説明

空気布団装置

【課題】使用者が寝たときの姿勢に拘わらず布団が使用者に沿って変形することができる空気布団装置を提供する。
【解決手段】袋体2を空気の通過を阻止するシート3,4によって構成する。袋体2内に空気を供給する空気供給源8を接続する。袋体2内の空気の圧力が所定の圧力以下では閉弁し、所定の圧力以上では開弁して袋体2内の空気が外部に放出する開閉弁10を袋体2に接続する。これにより、袋体2内の圧力を一定の大きさに維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、掛け布団として用いられる空気布団装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、羽毛布団より軽く、かつ断熱性優れ、しかも収容及び搬送を容易にことができる掛け布団として空気布団が提案されている。空気布団は、密封性を有する袋体と、その内部に封じ込められた空気とによって構成されている。(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−192977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の空気布団は、使用者の姿勢によっては使用者と空気布団との間に隙間が生じてしまうという問題があった。すなわち、図6に示すように、使用者Mが仰向きに寝ており、このときに空気布団Fが使用者Mの身体に沿うことができるような所定量の空気が空気布団F内に入れられているものとする。図7に示すように、使用者Mが横向きに寝ると、使用者Mと空気布団Fとの上下方向における接触面積が、使用者Mが仰向きに寝ているときの接触面積より小さくなる。その結果、使用者M上に位置する空気布団Fの中央部分に作用する圧力が増大し、当該部分の厚さが薄くなる。しかるに、空気布団F内の空気量は一定である。このため、空気布団F内の圧力が若干上昇するとともに、空気布団Fの左右両側の部分の厚さが厚くなり、形状維持力(以下、保形性という。)が増大する。この結果、空気布団Fの両側部が使用者Mの人体に沿うように変形することができなくなり、空気布団Fと使用者Mとの間に比較的大きな隙間Sが生じてしまうのである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記の問題を解決するために、シートからなり、内部に空気を収容する袋体と、この袋体の内部に空気を供給する空気供給手段と、上記袋体がその形状を人体に沿った形状に変化させることができるように、上記袋体内の空気量を調節する空気量調節手段とを備えたことを特徴としている。
この場合、上記空気量調節手段が開閉弁であり、上記開閉弁は、上記所定袋体内の圧力が所定の圧力以下では閉弁する一方、所定の圧力以上になると開弁して上記袋体内の空気を外部に放出し、それによって上記袋体内の空気量を調節することが望ましい。開閉弁を用いれば、袋体内の圧力を所定の圧力以下に維持することができ、布団を使用者に確実に沿わせることができる。
また、上記袋体を構成するシートの少なくとも一部が所定の大きさの抵抗をもって空気の流通を許容するような通気性を有しており、上記シートが、その流通抵抗によって上記袋体内の空気量を調節することにより、上記空気量調節手段として兼用されていることが望ましい。このように構成した場合には、空気量調節手段を別途設ける必要がないので、その分だけ空気布団装置の製造費を低減することができる。
【発明の効果】
【0005】
この発明の空気布団装置によれば、空気量調節手段が袋体内の空気の量を調節するので、布団を使用者の人体に確実に沿わせることができ、布団と使用者との間に隙間が生じるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1及び図2は、この発明の第1実施の形態を示す。この実施の形態の空気布団装置は、布団1を有している。布団1は、平面視長方形をなしており、袋体2を備えている。袋体2には空気が供給されるようになっている。布団1は、長方形以外の形状、例えば円形であってもよい。
【0007】
袋体2は、上下2枚のシート3,4及び仕切り5,6によって構成されている。シート3,4は、空気の透過を阻止することができる材質からなるものであり、布団に用いるのに好適な材質が選択される。シート3,4は、布団1の平面視形状に対応して縦長の長方形をなしており、上下に重ねられている。そして、シート3,4の周縁部が、縫製、接着、その他の手段により全周にわたって固着されている。勿論、袋体2は、他の方法によって製造することも可能である。例えば、長いシートをその中央部で折り返して重ね、折り返された部分を除く周縁部を気密に固着することによって製造することができる。
【0008】
シート3,4の間には、仕切り5,6が配置されている。仕切り5,6は、シート3,4と同様な材質によって構成されている。仕切り5,6は、帯状をなしており、その長手方向を布団1の長手方向に向けるとともに、幅方向を上下方向に向けた状態で配置されている。仕切り5,6の幅方向(図2における上下方向)の両側部は、シート3,4に縫製、接着、その他の手段によってそれぞれ固着されている。
【0009】
上記のようにして袋体2が構成されている。したがって、袋体2は、上下方向の厚さが仕切り5,6によりそれらの幅より厚くならないように制限されている。しかも、袋体2の内部は、仕切り5,6によって複数の縦長の空間に区分されている。ここで、仕切り5は、その一端部(図1において下端部)が袋体2の一端部に固着され、他端部が袋体2の他端部から離間させられている。逆に、仕切り6は、その一端部(図1において下端部)が袋体2の一端部から離間させられ、他端部が袋体2の他端部に固着されている。しかも、袋体2の幅方向(図1において左右方向)の中央部には、二つの仕切り5,5が同方向に所定間隔をもって配置され、各仕切り5,5から所定の間隔毎に仕切り6、仕切り5が交互に配置されている。したがって、仕切り5,6によって区分された各空間は袋体2の一端側又は他端側において互いに連通している。
【0010】
袋体2の一端部には、空気導入口7が設けられている。この空気導入口7は、袋体2の幅方向の中央部に配置されており、同方向の中央部に配置された仕切り5,5によって区分された空間に連通している。空気導入口7には、空気ポンプ等の空気供給源(空気供給手段)8が接続されている。したがって、空気供給源8から供給される空気は、まず仕切り5,5によって区分された空間内に流入し、その後、図1において矢印で示すように流れて他の空間に順次流入する。これにより、袋体2全体に空気が供給される。そして、袋体2内に空気が供給されることにより、布団1が構成されている。
【0011】
袋体2の一端部には、空気導出口9,9が設けられている。空気導出口9,9は、袋体2の幅方向の両端部に位置する空間にそれぞれ連通している。空気導出口9,9は、開閉弁10を介して外部に開放されている。開閉弁10は、袋体2内の空気の圧力が所定の圧力以下であるときには閉弁し、所定の圧力以上になると開弁する。したがって、袋体2内の空気の圧力は、短時間を除き、所定の圧力に維持されている。ここで、所定の圧力とは、布団1を掛け布団として用いていない自然状態において袋体2が自己の形状を保持することができ、かつ、布団1を掛け布団として用いたとき、布団1が人体に沿って変形することができるような柔軟性を布団1に持たせることができるだけの圧力である。すなわち、所定の圧力とは、静圧といわれる圧力であり、1〜3mmH2Oに設定される。
【0012】
次に、このように構成された本実施形態における空気布団装置の作用について説明する。なお、上記構成の空気布団装置を用いる場合には、使用者が寝ている間、空気供給源8から袋体2内に空気を供給し続けるものである。
まず、空気供給源8から袋体2内に空気を供給する。袋体2内の空気の量が所定の量になり、それに伴って袋体2内の圧力が所定の圧力に達すると、開閉弁10が開弁する。これにより、袋体2内の圧力が所定の圧力に維持される。それから、空気供給源8から袋体2内に空気を供給し続けながら、横たわった使用者の上に布団1を掛ける。勿論、袋体2を使用者の上に掛けた後、袋体2内に空気を供給するようにしてもよい。
この状態で、空気供給源8から空気を供給し続けるが開閉弁10から空気が流出していくため、袋体2内の圧力が所定の圧力に維持される。したがって、使用者と布団1との間に大きな隙間を生じさせないようにすることができる。
【0013】
すなわち、いま使用者が仰向けに寝ており、使用者と布団1との間に大きな隙間が生じていないものとする。その状態で、使用者が寝返りをうって横向きになったときには、布団1の幅方向の中央部と使用者との接触面積が減少し、布団1の中央部に作用する圧力が増大する。この結果、当該部分の厚さが薄くなり、その分だけ布団1の中央部にあった空気の一部が布団1の左右両側部に移動する。このため、布団1に開閉弁10が設けられていないならば、布団1の両側部の厚さが増大するとともに、布団1内の空気の圧力を若干上昇させるはずである。しかるに、実際には、布団1内の圧力が所定の圧力を越えると、開閉弁10がより大きく開弁し、空気供給源8から袋体2内に供給される空気の量より多くの空気を布団1から外部に放出する。そして、一旦上昇した袋体2内の圧力を、布団1が使用者に沿って変形することができるような圧力まで低下させる。したがって、使用者が横向きになったときにも使用者と布団1との間に大きな隙間が生じるのを防止することができる。
【0014】
使用者が横向きから再び仰向きになったときには、袋体2内の空気の圧力が一旦所定の設定圧より若干低下するので、開閉弁10が閉弁する。すると、空気供給源8から袋体2内に空気が供給され続けていることにより、袋体2内の空気の圧力が上昇する。そして、袋体2内の空気の所定の設定圧に戻ると、開閉弁10によって袋体2内の圧力が一定に維持される。
【0015】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態については、上記実施の形態と異なる構成についてのみ説明し、同様な構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0016】
図3及び図4は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態の空気布団装置においては、シート3,4間に中間シート11が設けられている。中間シート11は、シート3,4と同様の材質によって構成されており、中間シート11によって袋体2の内部空間が上下二つの空間に区分されている。下側の空間のうち、中央の二つの仕切り5,5によって区分される空間に空気導入口7が連通している。したがって、空気供給源8から供給される空気は、最初に下側の空間のうちの左右方向の中央部に位置する空間に導入される。なお、導入される空気は、加熱手段(図示せず)により所定の温度に加熱されている。中央部に導入された空気は、図3において実線で表された矢印で示すようにして下側の空間内を流れる。そして、下側の空間のうちの最も下流側に達すると、中間シート11に設けられた連通孔11a、その他の連通手段を通って上側の空間内に流入する。上側の空間に流入した空気は、破線で表す矢印で示すように袋体2の幅方向の中央部に向かって流れ、空気導出口9を通り開閉弁10を介して外部に放出される。
【0017】
図5は、この発明の第3実施の形態を示す。この実施の形態の空気布団装置においては、袋体2の長手方向に延びる縦仕切り12と、袋体2の幅方向に延びる横仕切り13とが用いられている。縦仕切り12は、袋体2の長手方向の一端から他端まで延びている。横仕切り13は、袋体2の幅方向の一端から他端まで延びている。したがって、袋体2の内部空間は、両仕切り12,13によって互いに独立した多数の小さい空間に区分されている。ただし、両仕切り12,13は、空気をほとんど抵抗なく通過させる材質、例えば目の粗い布等によって構成されている。したがって、空気供給源8から空気導入口7を介して一つの小空間に導入された空気は、仕切り12,13を通って袋体2内の全ての小空間に流入する。
【0018】
また、袋体2を構成するシート3,4のうちの上側のシート3は、空気の流通を所定の大きさの抵抗をもって許容する材質によって構成されている。したがって、空気供給源8から袋体2内に流入した空気は、袋体2内の圧力が所定の圧力になるまでは袋体2内に溜まって袋体2を膨らませるが、所定の圧力に達すると、空気供給源8から袋体2内に供給される空気の量と、シート3を通過して外部に流出する空気の量が同一になり、それ以上空気袋体2内に溜まることがない。つまり、袋体2内が所定の圧力に達した後は、空気供給源8から袋体2に供給される空気量と同一量の空気がシート3を通って外部に流出する。これにより、袋体2内の空気量は、布団1が使用者の人体に沿って変形することができるような量に調節されている。このように、袋体2内に供給された空気がシート3を通って外部に流出するので、空気導出口9が設けられていない。しかも、空気の流通を所定の抵抗をもって許容する目を有するシート3が空気量調節手段として機能するので、開閉弁10も設けられていない。なお、この実施の形態では、空気供給源8として一定の空気を袋体2内の供給し続けることができるものが採用されている。また、シート4がシート3と同様の材質によって構成されることもある。
【0019】
(実施例)
次に、この発明による上記効果を確認するために行った実施例を紹介する。この実施例は、第3実施の形態を実施したものであり、シート3,4が110本ブロードで構成されている。シート3は、2mmH2Oの圧力を掛けたとき、61cm・cm・secの空気がシート3を通過するだけの生地の目を有している。袋体2の総重量は、0.279056kgである。仕切り12の間隔A,Bは、それぞれ39cm、40cmであり、仕切り13の間隔C,Dは、それぞれ45.5cm、43cmである。袋体2の仕切り12,13によって区分される各部の重さは、各部の面積に比例している。
このように構成された袋体2に空気供給源8から0.3cm/minで空気を送り続けたところ、使用者が仰向けに寝たときも、横向きに寝たときも使用者と布団1との間に大きな隙間が発生することなく、布団1を使用者に沿わせることができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の第1実施の形態を示す平面図である。
【図2】図1のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図3】この発明の第2実施の形態を示す平面図である。
【図4】図3のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図5】この発明の第3実施の形態を示す平面図である。
【図6】布団を仰向きに寝た使用者の上に掛けた状態を示す模式図である。
【図7】布団を横向きに寝た使用者の上に掛けた状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0021】
1 布団
2 袋体
3 シート
4 シート
8 空気供給源(空気供給手段)
10 開閉弁(空気量調節手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートからなり、内部に空気を収容する袋体と、この袋体の内部に空気を供給する空気供給手段と、上記袋体がその形状を人体に沿った形状に変化させることができるように、上記袋体内の空気量を調節する空気量調節手段とを備えたことを特徴とする空気布団装置。
【請求項2】
上記空気量調節手段が開閉弁であり、上記開閉弁は、上記所定袋体内の圧力が所定の圧力以下では閉弁する一方、所定の圧力以上になると開弁して上記袋体内の空気を外部に放出し、それによって上記袋体内の空気量を調節することを特徴とする請求項1に記載の空気布団装置。
【請求項3】
上記袋体を構成するシートの少なくとも一部が所定の大きさの抵抗をもって空気の流通を許容するような通気性を有しており、上記シートが、その流通抵抗によって上記袋体内の空気量を調節することにより、上記空気量調節手段として兼用されていることを特徴とする請求項1に記載の空気布団装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−202775(P2007−202775A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25017(P2006−25017)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000141299)株式会社丸八真綿 (10)
【Fターム(参考)】