空気浄化装置およびそれを用いた空気浄化方法
【課題】臭気成分を処理するための放電面積を増大させて、臭気成分を効率的に分解除去することができる空気清浄化装置およびそれを用いた空気浄化方法を得ることを目的とする。
【解決手段】基材および基材に担持される触媒で構成され、かつ給電極7a〜7dが接した状態に配設される導電性の吸着材8a〜8dおよび吸着材8a〜8dに対向して配設される高圧電極9a〜9dを有する複数の浄化部4a〜4dと、給電極7a〜7dと高圧電極9a〜9dとの間に高電圧を印加するための高圧電源5aと、を備え、処理ガス6の臭気成分を、吸着材8a〜8dに吸着させ、高圧電極9a〜9dと吸着材8a〜8dとの間に放電プラズマを発生させて、放電プラズマにより生成される活性種により臭気成分を分解除去する空気浄化装置において、複数の浄化部4a〜4dが、隣接する高圧電極と吸着材8a〜8dとの間の距離を等間隔にして、処理ガス6の気流方向に配設される。
【解決手段】基材および基材に担持される触媒で構成され、かつ給電極7a〜7dが接した状態に配設される導電性の吸着材8a〜8dおよび吸着材8a〜8dに対向して配設される高圧電極9a〜9dを有する複数の浄化部4a〜4dと、給電極7a〜7dと高圧電極9a〜9dとの間に高電圧を印加するための高圧電源5aと、を備え、処理ガス6の臭気成分を、吸着材8a〜8dに吸着させ、高圧電極9a〜9dと吸着材8a〜8dとの間に放電プラズマを発生させて、放電プラズマにより生成される活性種により臭気成分を分解除去する空気浄化装置において、複数の浄化部4a〜4dが、隣接する高圧電極と吸着材8a〜8dとの間の距離を等間隔にして、処理ガス6の気流方向に配設される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気清浄機などの空気浄化装置およびそれを用いた空気浄化方法に関し、特にたばこ臭に含まれるアセトアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOCs:Volatile Organic Compounds)やアンモニアなどの化学物質を含んだ臭気成分を効率よく分解除去可能な空気浄化装置およびそれを用いた空気浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の新築や改築において、揮発性有機化合物や化学物質を含む臭気成分を放つ建材や内装材が数多く使用されている。さらに室内の高気密化が進んだことにより、臭気成分が室内の空気を汚染して、居住者が体調を崩すという事例が報告されている。それらの症状は多様で、症状発生の仕組みをはじめ、解明されていない事柄も多く、「シックハウス症候群」と呼ばれている。
そのため、室内空気質(IAQ:Indoor Air Quality)の改善が望まれ、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、アンモニアなどの臭気成分は、建築基準法などの法令で室内上限濃度が定められている。これら臭気成分の除去方法は、活性炭などの吸着材に化学物質を吸着し除去する方法が一般的であった。しかしながら、この方法では吸着材における臭気成分の吸着能力は短期間のうちに飽和するので、空気浄化能力が低下される。これにより、吸着材の交換による材料コストの増大、吸着材の交換や掃除などによるメンテナンスの煩雑化などの問題があった。
【0003】
そこで、従来のガス浄化装置は、放電プラズマと吸着材(吸着剤)を利用し、吸着材の吸着能力を長期にわたって維持させつつ、ガス浄化装置のメンテナンスを容易にしていた。
すなわち、従来のガス浄化装置は、粒子状物質と化学物質を含んだガスから粒子状物質を分離する粒子状物質分離手段と、ガスに含まれた化学物質を吸着する吸着材と、この吸着材の電位を調整するための給電極と、吸着材に対向して設けられた放電電極と、給電極または放電電極の電位をゼロ電位にする電位調節手段と、高電圧を発生する高圧電源とを備え、吸着材と放電電極によって形成する空間にて生じた放電プラズマによって生成される活性種により、若しくは、大気中若しくは吸着材表面に存在する水分が放電プラズマによって反応することにより生成される活性種により、吸着材にて捕集された化学物質(臭気成分)を分解除去していた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−89708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のガス浄化装置では、吸着材、給電極および吸着材に対向して設けられた放電電極は1層しか備えていない。例えば、吸着材の電位を調整する給電極の電位がゼロ電位(接地)にセットされ、高圧電源の電圧が放電電極に印加されると、放電プラズマによって活性種が生成され、生成された活性種が吸着材に導かれる。しかしながら、放電電極および吸着材は1層だけしか備えていないため、臭気成分を吸着させて処理するための吸着材表面の面積(放電処理面積)が小さく、つまりは吸着材に吸着された臭気成分と、放電プラズマによって生成される活性種との接触確率は大変低いものとなる。従って、放電プラズマを用いた臭気成分の分解除去の効果が十分に得られないという問題があった。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、臭気成分を処理するための放電面積を増大させて、臭気成分を効率的に分解除去することができる空気清浄化装置およびそれを用いた空気浄化方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による空気浄化装置は、基材および基材に担持される触媒で構成され、かつ給電極が接した状態に配設される導電性の吸着材と、吸着材に対向して配設される高圧電極を有する複数の浄化部と、給電極と高圧電極との間に高電圧を印加するための高圧電源と、を備え、処理ガスに含有される臭気成分を、吸着材に吸着させ、高圧電極と吸着材との間に放電プラズマを発生させて、放電プラズマにより生成される活性種により臭気成分を分解除去するものである。そして複数の浄化部が、隣接する上記高圧電極と吸着材との間の距離を等間隔にして、上記処理ガスの気流方向に配設されている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、吸着材と吸着材と対向する高圧電極を有する複数の浄化部が処理ガスの気流方向に所定の間隔をもって配設されるので、臭気成分が分解除去されるための放電処理面が増大される。それぞれの吸着材では、臭気成分が高濃度状態に吸着されるので、放電空間に発生させた放電プラズマにより生成される活性種によって、臭気成分を効率的かつ多量に分解除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置の構成図、図2はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置における線状電極の構造を説明する図、図3はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置における放電プラズマ未発生状態でのアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図、図4はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置におけるアセトアルデヒド除去率と放電電力との関係を示す図、図5はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において放電電力をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図、図6はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において高圧電極形状をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図、図7はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において放電ギャップ長をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図、図8はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量および漏洩オゾン濃度と放電ギャップ長との関係を示す図、図9はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において放電用導線の配列間隔をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図、図10はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量および漏洩オゾン濃度と放電用導線の配列間隔との関係を示す図、図11は突起状電極の構造を説明する図である。
【0010】
図1において、空気浄化装置1Aは、送風機2、整流板3、臭気成分を分解する4つの浄化部4a〜4dおよび高圧電源5aを有している。
臭気成分であるVOCsおよびアンモニアなどの化学物質が含まれている処理ガス6が送風機2に導かれて整流板3を通過する。整流板3では、処理ガス6の気流が均一な方向に整えられる。そして、浄化部4a〜4dが、整流板3を通過した処理ガス6の気流に沿った方向に所定の間隔で4層に配設されている。浄化部4a〜4dでは、通過する処理ガス6に含有される臭気成分の分解除去が行われる。そして、処理ガス6に含有される臭気成分が浄化部4a〜4dによって分解除去された後の清浄ガス11が、気流の下流側に配置される浄化部4dから排出される。
【0011】
浄化部4a〜4dのそれぞれは、給電極7a〜7dが接した状態で配設される吸着材8a〜8dと高圧電極としての線状電極9a〜9dとを有している。
線状電極9a〜9dのそれぞれは、図2に示されるように、放電用導線接続手段としての金属枠12a、複数の放電用導線13および金属ばね14で構成される。複数の放電用導線13は、長方形に形成される金属枠12aの枠面と平行に所定の間隔で配列される。そして、複数の放電用導線13のそれぞれの一端側が、金属枠12aの一辺側内壁に固着され、他端側が金属ばね14を介して金属枠12aの相対する他辺側内壁に固着される。金属ばね14は、放電用導線13に一定の張力が働くように配設されて、放電用導線13が熱膨張によって伸びても撓まないようになっている。また、金属枠12aによって、複数の放電用導線13は同電位に接続される。
放電用導線13の材質としては、タングステン線に白金を伸線処理した白金クラッドタングステンが用いられる。
【0012】
吸着材8a〜8dは、導電性を有し、処理ガス6に含まれる臭気成分を吸着できる構造に形成される。具体的には、正六角形の細孔が表面に密に形成されるハニカム構造の基材(図示せず)に導電性の触媒が担持されて形成される。基材には、例えば疎水性ゼオライトが、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)等からなるセラミクスの表面に、接着剤などにより島状に当着されているものを用い、触媒として二酸化マンガン(MnO2)を担持させた。
【0013】
なお、ハニカム構造を構成する基材として、疎水性ゼオライトがセラミックス表面に当着されているものの他に、シリカ、アルミナ、疎水性ゼオライト、活性炭などを単体で用いたり、これらの材料の混合物などを用いてもよい。また、触媒として、二酸化マンガンの他に、二酸化チタン(TiO2)、鉛(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および銀(Ag)などを用いてもよい。
これらの触媒の種類によって、分解を促進させる臭気成分の種類が異なるので、空気浄化装置1Aが使用される環境化に適した触媒を基材に担持させる必要がある。
【0014】
そして、吸着材8a〜8dの細孔表面を処理ガス6の気流の方向と直交させて配設することで、処理ガス6は吸着材8a〜8dのそれぞれを通過し、処理ガス6に含まれる臭気成分が細孔表面に吸着される。
また、処理ガス6の流量が大きくなる場合には、吸着材8a〜8dで発生する圧力損失
の増大を抑制する必要がある。圧力損失の増大は、基材のセル数(細孔数)を100〜1000セル/inch2にすると抑制されるが、さらには基材のセル数を300〜800セル/inch2とするのが望ましい。
【0015】
セル数が、1000セル/inch2より多い場合では、圧力損失が増大するので送風機2などの電力を不要に消費させなければならずランニングコストの増大につながる。セル数が100セル/inch2よりも少なくなると、臭気成分の吸着能力が低下する。
【0016】
そして、給電極7a〜7dが吸着材8a〜8dの下部の外壁に、吸着材8a〜8dと密接状態に設けられている。そして、給電極7a〜7dは、導電配線10aを介して接地電位に設定されている。前述のように吸着材8a〜8dは導電性であるので、吸着材8a〜8dは接地電位に維持される。そして、吸着材8a〜8dと線状電極9a〜9dが対向するように配置されて、浄化部4a〜4dが形成される。
また、線状電極9a〜9dのそれぞれは導電配線10bによって、直流高電圧供給用の高圧電源5aに接続されている。
【0017】
上記のように構成された浄化部4a〜4dが、吸着材8a〜8dの基材の細孔表面を整流板3から排出される処理ガス6の気流方向と直交させ、かつ気流方向に所定の間隔で4層に配置されている。このとき、対向する吸着材8a〜8dと線状電極9a〜9dのうち線状電極9a〜9dを整流板3側に向け、かつ隣接する吸着材8a〜8dと線状電極9a〜9dとの間の距離が等間隔になるように配設されている。また、隣接する吸着材8a〜8dと線状電極9a〜9dとの距離を放電ギャップ長とする。
【0018】
そして、上記のように構成された空気浄化装置1Aにおいて、線状電極9a〜9dに高圧電源5aから、直流高電圧が印加されると、線状電極9a〜9dと吸着材8a〜8dとの間に形成される放電空間にコロナ放電による放電プラズマを発生させることができる。コロナ放電はガス分解に適している非平衡プラズマの一種であり、また、直流の高圧電源5aは、交流のものに比べて比較的安価に入手可能である。
この放電プラズマにより高速電子が発生し、さらに放電プラズマは放電空間に存在している窒素、酸素などの中性分子や水分子にエネルギーを与え、酸素原子(O)、水素イオン(H+)、酸素イオン(O−やO2−)などの正、負イオンやオゾン(O3)が生成される。高速電子、正、負イオンおよびオゾンなどを活性種とする。
【0019】
ここで、生成されるオゾンは微量では問題ないが、その濃度が高濃度になると人体に有害であるため、吸着材8a〜8dにはオゾンを分解する能力を有するものが望ましい。吸着材の基材に担持させた二酸化マンガンは、オゾン分解触媒でもあり、生成されたオゾンは、酸素分子とオゾンよりも酸化力の高い酸素原子に分解される。そして、生成された酸素原子は吸着材8a〜8dに吸着された臭気成分と接触するので、臭気成分がさらに効率的に分解される。
【0020】
そして、高圧電源5aから負極性の直流高電圧が線状電極9a〜9dに印加された場合、これらの活性種のうち、正イオンは線状電極9a〜9dに電気的に吸引されて消滅する。一方、負イオン、高速電子およびオゾンなどの活性種は、接地された吸着材8a〜8dに向かって放電空間を移動または拡散し、吸着材8a〜8dの放電処理面へと導かれる。活性種が吸着材8a〜8dの放電処理面に吸着された臭気成分に接触すると、臭気成分の分解反応が促進されて、臭気成分は二酸化炭素、水などにまで分解し無害化される。なお、高圧電極から正極性の直流高電圧が線状電極9a〜9dに印加された場合も、正イオンやオゾンなどの活性種が吸着材8a〜8dの放電処理面に導かれて臭気成分の分解反応が促進される。
【0021】
さらに、放電プラズマの発生と同時に線状電極9a〜9dは温度上昇し、熱によるたるみが発生するが、金属ばね14を介して複数の放電用導線13が配設されているので、線状電極9a〜9dの形状が変化することがない。従って、放電空間に発生された放電プラズマによって生成される活性種は、安定して吸着材8a〜8dの放電処理面に導かれる。
【0022】
ここで、処理ガス6に含まれる臭気成分は希薄であることが多いため、オゾンなどの酸化剤を混入させても臭気成分と酸化剤の接触確率は極めて悪く、ほとんど酸化反応は起こらない。
【0023】
4層の浄化部4a〜4dでは、処理ガス6に含まれる臭気成分が、吸着材8a〜8dに集中して吸着される。その結果、吸着材8a〜8dの放電処理面では、臭気成分が高濃度化されるので、放電プラズマにより生成された活性種は、放電処理面では高確率に臭気成分と接触される。つまりは、処理ガス6の臭気成分が高効率に分解除去されて無害化される。
さらに、4層の浄化部4a〜4dのそれぞれで臭気成分が分解されるので、臭気成分の量が多量になっても臭気成分が分解除去しきれずに再放出されることが軽減される。
また、吸着材8a〜8dに吸着した臭気成分は、活性種によって分解除去され、吸着材8a〜8dから取り除かれるので、吸着材8a〜8dの吸着力が失われることがない。さらに、活性種による吸着材8a〜8dに吸着した臭気成分の分解除去は、放電プラズマを発生させている間は常時継続されるので、吸着材8a〜8dは長期にわたって交換する必要がなく、メンテナンスが軽減される空気浄化装置1Aが提供される。
【0024】
ここで、臭気成分として、たばこ臭や各種塗料に含有するアセトアルデヒドのみが含まれる処理ガスを空気浄化装置1Aにより処理した時のアセトアルデヒドの除去率に着目して、材料の異なる複数の吸着材についてそれぞれ評価した。
【0025】
試験は、まず容量1000リットルの密閉容器内に空気浄化装置1Aを配置し、さらに、密閉容器内のアセトアルデヒド濃度を10ppmに調整する。そして、空気浄化装置1Aの線状電極9a〜9dに電圧を印加せず、つまりは放電プラズマを発生させずに30分間、送風機2を稼動させて密閉容器内のアセトアルデヒドを吸着材8a〜8dに吸着させた。そして、臭気成分吸着前後の密閉容器内のアセトアルデヒド濃度を光音響マルチガスモニタ(INNOVA社製、1312型PAS)にて測定した。これ以降の試験においては、空気浄化装置1Aは1000リットルの密閉容器の中に配置された状態で行われ、アセトアルデヒドの濃度を測定する場合には、光音響マルチガスモニタ(INNOVA社製、1312型PAS)にて測定するものとする。また、アセトアルデヒド除去率は以下の式により算出される。
アセトアルデヒド除去率[%]=100×((初期濃度[ppm]−残留濃度[ppm])/初期濃度[ppm])
【0026】
吸着材には、疎水性ゼオライトがシリカ、アルミナ等からなるセラミクスの表面に島状に当着された基材に二酸化マンガンを担持させた第1の吸着材301、セラミクスを基材にして二酸化マンガンを担持させた第2の吸着材302およびセラミクスの表面に疎水性ゼオライトが当着された基材において、触媒が担持されていない第3の吸着材303を用いて試験を行い、それぞれのアセトアルデヒド除去率を比較した。なお、それぞれの吸着材はいずれも厚さ5mmのハニカム構造であり、その細孔数は500セル/inch2のものを用いた。
それぞれの吸着材について、吸着材を交換することなく上記の試験を5回連続で繰り返し、アセトアルデヒド除去率の推移を調べた。その結果を図3に示す。
図3中、縦軸はアセトアルデヒド除去率[%]、横軸は試験回数を表し、301〜303がそれぞれ第1の吸着材301〜第3の吸着材303を用いた場合の試験結果に対応している。
【0027】
試験の結果、アセトアルデヒドの初回試験終了後の吸着性能は、第1の吸着材301が最も高く、続いて第2の吸着材302、第3の吸着材303の順であった。試験回数が増加するにつれてアセトアルデヒド除去率は低下し、5回目の試験終了後では、第3の吸着材303では10%程度のアセトアルデヒド除去率であるのに対して、第1の吸着材301は70%のアセトアルデヒド除去率を示した。
【0028】
ここで、第1の吸着材301、第2の吸着材302では、同種の二酸化マンガンを担持させたにもかかわらず、アセトアルデヒド除去率に差が生じた。その原因について説明する。
一般に触媒に水分が吸着されると、触媒作用の低下を起こす。つまり、放電空間の空気中にも水分が含有されており、基材に担持させた触媒に水分が吸着されると触媒被毒を起こして吸着材の吸着能力が低下する。従って、疎水性の高い疎水性ゼオライトが当着された第1の吸着材301を吸着材に用いた場合、水分の吸着量が軽減されるので、第2の吸着材302より高い値のアセトアルデヒド除去率が維持されるものと判断される。
このように吸着材に第1の吸着材301を用いた場合、効率よくアセトアルデヒドを吸着させることができる。
【0029】
次に、空気浄化装置1Aにおいて、線状電極9a〜9dに負極性の直流高電圧を印加し、放電プラズマを発生させた場合の吸着材の材質とアセトアルデヒド除去率の関係についての試験を行った。
【0030】
吸着材には、前述の第1の吸着材301、第2の吸着材302および第3の吸着材303を用いる。そして、密閉容器内のアセトアルデヒド濃度を10ppmに調整した後、放電プラズマを発生させた状態で空気浄化装置1Aを30分間連続稼動してアセトアルデヒドを分解除去させて、除去前後のアセトアルデヒド濃度を測定した。
【0031】
上記の試験を計5回連続で繰り返し、試験回数5回目で得られたアセトアルデヒド除去率を調べた。その結果を図4に示す。図4はアセトアルデヒドのみを臭気成分とする処理ガス6に対して、アセトアルデヒド除去率の変化を放電電力の大きさごとに示したものである。なお、放電電力とは高圧電源5aから印加される電圧と、吸着材のそれぞれを流れる電流を乗算したものである。図4中、縦軸はアセトアルデヒド除去率[%]、横軸は放電電力[W]を表している。
また、空気浄化装置1Aにおける放電電力は、浄化部4a〜4dで消費される全電力である。
【0032】
各吸着材での試験結果とも、放電電力が増加するにつれて、アセトアルデヒド除去率は増加する結果となった。さらに、各放電電力の試験においても第1の吸着材301を用いた場合のアセトアルデヒド除去率が最も高い値を示し、第2の吸着材302、第3の吸着材303の順にアセトアルデヒド除去率は低い値を示した。
アセトアルデヒドの吸着能力が低い第3の吸着材303を吸着材に用いた場合、アセトアルデヒド除去率は放電電力5Wでは約60%、放電電力10Wでは約85%の値を示した。一方、アセトアルデヒド吸着能力が高い第1の吸着材301を吸着材にもちいた場合、アセトアルデヒド除去率は、放電電力が1Wでも約75%の高い値を示し、放電電力5Wでは約95%の値を示した。
このことから、アセトアルデヒドが高効率に吸着される吸着材を選定することにより、低い放電電力でもアセトアルデヒドを効率的に分解除去できることがわかる。
【0033】
次に、空気浄化装置1Aおよび1層の浄化部のみで構成された比較用の空気浄化装置のそれぞれに対して、アセトアルデヒド除去率を調べる試験を行った。
空気浄化装置1Aの4つの浄化部4a〜4dの吸着材8a〜8dそれぞれには、厚さ5mmの第1の吸着材を用いた。一方、比較用の空気浄化装置の浄化部の吸着材には厚さ20mmの第1の吸着材を用いた。
【0034】
空気浄化装置1Aおよび比較用の空気浄化装置のそれぞれについて、密閉容器内のアセトアルデヒド濃度を10ppmに調整した後、高圧電源5aから線状電極9a〜9dに負極性の直流高電圧を印加し、空気浄化装置を30分間連続稼動させてアセトアルデヒドを分解除去させる。そして、処理前後のアセトアルデヒド濃度を測定し、アセトアルデヒド除去率を算出した。また、空気浄化装置1Aにおいては、放電プラズマを用いない、つまりは吸着材8a〜8dの吸着力のみによるアセトアルデヒド除去率も算出した。なお、放電プラズマを用いた試験では、放電ギャップ長は5mm、放電用導線13の配列間隔は10mmに設定して試験を行っている。
【0035】
空気浄化装置1Aの吸着材8a〜8dおよび比較用の空気浄化装置の吸着材とも吸着材を交換することなしに、上記の試験を15回連続で繰り返し、アセトアルデヒド除去率の推移を放電電力をパラメータとして調べた。その結果を図5に示す。
【0036】
図5中、縦軸にはアセトアルデヒド除去率[%]、横軸には試験回数を表している。
そして、図の501、503はそれぞれ空気浄化装置1Aにおける放電電力が5Wおよび1Wでの結果をそれぞれ示し、図の502および504は比較用の空気浄化装置における放電電力が5Wおよび1Wの時の結果をそれぞれ示している。また、図の505は空気浄化装置1Aにおいて放電プラズマを用いない場合の結果を示している。
【0037】
空気浄化装置1Aにおいて放電プラズマを用いない場合、初回の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は80%以上の値を示した。しかしながら、試験回数が増加するにつれてアセトアルデヒド除去率は低下し、15回目の試験終了後には40%以下の値となった。
【0038】
空気浄化装置1Aにおいて放電プラズマを発生させ、かつ放電電力を1Wとした場合、初回の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は、90%以上であり、放電プラズマを発生させないものに比べて10%程度高い値を示した。また、比較用の空気浄化装置では、放電電力を1Wとした場合、初回の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は、80%であり、放電プラズマを発生させない場合とほぼ同じ値となった。
【0039】
また、空気浄化装置1Aおよび比較用の空気浄化装置における試験結果とも、試験回数が増加するにつれてアセトアルデヒドの除去率は低下した。しかしながら、アセトアルデヒド除去率が低下する割合は放電プラズマを発生させない空気浄化装置1Aのものに比べて緩やかであった。15回目の試験終了後におけるアセトアルデヒド除去率を放電プラズマを発生させない空気浄化装置1Aのものと比べると、比較用の空気浄化装置では10%程度、放電プラズマを発生させた空気浄化装置1Aでは25%程度高い値を示した。
【0040】
また、空気浄化装置1Aおよび比較用の空気浄化装置のそれぞれにおいて放電プラズマを発生させ、かつ放電電力を5Wとした場合、初回の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は、90%を超える値であり、さらに空気浄化装置1Aでのアセトアルデヒド除去率が比較用の空気浄化装置のものより高い値を示した。
そして、空気浄化装置1Aおよび比較用の空気浄化装置のいずれにおいても、試験回数に関係なくアルデヒド除去率が安定して高い値で推移した。また、空気浄化装置1Aのアセトアルデヒド除去率の方が比較用の空気浄化装置のものより高い値で推移し、15回目の試験終了後におけるアセトアルデヒド除去率は、比較用の空気浄化装置では90%、空気浄化装置1Aでは、95%であった。
【0041】
ついで上記試験結果について検討する。
空気浄化装置1Aは、浄化部4a〜4dが4層に配列されているので、アセトアルデヒドを分解除去するための放電処理面が7面と増加する。これに対して、比較用の空気浄化装置では放電処理面が1面である。従って、4層の浄化部4a〜4dを有する空気浄化装置1Aでは、1層の浄化部からなる比較用の空気浄化装置よりもアセトアルデヒド分解効率が向上し、同じ放電電力でも高効率に臭気成分を分解除去できるものと判断される。
特に、放電電力を1Wの低電力に設定した試験において、空気浄化装置1Aのアセトアルデヒド除去率が比較用の空気浄化装置のものより顕著に大きな値となっていた。従って、空気浄化装置1Aでは、放電電力が低電力でも高効率にアセトアルデヒドが分解除去される。
【0042】
また、空気浄化装置1Aにおいて、例えば5Wの放電電力であれば各浄化部4a〜4dで消費される放電電力は5/4Wだけであり、オゾン発生量の増大を抑制することがでる。従って、装置外に漏洩するオゾンの濃度の値を低く抑えることが出来る。また、吸着材8a〜8dは温度が低いほど臭気成分の吸着力が高いことが知られている。放電電力を低電力に抑えたまま高効率での臭気成分の分解が実現されるので、放電プラズマによる吸着材8a〜8dの発熱を抑えることができ、さらには放電プラズマが引き起こす熱脱着によるアセトアルデヒドの再放出を抑えることが出来る。
【0043】
また、上記の各試験において、高圧電極には線状電極9a〜9dを用いたが、線状電極9a〜9dに限るものではない。例えば、線状電極9a〜9dの代わりに図11に示すような突起状電極15a(15b〜15d)を用いてもよい。突起状電極15aは、線状電極9a〜9dの金属枠12aと同じ材質で同じサイズの金属枠12b、棒状の複数の金属柱16および先端の尖った複数の突出部17とで構成される。複数の金属柱16は、金属枠12bの枠面と平行に所定の間隔で配列されて、かつそれぞれの両端の端面が、金属枠12bの内壁に固着されている。そして、先端の尖った複数の突出部17が、金属柱16の長さ方向に10mm間隔で金属枠12bの一面側に突出するように金属柱16に固着される。
【0044】
そして、空気浄化装置1Aと高圧電極としての線状電極9a〜9dの代わりに突起状電極15a〜15dを配設した空気浄化装置を用意し、アセトアルデヒドの分解除去試験を行った。このとき、突起状電極15a〜15dは、金属枠12bの一面側を処理ガス6の下流側に向けて配置されている。
なお、放電電力は5Wで試験を行い、線状電極9a〜9dの放電用導線13および突起状電極15a〜15dの金属柱16の配列間隔は10mmに設定されている。
試験はアセトアルデヒドの濃度を10ppmに調整し、空気浄化装置を30分間連続稼動してアセトアルデヒドを分解除去させ、除去前後のアセトアルデヒド濃度を測定した。線状電極9a〜9dを用いたものの試験では、放電プラズマを照射せずに吸着材8a〜8dのみによるアセトアルデヒドの分解除去試験も行った。
【0045】
上記の試験を計5回連続で繰り返し、アセトアルデヒド除去率の推移を調べた。その結果を図6に示す。図6中、縦軸はアセトアルデヒド除去率[%]、横軸は試験回数を表している。
図の601は線状電極9a〜9d、602が突起状電極15a〜15d、603が空気浄化装置1Aにおいて放電プラズマを発生させない場合の結果をそれぞれ示している。
初回の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は、線状電極9a〜9dを用いたもので95%程度、突起状電極15a〜15dを用いたもので90%程度、放電プラズマを用いないものでは85%程度であった。
そして、線状電極9a〜9dを用いた試験においては、試験回数よらず、安定して高い値のアセトアルデヒド除去率で推移した。
また、突起状電極15a〜15dを用いたものおよび放電プラズマを発生させないものの試験においては、試験回数が増加するとともにアセトアルデヒド除去効率が低下し、5回目の試験終了後にはいずれも70%程度の値となった。
【0046】
ついで、上記試験結果について検討する。
突起状電極15a〜15dを用いた場合、線状電極9a〜9dを用いた場合に比べて、電極先端の僅かな領域から放電空間に放電プラズマが照射されるだけなので、放電空間では放電プラズマが行き届かない領域が生じるものと予想される。つまり、吸着材8a〜8dに導かれる活性種が放電処理面全体に行き届かなくなる。従って、吸着材8a〜8dに吸着されたアセトアルデヒドが効率よく分解除去されず、アセトアルデヒド除去率が試験回数の増加とともに低下するものと判断される。
【0047】
これに比べ、線状電極9a〜9dを用いた場合、放電用導線13の長さ方向の全域から放電プラズマが照射されるので広い放電面積を有し、放電空間に発生する放電プラズマは、放電空間の全域に行き届くものと予想される。従って、線状電極9a〜9dを用いたものでは、吸着材8a〜8dに導かれる活性種が放電処理面の全面に行き届いてアセトアルデヒドが効率よく分解除去される。従って、線状電極9a〜9dを用いた空気浄化装置1Aでは、安定した高いアセトアルデヒド除去率が維持されるものと判断される。よって、高圧電極には突起状電極15a〜15dより効率よくアセトアルデヒドを分解除去することが可能な線状電極9a〜9dを用いるのが好ましい。
【0048】
また、高圧電極に線状電極9a〜9dを使用することで、吸着材8a〜8dに吸着されたアセトアルデヒドが効率よく分解除去される。従って、吸着材8a〜8dの吸着能力が再生されて、長期にわたってその吸着力が維持されるので、吸着材8a〜8dを取替える必要がなくなり、メンテナンスが容易になる。
【0049】
高圧電極に線状電極9a〜9dを用いたことにより、吸着材8a〜8dの再生効果が得られるので、空気浄化装置1Aの稼動中に必ずしも放電プラズマを連続的に発生させておく必要はない。
例えば、以下のように放電プラズマを間欠的に発生させてもよい。
まず、空気浄化装置1Aにおいて、光音響マルチガスモニタを浄化部4aの処理ガス6の気流上流側に配置する。さらに、他の光音響マルチガスモニタを浄化部4dの清浄ガス11の排出側に配置する。これにより、浄化部4aに導入される処理ガス6に含有されるアセトアルデヒドの濃度および浄化部4dから排出される清浄ガス11に含有されるアセトアルデヒドの濃度を測定できる。
【0050】
そして、最後段の浄化部4dから排出される清浄ガス11に含有されるアセトアルデヒドの濃度と導入側の処理ガス6に含有されるアセトアルデヒドの濃度との割合が所定の値に達した時に放電プラズマを発生させる。これにより、放電プラズマを発生させるための消費電力が抑えられ、さらに放電プラズマによる吸着材8a〜8dへのダメージが軽減される。
【0051】
次に、空気浄化装置1Aが効率よくアセトアルデヒドを分解除去するための放電プラズマの条件を調べる試験を行った。試験では、放電プラズマを用いたアセトアルデヒドの分解除去において、放電ギャップ長をパラメータとしてアセトアルデヒド除去率の推移を調べた。また、放電電力は5Wにて行っている。さらに、放電プラズマを用いない場合のアセトアルデヒド除去率の推移についても調べた。
【0052】
試験は、密閉容器内のアセトアルデヒド濃度を10ppmに調整した後、負極性の直流高電圧を線状電極9a〜9dに印加し、空気浄化装置1Aを30分間連続稼動させてアセトアルデヒドを分解除去させる。そして、除去前後のアセトアルデヒド濃度を測定し、アセトアルデヒド除去率を算出した。その結果を図7に示す。
上記の試験を5回繰り返し、アセトアルデヒド除去率の推移を調べた。図7中、縦軸にはアセトアルデヒドの除去率[%]、横軸には試験回数を表記している。
【0053】
放電ギャップ長を3、5、10、15mmとし、高圧電極には線状電極9a〜9dを用い、吸着材8a〜8dには前述の第1の吸着材301を用いた。
図7中の701〜704は、それぞれギャップ長3,5,10,15mmでの結果を示すものであり、705は放電プラズマを用いない場合での結果を示している。
前述の試験での説明と同様に、放電プラズマを用いない場合のアセトアルデヒド除去率は、初回試験後80%以上の値を示し、試験回数が増加するにつれて低下する。
また、放電プラズマを用いた場合のアセトアルデヒド除去率は放電プラズマを用いない場合に比べて高い。
【0054】
また、放電ギャップ長10mmおよび15mmでは初回試験終了後のアセトアルデヒド除去率は90%以上の値を示すものの、試験回数の増加とともに低下する。5回目の試験終了時のアセトアルデヒド除去率は、放電ギャップ長10mmのものでは78%、放電ギャップ長15mmのものでは73%であった。
一方、放電ギャップ長3mmおよび5mmのものでは、試験回数によらず、アセトアルデヒド除去率は90%以上で安定して推移した。5回目の試験終了時のアセトアルデヒド除去率は、放電ギャップ長3mmのものでは95%、放電ギャップ長5mmのものも95%であった。
以上の結果から、アセトアルデヒド除去率は、基本的には放電ギャップの短いほうが高い傾向にあることがわかった。
【0055】
上記の試験結果では、放電ギャップ長は3mmまたは5mmのどちらを用いてもアセトアルデヒドは効率よく分解除去されていた。しかしながら、空気浄化装置1Aは室内の空気浄化を目的とした装置であるため、アセトアルデヒド除去率の向上と同時に、放電プラズマによって発生するオゾンが空気浄化装置1Aの外部に高濃度に漏洩することを抑制する必要がある。そこで空気浄化装置1Aにより分解除去されたアセトアルデヒドの量を空気浄化装置1Aから漏洩するオゾンの量[g/g]で規格化した値を空気浄化装置1Aの浄化性能として評価する。空気浄化装置1Aの浄化性能の評価は放電ギャップ長を変化させて行った。評価結果を図8に示す。分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量[g/g]を浄化性能評価値とする。なお、浄化性能評価値が高いほど好ましいのはいうまでもない。
【0056】
図8において、縦軸は分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量[g/g](浄化性能評価値)および漏洩オゾン濃度[ppm]、横軸は放電ギャップ長[mm]を示している。さらに図8中、801が分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量(浄化性能評価値)を示し、802が漏洩オゾン濃度[ppm]を示している。
そして、漏洩オゾン濃度は、放電ギャップ長を3mmから5mmに広げていくとともに急激に低下した。また、放電ギャップ長が5mmからさらに広げられると、漏洩オゾン濃度はなだらかに低下するようになり、放電ギャップ長が10mm以上になるとほぼ一定のオゾン濃度で推移した。
一方、浄化性能評価値は、放電ギャップ長が3mmから5mmに広がるにつれて上昇したが、放電ギャップ長が5mmを超えると低下に転じた。さらに、放電ギャップ長が広くなるにつれて浄化性能評価値の値は減少し、放電ギャップ長を10mm以上になると低下の割合がなだらかとなった。
【0057】
ついで上記試験結果について検討する。
活性種は、他の活性種や物質と反応しやすい状態にあるので、短時間のうちに消滅してしまう。そこで、放電ギャップ長が5mmより長くなるにつれて、空気浄化装置1Aから漏洩するオゾン量の増大が抑制されるものの、吸着材8a〜8dに到達される活性種の量も減少してアセトアルデヒドの分解除去がされにくくなる。従って、放電ギャップ長が5mmから広がるにつれて浄化性能評価値の値は小さくなるものと判断される。逆に放電ギャップ長が5mmから短くなるにつれて、吸着材8a〜8dに到達される活性種の量が増大し、アセトアルデヒドの分解除去量は維持されるものの、空気浄化装置1Aから漏洩するオゾン量は急激に増えるので、浄化性能評価値の値は小さくなるものと判断される。
【0058】
従って、放電ギャップ長を5mmに設定することで、浄化性能評価値の値は高い値で維持しつつ、漏洩オゾン濃度を小さな値に維持可能であり、空気浄化装置1Aの浄化性能は最良化される。また、放電ギャップ長は5mmが最良ではあるが、4〜7mmに設定されていれば空気浄化装置1Aは、効率的にアセトアルデヒドを分解除去しつつ漏洩オゾン濃度の上昇を抑制することができる。また、放電ギャップ長を4〜7mmとすることで、活性種がアセトアルデヒドの分解除去に関与することなく消滅する無効消費を軽減できるので、放電電力による余分な電力消費を低く抑えることができる。
【0059】
次に、空気浄化装置1Aでアセトアルデヒドを分解する場合おいて、線状電極9a〜9dの金属枠12aに配列した放電用導線13の配列間隔をパラメータとしてアセトアルデヒド除去率の推移を調べた。なお、放電ギャップ長は5mm、放電電力は5Wで試験を行っている。
試験はアセトアルデヒドの濃度を10ppmに調整した後、空気浄化装置1Aを30分間連続稼動して臭気成分を分解除去させて、処理前後のアセトアルデヒド濃度を測定した。また、放電プラズマを照射せずに吸着材8a〜8dのみによる試験も行った。試験結果を図9に示す。
【0060】
上記の試験を計5回連続で繰り返し、アセトアルデヒド除去率の推移を調べた。図9中、縦軸はアセトアルデヒド除去率[%]、横軸は試験回数を表している。
また、901〜903が、線状電極9a〜9dの放電用導線13の配列間隔が5,10,15mmのときの特性をそれぞれ表している。また、904は放電プラズマを使用しない場合での特性を示している。
【0061】
図9において、これまでの試験と同様、放電プラズマを用いない比較用の空気浄化装置でのアセトアルデヒド除去率がもっとも低く、さらに試験回数が増加するとともにその値は低下する。また、放電プラズマを用いた場合では、初回の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は、放電用導線13の配列間隔によらずほぼ同じ値を示し、その値は90パーセント以上の高い値であった。
また、放電用導線13の配列間隔が5mmおよび10mmでの試験では、試験回数によらず、アセトアルデヒド除去率は90%以上の高い値で安定して推移した。
放電用導線13の配列間隔が15mmでの試験では、試験回数が増加するとともに緩やかにアセトアルデヒド除去率は低下した。
5回目の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は、放電用導線13の配列間隔が5mmの場合では92%、放電用導線13の配列間隔が10mmの場合では95%、放電用導線13の配列間隔が15mmの場合では83%であった。
【0062】
ついで上記試験結果について検討する。
放電用導線13の配列間隔が広くなるほど、放電プラズマを照射するための放電面積が減少し、放電空間では放電プラズマが均一に行き届かなくなる。つまりは放電プラズマによって生成される活性種が吸着材8a〜8dの放電処理面に行き届かなくなる。従って、吸着材8a〜8dの放電処理面において、アセトアルデヒドの分解除去が十分に行えない領域が生じるため、放電用導線13の配列間隔を15mmとした試験では、アセトアルデヒド除去率が低下するものと判断される。
【0063】
また、放電用導線13の配列間隔が狭くなると、放電プラズマにより生成される活性種を吸着材8a〜8dの放電処理面の全面に行き届かせることはできる。しかしながら、放電用導線13の配列間隔が狭くなりすぎると吸着材8a〜8dの放電処理面に対してアセトアルデヒドの分解除去に関与せずに消滅する活性種が増え、必要以上に放電電力が消費される状態となる。また、吸着材8a〜8dの放電処理面に必要以上に大きな放電電力のエネルギーが放たれると、熱脱着によるアセトアルデヒドが再放出される場合がある。これにより、放電用導線13の配列間隔10mmでのアセトアルデヒド除去率が、放電用導線13の配列間隔5mmでのアセトアルデヒド除去率より高くなったものと判断される。従って、放電用導線13の配列間隔は例えば10mmなど適度に間隔をあけて設けることが望ましい。
【0064】
また、上述したように、空気浄化装置1Aは室内の空気浄化を目的とした装置であるため、アセトアルデヒド除去特性の向上と同時に、放電プラズマによって発生するオゾンが空気浄化装置1Aから高濃度に漏洩されることを抑制する必要がある。そこで、前述の浄化性能評価値で、空気浄化装置1Aの浄化性能を評価する。空気浄化装置1Aの浄化性能の評価は線状電極9a〜9dの放電用導線13の配列間隔を変化させて行った。なお、放電ギャップ長は5mm、放電電力を5Wに設定して試験を行っている。
【0065】
分解除去されたアセトアルデヒドの量と、空気浄化装置1Aから漏れ出すオゾンの量で規格化した値と放電用導線13の配列間隔[mm]の関係を図10に示す。図10中、縦軸には分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量[g/g](浄化性能評価値)、漏洩オゾン濃度[ppm]、横軸には放電用導線13の配列間隔[mm]を表している。図10において、1001が分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量[g/g]を表し、1002が漏洩オゾン濃度[ppm]を表している。
【0066】
漏洩オゾン濃度は、放電用導線13の配列間隔を5mmから10mmに広げていくとともに急激に低下する。また、10mmをこえてからさらに放電用導線13の配列間隔を広げた場合、漏洩オゾン濃度は一定の値で推移する。
一方、浄化性能評価値は、放電用導線13の配列間隔を5mmから10mmに広げていくとともに増大する。しかし、放電用導線13の配列間隔が10mmを境に、放電用導線13の配列間隔を広げても浄化性能評価値は減少し続ける。つまり、放電用導線13の配列間隔が10mmで浄化性能評価値の値が最良化されている。
【0067】
ついで上記試験結果について検討する。
前述にて検討したとおり、放電用導線13の配列間隔は、10mmより広がるにつれて、放電空間では放電プラズマが均一に行き届かなくなり、つまりは放電プラズマによって生成される活性種が吸着材8a〜8dの放電処理面に行き届かなくなる。従って、アセトアルデヒドの分解除去能力が落ちて浄化性能評価値が小さくなるものと判断される。特に放電用導線13の配列間隔が12mmを超えると、アセトアルデヒドの分解除去能力が低下する割合が加速されるものと判断される。
【0068】
また、放電用導線13の配列間隔が10mmより小さい値では、吸着材8a〜8dの放電処理面の全体に放電プラズマが行き届き、アセトアルデヒドが分解除去されるものの漏洩オゾン濃度が急激に高くなるので浄化性能評価値が小さくなる。
以上の結果から、漏洩オゾン濃度を低い値でかつ浄化性能評価値が高く維持されるためには、放電用導線13の配列間隔を10mmに設定するのが最良である。ただし、放電用導線13の配列間隔が8〜12mmであれば、空気浄化装置1Aでは効率的にアセトアルデヒドを分解除去しつつ漏洩オゾン濃度を低く抑えることができる。
【0069】
この実施の形態1では、接地された吸着材8a〜8dと線状電極9a〜9dを有する浄化部4a〜4dが処理ガスの気流方向に4層に配列されるので、吸着材8a〜8dの放電処理面が増大される。そして、アセトアルデヒドなどの臭気成分は、集中的に吸着材8a〜8dの放電処理面に吸着して濃縮される。そして、放電空間に放電プラズマを発生させると、放電プラズマにより生成される活性種が吸着材8a〜8dの放電処理面の全体に行き届き、臭気成分が分解除去される。
【0070】
従って、この実施の形態1によれば、臭気成分の除去を効率的かつ多量に行うことができる。また、浄化部4a〜4dのそれぞれで臭気成分の分解除去が行われて、浄化部4a〜4dのそれぞれで消費される放電電力は低電力に抑えられるので、浄化部4a〜4dで発生するオゾンの量を軽減することができる。
また、吸着材8a〜8dに、アセトアルデヒドを効率よく吸着させることができる第1の吸着材301を用いることで、より効果的にアセトアルデヒドを分解除去できる。
【0071】
また、放電ギャップ長を4〜7mmに設定することで、活性種がアセトアルデヒドの分解除去に関与することなく消滅する無効消費を軽減できるので、放電電力による余分な電力消費を低く抑えることができるとともに、効率的にアセトアルデヒドを分解除去しつつ漏洩オゾン濃度の上昇を抑制することができる。
また、放電用導線13の配列間隔を8〜12mmに設定することで、効率的にアセトアルデヒドを分解除去しつつ、漏洩オゾン濃度の上昇を抑制することができる。
【0072】
なお、この実施の形態1では、臭気成分にアセトアルデヒドのみが含まれる処理ガスについての試験結果について述べたが、他の臭気成分を含む処理ガスについても他の臭気成分の分解除去を促進させる触媒を吸着材8a〜8dに担持させれば同様に説明される。
複数の臭気成分が含有される処理ガスにおいては、単一の触媒のみが吸着材8a〜8dに担持されていると、触媒表面に臭気成分の反応に寄与しない物質が吸着され、触媒作用の低下や停止を招く触媒被毒が発生する場合もある。従って、触媒を複数種混ぜ合わせて、吸着材8a〜8dに担持させることにより、触媒被毒に対して耐性が生まれ、長期にわたって臭気成分の優れた分解除去能力が維持される。
【0073】
実施の形態2.
図12はこの発明の実施の形態2に係る空気浄化装置の構成図である。
図12において、空気浄化装置1Bは、空気浄化装置1Aにおいて、高圧電源5aと線状電極9a〜9dとの間に配設されるスイッチング素子18をさらに備えている。
【0074】
スイッチング素子18は、1つの入力端子(図示せず)に対して2つの出力端子(図示せず)を有している。スイッチング素子18の入力端子は導体配線10cを介して高圧電源5aに接続されている。また、処理ガス6の導入側の線状電極9aを1番目の線状電極とし、さらに線状電極9b〜9dをそれぞれ2番目〜4番目の線状電極とした時に、奇数番目の線状電極9aと9cとが導体配線10dによって接続され、偶数番目の線状電極9bと9dとが導体配線10eによって接続されている。また、奇数番目の線状電極9a,9cと偶数番目の線状電極9b,9dとの間は絶縁されている。
つまり、浄化部4a〜4dは奇数番目の線状電極9a,9cを有するグループと偶数番目の線状電極9b,9dを有する2つのグループに分けられている。
【0075】
そして、導体配線10fが導体配線10dに接続され、スイッチング素子18の一方の出力端子と奇数番目の線状電極9a,9cとが電気的に接続される。さらに、導体配線10gが導体配線10eに接続されて、スイッチング素子18の他方の出力端子と偶数番目の線状電極9b,9dとが電気的に接続される。そして、スイッチング素子18は、高圧電源5aから印加される高電圧が、所定時間毎に2つのグループに分けられた浄化部4a〜4dに交互に印加されるように制御するこができるようになっている。
【0076】
スイッチング素子18にはサイリスタなどを用いることができる。サイリスタには直流高電圧を出力する出力端子を選択するためのゲート電極(図示せず)が設けられており、ゲート電極には直流電源(図示せず)が接続されている。そして、直流電源からゲート電圧に印加される電圧の極性を変動させることによって、電源5aから印加される高電圧が、所定時間毎に2つのグループに分けられた浄化部4a〜4dに交互に印加される。
なお、他の構成は実施の形態1と同様に構成されている。
【0077】
そして、空気浄化装置1Bが稼動されると、臭気成分を含んだ処理ガス6が送風機2により整流板3に導かれる。そして、例えば、線状電極9a,9cに高圧電源5aから負極性の直流高電圧が最初に印加されるとする。すると、線状電極9a,9cと対向する吸着材8a〜8cの放電処理面には放電プラズマにより生成される活性種が導かれ、臭気成分は分解除去されて吸着材の吸着能力が再生される。この場合での放電処理面は、吸着材8a,8cの一面側、吸着材8bの他面側である。ここで、吸着材8a〜8dのそれぞれにおいて、処理ガス6が流入される側の面を一面側、排出される側の面を他面側とした。
【0078】
また、偶数番目の線状電極9b,9dには電力が供給されていないため、線状電極9b,9dと対向する側の吸着材8a〜8dの放電処理面には、放電空間を流れる処理ガス6の臭気成分が集中して吸着され、放電処理面では臭気成分は高濃度状態に吸着される。この場合での放電処理面は、吸着材8a、8cの他面側および吸着材8b,8dの一面側である。
【0079】
そして、所定時間経過後、スイッチング素子18のゲート電極への電圧制御により、直流高電圧の印加が、奇数番目の線状電極9a,9cから偶数番目の線状電極9b,9dに切り替えられると、印加電圧の切り替え前には吸着力のみによって臭気成分が吸着されていた吸着材8a〜8dの放電処理面には放電プラズマによって生成された活性種が行き届いて臭気成分の分解除去がなされ、放電処理面の吸着力が再生される。このとき、放電処理面では、臭気成分が高濃度に吸着されているので、活性種が高確率に臭気成分に接触して効率よく臭気成分が分解除去される。
【0080】
また、印加電圧の切り替え前に、臭気成分が放電プラズマによって生成される活性種によって分解除去されていた吸着材8a〜8cの放電処理面では、活性種が導かれなくなり、吸着材8a〜8cの吸着力のみによって臭気成分が吸着され、臭気成分は放電処理面で高濃度化される。
【0081】
このように、高圧電源5aから供給される直流高電圧が、奇数番目の線状電極9a,9cまたは偶数番目の線状電極9b,9dのいずれか一方に印加されることで、吸着材8a〜8dは、その放電処理面に臭気成分が集中して吸着される部分と、放電プラズマにより生成される活性種によって臭気成分が分解除去される部分に分けられる。さらに、直流高電圧の印加が所定の時間毎に偶数番目の線状電極9a,9cと偶数番目の線状電極9b,9dとの間で入れ替わり、これに連動して臭気成分が集中して吸着される部分と臭気成分が分解除去される部分が入れ替わる。従って、実施の形態1の空気浄化装置1Aに比べ、臭気成分が集中して吸着される部分では放電電力は消費されないので、高圧電源5aから供給される電力が低く抑えられる。また、放電処理面の広さは維持されるので臭気成分の分解除去効率は向上されたままである。
【0082】
この実施の形態2では、高圧電源5aから印加される直流高電圧が、スイッチング素子18を制御することによって、奇数番目の線状電極9a,9cまたは偶数番目の線状電極9b,9dに所定の時間ごとに交互に供給される。
従って、この実施の形態2によれば、吸着材8a〜8dの放電処理面において高効率に臭気成分を分解除去しつつ、高圧電源5aから供給される電力消費を低減することができる。
【0083】
実施の形態3.
図13はこの発明の実施の形態3に係る空気浄化装置の構成図、図14はこの発明の実施の形態3に係る空気浄化装置のメッシュ状電極の構造を説明するための図である。
図13において空気浄化装置1Cは、空気浄化装置1Aの浄化部4a〜4dの線状電極9a〜9dの代わりに誘電体挟持電極部19a〜19dが配設された浄化部4e〜4hを有している。また、高圧電源5aの代わりに交流高電圧供給用の高圧電源5bが配設されている。
【0084】
誘電体挟持電極部19a〜19dは、高圧電極としてのメッシュ状電極20a〜20dとメッシュ形状の誘電体部21a〜21gで構成される。そして、メッシュ状電極20aではその処理ガス6の排出側の面に、またメッシュ状電極20b〜20dでは、その両面に誘電体部21a〜21gが密接状態に配設されている。このとき、メッシュ状電極20a〜20dの複数の開口面および誘電体部21a〜21gの複数の開口面が合わされて配設されている。メッシュ状電極20a〜20dとしては金属が用いられるが、導電性のある材料で代用してもよい。また、誘電体部21a〜21gの材料としては、臭気成分が表面に吸着されないガラスなどが用いられる。
【0085】
メッシュ状電極20a〜20dの形状は図14に示されるように、正方形の開口面を複数有する格子状に形成される。また、誘電体部21a〜21gの形状も同様である。正方形の開口面サイズは、処理ガス6の気流を妨げなければ特に限定されるものではないが、30mm角とした。そして、浄化部4e〜4hが、メッシュ状電極20a〜20dおよび誘電体部21a〜21gの開口面が整流板3から排出される処理ガス6の気流の方向と直交するように、かつ気流方向に所定の間隔で4層に配置される。
なお、他の構成は実施の形態1と同様に構成されている。
【0086】
空気浄化装置1Cが稼動されると、臭気成分を含んだ処理ガス6が送風機2により整流板3に導かれる。そして、処理ガス6が浄化部4e〜4hを通過し、浄化部4e〜4hの吸着材8a〜8dに臭気成分が吸着される。
また、高圧電源5bから交流高電圧がメッシュ状電極20a〜20dに印加されると、メッシュ状電極20a〜20dと吸着材8a〜8dとの間に形成される放電空間に無声放電が発生する。この無声放電によって発生させた放電プラズマによって大気中の酸素などの中性分子が解離されてオゾンや酸素原子などの活性種が生成される。メッシュ状の誘電体挟持電極部19a〜19dと対向する吸着材8a〜8dには、この無声放電によって発生する放電プラズマによって生成される活性種が全面に行き届く。従って、実施の形態1と同様に、吸着材8a〜8dに吸着されている臭気成分が効率的に分解除去される。
【0087】
この実施の形態3では、高圧電極としてのメッシュ状電極20a〜20dとメッシュ状の誘電体部21a〜21gとで誘電体挟持電極部19a〜19dが構成される。そしてメッシュ状電極20a〜20dと誘電体部21a〜21gの開口面が合わされて配設される誘電体挟持電極部19a〜19dが吸着材8a〜8dと対向して配置されて浄化部4e〜4hが形成される。さらに浄化部4e〜4hが、処理ガスの気流方向に所定の間隔で4層に配置されている。そして、メッシュ状電極20a〜20dに交流高電圧が印加されると無声放電による放電プラズマが放電空間に発生され、放電プラズマにより生成される活性種が吸着材8a〜8dの放電処理面に導かれる。
従って、実施の形態3においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0088】
なお、この実施の形態3では、メッシュ状電極20a〜20dの片面または両面に同じ形状の誘電体部21a〜21gを配設するものとして説明したが、誘電体部21a〜21gはこの形状のものに限定されるものではなく、処理ガス6の気流を妨げず、かつメッシュ状電極20a〜20dの開口面と接していればメッシュ状電極20a〜20dと同じ形状のものを用いる必要はない。さらには、誘電体部21a〜21gでメッシュ状電極20a〜20dを覆うように配設してもよい。
【0089】
実施の形態4.
図15はこの発明の実施の形態4に係る空気清浄化装置の構成図である。
図15において、空気浄化装置1Dは、空気浄化装置1Aの浄化部4a〜4dの代わりに浄化部4i〜4lが配置されている。そして、処理ガス6の気流方向の下流側に配設される浄化部4i〜4lほど、放電ギャップ長が広くあけられている。
この実施の形態4では、放電ギャップ長を吸着材8a〜8dのそれぞれにおいて、処理ガスが流入される側の面(一面側)と対向する線状電極9a〜9dとの間の距離として新たに定義する。また、隣接する線状電極9a〜9dの配列間隔は空気浄化装置1Aにおける線状電極9a〜9dの配列間隔と同じである。
なお、他の構成は実施の形態1と同様に構成されている。
【0090】
そして、空気浄化装置1Dが稼動されると、臭気成分を含んだ処理ガス6が送風機2により整流板3に導かれる。そして、処理ガス6の導入側の浄化部4iの吸着材8aによって臭気成分は吸着されるものの、吸着材8aにて吸着されなかった臭気成分が気流方向の2番目の吸着材8bにて吸着される。以下同様に3番目,4番目の吸着材8c,8dに臭気成分が吸着される。
【0091】
このとき、臭気成分の吸着量は、処理ガス6の導入側に近い吸着材ほど多い。つまり吸着材8aでの臭気成分の吸着量が最も多く、処理ガス6の気流方向の最下流に配置される吸着材8dでの臭気成分の吸着量が最も少ない。つまり、処理ガス6の導入側に近い吸着材ほど、放電処理面では臭気成分がさらに高濃度に吸着される。
【0092】
ここで、空気浄化装置1Aにおいて、処理ガス6中の臭気成分の濃度が非常に高く、放電プラズマによる臭気成分の分解除去の能力以上に吸着材8aに臭気成分が吸着される場合を想定する。空気浄化装置1Aが稼働されて、時間が経過すると、吸着材8aでの放電処理面では、吸着されている臭気成分を処理しきれないので、吸着材8aが破過される。従って、浄化部4aの臭気成分の分解除去能力が著しく低下される。そして、吸着材8aが破過されると、吸着材8aの放電処理面で分解除去しきれない多量の臭気成分が吸着材8bに流れて吸着されるので、吸着材8bの放電処理面でも臭気成分が分解除去しきれずに、吸着材8bが破過される。さらに、同様に吸着材8c,8dが連鎖的に破過される。
【0093】
この状態を解消すべく高圧電源5aの直流高電圧の大きさを上げて放電電力を増大させると、放電プラズマにより生成される活性種を多量に吸着材8a〜8dの放電処理面に導くことができるので、各浄化部4a〜4dでの臭気成分の分解除去能力は向上される。しかし、この場合、臭気成分の吸着量が少ない吸着材8dなどでは、臭気成分の分解除去に関与することなく消滅する活性種の無効消費が増大される。つまりは、必要以上の電力が消費される。さらに、放電プラズマによってそれぞれの浄化部4a〜4dで生成されるオゾンの量が増加して、空気浄化装置1Aから排出されるオゾンの濃度が上昇する。
【0094】
次に、空気浄化装置1Dの場合について述べる。上述したとおり、空気浄化装置1Dでは、処理ガス6の気流方向の下流側に配設される浄化部4i〜4lほど、放電ギャップ長が、広くあけられており、逆に気流上流側では放電ギャップ長が狭くなっている。
従って、空気浄化装置1Aでの高圧電源5aと同じ大きさの電圧を印加した場合でも、気流導入側に近い浄化部4iでは、放電プラズマにより生成される活性種が行き届きやすくなり、放電処理面の臭気成分の分解除去能力が向上される。また、浄化部4j〜4lでは、徐々に放電ギャップ長が広がって浄化部4j〜4lでの臭気成分の分解除去能力は低下されるものの、放電処理面に吸着される臭気成分の量も減少するので問題なく臭気成分は分解除去される。
従って、空気浄化装置1Dでは、高圧電源5aから供給される電力を増大させることなしに、臭気成分の分解除去が効率よく行われ、さらに吸着材8a〜8dのそれぞれが破過されることなく、その吸着力が再生される。
【0095】
また、放電プラズマによって生成されるオゾンの濃度は気流導入側の浄化部ほど高くなるが、吸着材8a〜8dに担持された触媒である二酸化マンガンはオゾン分解触媒でもある。よって、吸着材8a〜8dの基材の厚さを厚くすることでオゾンの分解処理能力は向上される。また、放電プラズマにより生成されたオゾンが処理ガス6の導入側の吸着材8aで分解しきれなくても、処理ガス6の気流方向の下流側に配設される吸着材8b〜8dによって分解されるため、オゾンが高濃度に装置外に漏洩されることがなくなる。
【0096】
また、例えば気流導入側の吸着材8aの他面側と線状電極9bとの間の距離は空気浄化装置1Aの放電ギャップ長より長くなるので、吸着材8aの他面側の放電処理面に行き届く活性種の量は減少される。しかしながら、吸着材8aに吸着される臭気成分の多くが吸着材8aの一面側に吸着されている。従って、吸着材8aの他面側に吸着される臭気成分は、吸着材8aの他面側の放電処理面に導かれる活性種だけで分解除去可能である。
【0097】
この実施の形態4によれば、その放電ギャップ長が、気流導入側に近くなるほど短くなるように配置されているので、気流導入側の浄化部ほど活性種が行き届き、吸着材8a〜8dを破過させることなく、かつ高圧電源5aから供給される電力の増大を抑制しつつ、効率的に臭気成分の分解除去を行うことができる。また、吸着材8a〜8dの基材に担持した二酸化マンガンはオゾン分解触媒でもあるため、処理ガス6の導入側の浄化部4iで高濃度のオゾンが発生しても、オゾンが4j〜4lを通気する間に分解されて、装置外に高濃度のオゾンが漏洩することを防ぐことができる。
【0098】
なお、実施の形態1,実施の形態2および実施の形態4では、線状電極9a〜9dの放電用導線13に白金クラッドタングステンを用いるものとして説明したが、白金クラッドタングステンに限定されるものではなく、他の金属や導電性を有する非金属物質でも代用することが出来る。
ただし、白金は、自動車触媒として用いる三元触媒に代表されるように、白金表面に酸素分子を吸着し、酸化力の強い酸素原子を白金上に生成することが知られている。即ち、線状電極9a〜9dに白金クラッドタングステン線を用いることにより、白金触媒機能が加わり、臭気成分分解除去効率がより向上される。
【0099】
また、各実施の形態では、吸着材8a〜8dの構造は、六角形の細孔面を有するハニカム構造にするものとして説明したが、ハニカム構造に限定されるものではなく、吸着材を通気する処理ガスの圧力損失の増大が抑制されていれば、三角形や八角形など、他の細孔面を有する形状でもよい。
【0100】
また、浄化部の配設層数は4層にするものとして説明したが、4層に配設するものに限定されるものではなく、浄化部の配設層数は、処理ガス6の流量や含有される臭気成分の濃度および吸着材での圧力損失の大きさなどを考慮に入れて適宜決定すればよい。
また、給電極7a〜7dを接地して、高圧電極に高圧電源から高電圧を印加するものとして説明したが、給電極7a〜7dは接地することに限定されるものではなく、給電極7a〜7dと高圧電極との間に高圧電源の高電圧が印加されていればよい。
【0101】
また、空気浄化装置の外部に排出される漏洩オゾン濃度の値が高い場合には、処理ガス6の気流方向の再下流に配置される浄化部において、浄化部の清浄ガス排出側に活性炭等のオゾン分解触媒を新たに配設したり、浄化部の吸着材自体を加熱することにより、排出されるオゾン濃度の値を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置における線状電極の構造を説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置における放電プラズマ未発生状態でのアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置におけるアセトアルデヒド除去率と放電電力との関係を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に空気浄化装置において放電電力をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において高圧電極形状をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において放電ギャップ長をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量および漏洩オゾン濃度と放電ギャップ長との関係を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において放電用導線の配列間隔をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量および漏洩オゾン濃度と放電用導線の配列間隔との関係を示す図である。
【図11】突起状電極の構造を説明する図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係る空気浄化装置の構成図である。
【図13】この発明の実施の形態3に係る空気浄化装置の構成図である。
【図14】この発明の実施の形態3に係る空気浄化装置のメッシュ状電極の構造を説明するための図である。
【図15】この発明の実施の形態4に係る空気清浄化装置の構成図である。
【符号の説明】
【0103】
1A〜1D 空気浄化装置、4a〜4l 浄化部、5a,5b 高圧電源、6 処理ガス、7a〜7d 給電極、8a〜8d 吸着材、9a〜9d 線状電極(高圧電極)、20a〜20d メッシュ状電極(高圧電極)、21a〜21g 誘電体部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気清浄機などの空気浄化装置およびそれを用いた空気浄化方法に関し、特にたばこ臭に含まれるアセトアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOCs:Volatile Organic Compounds)やアンモニアなどの化学物質を含んだ臭気成分を効率よく分解除去可能な空気浄化装置およびそれを用いた空気浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の新築や改築において、揮発性有機化合物や化学物質を含む臭気成分を放つ建材や内装材が数多く使用されている。さらに室内の高気密化が進んだことにより、臭気成分が室内の空気を汚染して、居住者が体調を崩すという事例が報告されている。それらの症状は多様で、症状発生の仕組みをはじめ、解明されていない事柄も多く、「シックハウス症候群」と呼ばれている。
そのため、室内空気質(IAQ:Indoor Air Quality)の改善が望まれ、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、アンモニアなどの臭気成分は、建築基準法などの法令で室内上限濃度が定められている。これら臭気成分の除去方法は、活性炭などの吸着材に化学物質を吸着し除去する方法が一般的であった。しかしながら、この方法では吸着材における臭気成分の吸着能力は短期間のうちに飽和するので、空気浄化能力が低下される。これにより、吸着材の交換による材料コストの増大、吸着材の交換や掃除などによるメンテナンスの煩雑化などの問題があった。
【0003】
そこで、従来のガス浄化装置は、放電プラズマと吸着材(吸着剤)を利用し、吸着材の吸着能力を長期にわたって維持させつつ、ガス浄化装置のメンテナンスを容易にしていた。
すなわち、従来のガス浄化装置は、粒子状物質と化学物質を含んだガスから粒子状物質を分離する粒子状物質分離手段と、ガスに含まれた化学物質を吸着する吸着材と、この吸着材の電位を調整するための給電極と、吸着材に対向して設けられた放電電極と、給電極または放電電極の電位をゼロ電位にする電位調節手段と、高電圧を発生する高圧電源とを備え、吸着材と放電電極によって形成する空間にて生じた放電プラズマによって生成される活性種により、若しくは、大気中若しくは吸着材表面に存在する水分が放電プラズマによって反応することにより生成される活性種により、吸着材にて捕集された化学物質(臭気成分)を分解除去していた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−89708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のガス浄化装置では、吸着材、給電極および吸着材に対向して設けられた放電電極は1層しか備えていない。例えば、吸着材の電位を調整する給電極の電位がゼロ電位(接地)にセットされ、高圧電源の電圧が放電電極に印加されると、放電プラズマによって活性種が生成され、生成された活性種が吸着材に導かれる。しかしながら、放電電極および吸着材は1層だけしか備えていないため、臭気成分を吸着させて処理するための吸着材表面の面積(放電処理面積)が小さく、つまりは吸着材に吸着された臭気成分と、放電プラズマによって生成される活性種との接触確率は大変低いものとなる。従って、放電プラズマを用いた臭気成分の分解除去の効果が十分に得られないという問題があった。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、臭気成分を処理するための放電面積を増大させて、臭気成分を効率的に分解除去することができる空気清浄化装置およびそれを用いた空気浄化方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による空気浄化装置は、基材および基材に担持される触媒で構成され、かつ給電極が接した状態に配設される導電性の吸着材と、吸着材に対向して配設される高圧電極を有する複数の浄化部と、給電極と高圧電極との間に高電圧を印加するための高圧電源と、を備え、処理ガスに含有される臭気成分を、吸着材に吸着させ、高圧電極と吸着材との間に放電プラズマを発生させて、放電プラズマにより生成される活性種により臭気成分を分解除去するものである。そして複数の浄化部が、隣接する上記高圧電極と吸着材との間の距離を等間隔にして、上記処理ガスの気流方向に配設されている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、吸着材と吸着材と対向する高圧電極を有する複数の浄化部が処理ガスの気流方向に所定の間隔をもって配設されるので、臭気成分が分解除去されるための放電処理面が増大される。それぞれの吸着材では、臭気成分が高濃度状態に吸着されるので、放電空間に発生させた放電プラズマにより生成される活性種によって、臭気成分を効率的かつ多量に分解除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置の構成図、図2はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置における線状電極の構造を説明する図、図3はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置における放電プラズマ未発生状態でのアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図、図4はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置におけるアセトアルデヒド除去率と放電電力との関係を示す図、図5はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において放電電力をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図、図6はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において高圧電極形状をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図、図7はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において放電ギャップ長をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図、図8はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量および漏洩オゾン濃度と放電ギャップ長との関係を示す図、図9はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において放電用導線の配列間隔をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図、図10はこの発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量および漏洩オゾン濃度と放電用導線の配列間隔との関係を示す図、図11は突起状電極の構造を説明する図である。
【0010】
図1において、空気浄化装置1Aは、送風機2、整流板3、臭気成分を分解する4つの浄化部4a〜4dおよび高圧電源5aを有している。
臭気成分であるVOCsおよびアンモニアなどの化学物質が含まれている処理ガス6が送風機2に導かれて整流板3を通過する。整流板3では、処理ガス6の気流が均一な方向に整えられる。そして、浄化部4a〜4dが、整流板3を通過した処理ガス6の気流に沿った方向に所定の間隔で4層に配設されている。浄化部4a〜4dでは、通過する処理ガス6に含有される臭気成分の分解除去が行われる。そして、処理ガス6に含有される臭気成分が浄化部4a〜4dによって分解除去された後の清浄ガス11が、気流の下流側に配置される浄化部4dから排出される。
【0011】
浄化部4a〜4dのそれぞれは、給電極7a〜7dが接した状態で配設される吸着材8a〜8dと高圧電極としての線状電極9a〜9dとを有している。
線状電極9a〜9dのそれぞれは、図2に示されるように、放電用導線接続手段としての金属枠12a、複数の放電用導線13および金属ばね14で構成される。複数の放電用導線13は、長方形に形成される金属枠12aの枠面と平行に所定の間隔で配列される。そして、複数の放電用導線13のそれぞれの一端側が、金属枠12aの一辺側内壁に固着され、他端側が金属ばね14を介して金属枠12aの相対する他辺側内壁に固着される。金属ばね14は、放電用導線13に一定の張力が働くように配設されて、放電用導線13が熱膨張によって伸びても撓まないようになっている。また、金属枠12aによって、複数の放電用導線13は同電位に接続される。
放電用導線13の材質としては、タングステン線に白金を伸線処理した白金クラッドタングステンが用いられる。
【0012】
吸着材8a〜8dは、導電性を有し、処理ガス6に含まれる臭気成分を吸着できる構造に形成される。具体的には、正六角形の細孔が表面に密に形成されるハニカム構造の基材(図示せず)に導電性の触媒が担持されて形成される。基材には、例えば疎水性ゼオライトが、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)等からなるセラミクスの表面に、接着剤などにより島状に当着されているものを用い、触媒として二酸化マンガン(MnO2)を担持させた。
【0013】
なお、ハニカム構造を構成する基材として、疎水性ゼオライトがセラミックス表面に当着されているものの他に、シリカ、アルミナ、疎水性ゼオライト、活性炭などを単体で用いたり、これらの材料の混合物などを用いてもよい。また、触媒として、二酸化マンガンの他に、二酸化チタン(TiO2)、鉛(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および銀(Ag)などを用いてもよい。
これらの触媒の種類によって、分解を促進させる臭気成分の種類が異なるので、空気浄化装置1Aが使用される環境化に適した触媒を基材に担持させる必要がある。
【0014】
そして、吸着材8a〜8dの細孔表面を処理ガス6の気流の方向と直交させて配設することで、処理ガス6は吸着材8a〜8dのそれぞれを通過し、処理ガス6に含まれる臭気成分が細孔表面に吸着される。
また、処理ガス6の流量が大きくなる場合には、吸着材8a〜8dで発生する圧力損失
の増大を抑制する必要がある。圧力損失の増大は、基材のセル数(細孔数)を100〜1000セル/inch2にすると抑制されるが、さらには基材のセル数を300〜800セル/inch2とするのが望ましい。
【0015】
セル数が、1000セル/inch2より多い場合では、圧力損失が増大するので送風機2などの電力を不要に消費させなければならずランニングコストの増大につながる。セル数が100セル/inch2よりも少なくなると、臭気成分の吸着能力が低下する。
【0016】
そして、給電極7a〜7dが吸着材8a〜8dの下部の外壁に、吸着材8a〜8dと密接状態に設けられている。そして、給電極7a〜7dは、導電配線10aを介して接地電位に設定されている。前述のように吸着材8a〜8dは導電性であるので、吸着材8a〜8dは接地電位に維持される。そして、吸着材8a〜8dと線状電極9a〜9dが対向するように配置されて、浄化部4a〜4dが形成される。
また、線状電極9a〜9dのそれぞれは導電配線10bによって、直流高電圧供給用の高圧電源5aに接続されている。
【0017】
上記のように構成された浄化部4a〜4dが、吸着材8a〜8dの基材の細孔表面を整流板3から排出される処理ガス6の気流方向と直交させ、かつ気流方向に所定の間隔で4層に配置されている。このとき、対向する吸着材8a〜8dと線状電極9a〜9dのうち線状電極9a〜9dを整流板3側に向け、かつ隣接する吸着材8a〜8dと線状電極9a〜9dとの間の距離が等間隔になるように配設されている。また、隣接する吸着材8a〜8dと線状電極9a〜9dとの距離を放電ギャップ長とする。
【0018】
そして、上記のように構成された空気浄化装置1Aにおいて、線状電極9a〜9dに高圧電源5aから、直流高電圧が印加されると、線状電極9a〜9dと吸着材8a〜8dとの間に形成される放電空間にコロナ放電による放電プラズマを発生させることができる。コロナ放電はガス分解に適している非平衡プラズマの一種であり、また、直流の高圧電源5aは、交流のものに比べて比較的安価に入手可能である。
この放電プラズマにより高速電子が発生し、さらに放電プラズマは放電空間に存在している窒素、酸素などの中性分子や水分子にエネルギーを与え、酸素原子(O)、水素イオン(H+)、酸素イオン(O−やO2−)などの正、負イオンやオゾン(O3)が生成される。高速電子、正、負イオンおよびオゾンなどを活性種とする。
【0019】
ここで、生成されるオゾンは微量では問題ないが、その濃度が高濃度になると人体に有害であるため、吸着材8a〜8dにはオゾンを分解する能力を有するものが望ましい。吸着材の基材に担持させた二酸化マンガンは、オゾン分解触媒でもあり、生成されたオゾンは、酸素分子とオゾンよりも酸化力の高い酸素原子に分解される。そして、生成された酸素原子は吸着材8a〜8dに吸着された臭気成分と接触するので、臭気成分がさらに効率的に分解される。
【0020】
そして、高圧電源5aから負極性の直流高電圧が線状電極9a〜9dに印加された場合、これらの活性種のうち、正イオンは線状電極9a〜9dに電気的に吸引されて消滅する。一方、負イオン、高速電子およびオゾンなどの活性種は、接地された吸着材8a〜8dに向かって放電空間を移動または拡散し、吸着材8a〜8dの放電処理面へと導かれる。活性種が吸着材8a〜8dの放電処理面に吸着された臭気成分に接触すると、臭気成分の分解反応が促進されて、臭気成分は二酸化炭素、水などにまで分解し無害化される。なお、高圧電極から正極性の直流高電圧が線状電極9a〜9dに印加された場合も、正イオンやオゾンなどの活性種が吸着材8a〜8dの放電処理面に導かれて臭気成分の分解反応が促進される。
【0021】
さらに、放電プラズマの発生と同時に線状電極9a〜9dは温度上昇し、熱によるたるみが発生するが、金属ばね14を介して複数の放電用導線13が配設されているので、線状電極9a〜9dの形状が変化することがない。従って、放電空間に発生された放電プラズマによって生成される活性種は、安定して吸着材8a〜8dの放電処理面に導かれる。
【0022】
ここで、処理ガス6に含まれる臭気成分は希薄であることが多いため、オゾンなどの酸化剤を混入させても臭気成分と酸化剤の接触確率は極めて悪く、ほとんど酸化反応は起こらない。
【0023】
4層の浄化部4a〜4dでは、処理ガス6に含まれる臭気成分が、吸着材8a〜8dに集中して吸着される。その結果、吸着材8a〜8dの放電処理面では、臭気成分が高濃度化されるので、放電プラズマにより生成された活性種は、放電処理面では高確率に臭気成分と接触される。つまりは、処理ガス6の臭気成分が高効率に分解除去されて無害化される。
さらに、4層の浄化部4a〜4dのそれぞれで臭気成分が分解されるので、臭気成分の量が多量になっても臭気成分が分解除去しきれずに再放出されることが軽減される。
また、吸着材8a〜8dに吸着した臭気成分は、活性種によって分解除去され、吸着材8a〜8dから取り除かれるので、吸着材8a〜8dの吸着力が失われることがない。さらに、活性種による吸着材8a〜8dに吸着した臭気成分の分解除去は、放電プラズマを発生させている間は常時継続されるので、吸着材8a〜8dは長期にわたって交換する必要がなく、メンテナンスが軽減される空気浄化装置1Aが提供される。
【0024】
ここで、臭気成分として、たばこ臭や各種塗料に含有するアセトアルデヒドのみが含まれる処理ガスを空気浄化装置1Aにより処理した時のアセトアルデヒドの除去率に着目して、材料の異なる複数の吸着材についてそれぞれ評価した。
【0025】
試験は、まず容量1000リットルの密閉容器内に空気浄化装置1Aを配置し、さらに、密閉容器内のアセトアルデヒド濃度を10ppmに調整する。そして、空気浄化装置1Aの線状電極9a〜9dに電圧を印加せず、つまりは放電プラズマを発生させずに30分間、送風機2を稼動させて密閉容器内のアセトアルデヒドを吸着材8a〜8dに吸着させた。そして、臭気成分吸着前後の密閉容器内のアセトアルデヒド濃度を光音響マルチガスモニタ(INNOVA社製、1312型PAS)にて測定した。これ以降の試験においては、空気浄化装置1Aは1000リットルの密閉容器の中に配置された状態で行われ、アセトアルデヒドの濃度を測定する場合には、光音響マルチガスモニタ(INNOVA社製、1312型PAS)にて測定するものとする。また、アセトアルデヒド除去率は以下の式により算出される。
アセトアルデヒド除去率[%]=100×((初期濃度[ppm]−残留濃度[ppm])/初期濃度[ppm])
【0026】
吸着材には、疎水性ゼオライトがシリカ、アルミナ等からなるセラミクスの表面に島状に当着された基材に二酸化マンガンを担持させた第1の吸着材301、セラミクスを基材にして二酸化マンガンを担持させた第2の吸着材302およびセラミクスの表面に疎水性ゼオライトが当着された基材において、触媒が担持されていない第3の吸着材303を用いて試験を行い、それぞれのアセトアルデヒド除去率を比較した。なお、それぞれの吸着材はいずれも厚さ5mmのハニカム構造であり、その細孔数は500セル/inch2のものを用いた。
それぞれの吸着材について、吸着材を交換することなく上記の試験を5回連続で繰り返し、アセトアルデヒド除去率の推移を調べた。その結果を図3に示す。
図3中、縦軸はアセトアルデヒド除去率[%]、横軸は試験回数を表し、301〜303がそれぞれ第1の吸着材301〜第3の吸着材303を用いた場合の試験結果に対応している。
【0027】
試験の結果、アセトアルデヒドの初回試験終了後の吸着性能は、第1の吸着材301が最も高く、続いて第2の吸着材302、第3の吸着材303の順であった。試験回数が増加するにつれてアセトアルデヒド除去率は低下し、5回目の試験終了後では、第3の吸着材303では10%程度のアセトアルデヒド除去率であるのに対して、第1の吸着材301は70%のアセトアルデヒド除去率を示した。
【0028】
ここで、第1の吸着材301、第2の吸着材302では、同種の二酸化マンガンを担持させたにもかかわらず、アセトアルデヒド除去率に差が生じた。その原因について説明する。
一般に触媒に水分が吸着されると、触媒作用の低下を起こす。つまり、放電空間の空気中にも水分が含有されており、基材に担持させた触媒に水分が吸着されると触媒被毒を起こして吸着材の吸着能力が低下する。従って、疎水性の高い疎水性ゼオライトが当着された第1の吸着材301を吸着材に用いた場合、水分の吸着量が軽減されるので、第2の吸着材302より高い値のアセトアルデヒド除去率が維持されるものと判断される。
このように吸着材に第1の吸着材301を用いた場合、効率よくアセトアルデヒドを吸着させることができる。
【0029】
次に、空気浄化装置1Aにおいて、線状電極9a〜9dに負極性の直流高電圧を印加し、放電プラズマを発生させた場合の吸着材の材質とアセトアルデヒド除去率の関係についての試験を行った。
【0030】
吸着材には、前述の第1の吸着材301、第2の吸着材302および第3の吸着材303を用いる。そして、密閉容器内のアセトアルデヒド濃度を10ppmに調整した後、放電プラズマを発生させた状態で空気浄化装置1Aを30分間連続稼動してアセトアルデヒドを分解除去させて、除去前後のアセトアルデヒド濃度を測定した。
【0031】
上記の試験を計5回連続で繰り返し、試験回数5回目で得られたアセトアルデヒド除去率を調べた。その結果を図4に示す。図4はアセトアルデヒドのみを臭気成分とする処理ガス6に対して、アセトアルデヒド除去率の変化を放電電力の大きさごとに示したものである。なお、放電電力とは高圧電源5aから印加される電圧と、吸着材のそれぞれを流れる電流を乗算したものである。図4中、縦軸はアセトアルデヒド除去率[%]、横軸は放電電力[W]を表している。
また、空気浄化装置1Aにおける放電電力は、浄化部4a〜4dで消費される全電力である。
【0032】
各吸着材での試験結果とも、放電電力が増加するにつれて、アセトアルデヒド除去率は増加する結果となった。さらに、各放電電力の試験においても第1の吸着材301を用いた場合のアセトアルデヒド除去率が最も高い値を示し、第2の吸着材302、第3の吸着材303の順にアセトアルデヒド除去率は低い値を示した。
アセトアルデヒドの吸着能力が低い第3の吸着材303を吸着材に用いた場合、アセトアルデヒド除去率は放電電力5Wでは約60%、放電電力10Wでは約85%の値を示した。一方、アセトアルデヒド吸着能力が高い第1の吸着材301を吸着材にもちいた場合、アセトアルデヒド除去率は、放電電力が1Wでも約75%の高い値を示し、放電電力5Wでは約95%の値を示した。
このことから、アセトアルデヒドが高効率に吸着される吸着材を選定することにより、低い放電電力でもアセトアルデヒドを効率的に分解除去できることがわかる。
【0033】
次に、空気浄化装置1Aおよび1層の浄化部のみで構成された比較用の空気浄化装置のそれぞれに対して、アセトアルデヒド除去率を調べる試験を行った。
空気浄化装置1Aの4つの浄化部4a〜4dの吸着材8a〜8dそれぞれには、厚さ5mmの第1の吸着材を用いた。一方、比較用の空気浄化装置の浄化部の吸着材には厚さ20mmの第1の吸着材を用いた。
【0034】
空気浄化装置1Aおよび比較用の空気浄化装置のそれぞれについて、密閉容器内のアセトアルデヒド濃度を10ppmに調整した後、高圧電源5aから線状電極9a〜9dに負極性の直流高電圧を印加し、空気浄化装置を30分間連続稼動させてアセトアルデヒドを分解除去させる。そして、処理前後のアセトアルデヒド濃度を測定し、アセトアルデヒド除去率を算出した。また、空気浄化装置1Aにおいては、放電プラズマを用いない、つまりは吸着材8a〜8dの吸着力のみによるアセトアルデヒド除去率も算出した。なお、放電プラズマを用いた試験では、放電ギャップ長は5mm、放電用導線13の配列間隔は10mmに設定して試験を行っている。
【0035】
空気浄化装置1Aの吸着材8a〜8dおよび比較用の空気浄化装置の吸着材とも吸着材を交換することなしに、上記の試験を15回連続で繰り返し、アセトアルデヒド除去率の推移を放電電力をパラメータとして調べた。その結果を図5に示す。
【0036】
図5中、縦軸にはアセトアルデヒド除去率[%]、横軸には試験回数を表している。
そして、図の501、503はそれぞれ空気浄化装置1Aにおける放電電力が5Wおよび1Wでの結果をそれぞれ示し、図の502および504は比較用の空気浄化装置における放電電力が5Wおよび1Wの時の結果をそれぞれ示している。また、図の505は空気浄化装置1Aにおいて放電プラズマを用いない場合の結果を示している。
【0037】
空気浄化装置1Aにおいて放電プラズマを用いない場合、初回の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は80%以上の値を示した。しかしながら、試験回数が増加するにつれてアセトアルデヒド除去率は低下し、15回目の試験終了後には40%以下の値となった。
【0038】
空気浄化装置1Aにおいて放電プラズマを発生させ、かつ放電電力を1Wとした場合、初回の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は、90%以上であり、放電プラズマを発生させないものに比べて10%程度高い値を示した。また、比較用の空気浄化装置では、放電電力を1Wとした場合、初回の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は、80%であり、放電プラズマを発生させない場合とほぼ同じ値となった。
【0039】
また、空気浄化装置1Aおよび比較用の空気浄化装置における試験結果とも、試験回数が増加するにつれてアセトアルデヒドの除去率は低下した。しかしながら、アセトアルデヒド除去率が低下する割合は放電プラズマを発生させない空気浄化装置1Aのものに比べて緩やかであった。15回目の試験終了後におけるアセトアルデヒド除去率を放電プラズマを発生させない空気浄化装置1Aのものと比べると、比較用の空気浄化装置では10%程度、放電プラズマを発生させた空気浄化装置1Aでは25%程度高い値を示した。
【0040】
また、空気浄化装置1Aおよび比較用の空気浄化装置のそれぞれにおいて放電プラズマを発生させ、かつ放電電力を5Wとした場合、初回の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は、90%を超える値であり、さらに空気浄化装置1Aでのアセトアルデヒド除去率が比較用の空気浄化装置のものより高い値を示した。
そして、空気浄化装置1Aおよび比較用の空気浄化装置のいずれにおいても、試験回数に関係なくアルデヒド除去率が安定して高い値で推移した。また、空気浄化装置1Aのアセトアルデヒド除去率の方が比較用の空気浄化装置のものより高い値で推移し、15回目の試験終了後におけるアセトアルデヒド除去率は、比較用の空気浄化装置では90%、空気浄化装置1Aでは、95%であった。
【0041】
ついで上記試験結果について検討する。
空気浄化装置1Aは、浄化部4a〜4dが4層に配列されているので、アセトアルデヒドを分解除去するための放電処理面が7面と増加する。これに対して、比較用の空気浄化装置では放電処理面が1面である。従って、4層の浄化部4a〜4dを有する空気浄化装置1Aでは、1層の浄化部からなる比較用の空気浄化装置よりもアセトアルデヒド分解効率が向上し、同じ放電電力でも高効率に臭気成分を分解除去できるものと判断される。
特に、放電電力を1Wの低電力に設定した試験において、空気浄化装置1Aのアセトアルデヒド除去率が比較用の空気浄化装置のものより顕著に大きな値となっていた。従って、空気浄化装置1Aでは、放電電力が低電力でも高効率にアセトアルデヒドが分解除去される。
【0042】
また、空気浄化装置1Aにおいて、例えば5Wの放電電力であれば各浄化部4a〜4dで消費される放電電力は5/4Wだけであり、オゾン発生量の増大を抑制することがでる。従って、装置外に漏洩するオゾンの濃度の値を低く抑えることが出来る。また、吸着材8a〜8dは温度が低いほど臭気成分の吸着力が高いことが知られている。放電電力を低電力に抑えたまま高効率での臭気成分の分解が実現されるので、放電プラズマによる吸着材8a〜8dの発熱を抑えることができ、さらには放電プラズマが引き起こす熱脱着によるアセトアルデヒドの再放出を抑えることが出来る。
【0043】
また、上記の各試験において、高圧電極には線状電極9a〜9dを用いたが、線状電極9a〜9dに限るものではない。例えば、線状電極9a〜9dの代わりに図11に示すような突起状電極15a(15b〜15d)を用いてもよい。突起状電極15aは、線状電極9a〜9dの金属枠12aと同じ材質で同じサイズの金属枠12b、棒状の複数の金属柱16および先端の尖った複数の突出部17とで構成される。複数の金属柱16は、金属枠12bの枠面と平行に所定の間隔で配列されて、かつそれぞれの両端の端面が、金属枠12bの内壁に固着されている。そして、先端の尖った複数の突出部17が、金属柱16の長さ方向に10mm間隔で金属枠12bの一面側に突出するように金属柱16に固着される。
【0044】
そして、空気浄化装置1Aと高圧電極としての線状電極9a〜9dの代わりに突起状電極15a〜15dを配設した空気浄化装置を用意し、アセトアルデヒドの分解除去試験を行った。このとき、突起状電極15a〜15dは、金属枠12bの一面側を処理ガス6の下流側に向けて配置されている。
なお、放電電力は5Wで試験を行い、線状電極9a〜9dの放電用導線13および突起状電極15a〜15dの金属柱16の配列間隔は10mmに設定されている。
試験はアセトアルデヒドの濃度を10ppmに調整し、空気浄化装置を30分間連続稼動してアセトアルデヒドを分解除去させ、除去前後のアセトアルデヒド濃度を測定した。線状電極9a〜9dを用いたものの試験では、放電プラズマを照射せずに吸着材8a〜8dのみによるアセトアルデヒドの分解除去試験も行った。
【0045】
上記の試験を計5回連続で繰り返し、アセトアルデヒド除去率の推移を調べた。その結果を図6に示す。図6中、縦軸はアセトアルデヒド除去率[%]、横軸は試験回数を表している。
図の601は線状電極9a〜9d、602が突起状電極15a〜15d、603が空気浄化装置1Aにおいて放電プラズマを発生させない場合の結果をそれぞれ示している。
初回の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は、線状電極9a〜9dを用いたもので95%程度、突起状電極15a〜15dを用いたもので90%程度、放電プラズマを用いないものでは85%程度であった。
そして、線状電極9a〜9dを用いた試験においては、試験回数よらず、安定して高い値のアセトアルデヒド除去率で推移した。
また、突起状電極15a〜15dを用いたものおよび放電プラズマを発生させないものの試験においては、試験回数が増加するとともにアセトアルデヒド除去効率が低下し、5回目の試験終了後にはいずれも70%程度の値となった。
【0046】
ついで、上記試験結果について検討する。
突起状電極15a〜15dを用いた場合、線状電極9a〜9dを用いた場合に比べて、電極先端の僅かな領域から放電空間に放電プラズマが照射されるだけなので、放電空間では放電プラズマが行き届かない領域が生じるものと予想される。つまり、吸着材8a〜8dに導かれる活性種が放電処理面全体に行き届かなくなる。従って、吸着材8a〜8dに吸着されたアセトアルデヒドが効率よく分解除去されず、アセトアルデヒド除去率が試験回数の増加とともに低下するものと判断される。
【0047】
これに比べ、線状電極9a〜9dを用いた場合、放電用導線13の長さ方向の全域から放電プラズマが照射されるので広い放電面積を有し、放電空間に発生する放電プラズマは、放電空間の全域に行き届くものと予想される。従って、線状電極9a〜9dを用いたものでは、吸着材8a〜8dに導かれる活性種が放電処理面の全面に行き届いてアセトアルデヒドが効率よく分解除去される。従って、線状電極9a〜9dを用いた空気浄化装置1Aでは、安定した高いアセトアルデヒド除去率が維持されるものと判断される。よって、高圧電極には突起状電極15a〜15dより効率よくアセトアルデヒドを分解除去することが可能な線状電極9a〜9dを用いるのが好ましい。
【0048】
また、高圧電極に線状電極9a〜9dを使用することで、吸着材8a〜8dに吸着されたアセトアルデヒドが効率よく分解除去される。従って、吸着材8a〜8dの吸着能力が再生されて、長期にわたってその吸着力が維持されるので、吸着材8a〜8dを取替える必要がなくなり、メンテナンスが容易になる。
【0049】
高圧電極に線状電極9a〜9dを用いたことにより、吸着材8a〜8dの再生効果が得られるので、空気浄化装置1Aの稼動中に必ずしも放電プラズマを連続的に発生させておく必要はない。
例えば、以下のように放電プラズマを間欠的に発生させてもよい。
まず、空気浄化装置1Aにおいて、光音響マルチガスモニタを浄化部4aの処理ガス6の気流上流側に配置する。さらに、他の光音響マルチガスモニタを浄化部4dの清浄ガス11の排出側に配置する。これにより、浄化部4aに導入される処理ガス6に含有されるアセトアルデヒドの濃度および浄化部4dから排出される清浄ガス11に含有されるアセトアルデヒドの濃度を測定できる。
【0050】
そして、最後段の浄化部4dから排出される清浄ガス11に含有されるアセトアルデヒドの濃度と導入側の処理ガス6に含有されるアセトアルデヒドの濃度との割合が所定の値に達した時に放電プラズマを発生させる。これにより、放電プラズマを発生させるための消費電力が抑えられ、さらに放電プラズマによる吸着材8a〜8dへのダメージが軽減される。
【0051】
次に、空気浄化装置1Aが効率よくアセトアルデヒドを分解除去するための放電プラズマの条件を調べる試験を行った。試験では、放電プラズマを用いたアセトアルデヒドの分解除去において、放電ギャップ長をパラメータとしてアセトアルデヒド除去率の推移を調べた。また、放電電力は5Wにて行っている。さらに、放電プラズマを用いない場合のアセトアルデヒド除去率の推移についても調べた。
【0052】
試験は、密閉容器内のアセトアルデヒド濃度を10ppmに調整した後、負極性の直流高電圧を線状電極9a〜9dに印加し、空気浄化装置1Aを30分間連続稼動させてアセトアルデヒドを分解除去させる。そして、除去前後のアセトアルデヒド濃度を測定し、アセトアルデヒド除去率を算出した。その結果を図7に示す。
上記の試験を5回繰り返し、アセトアルデヒド除去率の推移を調べた。図7中、縦軸にはアセトアルデヒドの除去率[%]、横軸には試験回数を表記している。
【0053】
放電ギャップ長を3、5、10、15mmとし、高圧電極には線状電極9a〜9dを用い、吸着材8a〜8dには前述の第1の吸着材301を用いた。
図7中の701〜704は、それぞれギャップ長3,5,10,15mmでの結果を示すものであり、705は放電プラズマを用いない場合での結果を示している。
前述の試験での説明と同様に、放電プラズマを用いない場合のアセトアルデヒド除去率は、初回試験後80%以上の値を示し、試験回数が増加するにつれて低下する。
また、放電プラズマを用いた場合のアセトアルデヒド除去率は放電プラズマを用いない場合に比べて高い。
【0054】
また、放電ギャップ長10mmおよび15mmでは初回試験終了後のアセトアルデヒド除去率は90%以上の値を示すものの、試験回数の増加とともに低下する。5回目の試験終了時のアセトアルデヒド除去率は、放電ギャップ長10mmのものでは78%、放電ギャップ長15mmのものでは73%であった。
一方、放電ギャップ長3mmおよび5mmのものでは、試験回数によらず、アセトアルデヒド除去率は90%以上で安定して推移した。5回目の試験終了時のアセトアルデヒド除去率は、放電ギャップ長3mmのものでは95%、放電ギャップ長5mmのものも95%であった。
以上の結果から、アセトアルデヒド除去率は、基本的には放電ギャップの短いほうが高い傾向にあることがわかった。
【0055】
上記の試験結果では、放電ギャップ長は3mmまたは5mmのどちらを用いてもアセトアルデヒドは効率よく分解除去されていた。しかしながら、空気浄化装置1Aは室内の空気浄化を目的とした装置であるため、アセトアルデヒド除去率の向上と同時に、放電プラズマによって発生するオゾンが空気浄化装置1Aの外部に高濃度に漏洩することを抑制する必要がある。そこで空気浄化装置1Aにより分解除去されたアセトアルデヒドの量を空気浄化装置1Aから漏洩するオゾンの量[g/g]で規格化した値を空気浄化装置1Aの浄化性能として評価する。空気浄化装置1Aの浄化性能の評価は放電ギャップ長を変化させて行った。評価結果を図8に示す。分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量[g/g]を浄化性能評価値とする。なお、浄化性能評価値が高いほど好ましいのはいうまでもない。
【0056】
図8において、縦軸は分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量[g/g](浄化性能評価値)および漏洩オゾン濃度[ppm]、横軸は放電ギャップ長[mm]を示している。さらに図8中、801が分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量(浄化性能評価値)を示し、802が漏洩オゾン濃度[ppm]を示している。
そして、漏洩オゾン濃度は、放電ギャップ長を3mmから5mmに広げていくとともに急激に低下した。また、放電ギャップ長が5mmからさらに広げられると、漏洩オゾン濃度はなだらかに低下するようになり、放電ギャップ長が10mm以上になるとほぼ一定のオゾン濃度で推移した。
一方、浄化性能評価値は、放電ギャップ長が3mmから5mmに広がるにつれて上昇したが、放電ギャップ長が5mmを超えると低下に転じた。さらに、放電ギャップ長が広くなるにつれて浄化性能評価値の値は減少し、放電ギャップ長を10mm以上になると低下の割合がなだらかとなった。
【0057】
ついで上記試験結果について検討する。
活性種は、他の活性種や物質と反応しやすい状態にあるので、短時間のうちに消滅してしまう。そこで、放電ギャップ長が5mmより長くなるにつれて、空気浄化装置1Aから漏洩するオゾン量の増大が抑制されるものの、吸着材8a〜8dに到達される活性種の量も減少してアセトアルデヒドの分解除去がされにくくなる。従って、放電ギャップ長が5mmから広がるにつれて浄化性能評価値の値は小さくなるものと判断される。逆に放電ギャップ長が5mmから短くなるにつれて、吸着材8a〜8dに到達される活性種の量が増大し、アセトアルデヒドの分解除去量は維持されるものの、空気浄化装置1Aから漏洩するオゾン量は急激に増えるので、浄化性能評価値の値は小さくなるものと判断される。
【0058】
従って、放電ギャップ長を5mmに設定することで、浄化性能評価値の値は高い値で維持しつつ、漏洩オゾン濃度を小さな値に維持可能であり、空気浄化装置1Aの浄化性能は最良化される。また、放電ギャップ長は5mmが最良ではあるが、4〜7mmに設定されていれば空気浄化装置1Aは、効率的にアセトアルデヒドを分解除去しつつ漏洩オゾン濃度の上昇を抑制することができる。また、放電ギャップ長を4〜7mmとすることで、活性種がアセトアルデヒドの分解除去に関与することなく消滅する無効消費を軽減できるので、放電電力による余分な電力消費を低く抑えることができる。
【0059】
次に、空気浄化装置1Aでアセトアルデヒドを分解する場合おいて、線状電極9a〜9dの金属枠12aに配列した放電用導線13の配列間隔をパラメータとしてアセトアルデヒド除去率の推移を調べた。なお、放電ギャップ長は5mm、放電電力は5Wで試験を行っている。
試験はアセトアルデヒドの濃度を10ppmに調整した後、空気浄化装置1Aを30分間連続稼動して臭気成分を分解除去させて、処理前後のアセトアルデヒド濃度を測定した。また、放電プラズマを照射せずに吸着材8a〜8dのみによる試験も行った。試験結果を図9に示す。
【0060】
上記の試験を計5回連続で繰り返し、アセトアルデヒド除去率の推移を調べた。図9中、縦軸はアセトアルデヒド除去率[%]、横軸は試験回数を表している。
また、901〜903が、線状電極9a〜9dの放電用導線13の配列間隔が5,10,15mmのときの特性をそれぞれ表している。また、904は放電プラズマを使用しない場合での特性を示している。
【0061】
図9において、これまでの試験と同様、放電プラズマを用いない比較用の空気浄化装置でのアセトアルデヒド除去率がもっとも低く、さらに試験回数が増加するとともにその値は低下する。また、放電プラズマを用いた場合では、初回の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は、放電用導線13の配列間隔によらずほぼ同じ値を示し、その値は90パーセント以上の高い値であった。
また、放電用導線13の配列間隔が5mmおよび10mmでの試験では、試験回数によらず、アセトアルデヒド除去率は90%以上の高い値で安定して推移した。
放電用導線13の配列間隔が15mmでの試験では、試験回数が増加するとともに緩やかにアセトアルデヒド除去率は低下した。
5回目の試験終了後のアセトアルデヒド除去率は、放電用導線13の配列間隔が5mmの場合では92%、放電用導線13の配列間隔が10mmの場合では95%、放電用導線13の配列間隔が15mmの場合では83%であった。
【0062】
ついで上記試験結果について検討する。
放電用導線13の配列間隔が広くなるほど、放電プラズマを照射するための放電面積が減少し、放電空間では放電プラズマが均一に行き届かなくなる。つまりは放電プラズマによって生成される活性種が吸着材8a〜8dの放電処理面に行き届かなくなる。従って、吸着材8a〜8dの放電処理面において、アセトアルデヒドの分解除去が十分に行えない領域が生じるため、放電用導線13の配列間隔を15mmとした試験では、アセトアルデヒド除去率が低下するものと判断される。
【0063】
また、放電用導線13の配列間隔が狭くなると、放電プラズマにより生成される活性種を吸着材8a〜8dの放電処理面の全面に行き届かせることはできる。しかしながら、放電用導線13の配列間隔が狭くなりすぎると吸着材8a〜8dの放電処理面に対してアセトアルデヒドの分解除去に関与せずに消滅する活性種が増え、必要以上に放電電力が消費される状態となる。また、吸着材8a〜8dの放電処理面に必要以上に大きな放電電力のエネルギーが放たれると、熱脱着によるアセトアルデヒドが再放出される場合がある。これにより、放電用導線13の配列間隔10mmでのアセトアルデヒド除去率が、放電用導線13の配列間隔5mmでのアセトアルデヒド除去率より高くなったものと判断される。従って、放電用導線13の配列間隔は例えば10mmなど適度に間隔をあけて設けることが望ましい。
【0064】
また、上述したように、空気浄化装置1Aは室内の空気浄化を目的とした装置であるため、アセトアルデヒド除去特性の向上と同時に、放電プラズマによって発生するオゾンが空気浄化装置1Aから高濃度に漏洩されることを抑制する必要がある。そこで、前述の浄化性能評価値で、空気浄化装置1Aの浄化性能を評価する。空気浄化装置1Aの浄化性能の評価は線状電極9a〜9dの放電用導線13の配列間隔を変化させて行った。なお、放電ギャップ長は5mm、放電電力を5Wに設定して試験を行っている。
【0065】
分解除去されたアセトアルデヒドの量と、空気浄化装置1Aから漏れ出すオゾンの量で規格化した値と放電用導線13の配列間隔[mm]の関係を図10に示す。図10中、縦軸には分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量[g/g](浄化性能評価値)、漏洩オゾン濃度[ppm]、横軸には放電用導線13の配列間隔[mm]を表している。図10において、1001が分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量[g/g]を表し、1002が漏洩オゾン濃度[ppm]を表している。
【0066】
漏洩オゾン濃度は、放電用導線13の配列間隔を5mmから10mmに広げていくとともに急激に低下する。また、10mmをこえてからさらに放電用導線13の配列間隔を広げた場合、漏洩オゾン濃度は一定の値で推移する。
一方、浄化性能評価値は、放電用導線13の配列間隔を5mmから10mmに広げていくとともに増大する。しかし、放電用導線13の配列間隔が10mmを境に、放電用導線13の配列間隔を広げても浄化性能評価値は減少し続ける。つまり、放電用導線13の配列間隔が10mmで浄化性能評価値の値が最良化されている。
【0067】
ついで上記試験結果について検討する。
前述にて検討したとおり、放電用導線13の配列間隔は、10mmより広がるにつれて、放電空間では放電プラズマが均一に行き届かなくなり、つまりは放電プラズマによって生成される活性種が吸着材8a〜8dの放電処理面に行き届かなくなる。従って、アセトアルデヒドの分解除去能力が落ちて浄化性能評価値が小さくなるものと判断される。特に放電用導線13の配列間隔が12mmを超えると、アセトアルデヒドの分解除去能力が低下する割合が加速されるものと判断される。
【0068】
また、放電用導線13の配列間隔が10mmより小さい値では、吸着材8a〜8dの放電処理面の全体に放電プラズマが行き届き、アセトアルデヒドが分解除去されるものの漏洩オゾン濃度が急激に高くなるので浄化性能評価値が小さくなる。
以上の結果から、漏洩オゾン濃度を低い値でかつ浄化性能評価値が高く維持されるためには、放電用導線13の配列間隔を10mmに設定するのが最良である。ただし、放電用導線13の配列間隔が8〜12mmであれば、空気浄化装置1Aでは効率的にアセトアルデヒドを分解除去しつつ漏洩オゾン濃度を低く抑えることができる。
【0069】
この実施の形態1では、接地された吸着材8a〜8dと線状電極9a〜9dを有する浄化部4a〜4dが処理ガスの気流方向に4層に配列されるので、吸着材8a〜8dの放電処理面が増大される。そして、アセトアルデヒドなどの臭気成分は、集中的に吸着材8a〜8dの放電処理面に吸着して濃縮される。そして、放電空間に放電プラズマを発生させると、放電プラズマにより生成される活性種が吸着材8a〜8dの放電処理面の全体に行き届き、臭気成分が分解除去される。
【0070】
従って、この実施の形態1によれば、臭気成分の除去を効率的かつ多量に行うことができる。また、浄化部4a〜4dのそれぞれで臭気成分の分解除去が行われて、浄化部4a〜4dのそれぞれで消費される放電電力は低電力に抑えられるので、浄化部4a〜4dで発生するオゾンの量を軽減することができる。
また、吸着材8a〜8dに、アセトアルデヒドを効率よく吸着させることができる第1の吸着材301を用いることで、より効果的にアセトアルデヒドを分解除去できる。
【0071】
また、放電ギャップ長を4〜7mmに設定することで、活性種がアセトアルデヒドの分解除去に関与することなく消滅する無効消費を軽減できるので、放電電力による余分な電力消費を低く抑えることができるとともに、効率的にアセトアルデヒドを分解除去しつつ漏洩オゾン濃度の上昇を抑制することができる。
また、放電用導線13の配列間隔を8〜12mmに設定することで、効率的にアセトアルデヒドを分解除去しつつ、漏洩オゾン濃度の上昇を抑制することができる。
【0072】
なお、この実施の形態1では、臭気成分にアセトアルデヒドのみが含まれる処理ガスについての試験結果について述べたが、他の臭気成分を含む処理ガスについても他の臭気成分の分解除去を促進させる触媒を吸着材8a〜8dに担持させれば同様に説明される。
複数の臭気成分が含有される処理ガスにおいては、単一の触媒のみが吸着材8a〜8dに担持されていると、触媒表面に臭気成分の反応に寄与しない物質が吸着され、触媒作用の低下や停止を招く触媒被毒が発生する場合もある。従って、触媒を複数種混ぜ合わせて、吸着材8a〜8dに担持させることにより、触媒被毒に対して耐性が生まれ、長期にわたって臭気成分の優れた分解除去能力が維持される。
【0073】
実施の形態2.
図12はこの発明の実施の形態2に係る空気浄化装置の構成図である。
図12において、空気浄化装置1Bは、空気浄化装置1Aにおいて、高圧電源5aと線状電極9a〜9dとの間に配設されるスイッチング素子18をさらに備えている。
【0074】
スイッチング素子18は、1つの入力端子(図示せず)に対して2つの出力端子(図示せず)を有している。スイッチング素子18の入力端子は導体配線10cを介して高圧電源5aに接続されている。また、処理ガス6の導入側の線状電極9aを1番目の線状電極とし、さらに線状電極9b〜9dをそれぞれ2番目〜4番目の線状電極とした時に、奇数番目の線状電極9aと9cとが導体配線10dによって接続され、偶数番目の線状電極9bと9dとが導体配線10eによって接続されている。また、奇数番目の線状電極9a,9cと偶数番目の線状電極9b,9dとの間は絶縁されている。
つまり、浄化部4a〜4dは奇数番目の線状電極9a,9cを有するグループと偶数番目の線状電極9b,9dを有する2つのグループに分けられている。
【0075】
そして、導体配線10fが導体配線10dに接続され、スイッチング素子18の一方の出力端子と奇数番目の線状電極9a,9cとが電気的に接続される。さらに、導体配線10gが導体配線10eに接続されて、スイッチング素子18の他方の出力端子と偶数番目の線状電極9b,9dとが電気的に接続される。そして、スイッチング素子18は、高圧電源5aから印加される高電圧が、所定時間毎に2つのグループに分けられた浄化部4a〜4dに交互に印加されるように制御するこができるようになっている。
【0076】
スイッチング素子18にはサイリスタなどを用いることができる。サイリスタには直流高電圧を出力する出力端子を選択するためのゲート電極(図示せず)が設けられており、ゲート電極には直流電源(図示せず)が接続されている。そして、直流電源からゲート電圧に印加される電圧の極性を変動させることによって、電源5aから印加される高電圧が、所定時間毎に2つのグループに分けられた浄化部4a〜4dに交互に印加される。
なお、他の構成は実施の形態1と同様に構成されている。
【0077】
そして、空気浄化装置1Bが稼動されると、臭気成分を含んだ処理ガス6が送風機2により整流板3に導かれる。そして、例えば、線状電極9a,9cに高圧電源5aから負極性の直流高電圧が最初に印加されるとする。すると、線状電極9a,9cと対向する吸着材8a〜8cの放電処理面には放電プラズマにより生成される活性種が導かれ、臭気成分は分解除去されて吸着材の吸着能力が再生される。この場合での放電処理面は、吸着材8a,8cの一面側、吸着材8bの他面側である。ここで、吸着材8a〜8dのそれぞれにおいて、処理ガス6が流入される側の面を一面側、排出される側の面を他面側とした。
【0078】
また、偶数番目の線状電極9b,9dには電力が供給されていないため、線状電極9b,9dと対向する側の吸着材8a〜8dの放電処理面には、放電空間を流れる処理ガス6の臭気成分が集中して吸着され、放電処理面では臭気成分は高濃度状態に吸着される。この場合での放電処理面は、吸着材8a、8cの他面側および吸着材8b,8dの一面側である。
【0079】
そして、所定時間経過後、スイッチング素子18のゲート電極への電圧制御により、直流高電圧の印加が、奇数番目の線状電極9a,9cから偶数番目の線状電極9b,9dに切り替えられると、印加電圧の切り替え前には吸着力のみによって臭気成分が吸着されていた吸着材8a〜8dの放電処理面には放電プラズマによって生成された活性種が行き届いて臭気成分の分解除去がなされ、放電処理面の吸着力が再生される。このとき、放電処理面では、臭気成分が高濃度に吸着されているので、活性種が高確率に臭気成分に接触して効率よく臭気成分が分解除去される。
【0080】
また、印加電圧の切り替え前に、臭気成分が放電プラズマによって生成される活性種によって分解除去されていた吸着材8a〜8cの放電処理面では、活性種が導かれなくなり、吸着材8a〜8cの吸着力のみによって臭気成分が吸着され、臭気成分は放電処理面で高濃度化される。
【0081】
このように、高圧電源5aから供給される直流高電圧が、奇数番目の線状電極9a,9cまたは偶数番目の線状電極9b,9dのいずれか一方に印加されることで、吸着材8a〜8dは、その放電処理面に臭気成分が集中して吸着される部分と、放電プラズマにより生成される活性種によって臭気成分が分解除去される部分に分けられる。さらに、直流高電圧の印加が所定の時間毎に偶数番目の線状電極9a,9cと偶数番目の線状電極9b,9dとの間で入れ替わり、これに連動して臭気成分が集中して吸着される部分と臭気成分が分解除去される部分が入れ替わる。従って、実施の形態1の空気浄化装置1Aに比べ、臭気成分が集中して吸着される部分では放電電力は消費されないので、高圧電源5aから供給される電力が低く抑えられる。また、放電処理面の広さは維持されるので臭気成分の分解除去効率は向上されたままである。
【0082】
この実施の形態2では、高圧電源5aから印加される直流高電圧が、スイッチング素子18を制御することによって、奇数番目の線状電極9a,9cまたは偶数番目の線状電極9b,9dに所定の時間ごとに交互に供給される。
従って、この実施の形態2によれば、吸着材8a〜8dの放電処理面において高効率に臭気成分を分解除去しつつ、高圧電源5aから供給される電力消費を低減することができる。
【0083】
実施の形態3.
図13はこの発明の実施の形態3に係る空気浄化装置の構成図、図14はこの発明の実施の形態3に係る空気浄化装置のメッシュ状電極の構造を説明するための図である。
図13において空気浄化装置1Cは、空気浄化装置1Aの浄化部4a〜4dの線状電極9a〜9dの代わりに誘電体挟持電極部19a〜19dが配設された浄化部4e〜4hを有している。また、高圧電源5aの代わりに交流高電圧供給用の高圧電源5bが配設されている。
【0084】
誘電体挟持電極部19a〜19dは、高圧電極としてのメッシュ状電極20a〜20dとメッシュ形状の誘電体部21a〜21gで構成される。そして、メッシュ状電極20aではその処理ガス6の排出側の面に、またメッシュ状電極20b〜20dでは、その両面に誘電体部21a〜21gが密接状態に配設されている。このとき、メッシュ状電極20a〜20dの複数の開口面および誘電体部21a〜21gの複数の開口面が合わされて配設されている。メッシュ状電極20a〜20dとしては金属が用いられるが、導電性のある材料で代用してもよい。また、誘電体部21a〜21gの材料としては、臭気成分が表面に吸着されないガラスなどが用いられる。
【0085】
メッシュ状電極20a〜20dの形状は図14に示されるように、正方形の開口面を複数有する格子状に形成される。また、誘電体部21a〜21gの形状も同様である。正方形の開口面サイズは、処理ガス6の気流を妨げなければ特に限定されるものではないが、30mm角とした。そして、浄化部4e〜4hが、メッシュ状電極20a〜20dおよび誘電体部21a〜21gの開口面が整流板3から排出される処理ガス6の気流の方向と直交するように、かつ気流方向に所定の間隔で4層に配置される。
なお、他の構成は実施の形態1と同様に構成されている。
【0086】
空気浄化装置1Cが稼動されると、臭気成分を含んだ処理ガス6が送風機2により整流板3に導かれる。そして、処理ガス6が浄化部4e〜4hを通過し、浄化部4e〜4hの吸着材8a〜8dに臭気成分が吸着される。
また、高圧電源5bから交流高電圧がメッシュ状電極20a〜20dに印加されると、メッシュ状電極20a〜20dと吸着材8a〜8dとの間に形成される放電空間に無声放電が発生する。この無声放電によって発生させた放電プラズマによって大気中の酸素などの中性分子が解離されてオゾンや酸素原子などの活性種が生成される。メッシュ状の誘電体挟持電極部19a〜19dと対向する吸着材8a〜8dには、この無声放電によって発生する放電プラズマによって生成される活性種が全面に行き届く。従って、実施の形態1と同様に、吸着材8a〜8dに吸着されている臭気成分が効率的に分解除去される。
【0087】
この実施の形態3では、高圧電極としてのメッシュ状電極20a〜20dとメッシュ状の誘電体部21a〜21gとで誘電体挟持電極部19a〜19dが構成される。そしてメッシュ状電極20a〜20dと誘電体部21a〜21gの開口面が合わされて配設される誘電体挟持電極部19a〜19dが吸着材8a〜8dと対向して配置されて浄化部4e〜4hが形成される。さらに浄化部4e〜4hが、処理ガスの気流方向に所定の間隔で4層に配置されている。そして、メッシュ状電極20a〜20dに交流高電圧が印加されると無声放電による放電プラズマが放電空間に発生され、放電プラズマにより生成される活性種が吸着材8a〜8dの放電処理面に導かれる。
従って、実施の形態3においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0088】
なお、この実施の形態3では、メッシュ状電極20a〜20dの片面または両面に同じ形状の誘電体部21a〜21gを配設するものとして説明したが、誘電体部21a〜21gはこの形状のものに限定されるものではなく、処理ガス6の気流を妨げず、かつメッシュ状電極20a〜20dの開口面と接していればメッシュ状電極20a〜20dと同じ形状のものを用いる必要はない。さらには、誘電体部21a〜21gでメッシュ状電極20a〜20dを覆うように配設してもよい。
【0089】
実施の形態4.
図15はこの発明の実施の形態4に係る空気清浄化装置の構成図である。
図15において、空気浄化装置1Dは、空気浄化装置1Aの浄化部4a〜4dの代わりに浄化部4i〜4lが配置されている。そして、処理ガス6の気流方向の下流側に配設される浄化部4i〜4lほど、放電ギャップ長が広くあけられている。
この実施の形態4では、放電ギャップ長を吸着材8a〜8dのそれぞれにおいて、処理ガスが流入される側の面(一面側)と対向する線状電極9a〜9dとの間の距離として新たに定義する。また、隣接する線状電極9a〜9dの配列間隔は空気浄化装置1Aにおける線状電極9a〜9dの配列間隔と同じである。
なお、他の構成は実施の形態1と同様に構成されている。
【0090】
そして、空気浄化装置1Dが稼動されると、臭気成分を含んだ処理ガス6が送風機2により整流板3に導かれる。そして、処理ガス6の導入側の浄化部4iの吸着材8aによって臭気成分は吸着されるものの、吸着材8aにて吸着されなかった臭気成分が気流方向の2番目の吸着材8bにて吸着される。以下同様に3番目,4番目の吸着材8c,8dに臭気成分が吸着される。
【0091】
このとき、臭気成分の吸着量は、処理ガス6の導入側に近い吸着材ほど多い。つまり吸着材8aでの臭気成分の吸着量が最も多く、処理ガス6の気流方向の最下流に配置される吸着材8dでの臭気成分の吸着量が最も少ない。つまり、処理ガス6の導入側に近い吸着材ほど、放電処理面では臭気成分がさらに高濃度に吸着される。
【0092】
ここで、空気浄化装置1Aにおいて、処理ガス6中の臭気成分の濃度が非常に高く、放電プラズマによる臭気成分の分解除去の能力以上に吸着材8aに臭気成分が吸着される場合を想定する。空気浄化装置1Aが稼働されて、時間が経過すると、吸着材8aでの放電処理面では、吸着されている臭気成分を処理しきれないので、吸着材8aが破過される。従って、浄化部4aの臭気成分の分解除去能力が著しく低下される。そして、吸着材8aが破過されると、吸着材8aの放電処理面で分解除去しきれない多量の臭気成分が吸着材8bに流れて吸着されるので、吸着材8bの放電処理面でも臭気成分が分解除去しきれずに、吸着材8bが破過される。さらに、同様に吸着材8c,8dが連鎖的に破過される。
【0093】
この状態を解消すべく高圧電源5aの直流高電圧の大きさを上げて放電電力を増大させると、放電プラズマにより生成される活性種を多量に吸着材8a〜8dの放電処理面に導くことができるので、各浄化部4a〜4dでの臭気成分の分解除去能力は向上される。しかし、この場合、臭気成分の吸着量が少ない吸着材8dなどでは、臭気成分の分解除去に関与することなく消滅する活性種の無効消費が増大される。つまりは、必要以上の電力が消費される。さらに、放電プラズマによってそれぞれの浄化部4a〜4dで生成されるオゾンの量が増加して、空気浄化装置1Aから排出されるオゾンの濃度が上昇する。
【0094】
次に、空気浄化装置1Dの場合について述べる。上述したとおり、空気浄化装置1Dでは、処理ガス6の気流方向の下流側に配設される浄化部4i〜4lほど、放電ギャップ長が、広くあけられており、逆に気流上流側では放電ギャップ長が狭くなっている。
従って、空気浄化装置1Aでの高圧電源5aと同じ大きさの電圧を印加した場合でも、気流導入側に近い浄化部4iでは、放電プラズマにより生成される活性種が行き届きやすくなり、放電処理面の臭気成分の分解除去能力が向上される。また、浄化部4j〜4lでは、徐々に放電ギャップ長が広がって浄化部4j〜4lでの臭気成分の分解除去能力は低下されるものの、放電処理面に吸着される臭気成分の量も減少するので問題なく臭気成分は分解除去される。
従って、空気浄化装置1Dでは、高圧電源5aから供給される電力を増大させることなしに、臭気成分の分解除去が効率よく行われ、さらに吸着材8a〜8dのそれぞれが破過されることなく、その吸着力が再生される。
【0095】
また、放電プラズマによって生成されるオゾンの濃度は気流導入側の浄化部ほど高くなるが、吸着材8a〜8dに担持された触媒である二酸化マンガンはオゾン分解触媒でもある。よって、吸着材8a〜8dの基材の厚さを厚くすることでオゾンの分解処理能力は向上される。また、放電プラズマにより生成されたオゾンが処理ガス6の導入側の吸着材8aで分解しきれなくても、処理ガス6の気流方向の下流側に配設される吸着材8b〜8dによって分解されるため、オゾンが高濃度に装置外に漏洩されることがなくなる。
【0096】
また、例えば気流導入側の吸着材8aの他面側と線状電極9bとの間の距離は空気浄化装置1Aの放電ギャップ長より長くなるので、吸着材8aの他面側の放電処理面に行き届く活性種の量は減少される。しかしながら、吸着材8aに吸着される臭気成分の多くが吸着材8aの一面側に吸着されている。従って、吸着材8aの他面側に吸着される臭気成分は、吸着材8aの他面側の放電処理面に導かれる活性種だけで分解除去可能である。
【0097】
この実施の形態4によれば、その放電ギャップ長が、気流導入側に近くなるほど短くなるように配置されているので、気流導入側の浄化部ほど活性種が行き届き、吸着材8a〜8dを破過させることなく、かつ高圧電源5aから供給される電力の増大を抑制しつつ、効率的に臭気成分の分解除去を行うことができる。また、吸着材8a〜8dの基材に担持した二酸化マンガンはオゾン分解触媒でもあるため、処理ガス6の導入側の浄化部4iで高濃度のオゾンが発生しても、オゾンが4j〜4lを通気する間に分解されて、装置外に高濃度のオゾンが漏洩することを防ぐことができる。
【0098】
なお、実施の形態1,実施の形態2および実施の形態4では、線状電極9a〜9dの放電用導線13に白金クラッドタングステンを用いるものとして説明したが、白金クラッドタングステンに限定されるものではなく、他の金属や導電性を有する非金属物質でも代用することが出来る。
ただし、白金は、自動車触媒として用いる三元触媒に代表されるように、白金表面に酸素分子を吸着し、酸化力の強い酸素原子を白金上に生成することが知られている。即ち、線状電極9a〜9dに白金クラッドタングステン線を用いることにより、白金触媒機能が加わり、臭気成分分解除去効率がより向上される。
【0099】
また、各実施の形態では、吸着材8a〜8dの構造は、六角形の細孔面を有するハニカム構造にするものとして説明したが、ハニカム構造に限定されるものではなく、吸着材を通気する処理ガスの圧力損失の増大が抑制されていれば、三角形や八角形など、他の細孔面を有する形状でもよい。
【0100】
また、浄化部の配設層数は4層にするものとして説明したが、4層に配設するものに限定されるものではなく、浄化部の配設層数は、処理ガス6の流量や含有される臭気成分の濃度および吸着材での圧力損失の大きさなどを考慮に入れて適宜決定すればよい。
また、給電極7a〜7dを接地して、高圧電極に高圧電源から高電圧を印加するものとして説明したが、給電極7a〜7dは接地することに限定されるものではなく、給電極7a〜7dと高圧電極との間に高圧電源の高電圧が印加されていればよい。
【0101】
また、空気浄化装置の外部に排出される漏洩オゾン濃度の値が高い場合には、処理ガス6の気流方向の再下流に配置される浄化部において、浄化部の清浄ガス排出側に活性炭等のオゾン分解触媒を新たに配設したり、浄化部の吸着材自体を加熱することにより、排出されるオゾン濃度の値を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置における線状電極の構造を説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置における放電プラズマ未発生状態でのアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置におけるアセトアルデヒド除去率と放電電力との関係を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1に空気浄化装置において放電電力をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において高圧電極形状をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において放電ギャップ長をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量および漏洩オゾン濃度と放電ギャップ長との関係を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において放電用導線の配列間隔をパラメータとした時のアセトアルデヒド除去率と試験回数との関係を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係る空気浄化装置において分解除去されたアセトアルデヒドの量/漏洩オゾンの量および漏洩オゾン濃度と放電用導線の配列間隔との関係を示す図である。
【図11】突起状電極の構造を説明する図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係る空気浄化装置の構成図である。
【図13】この発明の実施の形態3に係る空気浄化装置の構成図である。
【図14】この発明の実施の形態3に係る空気浄化装置のメッシュ状電極の構造を説明するための図である。
【図15】この発明の実施の形態4に係る空気清浄化装置の構成図である。
【符号の説明】
【0103】
1A〜1D 空気浄化装置、4a〜4l 浄化部、5a,5b 高圧電源、6 処理ガス、7a〜7d 給電極、8a〜8d 吸着材、9a〜9d 線状電極(高圧電極)、20a〜20d メッシュ状電極(高圧電極)、21a〜21g 誘電体部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材および基材に担持される触媒で構成され、かつ給電極が接した状態に配設される導電性の吸着材および該吸着材に対向して配設される高圧電極を有する複数の浄化部と、上記給電極と上記高圧電極との間に高電圧を印加するための高圧電源と、を備え、
処理ガスに含有される臭気成分を、上記吸着材に吸着させ、上記高圧電極と上記吸着材との間に放電プラズマを発生させて、該放電プラズマにより生成される活性種により上記臭気成分を分解除去する空気浄化装置であって、
上記複数の浄化部は、隣接する高圧電極と吸着材との間の距離を等間隔にして、上記処理ガスの気流方向に配設されていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
基材および基材に担持される触媒で構成され、かつ給電極が接した状態に配設される導電性の吸着材および該吸着材に対向して配設される高圧電極を有する複数の浄化部と、上記給電極と上記高圧電極との間に高電圧を印加するための高圧電源と、を備え、
処理ガスに含有される臭気成分を、上記吸着材に吸着させ、上記高圧電極と上記吸着材との間に放電プラズマを発生させて、該放電プラズマにより生成される活性種により上記臭気成分を分解除去する空気浄化装置であって、
上記複数の浄化部は、上記処理ガスの気流方向に配設され、かつ下流側に配設される浄化部ほど上記高圧電極と上記吸着材との間隔が広くあけられることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項3】
上記基材は、疎水性ゼオライトがセラミクス表面に当着されたものであり、上記触媒は二酸化マンガンであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の空気浄化装置。
【請求項4】
上記高圧電極は、同一平面上に平行かつ所定の配列間隔で配列される複数の放電用導線と、放電用導線の両端側のそれぞれを同電位に接続されるための放電用導線接続手段と、を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項5】
上記吸着材と上記高圧電極との間の距離が4〜7mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項6】
上記複数の浄化部は、それぞれ高圧電極が同電位に接続された2つのグループに分けられ、スイッチング素子が上記高圧電源と上記複数の浄化部との間に配設されて、上記高電圧が上記2つのグループに交互に印加されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項7】
上記高圧電極は、メッシュ状電極であり、誘電体部が上記メッシュ状電極の表面に接して配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項8】
触媒が基材に担持されて構成された吸着材および該吸着材に対向して配設される高圧電極からなる複数の浄化部を、臭気成分が含まれる処理ガスの流れ方向に配列し、
上記処理ガスを流しつつ、上記複数の浄化部において、上記吸着材と上記高圧電極との間に高電圧を印加して放電プラズマを発生させ、
上記放電プラズマにより生成される上記活性種により上記吸着材に吸着された上記臭気成分を分解除去することを特徴とする空気浄化方法。
【請求項9】
上記複数の浄化部は、それぞれ高圧電極が同電位に接続された2つのグループに分けられ、上記高電圧が上記2つのグループに交互に印加されることを特徴とする請求項8記載の空気浄化方法。
【請求項1】
基材および基材に担持される触媒で構成され、かつ給電極が接した状態に配設される導電性の吸着材および該吸着材に対向して配設される高圧電極を有する複数の浄化部と、上記給電極と上記高圧電極との間に高電圧を印加するための高圧電源と、を備え、
処理ガスに含有される臭気成分を、上記吸着材に吸着させ、上記高圧電極と上記吸着材との間に放電プラズマを発生させて、該放電プラズマにより生成される活性種により上記臭気成分を分解除去する空気浄化装置であって、
上記複数の浄化部は、隣接する高圧電極と吸着材との間の距離を等間隔にして、上記処理ガスの気流方向に配設されていることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項2】
基材および基材に担持される触媒で構成され、かつ給電極が接した状態に配設される導電性の吸着材および該吸着材に対向して配設される高圧電極を有する複数の浄化部と、上記給電極と上記高圧電極との間に高電圧を印加するための高圧電源と、を備え、
処理ガスに含有される臭気成分を、上記吸着材に吸着させ、上記高圧電極と上記吸着材との間に放電プラズマを発生させて、該放電プラズマにより生成される活性種により上記臭気成分を分解除去する空気浄化装置であって、
上記複数の浄化部は、上記処理ガスの気流方向に配設され、かつ下流側に配設される浄化部ほど上記高圧電極と上記吸着材との間隔が広くあけられることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項3】
上記基材は、疎水性ゼオライトがセラミクス表面に当着されたものであり、上記触媒は二酸化マンガンであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の空気浄化装置。
【請求項4】
上記高圧電極は、同一平面上に平行かつ所定の配列間隔で配列される複数の放電用導線と、放電用導線の両端側のそれぞれを同電位に接続されるための放電用導線接続手段と、を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項5】
上記吸着材と上記高圧電極との間の距離が4〜7mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項6】
上記複数の浄化部は、それぞれ高圧電極が同電位に接続された2つのグループに分けられ、スイッチング素子が上記高圧電源と上記複数の浄化部との間に配設されて、上記高電圧が上記2つのグループに交互に印加されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項7】
上記高圧電極は、メッシュ状電極であり、誘電体部が上記メッシュ状電極の表面に接して配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の空気浄化装置。
【請求項8】
触媒が基材に担持されて構成された吸着材および該吸着材に対向して配設される高圧電極からなる複数の浄化部を、臭気成分が含まれる処理ガスの流れ方向に配列し、
上記処理ガスを流しつつ、上記複数の浄化部において、上記吸着材と上記高圧電極との間に高電圧を印加して放電プラズマを発生させ、
上記放電プラズマにより生成される上記活性種により上記吸着材に吸着された上記臭気成分を分解除去することを特徴とする空気浄化方法。
【請求項9】
上記複数の浄化部は、それぞれ高圧電極が同電位に接続された2つのグループに分けられ、上記高電圧が上記2つのグループに交互に印加されることを特徴とする請求項8記載の空気浄化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−222303(P2007−222303A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45513(P2006−45513)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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