説明

空気除菌装置

【課題】気液接触部材の全面に当該空気を略均等に当てて、当該気液接触部材上での空気と電解水との接触効率の向上を図った空気除菌装置を提供すること。
【解決手段】基体83に保持された気液接触部材53に隙間をあけて貫通孔85を有する風向板84を対向配置し、吸込グリル12から吸い込んだ空気を風向板84に向かって送り、貫通孔85を通じて隙間86に流入した空気を気液接触部材53上を流下する電解水と接触させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌、ウィルス、真菌等の空中浮遊微生物(以下、単に「ウィルス等」という)の除去が可能な空気除菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道水等を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成させ、この電解水を用いて空気中に浮遊するウィルス等の除去を図った空気除菌装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種の空気除菌装置では、非通風性の基体と、該基体に保持され、少なくとも表面が活性種に不活性な材料にて構成された気液接触部材とを備え、この気液接触部材の上部から下部に向けて電解水を流下させると共に、気液接触部材の下部から上部に向けて通風することで、気液接触部材上で空気中のウィルス等を電解水に接触せしめ、ウィルス等を不活化することにより、空気を除菌しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−189729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成では、基体に保持された気液接触部材に供給された空気は、空気循環用送風機(通風手段)の位置によっては、気液接触部材の接触面に偏って当たる状況にあり、気液接触部材の全面を効果的に使用できていないといった問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、気液接触部材の全面に当該空気を略均等に当てて、当該気液接触部材上での空気と電解水との接触効率の向上を図った空気除菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、筐体内に配置され、水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成する電解水生成手段と、前記筐体内に非通風性の基体に保持されて配置されるとともに、前記活性酸素種に対して反応性の少ない素材で形成された気液接触部材と、該気液接触部材の上方に前記電解水を供給する電解水供給手段と、前記気液接触部材に空気を送風する送風ファンと、前記筐体の下方に設けられた吸込口と、前記吸込口より上方に設けられた吹出口とを備え、前記基体に保持された前記気液接触部材に隙間をあけて開口部を有する風向部材を対向配置し、前記吸込口から吸い込んだ空気を、前記風向部材に向かって送り、前記開口部を通じて前記隙間に流入した空気を前記気液接触部材上を流下する電解水と接触させたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成する電解水生成手段と、非通風性の基体に保持されるとともに前記電解水が供給される気液接触部材と、この気液接触部材に空気を送風する送風ファンとを備え、前記基体に保持された前記気液接触部材に隙間をあけ開口部を有する風向部材を対向配置し、前記送風ファンから吹き出された空気を、前記風向部材に向かって送り、前記開口部を通じて前記隙間に流入した空気を前記気液接触部材上で電解水と接触させたことを特徴とする。
【0007】
これらの発明において、前記風向部材に形成された開口部は、空気上流側から下流側に向けて開口面積を徐々に小さく形成しても良い。
【0008】
また、前記気液接触部材及び前記風向部材は略平行に傾斜して設けられ、前記基体に保持された前記気液接触部材の上部から下部に向けて前記電解水を流下させるとともに、前記送風ファンは前記隙間を前記気液接触部材の下部から上部に向けて送風する構成としても良い。
【0009】
また、前記気液接触部材から流下する水を受けるドレンパンを備え、該ドレンパンにて回収された水を前記電解水生成手段にて電気分解し、再度前記気液接触部材に供給しても良い。また、前記気液接触部材は、ガラス、セラミック、ステンレス、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせにより構成されていても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基体に保持された気液接触部材に隙間をあけて開口部を有する風向部材を対向配置し、吸込口から吸い込んだ空気を風向部材に向かって送り、開口部を通じて隙間に流入した空気を気液接触部材上を流下する電解水と接触させたため、気液接触部材の全面に当該空気を略均等に当てることができ、当該気液接触部材上での空気と電解水との接触効率が向上し、除菌性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る空気除菌装置の外観斜視図である。
【図2】空気除菌装置の内部構成を示す斜視図である。
【図3】空気除菌装置の内部構成を示す右側断面視図である。
【図4】気液接触部材に電解水を循環供給する構成を示す模式図である。
【図5】空気除菌装置の風速分布を示す図である。
【図6】風向板を設けない状態での風速分布を示す図である。
【図7】風向板を設けた装置と、風向板を設けていない装置との除菌効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施の形態に係る空気除菌装置1の外観斜視図であり、図2は、空気除菌装置1の内部構成を示す斜視図であり、図3は、空気除菌装置1の内部構成を示す右側断面視図である。
この空気除菌装置1は、水を電気分解して所定の活性酸素種を含む電解水を生成し、空気除菌装置1内に吸い込んだ室内の空気をこの電解水を用いて除菌して、除菌後の清浄な空気を室内に送風する装置である。
空気除菌装置1は、図1に示すように、縦長に形成された箱形の筐体11を有し、例えば床置き設置される。筐体11には、この筐体11の両側面の下部に吸込グリル(吸込口)12が形成されるとともに、この筐体11の前面の下端部に吸込口15が形成されている。
また、筐体11の上面には吹出口13が形成され、この吹出口13には空気を吹き出す方向を変化させるためのオートルーバー20が設けられている。このオートルーバー20は、運転停止時に上記吹出口13を閉塞するように構成されている。
【0013】
筐体11の上面には、吹出口13の前面側に配置された操作蓋16Aと、この操作蓋16Aに横並びに配置されたタンク用開閉蓋14Aとが形成されている。操作蓋16Aを開くと、図2に示すように、空気除菌装置1の各種操作を行う操作パネル16が露出し、タンク用開閉蓋14Aを開くと、タンク取出口14を介して後述する給水タンク41を出し入れ可能となっている。また、筐体11の両側面の上部にはそれぞれ把持部17が形成されている。これら把持部17は筐体11を手持ちする際に手を掛けるための凹部であり、運搬時に空気除菌装置1を一人で持ち上げて移動できるようになっている。
また、筐体11の前面には、図1に示すように、上下方向に並べられた上側カバー部材18及び下側カバー部材19がそれぞれ着脱自在に配置されており、これら上側カバー部材18及び下側カバー部材19を取り外すと空気除菌装置1の内部構成が露出する。下側カバー部材19は、この下側カバー部材19の下端部に、筐体11の背面側に向けて湾曲した円弧部19Aを備え、この円弧部19Aに上記吸込口15が形成されている。
【0014】
次に、空気除菌装置1の内部構成を説明する。
筐体11には、図2及び図3に示すように、この筐体11の内部を上下に仕切る支持板21が設けられ、上側の室22と下側の室23とに区分けされている。この下側の室23には、送風ファン31及びファンモータ32が配置されるとともに、仕切板24を介して、把手部57Aを有する排水タンク57が筐体11の前面側に引き出し可能に収容されている。これら送風ファン31及びファンモータ32と排水タンク57とは横並びに配置されている。
また、送風ファン31と吸込口15との間、すなわち、下側の室23における下側カバー部材19(図1)と対向する位置にプレフィルタ34が着脱自在に配置されている。このプレフィルタ34は、吸込グリル12及び吸込口15を通じて吸い込まれた空気中の塵埃など粒径の大きなものを捕集する粗塵フィルタ25と、この粗塵フィルタ25を通過する、例えば粒径10(μm)以上の物(例えば花粉)を捕集する中性能フィルタ26とを備えて構成される。このプレフィルタ34によって、吸込グリル12及び吸込口15から吸い込まれた空気中に浮遊する花粉や塵埃などが除去され、この除去された空気が送風ファン31を介して上側の室22に供給される。
【0015】
上側の室22には、送風ファン31及びファンモータ32の上方における支持板21の上に電装ボックス39が配置され、この電装ボックス39には、空気除菌装置1を制御する制御部を構成する各種デバイスが実装された制御基板や、ファンモータ32に電源電圧を供給する電源回路等の各種電装部品が収容されている。
電装ボックス39の上方には、送風ファン31により供給された空気を電解水に接触させて当該空気を除菌する気液接触部材53が配置されている。気液接触部材53の下方には、気液接触部材53から流下した電解水を受ける水受け部42Aを備えた水受皿(ドレンパン)42が配置されている。水受皿42は、深底に形成された貯留部42Bを備えており、貯留部42Bは、多量の電解水を貯留できる。この貯留部42Bには、水受け部42Aに滴下した電解水が流入するように構成され、電解水が貯留部42Bに貯留される。また、貯留部42Bは上記排水タンク57の上方に延在している。
さらに、貯留部42Bの上には給水タンク41が配設され、給水タンク41から貯留部42Bに水を供給可能な構成となっている。
【0016】
次に、空気除菌装置1における空気の流れを説明する。
上述のように、筐体11の下側の室23には送風ファン31が設けられている。送風ファン31の送風口31Aは、図3に示すように、筐体11の背面側部分において上向きに設けられ、上側の室22の背面側において上下に延びる風路としての空間1Aに連通する。空間1Aは、筐体11の背面側に配置される導風部材81と、この導風部材81に対向配置され、支持板21から水受皿42まで延在する導風板82とにより形成されている。送風ファン31の送風口31Aから吹き出された空気は、図3中に矢印Xで示すように空間1Aを通り、気液接触部材53に吹き付けられる。
【0017】
気液接触部材53は、後述する活性酸素種に不活性な材料、例えば、繊維状に形成されたグラスウールにより構成されている。本実施形態では、気液接触部材53における保水性を確保すべく、毛管現象で水が浸潤しやすい繊維状に形成されたグラスウール(石英ウール)を用いているが、これに限定されるものではなく、当該気液接触部材53の表面積をより広く確保することができる形状、例えば、ガラス表面に凹凸が形成されたフロストガラス(くもりガラス)や、ガラス表面にシリカゲル粉末やグラスウールを担持、もしくは、焼結させたものを使用してもよい。また、気液接触部材53の材料として、次亜塩素酸、オゾン、過酸化水素などの活性酸素種が当該気液接触部材53により破壊・不活性化しない、もしくは、しにくい材料、例えば、セラミック、ステンレス、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂などの固形物、粉状物、もしくは、繊維状物などにより構成してもよい。なお、用いる気液接触部材53は、上述した如き活性種に不活性な材料のうちのいずれかに限定されず、これらの組み合わせであってもよい。
気液接触部材53は、筐体11の前面側に配置された基体83に保持されている。この基体83は、空気を通過させない非通風性を備え、気液接触部材53と同様に活性酸素種に不活性な材料、例えば、ガラスによって形成された板状部材である。基体83の背面83A側には、引っ掛けたり、また挟んだりすることで固定できる固定手段により、気液接触部材53が保持され、水平方向に対して所定の傾斜角度θを設けて水受皿42の水受け皿42A上に配置されている。なお、当該傾斜角度θは、気液接触部材53における電解水と供給空気との適切な接触時間を確保し、且つ、空気除菌装置1における処理後の空気の吹出口13に至る経路を確保すべく、30°以上の鋭角であることが望ましい。本実施形態では、65°の傾斜角度となるように設けられている。
【0018】
一方、気液接触部材53の背面側には、この気液接触部材53と隙間86をあけて風向板(風向部材)84が配置されている。この風向板84は、気液接触部材53と略同等の大きさを有し、当該気液接触部材53を保持する基体83と略平行に設けられている。
風向板84には、上記した空間1Aに供給された空気を気液接触部材53に導くための貫通孔(開口部)85が形成されている。この貫通孔85は、高さ位置によって大きさが変更されており、本実施形態では、空気上流側である風向板84の下部から空気下流側である風向板84の上部に向けて徐々に開口面積が小さくなるように形成されている。具体的には、風向板84には、上下に7段の貫通孔列が設けられており、ある段の貫通孔の開口面積は、一段下の貫通孔の開口面積の約70〜80%に設定されている。また、風向板84に対する全貫通孔85の開口面積は、40〜50%が望ましく、本実施形態では、45%に設定されている。上述した範囲よりも小さく設定すると、圧力損失が増加して送風量が低下し、この範囲よりも大きく設定すると、気液接触部材53に供給される空気が偏ってしまう問題がある。
そして、風向板84の貫通孔85を通じて隙間86に流入した空気は、気液接触部材53の表面に沿って上方に導かれて吹出口13の下方に配設された吹出口フィルタ36を通って排気される。
【0019】
次に、気液接触部材に電解水を循環供給する構成について説明する。
図2に示すように、水受皿42の貯留部42Bの前面側には、給水タンク41が配設され、この給水タンク41に予め蓄えられた水が貯留部42Bに供給される。なお、給水タンク41は、塩化物イオンを含む水道水を供給するタンクであり、市水などから給水弁を介して給水可能としてもよい。
【0020】
また、貯留部42Bの背面側には、図4に示すように、吸水口44Aが貯留部42B内に延出される循環ポンプ44が配置されており、この循環ポンプ44には電解水生成手段としての電解槽46が接続されている。そして、この電解槽46には電解水供給管(電解水供給手段)71が接続されている。この電解水供給管71は、気液接触部材53の上縁部に沿って配置されるとともに多数の散水孔を備える散水部71Aが形成され、気液接触部材53の上部より電解水を散水する。
【0021】
電解槽46は、図示しない複数対の電極を備え、これら電極が通電されると、電解槽46内に流入した水道水が電気分解され、活性酸素種が生成される。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を有する酸素分子と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシラジカル、あるいは、過酸化水素といった狭義の活性酸素に、オゾン、次亜ハロゲン酸等といった広義の活性酸素を含むものとする。電解槽46は、気液接触部材53の近傍に配置され、水道水を電気分解して生成された活性酸素種を迅速に気液接触部材53に供給できる構成とされる。
【0022】
電極は、電解により容易に次亜塩素酸を生成可能とする金属材料、例えば、白金とイリジウムの焼成電極をアノード、及びカソードとして用いる。これらの電極にて所定の電流値で、所定の時間毎に転極を行いつつ、電解処理を行う。なお、用いられる被電解水(水道水など)は、例えば約10ppm以上の塩化物イオンが含有されている。
【0023】
これにより、アノードでは、塩化物イオンが電子を放出し、水と反応することで次亜塩素酸を生成する。また、電解に用いられる水には、塩化物イオンが存在するため、電位が上昇し、被電解水中の水酸化物イオンは酸素又はオゾン等の活性酸素を生成する。
【0024】
次に、空気除菌装置1の動作について説明する。
空気除菌装置1の運転を開始すると、循環ポンプ44が駆動され、水受皿42の貯留部42Bに溜まった水道水が、電解槽46に供給される。この電解槽46では、上記電極への通電により、水道水が電気分解されて活性酸素種(例えば、次亜塩素酸)を含む電解水が生成される。この電解水は、電解水供給管71の散水部71Aを経て、気液接触部材53の上縁部に散水される。
【0025】
気液接触部材53の上縁部に散水された電解水は、当該気液接触部材53が上述したように、所定の角度にて傾斜して設けられているため、気液接触部材53の下部に向けて流下する。そして、気液接触部材53から滴下した水は、水受皿42の水受け部42Aに受容され、この水受け部42Aを経て貯留部42Bに流入し、再度循環ポンプ44によって電解槽46に供給される。このように、本構成では、水が循環式となっており、蒸発等により水量が減少した場合、給水タンク41内の水道水が水受皿42の貯留部42Bに適宜供給される。
【0026】
電解水が上部から下部に向けて流下される気液接触部材53には、送風ファン31により筐体11内に吸い込まれた空気が供給される。この場合、送風ファン31により吹き出された空気は、風向板84の貫通孔85を通じて気液接触部材53と風向板84との隙間86に流入する。気液接触部材53が非通風性の基体83に設けられているため、上記隙間86に流入した空気は、気液接触部材53上の電解水に衝突し、その後、吹出口13より筐体11外に吹き出される。
【0027】
本構成では、気液接触部材53を所定の角度にて傾斜して設けているため、上部から下部へと流下される電解水の滞留時間を確保することができ、さらに気液接触部材53には、繊維状のグラスウールにより形成されて基体83に保持されているため、当該気液接触部材53の毛細管現象によっても所定量の電解水を保持しつつ、順次新たな電解水を流通させることができる。従って、気液接触部材53に衝突する空気が充分な量の当該電解水に接触し、効果的に処理することができる。
【0028】
次に、風向板の有無による風速分布の違いについて説明する。
図5は、本構成にかかる空気除菌装置の風速分布を示す図であり、図6は、風向板を設けない状態での風速分布を示す図である。これらの図において、風速が早い領域は濃色で表され、風速が遅い領域は淡色で表されている。
風向板84を設けない場合には、図6に示すように、気液接触部材53の表面付近の領域での風速が遅く、気液接触部材53から離れた領域での風速が早くなる傾向にある。このため、風向板84を設けない構成では、筐体11内に吸い込まれた空気の一部が気液接触部材53にて電解水と接触することなく、吹出口13から吹き出されている。従って、気液接触部材53における電解水と空気との接触効率が十分ではないといった問題があった。
これに対して、気液接触部材53に隙間86をあけて風向板84を設けた構成では、図5に示すように、各貫通孔85を通じて隙間86に流入する際に風速が早くなっており、気液接触部材53の表面に沿って当該隙間86を流れる風速を高めることができる。特に、貫通孔85の開口面積を空気下流から空気上流に向けて徐々に小さく形成することで、気液接触部材53に略均等に空気を当てることができる。このため、本構成では、気液接触部材53における電解水と空気との接触効率を高めることができ、より効果的に空気中のウィルスの不活化を実現することができる。
【0029】
図7は、風向板84を設けた装置と、風向板84を設けていない装置との除菌効果を示す図である。
係る実験では、風向板84以外の構成は同じとし、実験室内に、10(CFU/100L_air)の黄色ブドウ球菌を含む菌ミストを供給して、空気除菌装置を同条件で運転した。その後、実験室内の空気を定期的に捕集し、これに含まれる黄色ブドウ球菌数を測定した。
これによると、風向板84を設けていない装置では、黄色ブドウ球菌を略0(CFU/100L_air)とする、すなわち、被処理空気に含まれる黄色ブドウ球菌を検出限界以下まで殺滅処理するまでにかかる時間が45分であったのに対し、風向板84を設けた装置では、30分で被処理空気に含まれる黄色ブドウ球菌を殺滅処理することができ、処理時間を大幅に短縮することができた。
このように、基体83に保持された気液接触部材53に隙間をあけて貫通孔85を有する風向板84を対向配置し、吸込グリル12から吸い込んだ空気を風向板84に向かって送り、貫通孔85を通じて隙間86に流入した空気を気液接触部材53上を流下する電解水と接触させたため、気液接触部材53の全面に当該空気を略均等に当てることができ、当該気液接触部材53上での空気と電解水との接触効率が向上する。
従って、気液接触部材53にて空気と電解水とを効率良く接触させることにより、空気中に浮遊するウィルス等の不活化が促進されるとともに、当該空気に含まれる臭気物質が次亜塩素酸と反応して分解され、或いはイオン化して溶解する。従って、空気の除菌及び脱臭が効率良くなされ、清浄化された空気が吹出口13から排出される。
【0030】
活性酸素種によるウィルス等の不活化の作用機序として、インフルエンザウィルスの例を挙げる。上述した活性酸素種は、インフルエンザの感染に必須とされるインフルエンザウィルスの表面蛋白(スパイク)を破壊、消失(除去)する作用を有する。この表面蛋白が破壊された場合、インフルエンザウィルスと、インフルエンザウィルスが感染するのに必要な受容体(レセプタ)とが結合しなくなり、感染が阻止される。このため、空気中に浮遊するインフルエンザウィルスは、気液接触部材53において活性酸素種を含む電解水に接触することにより、いわば感染力を失うこととなり、感染が阻止される。
【0031】
従って、この空気除菌装置1が、例えば幼稚園や小・中・高等学校、介護保険施設、病院等のいわゆる大空間に設置された場合であっても、電解水により清浄化(除菌、脱臭等)された空気を大空間内で広く行き渡らせることが可能になり、大空間での空気除菌及び脱臭を効率よく行うことができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、風向板に形成された貫通孔85は、空気上流側から下流側に向けて開口面積を徐々に小さく形成しているため、これら貫通孔85を通じて気液接触部材53に当たる風速を略均等にすることができ、当該気液接触部材53での空気と電解水との接触効率を向上させることができ、効率良く空気中に浮遊するウィルスを不活化することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、気液接触部材53及び風向板84は略平行に傾斜して設けられているため、気液接触部材53を流下する電解水の滞留時間を確保することができるとともに、これら気液接触部材53と風向板84との隙間86を流れる空気の風速を略一定に保つことができ、気液接触部材53での空気と電解水との接触効率を向上させることができる。更に、気液接触部材53の上部から下部に向けて電解水を流下させるとともに、送風ファン31は隙間86を気液接触部材53の下部から上部に向けて送風するため、気液接触部材53の上部から下部に向けて流下される電解水と、気液接触部材53の下部から上部に向けて通風される空気とを対向流とすることができ、これらの接触時間、即ち、気液接触部材53に供給される空気の電解水による処理時間を長く維持することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態によれば、気液接触部材53から流下する水を受ける水受皿42を備え、該水受皿42にて回収された水を電解槽46にて電気分解し、再度、気液接触部材53に供給するため、電解水を再利用することが可能となり、被処理空気の処理に用いた電解水を廃棄する必要がなくなる。これにより、メンテナンス作業性を向上させることができる。また、電解水は、再度電解処理されるため、常に清浄な状態を維持することができ、継続的な被処理空気の効果的な清浄処理を実現できるとともに、電気分解を繰り返し行うことで、少ない電力で所定の濃度の活性酸素種を含む電解水を生成することができる。
【0035】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、上記実施形態は具体的な適用例を示したもので、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、風向板84に形成した貫通孔85は丸孔となっているが、空気上流側から下流側に向けて開口面積を徐々に小さくするものであれば、角孔であってもスリット状の開口であっても良い。
また、本実施形態では、気液接触部材53を保持する基体83を板状部材として形成し、この基体83を水受皿42上に配置しているが、この基体と水受皿とを一体に形成しても良いことは勿論である。
【0036】
また、本実施形態では、活性酸素種として次亜塩素酸を用いる構成を説明したが、例えば、活性酸素種としてオゾン(O)や過酸化水素(H)を発生させる構成としても良い。この構成では、市水のように塩化物イオンが少ない水からでも活性酸素種を含んだ電解水を生成することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 空気除菌装置
1A 空間
11 筐体
12 吸込グリル(吸込口)
13 吹出口
15 吸込口
31 送風ファン
42 水受皿(ドレンパン)
44 循環ポンプ
46 電解槽(電解水生成手段)
53 気液接触部材
71 電解水供給管(電解水供給手段)
71A 散水部
83 基体
84 風向板(風向部材)
85 貫通孔(開口部)
86 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置され、水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成する電解水生成手段と、前記筐体内に非通風性の基体に保持されて配置されるとともに、前記活性酸素種に対して反応性の少ない素材で形成された気液接触部材と、該気液接触部材の上方に前記電解水を供給する電解水供給手段と、前記気液接触部材に空気を送風する送風ファンと、前記筐体の下方に設けられた吸込口と、前記吸込口より上方に設けられた吹出口とを備え、前記基体に保持された前記気液接触部材に隙間をあけて開口部を有する風向部材を対向配置し、前記吸込口から吸い込んだ空気を、前記風向部材に向かって送り、前記開口部を通じて前記隙間に流入した空気を前記気液接触部材上を流下する電解水と接触させたことを特徴とする空気除菌装置。
【請求項2】
水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成する電解水生成手段と、非通風性の基体に保持されるとともに前記電解水が供給される気液接触部材と、この気液接触部材に空気を送風する送風ファンとを備え、前記基体に保持された前記気液接触部材に隙間をあけ開口部を有する風向部材を対向配置し、前記送風ファンから吹き出された空気を、前記風向部材に向かって送り、前記開口部を通じて前記隙間に流入した空気を前記気液接触部材上で電解水と接触させたことを特徴とする空気除菌装置。
【請求項3】
前記風向部材に形成された開口部は、空気上流側から下流側に向けて開口面積を徐々に小さく形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の空気除菌装置。
【請求項4】
前記気液接触部材及び前記風向部材は略平行に傾斜して設けられ、前記基体に保持された前記気液接触部材の上部から下部に向けて前記電解水を流下させるとともに、前記送風ファンは前記隙間を前記気液接触部材の下部から上部に向けて送風することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空気除菌装置。
【請求項5】
前記気液接触部材から流下する水を受けるドレンパンを備え、該ドレンパンにて回収された水を前記電解水生成手段にて電気分解し、再度前記気液接触部材に供給することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空気除菌装置。
【請求項6】
前記気液接触部材は、ガラス、セラミック、ステンレス、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせにより構成されることを特徴とする請求項1または5のいずれかに記載の空気除菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−10829(P2012−10829A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148565(P2010−148565)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】