説明

空気調和機

【課題】本発明の目的は、コモンモードノイズを低減させた空気調和機を提供することにある。
【解決手段】空気調和機10は、室外機12と室内機14を備える。室外機12と室内機14にはそれぞれ冷媒回路16,18が備えられる。室外機12と室内機14との間で冷媒が循環するように、室外機12と室内機14は内外連絡配管20によって接続される。冷媒配管26a、26bに第1絶縁部材34を取り付ける。内外連絡配管20に第2絶縁部材40を設ける。第1絶縁部材34で圧縮機24を介する周波数帯域のコモンモードノイズ、第2絶縁部材40で内外連絡配管20を介する周波数帯域のコモンモードノイズが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機のモータがインバータ駆動される空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、空気調和機100は、室外機12と室内機14に分離されている。室外機12と室内機14は、冷媒が通る内外連絡配管20によって接続されている(下記の特許文献など)。室外機12には、圧縮機24、冷媒配管26a、26b、26c、熱交換機28などを備えた冷媒回路16がケーシング22の中に納められている。圧縮機24にはモータ25が備えられ、モータ25はインバータ装置50によってインバータ駆動される。
【0003】
インバータ装置50は、ノイズフィルタ52、整流回路54、平滑回路56、インバータ回路58を備えたものである。ノイズフィルタ52は、チョークコイルなどを備えた回路である。交流電源60がノイズフィルタ52に接続され、そこから整流回路54、平滑回路56、インバータ回路58の順で接続される。インバータ回路58は複数のスイッチング素子によって交流電力を生成し、モータ25にその電力を供給する。インバータ装置50は、モータ25に電力を供給するだけでなく、ファン62やスイッチング電源(SW電源)64などにも電力を供給する。スイッチング電源64は、インバータ回路58の駆動回路(図示せず)などの電源となる。
【0004】
さらに、インバータ装置50のノイズフィルタ52から室内機14に配線66が施される。内外連絡配管20はカバーで風雨から保護されており、このカバーの中に配線66が取り付けられる。この配線66により、室内機14のノイズフィルタ68を介して、スイッチング電源70やファン72などの室内機14の電装装置に電力を供給する。なお、室内機14の冷媒回路18には熱交換機74を備え、室内に所望の空気を送り込む。
【0005】
しかし、インバータ駆動時のスイッチングに伴い、高周波等の高周波成分が発生する。また、モータ25の巻き線とステータ間、内外連絡配管20と配線66間などに浮遊容量Coが存在する(図7)。この浮遊容量Co等による寄生インピーダンスが高周波成分に対してインピーダンスが低いため、高周波成分の伝搬経路となる。したがって、高周波成分が浮遊容量Coから冷媒配管26a、26bやケーシング22などのアースを伝って電源60端にコモンモードノイズとして現れる。このコモンモードノイズは雑音端子電圧として規制されており、製品の品質を守るために、このコモンモードノイズを低減させることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−196260号公報
【特許文献2】特開平6−81996号公報
【特許文献3】特開平10−103746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、コモンモードノイズを低減させた空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
空気調和機は、室外機と室内機を備える。室外機と室内機は連絡配管で接続されている。本発明の空気調和機は、前記室外機に備えられ、インバータ回路によって駆動する圧縮機と、前記室外機に備えられる熱交換器と、一端が前記圧縮機に接続され、他端が前記熱交換器に接続された第1配管部と、前記圧縮機、第1配管部、および熱交換器が収納され、接地されるケーシングと、前記第1配管部に設けられた第1絶縁部材とを備える。第1配管部に第1絶縁部材を設けて、コモンモードノイズの経路を遮断する。
【0009】
また、一端が前記圧縮機に接続され、他端が前記連絡配管に接続された第2配管部と、前記圧縮機、第2配管部、および熱交換器が収納され、接地されるケーシングと、前記第2配管部に設けられた第1絶縁部材とを備える。第2配管部にも第1絶縁部材を設け、コモンモードノイズの経路を遮断する。
【0010】
前記熱交換器がケーシングに直接または間接的に接続され、該熱交換器がケーシングと同電位である。また、第2配管部と連絡配管の接続部がケーシングに直接または間接的に接続され、該接続部がケーシングと同電位である。熱交換器や接続部は、ケーシングに取り付けられる。
【0011】
前記第1絶縁部材が、第1配管部または第2配管部における圧縮機への接続端に設けられる。圧縮機と第1配管部、および圧縮機と第2配管部との接続部に第1絶縁部材を設ける。
【0012】
前記連絡配管に第2絶縁部材を設ける。連絡配管に第2絶縁部材を設けて、コモンモードノイズの経路を遮断する。
【0013】
前記第2絶縁部材が、連絡配管における室外機側端部に設けられる。連絡配管において、室外機と連絡配管とが接続される箇所に第2絶縁部材を設ける。
【発明の効果】
【0014】
従来、圧縮機のインバータ駆動によって生じるノイズが第1配管部や第2配管部からアースを介して電源端にコモンモードノイズとして生じたが、本発明は第1絶縁部によってコモンモードノイズを遮断できる。また、連絡配管からアースを介して電源端に生じるコモンモードノイズを第2絶縁部によって遮断できる。第1絶縁部と第2絶縁部によってコモンモードノイズを低減することができ、製品の品質を守ることができる。また、ノイズ対策部品やノイズフィルタの削減や小型化が可能となり、コストダウンにつながる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の空気調和機の構成を示すブロック図である。
【図2】第1絶縁部材の一例を示す図である。
【図3】シミュレーションにより、第1絶縁部材によるコモンモードノイズの低減を示すグラフである。
【図4】シミュレーションにより、第2絶縁部材によるコモンモードノイズの低減を示すグラフである。
【図5】シミュレーションにより、第1絶縁部材と第2絶縁部材によるコモンモードノイズの低減を示すグラフである。
【図6】空気調和機の電気回路および冷媒回路を示す図である。
【図7】空気調和機の浮遊容量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の空気調和機について図面を用いて説明する。
【0017】
図1に示す本発明の空気調和機10は、室外機12と室内機14を備える。室外機12と室内機14にはそれぞれ冷媒が循環する冷媒回路16,18が備えられる。室外機12と室内機14との間で冷媒が循環するように、室外機12と室内機14は内外連絡配管20によって接続される。内外連絡配管20は金属で形成され、室外に露出する箇所は、風雨を避けるためのカバーが取り付けられる。
【0018】
室外機12は、ケーシング22の中に冷媒回路16が備えられている。ケーシング22は、接地されている。冷媒回路16は、圧縮機24、冷媒配管(吐出管および吸入管を含む)26a、26b、26c、熱交換機28、膨張弁30などを含む。冷媒回路16の各部品は金属で形成されている。圧縮機24と熱交換器28の間を接続する冷媒配管を符号26aで示し、圧縮機24と内外連絡配管20の間を接続する冷媒配管を符号26bで示し、熱交換器28と内外連絡配管20との間を接続する冷媒配管を符号26cで示す。冷媒配管26a、26b、26cや内外連絡配管20は、1本の配管で構成される場合と複数の配管を連結して構成される場合がある。
【0019】
ケーシング22に直接またはフレームを介して閉鎖弁32が取り付けられている。閉鎖弁32はケーシング22と同電位、すなわちアース電位になっている。この閉鎖弁32で内外連絡配管20と冷媒配管26b、26cとが接続される。
【0020】
従来技術の図6で示したように、圧縮機24にはモータ25が備えられており、モータ25はインバータ回路58によってインバータ駆動される。インバータ回路58やその周辺の電気回路の構成は従来技術の図6で示した回路構成と同様であり、説明を省略する。
【0021】
本発明は、冷媒配管26a、26bに第1絶縁部材34を取り付ける。第1絶縁部材34は、冷媒の流路を塞がずに、圧縮機24の浮遊容量Coから冷媒配管26a、26bを通ってアースにノイズが伝わるのを防ぐものである。
【0022】
第1絶縁部材34が設けられる位置は、冷媒配管26a、26bと圧縮機24との接続部分である。例えば、冷媒配管26a、26bと圧縮機24の間に第1絶縁部材34で構成した絶縁配管を介するようにする(図2)。絶縁材料としてガラス、セラミック、樹脂などが挙げられる。冷媒配管26a、26bにおける圧縮機24への接続端に第1絶縁部材34を設け、できるだけノイズが冷媒配管26a、26bを伝わらないようにする。
【0023】
図3に、冷媒配管26a、26bと圧縮機24との接続部分に第1絶縁部材34を設けた場合と設けない場合のコモンモードノイズの違いをシミュレーションで評価した結果を示す。第1絶縁部材34として、シミュレーション上のコモンモードノイズ伝搬経路上に微小な静電容量を設けている。本発明は、2MHz付近までコモンモードノイズが低下するのが分かる。
【0024】
なお、冷媒配管26aの代わりに冷媒配管26cに第1絶縁部材24を設けると、熱交換器28がケーシング22に直接または間接的につながって同電位になっており、ノイズがケーシング22を介して電源端に現れることとなる。
【0025】
また、内外連絡配管20に第2絶縁部材40を設ける。第2絶縁部材40は第1絶縁部材34と同様に、冷媒の流路を塞がずに、コモンモードノイズが内外連絡配管20を通ってアースにノイズが伝わるのを防ぐものである。
【0026】
第2絶縁部材40が設けられる位置は、室外機12への接続端、すなわち内外連絡配管20と閉鎖弁32との接続部分である。第2絶縁部材40としては第1絶縁部材34と同様の構成であっても良い。配線66と内外連絡配管20との浮遊容量Coで内外連絡配管20にコモンモードノイズの高周波成分が流れる。第2絶縁部材40は、内外連絡配管20を伝わるコモンモードノイズがアースに流れないようにする。
【0027】
図4に、内外連絡配管20と閉鎖弁34との接続部分に第2絶縁部材40を設けた場合と設けない場合のコモンモードノイズの違いをシミュレーションで評価した結果を示す。第2絶縁部材40としてシミュレーション上のコモンモードノイズ伝搬経路上に微小な静電容量を設けている。本発明は、2〜10MHzの帯域でコモンモードノイズが低下している。
【0028】
上記のように、第1絶縁部材34で圧縮機24を介する周波数帯域のコモンモードノイズ、第2絶縁部材40で内外連絡配管20を介する周波数帯域のコモンモードノイズが低減される。ここで、第1絶縁部材34と第2絶縁部材40の両方を設けた場合と設けない場合のコモンモードノイズの違いを図5に示す。約10MHzの帯域までコモンモードノイズが低下している。すなわち、第1絶縁部材34と第2絶縁部材40によって圧縮機24と内外連絡配管20を介する広帯域のノイズを低減させることができる。
【0029】
以上のように、本発明は第1絶縁部材34や第2絶縁部材40を設けることによって、コモンモードノイズを低減することができる。コモンモードノイズの低減によって、現行のノイズ対策部品やノイズフィルタなどの削減や小型化が可能となり、それによってコストダウンが可能になる。
【0030】
以上、本発明について実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。例えば、閉鎖弁32が内外連絡配管20と冷媒配管26b、26cとの接続部になっていたが、直接内外連絡配管20と冷媒配管26b、26cとが直接接続される構成であっても良い。接続部分がケーシング22に直接またはフレームを介して接続される。内外連絡配管20と冷媒配管26b、26cとの接続部分に第2絶縁部材40を設ける。コモンモードノイズが内外連絡配管20からアースに伝わらないようにする。
【0031】
また、図1では2つの絶縁部材34,40を使用したが、いずれかの絶縁部材34,40のみを使用してもよい。
【0032】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0033】
10:空気調和機
12:室外機
14:室内機
16,18:冷媒回路
20:内外連絡配管
22:ケーシング
24:圧縮機
25:モータ
26a:冷媒配管(第1配管部)
26b:冷媒配管(第2配管部)
26c:冷媒配管
28:熱交換器
30:膨張弁
32:閉鎖弁(接続部)
34:第1絶縁部材
40:第2絶縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機と室内機を連絡配管で接続した空気調和機において、
前記室外機に備えられ、インバータ回路によって駆動する圧縮機と、
前記室外機に備えられる熱交換器と、
一端が前記圧縮機に接続され、他端が前記熱交換器に接続された第1配管部と、
前記圧縮機、第1配管部、および熱交換器が収納され、接地されるケーシングと、
前記第1配管部に設けられた第1絶縁部材と、
を備えた空気調和機。
【請求項2】
室外機と室内機を連絡配管で接続した空気調和機において、
前記室外機に備えられ、インバータ回路によって駆動する圧縮機と、
前記室外機に備えられる熱交換器と、
一端が前記圧縮機に接続され、他端が前記連絡配管に接続された第2配管部と、
前記圧縮機、第2配管部、および熱交換器が収納され、接地されるケーシングと、
前記第2配管部に設けられた第1絶縁部材と、
を備えた空気調和機。
【請求項3】
室外機と室内機を連絡配管で接続した空気調和機において、
前記室外機に備えられ、インバータ回路によって駆動する圧縮機と、
前記室外機に備えられる熱交換器と、
一端が前記圧縮機に接続され、他端が前記熱交換器に接続された第1配管部と、
一端が前記圧縮機に接続され、他端が前記連絡配管に接続された第2配管部と、
前記圧縮機、第1配管部、第2配管部、および熱交換器が収納され、接地されるケーシングと、
前記第1配管部および第2配管部に設けられた第1絶縁部材と、
を備えた空気調和機。
【請求項4】
前記熱交換器がケーシングに直接または間接的に接続され、該熱交換器がケーシングと同電位である請求項1または3の空気調和機。
【請求項5】
前記第2配管部と連絡配管の接続部がケーシングに直接または間接的に接続され、該接続部がケーシングと同電位である請求項2または3の空気調和機。
【請求項6】
前記第1絶縁部材が、圧縮機への接続端に設けられた請求項1から5のいずれかの空気調和機。
【請求項7】
前記連絡配管に第2絶縁部材を設けた請求項1から6のいずれかの空気調和機。
【請求項8】
前記第2絶縁部材が、連絡配管における室外機側端部に設けられた請求項7の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−286215(P2010−286215A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142021(P2009−142021)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】