説明

空気調和装置

【課題】室外熱交換器の着霜による暖房能力の低下を抑制し、且つ騒音の増大を抑制することができる空気調和装置を提供する。
【解決手段】空気調和装置1では、制御部4の判定部43が、室外温度Toと室外熱交換器温度Teとの差が増加したとき、室外熱交換器13への着霜が増加したと判定し、室外ファン23の回転数を下げる着霜時運転制御を実行する。このとき、室内熱交換器15の温度の低下量に応じて圧縮機11の運転周波数を上げる。制御部4には、圧縮機11の運転周波数が段階的に変更されるための段階ごとの変更量が予め設定されており、制御部4は、室内熱交換器15の温度が所定量低下するごとに、圧縮機11の運転周波数が現段階より1つ上の段階となるための変更量だけ上昇させ、その変更量に応じて室外ファン23の回転数を下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置の暖房運転において、除霜運転の開始前、室外熱交換器の着霜による暖房能力の低下を抑制する制御が実行される。例えば、特許文献1(特開昭62−69070号公報)では、通風抵抗の増加による室外ファンの回転数低下を防止するため、制御部はファンモータへの入力電圧を高めて室外ファンの回転数を一定に保持し、冷媒の蒸発温度の低下を抑えている。この制御によって、室外熱交換器への着霜増大が抑えられ、暖房能力の低下が防止されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されている制御技術を採用したとき、室外ファンは通風抵抗に対抗して一定の回転数を維持するので、着霜していないときに比べて騒音が増大するのは明らかであり、ユーザーに不快感を与える可能性がある。
【0004】
本発明の課題は、室外熱交換器の着霜による暖房能力の過度な低下を抑制し、且つ騒音の増大を抑制することができる空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明に係る空気調和装置は、暖房運転時に圧縮機、室内熱交換器、減圧器、室外熱交換器の順で冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用した空気調和装置であって、室外ファンと制御部とを備えている。室外ファンは、室外熱交換器に送風する。制御部は、暖房運転時に室外熱交換器への着霜が増加したか否かを判定する判定部を有し、圧縮機の運転周波数および室外ファンの回転数を制御する。さらに、制御部は、判定部が室外熱交換器への着霜が増加したと判定したとき、室外ファンの回転数を下げ、それと同時に、或いは、その後所定の能力低下があったときに、圧縮機の運転周波数を上げる着霜時運転制御を実行する。
【0006】
この空気調和装置では、暖房運転時、室外熱交換器への着霜に起因する騒音が生じ易い状態でも、室外ファンの回転数の低下によって室外ファンの騒音が低下するので、空気調和装置全体としての騒音の増大が抑制される。また、暖房能力の低下は、圧縮機の運転周波数を上げることによって抑制される。なお、圧縮機の運転周波数の増加によって圧縮機の騒音は増大するが、室外ファンの騒音が低下するので、空気調和装置全体としての騒音の増大が抑制される。
【0007】
第2発明に係る空気調和装置は、第1発明に係る空気調和装置であって、制御部は、着霜時運転制御を実行時、圧縮機の運転周波数の上昇量に応じて室外ファンの回転数を下げる。
【0008】
この空気調和装置では、圧縮機の運転周波数の上昇量に応じて騒音が増大するが、その増大分が解消される程度に室外ファンの回転数が低減されるので、空気調和装置全体の騒音がほぼ一定に維持される。
【0009】
第3発明に係る空気調和装置は、第1発明または第2発明に係る空気調和装置であって、室外温度を検出する第1温度センサと、室外熱交換器の温度を検出する第2温度センサとをさらに備えている。制御部は、第1温度センサの検出値と第2温度センサの検出値との差を監視し、その差が増加したとき室外熱交換器への着霜が増加したと判定する。
【0010】
この空気調和装置では、暖房運転時、室外熱交換器が着霜していない状態では、冷媒の蒸発温度と室外温度との差がほぼ一定であるので、室外温度と室外熱交換器との温度差が拡大してきたときは、着霜によって蒸発温度が低下していると推定される。したがって、室外温度と室外熱交換器との温度差を監視することで、室外熱交換器への着霜増大が容易に判定される。
【0011】
第4発明に係る空気調和装置は、第3発明に係る空気調和装置であって、室内熱交換器の温度を検出する第3温度センサをさらに備えている。制御部は、第3温度センサを介して室内熱交換器の温度を監視し、着霜時運転制御を実行時、室内熱交換器の温度の低下量に応じて圧縮機の運転周波数を上げる。
【0012】
この空気調和装置では、暖房運転時、暖房能力の低下が凝縮温度の低下となって表れるので、室内熱交換器の温度の低下量に応じて圧縮機の運転周波数を上げることによって、暖房能力の低下が抑制される。
【0013】
第5発明に係る空気調和装置は、第4発明に係る空気調和装置であって、制御部には、圧縮機の運転周波数が段階的に変更されるための段階ごとの変更量が予め設定されており、室内熱交換器の温度が所定量低下するごとに、圧縮機の運転周波数が現段階より1つ上の段階となるための変更量だけ上昇する。
【0014】
この空気調和装置では、通常運転で圧縮機の運転周波数は負荷に応じて段階的に増減されるように運転周波数が複数の段階に設定されており、着霜時運転制御時にその段階が適用されるように設計されるので、制御設計が容易になる。
【0015】
第6発明に係る空気調和装置は、第3発明に係る空気調和装置であって、圧力センサをさらに備えている。圧力センサは、圧縮機の吐出側に位置し高圧側圧力を検出する。制御部は、圧力センサを介して高圧側圧力を監視し、着霜時運転制御を実行時、高圧側圧力の低下量に応じて圧縮機の運転周波数を上げる。
【0016】
この空気調和装置では、暖房運転時、暖房能力の低下が高圧側圧力の低下となってあらわるので、高圧側圧力の低下量に応じて圧縮機の運転周波数を上げることによって、暖房能力の低下が抑制される。
【0017】
第7発明に係る空気調和装置は、第6発明に係る空気調和装置であって、制御部には、圧縮機の運転周波数が段階的に変更されるための段階ごとの変更量が予め設定されている。圧縮機の運転周波数は、高圧側圧力が所定量低下するごとに、現段階より1つ上の段階となるための変更量だけ上昇する。
【0018】
この空気調和装置では、通常運転で圧縮機の運転周波数は負荷に応じて段階的に増減されるように運転周波数が複数の段階に設定されており、着霜時運転制御時にその段階が適用されるように設計されるので、制御設計が容易になる。
【0019】
第8発明に係る空気調和装置は、第1発明から第7発明のいずれか1つに係る空気調和装置であって、制御部が、圧縮機起動後の経過時間を計時し、着霜時運転制御を実行中にその経過時間が所定時間に到達し、冷媒の蒸発温度が所定温度に達したとき、室外熱交換器の着霜を解消するための除霜運転制御を実行する。
【0020】
この空気調和装置では、着霜時運転制御が除霜運転開始直前まで実行されるので、ユーザーに暖房不足を感じさせ難い。
【発明の効果】
【0021】
第1発明に係る空気調和装置では、暖房運転時、室外熱交換器への着霜に起因する騒音が生じ易い状態でも、室外ファンの騒音が低下するので、空気調和装置全体としての騒音の増大が抑制される。また、着霜による暖房能力の低下が、圧縮機の運転周波数を上げることによって抑制される。
【0022】
第2発明に係る空気調和装置では、圧縮機の運転周波数の上昇量に応じて騒音が増大するが、その増大分が解消される程度に室外ファンの回転数が低減されるので、空気調和装置全体の騒音がほぼ一定に維持される。
【0023】
第3発明に係る空気調和装置では、室外温度と室外熱交換器との温度差を監視することで、室外熱交換器への着霜増大が容易に判定される。
【0024】
第4発明に係る空気調和装置では、暖房運転時、暖房能力の低下が凝縮温度の低下となって表れるので、室内熱交換器の温度の低下量に応じて圧縮機の運転周波数を上げることによって、暖房能力の低下が抑制される。
【0025】
第5発明に係る空気調和装置では、通常運転で圧縮機の運転周波数は負荷に応じて段階的に増減されるように運転周波数が複数の段階に設定されており、着霜時運転制御時にその段階が適用されるように設計されるので、制御設計が容易になる。
【0026】
第6発明に係る空気調和装置では、暖房運転時、暖房能力の低下が高圧側圧力の低下となってあらわるので、高圧側圧力の低下量に応じて圧縮機の運転周波数を上げることによって、暖房能力の低下が抑制される。
【0027】
第7発明に係る空気調和装置では、通常運転で圧縮機の運転周波数は負荷に応じて段階的に増減されるように運転周波数が複数の段階に設定されており、着霜時運転制御時にその段階が適用されるように設計されるので、制御設計が容易になる。
【0028】
第8発明に係る空気調和装置では、着霜時運転制御が除霜運転開始直前まで実行されるので、ユーザーに暖房不足を感じさせ難い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る空気調和装置の構成図。
【図2】着霜時に通常制御した場合の、室外ファン入力と、室外ファン回転数と、室外ファン送風音との関係を表したグラフ。
【図3】暖房運転制御開始から除霜運転制御までの動作フローチャート。
【図4】暖房運転開始後の経過時間と室内熱交換器温度と圧縮機の運転周波数との関係を示すグラフ。
【図5】本発明の第1変形例に係る空気調和装置の暖房運転制御開始から除霜運転制御までの動作フローチャート。
【図6】本発明の第2変形例に係る空気調和装置の暖房運転制御開始から除霜運転制御までの動作フローチャート。
【図7】第2実施形態に係る空気調和装置において、暖房運転開始後の経過時間と室内熱交換器温度と圧縮機の運転周波数との関係を示すグラフ。
【図8】第2実施形態の変形例に係る空気調和装置において、暖房運転開始後の経過時間と高圧側圧力と圧縮機の運転周波数との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0031】
〔第1実施形態〕
<空気調和装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る空気調和装置の構成図である。図1において、空気調和装置1は、室外ユニット2と室内ユニット3とを備えている。なお、室内ユニット3は複数台であってもよい。
【0032】
この空気調和装置1は、冷媒が充填された冷媒回路10を備えている。冷媒回路10は、室外ユニット2に収容された室外側回路と、室内ユニット3に収容された室内側回路とを備えている。室外側回路と室内側回路とは、ガス側連絡配管17a及び液側連絡配管17bによって接続されている。
【0033】
<室外ユニットの構成>
室外ユニット2における室外側回路には、圧縮機11、四路切換弁12、室外熱交換器13、及び膨張弁14が接続されている。室外側回路の一端には、液側連絡配管17bが接続される液側閉鎖弁19が設けられている。室外側回路の他端には、ガス側連絡配管17aが接続されるガス側閉鎖弁18が設けられている。
【0034】
圧縮機11の吐出側は、四路切換弁12の第1ポートP1に接続されている。圧縮機11の吸入側は、アキュムレータ20を挟んで四路切換弁12の第3ポートP3に接続されている。アキュムレータ20は、液冷媒とガス冷媒とを分離する。
【0035】
室外熱交換器13は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。この室外熱交換器13の近傍には、室外空気を送るための室外ファン23が設けられている。室外熱交換器13の一端側は、四路切換弁12の第4ポートP4に接続されている。室外熱交換器13の他端側は、減圧手段である膨張弁14に接続されている。
【0036】
膨張弁14は、開度可変の電子膨張弁であり、液側閉鎖弁19に接続されている。また、四路切換弁12の第2ポートP2はガス側閉鎖弁18に接続されている。
【0037】
四路切換弁12は、第1ポートP1と第4ポートP4が互いに連通して第2ポートP2と第3ポートP3が互いに連通する第1状態(図1の実線で示す状態)と、第1ポートP1と第2ポートP2が互いに連通して第3ポートP3と第4ポートP4が互いに連通する第2状態(図1の点線で示す状態)とが切り換え可能となっている。
【0038】
<室内ユニットの構成>
室内側回路には、室内熱交換器15が設けられている。室内熱交換器15は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。この室内熱交換器15の近傍には、室内熱交換器15に室内空気を送るための室内ファン33が設けられている。
【0039】
<各種センサ>
空気調和装置1には、サーミスタから成る室外温度センサ101、室外熱交換器温度センサ102、及び室内熱交換器温度センサ103が設けられている。室外温度センサ101は、室外ユニット2の周囲温度を検知する。室外熱交換器温度センサ102は、室外熱交換器13に取付けられ、室外熱交換器13の所定領域を流れる冷媒の温度を検知する。そして、これらの温度センサの測定値に基づき、制御部4が空気調和装置1を運転制御する。
【0040】
<空気調和装置の動作>
空気調和装置機1では、四路切換弁12によって、冷房運転および暖房運転のいずれか一方に切り換えることが可能である。
【0041】
(冷房運転)
冷房運転では、四路切換弁12が第1状態(図1の実線)に設定される。この状態で圧縮機11を運転すると、冷媒回路10では室外熱交換器13が凝縮器となり、室内熱交換器15が蒸発器となる蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
【0042】
圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、室外熱交換器13で室外空気と熱交換して凝縮する。室外熱交換器13を通過した冷媒は、膨張弁14を通過する際に減圧され、その後に室内熱交換器15で室内空気と熱交換して蒸発する。室内熱交換器15を通過した冷媒は、圧縮機11へ吸入されて圧縮される。
【0043】
(暖房運転)
暖房運転では、四路切換弁12が第2状態(図1の点線)に設定される。そして、この状態で圧縮機11を運転すると、冷媒回路10では、室外熱交換器13が蒸発器となり、室内熱交換器15が凝縮器となる蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。
【0044】
圧縮機11から吐出された高圧の冷媒は、室内熱交換器15で室内空気と熱交換して凝縮する。凝縮した冷媒は、膨張弁14を通過する際に減圧された後、室外熱交換器13で室外空気と熱交換して蒸発する。室外熱交換器13を通過した冷媒は、圧縮機11へ吸入されて圧縮される。
【0045】
<室外ファン>
室外ファン23は、モータ23aを有している。モータ23aは、高寿命のDCブラシレスモータであり、電源入力1サイクル中のオン時間比率(DUTY比)を制御(DUTY制御)することによって回転数を変更することができる。例えば、室外熱交換器13の着霜によって通風抵抗が増加すると、室外ファン23の回転数が低下するが、DUTY比を増加させていくと、室外ファン23のモータ23aへ供給される入力が増加するので、室外ファン23の回転数が増加する。
【0046】
通常制御では、室外ファン23の回転数を一定に保つために入力を増減しており、回転数の増減に対して、室外ファン入力を増減して一定回転数を維持しようとする。図2は、「着霜時に通常制御した場合の、室外ファン入力と、室外ファン回転数と、室外ファン送風音との関係」を表したグラフであり、横軸は暖房運転開始後の経過時間を示し、縦軸は下から順に、室外ファン入力、室外ファン回転数、室外ファン送風音を示す。暖房運転が開始されてから所定時間TDが過ぎるころには、室外熱交換器13の着霜が始まり、通風抵抗が増加し始める。通常制御ならば、通風抵抗で回転数が落ちないように、室外ファン入力を増加させて室外ファン23の回転数を一定に維持しようとする。このため、送風音が急激に増大する。
【0047】
<暖房運転制御開始から除霜運転制御開始までの動作フロー>
図3は、暖房運転制御開始から除霜運転制御までの動作フローチャートである。暖房運転が開始されると、制御部4は、ステップS1で暖房運転開始後の経過時間TDの計時を開始し、ステップS2へ進む。制御部4は、ステップS2で圧縮機11が目標回転数に達するまでの一定時間(TD0)待機した後、ステップS3に進み変数Xをaに設定する。変数Xは、室外温度Toと室外熱交換器温度Teとの差に所定量を加えた値が入力されるが、室外熱交換器13が着霜していないときは室外温度Toと室外熱交換器温度Teとの差は一定であるので、それより僅かに高い温度aが初期値として設定される。
【0048】
制御部4は、ステップS4で室外温度センサ101を介して室外温度Toを検出し、ステップS5へ進む。制御部4は、ステップS5で室外熱交換器温度センサ102を介して室外熱交換器温度Teを検出し、ステップS6へ進む。制御部4は、ステップS6で室外温度Toと室外熱交換器温度Teとの差がX以上になったか否かを判定する。
【0049】
制御部4は、ステップS6でyesと判定したときステップS7へ進み、noと判定したときはステップS4へ戻る。室外熱交換器13が着霜していないときは、X=aのままであるので、ステップS1〜ステップS6までの、いわゆる通常の暖房運転制御が継続される。
【0050】
制御部4は、ステップS7で変数XをステップS6で求めたTo−Teに所定量sを加えた値(To−Te+s)へ設定し、ステップS8へ進む。室外温度Toと室外熱交換器温度Teとの差がaを上回っているときは、冷媒の蒸発温度が下がっているので、室外熱交換器13への着霜が生じていると判断される。以後、制御部4は室外温度Toと室外熱交換器温度Teとの差が所定量sずつ低下するごとに変数Xを設定し直す。
【0051】
制御部4は、ステップS8で暖房運転開始後の経過時間TDが所定時間TD1に到達したか否かを判定し、yesと判定したときはステップS9へ進み、noと判定したときはステップS4に戻る。制御部4がTD>TD1を判定する理由は、一定の運転効率を確保するためである。なお、正味暖房運転時間と除霜運転時間との合計を総暖房運転時間としたとき、運転効率は、正味暖房運転時間と総暖房運転時間との比である。
【0052】
制御部4は、ステップS9で圧縮機11の運転周波数を所定量上昇させる。制御部4がステップS9を実行する目的は、運転効率を確保するための所定時間TD1が経過してから除霜運転制御に切り替えるまでの間、暖房能力の低下を抑えることである。制御部4には、圧縮機11の運転周波数が段階的に変更されるように、段階ごとの変更量が予め設定されており、制御部4が圧縮機11の運転周波数を上昇させるとき、運転周波数が現在の段階より1つ上の段階になるための変更量だけ上昇させる。
【0053】
制御部4は、ステップS10で室外ファン23の回転数を所定量降下させる。制御部4がステップS10を実行する目的は、圧縮機11の運転周波数が上昇することによって増大した騒音を、室外ファン23の回転音を低減することによって相殺することである。したがって、圧縮機11の運転周波数が増えて騒音が大きくなるが、室外ファン23の回転数が減って騒音が小さくなるので、空気調和装置1の騒音はほぼ一定に保たれる。
【0054】
制御部4は、ステップS11で外熱交換器温度Teが所定の算出値以下になったか否かを判定し、yesと判定したときはステップS12へ進み除霜運転制御を開始し、noと判定したときはステップS4に戻る。所定の算出値とは、室外温度Toに基づいて算出された値(αTo−β+γ)であり、単に室外温度Toが低いときに室外熱交換器13への着霜が生じるのではなく、湿度等の他の要因が考慮された算出値である。
【0055】
(圧縮機の運転周波数の上昇と室内熱交換器温度との関係)
図3のステップS4〜ステップS10に示すように、制御部4は室外温度Toと室外熱交換器温度Teとの差が所定量sを超えるごとに圧縮機11の運転周波数を上げ、室外ファン23の回転数を下げている。図4は、暖房運転開始後の経過時間と室内熱交換器温度と圧縮機の運転周波数との関係を示すグラフである。なお、図4には、室外ファン23の回転数の降下の様子を点線で示しているが、あくまでも概念を表示しており、図4右側の周波数数値とは一致していない。
【0056】
図4において、暖房運転開始後、所定時間TD1が経過したとき、室内熱交換器温度Tiの低下が既に始まっている。これは、室外熱交換器13への着霜量が増加し、冷媒の蒸発温度が低下しているからである。制御部4が圧縮機11の運転周波数を一段階上のレベルまで上げることによって、冷媒の凝縮温度が上昇するので室内熱交換器温度Tiの上昇として表れる。仮に、制御部4が圧縮機11の運転周波数を上げなければ、室内熱交換器温度Tiは図2の二点鎖線で示された勾配に沿って低下するので、暖房能力も低下する。
【0057】
制御部4は、圧縮機11の運転周波数の上昇による騒音の増大分を相殺するため、室外ファン23の回転数を一段階下のレベルまで下げる。このような動作が、除霜運転制御が開始されるまで繰り返される。なお、説明の便宜上、暖房運転開始後、所定時間TD1が経過してから除霜運転制御が開始されるまでの制御を着霜時運転制御とよぶ。
【0058】
<特徴>
(1)
空気調和装置1では、制御部4の判定部43は、室外温度Toと室外熱交換器温度Teとの差が増加したとき、室外熱交換器13への着霜が増加したと判定し、室内熱交換器15の温度の低下量に応じて圧縮機11の運転周波数を上げるとともに室外ファン23の回転数を下げる着霜時運転制御を実行する。制御部4には、圧縮機11の運転周波数が段階的に変更されるための段階ごとの変更量が予め設定されており、制御部4は、室内熱交換器15の温度が所定量低下するごとに、圧縮機11の運転周波数が現段階より1つ上の段階となるための変更量だけ上昇させ、その変更量に応じて室外ファン23の回転数を下げる。その結果、暖房運転時、室外熱交換器への着霜による暖房能力の低下が抑制される。また、圧縮機11の運転周波数の増加によって圧縮機11の騒音は増大するが、室外ファン23の回転数の低下によって室外ファン23の騒音が低下するので、空気調和装置1全体としての騒音の増大が抑制される。
【0059】
(2)
空気調和装置1では、制御部4が、圧縮機11起動後の経過時間TDを計時し、着霜時運転制御を実行中にその経過時間TDが所定時間TD1に到達し、冷媒の蒸発温度、即ち室外熱交換器温度Teが所定温度以下になったとき、室外熱交換器13の着霜を解消するための除霜運転制御を実行する。その結果、着霜時運転制御が除霜運転開始直前まで実行されるので、ユーザーに暖房不足を感じさせ難い。
【0060】
<第1変形例>
上記実施形態では、制御部4は、着霜時運転制御時、室外温度Toと室外熱交換器温度Teとの差を監視しながら、圧縮機11および室外ファン23を制御しているが、他の方法として、室内熱交換器温度Tiを監視しながら圧縮機11および室外ファン23を制御してもよい。
【0061】
図5は、本発明の第1変形例に係る空気調和装置の暖房運転制御開始から除霜運転制御までの動作フローチャートである。図5において、制御部4は、ステップS31で暖房運転開始後の経過時間TDの計時を開始し、ステップS32へ進む。制御部4は、ステップS32で圧縮機11が目標回転数に達するまでの一定時間(TD0)待機した後、ステップS33に進み変数Yをbに設定する。変数Yは、室内熱交換器温度Tiに所定量tを加えた値が入力されるが、室外熱交換器13が着霜していないときは室内熱交換器温度Ti一定であるので、初期値として冷媒の凝縮温度より僅かに低い温度bが設定される。
【0062】
制御部4は、ステップS34で室内熱交換器温度センサ103を介して室内熱交換器温度Tiを検出し、ステップS35へ進む。制御部4は、ステップS35で室内熱交換器温度TiがY以下になったか否かを判定する。
【0063】
制御部4は、ステップS35でyesと判定したときステップS36へ進み、noと判定したときはステップS34へ戻る。室外熱交換器13が着霜していないときは、Y=bのままであるので、ステップS31〜ステップS35までの、いわゆる通常の暖房運転制御が継続される。
【0064】
制御部4は、ステップS36で変数Yを室内熱交換器温度Tiに所定量tを加えた値(Ti+t)へ設定し、ステップS37へ進む。室内熱交換器温度Tiがb以下になったときは、室外熱交換器13への着霜が増大した影響で凝縮温度が低下していると判断される。以後、制御部4は室内熱交換器温度Tiが所定量t低下するごとに変数Yを設定し直す。
【0065】
制御部4は、ステップS37で暖房運転開始後の経過時間TDが所定時間TD1に到達したか否かを判定し、yesと判定したときはステップS38へ進み、noと判定したときはステップS34に戻る。
【0066】
制御部4は、ステップS38で圧縮機11の運転周波数を所定量上昇させ、ステップS39で室外ファン23の回転数を所定量降下させる。制御部4は、ステップS40で室外温度センサ101を介して室外温度Toを検出し、ステップS41で室外熱交換器温度センサ102を介して室外熱交換器温度Teを検出する。
【0067】
制御部4は、ステップS42で室外熱交換器温度Teが算出値(αTo−β+γ)以下になったか否かを判定し、yesと判定したときは除霜運転制御を開始し、noと判定したときはステップS34に戻る。
【0068】
以上のように、制御部4は、室内熱交換器温度Tiを監視しながら圧縮機11および室外ファン23を制御することができ、上記実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0069】
<第2変形例>
第1変形例では、制御部4は、室内熱交換器温度Tiを監視しながら、圧縮機11および室外ファン23を制御しているが、室内熱交換器温度Tiの代わりに高圧側圧力Phを監視しながら圧縮機11および室外ファン23を制御してもよい。
【0070】
図6は、本発明の第2変形例に係る空気調和装置の暖房運転制御開始から除霜運転制御までの動作フローチャートである。図6において、制御部4は、ステップS51で暖房運転開始後の経過時間TDの計時を開始し、ステップS52へ進む。制御部4は、ステップS52で圧縮機11が目標回転数に達するまでの一定時間(TD0)待機した後、ステップS53に進み変数Zをcに設定する。変数Zは、高圧側圧力Phに所定量pを加えた値が入力されるが、室外熱交換器13が着霜していないときは高圧側圧力Phは一定であるので、初期値として冷媒の凝縮圧力より僅かに低い圧力cが設定される。
【0071】
制御部4は、ステップS54で吐出側圧力センサ111を介して高圧側圧力Phを検出し、ステップS55へ進む。制御部4は、ステップS55で高圧側圧力PhがZ以下であるか否かを判定する。
【0072】
制御部4は、ステップS55でyesと判定したときステップS56へ進み、noと判定したときはステップS54へ戻る。室外熱交換器13が着霜していないときは、Z=cのままであるので、ステップS51〜ステップS55までの、いわゆる通常の暖房運転制御が継続される。
【0073】
制御部4は、ステップS56で変数Zを高圧側圧力Phに所定量pを加えた値(Ph+p)へ設定し、ステップS57へ進む。高圧側圧力Phがc以下になったときは、室外熱交換器13への着霜が増大した影響で凝縮圧力が低下していると判断される。以後、制御部4は高圧側圧力Phが所定量p低下するごとに変数Zを設定し直す。
【0074】
制御部4は、ステップS57で暖房運転開始後の経過時間TDが所定時間TD1に到達したか否かを判定し、yesと判定したときはステップS58へ進み、noと判定したときはステップS54に戻る。
【0075】
制御部4は、ステップS58で圧縮機11の運転周波数を所定量上昇させ、ステップS59で室外ファン23の回転数を所定量降下させる。制御部4は、ステップS60で室外温度センサ101を介して室外温度Toを検出し、ステップS61で室外熱交換器温度センサ102を介して室外熱交換器温度Teを検出する。
【0076】
制御部4は、ステップS62で室外熱交換器温度Teが算出値(αTo−β+γ)以下になったか否かを判定し、yesと判定したときは除霜運転制御を開始し、noと判定したときはステップS54に戻る。
【0077】
以上のように、制御部4は、高圧側圧力Phを監視しながら圧縮機11および室外ファン23を制御することができ、上記実施形態および第1変形例と同等の効果を奏することができる。
【0078】
〔第2実施形態〕
上記実施形態、第1変形例および第2変形例では、圧縮機11の運転周波数を上げてから、室外ファン23の回転数を下げているが、それに限定されることなく、室外ファン23の回転数を下げてから、圧縮機11の運転周波数を下げてもよい。つまり、室外ファン23の回転数を下げることによって騒音が低下し、その低下分だけ騒音に余裕代が生じる。その後、例えば、室外温度Toと室外熱交換器温度Teとの差、或は、室内熱交換器温度Ti、或は、高圧側圧力Phを監視しながら、騒音を上げても構わない余裕代だけ圧縮機11の運転周波数を上げる。このように制御することで、空気調和装置1全体として、騒音が一定に維持される。以下、図7,図8を参照しながら説明する。
【0079】
図7は、第2実施形態に係る空気調和装置において、暖房運転開始後の経過時間と室内熱交換器温度と圧縮機の運転周波数との関係を示すグラフである。図7において、室外熱交換器13への着霜が生じていると判断され、暖房運転開始後の経過時間TDが所定時間TD1に到達したとき、室外ファン23が所定の回転数まで下げられる。
【0080】
これによって、室外ファン23に起因する騒音が低下し、その低下分だけ騒音に余裕代が生じる。その後、室内熱交換器温度Tiを監視しながら、室内熱交換器温度TiがΔT低下したとき、騒音を上げても構わない余裕代の範囲内におさまるように圧縮機11の運転周波数を上げ、室内熱交換器温度Tiをほぼ一定の値に維持する。なお、ΔTiは3Kが好ましい。
【0081】
また、制御部4には、圧縮機11の運転周波数が段階的に変更されるように、段階ごとの変更量が予め設定されており、制御部4が圧縮機11の運転周波数を上昇させるとき、運転周波数が現在の段階より1つ上の段階になるための変更量だけ上昇させる。
【0082】
<変形例>
また、図8は、第2実施形態の変形例に係る空気調和装置において、暖房運転開始後の経過時間と高圧側圧力と圧縮機の運転周波数との関係を示すグラフである。図8において、室外熱交換器13への着霜が生じていると判断され、暖房運転開始後の経過時間TDが所定時間TD1に到達したとき、室外ファン23が所定の回転数まで下げられる。
【0083】
これによって室外ファン23に起因する騒音が低下し、その低下分だけ騒音に余裕代が生じる。その後、高圧側圧力Phを監視しながら、高圧側圧力PhがΔP低下したとき、騒音を上げても構わない余裕代の範囲内におさまるように、圧縮機11の運転周波数を上げ、高圧側圧力Phをほぼ一定の値に維持する。なお、ΔPは0.2MPaが好ましい。
【0084】
以上のように、第2実施形態、および第2実施形態の変形例では、空気調和装置1全体として、騒音が一定に維持されるだけでなく、暖房能力の過度な低下が抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明によれば、通常なら着霜によって暖房能力が低下する期間、着霜時運転制御によって暖房能力の低下が抑制されるので、蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用した空気調和装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 空気調和装置
4 制御部
11 圧縮機
13 室外熱交換器
14 膨張弁(減圧器)
15 室内熱交換器
23 室外ファン
43 判定部
101 室外温度センサ(第1温度センサ)
102 室外熱交換器温度センサ(第2温度センサ)
103 室内熱交換器温度センサ(第3温度センサ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開昭62−69070号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房運転時に圧縮機(11)、室内熱交換器(15)、減圧器(14)、室外熱交換器(13)の順で冷媒が循環する蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用した空気調和装置であって、
前記室外熱交換器(13)に送風する室外ファン(23)と、
前記暖房運転時に前記室外熱交換器(13)への着霜が増加したか否かを判定する判定部(43)を有し、前記圧縮機(11)の運転周波数および前記室外ファン(23)の回転数を制御する制御部(4)と、
を備え、
前記制御部(4)は、前記判定部(43)が前記室外熱交換器(13)への着霜が増加したと判定したとき、前記室外ファン(23)の回転数を下げ、それと同時に、或いは、その後所定の能力低下があったときに、前記圧縮機(11)の運転周波数を上げる着霜時運転制御を実行する、
空気調和装置(1)。
【請求項2】
前記制御部(4)は、前記着霜時運転制御を実行時、前記圧縮機(11)の運転周波数の上昇量に応じて前記室外ファン(23)の回転数を下げる、
請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項3】
室外温度を検出する第1温度センサ(101)と、
前記室外熱交換器(13)の温度を検出する第2温度センサ(102)と、
をさらに備え、
前記制御部(4)は、前記第1温度センサ(101)の検出値と前記第2温度センサ(102)の検出値との差を監視し、前記差が増加したとき前記室外熱交換器(13)への着霜が増加したと判定する、
請求項1又は請求項2に記載の空気調和装置(1)。
【請求項4】
前記室内熱交換器(15)の温度を検出する第3温度センサ(103)をさらに備え、
前記制御部(4)は、前記第3温度センサ(103)を介して前記室内熱交換器(15)の温度を監視し、前記着霜時運転制御を実行時、前記室内熱交換器(15)の温度の低下量に応じて前記圧縮機(11)の運転周波数を上げる、
請求項3に記載の空気調和装置(1)。
【請求項5】
前記制御部(4)には、前記圧縮機(11)の運転周波数が段階的に変更されるための段階ごとの変更量が予め設定されており、
前記室内熱交換器(15)の温度が所定量低下するごとに、前記圧縮機(11)の運転周波数が現段階より1つ上の段階となるための前記変更量だけ上昇する、
請求項4に記載の空気調和装置(1)。
【請求項6】
前記圧縮機(11)の吐出側に位置し高圧側圧力を検出する圧力センサ(111)をさらに備え、
前記制御部(4)は、前記圧力センサ(111)を介して前記高圧側圧力を監視し、前記着霜時運転制御を実行時、前記高圧側圧力の低下量に応じて前記圧縮機(11)の運転周波数を上げる、
請求項3に記載の空気調和装置(1)。
【請求項7】
前記制御部(4)には、前記圧縮機(11)の運転周波数が段階的に変更されるための段階ごとの変更量が予め設定されており、
前記高圧側圧力が所定量低下するごとに、前記圧縮機(11)の運転周波数が現段階より1つ上の段階となるための前記変更量だけ上昇する、
請求項6に記載の空気調和装置(1)。
【請求項8】
前記制御部(4)は、前記圧縮機(11)起動後の経過時間を計時し、前記着霜時運転制御を実行中に前記経過時間が所定時間に到達し、冷媒の蒸発温度が所定温度に達したとき、前記室外熱交換器(13)の着霜を解消するための除霜運転制御を実行する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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