる群から選択される。好ましいブライン溶液には、塩化ナトリウム又は塩化カルシウムの濃厚溶液(10重量%以上、好ましくは20重量%以上の濃度を有する)等がある。本発明に従って使用される別の好ましい濃厚塩溶液は、1以上の次の金属:Na、K、Mg2+及びCa2+の少なくとも1種類の塩化物塩と組み合わせた少なくとも1種類の臭化物塩又はヨウ化物塩の混合物を含む。別の可能な溶液は、合計濃度30〜40重量%で溶解している臭化物塩及び塩化物塩の混合物を含み、そのカチオン種はMg2+、Ca2+、Na及びKである。より具体的には、上記イオンの濃度は、Mg2+:30〜50g/リットル;Ca2+:10〜20g/リットル;Na:30〜50g/リットル;K:5〜10g/リットル;Cl:150〜240g/リットル;Br:3〜10g/リットルである。そのような溶液の例は、死海ブラインによって提供され、それはMg2+:約40.6g/リットル;Ca2+:約16.8g/リットル;Na:約39.1g/リットル;K:約7.26g/リットル;Cl:約212.4g/リットル;Br:約5.12g/リットルという代表的(平均的)な無機物組成を有しており、それに溶解している塩の合計濃度は33重量%である。別の可能な濃厚塩溶液は、合計濃度30〜40重量%で水に溶解している臭化物塩及び塩化物塩の混合物を含み、カチオン種はMg2+、Ca2+、Na及びKであり、前記溶液中の塩化カルシウムの濃度は、それから蒸発する水の蒸発速度を低下させる上で有効であり、好ましくは20〜200g/リットルの範囲である。
【0010】
本明細書に記載するレドックス電位は、Pt/Ag/AgCl電極を用いて測定されることから、ブライン溶液に曝露されるPt電極と標準的な銀−塩化銀電極の間に発生する電気化学的電位を示す。
【0011】
ブライン溶液は、処理ゾーンを通って循環させる。処理ゾーン、すなわちカラムは、水平方向に並んだ有孔の接触表面によって下部と上部に分けられる。ブライン溶液は、カラムの上部に送られ、そのカラムを通って下方に流れ、有孔表面の下のカラムの下部で回収される。ブライン溶液のレドックス電位を高めるため、すなわち500mVを超える、具体的には500〜1000のレドックス電位を有するブライン溶液を形成するため、ブラインを電解槽で電解する。本明細書で使用される「電解槽」という用語は、具体的には、直流電流(DC)電源の両極に接続された電極を有する設備を指す。電解槽は、循環ブラインの経路中のいずれか好適な位置に配置される。最も単純な構成において、本発明による使用に好適な電解槽は、水平方向に配列された有孔表面の上で、ブラインを保持するのに使用される貯留部内、又は別形態として、貯留部からカラム上部にブラインを移動させるのに使用される供給ライン内に設けられた2個の電極を有する。電極は好ましくは、0.3〜2.0cm、より好ましくは0.5〜1.0cmの間隔を隔てて互いに平行に置かれている。電極は好ましくは、長さ及び幅がそれぞれ約2cm及び10cmであるプレート又はメッシュの形態である。電極は通常、Pt、Ru、RuO及びIrでコーティングされたTi、Nb及びTaからなる群から選択される金属から構成される。白金、白金とイリジウムの合金、及びM−MO型(Mは金属を指し、MOはIr−TaO等の金属酸化物を指す)の電極も使用可能である。槽は代表的には、2〜12V、好ましくは約3〜5Vの範囲の電圧を印加して、アノードの電流密度10〜10アンペア/mで動作する。例えば、本発明の方法で用いられるブライン溶液の体積が10〜20リットルであり、その密度が約1.3g/ccである場合、槽を通過する電流は1Aを超えており、上記の寸法及び他の特徴を有する電極を用いることで、約10〜20分間の電解後に、約700〜1000mVのレドックス電位を実現するブライン溶液が得られる。0.2〜0.5Aの範囲の相対的に低い電流が、約2〜5分間の電解後に500〜700mVの範囲のレドックス電位を有するブライン溶液を製造する上で有効である。好ましい動作可能なレドックス作業範囲は、500mV超、好ましくは500mV〜1000mV、より具体的には500〜900mVである。留意すべき点として、空気流の効果的な混合及び上記の泡立ち液の形成も、ブライン溶液のレドックス電位の形成及び維持に寄与するものである。
【0012】
留意すべき点として、処理されるべき密閉空間で満足できる清浄化効果を達成する上では、500mVより低いレドックス電位を有するブライン溶液(そのようなブライン溶液は「強酸化性ブライン」と称される場合がある)が長期間にわたって処理ゾーンを通過する条件下で本発明の方法を行うことは必要ではない。実際、通常の運転モードでは、本発明の方法を実施する際に、レドックス電位が500mVより低い(例:200〜450mV又はそれより低い)ブラインを用いることができる。しかしながら時々、上記の条件下で、密閉空間内の空気を、500mVを超えるレドックス電位を有するブライン溶液と接触させる。その処理を、定期的に、例えば週1回又は2回、各回数時間又は1日もしくは2日以内にわたって繰り返すことができる。詳細な処理方法、すなわち500mVを超えるレドックス電位を有するブライン溶液で方法を行う各処理間隔の長さ及び前記処理の頻度は、密閉空間の大きさ及びそこでの条件(温度、湿度、その空間での汚染のレベル)、抑制標的とする真菌の種類、及び空気と500mVを超えるレドックスを有する電解ブライン溶液との間の接触を行うための密閉室で提供されるカラムの特徴、すなわち本発明の方法を実行するのに用いられる装置の作業パラメータによって決まる。
【0013】
ある操作モードを別の操作モードに切り換えるためには、すなわち強酸化性ブラインの操作を中止し、500mV未満、例えば200〜300mVのレドックス電位を有するブラインの急速な再生を可能とするためには、強酸化性ブラインを1以上の酸化剤捕捉性化合物の有効量で化学的に処理する。「酸化剤捕捉性化合物」という用語は、本明細書において、水溶液から酸化剤(例:酸素、ハロゲン、オキシハロゲン及びそれらのラジカル)を除去するのに有用な有機及び無機化合物を示すために用いられる。還元剤として、具体的には亜硫酸、重亜硫酸、チオ硫酸、メタ重亜硫酸、ハイドロサルファイト又はそれらの混合物の水溶性塩等の硫黄系還元剤、並びにアスコルビン酸等の他の還元剤として作用する酸化剤捕捉性化合物は、いずれも本発明の範囲に含まれる。その還元剤は、固体又は液体の形態で(例:水溶液として)強酸化性ブライン中に送ることができる。例えば、上記硫黄含有還元剤は、好ましくは1〜30%(w/w)、より好ましくは約5〜10%(w/w)の範囲で変動する濃度で、それらのナトリウム塩の水溶液の形態で容易に入手可能である。したがって、硫黄系還元剤の水溶液を強酸化性ブライン中に送ることで、前記ブラインのレドックス電位を下げ、500未満のレドックス電位を特徴とする通常用いられるブラインを再生することができる。例えば、本発明の方法で用いられる強ブライン溶液の体積が10〜20リットルの場合、濃度が約5%(重量/体積)である重亜硫酸ナトリウム又はチオ硫酸ナトリウムの溶液を用いて、ブラインのレドックス電位を低下させることができる。体積が約50〜200mLの前記重亜硫酸塩溶液又はチオ硫酸塩溶液が、塩化ナトリウムブライン、塩化カルシウムブライン又は死海ブラインのレドックス電位を効果的に低下させるに十分である。
【0014】
ブライン溶液のレドックス電位は、処理ゾーンを通って流れる空気又はブラインの流動特性を変えることにより、機械的に調節することもできる。したがって本発明の方法は、相対的に低い範囲と相対的に高い範囲(500mVを超える)の間でブライン溶液のレドックス電位を変化させる段階をさらに有し、前記レドックス電位を電解的、機械的又は化学的に調節し、前記電解的調節はブライン溶液を電気分解する段階を有し、前記機械的調節は処理ゾーンでの流動特性を変える段階を有し、前記化学的調節はブライン溶液を1以上の酸化剤捕捉性化合物で処理する段階を有する。ブラインのレドックス電位は容易に測定可能な特性であることから、それは本発明によって提供される方法の動作をモニタリングする上で役立ち得る。レドックス電位の測定は、循環するブライン又はそのブラインのサンプルを上記の適切な設備(Pt/Ag/AgCl電極)と接触させることで簡便に行われる。上記の設備又は代替設備によって測定されるレドックス電位の結果に応じて、レドックス電位は、電解的に又は機械的に(強酸化性ブラインを生成)及び化学的に(通常使用されるブラインを再生するため)調節することができる。したがって、本発明によって提供される方法はさらに、ブライン溶液のレドックス電位を定期的又は連続的に測定する段階、そして電解的、機械的又は化学的に、前記レドックス電位の測定値に基づいてブラインのレドックス電位を調節する段階をさらに有することができる。ブラインのレドックス電位の測定に利用される設備は、循環ブラインの経路中のいずれか適切な位置、例えばブラインを保持する貯留部内、又はブラインを処理ゾーン中に送るために使用される供給ラインに配置される。次に、測定されたレドックス電位を用いて1以上のオートマチックフィードバック信号を電解槽に提供することで、その動作を調節したり、上記の還元剤の水溶液を保持する容器に提供することで前記溶液のブライン溶液への供給を可能とし、それによってそのレドックス電位を低下させることができる。代替手段として又は追加的に、強酸化性ブラインを得るためのブラインの電解及びレドックス電位を500mV以下のレベルに回復するための前記強酸化性ブラインへの還元剤の供給は、観察されるレドックス電位に基づいてオペレータが調節することができる。そのためには、レドックス電位の測定を用いてアラーム信号を発生させ、レドックス電位の測定が作業範囲外の値を示したらオペレータの介入を行わせることができる。代替手段として又は追加的に、本発明はさらに、密閉空間での塩素レベルを定期的又は連続的に測定する段階、並びに測定値に基づいて塩素レベルを電解的に又は化学的に調節する段階をさらに有することができる。処理される密閉空間での実施可能な塩素レベルは、0.1〜10ppmの範囲、より好ましくは0.1〜3ppmの範囲内で変動可能である。例えば、本発明により、塩素レベルが約1ppmに達し、前記レベルが約20〜24時間の期間にわたって維持されることで、25mの貯蔵室の効果的清浄化が可能となることが認められている。数ppmのレベル、すなわち10ppm以下のレベルの塩素も、適切な安全手段の下で実行することができる。密閉空間での塩素レベルの低下は、空気の電解ブライン溶液との接触を中止し、カラムを通って空気を流し、上記の酸化剤捕捉性化合物の溶液と接触させることで実施することができる。これに関しては、空気を、酸化剤捕捉性化合物の溶液を使う第2の同様のカラムに向けるか、電解ブライン溶液に代えて前記溶液を本発明の処理ゾーンで用い、そこで循環させることができる。
【0015】
留意すべき点として、ある種のブライン(例:ヨウ化物含有ブライン)は、上記の条件下で処理されるべき空気流を通気させた後に、自然に500mVを超えるレドックス電位を生じることができ、さらにはそのようなブラインは、経時的にそのレドックス電位を維持することができるが、ただし、場合によっては、電解槽を短期間活性化させ、前記ブラインを槽に通過させることで、そのレドックス電位を所望の範囲内に安定化させることが有用となり得る。
【0016】
本発明の重要な特徴は、処理ゾーンに形成された活性層であり、その層で空気及びブライン溶液が混合する。上記で示したように活性層は、上昇する空気流と下降する液体(ブライン溶液)流の結果として、実質的に水平に配列された有孔表面上に形成される。「活性層」という用語は、泡立ち液、すなわちガス(この場合は空気)が通過する液体を指す。泡立ち液の形成を促進するための有孔表面は、多様な開口面積パーセンテージを有するメッシュ又はプレートの形態である。開口面積のパーセンテージは、穿孔の形態では、処理ゾーンへの液体及びガス負荷量に対応するはずである。活性層の高さは好ましくは、1〜7cmである(その高さは、カラムの幾何パラメータ及び有孔表面の開口面積によって決まる)。空気は好ましくは、環境大気圧より高い350Pa以上、好ましくは450Pa以上の圧力で処理ゾーンに進入する(ただし、空気を強制的に処理ゾーンに流し入れるために、吸引モードを用いることも可能である)。処理済み空気は、ブライン溶液の液滴を同伴し得るものである。本発明の方法は、処理済み空気からブライン溶液の液滴を分離する段階、及びそうして回収されたブラインをさらなる使用のために再利用する段階を有する。
【0017】
本発明の方法が、密閉空間内の室内空気の微生物負荷を低下させることができ、しかも処理された密閉空間に置かれた固体成長培地(寒天シャーレ)での菌コロニーの形成を防止することもできることが認められた。特に、菌(具体的には、ボトリティス・シネレアの分生子)を接種し、処理済み密閉空間で電解ブラインによって処理した空気に曝露した寒天シャーレは、25℃で数日間のインキュベート期間の後であっても、肉眼で観察されるコロニーを形成しなかった。密閉室内の空気の電解ブラインによる処理は、空気及び密閉室に置かれた固体成長培地の両方での菌胞子の破壊を生じることが認められている。本発明の方法は、低温の貯蔵室(例えば、温度が15℃未満)を消毒するのに用いることができる。
【0018】
本発明はまた、空気を処理し、各種密閉空間を消毒するための新規な装置に関するものである。それの最も一般的な形態では,装置は、
a)内部に配置された有孔表面を有する気液接触カラムであって、前記有孔表面が前記カラムを、少なくとも1個の空気導入開口が設けられた第1のセクション、及び少なくとも1個の空気排出開口が設けられた第2のセクションに分けている気液接触カラム、
b)前記有孔表面より上で且つ前記空気排出開口より下の個所にある第2のセクション中への供給ラインによって接続された、ブライン溶液を保持するための貯留部;そして1以上の下記のもの:
c1)前記貯留部又は前記供給ラインに設置された電極を有する電解槽;
C2)物理的に前記カラムに取り付けられているか、別個のユニットとして提供され得る液滴分離装置;
C3)好ましくは前記空気導入開口に連結された、空気吹き出しユニット等の、前記カラムにおいて空気流を強制的に上方に流す手段;
C4)前記貯留部内に保存されている、上記で具体的に記載した組成を有するブライン溶液
を有する。
【0019】
前記装置はさらに、前記装置で作用する液体のレドックス電位を測定するための、前記装置に配置された測定電極及び参照電極を有する。
【0020】
より具体的には、本発明の装置は、内部に設けられた有孔表面を有する気液接触カラムを有し、前記有孔表面は前記カラムを少なくとも1個の空気導入開口が設けられた第1の(下側)セクションと少なくとも1個の空気排出開口が設けられた第2の(上側)セクションとに分けている。ガス吹き出し手段は前記空気導入開口に連絡していることで、空気流を前記気液接触カラムの前記第1のセクション中に流し込み、前記有孔表面を通過して、カラムの前記第2のセクションに送り込む。貯留部(ブライン溶液を保持するのに好適)は、気液接触カラムと液体で連通している。その装置はさらに、本明細書中上記で定義したような電解槽を有する。電解槽の電極は、装置内のいずれか好適な位置に置かれている。最も簡単な構成では、電解槽は、ブラインを保持するのに用いられる貯留部内に、又は別形態としてブラインをカラム上部に移動させるのに用いられる供給ライン(例:導管)内に設けられた2個の電極を有する。前記装置はさらに、電圧計に接続された少なくとも一対の電極(測定電極及び参照電極)を有し、その電極はブラインのレドックス(還元−酸化)電位を測定する上で好適に配置されている。その装置は好ましくは、塩素センサーをも有する。
【0021】
より具体的には、本発明の装置は、細長く垂直に配置された、好ましくは円柱形のカラムを有する。カラムの内部空間内には、有孔プレートが設置されており、そのプレートは前記カラムの縦軸に対して垂直に配置されており、カラム内壁に設けられていることから、カラムを下側及び上側の部分又は空間に分割している。円柱形カラムの下側空間の側面に開口が設けられており、その開口は空気導入口の役割を果たす。カラムの上側空間は、空気排出口として働く開口を有する。ブライン溶液を保持するための貯留部が好ましくは、カラムの最も下のセクションによって提供される(そこでは、ブライン溶液のレベルが空気導入開口の下に維持されている)。
【0022】
空気吹き出しユニットは好ましくは、カラムの第1のセクションに設けられた側部空気導入開口に連結されている(好ましくは、その連結はカラムの壁面に対して接線方向のものであるが、必ずそうなっている必要はない)。好適な空気吹き出しユニットは好ましくは、350Pa(約35mmHOに相当)以上、好ましくは470Pa(約48mmHOに相当)以上の圧力で動作する。上記圧力値を得ることができる空気吹き出しユニットは、市販されている工業用遠心抽出機ファンである(本明細書で報告されている圧力は、環境大気圧より高いものである)。
【0023】
運転時は、ブライン溶液が貯留部から有孔プレートの上のカラム上部に連続的に移行させられて、前記ブライン溶液の層を有孔プレートの上面より高く維持しつつ、空気導入開口を通過してカラム内に導入された空気流が強制的に有孔プレートを通過させられて、プレート上に維持されたブライン溶液と接触する。有孔プレートの孔を通過した空気流は、有孔プレートの頂部に比較的厚い泡立ち液の層を形成する。上記のように、得られる層(液体及び気泡)は、本明細書において「活性層」と称される。
【0024】
図面について説明すると、図1は、側部支持部12sによって地面7に対して垂直に立てたカラム12、壁12wに対して垂直な、カラム12内に取り付けられた有孔プレート12p、有孔プレート12pの下のカラム12の壁12wに形成された空気導入開口12oと連通している空気ブロワー18、及びポンプ11(例:磁気回転ポンプ)によってカラム12の底部12bからその上側部分12uに流体をパイプ送りするよう作製された配管システム11pを有する本発明の装置10の好ましい実施形態を模式的に描いたものである。好ましくは、円柱形状を有するカラム12は、ステンレス合金(オーステナイト、フェライト及びマルテンサイトステンレス鋼、チタン合金、ニッケル系超合金及びコバルト合金等)又は好適なプラスチック(PVC、CPVC、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、PVDF、テフロン(登録商標)及びポリエステル等)等(これらに限定されるものではない)の耐薬品性の材料製である。カラムの内径は、通常は30〜60cmの範囲、好ましくは30cmであり、その壁厚は、通常は2〜6mmの範囲、好ましくは約3mmであることができ、その長さは0.8〜2m、好ましくは約1.2〜1.5mの範囲であることができる。空気導入開口12oの面積は、通常は100〜400cmの範囲である。本発明の好ましい実施形態では、空気導入開口12oの対向する側は互いに平行であり(例えば、開口の投影形は矩形である)、長さは20〜50cmの範囲であり、幅は4〜8cmの範囲である。
【0025】
有孔プレート12pは、好ましくは、上記で挙げたもの等の耐薬品性の金属もしくはプラスチック材料製である。プレートの厚さは、好ましくは、1〜5mmの範囲である。有孔プレート12pは、カラム12にぴったり合い、その断面積を占有するように作製され、空気導入開口12oより上に配置される。有孔プレート12pにおける孔は、好ましくは、その表面積の30%〜90%を占める。
【0026】
ブロワー18は、好ましくは、100〜3000m/時の範囲、好ましくは300〜1000m/時の範囲、より具体的には約800m/時の空気流を提供する電気遠心ブロワーである。
【0027】
カラム12の底部12bは、ブライン溶液14を保持する働きをする。処理済み空気排出口12cが、カラム12の上側空間12uに設けられている。運転時は、ブライン溶液14がポンプ11によって連続的にパイプ送りされ、カラム12の上側空間12uに送られることで、ブライン溶液の層14’が有孔プレート12pより上に維持されながら、空気導入開口12oを介してカラム12中にブロワー18によって導入される周囲空気流5が強制的に有孔プレート12pを通過し、その上に維持されている活性層と接触し、その後に処理済み空気5の流れが空気排出口12cを介してカラム12から出る。
【0028】
分配部材6は、好ましくは、空気導入開口12oの下のカラム12内に取り付けられており、前記分配部材6は、開口6pに向かって下方にテーパ状となっている漏斗様の形状を有している。したがって、分配部材6により、上側空間12uから落下するブライン溶液を、簡便にカラムの下側空間12bに向け、そこで回収することができる。
【0029】
ブロワー18の排出口は、好ましくは、前記開口の上に合うように作製された通路18t(代表的には、矩形の断面を有する)を介してカラム12の空気開口12oと連通していることで、そこを通過して流れる空気流が空気開口12oの領域を通って分配されるようになっている。処理済み空気排出口12cの直径は、10〜30cmの範囲であることができ、その断面積が好ましくは、実質的に空気開口12oの面積に等しくなっていることで、空気排出口12cからカラム12を出る処理済み空気流5pの流速が空気導入開口12oからカラム12内に導入される環境空気流の流速と実質的に等しくなっている(例えば、100〜3000m/時の範囲)。別の形態として、処理済み空気排出口12cの直径は、カラム12の直径と同じであることができる。
【0030】
処理済み空気排出口12cは好ましくは、カラム12の上側端に設けられたテーパ部12aに連結されている。空気排出開口からの液滴の漏出を最小とするため、カラムの第2のセクション内に配置された有孔基材に空気を通過させるか、例えばサイクロン型配置(当業界では公知)等の別個のユニットとして液滴分離装置を組み合わせることで、処理済み空気から液滴を分離することができる。
【0031】
例えば、1以上の液滴分離要素を、テーパ部12a内、又はそれに隣接して設置することができる。ある好ましい実施形態では、多孔質材料(例:スポンジ)製の円錐台状(frustoconical)部材19が、支持手段(不図示)によってテーパ部12aに取り付けられていることで、その小さい底部19nが有孔プレート12pに対向しており、その大きい底部19wが処理済み空気排出口12cに対向しており、テーパ部12aの断面積を占有している。このようにして、テーパ部12aを介して通過する処理済み空気の流れが、円錐状部材19を通過させられることで、それに含まれているブライン溶液の液滴が分離される。代替手段として又は追加的に、カラム12の断面セクションが、好ましくはテーパ部12aに隣接する1個の多孔質材料19aによって占有されていることで、それを通過する処理済み空気流からブラインの液滴をさらに分離することもできる。
【0032】
上記で示したように、液滴分離装置は、空気排出開口12cと連結される別個のユニットとして提供することができる。ある可能な配置は、上記で言及したサイクロン分離装置である。液滴分離装置についての別の可能な配置は、空気排出開口12cに連結された導管を有し、その導管は下方に向かっており、液滴を含む処理済み空気を好適なタンクに導き、そこで液滴は回収することができる。そうして回収されたブラインは、再利用することができる、すなわちブライン貯留部に送ることができる。
【0033】
装置10はさらに、電解槽17e、レドックス電極17rを有しており、好ましくはレベル測定手段17s、温度感知手段17t、及び加熱要素17hをも有するものであり、それらはいずれも、ブライン溶液14に浸漬されたカラム12の底部12bに取り付けられており、制御ユニット17に電気的に接続されている。その装置はさらに、塩素センサー(例えば、CL2−B1センサー)を有することができる。制御ユニット17は、レドックス電極17r、レベル測定手段17s、温度感知手段17t及び塩素センサーから受け取る指示信号に応答する装置10の動作をモニタリング及び管理するよう作製されている。電解槽17eは、好ましくはレドックス電極17rから得られるレドックス読取値に応答して、運転中にその電極間を通過するブライン溶液を電解するために用いられる。制御ユニット17に連結されたキーパッド17k及びディスプレイユニット17d(例えば、ドットマトリクス又はLCD)はそれぞれ、オペレータからの入力を受けるため、そしてシステム10の運転に関するオペレータの出力指示を提供するために制御ユニット17によって用いることができる。当然のことながら、装置10は、視覚的/音声的出力指示(例:LED、スピーカー)を発生させるために制御ユニット17に連結された別の手段を有することができる。制御ユニット17は、好ましくはプログラム可能なマイクロコントローラにより、特別に設計された制御論理回路によって実行することができる。レドックス電極から受け取る信号を変換するために、少なくとも1個のアナログ/デジタル変換器が制御ユニット17に必要になる場合がある。
【0034】
最も簡単な構成では、本発明における使用に好適な電解槽17eは、ブラインを貯蔵するのに使用される貯留部内に設けられている2個の電極を有する。その電極は好ましくは、互いに平行に設置されており、0.3〜2.0cm、より好ましくは0.5〜1.0cmの間隔だけ分離されている。それらの電極は好ましくは、それぞれ約4cm及び10cmの長さ及び幅を有するプレート又はメッシュの形態である。それより長いか小さいプレート及びメッシュを用いることもできる。電極の面積は好ましくは、20〜50cmの範囲で変動し得る。電極は、制御ユニット17から受け取る制御信号に従って始動させることができる直流電流(DC)電源装置の両極に電気的に接続されている。槽は代表的には、10〜10アンペア/mのアノード電流密度で動作し、2〜12V、好ましくは約3〜5Vの範囲の電圧を印加する。制御ユニット及び電極電源装置は好ましくは、制御ユニットが電極の極性を定期的に変えることを可能として、電極から電解析出物を除去できるように作製される。
【0035】
上記で言及したように、ブライン溶液のレドックス電位を測定する上で好適な設備は、不活性な金属もしくは合金製の測定電極(白金電極)及び参照電極(Ag/AgCl又はカロメル等)を有する。好適な電極は市販されている。本明細書で報告されるレドックス電位は、Pt/Ag/AgCl電極を用いて測定され、したがって、ブラインに曝露されたPt電極と標準的な銀−塩化銀電極との間に生じる電気化学電位を示す。
【0036】
図1のX−X線で切断したシステム10の断面図である図2で示される通り、ブロワー18がカラム12の空気導入開口12oに取り付けられて、中に導入される環境空気流5は、カラム12の壁に対してほぼ接線方向に向いている。
【0037】
カラム12の底部端部分12tは、好ましくは、ブライン溶液14中に生成した沈澱物(precipitants)を排出するために下方にテーパ状となっている。着脱可能な廃棄物処理容器13は、内部で得られる廃棄沈澱物13wを除去するために廃棄物処理容器13を取り外す必要が生じた場合はいつでも、通路を遮断するために用いられる短いパイプ及びバルブ12vによって、底部端セクション12tに取り付けることができる。廃棄物処理容器13内につながる配管は、制御ユニットに電気的に接続した光学センサー(例:光ダイオード−不図示)を有することで廃棄物処理容器13中のブラインの濁度に関する指示を提供し、それによって、廃棄物処理容器13中のブラインの取り替えるべき時には必ず、制御ユニットが指示を与えるようにすることができる。
【0038】
カラム12の底部12bに連通している配管11pは、好ましくは、有孔プレート12pより上にあるカラム12の上側空間12uに導入され、その開口は好ましくは下方に向いており、すなわち有孔プレート12pの上側面に対向している。有孔プレートが、配管11gの開口より下の上側面に取り付けられた相対的に小さいプレート11e(例えば、ステンレス鋼等の好適な材料製の直径約10cmの金属円板)を有することで、配管11gを介して流れるブライン溶液がプレート11eに当たることによって、流れるブライン溶液が有孔プレート12pの孔を通って下方に流れるのを防止するようにすることができる。留意すべき点として、散水装置(不図示)によって、カラム12の上側部分12uでブライン溶液を噴霧することが可能である。
【0039】
本発明の別の好ましい実施形態(不図示)によれば、ブロワー18が処理済み空気排出口12cに取り付けられており、この場合、その作製は、環境空気流を導入開口12o及び/又は装置10で提供される他の好適な開口(不図示)に強制的に通すために吸引するように行う。
【0040】
レベル測定手段17sから制御ユニット17によって受け取られる信号は、ブライン溶液のレベルに関する指示を提供するものであり、ブラインレベルが許容範囲内にないと測定された場合は必ず、制御ユニット17がディスプレイユニット17d(及び/又は利用可能な場合には音声もしくは視覚的指示の手段)を介して相当する指示を出す。代替手段として又は追加的に、ブラインレベルが許容範囲内にないと測定される場合は必ず、制御ユニット17がシステム10の操作を停止することができる。温度感知手段17t及び加熱要素17hを制御ユニット17が用いて、ブライン溶液14のモニタリング及び加熱を行う。
【0041】
ある特定の好ましい実施形態では、ブライン溶液14の温度を上げ、それによって処理済み空気排出口12cを通ってシステム10を出る処理済み空気5pの流れで蒸気を排出することにより、密閉空間での湿度を制御するのに、装置10を用いることができる。代替手段として又は追加的に、レベル測定手段17sから制御ユニット17が受け取る信号で、装置10がそれを通って流れる環境空気から流体を吸収したことが示された場合は必ず、カラム12中のブライン溶液のレベルが回復してブライン溶液レベルの許容範囲に戻るまで、制御ユニットが加熱要素17hを動かすことができる。
【0042】
装置10の動作の各種態様は、レドックス電極17rから受け取る読取値、特には本明細書中上記で記載された電解槽によるブライン溶液14の活性化のモニタリング及び管理に従って、制御ユニット17が管理することができる。
【0043】
装置10はさらに、本明細書において上記のように酸化剤捕捉性化合物の溶液を保持するための容器15を有し、前記容器は配管15pを介してカラム12の底部分12bと連通している。配管15p上に設けられたバルブ15vを用いて、酸化剤捕捉性化合物の溶液のブラインへの送りを制御して、所望に応じてブラインのレドックス電位を低下させることができる。好ましくは、バルブ15vは、制御ユニット17に電気的に接続された制御可能なバルブである。このようにして、バルブ15vに制御信号を与えてその状態を変え、それによって配管15pを通ってカラム12の底部分12bに入る酸化剤捕捉性化合物の溶液の通過を制御して、ブラインのレドックス電位を低下させるように、制御ユニットを作製することができる。
【0044】
例を挙げると、体積15〜20リットルのブライン溶液がカラム12に入っている。装置10の通常の操作では、制御ユニット17が電解槽17eを作動させてブラインを電解し、ブラインのレドックス電位をレドックス電極17rによって測定されるある値に調節する。レドックス電位が所望の所定レベルを超えたら、バルブ15vを開けるための相当する制御信号を送って、一定量の酸化剤捕捉性化合物の溶液をカラム12の底部分12bに導入することができる。
【0045】
ブロワー18は、好ましくは、制御ユニットからの制御信号を受け取り、それに従って動作を調節することができる一種の制御可能な遠心ブロワー(例えば、PWA又は電圧制御を有する)である。有利には、レドックス電極17rから受け取る読取値に応じてブロワー18によって生じる環境空気流の速度を変えるための制御信号を発生させるように、制御ユニット17を作製することができる。ブライン溶液の中には、そのレドックス電位の急速な上昇によって、通気条件の高まりに応答するものがあることが認められている。このようにして、制御ユニット17により、例えば環境空気流の速度を高めることによって、ブライン溶液のレドックス電位を制御することができる。
【0046】
装置10は、i)本明細書において上述のような、ブライン溶液のレドックス電位が500mV未満である通常の空気処理モード;及びii)電解槽17eを動作させて高いレドックス電位(例:700〜1000ミリボルト)を有するブラインを製造することにより、オキシハロゲン類及び他の酸化剤種を生成し、空気排出口12cからカラム12を出る処理済み空気流により、処理されるべき空間にかなりの量で放出する清浄化モードという二つの主要な操作モードで動作するよう作製することができる。この操作モードは、各種の空間(例えば、部屋、感染した施設、病院の区画)を急速に消毒するのに特に有用である。容器15中に保持されている好適な量の還元剤溶液をブライン溶液14中に送ることにより、装置10の操作モードを清浄化モードから通常処理モードに再度変えて、レドックス電極17rによって行われた測定が、ブラインのレドックス電位が通常の範囲(約200〜400mV)に回復したことを示すようにすることができる。
【実施例】
【0047】
実施例1
貯蔵室の空気中の微生物汚染の負荷量の低減及び人工培地での菌コロニー発生の防止
【0048】
図1に示した装置を、温度11.5℃及び相対湿度93.3%で動作する25mの貯蔵室に入れた。対照貯蔵室は、同様の容積を持ち、温度8.9℃及び相対湿度94.4%で動作させた。装置は、約30重量%の濃度を有する塩化ナトリウム水溶液約15リットルを用いて、96時間にわたって連続運転させた。電解槽は、電流−4アンペア、電圧−5ボルトというパラメータ下で運転した。処理期間中、ブラインのレドックス電位は約850mVに調節した。300m/時の速度で、ブロワーにより空気を装置に導入した。ブロワーは、約470Pa(本発明により動作可能な作業圧は、好ましくは350Pa〜750Paである)の最大圧力で動作させた。
【0049】
空気をサンプリングして、低温貯蔵室中のカビの存在に対する処理の効果を測定した。サンプリングは、200リットルに設定し、カビ及び酵母の検出用の培地片を取り付けたBiotest RCS空気サンプラー(Hylab,イスラエル)を用いて行った。サンプリングは、両方の低温貯蔵室の壁を通って取り付けた特注のアダプターを介して実施した。したがって、空気のサンプリングは、低温貯蔵室に進入することなく行った。サンプリングは、装置動作開始前、及び24時間後、48時間後、72時間後及び144時間後に3回ずつ行った(最終サンプリングは、装置の電源をオフにしてから48時間後に行った)。測定結果を図3に示す。
【0050】
図3は棒グラフであり、横軸は貯蔵室及び対照室中の空気をサンプリングした時点(日数)を示し、縦軸は空気中のカビの量を示す。左側2本の棒は、対照室で実施した測定に相当し、実験開始前(第0日)及び実験開始から6日後でも微生物負荷が高レベルであることを示している。本発明に従って処理した貯蔵室について報告された測定に関しては、言及すべき点として、実験開始から24時間後(第1日)で既に空気汚染レベルにかなりの低下が達成されている。上記で示したように、装置は4日間運転し、72時間後(第3日)に、汚染レベルは約ゼロに低下した。装置動作の中止から2日で、空気汚染レベルが上昇したが(第6日)、第0日に測定された当初レベルよりかなり低かった。
【0051】
上記の空気サンプリングに加えて、ジャガイモブドウ糖寒天(PDA)の入ったシャーレを、24時間及び48時間にわたって両方の低温貯蔵室で曝露した。シャーレのうちの半数には、ボトリティス・シネレアの分生子10個が入った10μLの液滴1滴も接種した。曝露後、シャーレを密閉し、25℃で5日間インキュベートした。寒天皿曝露は、5連からなるものとした。
【0052】
図4は、本発明に従って処理した対照室及び貯蔵室(それぞれ左列及び右列)に置いたシャーレの写真を提供するものである。肉眼で認められるコロニー(ボトリティス・シネレア菌のもの及び明らかに他の菌のもの)の発生が、対照室に置いた全ての寒天皿で明瞭に示されている(図4aは接種されていないPDAプレートに関するものであり、図4cは接種を受けたPDAプレートに関するものである)。
【0053】
対照的に、本発明に従って処理した貯蔵室においた寒天皿では、細菌コロニーは認められなかった(図4bは、接種されていないPDAプレートに関するものであり、図4dは接種を受けたPDAプレートに関するものである)。指摘しておくべき点として、通常の環境下では、汚染した部屋での15分間にわたる寒天皿の曝露で、皿を完全に感染させるには十分である。さらに、寒天皿の中央に24時間置いたボトリティス・シネレアの分生子は、インキュベーションの1週間後であっても肉眼観察されるコロニーを形成せず、それはその分生子が本発明の処理後に活発に殺されたことを示唆している。
【0054】
実施例2
電解ブラインで処理した空気による菌コロニーの破壊
【0055】
本発明に従って電解ブラインによって処理した空気へのボトリティスの分生子の曝露によって、前記分生子が実質的に完全に死滅することを示すため、さらに別の実験を実施した。
【0056】
図1に記載の装置を、実施例1に記載の条件下に、温度9.68±0.35℃及び相対湿度92.9±0.8の低温貯蔵で操作した。比較のために用いた対照貯蔵室では、温度は9.66±0.19℃であり、相対湿度は96.1±1.9であった。
【0057】
下記の3セットのPDAプレートを準備した。
【0058】
セット1:発芽後の分生子−PDAプレートの中央に分生子10個を置いた。プレートを25℃で24時間インキュベートした。次に、プレートを、下記の指定された期間にわたり、電解ブラインで処理した空気に曝露した。
【0059】
セット2:回収したばかりのボトリティスの分生子を、PDAプレート上に置き、下記に記載の指定期間にわたって電解ブラインで処理した空気に直ちに曝した。
【0060】
セット3:分生子のない対照PDAプレート。
【0061】
(全てのセットの)プレートを、0(対照)、1、3、6、12及び24時間という期間にわたり、低温貯蔵室で電解ブラインによって処理した空気に曝露した。次に、プレートを密閉し、対照室に移し、24時間後に、全てのプレートを25℃で4日間インキュベートした。コロニーの発生を、半径方向増殖測定及び写真によって確認した。実験は5連で実施した。
【0062】
第2のセットに関して、結果を図5及び6に示す。図5は、PDAプレートの写真を提供している(写真は、実験開始から6日後に撮ったものであり、インキュベーション前の処理済み空気への各プレートの曝露期間(単位:時)を各プレートの次に示している)。分生子は25℃で7日間インキュベートした後にコロニー増殖せず、コロニーを形成しなかったことから、電解ブラインで処理した空気への24時間にわたる分生子の曝露により、分生子が完全に死滅することは明らかである。電解ブラインで処理した空気へのPDAプレートの曝露期間とPDAプレートで形成されるコロニーの程度との間の相関を図6のグラフに示してあり、そのグラフでは、形成されたコロニーの直径を、処理済み空気へのプレートの曝露期間に対してプロットしている。
【0063】
処理を行う前に24時間にわたって25℃にてPDAプレートで分生子を発芽させた第1のセットに関して、結果を図7に示してあり、図において写真は、電解ブラインで処理した空気へのプレートの曝露から3日後に撮ったものである。24時間の曝露時間の効力が明瞭に認められ、コロニーの半径方向増殖は認められないが、接種スポット上で菌糸が発生した。
【0064】
実施例3
密閉空間の清浄化における活性層の役割を示すため、下記の実験を実施した。
【0065】
実験は二つの低温貯蔵室で行った。その二つの貯蔵室の温度及び湿度レベルは実質的に同じであった(ほぼ11〜12.5℃及び湿度80〜90%)。第1の部屋(部屋1)では、本発明の装置を、電解ブラインが循環し、泡立ち液が形成される条件下で動作させ、第2の部屋(部屋2)は対照として用いた(電解ブラインは循環せずに、空気が装置を通過する)。電解の条件は両方の部屋で同じであった(電解槽は、電流4.1A及び電圧3.6Vで動作させた)。留意すべき点として、実験開始前に部屋1で測定された初期汚染レベルは、対照室について測定された値より高かった。
【0066】
各部屋において、床上から異なる高さを有する二つの位置を設定した(床上25cm又は120cmを、それぞれL又はHとする)。
【0067】
72個のPDAシャーレを準備した。プレートの半数に、上記の方法に従ってボトリティス・シネレアの分生子を接種した。次に、PDAプレート(合計72個)を9個の等しい群(本明細書において、G1、G2、...G9と称する)に分け、各群は4個の非接種PDAプレート及び4個の接種プレートから構成した。各群をさらに二つの同一の下位群に分け、各下位群は2個の接種プレート及び2個の非接種プレートから構成した。
【0068】
プレート群G1、G2...G9を、異なる開始時間及び/又は異なる曝露期間で二つの部屋に置き、各群8個のメンバーを次のように分けた。すなわち、各部屋(1及び2)において、接種プレート及び非接種プレート(それぞれI及びNと称する)からなる1対を、二つの使用可能な位置(L及びH)のそれぞれに配置した。所定の期間後、所定の群に属する8個のプレートを25℃で72時間のインキュベーションに移し、その後に各プレートを調べて、そこで形成されたコロニーの数を求めた。
【0069】
下記の表は、上記の取り決めをまとめたものであり、各プレート群を部屋に置いた時点、その群を装置の動作に曝露した処理期間を示しており、各プレートについて、肉眼で認められるコロニー数を報告している。
【表1】

【0070】
上記の表に報告されている結果は、泡立ち液が形成される条件下で500mVを超える(700〜900mV)レドックス電位を有するブラインと混合することができた空気に対するボトリティスの分生子の曝露により、前記分生子の実質的に完全な死滅が生じることを示している。泡立ち液が形成されなかった場合には、劣った結果(コロニー発生増加に関して)が認められた。
【符号の説明】
【0071】
5 空気
7 地面
10 装置
11 ポンプ
12 カラム
12c 空気排出開口
12o 空気導入開口
12w 壁
14p 有孔プレート
14 ブライン溶液
17 制御ユニット
17e 電解槽
17r レドックス電極
18 ブロワー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流を処理ゾーンを通って上方に流し、実質的に水平に配列された有孔表面上で、500mV以上のレドックス電位を有するブライン溶液流と接触させることで、ブラインと空気が混合する活性層を前記水平方向に配列された有孔表面上に形成する段階;並びに前記処理ゾーンを出る処理済み空気を、清浄化されるべき空間に送り込む段階を有する、室内空気の生物的汚染を低減し、密閉空間における壁面及び表面を清浄化する方法。
【請求項2】
処理ゾーンが、ブライン溶液流が下方に流れる、垂直に配置されたカラムによって提供される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
500mVを超えるレドックス電位を有するブライン溶液が、電解槽での電解によって生じる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
処理ゾーンを出る処理済み空気によって運ばれるブライン溶液の液滴を、処理済み空気から分離する段階をさらに有する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ブライン溶液のレドックス電位を500mVより下から500mVより上の範囲で時々変える段階をさらに有し、前記レドックス電位は電解的、機械的又は化学的に調節され、前記電解的調節がブラインを電解する段階を有し、前記機械的調節が処理ゾーン内での流動特性を変える段階を有し、前記化学的調節がブラインを酸化剤捕捉性化合物で処理する段階を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸化剤捕捉性化合物が、亜硫酸、重亜硫酸、チオ硫酸、メタ重亜硫酸、ハイドロサルファイト化合物又はそれらの混合物からなる群から選択される硫黄含有剤を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
定期的又は連続的にブライン溶液のレドックス電位を測定する段階、及びレドックス電位の測定値に基づいて、電解的、機械的又は化学的にブラインのレドックス電位を調節する段階をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
密閉空間中の塩素レベルを定期的又は連続的に測定する段階、及び電解的又は化学的に塩素レベルを調節する段階をさらに有し、空気を処理ゾーンに流し、そこで水平方向に配列された有孔表面上で酸化剤捕捉性化合物の溶液と接触させることにより、密閉空間での塩素レベルの低下を化学的に行う請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ブライン溶液が10%(w/w)以上の塩濃度を有し、前記ブライン溶液が式MX、MX及びMXによって表される1以上の水溶性塩を含み、式中Xは塩素、臭素、ヨウ素、硫酸及び硝酸アニオンからなる群から選択され、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛並びにこれらの混合物からなる群から選択される金属カチオンを示す請求項1に記載の方法。
【請求項10】
a)水平方向に配列された有孔表面が内部に配置された気液接触カラムであって、前記有孔表面が前記カラムを、少なくとも1個の空気導入開口が設けられた第1のセクション及び少なくとも1個の空気排出開口が設けられた第2のセクションに分けている気液接触カラム;
b)前記有孔表面より上で且つ前記空気排出開口より下の個所にある前記第2のセクション中への供給ラインによって接続された、液体を保持するための貯留部;そして
1以上の下記:
c1)前記貯留部又は前記供給ラインに設置された電極を有する電解槽;
C2)物理的に前記カラムに取り付けられているか、別個のユニットとして提供されていてもよい液滴分離装置;
C3)前記カラムにおいて空気流を強制的に上方に流す手段;
C4)前記貯留部内に保存されているブライン溶液
を有する装置。
【請求項11】
貯留部又は供給ラインのいずれかに電極が設置されている電解槽、及び液滴分離装置を有する請求項10に記載の装置。
【請求項12】
貯留部又は供給ラインのいずれかに電極が設置されている電解槽、及び空気導入開口に接続された空気吹き出しユニットを有する請求項10に記載の装置。
【請求項13】
液滴分離装置ユニット、及び空気導入開口に接続された空気吹き出しユニットを有する請求項10に記載の装置。
【請求項14】
装置がさらに測定電極及び参照電極を有し、それら電極は前記装置で作用する液体のレドックス電位を測定するために前記装置に配置されている請求項10に記載の装置。
【請求項15】
c1)貯留部又は供給ラインのいずれかに設置された電極を有する電解槽;
C2)物理的に前記カラムに取り付けられているか、別個のユニットとして提供されていてもよい液滴分離装置;
C3)空気吹き出しユニット
を有する請求項14に記載の装置。
【請求項16】
貯留部内に塩濃度が10%(w/w)以上であるブライン溶液をさらに含み、前記ブライン溶液が、式MX、MX及びMXによって表される1以上の水溶性塩を含み、式中Xは塩素、臭素、ヨウ素、硫酸及び硝酸アニオンからなる群から選択され、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛並びにこれらの混合物からなる群から選択される金属カチオンを示す請求項15に記載の装置。
【請求項17】
レベル測定手段、温度感知手段及び加熱要素をさらに有し、それらはいずれも気液接触カラムの第1のセクションに取り付けられており、測定電極、レベル測定手段及び/又は温度感知手段から受け取る指示信号に応答して、前記加熱要素、電解槽、空気吹き出しユニットを動作させるように作製されている制御ユニットに電気的に連結されている請求項15に記載の装置。
【請求項18】
塩素センサーをさらに有する請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−516107(P2011−516107A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−548247(P2010−548247)
【出願日】平成21年3月1日(2009.3.1)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000227
【国際公開番号】WO2009/107138
【国際公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(510232474)メガイア リミテッド (1)
【Fターム(参考)】