説明

空気調和機の遠隔操作装置

【課題】視覚的な情報を排除しつつ、空気調和機へ操作を入力する空気調和機の遠隔操作装置を提供する。
【解決手段】本実施形態の空気調和機の遠隔操作装置は、室内機に遠隔から操作を指示する。遠隔操作装置は、ケーシング、マイク、音声認識手段、送信信号生成手段、基板、送信素子、制御ユニットおよび電池収容部を備えている。送信信号生成手段は、マイクで取得し、音声認識手段で認識した音声に対応する命令に基づき送信信号を生成する。送信信号を室内機へ出力する送信素子は、基板の上面における仮想的な円周上で等間隔に三箇所配置され、基板の上面に対し上方へ向けて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、空気調和機の遠隔操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機は、遠隔操作装置との間の通信によって運転が操作されている。例えば空気調和機の電源のオンまたはオフ、設定温度および風量の変更などは、ユーザが操作する遠隔操作装置によって入力される。近年では、このような遠隔操作装置による空気調和機の操作をより容易にするために、音声認識を利用した遠隔操作装置が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、これらの遠隔操作装置は、従来の遠隔操作装置におけるボタン操作の代替として音声認識を採用しているにとどまっている。つまり、ユーザは、手持ちの遠隔操作装置の視覚的な情報とともに設けられたボタンに対応する音声を入力することにより、ボタン操作に代わる音声によって操作を行っているに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−74465号公報
【特許文献2】特開平04−278141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、視覚的な情報を排除しつつ、空気調和機へ操作を入力する空気調和機の遠隔操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の空気調和機の遠隔操作装置は、室内機に遠隔から操作を指示する。遠隔操作装置は、ケーシング、マイク、音声認識手段、送信信号生成手段、基板、送信素子、制御ユニットおよび電池収容部を備えている。マイクは、ケーシングに収容され音声を取得する。音声認識手段は、マイクで取得した音声を認識する。送信信号生成手段は、音声認識手段で認識した音声に対応する命令を抽出し、抽出した命令に基づいて室内機へ指示する送信信号を生成する。基板は、ケーシングに収容され、重力方向において上方の上面および下方の下面を有し、音声認識手段および送信信号生成手段が搭載されている。送信素子は、基板の上面における仮想的な円周上で等間隔に三箇所配置され、基板の上面に対し上方へ向けて設けられ、送信信号生成手段で生成された送信信号を室内機へ出力する。制御ユニットは、基板に搭載され、マイク、音声認識手段、送信信号生成手段および送信素子を制御する。電池収容部は、重力方向において基板よりも下方に設けられ、制御ユニットに供給する電力の電源となる電池を収容する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施形態による空気調和機の構成を示す模式図
【図2】一実施形態による空気調和機のリモコンの概略構成を示す分解斜視図
【図3】一実施形態による空気調和機のリモコンの外観を示す概略斜視図
【図4】一実施形態による空気調和機の電気的な概略構成を示すブロック図
【図5】一実施形態による空気調和機のリモコンにおいて、送受信ユニットの配置を示す模式図
【図6】一実施形態による空気調和機のリモコンにおいて、送受信ユニットの配置を示す模式図
【図7】一実施形態による空気調和機の処理の流れを示す概略図
【図8】一実施形態による空気調和機の電池電源処理の流れを示す概略図
【図9】一実施形態による空気調和機の商用電源処理の流れを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態による空気調和機の遠隔操作装置(以下、遠隔操作装置を「リモコン」という。)について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、空気調和機10は、リモコン11、室内機12および図示しない室外機から構成されている。リモコン11は、室内機12と一対で用いられる。リモコン11は、この室内機12へ送信信号を出力する。空気調和機10は、リモコン11からの送信信号を室内機12で受信し、受信した送信信号に基づいて作動する。本実施形態によるリモコン11は、例えばテーブル13などの卓上に据え置きされた状態で用いられる。
【0009】
リモコン11は、図2に示すようにケーシング20を備えている。ケーシング20は、重力方向において上方から上ケース21、サイドピース22、下ケース23および電池蓋24に分割されている。これら上ケース21、サイドピース22、下ケース23および電池蓋24は、相互に嵌合することにより図3に示すように一体のケーシング20を構成している。具体的には、上ケース21は、サイドピース22を挟み込んだ状態で下ケース23と一体に嵌合する。また、電池蓋24は、下ケース23の上ケース21とは反対側の端部に嵌合する。本実施形態の場合、下ケース23は、サイドピース22の内側に挿入されている。
【0010】
リモコン11は、図2に示すようにケーシング20に収容されている基板25を備えている。基板25は、サイドピース22を挟んで上ケース21と下ケース23との間に形成される空間に収容されている。本実施形態の場合、基板25は、重力方向において上方の上面26および下方の下面27を有し、下ケース23の外形に対応する矩形状に形成されている。基板25は、下ケース23および下ケース23に取り付けられるサイドピース22よりもやや小さな外形を有している。サイドピース22を下ケース23との間に挟み込んでいる上ケース21は、下ケース23から遠ざかるほど、すなわち重力方向において上端ほど外径が絞り込まれている。また、下ケース23に取り付けられている電池蓋24は、下ケース23から遠ざかるほど、すなわち重力方向において下端ほど外径が絞り込まれている。これにより、ケーシング20は、図3に示すように基板25を収容する下ケース23から重力方向の上方および下方へ向けて外径が縮小する四角錐形状に形成されている。より厳密には、ケーシング20は、上端および下端が切り取られた四角錐台形状に形成されている。上ケース21の傾斜角度と電池蓋24の傾斜角度は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0011】
上ケース21は、赤外線を透過する材料で形成されており、基板25の上方を覆っている。この上ケース21は、図3に示すように商標およびロゴマークなどを除き、文字およびピクトグラムなどの視覚的な情報を表示していない。すなわち、上ケース21は、例えば「電源」および「設定温度」など、空気調和機10へ指示する命令の参考となる視覚的な文字および図形などの情報を表示していない。また、下ケース23と電池蓋24とは、図2に示すように相互の間に電池収容部28を形成している。電池収容部28は、電源となる電池29を収容する。
【0012】
リモコン11は、上記に加え、図4に示すように制御ユニット30、マイク31、送信素子32、受信素子33、スピーカ34およびメカニカルスイッチ35を備えている。制御ユニット30は、基板25に搭載されている。本実施形態の場合、制御ユニット30は基板25の下面27に搭載されている。マイク31は、リモコン11の外部からの音声を取得する。マイク31は、ケーシング20に収容された基板25に搭載されている。マイク31は、図2に示すように上ケース21に設けられているマイク穴36を通して音声を取得する。
【0013】
送信素子32および受信素子33は、図4に示すように一体の送受信ユニット37を構成している。送受信ユニット37は、例えば赤外線を照射する赤外線LEDからなる送信素子32と、赤外線を受光するフォトダイオードからなる受信素子33とから構成されている。送受信ユニット37を構成する送信素子32は、赤外線を照射することにより、室内機12へ送信信号を出力する。また、受信素子33は、赤外線を受光することにより、室内機12から出力された信号を受信する。これにより、リモコン11と室内機12とは、赤外線による無線で通信する。スピーカ34は、基板25に設けられており、通電することにより音声を発する。スピーカ34は、図2に示すように基板25の下ケース23側に設けられている。スピーカ34から発せられた音声は、下ケース23のスピーカ穴38を経由して外部へ放出される。このスピーカ34は、特許請求の範囲の報知手段に相当する。
【0014】
メカニカルスイッチ35は、図2に示すようにスイッチ本体41およびスイッチプレート42を有している。スイッチプレート42は、上ケース21の上端に設けられた開口部43の内側に配置されている。スイッチプレート42は、サイドピース22に弾性的に支持されている。これにより、スイッチプレート42は、上ケース21の上端において上下方向へ往復移動することができる。基板25は、このスイッチプレート42の下方にスイッチ本体41を有している。スイッチプレート42が下方へ押し込まれることにより、スイッチ本体41に機械的な入力が行われる。
【0015】
送受信ユニット37は、図5に示すように基板25の上面26すなわち基板25の上ケース21側の面に設けられている。送受信ユニット37は、この基板25の上面において仮想的な円を描いたとき、この仮想的な円の円周上で等間隔に三箇所配置されている。つまり、三つの送受信ユニット37は、相互に120°の角度間隔で配置されている。また、各送受信ユニット37は、図6に示すようにいずれも基板25の上面26に対し上方へ向けて設けられている。つまり、各送受信ユニット37の照射中心軸および受光中心軸は、基板25の上面26に対して上方へ傾斜している。
【0016】
次に、リモコン11の電気的な構成について図4に基づいて詳細に説明する。
リモコン11は、上述の制御ユニット30、マイク31、送信素子32、受信素子33、スピーカ34およびメカニカルスイッチ35を有している。制御ユニット30は、図示しないCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータで構成されており、ROMに記憶されているコンピュータプログラムにしたがってリモコン11の全体を制御する。また、制御ユニット30は、記憶部51に接続するとともに、音声認識部52、送信信号生成部53および制限解除部54を構成している。これら音声認識部52、送信信号生成部53および制限解除部54は、制御ユニット30と一体の集積回路としてハードウェア的に実現してもよく、ROMに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによりソフトウェア的に実現してもよい。記憶部51は、例えばフラッシュメモリなどの書き換え可能な記憶媒体を有している。この記憶部51は、ROMおよびRAMと共用してもよい。
【0017】
音声認識部52は、マイク31から取得した音声を認識する。すなわち、音声認識部52は、ユーザが発した声などの音声を認識する。送信信号生成部53は、音声認識部52で認識した音声に対応する命令を抽出し、抽出した命令に基づいて室内機12へ指示する送信信号を生成する。例えば、ユーザが「暑い」という音声を発すると、音声認識部52はユーザが発した「暑い」を音声として認識する。そして、送信信号生成部53は、この認識した「暑い」という音声から「設定温度を1℃下げる」という命令を抽出する。この場合、送信信号生成部53は、記憶部51に記憶されている複数の命令から「暑い」に対応する「設定温度を1℃下げる」という命令を抽出する。送信信号生成部53は、この「設定温度を1℃下げる」という命令に基づいて室内機12へ指示する送信信号を生成する。生成された送信信号は、送受信ユニット37の送信素子32から室内機12へ送信される。
【0018】
制御ユニット30は、メカニカルスイッチ35に接続している。メカニカルスイッチ35に入力、つまりユーザからメカニカルスイッチ35への操作があると、制御ユニット30はメカニカルスイッチ35の操作を検出する。また、制御ユニット30は、音声合成部55に接続している。音声合成部55は、記憶部51に記憶されている音声データに基づいて音声を合成する。合成された音声は、電気信号としてスピーカ34へ出力される。これにより、スピーカ34は、音声合成部55で合成された音声を発する。
【0019】
リモコン11は、電池収容部28に収容されている電池29を電源として作動する。これに加え、リモコン11は、商用電源を電源としても作動する。この場合、商用電源は、例えばACアダプタ56などを経由して交流から所定の電圧の直流へ変換されてリモコン11へ供給される。リモコン11は、電源回路部57を有している。電池29または商用電源から供給された電力は、電源回路部57を経由して制御ユニット30に供給される。制御ユニット30は、電源回路部57から供給される電力の電源が電池収容部28に収容されている電池29によるものか、商用電源によるものかを識別する。
【0020】
制御ユニット30は、電源回路部57において商用電源から電力が供給されていると認識されたとき、音声認識部52を常時起動状態とする。つまり、制御ユニット30は、商用電源から電力が供給されているとき、電力を消費する音声認識部52へ常時通電し、常に音声認識を実行可能な待機状態に制御する。一方、制御ユニット30は、電源回路部57において電池29を電源としていると認識されたとき、メカニカルスイッチ35への機械的な入力を認識した後、音声認識部52を起動する。上述のように音声認識部52は、電力を消費する。そのため、電池29を電源としているとき、音声認識部52を待機状態とすると、電池29の消耗が進みやすくなる。そこで、制御ユニット30は、電池29を電源としているとき、メカニカルスイッチ35への機械的な入力があるまで音声認識部52を休止状態とし、電池の消耗を抑える。そして、制御ユニット30は、電池29を電源としているとき、メカニカルスイッチ35への入力があると、音声認識部52を起動して待機状態とする。これとともに、制御ユニット30は、予め設定された所定時間内に音声の入力がないと、音声認識部52を再び休止状態へ移行させる。
【0021】
制限解除部54は、メカニカルスイッチ35からの機械的な入力を受け付ける。制御ユニット30は、通常、音声認識部52による音声認識を制限している。そして、制限解除部54は、メカニカルスイッチ35へユーザからの機械的な入力があると、音声認識部52における音声認識の制限を解除する。すなわち、メカニカルスイッチ35にユーザからの機械的な入力があると、制限解除部54は音声認識部52の制限を解除し、音声認識部52は音声認識を開始する。リモコン11が音声認識を常時可能な待機状態にあるとき、例えばユーザが意図的でなく音声を発すると、リモコン11は、発せられた音声を誤認識し、室内機12に誤認識した音声に基づく送信信号を送信するおそれがある。そこで、制御ユニット30は、ユーザがメカニカルスイッチ35を操作し、制限解除部54によって音声認識部52の制限が解除された後、音声認識部52における音声の認識を開始する。つまり、制御ユニット30は、音声認識部52による音声認識の前提として、メカニカルスイッチ35への機械的な入力による制限解除部54の作動を要求する。
【0022】
次に、上記の構成によるリモコン11を用いた空気調和機10の操作について説明する。
(メインルーチン)
まず、リモコン11の基本的な処理の流れであるメインルーチンについて説明する。リモコン11の電源が「オン」になると(S101)、制御ユニット30は、電源が電池29であるか否かを判断する(S102)。制御ユニット30は、電源が電池29であるとき(S102:Yes)、図8に示す電池電源処理へ移行する(S103)。一方、制御ユニット30は、電源が商用電源であるとき(S102:No)、図9に示す商用電源処理へ移行する(S104)。制御ユニット30は、リモコン11の電源が「オフ」になるまで(S105)、S102以降の処理を繰り返す。
【0023】
(電池電源処理)
次に、図7のS103における電池電源処理について図8に基づいて説明する。
電池電源処理へ移行すると、制御ユニット30は、メカニカルスイッチ35への入力があったか否かを判断する(S201)。すなわち、制御ユニット30は、ユーザがメカニカルスイッチ35を操作したか、つまりメカニカルスイッチ35を下方へ押し下げたか否かを判断する。制御ユニット30は、メカニカルスイッチ35への入力があったと判断すると(S201:Yes)、音声認識部52を起動する(S202)。これにより、音声認識部52は、待機状態へ移行する(S203)。そのため、音声認識部52は、ユーザが発する音声を受付可能な状態となる。
【0024】
制御ユニット30は、音声認識部52を待機状態へ移行すると、メカニカルスイッチ35への入力から予め設定した待機時間内であるか否かを判断する(S204)。そして、制御ユニット30は、メカニカルスイッチ35への入力から経過した時間が待機時間内であると判断すると(S204:Yes)、マイク31から音声入力があったか否かを判断する(S205)。制御ユニット30は、マイク31から音声入力があったと判断すると(S205:Yes)、音声認識部52においてマイク31から入力された音声を認識する(S206)。
【0025】
制御ユニット30は、認識した音声に基づいて、この音声に対応する命令を抽出する(S207)。すなわち、送信信号生成部53は、記憶部51に記憶されている命令から、認識した音声に対応する命令を抽出する。例えば、制御ユニット30は、ユーザの「暑い」という音声を認識すると、「設定温度を1℃下げる」という命令を抽出する。また、この場合、送信信号生成部53は、「暑い」という音声だけでなく、「設定温度を下げる」あるいは「室温が高い」など、「暑い」に結びつく音声を認識すると、「設定温度を1℃下げる」という命令を抽出する構成としてもよい。なお、「暑い」に基づく「設定温度を1℃下げる」という命令の抽出は例示である。例えば、送信信号生成部53は、「スイッチオン」というユーザの音声から「空気調和機の電源をオンする」という命令を抽出したり、「風を強く」というユーザの音声から「室内機の風量を増す」という命令を抽出するなど、ユーザの音声に基づいて各種の適切な命令を抽出することができる。一方、制御ユニット30は、マイク31から音声入力がなされていないと判断すると(S205:No)、S204へリターンし、待機時間が経過するまで音声の入力を待機する。
【0026】
送信信号生成部53は、認識した音声に対応する命令を抽出すると、この命令に基づいて室内機12へ指示する送信信号を生成する(S208)。送信信号が生成されると、送受信ユニット37の送信素子32は、送信信号を室内機12へ送信する(S209)。室内機12は、リモコン11から送信された送信信号に基づいて設定温度の変更、運転のオンオフ、あるいは風量の調整などを行う。送受信ユニット37から送信信号が室内機12へ送信されると、制御ユニット30は図7に示すメインルーチンへ復帰する。
【0027】
一方、制御ユニット30は、S201においてメカニカルスイッチ35への入力がないと判断すると(S201:No)、音声認識部52を停止状態に維持する(S210)。そのため、ユーザから音声が発せられても、音声認識部52は音声認識を実行しない。その結果、ユーザから発せられた音声は無効となる。制御ユニット30は、音声認識部52を停止状態に維持したままS201へリターンし、メカニカルスイッチ35への入力があるまで待機する。
【0028】
また、制御ユニット30は、S204においてメカニカルスイッチ35への入力から待機時間が経過したと判断すると(S204:No)、音声認識部52を停止状態に移行する(S211)。すなわち、制御ユニット30は、メカニカルスイッチ35が操作されてから相当の時間、つまり予め設定された待機時間が経過すると、音声認識部52による音声認識を停止する。これにより、消費電力が比較的大きな音声認識部52の長時間の起動は回避され、電池29の消耗は低減される。S211において音声認識部52が停止状態へ移行すると、制御ユニット30はS201へリターンしてメカニカルスイッチ35への入力があるまで待機する。
【0029】
(商用電源処理)
次に、図7のS104における商用電源処理について図9に基づいて説明する。なお、電池電源処理と共通する処理については説明を省略する。
商用電源処理に移行すると、制御ユニット30は、音声認識部52を起動し(S301)、音声認識部52を待機状態に移行する(S302)。リモコン11において商用電源を電源とする場合、電池29の消耗を考慮する必要はない。そのため、制御ユニット30は、比較的消費電力の大きな音声認識部52を起動し、音声認識部52を常に待機状態とする。
【0030】
制御ユニット30は、音声認識部52を待機状態としたままメカニカルスイッチ35への入力があったか否かを判断する(S303)。制御ユニット30は、メカニカルスイッチ35への入力があったと判断すると(S303:Yes)、メカニカルスイッチ35への入力から待機時間内であるか否かを判断する(S304)。そして、制御ユニット30は、メカニカルスイッチ35への入力から経過した時間が待機時間内であると判断すると(S304:Yes)、マイク31から音声入力があったか否かを判断する(S305)。制御ユニット30は、マイク31から音声入力があったと判断すると(S305:Yes)、音声認識部52においてマイク31から入力された音声を認識する(S306)。
【0031】
制御ユニット30は、認識した音声に基づいて、この音声に対応する命令を抽出する(S307)。すなわち、送信信号生成部53は、記憶部51に記憶されている命令から、認識した音声に対応する命令を抽出する。一方、制御ユニット30は、マイク31から音声入力がなされていないと判断すると(S305:No)、S304へリターンし、待機時間が経過するまで音声の入力を待機する。
【0032】
送信信号生成部53は、認識した音声に対応する命令を抽出すると、この命令に基づいて室内機12へ指示する送信信号を生成する(S308)。送信信号が生成されると、送受信ユニット37の送信素子32は、送信信号を室内機12へ送信する(S309)。室内機12は、リモコン11からの送信された送信信号に基づいて運転される。送受信ユニット37から送信信号が室内機12へ送信されると、制御ユニット30は図7に示すメインルーチンへ復帰する。
【0033】
一方、制御ユニット30は、S303においてメカニカルスイッチ35への入力がないと判断すると(S303:No)、音声認識部52によって認識した音声を無効化する(S310)。すなわち、音声認識部52は、常時起動されて待機状態にあるものの、メカニカルスイッチ35への入力がない限り、音声を認識してもその認識した音声を無効化する。その結果、ユーザから発せられた音声は無効となる。制御ユニット30は、音声認識部52を待機状態に維持したままS303へリターンし、メカニカルスイッチ35への入力があるまで待機する。また、制御ユニット30は、S304においてメカニカルスイッチ35への入力から待機時間が経過したと判断すると(S304:No)、音声認識部52を待機状態に維持したままS303へリターンしてメカニカルスイッチ35への入力があるまで待機する。
【0034】
(報知処理)
制御ユニット30は、上述の図8に示す電池電源処理におけるS209、図9に示す商用電源処理おけるS309においてリモコン11と室内機12との間で送信信号の通信が確立されたか否かを報知する。具体的には、制御ユニット30は、リモコン11から室内機12へ送信信号の送信が達成されると、送信した送信信号に対応する音声をスピーカ34から発する。例えば、「設定温度を1℃下げる」という命令に対応する送信信号の送信が達成されると、スピーカ34からは「設定温度を下げます」といった音声が発せられる。このとき、制御ユニット30は、記憶部51に記憶されている複数の音声データから「設定温度を1℃下げる」という送信信号に対応する「設定温度を下げます」という音声データを抽出する。そして、制御ユニット30は、抽出した「設定温度を下げます」に対応する音声データに基づいて電気信号を生成し、生成した電気信号をスピーカ34に出力する。これにより、スピーカ34は、「設定温度を下げます」という音声を発する。一方、制御ユニット30は、リモコン11と室内機12との間で送信信号の通信が確立されないとき、「通信ができませんでした」などの音声を発する。上記の例の場合、制御ユニット30およびスピーカ34は、特許請求の範囲の報知手段に相当する。
【0035】
なお、制御ユニット30は、上述のような音声を発するスピーカ34に代えて、例えばリモコン11に設けられたLEDなどの視覚的な手段によって送信信号の通信が確立されたか否かを報知してもよい。この場合、制御ユニット30は、例えばリモコン11と室内機12との間で送信信号の通信が確立されると緑色のLEDを点滅させ、通信が確立されないと赤色のLEDを点滅させる。また、ユーザへ通信を報知する報知部は、リモコン11に限らず室内機12にLEDなどの視覚的な手段を設けてもよい。この場合、制御ユニット30は、室内機12に設けられたLEDなどの視覚的な手段により、送信信号の通信が確立されたか否かを報知する。
【0036】
以上説明した一実施形態による空気調和機10のリモコン11では、ケーシング20は、空気調和機10へ指示する操作の視覚的な情報を表示していない。すなわち、ケーシング20は、視覚的には商標などの情報を除き、空気調和機10の操作に関する情報を表示していない。一実施形態によるリモコン11は、マイク31で取得した音声を音声認識部52で認識し、認識した音声に基づいて送信信号生成部53で生成した送信信号を室内機12へ出力する。これにより、ユーザは、視覚的な情報によらない感覚的な音声をリモコン11に向けて発し、この音声によって空気調和機10を操作する。したがって、視覚的な情報に頼ることなく、感覚的かつ直感的な言葉を発することにより、空気調和機10を操作することができる。
【0037】
ところで、視覚的な情報を排除したリモコン11は、例えば食卓あるいはリビングテーブルなどのテーブル13上に常置して用いられる。そのため、従来のリモコンのようにユーザに手持ちされ、送信素子を室内機へ向けるようなユーザの動作は省略される。これにより、リモコン11と室内機12との位置関係は、操作の有無に関わらず固定的になる。その結果、送信素子32と室内機と12の位置関係によっては、送信素子32から室内機12への通信が困難となり、ユーザによる空気調和機10の操作は意のままにならないおそれがある。そこで、一実施形態による空気調和機10のリモコン11では、送信素子32を含む送受信ユニット37は、基板25の上面26における仮想的な円周上で等間隔に三箇所配置している。また、これらの送信素子32を含む送受信ユニット37は、いずれも基板25の上面26に対して上方へ向けて傾斜して設けている。リモコン11の送信素子32は、照射軸を中心に60°程度の角度範囲で通信のための光を照射する。そのため、仮想的な円周上に等間隔で三箇所に送信素子32を配置することにより、送信素子32はリモコン11からほぼ全範囲に送信信号を出力する。これにより、リモコン11と室内機12との位置関係が固定的であっても、リモコン11の送信素子32から出力された送信信号は室内機12によって受信される。したがって、リモコン11と室内機12との通信精度を高めることができる。
【0038】
一実施形態によるリモコン11では、制御ユニット30は、商用電源が供給されているとき、音声認識部52を常時起動させる。これに対し、制御ユニット30は、電池29から電力が供給されているとき、メカニカルスイッチ35の操作があった後、音声認識部52を起動する。音声認識部52は、ユーザの音声を認識するための待機状態にあるときも電力を消費する。そのため、音声認識部52を常時起動つまり音声認識部52へ常に通電すると、電池29の消耗を早めることになる。そこで、制御ユニット30は、電池29から電力が供給されているとき、音声認識部52を停止状態として電力の消費を回避しつつ、メカニカルスイッチ35の操作を契機として音声認識部52を起動する。これに対し、メカニカルスイッチ35の操作を前提とすると、音声による命令の入力時においてユーザの利便性が低下する。そこで、電池29の消耗を考慮する必要がない商用電源を用いるとき、制御ユニット30は音声認識部52を常時起動する。したがって、電池29の消耗の回避と利便性とを両立することができる。
【0039】
一実施形態によるリモコン11は、基板25の上面26に受信素子33を含む送受信ユニット37を備えている。これにより、リモコン11は、送信素子32から室内機12へ送信信号を出力するだけでなく、受信素子33で室内機12から出力された信号を受信する。これにより、リモコン11は、室内機12との間の双方向で通信可能となる。したがって、リモコン11と室内機12とで情報を共有することができる。
【0040】
一実施形態によるリモコン11は、スピーカ34を備えている。ユーザからリモコン11に対して音声による操作の入力があると、入力された音声に基づく送信信号がリモコン11と室内機12との間で通信される。このとき、このリモコン11と室内機12との間の通信が確実に行われたか否かの確認を容易にするために、制御ユニット30はスピーカ34から通信が確立したことを示す音声を発する。したがって、機械的な操作を用いないリモコン11であっても、操作の入力が行われたか否かを容易に確認することができる。
【0041】
一実施形態によるリモコン11では、制御ユニット30は、メカニカルスイッチ35の操作があったことを条件として、音声認識部52における音声認識を開始する。リモコン11が置かれている室内環境では、一般に様々な音声が飛び交っている。そのため、常に音声認識部52で音声の認識を行うと、操作を意図しない音声を認識し、意図しない送信信号が室内機12へ出力されるおそれがある。そこで、制御ユニット30は、音声認識部52における音声認識の前提として、メカニカルスイッチ35の操作を条件とする。これにより、ユーザなどにより操作を意図しない会話などが行われた場合でも、リモコン11から室内機12へ誤った操作の送信信号が出力されることは低減される。したがって、音声によってのみ空気調和機10を操作する場合でも、空気調和機10の誤った操作を低減することができる。特に、空気調和機10の電源のオンまたはオフのように重要度の高い操作のとき、メカニカルスイッチ35の操作を条件とすることにより、空気調和機10の安全性を高めることができる。この場合、命令におうじて、メカニカルスイッチ35の操作を要する命令と、メカニカルスイッチ35の操作を要しない命令とを区別してもよい。
【0042】
(その他の実施形態)
上述の一実施形態によるリモコン11は、四角錐形状の外形を有する例について説明した。しかし、リモコン11は、制御ユニット30が設けられている基板25から上方および下方へそれぞれ外径が縮小する円錐形状、あるいは球形状であってもよい。この場合、基板25は、リモコン11の外形に応じて円形状に形成してもよく、上記の例と同様にケーシング20に収容可能な矩形状に形成してもよい。このように、リモコン11の外形は、デザイン性を高めるために任意の形状とすることができる。
【0043】
また、一実施形態によるリモコン11の制御ユニット30は、メカニカルスイッチ35への機械的な入力があったか否かに応じて室内機12へ送信する送信信号に識別コードを付与する構成としてもよい。具体的には、制御ユニット30は、メカニカルスイッチ35から機械的な入力があった後に、音声認識部52で音声を認識すると、送信信号生成部53において認識した音声に基づく指示後送信信号を送信信号生成部53において生成する。このとき、送信信号生成部53は、室内機へ送信する送信信号に、メカニカルスイッチ35への入力後に音声認識した送信信号であることを意味する識別コードを付与して指示後送信信号とする。一方、制御ユニット30は、メカニカルスイッチ35に機械的な入力がある前に、音声認識部52で音声を認識すると、認識した音声に基づく指示前送信信号を送信信号生成部53において生成する。このとき、送信信号生成部53は、室内機12へ送信する送信信号に、メカニカルスイッチ35への入力前に音声認識した送信信号であることを意味する識別コードを付与して指示前送信信号とする。これにより、送信信号を受け取った室内機12は、メカニカルスイッチ35への入力があった後の指示後送信信号であるか、メカニカルスイッチ35への入力がある前の指示前送信信号であるかを識別可能となる。その結果、室内機12は、リモコン11から同時期に命令に齟齬が生じる送信信号を受信したとき、指示後送信信号を優先することができる。したがって、ユーザの不意の発声による空気調和機10の意図しない操作を低減することができる。
【0044】
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
図面中、10は空気調和機、11はリモコン(遠隔操作装置)、12は室内機、20はケーシング、25は基板、28は電池収容部、30は制御ユニット(報知手段)、31はマイク、32は送信素子、33は受信素子、34はスピーカ(報知手段)、35はメカニカルスイッチ(指示入力手段、制限解除手段)、52は音声認識部(音声認識手段)、53は送信信号生成部(送信信号生成手段)、54は制限解除部(制限解除手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機に遠隔から操作を指示する空気調和機の遠隔操作装置であって、
ケーシングと、
前記ケーシングに収容され音声を取得するマイクと、
前記マイクで取得した音声を認識する音声認識手段と、
前記音声認識手段で認識した音声に対応する命令を抽出し、抽出した命令に基づいて前記室内機へ指示する送信信号を生成する送信信号生成手段と、
前記ケーシングに収容され、重力方向において上方の上面および下方の下面を有し、前記音声認識手段および前記送信信号生成手段が搭載されている基板と、
前記基板の上面における仮想的な円周上で等間隔に三箇所配置され、前記基板の上面に対し上方へ向けて設けられ、前記送信信号生成手段で生成された送信信号を前記室内機へ出力する送信素子と、
前記基板に搭載され、前記マイク、前記音声認識手段、前記送信信号生成手段、および前記送信素子を制御する制御ユニットと、
重力方向において前記基板よりも下方に設けられ、前記制御ユニットに供給する電力の電源となる電池を収容する電池収容部と、
を備える空気調和機の遠隔操作装置。
【請求項2】
前記制御ユニットに商用電源を供給する商用電源供給手段と、
前記制御ユニットへ機械的に指示を入力する指示入力手段と、をさらに備え、
前記制御ユニットは、前記商用電源供給手段から商用電源が供給されているとき前記音声認識手段を常に起動するとともに、前記電池から電力が供給されているとき前記指示入力手段への機械的な指示を認識した後に前記音声認識手段を起動する請求項1記載の空気調和機の遠隔操作装置。
【請求項3】
前記基板の上面に搭載され、前記室内機から出力された信号を受信する受信素子をさらに備える請求項1または2記載の空気調和機の遠隔操作装置。
【請求項4】
前記送信素子と前記室内機との通信、および前記室内機と前記受信素子との通信が確立されたか否かを報知する報知手段をさらに備える請求項3記載の空気調和機の遠隔操作装置。
【請求項5】
前記ケーシングは、前記基板を収容する部分から重力方向の上方および下方へ向けて外径が縮小する四角錐形状である請求項1から4のいずれか一項記載の空気調和機の遠隔操作装置。
【請求項6】
前記ケーシングは、前記基板を収容する部分から重力方向の上方および下方へ向けて外径が縮小する円錐形状である請求項1から4のいずれか一項記載の空気調和機の遠隔操作装置。
【請求項7】
機械的な入力を受け付ける制限解除手段をさらに備え、
前記制御ユニットは、前記制限解除手段に機械的な入力があった後、音声認識を開始する請求項1から6記載の空気調和機の遠隔操作装置。
【請求項8】
機械的な入力を受け付ける制限解除手段をさらに備え、
前記制御ユニットは、前記室内機へ送信する送信信号に、前記制限解除手段に機械的な入力があった後の音声認識に基づいて生成した指示後送信信号と、前記制限解除手段に機械的な入力がある前の音声認識に基づいて生成した指示前送信信号とを識別する識別コードを付与する請求項1から6記載の空気調和機の遠隔操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−57480(P2013−57480A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197112(P2011−197112)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】