説明

空気調和機の室外機

【課題】 故障しにくく、メンテナンス性のよい空気調和機の室外機を安価に提供する。
【解決手段】 片面に回路パターン面が形成された第1回路基板61を底板41に水平に設け、両面に回路パターン面が形成された第2回路基板62を背板62に垂直に設けるとともに、背板42の一部に熱を逃がすためのヒートシンク65を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機の室外機に関し、さらに詳しく言えば、室外機内に取り付けられる電装品箱の小型化およびメンテナンス性の向上に寄与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の多くは室内機と室外機とが分離されたスプリット型エアコンが主流となっている。スプリット型エアコンは一体型エアコンに比べて壁に大きな孔を設けたり、窓枠を利用する必要がないなど多くの利点がある。
【0003】
例えば特許文献1に示すように、空気調和機の室外機は箱状の室外機本体を備え、その内部が仕切り板を介して熱交換器や送風ファンなどが収納される熱交換室と、圧縮機や電装品箱などが収納される機械室とに区画されている。
【0004】
通常、電装品箱は仕切り板の上部側によって保持されており、その内部には電源回路や制御回路などが組み込まれた回路基板や、各種電子部品などが収納されている。従来、回路基板は電装品箱の内部に水平に保持されており、その上面側にカバーが取り付けられていた。
【0005】
しかしながら、回路基板を水平に載置した場合には次のような問題があった。すなわち、特許文献1に示すように、回路基板を水平に載置した場合、上面側に回路パターンが形成されていると、そこに埃などが堆積してショートやトラッキング火災の発生原因になりやすい。また、水滴や塩害などの影響も受けやすい。
【0006】
このような問題を解決する方法として、例えば特許文献2には回路基板を縦置きにレイアウトする技術が開示されている。これによれば、回路基板を縦置きしたことにより、埃の堆積がなく、さらに回路基板をユニット化したことでメンテナンス作業も容易にできる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の方法は次のような問題があった。すなわち、電装品箱は圧縮機と天井パネルとの間の限られた空間に設置される。したがって、特許文献2のように回路基板を縦置きに配置するには両面に回路パターン形成面が形成された両面回路基板を用いる必要があった。しかしながら、両面基板は片面基板に比べて設置面積が小さくはなるが、生産コストが高くなる。
【0008】
また別の問題として、特許文献1および2は電装品箱の上部開口をカバーによって塞ぐようにしているため、メンテナンスする際に天井パネルを取り外す必要があるが、室外機をベランダなどの天井に吊下した場合には、電装品箱の中を見るためには室外機を一旦取り外して下に下ろす必要があった。
【0009】
【特許文献1】特開2003−156233号公報
【特許文献2】特開平5−79661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は故障しにくく、メンテナンス性のよい空気調和機の室外機を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。請求項1に記載の発明は、内部が仕切り板を介して、圧縮機および電装品箱を含む機械室と、熱交換器および送風ファンを含む熱交換室とに区画されている室外機本体を備え、上記電装品箱内に駆動用電子部品が実装された制御回路基板が収納されている空気調和機の室外機において、上記制御回路基板が、上記電装品箱内で横置きとされる第1回路基板と、縦置きとされる第2回路基板とに分割されており、上記第1回路基板は片面基板であり、上記第2回路基板は両面基板であるとともに、上記第1回路基板は裏面側を上向きとして配置され、その裏面側に上記駆動用電子部品に含まれる電解コンデンサが実装されていることを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、上記電装品箱が、上記第1回路基板を支持する底板と上記第2回路基板を支持する背板とを含み、前面および上面が開放されたインバータケースと、上記インバータケースに対して被せられるカバーとを備えていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1または2において、上記電解コンデンサは上記第1回路基板の上記インバータケースの開口部寄りに配置されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、上記請求項1,2または3において、上記第2回路基板には発熱部品が実装されており、上記背板には上記発熱部品から発生する熱を放熱するヒートシンクが取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、回路基板を横置きされる第1回路基板(片面基板)と、縦置きされる第2回路基板(両面基板)とに分割したことにより、両面基板の使用量が削減され、生産コストを下げることができる。なお、本発明のいう片面基板の裏面とは片面基板の反パターン形成面をいう。
【0016】
また、片面基板の回路パターン形成面を底板を向くように配置したことにより、回路パターン成型面が表側に露出することがないため、ショートやトラッキングを防止することができる。また、コンデンサが液漏れした場合でも回路パターンを侵すことがない。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、電装品箱の前面と上面を開口部としたことにより、例えばマンションのベランダなどで室外機を天井面から吊り下げて保持する場合で天井面と室外機の天面との間にスペースが無いような場合であっても、正面から電装品箱の中が見えるので、いちいち室外機本体を下ろすことなく、電装品箱のメンテナンス作業を行うことができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、電解コンデンサを片面基板の裏面側の前端側に実装したことにより、効果的に熱を外部に放熱することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、背板部にヒートシンクを設けることにより、効率的に放熱を行えるばかりでなく、ヒートシンクを仕切り板から外部に露出させることで、電装品箱内に熱が籠もらずに、より効率的に放熱を行うことができる。また、電装品箱の背面側にヒートシンクが取り付けられていることにより、電装品箱を手前側に取り外すことができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る空気調和機の室外機の分解斜視図であり、図2は同室外機の天井パネルを外した状態の平面図である。
【0021】
ここで、本発明において空気調和機の室内機の具体的な構成については任意的事項であるため、以下においては室外機にのみについて説明を行い、室内機については図示せず、説明も省略する。
【0022】
この空気調和機(室外機ユニット)は箱状の室外機本体100を有し、室外機本体100の内部には冷凍サイクルに含まれる圧縮機1、熱交換器2および送風ファン3(図3参照)と、その制御系としての電装品箱4とが収納されている。
【0023】
図1を参照して、室外機本体100は被接地面上に設置されるベースパネル110と、ベースパネル110から立設される左右一対の側面パネル120,130と、室外機本体の前面に設置される前面パネル140と、各側面パネル120,130および前面パネル140の上端側に被せられる天井パネル150とを備えている。
【0024】
なお、各パネルの材質や形状、大きさなどについての具体的な構成は本発明において任意的事項であるため、その説明は省略する。
【0025】
室外機本体100の内部は仕切り板200によって熱交換室100Aと機械室100Bとに区画されており、熱交換室100A内には熱交換器2および送風ファン3が配置されており、機械室100B内には圧縮機1と電装品箱4とがそれぞれ配置されている。
【0026】
図3に示すように、仕切り板200は1枚の金属板をプレス成形したものからなり、ベースパネル110に設置された圧縮機1を取り囲むようにL字状に形成されている。仕切り板200の上端部には電装品箱4の一部に取り付けられた後述するヒートシンク65を熱交換室100A側に露出させるための切欠部210が設けられている。
【0027】
切欠部210は仕切り板200の上端から下方に向かって延在する切欠溝からなり、ヒートシンク65の外形寸法とほぼ同じ開口寸法を備えている。この切欠部210に沿ってヒートシンク65が嵌め込まれる。これにより、熱交換室100Aと機械室100Bとの間が仕切られる。
【0028】
熱交換器2はL字型に形成されており、室外機ユニット100の背面から一方の側面に沿って配置されている。この例において、熱交換器2はL字型に一体形成されているが、背面熱交換器ユニットと側面熱交換器ユニットとを分割してそれらをL字型に一体的に連結したものであってもよい。熱交換器2の具体的な構成については任意的な事項である。
【0029】
図3に示すように、送風ファン3は室外機本体100の背面から空気を吸い込んで前面に向かって吹き出す軸流ファンからなり、図1に示すように、送風ファン3はファン取付台160によって支持されている。
【0030】
図4を参照して、電装品箱4は内部に空気調和機の電源類や制御用基板などの各種電装品が収納されたインバータケース40と、同インバータケース40に対して着脱自在なカバー50とからなり、機械室100B内の圧縮機1の上部側に配置されるように仕切り板200によって支持されている。
【0031】
この例において、インバータケース40およびカバー50はステンレスなどの金属板を折曲加工したものからなるが、例えば合成樹脂製であってもよく、その材質や成型方法などはとくに限定されない。
【0032】
インバータケース40はほぼ水平な底板41と、底板41の背面からほぼ直角に折り曲げられた背板42と、底板41および背板42の側面を塞ぐように形成された一対の側板43,44とを備えている。
【0033】
カバー50はインバータケース60の上面開口部を覆うための上面カバー51と、インバータケース50の正面開口部を覆うための正面カバー52とを有するL字状に形成されている。
【0034】
インバータケース140の背板42の上端には、仕切り板200の上端面に引っ掛けられる係止フランジ42aが設けられている。また、各側板43,44にも仕切り板200の上端面に沿って配置される係止フランジ45,46が形成されている。
【0035】
係止フランジ45,46にはカバー50の第1係止リブ53,53が挿入される第1差込孔47,47がそれぞれ形成されている。底板41の先端にはカバー50の第2係止リブ54,54がそれぞれ挿入される第2差込孔48,48が形成されている。
【0036】
一方の係止フランジ46にはさらに、右側面パネル130の仮止め用手段としての仮止めリブ49が形成されているが、本発明において仮止めリブ49の構成は任意的事項であるため、その説明は省略する。
【0037】
この例において、第2係止リブ54,54は正面カバー52の下端からL字状に突設されている。すなわち、第1係止リブ53,53を第1差込孔47,47から解除して、第2係止リブ54,54を軸にカバー50を正面方向に回転させることにより、箱カバー50を電装品箱4に引っ掛けた状態のまま電装品箱4の内部を正面から見ることができる。
【0038】
これによれば、例えば集合住宅のベランダなどで室外機を天井面から吊り下げて保持する場合で天井面と室外機の天面との間にスペースが無いような場合であっても、正面から電装品箱4の中が見えるので、いちいち室外機本体100を下ろすことなく、電装品箱4のメンテナンス作業を行うことができる。
【0039】
この実施形態において、側板43,44はインバータケース40側に一体的に形成されているが、カバー50側に一体的に形成されていてもよい。すなわち、インバータケース40とカバー50とを組み合わせることにより、内部空間が密閉される構造であれば、これら変形例は本発明に含まれる。
【0040】
この電装品箱40の内部に各種電装品が収納されている。図4に示すように、インバータケース40の底板41には第1回路基板61がほぼ水平な状態で設けられており、背板42には第2回路基板がほぼ垂直に設けられている。この例において、第1回路基板61は電源用回路基板であり、第2回路基板62は制御用回路基板である。
【0041】
第1回路基板61は一方の面に回路パターン形成面が形成された片面基板であり、埃などの堆積によってショートやトラッキング火災が発生するのを防ぐため、回路パターン形成面が底板41側(図4では下側)を向くように設置されている。
【0042】
第1回路基板61には電解コンデンサ63がこの例では3個実装されている。電解コンデンサ63は、第1回路基板61の裏面(反パターン形成面)側に実装されており、端子部がは図示しないスルーホールを介して回路パターンに接続されている。
【0043】
電解コンデンサ63は発熱部品であるため、インバータケース40内に熱が籠もらずに、効果的に熱を放熱することができるようにするために、電解コンデンサ63はインバータケース40の前面開口側に実装されていることが好ましい。
【0044】
制御基板42は両面に回路パターンが形成された両面基板であり、制御用の各種電子部品が実装されている。第2回路基板62の裏面側(図4では紙面裏側)の一部にはインバータ回路を構成する例えばパワートランジスタなどの発熱部品64が実装されている。
【0045】
背板42には発熱部品64から生じた熱を逃がすためのヒートシンク65が取り付けられている。ヒートシンク65は一方の面が発熱部品64に接する受熱面が形成され、他方の面に放熱フィンが多数設けられた放熱面が形成され、背板42の外側に設置されている。
【0046】
ヒートシンク65は背板42を挟んで受熱面が発熱部品64に対向的に位置するように配置されている。これによれば、発熱部品64が発した熱をヒートシンク65によって効率的に外部に放熱することができる。
【0047】
この実施形態においてヒートシンク65は背板42に設けられているが、例えば側板43側に設けられていてもよく、仕切り板200のヒートシンク65に対応した位置に切欠部210が形成されていれば、その設置位置は特に限定されない。
【0048】
以上の説明により、本発明によれば、回路基板を横置きされる第1回路基板と、縦置きされる第2回路基板とに分割して、それらを電装品箱の底板と背板に設けることにより、ショートやトラッキング火災を予防して安全性が高く、かつ、メンテナンス作業性のよい空気調和機の室外機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気調和機の室外機の分解斜視図。
【図2】天井パネルを外した状態の室外機本体の平面図。
【図3】ベースパネルに送風ファンおよび仕切り板を取り付けた状態の斜視図。
【図4】電装品箱の分解斜視図。
【符号の説明】
【0050】
1 圧縮機
2 熱交換器
3 送風ファン
4 電装品箱
40 インバータケース
41 底板
42 背板
43,44 側板
50 カバー
61 第1回路基板(片面基板)
62 第2回路基板(両面基板)
63 電解コンデンサ
64 発熱部品
65 ヒートシンク
100 室外機本体
100A 機械室
100B 圧縮室
200 仕切り板
210 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が仕切り板を介して、圧縮機および電装品箱を含む機械室と、熱交換器および送風ファンを含む熱交換室とに区画されている室外機本体を備え、上記電装品箱内に駆動用電子部品が実装された制御回路基板が収納されている空気調和機の室外機において、
上記制御回路基板が、上記電装品箱内で横置きとされる第1回路基板と、縦置きとされる第2回路基板とに分割されており、上記第1回路基板は片面基板であり、上記第2回路基板は両面基板であるとともに、上記第1回路基板は裏面側を上向きとして配置され、その裏面側に上記駆動用電子部品に含まれる電解コンデンサが実装されていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室外機。
【請求項2】
上記電装品箱が、上記第1回路基板を支持する底板と上記第2回路基板を支持する背板とを含み、前面および上面が開放されたインバータケースと、上記インバータケースに対して被せられるカバーとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室外機。
【請求項3】
上記電解コンデンサは上記第1回路基板の上記インバータケースの開口部寄りに配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空気調和機の室外機。
【請求項4】
上記第2回路基板には発熱部品が実装されており、上記背板には上記発熱部品から発生する熱を放熱するヒートシンクが取り付けられていることを特徴とする請求項1,2または3に記載の空気調和機の室外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−194532(P2006−194532A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7245(P2005−7245)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)