説明

空気調和機の室外機

【課題】閉鎖弁固定板の外面に結露した水を、室外機の筐体外面を濡らすことなく確実に筐体内に回収できるようにする。
【解決手段】空気調和機の室外機1は、筐体10の内部に圧縮機20、熱交換器21、及び送風ファン22を収納している。閉鎖弁23を支持する閉鎖弁固定板24は筐体10の底板14に取り付けられる。底板14の周縁には立ち上がり壁14aが形成されており、閉鎖弁固定板24は筐体の内側より立ち上がり壁14aに押し付けられて固定される。立ち上がり壁14aの内面と閉鎖弁固定板24の外面の間には導水路28が形成される。閉鎖弁固定板24の外面に結露した水は、導水路28を通じて立ち上がり壁14aの内側に誘導される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機の室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
セパレート型空気調和機は、室外機と室内機を冷媒配管で接続して使用するものであり、室外機には、室内機との間で冷媒配管接続がなされていない状態での冷媒漏洩を防ぐ閉鎖弁が設けられている。閉鎖弁は、空気調和機の設置時やメンテナンス時に開閉操作がしやすいよう、室外機筐体の外面寄りに配置される。通常の設計では、閉鎖弁を固定する閉鎖弁固定板を、筐体の底板の周囲に形成された立ち上がり壁に対し、筐体の内側より押し付けて固定する。そのように構成したセパレート型空気調和機の室外機の例を特許文献1、2に見ることができる。
【0003】
特許文献1に記載された室外機では、底板に形成された嵌合用凹部に閉鎖弁取付板の下端部が嵌合され、これにより閉鎖弁取付板は起立状態となる。嵌合用凹部の内面には断面半円弧状の一対の突隆部が設けられる。閉鎖弁取付板には突隆部が嵌合する凹所が設けられる。凹所に突隆部が嵌合すると、閉鎖弁取付板は底板の前後方向に位置決めされることになり、閉鎖弁取付板を安定した状態で起立させることができる。
【0004】
特許文献2に記載された室外機では、筐体底部を形成する底板に閉鎖弁取付板の下部を結合し、筐体前面を形成する前板に閉鎖弁取付板の前部を結合することにより、閉鎖弁取付板を倒れないように固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−55127号公報
【特許文献2】特開2007−127312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
閉鎖弁は、室外機と室内機が冷媒配管で接続された後は開弁状態とされるものであり、冷房時にはその中を冷たい液体冷媒が流れる。これにより、閉鎖弁固定板の温度が下がる。閉鎖弁固定板の表面温度が露点温度以下に下がると、空気中の水分が閉鎖弁固定板の表面に結露する。同じ閉鎖弁固定板の表面でも、室外機筐体の内側に向いた面に結露したのであれば、水滴が伝い落ちたとしても筐体の底板で受け止められ、熱交換器のドレン水と一緒に排水されるから問題はない。しかしながら、筐体の外側に向いた面に結露すると、水滴は筐体の外面を濡らすことになる。室外機を高い位置に置いた場合は頭上から水滴が落ちてくることがあり、室外機をベランダに置いた場合にはベランダが濡れることがあり、いずれにしても好ましくない。特許文献1に記載された室外機も特許文献2に記載された装置も、この点に関しては有効な手立てが施されていない。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであり、閉鎖弁固定板の外面に結露した水を、室外機の筐体外面を濡らすことなく確実に筐体内に回収できる空気調和機の室外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、筐体の底板の周縁に形成された立ち上がり壁に、前記筐体の内側より閉鎖弁固定板を押し付けて固定する空気調和機の室外機において、前記立ち上がり壁の内面と前記閉鎖弁固定板の外面の間に、前記閉鎖弁固定板の外面に結露した水を前記立ち上がり壁の内側に誘導する導水路を形成したことを特徴としている。
【0009】
この構成によると、閉鎖弁固定板の外面に結露した水は、室外機の筐体外面を濡らすことなく導水路に取り込まれ、筐体内に回収される。
【0010】
上記構成の空気調和機の室外機において、前記立ち上がり壁の上端に、前記閉鎖弁固定板外面に形成されたオーバーハング部に間隔を隔てて対峙し、且つ前記導水路につながる傾斜案内板を形成することが好ましい。
【0011】
この構成によると、閉鎖弁固定板のオーバーハング部から垂れ落ちる水滴があったとしても、それは傾斜案内板に受け止められ、導水路に導かれるから、筐体の外に水が漏れることはない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、閉鎖弁固定板の外面に結露した水を、室外機の筐体外面を濡らすことなく確実に筐体内に回収できるから、結露水が頭上から降ってきたり、ベランダを濡らしたりする事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る空気調和機の室外機の斜視図である。
【図2】図1の室内機の部分拡大断面図である。
【図3】閉鎖弁カバーの部分拡大正面図である。
【図4】図2と同様の部分拡大断面図であって、変形実施態様を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には室外機と室内機からなるセパレート型空気調和機の室外機1が描かれている。室外機1は、筐体10から正面パネル11を取り外し、内部が見えるようにした状態で示されている。正面パネル11以外の筐体10の構成要素は、側面パネル12、天板13、及び底板14である。正面パネル11、側面パネル12、天板13、及び底板14は、いずれもプレス成型した鋼板を主体として構成されている。底板14の周縁には立ち上がり壁14aが形成され、このため底板14は全体としてトレイのような形状を呈している。
【0015】
筐体10の内部には、圧縮機20、熱交換器21、及び送風ファン22が配置されている。圧縮機20は冷媒の流れを生成する動力源となるものである。熱交換器21は、内部を流れる冷媒と、送風ファン22により形成された空気流との間で熱交換を行う。送風ファン22はプロペラファンであり、正面パネル11には、送風ファン22に向かい合う位置に格子状の排気口15が形成され、側面パネル12には、熱交換器21を間に挟んで送風ファン22に向かい合う位置に、図示しない吸気口が形成されている。
【0016】
閉鎖弁23は、底板14に固定された閉鎖弁固定板24に支持される。側面パネル12には、筐体10を正面から見たとき右側に位置する箇所に切り欠き12aが形成されており、閉鎖弁固定板24はこの切り欠き12aから外部に臨む形になっている。切り欠き12aは合成樹脂製のバルブカバー25で覆われる。なお、筐体10の内部空間の中で、圧縮機20を収納する部分は、仕切壁26で他の部分から区画された圧縮機室27となっている。
【0017】
閉鎖弁固定板24は鋼板をプレス成型したものであり、筐体10の内側より底板14の立ち上がり壁14aに押し付けられ、スポット溶接やネジ止めなどの手段で底板14に固定される。閉鎖弁固定板24には、絞り成型により、立ち上がり壁14aの内面(筐体10の内部に向いた面)に当たる円錐台状の突部24a(図2参照)が形成される。突部24aは筐体10の奥行き方向に並ぶ形で複数個設けられる。
【0018】
突部24aが存在することにより、立ち上がり壁14aの内面と閉鎖弁固定板24の外面(筐体10の外部に向いた面)の間に間隙が生じる。この間隙が導水路28となる。
【0019】
バルブカバー25の下部には水受け溝25aが形成される(図2及び図3参照)。水受け溝25aからは樋25bが突き出す。樋25bは、立ち上がり壁14aに形成された貫通穴14b及び閉鎖弁固定板24に形成された貫通穴24bを通って筐体10の内側に突き出す。水受け溝25aの一側には、閉鎖弁固定板24に対する当たりとなるリブ25cが形成される。
【0020】
室外機1を冷房運転すると、閉鎖弁23の中を冷たい液体冷媒が流れる。これにより、閉鎖弁固定板24の温度が下がる。閉鎖弁固定板24の表面温度が露点温度以下に下がると、空気中の水分が閉鎖弁固定板24の表面に結露する。結露は微細な水滴から始まり、やがてそれらが結集して大きな水滴になる。水滴がある程度大きくなると、それは重力により閉鎖弁固定板24の表面を伝い落ちる。
【0021】
閉鎖弁固定板24の内面(筐体10の内部に向いた面)に付着した結露水の水滴は底板14の上に流れ出す。閉鎖弁固定板24の外面に付着した結露水の水滴は、もしも導水路28が存在しなければ立ち上がり壁14aの外面を伝い落ちることになる。バルブカバー25が筐体10の外面に隙間無く密着していれば、立ち上がり壁14aの外面を伝わり落ちる水は水受け溝25aに入り、樋25bを通じて筐体10の内部に流し込まれるのであるが、バルブカバー25の形状や取り付けのバラツキにより、バルブカバー25と筐体10の外面との間に隙間が生じていることがある。そのような場合には、その隙間から結露水が漏れ出す。
【0022】
しかしながら本発明では、立ち上がり壁14aの内面と閉鎖弁固定板24の外面の間に導水路28が形成されているため、閉鎖弁固定板24の外面を伝い落ちる結露水は、立ち上がり壁14aの外面を濡らすことなく導水路28に取り込まれ、立ち上がり壁14aの内側に誘導されて筐体10内に回収される。従って、閉鎖弁固定板24に付着した結露水が、上から滴下したり、室外機1の外側を濡らしたりするようなことはない。
【0023】
導水路28に取り込んだ結露水が圧縮機室27にスムーズに流れるよう、閉鎖弁固定板24に穴を明ける、あるいは導水路24の出口となる隙間を閉鎖弁固定板24と底板14の間に大きく確保するなどしておくとよい。これらの穴や隙間も圧縮機室27の換気口として機能するので、圧縮機室27内外の空気の流通性が向上する。これにより、圧縮機室27の温度上昇を低減することができる。
【0024】
本実施形態では、立ち上がり壁14aの内面に当たる突部24aを閉鎖弁固定板24の外面に形成して導水路28を確保したが、特に突部を設けなくても、単に閉鎖弁固定板24を圧縮機20の側にずらして固定するだけでも導水路28を確保できる。閉鎖弁23が筐体10の内部に一層引っ込む形になるので、室外機1をコンパクト化できる。バルブカバー25も小さいもので間に合うので、バルブカバー25を成型するための樹脂材料も節約できる。
【0025】
バルブカバー25も水を受け止める機能を有する。バルブカバー25の内面に受け止められた水は、水受け溝25aから樋25bを経て筐体10の内部に流れ出す。
【0026】
閉鎖板固定板24から伝い落ちた水や、バルブカバー25で受け止められて筐体10の中に入れられた水は、熱交換器21で発生するドレン水と一緒にされ、底板14に形成された図示しない排水口より排水ホースを通じて排水される。
【0027】
図4に変形実施態様を示す。図4ではバルブカバー25の図示を省略してある。
【0028】
プレス成型により所定の凹凸形状に形成された閉鎖弁固定板24は、外面にオーバーハング部24cを有している。立ち上がり壁14aの上端には、オーバーハング部24cに間隔を隔てて対峙する傾斜案内板14cが一体形成されている。傾斜案内板14cは導水路28につながる。
【0029】
傾斜案内板14cが存在することにより、オーバーハング部24cから垂れ落ちる水滴があったとしても、それは傾斜案内板14cに受け止められ、導水路28に導かれるから、筐体10の外に水が漏れることはない。
【0030】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は筐体の底板に閉鎖弁固定板を固定する空気調和機の室外機に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 室外機
10 筐体
11 正面パネル
12 側面パネル
13 天板
14 底板
14a 立ち上がり壁
20 圧縮機
21 熱交換器
22 送風ファン
23 閉鎖弁
24 閉鎖弁固定板
24c オーバーハング部
25 バルブカバー
28 導水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の底板の周縁に形成された立ち上がり壁に、前記筐体の内側より閉鎖弁固定板を押し付けて固定する空気調和機の室外機において、
前記立ち上がり壁の内面と前記閉鎖弁固定板の外面の間に、前記閉鎖弁固定板の外面に結露した水を前記立ち上がり壁の内側に誘導する導水路を形成したことを特徴とする空気調和機の室外機。
【請求項2】
前記立ち上がり壁の上端に、前記閉鎖弁固定板外面に形成されたオーバーハング部に間隔を隔てて対峙し、且つ前記導水路につながる傾斜案内板が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機の室外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−281461(P2010−281461A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132629(P2009−132629)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】