説明

空気浄化システム

【課題】
本発明の課題は、室内の床面に沈積、再飛散しやすい花粉やアレルゲン粒子を効率よく捕集および除去する空気清浄システムを提供することにある。
【解決手段】
室内の空気を吸い込むための吸込口と、吸込口から吸い込んだ空気を再び室内に供給するための吹出口と、当該吸込口と当該吹出口とを連通する循環流路と、当該循環流路の途中に配置され、当該吸込口から吸い込んだ空気中に含まれている花粉やアレルゲン粒子を除去する塵埃除去手段と、花粉やアレルゲン粒子が除去された空気を当該吹出口へ送るため送風機とから成る室内の花粉やアレルゲン粒子を除去するための空気清浄システムであって、当該吸込口は室内の高さを3分割した場合の下方1/3の高さ範囲に配置され、当該吹出口は、同じく上方1/3の高さ範囲に配置される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の花粉やアレルゲン粒子などを効率よく除去し、室内全体に清浄な空気を供給する空気清浄システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気清浄機としては、本体ケースの内部に送風機とフィルタを配設し、送風機の駆動により本体ケースに設けた吸込口より室内空気を吸引してフィルタに通し、室内空気中に含まれる花粉やアレルゲン粒子を除去し、浄化した空気を吹出口より放出するタイプのものが一般的に知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる空気清浄機は室内の床面付近に沈積、再飛散した花粉やアレルゲン粒子を効率よく捕集していないという課題があった。
【0004】
本発明の課題は、室内の床面に沈積、再飛散しやすい花粉やアレルゲン粒子を効率よく捕集および除去する空気清浄システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された空気清浄システムでは、室内の空気を吸い込むための吸込口と、吸込口から吸い込んだ空気を再び室内に供給するための吹出口と、当該吸込口と当該吹出口とを連通する循環流路と、当該循環流路の途中に配置され、当該吸込口から吸い込んだ空気中に含まれている花粉やアレルゲン粒子を除去する塵埃除去手段と、花粉やアレルゲン粒子が除去された空気を当該吹出口へ送るため送風機とから成る室内の花粉やアレルゲン粒子を除去するための空気清浄システムであって、当該吸込口は室内の高さを3分割した場合の下方1/3の高さ範囲に配置され、当該吹出口は、同じく上方1/3の高さ範囲に配置される構成とした。
【0006】
また請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の空気清浄システムであって、室内入り口外部に、更にエアーシャワーを備えた構成とした。
【0007】
また請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の空気清浄システムであって、塵埃除去手段がフィルタ式集塵装置、静電気式集塵装置、あるいはフィルタ式集塵装置と静電気式集塵装置の組み合わせた装置の内のいずれかの装置によるものである構成とした。
【0008】
また請求項4に記載の発明では、請求項1乃至3のいずれかに記載の空気清浄システムであって、循環流路の塵埃除去手段の上流側に、更に外気取入口が設けられている構成とした。
【0009】
更に、請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4のいずれかに記載の空気清浄システムであって、室内の圧力を外気圧よりも高く維持するための加圧装置を更に備えている構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸込口を室内の高さを3分割した場合の下方1/3の高さ範囲に配置し、吹出口を同じく上方1/3の高さ範囲に配置するようにすることにより、室内の上方から下方に向かう空気の流れを誘起させるようにしたため、床面付近に滞留しやすい花粉やアレルゲン粒子を効率よく捕集し、また塵埃除去手段により花粉やアレルゲン粒子を除去した空気を室内全体へ供給することで、室内の空気清浄度が高い快適な空間環境を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0012】
実施例1に係る空気清浄システム1を図1に示す。
空気清浄システム1は、図1に示すように、主に吸込口11、吹出口12、還気ダクト13(循環流路)、給気ダクト14(循環流路)、空気清浄機本体17から構成されている。そして、空気清浄機本体17は、塵埃除去装置15(塵埃除去手段)と送風機16から構成されている。
【0013】
吸込口11は、室内の空気を吸い込むための開口であり床面または室内の高さを3分割した下方1/3の高さ範囲に配置する。吹出口12は、空気清浄機本体17により花粉やアレルゲン粒子を除去した清浄空気を吹き出すための開口であり天井面または室内の高さを3分割した上方1/3の高さ範囲に配置する。還気ダクト13は、吸込口11と空気清浄機本体17をつなぎ、室内の空気を空気清浄機本体17へ送るものである。給気ダクト14は、吹出口12と空気清浄機本体17をつなぎ、空気清浄機本体17により花粉やアレルゲン粒子を除去した清浄空気を吹出口へ送るものである。なお、ここで、還気ダクト13と給気ダクト14を総称して循環流路と呼ぶことにする。塵埃除去装置15(塵埃除去手段)は、花粉やアレルゲン粒子を取るための装置であり、フィルタ式集塵装置または静電式集塵装置、またはフィルタ式集塵装置と静電式集塵装置を組み合わせたものである。送風機16は、主に図示しない送風ファンとファンモーターとから構成される。ファンモーターは、送風ファンを駆動し、空気の流れが生成される。なお、この送風ファンは、給気ダクト14を介して室内に空気清浄空気を配送する。
【0014】
本発明にかかる空気清浄システム1は吸込口11を床面または室内の高さを3分割した下方1/3の高さ範囲に配置することにより、床面付近に滞留しやすい花粉やアレルゲン粒子など比較的大きい粒子を効率的に捕集する。また床面に沈積した花粉やアレルゲン粒子が人の通行などにより再飛散した場合にも、速やかに吸込むことで室内の空気清浄度を常に高く保つことができる。
【0015】
また吹出口12を天井面または室内の高さを3分割した上方1/3の高さ範囲に配置することにより、天井面付近から床面付近へ向かって清浄空気の流れが生じ、その結果清浄空気が室内全体へ供給される。また天井面付近から床面付近に向かって気流を形成することで、室内に浮遊している花粉やアレルゲン粒子を吸込口11の方向へ流れるようにするものである。
【0016】
また吸込口11および吹出口12の個数および配置は部屋の大きさや形状に合わせて個数を決定し、均等に配置するのが望ましい。
【0017】
また吹出口の種類は、アネモ型ディフューザーやVHS型レジスタなど室内全体の空気を拡散混合するようなものが望ましい。
【0018】
また還気ダクト13および給気ダクト14の内面は、亜鉛鉄板などの金属製の材料または塩化ビニルなどの有機樹脂など、材料自体から発塵がほとんど発生しないものを使用することが望ましい。
【0019】
また塵埃除去装置15は、中性能フィルタ(JISB9908の比色法にて90%以上の捕集率を有するもの)以上の性能を有するものを使用することが望ましい。またHEPAフィルタ(0.3μm以上の粒子を99.97%以上の効率で捕集するもの)以上の性能を有するものであれば、花粉の外表面に付着しているオービクルと呼ばれる数μm以下の微粒子も除去することができ、より望ましい。
【0020】
また送風機16の1時間当たりの送風量は室内気積(室内の床面積x高さ)の5倍以上とするが望ましい。またこのとき扉や窓など外部と接する部分から室内へ流入する風量は室内の体積の0.5倍以下とするように、外部との隙間や室内換気量を調整する。これにより外部から侵入する空気に含まれる花粉やアレルゲン粒子を室内の清浄な空気と混合希釈し、さらに混合希釈した空気を空気清浄機本体17に組み込まれた塵埃除去装置15により花粉やアレルゲン粒子を除去することで、室内の空気清浄度を高く保つものである。
【実施例2】
【0021】
図2は本発明の他の実施形態を示す空気清浄システムである。この空気清浄システム2と図1との違いは、図1の空気清浄システムに室内入り口外部にエアーシャワー18を追加した点である。この結果、屋外から室内へ入室する時に持ち込まれる人体や物品に付着した花粉やアレルゲン粒子を取り除き、外部から室内への花粉の侵入を阻止するものである。
【0022】
またエアーシャワー18は、屋外から室内へ入る箇所に設けるもので、屋外用の扉、前室、屋内用の扉から構成されており、屋外用の扉が開いている時は、室内用の扉が開かないような機能を有しているものである。
【0023】
またエアーシャワーの前室には吹出口および吸込口および塵埃除去装置を有するものとし、前室において室内に入る人または物に吹出口から高速の空気を吹き出すことにより、人や物の表面に付着した花粉やアレルゲン粒子を吹き飛ばし、吹き飛ばした花粉やアレルゲン粒子を吸込口により吸い込むものである。また吸い込んだ空気は塵埃除去装置により、花粉やアレルゲン粒子を除去した後に、再度吹出口から吹き出すものである。
【実施例3】
【0024】
図3は本発明の他の実施形態を示す空気清浄システムである。この空気清浄システム3と図1との違いは、図1の空気清浄システムに外気ダクト19および外気取り入れ口20および外気用塵埃除去装置21を追加した点である。この結果、外部から室内へ流入する空気に含まれる花粉やアレルゲン粒子を外気用塵埃除去装置21および空気清浄機本体17に組み込まれている塵埃除去装置15により除去するため、室内への花粉やアレルゲン粒子の侵入を防ぐものである。
【0025】
また外気ダクト20は、亜鉛鉄板などの金属製の材料または塩化ビニルなどの有機樹脂など、材料自体から発塵がほとんど発生しないものを使用することが望ましい。
【0026】
また外気用塵埃除去装置は、粗じんフィルタ(JISB9908の重量法にて90%以上の捕集率を有するもの)以上の性能を有するものを使用することが望ましい。
【実施例4】
【0027】
図4は本発明の他の実施形態を示す空気清浄システムである。この空気清浄システム4と図3との違いは、差圧検出器22、差圧調節器23、インバーター24が追加されている点である。図4において差圧検出器22により室内と屋外の差圧を検出し、差圧調整器23により検出した差圧が設定差圧になるようにインバーター24の周波数を変更することで、室内外の差圧が常に一定となるよう制御をする。この結果、室内は常に屋外に対して正圧となるように設定することができ、外気が室内へ侵入するのを防ぐため、室内への花粉やアレルゲン粒子の侵入を防ぐものである。
【0028】
また排風機が設置されている場合は、排風機にもインバーターを設置し、差圧検出器22で検出した差圧が設定差圧になるように差圧調整器23により送風機16および排風機のインバーター24の周波数を変更する。インバーター24の周波数は送風機による外気取り入れ量が排風機による室内排気量よりも常に多くなるように設定することもできる。
【0029】
その他、差圧ダンパを設置し、室内圧力を外部の圧力を保つ方法がある。これは送風機16による外気取り入れ量が室内から屋外へ流れる排気量より多くし、室内の圧力が屋外の圧力より常に高くなるように差圧ダンパの錘を調整するものである。
【0030】
以下に本発明の有利性を確認するための試験結果について説明する。
表1は吸込口11を壁面下方1/3範囲に設置し、吹出口12を天井面または壁面上方1/3範囲に設置した場合の室内粉塵濃度の変動および除去率を表したものである。吹出口12を天井面に設置した場合(表中、「天井吹出」と表示)は4つの吹出口12を天井面に均等に配置した。また吹出口12を壁面に配置した場合(表中、「壁吹出」と表示)は、1つの吹出口12を壁面に設置した。また還気ダクト13および給気ダクト14の内面はポリエステル不織布にポリプロピレン不織布を表面に貼り付けたものとした。また塵埃除去装置は0.3μm以上の粒子を9997%以上の効率で捕集するものを使用した。また送風機16の1時間当りの送風量は室内気積の5倍の送風量とした。表1から分かるように、吸込口11および吹出口12を本発明にかかる条件で設置することにより、花粉やアレルゲン粒子の大きさである10μm以上の粒子が、99%以上除去されていることが確認できた。
【表1】

表1は、室内における空気清浄システム運転前後での粉塵濃度と除去率を表した表である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の空気清浄システムは、花粉やアレルゲン粒子が非常に少ない空間を実現することで、花粉やアレルゲン粒子などにアレルギー反応を示す人たちに快適な環境を提供する場合に利用することができる。
【0032】
また表1より、1μm以上の粒子が80%以上除去されていることから、喘息などの呼吸器に起因する疾患を有している人たちに快適な環境を提供する場合にも、本発明にかかる空気清浄システムを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1に係る空気清浄システムの概略図である。
【図2】実施例2に係る空気清浄システムの概略図である。
【図3】実施例3に係る空気清浄システムの概略図である。
【図4】実施例4に係る空気清浄システムの概略図である。
【符号の説明】
【0034】
1,2,3,4 空気清浄システム
5 屋外
6 室内
11 吸込口
12 吹出口
13 還気ダクト
14 給気ダクト
15 塵埃除去装置
16 送風機
17 空気清浄機
18 エアーシャワー
19 外気取り入れ口
20 外気ダクト
21 外気用塵埃除去装置
22 差圧検出器
23 差圧調節器
24 インバーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空気を吸い込むための吸込口と、吸込口から吸い込んだ空気を再び室内に供給するための吹出口と、当該吸込口と当該吹出口とを連通する循環流路と、当該循環流路の途中に配置され、当該吸込口から吸い込んだ空気中に含まれている花粉やアレルゲン粒子を除去する塵埃除去手段と、花粉やアレルゲン粒子が除去された空気を当該吹出口へ送るための送風機とから成る室内の花粉やアレルゲン粒子を除去するための空気清浄システムであって、当該吸込口は室内の高さを3分割した場合の下方1/3の高さ範囲に配置され当該吹出口は、同じく上方1/3の高さ範囲に配置されることを特徴とする空気清浄システム。
【請求項2】
請求項1に記載の空気清浄システムであって、室内入り口外部に、更にエアーシャワーを備えていることを特徴とする空気清浄システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気清浄システムであって、前記塵埃除去手段がフィルタ式集塵装置、静電気式集塵装置、あるいはフィルタ式集塵装置と静電気式集塵装置の組み合わせた装置の内のいずれかの装置によるものであることを特徴とする空気清浄システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の空気清浄システムであって、前記循環流路の塵埃除去手段の上流側に、更に外気取入口が設けられていることを特徴とする空気清浄システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の空気清浄システムであって、室内の圧力を外気圧よりも高く維持するための加圧装置を更に備えていることを特徴とする空気清浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−92260(P2009−92260A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261010(P2007−261010)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(500528923)セコムテクノサービス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】