説明

空気調和機

【課題】 暖房運転時、暖気を直下方向に吹出せるようにして、室内の下方に届くようにするとともに、送風ファンを逆回転に切換えても吸込口からら低速で穏やかな気流を送出することができる空気調和機を提供することを目的とする。
【解決手段】 本体1の前面に前面通気口2を形成し下面に下面通気口3を形成し、これらを水平流路6aと垂直流路6bとからなる通風路6で結ぶ。水平流路6aと垂直流路6bとが重なる領域には送風機7が傾斜して設置され、送風機7はプロペラファン7aと、正回転及び逆回転可能なファンモータ7bとからなっている。また、水平流路6aには前面通気口2に対峙して熱交換器8が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関わり、より詳細には、吹出方向を切換えても、一方の通気口から他方の通気口へ円滑に気流が流れる構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機として、例えば図4で示す空気調和機30は本体の前面に吸込口31を設け、前面下部に吹出口32を設けている。吸込口31と吹出口32とを結ぶ通風路38には上部熱交換器33aと下部熱交換器33bとからなる熱交換器33と、送風ファン34と、左右風向板36及び上下風向板37とが設けられ、吸込口31から吸込まれた室内の空気は熱交換器33を通過することにより冷媒と熱交換されるようになっている。熱交換された空気は送風ファン34によりフロントガイダ39とリアガイダ40に案内されながら吹出口32に送出され、左右風向板36及び上下風向板37に吹出方向を偏向されながら室内に吹出されるようになっている。
【0003】
冷房運転時あるいは除湿運転時においては、吹出口32からの下方への冷風あるいは除湿空気の吹き出しは必ずしも必要ではなく、使用者の肌に直接冷風が吹きつけられることにより不快感を与えることもあり、また、冷風は下降する性質があるため、風の吹き出し方向を上方へ変更した方が室内の温度分布には望ましい場合がある。これに対応すべく、送風ファン34として正回転及び逆回転が可能な可逆回転ファンが用いられ、正回転時には、吸込口31から空気を吸込み、吹出口32から吹出す一方、逆回転時には、吹出口32から空気を吸込み、吸込口31から空気を吹出すようになっている。
【0004】
冷房運転時、送風ファン34が逆回転に切換えられると、室内の空気は吹出口32から吸込まれ、送風ファン34により熱交換器33に向かい送出され、同熱交換器34を通過して冷媒と熱交換されるようになっている。熱交換されて冷気となった空気は本体の前面に設けられた吸込口31から室内の前方に向かい吹出されるようになっており、室内の遠方まで届くようになっている。
【0005】
しかしながら、暖房運転時、吸込口31から空気を吸込み、吹出口32から暖気を吹出す際には、吹出口32に連なる通風路38はフロントガイダ39とリアガイダ40を有しているため、本体の斜め下方にしか暖気を吹出すことができず、上昇しやすい傾向にある暖気は室内の床面まで届かない不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−181344号(5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、冷房運転時と暖房運転時とで正逆転可能な送風ファンにより吹出口を切換えることができるとともに、暖房運転時、熱交換器での熱交換により生成された暖気を直下方向に吹出せるようにして、上昇し易い傾向にある暖気が室内の床面近傍まで届くようにした空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、本体の前面に形成された前面通気口と、本体の下面に形成された下面通気口と、前記前面通気口と前記下面通気口とを繋ぐ通風路と、プロペラファンと同プロペラファンを駆動する正転及び逆転が可能なファンモータとからなり前記通風路内に設けられた送風機と、前記前面通気口と前記送風機との間に設けられた熱交換器とで構成され、前記通風路が前記前面通気口に連なる水平流路と前記下面通気口に連なる垂直流路とからなり、前記送風機が、前記水平流路と前記垂直流路とが重なる領域に傾斜して配置されてなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、送風機を正転させた際は、前面通気口から吸込まれた室内の空気が、熱交換器を通過して冷媒と熱交換された後、下面通気口から吹出され、送風機を逆転させた際は、下面通気口から吸込まれた室内の空気が、熱交換器を通過して冷媒と熱交換された後、前面通気口から吹出されるようになっている。また、送風ファンをプロペラファンで構成し、水平流路と垂直流路とが重なる領域に前面通気口と前記下面通気口に対して傾斜して配置したことにより、暖房運転時、暖気が下方に垂直状に吹出せるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による空気調和機を示す外観斜視図である。
【図2】本発明による空気調和機の第一実施例を示す断面図である。
【図3】本発明による空気調和機の第二実施例を示す断面図である。
【図4】従来の空気調和機を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明による空気調和機は、図1の外観斜視図で示すように、本体1の前面に前面通気口2を形成し、本体1の下面に下面通気口3を形成しており、後述する送風機7を正回転させた場合は、前面通気口2から吸込まれた室内の空気は、後述する熱交換器8を通過して冷媒と熱交換された後、下面通気口3から吹出されるようになっている。また、送風機7を逆回転させた場合は、下面通気口3が吸込口となり下面通気口3から吸込まれた室内の空気は熱交換器8を通過して冷媒と熱交換された後、前面通気口2から室内に吹出されるようになっている。また、本体1の前面下部一側には、運転状態、室温等を表示する表示部4が設けられるとともに、リモートコントローラからの信号を受信する受信部5が設けられている。
【0013】
本体1内には、図2の断面図で示すように、前面通気口2と下面通気口3とを結ぶ逆L字状の通風路6が形成されており、同通風路6は前面通気口2に連なる水平流路6aと、下面通気口3に連なる垂直流路6bとからなっている。
【0014】
水平流路6aと垂直流路6bとが重なる領域には、送風機7が平流路6aと垂直流路6bの軸線との角度が等しくなるように傾斜して設置されており、等しい角度で傾斜していることにより前面通気口2と下面通気口3とから、同等の空気を吹出せるようになっている。送風機7はプロペラファン7aと、同プロペラファン7aを駆動するファンモータ7bとからなり、ファンモータ7bは正回転及び逆回転可能となっている。正回転の場合は、室内の空気は、実線の矢印で示すように、前面通気口2から吸込まれ、通風路6を通り下面通気口3から吹出されるようになっており、逆回転の場合は、室内の空気は、破線の矢印で示すように、下面通気口3から吸込まれ、通風路6を通り前面通気口2から吹出されるようになっている。
【0015】
通風路6の前面通気口2の近傍には、並列された複数のフィン8aと、同フィン8aに直交するように蛇行状に配設された伝熱管8bとからなる熱交換器8が配置されており、同熱交換器8は冷房運転時は、蒸発器となって通過する空気を冷媒により冷却し、暖房運転時には凝縮器となって通過する空気を冷媒により加熱するようになっている。同熱交換器8の下方となる水平流路6aの下面は、熱交換器8から滴下する凝縮水を受けるように、下方に窪んだ露受皿10となっている。同露受皿10からは排出管10aが導出され、通風路6と本体1の背面との間に配置された配管ユニット11に接続されるようになっており、熱交換器8から滴下し、露受皿10に貯留された凝縮水は排出管10aと配管ユニット11とを介して外部に排出されるようになっている。
【0016】
以下、暖房運転時と冷房運転時の動作について説明する。尚、本体1は、図示しない室外機と冷媒配管により接続されるようになっており、室外機に備えられた圧縮機及び室外熱交換器と、室内機としての本体1内に備えられた熱交換器8との間で冷媒が循環し、熱交換器8で周囲を流れる空気と冷媒とが熱交換を行うことにより冷暖房運転が行われるようになっている。暖房運転時には、ファンモータ7bは正回転方向に回転されるようになっている。前面通気口2から吸込まれた室内の空気は熱交換器8を通過して同熱交換器8を流通する冷媒と熱交換され暖気となる。熱交換され暖気となった空気は送風機7により水平流路6aから垂直流路6bに流入し、下面通気口3から本体1の直下方向に吹出されるようになっている。
【0017】
本体1の下面に形成された下面通気口3から暖気が直下方向に吹出されることにより、室内の上部に上昇し易い傾向がある暖気が、風向板を使用しなくても室内の床面近傍まで届くようになり、暖房運転の効率を向上させることができるようになっている。
【0018】
また、暖房運転時において、室温が設定値近傍に達したらファンモータ7bの回転を逆回転方向に切換えても良い。逆回転方向に切換えると、室内の空気は、点線の矢印で示すように、下面通気口3から通風路6に吸込まれ、熱交換器8を通過して冷媒と熱交換された後、前面通気口2から室内に吹出されるようになっている。
【0019】
送風機7の正回転時あるいは逆回転時には、送風機7がプロペラファン7aで構成されていることにより水平流路6a及び垂直流路6bには大きな静圧が生じ、前面通気口2あるいは下面通気口3からは低速で穏やかな気流が室内に送出されるようになっている。また、プロペラファン7aが傾斜して配置されていることにより通風路形状の影響を受けずに、順方向及び逆方向に円滑に空気を送出することが可能となっており、ファンモータ7bの回転を逆回転方向に切換え、前面通気口2から吸込んだ空気を下面通気口3から室内に吹出しても、送風量あるいは風速を正回転方向時と同程度に維持し、低速で穏やかな気流が室内に送出されるようになっている。
【0020】
次に、冷房運転時の動作について説明する。冷房運転時は、ファンモータ7bは逆回転方向に回転されるようになっている。下面通気口3から吸込まれた室内の空気は垂直流路6bと水平流路6aとを通り熱交換器8を通過して同熱交換器8を流通する冷媒と熱交換され冷気となる。熱交換され冷気となった空気は前面通気口2から本体1の水平方向に吹出されるようになっている。また、熱交換器8の表面に凝縮した凝縮水は、露受皿10に滴下した後、排出管10aと配管ユニット11を介して外部に排出されるようになっている。
【0021】
前面通気口2から冷気が吹出される際、暖気と同様に、プロペラファン7aにより通風路6の水平流路6aに生じる大きな静圧により前面通気口2からは低速で穏やかな気流が送出され、室内の遠方まで届くようになっている。これにより、冷気が人の肌に直接触れて不快感を感じさせる、所謂ドラフト感を防止できるとともに、室内の温度分布を均一にして快適性を高めることができるようになっている。
【0022】
冷房運転時においても、必要に応じてプロペラファン7aの回転方向を切換えられるようになっている。急速に室内を冷房したい場合等において、プロペラファン7aを正回転方向に切換え、室内の空気を前面通気口2から吸込み熱交換器8を通過させて冷媒と熱交換した後、通風路6を介して下面通気口3から本体1の直下方向に吹出し、人の居る近傍に冷気を送出しても良い。
【実施例2】
【0023】
次に、第二実施例について説明する。第二実施例は、図3で示すように、本体1aの下面通気口3の近傍となる通風路6の垂直流路6bにも、熱交換器8と同様に構成された熱交換器9が配置されている。他の構成は実施例1と同様なので省略する。
【0024】
垂直流路6bに熱交換器9を設けることにより、特に暖房運転時においてプロペラファン7aを正回転方向に回転させた際、前面通気口2から吸込まれた室内の空気は水平流路6aに配置された熱交換器8を通過して冷媒と熱交換された後、垂直流路6bに配置された熱交換器9を通過して再度熱交換され、下面通気口3から吹出されるようになっており、暖房効果をより向上させることができるようになっている。
【符号の説明】
【0025】
1 本体
1a 本体
2 前面通気口
3 下面通気口
4 表示部
5 受信部
6 通風路
6a 水平流路
6b 垂直流路
7 送風機
7a プロペラファン
7b ファンモータ
8 熱交換器
8a フィン
8b 伝熱管
9 熱交換器
10 露受皿
10a 排出管
11 配管ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の前面に形成された前面通気口と、本体の下面に形成された下面通気口と、前記前面通気口と前記下面通気口とを繋ぐ通風路と、プロペラファンと同プロペラファンを駆動する正転及び逆転が可能なファンモータとからなり前記通風路内に設けられた送風機と、前記前面通気口と前記送風機との間に設けられた熱交換器とで構成され、前記通風路が前記前面通気口に連なる水平流路と前記下面通気口に連なる垂直流路とからなり、前記送風機が、前記水平流路と前記垂直流路とが重なる領域に傾斜して配置されてなることを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−229842(P2012−229842A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97714(P2011−97714)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】