空気調和機の室外機防振装置
【課題】室外機の内部構造を複雑化することなく、室外機から外部への振動伝達をより確実に防止できるようにした空気調和機の室外機防振装置を提供する。
【解決手段】内部空間を有するケース部材1と、ケース部材1の内部空間に収納配置される空気調和機の室外機本体2と、ケース部材1に対して室外機本体2を吊り下げ支持する4個のコイルばね3、…、3と、ケース部材1の両側板11b、11bと室外機2の両側壁11b、11bにそれぞれ連結固定されて室外機本体2の主振動方向(図1のZ方向及びX方向)の動きを弾性的に許容するように配設された2個の防振ゴム4、4と、から構成されている。
【解決手段】内部空間を有するケース部材1と、ケース部材1の内部空間に収納配置される空気調和機の室外機本体2と、ケース部材1に対して室外機本体2を吊り下げ支持する4個のコイルばね3、…、3と、ケース部材1の両側板11b、11bと室外機2の両側壁11b、11bにそれぞれ連結固定されて室外機本体2の主振動方向(図1のZ方向及びX方向)の動きを弾性的に許容するように配設された2個の防振ゴム4、4と、から構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の冷暖房を行う空気調和機の室外機防振装置に係り、電動機やその電動機により作動して振動発生源となる機器を備えた室外機に対して好適に採用される空気調和機の室外機防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭等で使用される空気調和機は、室内熱交換器や圧縮機、室外熱交換器、膨張弁等の要素を含む冷媒回路を備えており、この冷媒回路は、室内に設置される室内機と室外に設置される室外機との間で冷媒が循環するようにされている。この空気調和機による室内の冷暖房は、冷媒がその冷媒回路を循環する途中で、室内機の室内熱交換器及び室外機の室外熱交換器においてそれぞれ熱交換を行うことによって実現される。
【0003】
ところで、上記空気調和機の室外機は、通常、マウントやコンクリートブロック等を介してベランダや地上に設置されているが、この室外機には、圧縮機やファン、及びそれらを作動させる電動機やエンジン等の振動発生源となる複数の機器が搭載されていることから、振動や騒音の対策が必要となる。そこで、特許文献1には、機械室内において基礎板上に設置されるガスエンジンを支持する第一の防振器と、第一の防振器の下方で前記基礎板を支持する第二の防振器とを備え、ガスエンジンを中心として発生する振動を防振可能とした室外機ユニット及び空気調和機が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、エンジンや圧縮機が固定されるエンジン支持フレームを装置設置板上で支持する第一の防振装置と、前記装置設置板を台床上で支持する第二の防振装置とを備え、装置設置板から台床へ伝達される振動エネルギを低減させるようにしたエンジンヒートポンプの室外機が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、頂壁と頂壁の外端から垂下する側壁を一体に形成した樹脂製マウント本体の側壁下部に、防振ゴムを機械的に係止させて取付けてなる空調機の室外機用マウントが開示されている。この特許文献3に開示されたマウントは、マウント本体の側壁下部に防振ゴムが予め取付けられているので、室外機据付け時の作業を増加せずに騒音を防止することができ、また、防振ゴムが外れ難く、騒音防止効果が安定して発揮されるとされている。
【0006】
ところで、特許文献1及び2に開示された室外機においては、冷媒回路を構成する機器やそれらを作動させる駆動機器及び付属機器等の多数の機器類が収納配置されているのに加えて、エンジン等の振動発生源から室外機外部への振動伝達を防止する第一及び第二の防振器(防振装置)が、室外機内部の限られたスペース内に収容された状態で多数箇所に設置されているため、内部構造が複雑になっている。また、第一及び第二の防振器(防振装置)の設置スペースも制約されることから、振動伝達を効果的に防止できる適切な箇所にそれらを配置できない場合もある。
【0007】
一方、特許文献3に開示された室外機用マウントの場合には、マウント本体の側壁下部に予め取付けられている防振ゴムは、マウント本体の側壁の下端面と当接する部位で室外機の全荷重を支持することから、単位面積当たりの支持荷重が大きくなり剛性が高いものとなる。そのため、防振ゴムの振動伝達率が高まり、室外機が設置されているベランダや地面への振動伝達を十分に防止することができず、結果的に騒音防止も不十分となる。
【0008】
【特許文献1】特開平11−264588号公報
【特許文献2】特開2006−71200号公報
【特許文献3】特開2002−228202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、室外機の内部構造を複雑化することなく、室外機から外部への振動伝達をより確実に防止できるようにした空気調和機の室外機防振装置を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明に係る空気調和機の室外機防振装置は、内部空間を有するケース部材と、電動機及び該電動機により作動して振動発生源となる機器を備え、前記ケース部材の前記内部空間に収納配置される空気調和機の室外機本体と、前記ケース部材に対して前記室外機本体を吊り下げ支持するコイルばねと、前記ケース部材と前記室外機本体に連結固定されて前記室外機本体の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設された防振ゴムと、から構成されていることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る空気調和機の室外機防振装置では、内部に振動発生源となる機器類を有する室外機本体がコイルばねで吊り下げ支持されると共に、その室外機本体とコイルばねとによって構成される振動系の固有周期が防振ゴムで調整されるようにしている。また、振動系の固有周期が低く設定されることにより、室外機本体の振動が防振領域となるようにされている。
【0012】
これにより、室外機本体の内部に配設された電動機や圧縮機、ファン等の振動発生源となる機器類の作動により冷暖房の運転が開始されることによって、室外機本体自体に振動が発生すると、室外機本体の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設された防振ゴムとコイルばねの縦方向の弾性力とによって効果的に吸収されるため、室外機本体から外部(ケース部材)への広い周波数域の振動の伝達が確実に防止される。この場合、ばね系としてコイルばねと防振ゴムが併用されていることから、コイルばねの振動伝達率特性において通常生起し易いサージング現象の発生が回避され、振動伝達率のピークも低いレベルに下げられる。また、防振ゴムの固有周期を小さく調整することにより、振動伝達率を大幅に小さくすることが可能である。
【0013】
また、本発明の室外機防振装置は、人が接触したり地震が発生したりすることによって共振周波数近辺の振動が室外機本体に入力した場合には、防振ゴムで共振倍率が抑えられているため、室外機本体の変位や衝撃を小さく抑えることが可能となる。さらに、本発明の室外機防振装置は、コイルばね及び防振ゴムが室外機本体の外部に設けられているため、室外機本体の内部構造の複雑化を回避することが可能となる。したがって、本発明の室外機防振装置によれば、内部構造を複雑化することなく、室外機から外部への振動伝達をより確実に防止することができる。
【0014】
本発明において用いられるケース部材は、室外機本体が収納配置される内部空間を有するものであり、ケース部材の一面又は複数面に、室外機本体内部に設けられたファンにより排出される空気の排気窓を有するものが好適に採用される。また、ケース部材の内部空間に収納配置される室外機本体は、電動機及び該電動機により作動して振動発生源となる機器を備えたものである。即ち、この室外機本体は、電気を動力源とするモータや該モータにより作動する例えば圧縮機やファン等が装備された機器を備えたものである。この室外機本体は、振動発生源となる電動機及び機器類の配設箇所、或いはそれらの機器類に装備される回転軸の配置方向等によって、主となる振動方向が変化する。
【0015】
また、本発明において用いられるコイルばねは、ケース部材に対して室外機本体を吊り下げ支持するものである。本発明の好適な態様として、コイルばねは、室外機本体の殆ど全部の荷重を支持するように設置されている。このようにすれば、防振ゴムによる固有周期の調整が容易になるとともに、室外機本体外部への振動伝達をより確実に防止することが可能となる。このコイルばねは、従来より公知の金属製のものを採用することができ、吊り下げ支持される室外機本体の重量やバランス等を考慮して1個或いは2個以上の適数個のものが用いられる。
【0016】
また、本発明において用いられる防振ゴムは、ケース部材と室外機本体に連結固定されて室外機本体の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設される。室外機本体の主振動方向は、室外機本体内に収納配置されて振動発生源となる機器類の設置箇所や回転軸の方向等によって異なるため、それぞれの室外機本体の主振動方向に合わせて防振ゴムの設置箇所や方向が決定される。本発明の好適な態様として、防振ゴムは、室外機本体の主振動方向に沿う方向において軟らかいばねを有するように配設されている。このようにすれば、室外機本体の主振動方向への動きが容易になるので、室外機本体外部への振動伝達をより確実に防止することが可能となる。
【0017】
例えば、防振ゴムとしてブロック状のゴム弾性体を採用した場合には、ゴム弾性体の剪断変形方向が軟らかいばねを有する方向となるので、その剪断変形方向が室外機本体の主振動方向に沿うように配設される。一方、ブロック状のゴム弾性体の圧縮変形方向は、硬いばねを有する方向となるので、その圧縮変形方向が室外機本体の主振動方向に沿わないように配設される。よって、室外機本体の主振動方向が縦方向の場合には、ゴム弾性体が室外機本体の側面に配設され、室外機本体の主振動方向が横方向の場合には、ゴム弾性体が室外機本体の上面又は下面に配設されるようにすればよい。
【0018】
なお、室外機本体の振動が三次元方向において発生する場合には、防振ゴムとして、三次元方向において軟らかいばねを有するように設定された液体封入式防振ゴムを好適に採用することができる。この液体封入式防振ゴムは、例えば、少なくとも一部に弾性変形可能な薄肉の可撓部を有する容器状部材と、該容器状部材の内部に密閉封入された液体とを備えたものを採用することができる。内部に封入される液体としては、例えば、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコンオイルなど低粘度から高粘度の液体を採用することができるが、この中でもシリコンオイルが好適に採用される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の室外機防振装置は、防振機能を発揮するばね系が、ケース部材に対して室外機本体を吊り下げ支持するコイルばねと、ケース部材と室外機本体に連結固定されて室外機本体の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設された防振ゴムとの組み合わせにより構成されているため、室外機本体の内部構造を複雑化することなく、振動発生源から室外機本体外部への振動伝達をより確実に防止することができる。また、本発明は、既設の室外機に対しても、ケース部材、コイルばね及び防振ゴムを追加することにより、簡易に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔実施形態1〕
図1は実施形態1に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図であり、図2はその室外機防振装置の断面図であって図1のII−II線矢視断面図である。
【0021】
実施形態1の室外機防振装置は、図1及び図2に示すように、内部空間を有するケース部材1と、ケース部材1の内部空間に収納配置される空気調和機の室外機本体2と、ケース部材1に対して室外機本体2を吊り下げ支持する4個のコイルばね3、…、3と、ケース部材1の両側板11b、11bと室外機2の両側壁11b、11bにそれぞれ連結固定されて室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設された2個の防振ゴム4、4と、から構成されている。
【0022】
ケース部材1は、天板11aと該天板11aの両端から垂下する一対の側板11b、11bとを備え、金属板で門形に形成されたケース本体部11と、一対の側板11b、11bの両下端部に連結された金属板よりなる底板12とで構成されている。このケース部材1は、前後方向(図1のY方向)の両面が開口しており、ケース本体部11と底板12とによって区画された内部空間を有する。
【0023】
室外機本体2は、所定の大きさの方体に形成されたハウジングを有し、そのハウジング内には、いずれも図示されていないが、圧縮機や室外熱交換器、膨張弁等の冷媒回路上に設置される機器や、室外熱交換器の働きを補助する室外機ファン等の補助機器、圧縮機や室外機ファンを作動させる電動機等の振動発生源となる多数の機器類が収納されている。この室外機本体2は、ケース部材1の内部空間内に収納配置されており、図示されない室内機と冷媒回路を介して接続されている。なお、この室外機本体2の場合、振動発生源となる機器類の作動時において、室外機本体2に総合的に発生する振動の主振動方向は、上下方向(図1のZ方向)と前後方向(図1のY方向)となっている。
【0024】
コイルばね3、…、3は、金属製のものが用いられている。各コイルばね3、…、3は、その上端がケース部材1の天板11aに係止されるとともに、その下端が室外機本体2上面の4箇所に固着されたブラケット21、…、21に係止されている。これにより、室外機本体2の全荷重が4個のコイルばね3、…、3によって支持された状態で、ケース部材1に対して室外機本体2が吊り下げ支持されている。なお、このコイルばね3、…、3と室外機本体2とによって構成される振動系の固有周期は、室外機本体2の重量(通常5〜70kg程度)が重いため低い値に設定されている。
【0025】
各防振ゴム4、4は、円柱状に形成されたゴム弾性体41と、ゴム弾性体41の軸方向両端面に固着された円形板状の基板42、42とからなる。各防振ゴム4、4は、ゴム弾性体41の軸方向が左右方向(図1のX方向)を向くようにして、一方の基板42がケース部材1の側板11b内面の下方部に連結固定されるとともに、他方の基板42が室外機本体2の側面の下方部に連結固定されており、室外機本体2のX方向両側に1個ずつ配設されている。
【0026】
これにより、各防振ゴム4、4は、室外機本体2の主振動方向(図1のZ方向及びY方向)に沿う方向において剪断変形による軟らかいばねを有するように配設されており、室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容するようにされている。各防振ゴム4、4がこのように配設されることによって、室外機本体2の振動が防振領域となるようにされている。また、室外機本体2の左右方向(図1のX方向)の動きは、各防振ゴム4、4の圧縮変形による硬いばねで弾性的に規制されるようにされている。
【0027】
以上のように構成された本実施形態の室外機防振装置は、集合住宅のベランダや地上に直接、或いはマウントやコンクリートブロック等を介して、ケース部材1が固定されることにより設置される。そして、室外機本体2の内部に配設された電動機や圧縮機、ファン等の振動発生源となる機器類の作動により冷暖房の運転が開始されることによって、室外機本体2自体が振動すると、その振動は、室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容する防振ゴム4、4とコイルばね3、…、3の縦方向の弾性力とによって効果的に吸収されるため、室外機本体2から外部(ケース部材1)へ伝達されない。
【0028】
また、実施形態1の室外機防振装置は、人や物が室外機本体2に接触したり地震が発生したりすることによって共振周波数近辺の振動が室外機本体2に入力した場合には、防振ゴム4、4で共振倍率が抑えられているため、室外機本体2の変位(特に図1のX方向)や衝撃が小さく抑えられる。なお、実施形態1の室外機防振装置は、コイルばね3、…、3及び防振ゴム4、4が室外機本体2の外部に設けられているため、内部構造の複雑化を回避することが可能となる。
【0029】
以上のように、実施形態1の室外機防振装置は、防振機能を発揮するばね系が、ケース部材1に対して室外機本体2を吊り下げ支持するコイルばね3、…、3と、ケース部材1と室外機本体2に連結固定されて室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設された防振ゴム4、4との組み合わせにより構成されているため、室外機本体2の内部構造を複雑化することなく、室外機本体2から外部(ケース部材1)への振動伝達をより確実に防止することができる。
【0030】
また、実施形態1におけるコイルばね3、…、3は、室外機本体2の殆ど全部の荷重を支持するように設置されているため、防振ゴム4、4による固有周期の調整が容易になるとともに、室外機本体2から外部への振動伝達をより確実に防止することが可能となる。さらに、防振ゴム4、4は、室外機本体2の主振動方向に沿う方向において軟らかいばねを有するように配設されているため、室外機本体2の主振動方向への動きが容易になるので、室外機本体2外部への振動伝達をより確実に防止することが可能となる。
【0031】
〔変形例1〕
図3は変形例1に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図であり、図4はその室外機防振装置の断面図であって図3のIV−IV線矢視断面側面図である。
【0032】
変形例1の室外機防振装置は、図3及び図4に示すように、主振動方向が図3のZ方向及びX方向となる室外機本体2に対応して防振ゴム4a、4aが配設されている点で、実施形態1のものと異なり、用いられている防振ゴム4a、4aも実施形態1のものと異なる。即ち、変形例1の各防振ゴム4a、4aは、円柱状に形成されたゴム弾性体41aと、ゴム弾性体41aの軸方向両端面に固着された断面L字形状のL形基板42a、42aとからなる。
【0033】
各防振ゴム4a、4aは、ゴム弾性体41aの軸方向が前後方向(図3のY方向)を向くようにして、一方のL形基板42aがケース部材1の側板11b内面の下方部にねじ止めにより連結固定されるとともに、他方のL形基板42aが室外機本体2の側面の下方部にねじ止めにより連結固定されており、室外機本体2の左右方向(図3のX方向)両側に1個ずつ配設されている。
【0034】
これにより、各防振ゴム4a、4aは、室外機本体2の主振動方向(図3のZ方向及びX方向)に沿う方向において剪断変形による軟らかいばねを有するように配設されており、室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容するようにされている。各防振ゴム4a、4aがこのように配設されることによって、室外機本体2の振動が防振領域となるようにされている。また、室外機本体2の前後方向(図3のY方向)の動きは、各防振ゴム4a、4aの圧縮変形による硬いばねで弾性的に規制されるようにされている。
【0035】
以上のように構成された変形例1の室外機防振装置は、室外機本体2の主振動方向となる図3のZ方向とX方向において、室外機本体2から外部(ケース部材1)への振動伝達をより確実に防止することができ、その他にも実施形態1のものと同様の作用及び効果を奏する。
【0036】
〔実施形態2〕
図5は実施形態2に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図であり、図6はその室外機防振装置の断面図であって図5のVI−VI線矢視断面図である。
【0037】
実施形態1の室外機防振装置は、図5及び図6に示すように、主振動方向が図5のX方向及びY方向となる室外機本体2に対応して防振ゴム4、4が配設されている点で、実施形態1のものと異なる。また、用いられている防振ゴム4、4は実施形態1と同じものであるが、防振ゴム4、4の配設箇所が実施形態1と異なる。
【0038】
即ち、実施形態2の防振ゴム4、4は、ゴム弾性体41の軸方向が上下方向(図5のZ方向)を向くようにして、一方の基板42がケース部材1の底板12上面の所定箇所に連結固定されるとともに、他方の基板42が室外機本体2底面の所定箇所に連結固定されており、室外機本体2の底部(下端)側に互いに距離を隔てて2個配設されている。
【0039】
これにより、各防振ゴム4、4は、室外機本体2の主振動方向(図5のX方向とY方向)に沿う方向において剪断変形による軟らかいばねを有するように配設されており、室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容するようにされている。各防振ゴム4、4がこのように配設されることによって、室外機本体2の振動が防振領域となるようにされている。また、室外機本体2の上下方向(図5のZ方向)の動きは、各防振ゴム4、4の圧縮変形による硬いばねで弾性的に規制されるようにされている。
【0040】
以上のように構成された実施形態2の室外機防振装置は、室外機本体2の主振動方向となる図5のX方向及びY方向において、室外機本体2から外部(ケース部材1)への振動伝達をより確実に防止することができ、その他にも実施形態1のものと同様の作用及び効果を奏する。
【0041】
〔変形例2〕
図7は変形例2に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図であり、図8はその室外機防振装置の断面図であって図7のVIII−VIII線矢視断面側面図である。
【0042】
変形例2の室外機防振装置は、図7及び図8に示すように、主振動方向が図7のX方向及びY方向となる室外機本体2に対応して防振ゴム4、4が配設されたものである点で実施形態2と同じであるが、防振ゴム4、4の配設箇所が実施形態2のものと異なる。即ち、変形例2の防振ゴム4、4は、ゴム弾性体41の軸方向が上下方向(図7のZ方向)を向くようにして、一方の基板42がケース部材1の天板11a下面の所定箇所に連結固定されるとともに、他方の基板42が室外機本体2天井面の所定箇所に固着されたブラケット22に連結固定されており、室外機本体2の天井部(上端)側に互いに距離を隔てて2個の防振ゴム4、4配設されている。
【0043】
これにより、各防振ゴム4、4は、実施形態2の場合と同様に、室外機本体2の主振動方向(図7のX方向及びY方向)に沿う方向において剪断変形による軟らかいばねを有するように配設されており、室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容するようにされている。また、室外機本体2の上下方向(図7のZ方向)の動きは、各防振ゴム4、4の圧縮変形による硬いばねで弾性的に規制されるようにされている。
【0044】
以上のように構成された変形例2の室外機防振装置は、室外機本体2の主振動方向となる図7のX方向及びY方向において、室外機本体2から外部(ケース部材1)への振動伝達をより確実に防止することができ、実施形態2のものと同様の作用及び効果を奏する。
【0045】
〔実施形態3〕
図9は実施形態3に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図であり、図10はその室外機防振装置の断面図であって図9のX−X線矢視断面図であり、図11はその室外機防振装置において用いられた液体封入式防振ゴムの取付け状態を示す断面図である。
【0046】
実施形態3の室外機防振装置は、図9〜図11に示すように、主振動方向が図9のX方向とY方向とZ方向の三次元方向となる室外機本体2に対応するものであって、防振ゴムとして三次元方向において軟らかいばねを有するように設定された液体封入式防振ゴム5、5が用いられている点で実施形態1のものと異なる。
【0047】
即ち、各液体封入式防振ゴム5、5は、図11に示すように、弾性変形可能な薄肉のゴムにより有底円筒状に形成された容器部材51と、容器部材51の周壁部の開口側端部に外嵌保持された円筒状のホルダ部52と、ホルダ部52の外周に嵌合されて容器部材51の開口を覆蓋する蓋部材53と、容器部材51の内部に封入された液体(本実施形態ではシリコンオイル)54とを備えている。
【0048】
容器部材51の底部は、その中央部が小径となって外方へ少し突出するように形成されており、その突出した部分の内面中央部には、内側へ向かって突出する円柱状の攪拌部55が設けられている。これにより、ホルダ部52に嵌合保持された容器部材51の周壁部と底部に設けられた攪拌部55との間の部位には、容易に弾性変形可能な可撓部51aが形成されている。また、攪拌部55には、連結ボルト56の頭部が外側から埋め込まれた状態で嵌合保持されている。
【0049】
各液体封入式防振ゴム5、5は、蓋部材53がケース部材1の側板11b内面の下方部に固着されるとともに、連結ボルト56先端のねじ部が室外機本体2のハウジング側壁20の下方部において、一対の平ワッシャ57、57や一対のスプリングワッシャ58、58及び一対のナット59、59により、ハウジング20の側壁の内外両面から緊締された状態で連結固定されている。このようにして、室外機本体2の左右方向(図9のX方向)両側に1個ずつ液体封入式防振ゴム5、5が配設されており、これにより、各液体封入式防振ゴム5、5は、図9のX方向とY方向とZ方向の三次元方向において、液体54の流動作用に基づく軟らかいばねを有するように配設されている。
【0050】
以上のように構成された実施形態3の室外機防振装置は、三次元方向において軟らかいばねを有するように設定された液体封入式防振ゴム5、5が用いられているため、室外機本体2の主振動方向となる図9のX方向とY方向とZ方向の三次元方向において、室外機本体2から外部(ケース部材1)への振動伝達をより確実に防止することができるなど、実施形態1のものと同様の作用及び効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態1に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る空気調和機の室外機防振装置の断面図であって図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】本発明の変形例1に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図である。
【図4】本発明の変形例1に係る空気調和機の室外機防振装置の断面図であって図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る空気調和機の室外機防振装置の断面図であって図5のVI−VI線矢視断面図である。
【図7】本発明の変形例2に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図である。
【図8】本発明の変形例2に係る空気調和機の室外機防振装置の断面図であって図7のVIII−VIII線矢視断面図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る空気調和機の室外機防振装置の断面図であって図9のX−X線矢視断面図である。
【図11】本発明の実施形態3に係る空気調和機の室外機防振装置において用いられた液体封入式防振ゴムの取付け状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…ケース部材 11…ケース本体部 11a…天板 11b…側板 12…底板 2…室外機本体 20…ハウジング 21、22…ブラケット 3…コイルばね 4、4a…防振ゴム 41、41a…ゴム弾性体 42…基板 42a…L形基板 5…液体封入式防振ゴム 51…容器部材 51a…可撓部 52…ホルダ部 53…蓋部材 54…液体 55…攪拌部 56…連結ボルト 57…平ワッシャ 58…スプリングワッシャ 59…ナット
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の冷暖房を行う空気調和機の室外機防振装置に係り、電動機やその電動機により作動して振動発生源となる機器を備えた室外機に対して好適に採用される空気調和機の室外機防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭等で使用される空気調和機は、室内熱交換器や圧縮機、室外熱交換器、膨張弁等の要素を含む冷媒回路を備えており、この冷媒回路は、室内に設置される室内機と室外に設置される室外機との間で冷媒が循環するようにされている。この空気調和機による室内の冷暖房は、冷媒がその冷媒回路を循環する途中で、室内機の室内熱交換器及び室外機の室外熱交換器においてそれぞれ熱交換を行うことによって実現される。
【0003】
ところで、上記空気調和機の室外機は、通常、マウントやコンクリートブロック等を介してベランダや地上に設置されているが、この室外機には、圧縮機やファン、及びそれらを作動させる電動機やエンジン等の振動発生源となる複数の機器が搭載されていることから、振動や騒音の対策が必要となる。そこで、特許文献1には、機械室内において基礎板上に設置されるガスエンジンを支持する第一の防振器と、第一の防振器の下方で前記基礎板を支持する第二の防振器とを備え、ガスエンジンを中心として発生する振動を防振可能とした室外機ユニット及び空気調和機が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、エンジンや圧縮機が固定されるエンジン支持フレームを装置設置板上で支持する第一の防振装置と、前記装置設置板を台床上で支持する第二の防振装置とを備え、装置設置板から台床へ伝達される振動エネルギを低減させるようにしたエンジンヒートポンプの室外機が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、頂壁と頂壁の外端から垂下する側壁を一体に形成した樹脂製マウント本体の側壁下部に、防振ゴムを機械的に係止させて取付けてなる空調機の室外機用マウントが開示されている。この特許文献3に開示されたマウントは、マウント本体の側壁下部に防振ゴムが予め取付けられているので、室外機据付け時の作業を増加せずに騒音を防止することができ、また、防振ゴムが外れ難く、騒音防止効果が安定して発揮されるとされている。
【0006】
ところで、特許文献1及び2に開示された室外機においては、冷媒回路を構成する機器やそれらを作動させる駆動機器及び付属機器等の多数の機器類が収納配置されているのに加えて、エンジン等の振動発生源から室外機外部への振動伝達を防止する第一及び第二の防振器(防振装置)が、室外機内部の限られたスペース内に収容された状態で多数箇所に設置されているため、内部構造が複雑になっている。また、第一及び第二の防振器(防振装置)の設置スペースも制約されることから、振動伝達を効果的に防止できる適切な箇所にそれらを配置できない場合もある。
【0007】
一方、特許文献3に開示された室外機用マウントの場合には、マウント本体の側壁下部に予め取付けられている防振ゴムは、マウント本体の側壁の下端面と当接する部位で室外機の全荷重を支持することから、単位面積当たりの支持荷重が大きくなり剛性が高いものとなる。そのため、防振ゴムの振動伝達率が高まり、室外機が設置されているベランダや地面への振動伝達を十分に防止することができず、結果的に騒音防止も不十分となる。
【0008】
【特許文献1】特開平11−264588号公報
【特許文献2】特開2006−71200号公報
【特許文献3】特開2002−228202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、室外機の内部構造を複雑化することなく、室外機から外部への振動伝達をより確実に防止できるようにした空気調和機の室外機防振装置を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明に係る空気調和機の室外機防振装置は、内部空間を有するケース部材と、電動機及び該電動機により作動して振動発生源となる機器を備え、前記ケース部材の前記内部空間に収納配置される空気調和機の室外機本体と、前記ケース部材に対して前記室外機本体を吊り下げ支持するコイルばねと、前記ケース部材と前記室外機本体に連結固定されて前記室外機本体の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設された防振ゴムと、から構成されていることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る空気調和機の室外機防振装置では、内部に振動発生源となる機器類を有する室外機本体がコイルばねで吊り下げ支持されると共に、その室外機本体とコイルばねとによって構成される振動系の固有周期が防振ゴムで調整されるようにしている。また、振動系の固有周期が低く設定されることにより、室外機本体の振動が防振領域となるようにされている。
【0012】
これにより、室外機本体の内部に配設された電動機や圧縮機、ファン等の振動発生源となる機器類の作動により冷暖房の運転が開始されることによって、室外機本体自体に振動が発生すると、室外機本体の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設された防振ゴムとコイルばねの縦方向の弾性力とによって効果的に吸収されるため、室外機本体から外部(ケース部材)への広い周波数域の振動の伝達が確実に防止される。この場合、ばね系としてコイルばねと防振ゴムが併用されていることから、コイルばねの振動伝達率特性において通常生起し易いサージング現象の発生が回避され、振動伝達率のピークも低いレベルに下げられる。また、防振ゴムの固有周期を小さく調整することにより、振動伝達率を大幅に小さくすることが可能である。
【0013】
また、本発明の室外機防振装置は、人が接触したり地震が発生したりすることによって共振周波数近辺の振動が室外機本体に入力した場合には、防振ゴムで共振倍率が抑えられているため、室外機本体の変位や衝撃を小さく抑えることが可能となる。さらに、本発明の室外機防振装置は、コイルばね及び防振ゴムが室外機本体の外部に設けられているため、室外機本体の内部構造の複雑化を回避することが可能となる。したがって、本発明の室外機防振装置によれば、内部構造を複雑化することなく、室外機から外部への振動伝達をより確実に防止することができる。
【0014】
本発明において用いられるケース部材は、室外機本体が収納配置される内部空間を有するものであり、ケース部材の一面又は複数面に、室外機本体内部に設けられたファンにより排出される空気の排気窓を有するものが好適に採用される。また、ケース部材の内部空間に収納配置される室外機本体は、電動機及び該電動機により作動して振動発生源となる機器を備えたものである。即ち、この室外機本体は、電気を動力源とするモータや該モータにより作動する例えば圧縮機やファン等が装備された機器を備えたものである。この室外機本体は、振動発生源となる電動機及び機器類の配設箇所、或いはそれらの機器類に装備される回転軸の配置方向等によって、主となる振動方向が変化する。
【0015】
また、本発明において用いられるコイルばねは、ケース部材に対して室外機本体を吊り下げ支持するものである。本発明の好適な態様として、コイルばねは、室外機本体の殆ど全部の荷重を支持するように設置されている。このようにすれば、防振ゴムによる固有周期の調整が容易になるとともに、室外機本体外部への振動伝達をより確実に防止することが可能となる。このコイルばねは、従来より公知の金属製のものを採用することができ、吊り下げ支持される室外機本体の重量やバランス等を考慮して1個或いは2個以上の適数個のものが用いられる。
【0016】
また、本発明において用いられる防振ゴムは、ケース部材と室外機本体に連結固定されて室外機本体の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設される。室外機本体の主振動方向は、室外機本体内に収納配置されて振動発生源となる機器類の設置箇所や回転軸の方向等によって異なるため、それぞれの室外機本体の主振動方向に合わせて防振ゴムの設置箇所や方向が決定される。本発明の好適な態様として、防振ゴムは、室外機本体の主振動方向に沿う方向において軟らかいばねを有するように配設されている。このようにすれば、室外機本体の主振動方向への動きが容易になるので、室外機本体外部への振動伝達をより確実に防止することが可能となる。
【0017】
例えば、防振ゴムとしてブロック状のゴム弾性体を採用した場合には、ゴム弾性体の剪断変形方向が軟らかいばねを有する方向となるので、その剪断変形方向が室外機本体の主振動方向に沿うように配設される。一方、ブロック状のゴム弾性体の圧縮変形方向は、硬いばねを有する方向となるので、その圧縮変形方向が室外機本体の主振動方向に沿わないように配設される。よって、室外機本体の主振動方向が縦方向の場合には、ゴム弾性体が室外機本体の側面に配設され、室外機本体の主振動方向が横方向の場合には、ゴム弾性体が室外機本体の上面又は下面に配設されるようにすればよい。
【0018】
なお、室外機本体の振動が三次元方向において発生する場合には、防振ゴムとして、三次元方向において軟らかいばねを有するように設定された液体封入式防振ゴムを好適に採用することができる。この液体封入式防振ゴムは、例えば、少なくとも一部に弾性変形可能な薄肉の可撓部を有する容器状部材と、該容器状部材の内部に密閉封入された液体とを備えたものを採用することができる。内部に封入される液体としては、例えば、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコンオイルなど低粘度から高粘度の液体を採用することができるが、この中でもシリコンオイルが好適に採用される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の室外機防振装置は、防振機能を発揮するばね系が、ケース部材に対して室外機本体を吊り下げ支持するコイルばねと、ケース部材と室外機本体に連結固定されて室外機本体の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設された防振ゴムとの組み合わせにより構成されているため、室外機本体の内部構造を複雑化することなく、振動発生源から室外機本体外部への振動伝達をより確実に防止することができる。また、本発明は、既設の室外機に対しても、ケース部材、コイルばね及び防振ゴムを追加することにより、簡易に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔実施形態1〕
図1は実施形態1に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図であり、図2はその室外機防振装置の断面図であって図1のII−II線矢視断面図である。
【0021】
実施形態1の室外機防振装置は、図1及び図2に示すように、内部空間を有するケース部材1と、ケース部材1の内部空間に収納配置される空気調和機の室外機本体2と、ケース部材1に対して室外機本体2を吊り下げ支持する4個のコイルばね3、…、3と、ケース部材1の両側板11b、11bと室外機2の両側壁11b、11bにそれぞれ連結固定されて室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設された2個の防振ゴム4、4と、から構成されている。
【0022】
ケース部材1は、天板11aと該天板11aの両端から垂下する一対の側板11b、11bとを備え、金属板で門形に形成されたケース本体部11と、一対の側板11b、11bの両下端部に連結された金属板よりなる底板12とで構成されている。このケース部材1は、前後方向(図1のY方向)の両面が開口しており、ケース本体部11と底板12とによって区画された内部空間を有する。
【0023】
室外機本体2は、所定の大きさの方体に形成されたハウジングを有し、そのハウジング内には、いずれも図示されていないが、圧縮機や室外熱交換器、膨張弁等の冷媒回路上に設置される機器や、室外熱交換器の働きを補助する室外機ファン等の補助機器、圧縮機や室外機ファンを作動させる電動機等の振動発生源となる多数の機器類が収納されている。この室外機本体2は、ケース部材1の内部空間内に収納配置されており、図示されない室内機と冷媒回路を介して接続されている。なお、この室外機本体2の場合、振動発生源となる機器類の作動時において、室外機本体2に総合的に発生する振動の主振動方向は、上下方向(図1のZ方向)と前後方向(図1のY方向)となっている。
【0024】
コイルばね3、…、3は、金属製のものが用いられている。各コイルばね3、…、3は、その上端がケース部材1の天板11aに係止されるとともに、その下端が室外機本体2上面の4箇所に固着されたブラケット21、…、21に係止されている。これにより、室外機本体2の全荷重が4個のコイルばね3、…、3によって支持された状態で、ケース部材1に対して室外機本体2が吊り下げ支持されている。なお、このコイルばね3、…、3と室外機本体2とによって構成される振動系の固有周期は、室外機本体2の重量(通常5〜70kg程度)が重いため低い値に設定されている。
【0025】
各防振ゴム4、4は、円柱状に形成されたゴム弾性体41と、ゴム弾性体41の軸方向両端面に固着された円形板状の基板42、42とからなる。各防振ゴム4、4は、ゴム弾性体41の軸方向が左右方向(図1のX方向)を向くようにして、一方の基板42がケース部材1の側板11b内面の下方部に連結固定されるとともに、他方の基板42が室外機本体2の側面の下方部に連結固定されており、室外機本体2のX方向両側に1個ずつ配設されている。
【0026】
これにより、各防振ゴム4、4は、室外機本体2の主振動方向(図1のZ方向及びY方向)に沿う方向において剪断変形による軟らかいばねを有するように配設されており、室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容するようにされている。各防振ゴム4、4がこのように配設されることによって、室外機本体2の振動が防振領域となるようにされている。また、室外機本体2の左右方向(図1のX方向)の動きは、各防振ゴム4、4の圧縮変形による硬いばねで弾性的に規制されるようにされている。
【0027】
以上のように構成された本実施形態の室外機防振装置は、集合住宅のベランダや地上に直接、或いはマウントやコンクリートブロック等を介して、ケース部材1が固定されることにより設置される。そして、室外機本体2の内部に配設された電動機や圧縮機、ファン等の振動発生源となる機器類の作動により冷暖房の運転が開始されることによって、室外機本体2自体が振動すると、その振動は、室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容する防振ゴム4、4とコイルばね3、…、3の縦方向の弾性力とによって効果的に吸収されるため、室外機本体2から外部(ケース部材1)へ伝達されない。
【0028】
また、実施形態1の室外機防振装置は、人や物が室外機本体2に接触したり地震が発生したりすることによって共振周波数近辺の振動が室外機本体2に入力した場合には、防振ゴム4、4で共振倍率が抑えられているため、室外機本体2の変位(特に図1のX方向)や衝撃が小さく抑えられる。なお、実施形態1の室外機防振装置は、コイルばね3、…、3及び防振ゴム4、4が室外機本体2の外部に設けられているため、内部構造の複雑化を回避することが可能となる。
【0029】
以上のように、実施形態1の室外機防振装置は、防振機能を発揮するばね系が、ケース部材1に対して室外機本体2を吊り下げ支持するコイルばね3、…、3と、ケース部材1と室外機本体2に連結固定されて室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設された防振ゴム4、4との組み合わせにより構成されているため、室外機本体2の内部構造を複雑化することなく、室外機本体2から外部(ケース部材1)への振動伝達をより確実に防止することができる。
【0030】
また、実施形態1におけるコイルばね3、…、3は、室外機本体2の殆ど全部の荷重を支持するように設置されているため、防振ゴム4、4による固有周期の調整が容易になるとともに、室外機本体2から外部への振動伝達をより確実に防止することが可能となる。さらに、防振ゴム4、4は、室外機本体2の主振動方向に沿う方向において軟らかいばねを有するように配設されているため、室外機本体2の主振動方向への動きが容易になるので、室外機本体2外部への振動伝達をより確実に防止することが可能となる。
【0031】
〔変形例1〕
図3は変形例1に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図であり、図4はその室外機防振装置の断面図であって図3のIV−IV線矢視断面側面図である。
【0032】
変形例1の室外機防振装置は、図3及び図4に示すように、主振動方向が図3のZ方向及びX方向となる室外機本体2に対応して防振ゴム4a、4aが配設されている点で、実施形態1のものと異なり、用いられている防振ゴム4a、4aも実施形態1のものと異なる。即ち、変形例1の各防振ゴム4a、4aは、円柱状に形成されたゴム弾性体41aと、ゴム弾性体41aの軸方向両端面に固着された断面L字形状のL形基板42a、42aとからなる。
【0033】
各防振ゴム4a、4aは、ゴム弾性体41aの軸方向が前後方向(図3のY方向)を向くようにして、一方のL形基板42aがケース部材1の側板11b内面の下方部にねじ止めにより連結固定されるとともに、他方のL形基板42aが室外機本体2の側面の下方部にねじ止めにより連結固定されており、室外機本体2の左右方向(図3のX方向)両側に1個ずつ配設されている。
【0034】
これにより、各防振ゴム4a、4aは、室外機本体2の主振動方向(図3のZ方向及びX方向)に沿う方向において剪断変形による軟らかいばねを有するように配設されており、室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容するようにされている。各防振ゴム4a、4aがこのように配設されることによって、室外機本体2の振動が防振領域となるようにされている。また、室外機本体2の前後方向(図3のY方向)の動きは、各防振ゴム4a、4aの圧縮変形による硬いばねで弾性的に規制されるようにされている。
【0035】
以上のように構成された変形例1の室外機防振装置は、室外機本体2の主振動方向となる図3のZ方向とX方向において、室外機本体2から外部(ケース部材1)への振動伝達をより確実に防止することができ、その他にも実施形態1のものと同様の作用及び効果を奏する。
【0036】
〔実施形態2〕
図5は実施形態2に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図であり、図6はその室外機防振装置の断面図であって図5のVI−VI線矢視断面図である。
【0037】
実施形態1の室外機防振装置は、図5及び図6に示すように、主振動方向が図5のX方向及びY方向となる室外機本体2に対応して防振ゴム4、4が配設されている点で、実施形態1のものと異なる。また、用いられている防振ゴム4、4は実施形態1と同じものであるが、防振ゴム4、4の配設箇所が実施形態1と異なる。
【0038】
即ち、実施形態2の防振ゴム4、4は、ゴム弾性体41の軸方向が上下方向(図5のZ方向)を向くようにして、一方の基板42がケース部材1の底板12上面の所定箇所に連結固定されるとともに、他方の基板42が室外機本体2底面の所定箇所に連結固定されており、室外機本体2の底部(下端)側に互いに距離を隔てて2個配設されている。
【0039】
これにより、各防振ゴム4、4は、室外機本体2の主振動方向(図5のX方向とY方向)に沿う方向において剪断変形による軟らかいばねを有するように配設されており、室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容するようにされている。各防振ゴム4、4がこのように配設されることによって、室外機本体2の振動が防振領域となるようにされている。また、室外機本体2の上下方向(図5のZ方向)の動きは、各防振ゴム4、4の圧縮変形による硬いばねで弾性的に規制されるようにされている。
【0040】
以上のように構成された実施形態2の室外機防振装置は、室外機本体2の主振動方向となる図5のX方向及びY方向において、室外機本体2から外部(ケース部材1)への振動伝達をより確実に防止することができ、その他にも実施形態1のものと同様の作用及び効果を奏する。
【0041】
〔変形例2〕
図7は変形例2に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図であり、図8はその室外機防振装置の断面図であって図7のVIII−VIII線矢視断面側面図である。
【0042】
変形例2の室外機防振装置は、図7及び図8に示すように、主振動方向が図7のX方向及びY方向となる室外機本体2に対応して防振ゴム4、4が配設されたものである点で実施形態2と同じであるが、防振ゴム4、4の配設箇所が実施形態2のものと異なる。即ち、変形例2の防振ゴム4、4は、ゴム弾性体41の軸方向が上下方向(図7のZ方向)を向くようにして、一方の基板42がケース部材1の天板11a下面の所定箇所に連結固定されるとともに、他方の基板42が室外機本体2天井面の所定箇所に固着されたブラケット22に連結固定されており、室外機本体2の天井部(上端)側に互いに距離を隔てて2個の防振ゴム4、4配設されている。
【0043】
これにより、各防振ゴム4、4は、実施形態2の場合と同様に、室外機本体2の主振動方向(図7のX方向及びY方向)に沿う方向において剪断変形による軟らかいばねを有するように配設されており、室外機本体2の主振動方向の動きを弾性的に許容するようにされている。また、室外機本体2の上下方向(図7のZ方向)の動きは、各防振ゴム4、4の圧縮変形による硬いばねで弾性的に規制されるようにされている。
【0044】
以上のように構成された変形例2の室外機防振装置は、室外機本体2の主振動方向となる図7のX方向及びY方向において、室外機本体2から外部(ケース部材1)への振動伝達をより確実に防止することができ、実施形態2のものと同様の作用及び効果を奏する。
【0045】
〔実施形態3〕
図9は実施形態3に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図であり、図10はその室外機防振装置の断面図であって図9のX−X線矢視断面図であり、図11はその室外機防振装置において用いられた液体封入式防振ゴムの取付け状態を示す断面図である。
【0046】
実施形態3の室外機防振装置は、図9〜図11に示すように、主振動方向が図9のX方向とY方向とZ方向の三次元方向となる室外機本体2に対応するものであって、防振ゴムとして三次元方向において軟らかいばねを有するように設定された液体封入式防振ゴム5、5が用いられている点で実施形態1のものと異なる。
【0047】
即ち、各液体封入式防振ゴム5、5は、図11に示すように、弾性変形可能な薄肉のゴムにより有底円筒状に形成された容器部材51と、容器部材51の周壁部の開口側端部に外嵌保持された円筒状のホルダ部52と、ホルダ部52の外周に嵌合されて容器部材51の開口を覆蓋する蓋部材53と、容器部材51の内部に封入された液体(本実施形態ではシリコンオイル)54とを備えている。
【0048】
容器部材51の底部は、その中央部が小径となって外方へ少し突出するように形成されており、その突出した部分の内面中央部には、内側へ向かって突出する円柱状の攪拌部55が設けられている。これにより、ホルダ部52に嵌合保持された容器部材51の周壁部と底部に設けられた攪拌部55との間の部位には、容易に弾性変形可能な可撓部51aが形成されている。また、攪拌部55には、連結ボルト56の頭部が外側から埋め込まれた状態で嵌合保持されている。
【0049】
各液体封入式防振ゴム5、5は、蓋部材53がケース部材1の側板11b内面の下方部に固着されるとともに、連結ボルト56先端のねじ部が室外機本体2のハウジング側壁20の下方部において、一対の平ワッシャ57、57や一対のスプリングワッシャ58、58及び一対のナット59、59により、ハウジング20の側壁の内外両面から緊締された状態で連結固定されている。このようにして、室外機本体2の左右方向(図9のX方向)両側に1個ずつ液体封入式防振ゴム5、5が配設されており、これにより、各液体封入式防振ゴム5、5は、図9のX方向とY方向とZ方向の三次元方向において、液体54の流動作用に基づく軟らかいばねを有するように配設されている。
【0050】
以上のように構成された実施形態3の室外機防振装置は、三次元方向において軟らかいばねを有するように設定された液体封入式防振ゴム5、5が用いられているため、室外機本体2の主振動方向となる図9のX方向とY方向とZ方向の三次元方向において、室外機本体2から外部(ケース部材1)への振動伝達をより確実に防止することができるなど、実施形態1のものと同様の作用及び効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態1に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る空気調和機の室外機防振装置の断面図であって図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】本発明の変形例1に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図である。
【図4】本発明の変形例1に係る空気調和機の室外機防振装置の断面図であって図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る空気調和機の室外機防振装置の断面図であって図5のVI−VI線矢視断面図である。
【図7】本発明の変形例2に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図である。
【図8】本発明の変形例2に係る空気調和機の室外機防振装置の断面図であって図7のVIII−VIII線矢視断面図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る空気調和機の室外機防振装置の正面図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る空気調和機の室外機防振装置の断面図であって図9のX−X線矢視断面図である。
【図11】本発明の実施形態3に係る空気調和機の室外機防振装置において用いられた液体封入式防振ゴムの取付け状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…ケース部材 11…ケース本体部 11a…天板 11b…側板 12…底板 2…室外機本体 20…ハウジング 21、22…ブラケット 3…コイルばね 4、4a…防振ゴム 41、41a…ゴム弾性体 42…基板 42a…L形基板 5…液体封入式防振ゴム 51…容器部材 51a…可撓部 52…ホルダ部 53…蓋部材 54…液体 55…攪拌部 56…連結ボルト 57…平ワッシャ 58…スプリングワッシャ 59…ナット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有するケース部材と、
電動機及び該電動機により作動して振動発生源となる機器を備え、前記ケース部材の前記内部空間に収納配置される空気調和機の室外機本体と、
前記ケース部材に対して前記室外機本体を吊り下げ支持するコイルばねと、
前記ケース部材と前記室外機本体に連結固定されて前記室外機本体の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設された防振ゴムと、
から構成されていることを特徴とする空気調和機の室外機防振装置。
【請求項2】
前記コイルばねは、前記室外機本体の殆ど全部の荷重を支持するように設置されていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室外機防振装置。
【請求項3】
前記防振ゴムは、前記室外機本体の主振動方向に沿う方向において軟らかいばねを有するように配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和機の室外機防振装置。
【請求項4】
前記防振ゴムは、三次元方向において軟らかいばねを有するように設定された液体封入式防振ゴムであることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機の室外機防振装置。
【請求項1】
内部空間を有するケース部材と、
電動機及び該電動機により作動して振動発生源となる機器を備え、前記ケース部材の前記内部空間に収納配置される空気調和機の室外機本体と、
前記ケース部材に対して前記室外機本体を吊り下げ支持するコイルばねと、
前記ケース部材と前記室外機本体に連結固定されて前記室外機本体の主振動方向の動きを弾性的に許容するように配設された防振ゴムと、
から構成されていることを特徴とする空気調和機の室外機防振装置。
【請求項2】
前記コイルばねは、前記室外機本体の殆ど全部の荷重を支持するように設置されていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室外機防振装置。
【請求項3】
前記防振ゴムは、前記室外機本体の主振動方向に沿う方向において軟らかいばねを有するように配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気調和機の室外機防振装置。
【請求項4】
前記防振ゴムは、三次元方向において軟らかいばねを有するように設定された液体封入式防振ゴムであることを特徴とする請求項3に記載の空気調和機の室外機防振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−52837(P2009−52837A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221234(P2007−221234)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
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