説明

空気調和機

【課題】
従来、暖房運転時は室外機内にある室外熱交換器内に低温の冷媒が流れる為、室外熱交換器は着霜が発生し易い。特に、室外熱交換器内で通風速度が遅い箇所は着霜が発生し易い。その為、その通風速度が遅い箇所だけ着霜が頻繁に発生してしまうおそれがあった。
【解決手段】
本発明は、上記のおそれを解消する為に、着霜が発生し易い箇所を流れる冷媒の流量を調整することで、暖房運転時の室外熱交換器の着霜を抑制することを目的とした空気調和機を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房運転時、室外熱交換器の着霜を回避あるいは抑制する空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、空気調和機は外気温が低い時に暖房運転を行う。暖房運転時は、室外熱交換器は蒸発器として機能し、低温の冷媒が流れる。その為、外気に含まれる水分が室外熱交換器に付着し、着霜が起こる。特に、室外熱交換器の下部は、通風量の少なさや室外機底部に溜まった水の影響により、着霜し易い。
【0003】
室外熱交換器5の下部の着霜を抑制する技術として、特開平6−323674号公報に記載されたものがある。この先行技術は、図5に示すように、室外熱交換器5の下部に配置されたサブクール熱交換器11の着霜を防止するものである。着霜を防止するために、サブクール熱交換器11の出口管と入口管をバイパスする管を設けて、暖房運転時にサブクール熱交換器11に冷媒を流さないようにしている。これにより、サブクール熱交換器11では冷媒が外気と熱交換しないので、サブクール熱交換器11に着霜が起きにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6―323674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の空気調和機では、サブクール熱交換器11が室外熱交換器5と直列に接続されているため、バイパスをすることができる。特許文献1に記載の技術を導入し、室外熱交換器5の着霜を抑制するには、着霜の発生し易い箇所の熱交換器を室外熱交換器5とは別の熱交換器とする必要があり、さらにバイパス管などの構成も必要になるなど複雑な構成が必要であった。その為、設置箇所も制限されるなどの問題もあった。また、室外熱交換器5内に通された冷媒が流れる配管であるパスの着霜を抑制することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構成で、着霜が発生し易い箇所を流れる冷媒の流量を調整することで、室外熱交換器の着霜を抑制することを目的とした空気調和機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する為に、本発明の空気調和機は、複数のパスを備えた室外熱交換器と分流器との間に存在するパスの内、予め決められたパスに冷媒の流れる方向を制限する逆止弁を備えたものである。また、四方弁と接続している冷媒配管と室外熱交換器との間に存在する複数のパスの内、予め決められたパスに逆止弁を備えても良い。なお、逆止弁の代わりに冷媒流量を制御する電磁弁を用いても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空気調和機によれば、冷房運転時には、室外熱交換器全体で熱交換することで冷媒を効率よく凝縮することができる。また、暖房運転時には、着霜し易いパスに流れる冷媒の流れを止めたり、流量を少量にしたりすることで室外熱交換器の着霜を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の空気調和機の冷凍サイクルを示した図である。
【図2】本発明の空気調和器の室外熱交換器と分流器を示した図である。
【図3】上吹きタイプの室外機を示した断面図である。
【図4】本発明の空気調和器の室外熱交換器と分流器を示した別実施例の図である。
【図5】従来技術の空気調和機の冷凍サイクルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る空気調和機を、図1に基づいて以下に説明する。図1に示すように、本発明の空気調和機は、冷媒を圧縮する圧縮機1、室内空気と熱交換する室内熱交換器2、絞り装置である膨張弁3、冷媒を複数のパスに分流する分流器4、外気と熱交換する室外熱交換器5と順次冷媒を循環させる冷媒回路を備えている。四方弁6で冷媒回路を流通する冷媒の流れる方向を切り換え、暖房運転時には、圧縮機1、室内熱交換器2、分流器4、膨張弁3、室外熱交換器5、圧縮機1と順次冷媒を循環させる。また、冷房運転時には、圧縮機1、室外熱交換器5、分流器4、膨張弁3、室内熱交換器2、圧縮機1と順次冷媒を循環させる。それぞれの間は、冷媒配管12で接続されている。
【0011】
室外熱交換器5は、熱交換効率を向上させる為に室外熱交換器5の冷媒流路を複数のパスで構成している。室外熱交換器5の複数のパスに適切に冷媒を分流させる為に、冷媒分流器4を室外熱交換器5と膨張弁3の間に設置している。この室外熱交換器の着霜を抑制する為に、図2に示すように、分流器4側にある室外熱交換器5の複数のパス9の内、後述する予め決められたパスに逆止弁7を設置している。この逆止弁7は暖房運転時に、逆止弁7が設置されたパス(9A、9B)に冷媒が流れないようにする為に、図2中の逆止弁7の矢印の向き方向(室外熱交換器5から分流器4に向かう方向)だけ冷媒が流れるように、冷媒の流通を制限している。
【0012】
次に、室外熱交換器5の着霜を抑制する為に、逆止弁7を配置するパスを選定する方法について説明する。
【0013】
逆止弁7を配置するパスの選定にあたっては、予め実機にて低外気温環境で暖房運転を行い、実際に着霜のおきやすいパスを抽出し、そのパスを逆止弁7を配置するパスとする。
【0014】
着霜は、パス内を流れる冷媒流量が同じである場合、パスを通過する空気の風速が遅いパスの方が着霜が起こり易い傾向があり、また、パスを通過する空気の風速が同じである場合、パス内を流れる冷媒流量が多いパスの方が着霜が起こり易い傾向がある。このように、着霜のし易さはパスを通過する空気の風速とパスを流れる冷媒流量に影響を受ける。ここでパスを通過する空気の風速は送風ファン8との距離と関係がある。送風ファン8から離れるほど、送風ファン8の吸引力が弱まっていき、パスを通過する空気の風速は遅くなっていく。一般的に、冷媒流量がほぼ同じなら通過する空気の風速が遅いほど着霜が起こり易い。
【0015】
図3に示すような上吹きタイプの室外機を例に、着霜が起こり易いパスに逆止弁7を設置する手順を説明する。上吹きタイプの室外機は、送風ファン8が下から上に風を送るように室外機の上部に配置され、室外熱交換器5は送風ファン8よりも下側に配置されている。この室外熱交換器5の下部に配置されているパス9Aは、送風ファン8より最も遠い位置に配置されているパスであり、送風ファン8による吸引力が小さい。このパス9Aが室外熱交換器5の中で風速の遅いパスとなる。そこで、図2に示すように、着霜を抑制する為にパス9Aに逆止弁7を設置している。
【0016】
暖房運転時に、分流器4に流入する冷媒は気液二相冷媒である。その為、一つの分流器4と接続される複数のパスの内、一番下部に配置されているパス9Bに、気液二相の内、液相の冷媒が多く流れる。これにより、パス9Bは着霜が起こり易い。そこで、パス9Bの着霜を抑制する為に、パス9Bにも逆止弁7を設置している。
【0017】
上記のように逆止弁7を設置したことで、暖房運転時に、室内熱交換器2から分流器4を介して室外熱交換器5に向かって流れる冷媒は、逆止弁7を設けたパス(9A、9B)への流入が阻止される。これにより、パス9Aとパス9Bには冷媒が流通しない為、着霜を抑制することができる。さらに、本実施例では逆止弁7を用いている為、冷媒の流れを止める為の制御機構が必要ない。
【0018】
一方、冷房運転時に、室外熱交換器5から分流器4を介して室内熱交換器2に向かって逆止弁7の設けられているパス(9A、9B)を流れる冷媒は逆止弁7の順方向に流れている為、逆止弁7を通過し、分流器4まで流れる。これにより、室外熱交換器5の全てのパスに冷媒が流通する為、全てのパスで空気と熱交換をすることができる。よって、本発明の空気調和機は効率の良い冷房運転をすることができる。
【0019】
次に、本発明の空気調和機の動作について説明する。冷房運転時、ガス冷媒は圧縮機1で圧縮されて高温高圧のガス冷媒として吐出され、四方弁6を経て室外熱交換器5の逆止弁7のあるパス(9A、9B)も含め全てのパスに流入する。室外熱交換器5に流入した冷媒は、外気と熱交換されることで凝縮される。凝縮された冷媒は、分流器4で合流する。合流した冷媒は、膨張弁3で減圧されることで気液二相冷媒になる。この気液二相冷媒は、室内熱交換器2に流入し、室内空気と熱交換されることで蒸発し、低圧のガス冷媒となる。ガス冷媒は、四方弁6を経て、圧縮機1に戻っている。
【0020】
一方、暖房運転時、ガス冷媒は圧縮機1で圧縮されて高温高圧のガス冷媒として吐出され、四方弁6を経て室内熱交換器2に流入する。室内熱交換器2に流入した冷媒は、室内空気と熱交換されることで凝縮される。凝縮された冷媒は、膨張弁3で減圧されることで気液二相冷媒になる。この気液二相冷媒は、分流器4で複数のパス9に分流される。逆止弁7が設けられているパス(9A、9B)には、逆止弁7により冷媒が流れない。逆止弁7が設けられていない複数のパスを流れる気液二相冷媒は、室外熱交換器5に流入し、外気と熱交換されることで蒸発し、低圧のガス冷媒となる。ガス冷媒は、冷媒配管12で合流し、四方弁6を経て、圧縮機1に戻っている。逆止弁7が設けられているパス(9A、9B)には冷媒が流れない為、パス(9A、9B)の着霜を抑制することができる。なお、本実施例では、ガス冷媒は冷媒配管12で合流させているが、本発明はこれに限定したものではない。室外熱交換器5の出口側に分流器4を設け、分流器4でガス冷媒を合流させてから冷媒配管12に流しても良い。
【0021】
暖房運転中に行う除霜運転時は、冷房運転時と同じ冷凍サイクルとなる。その為、室外熱交換器5の全部のパスに高温高圧の冷媒が流れる。よって、暖房運転時に逆止弁7により冷媒が流れていないパス(9A、9B)にも高温高圧の冷媒が流れる為、パス(9A、9B)も含め室外熱交換器5全体の除霜を行うことができる。
【0022】
なお、上記の上吹きタイプの室外機以外に、家庭用室外機のように、送風ファン8が室外熱交換器5の側面と対向する位置に設置されている室外機がある。この室外機では、室外熱交換器5の上部側と下部側に配置されていたパスが送風ファン8から遠い為、風速の遅いパスとなる場合がある。この場合、逆止弁7を室外熱交換器5の上部と下部に配置されている風速の遅いパスに設置すると良い。なお、本発明は上記の実施例に限定したものではなく、暖房運転時に着霜が発生し易いパスに設置ずるもので、風速は速いが冷媒流量が多いパスなど、室外機の構成に応じて任意のパスに適宜配置することができる。
【0023】
本実施例では、逆止弁7を室外熱交換器5と分流器4との間に設けているが、本発明はこれに限定したものではなく、図4に示すように、室外熱交換器5が凝縮器として機能する場合の入口側にある冷媒配管12側にある室外熱交換器5の複数のパス10の内、予め決められたパス(10A、10B)に設けても良い。以上より、部品の構成に応じて逆止弁7は複数のパス(9、10)の内、自由に配置することができる。
【0024】
また、本実施例では、逆止弁7を使用したが、本発明はこれに限定したものではなく、逆止弁7の代わりに冷媒流量を制御できる電磁弁を用いて、暖房運転時に冷媒の流れを止めたり、外気温と室外熱交換器5の温度に基づいて着霜を抑制できる範囲まで冷媒の流量を減らしたりしても良い。電磁弁を用いることで、冷媒の流れを止めることなく少量流すことができ、室外熱交換器5での熱交換量の減少を少なくし、暖房能力の低下を抑えることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 圧縮機
2 室内熱交換器
3 膨張弁
4 分流器
5 室外熱交換器
6 四方弁
7 逆止弁
8 送風ファン
9、9A、9B、9C、9D パス
10、10A、10B、10C、10D パス
11 サブクール熱交換器
12 冷媒配管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、四方弁と、室内熱交換器と、絞り装置と、分流器と、複数のパスを有する室外熱交換器とを冷媒配管により順次接続して冷媒回路を構成した空気調和機において、
暖房運転時、前記複数のパスのうち予め定められたパスに冷媒が流入しないように該パスの暖房運転時の入口側または出口側の少なくとも一方に逆止弁を設けたことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、
前記予め定められたパスは暖房運転時に着霜し易いパスであることを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
圧縮機と、四方弁と、室内熱交換器と、絞り装置と、分流器と、複数のパスを有する室外熱交換器とを冷媒配管により順次接続して冷媒回路を構成した空気調和機において、
暖房運転時、前記複数のパスのうち予め定められたパスに冷媒が流入しないように該パスの暖房運転時の入口側または出口側の少なくとも一方に電磁弁を設けたことを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項3に記載の空気調和機において、
前記予め定められたパスは暖房運転時に着霜し易いパスであることを特徴とする空気調和機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−207861(P2012−207861A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74002(P2011−74002)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)