説明

空調用室内機

【課題】被空調室内の状況に応じてドレンパンの左右方向の傾きを簡単な作業により変更できて、左右いずれかの側面から排水管接続ができる空調用室内機が望まれている。
【解決手段】この空調用室内機は、内部に通風路が形成された本体ケーシング30と、本体ケーシング30の通風路内に配備されて空気との間で熱交換を行なう熱交換器10と、通風路内で熱交換器10の下方位置に配備されて熱交換器10からのドレン水を収受するドレンパン1と、を有して成る空調用室内機において、ドレンパン1の左右端部にそれぞれ形成されたドレン排出口部と、ドレンパン1を左右方向に傾斜自在に支持するビス15と、ビス15により左右いずれかの方向に傾いて支持されたドレンパン1をその傾斜状態に固定する固定手段と、を備えているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被空調室内に設置されて冷暖房を行う空調用室内機に係り、搭載している熱交換器等で生じた水を収受して機外へ排水するためのドレンパンを備えた空調用室内機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空調用室内機は、例えば下記の特許文献1に記載されたものが知られている。この文献記載の空調用室内機は、内部に通風路が形成された本体ケーシングと、本体ケーシングの通風路内に配備されて空気との間で熱交換を行なう熱交換器と、通風路内で熱交換器の下方位置に配備されて熱交換器からのドレン水を収受するドレンパンとを有している。このような空調用室内機においては、本体ケーシング内で生じたドレン水を外部に排水するために、ドレンパンに勾配をつけて水の流れを確保するようになっている。また、ドレンパンに接続される接続配管は、被空調室内に設置された本体ケーシングの左右側面から取り出されるのが一般的となっている。
【0003】
現状において、空調用室内機のドレンパンを左右に傾けて勾配をつける手順としては、(1)ドレンパンの上方に位置していて本体ケーシング背面の空気吸込み口を覆っている吸込みガードを取り外す。(2)ドレンパンを本体ケーシングに固定している左右のネジのうち、下向きに傾斜させる側のネジを取り外す。(3)ネジを外した側にドレンパンを下向きに約10mm押し下げる。(4)10mm下にも固定用下穴が設けられているので、その固定用下穴に、外したネジを再度取り付ける。(5)空気吸込み口に吸込みガードを再度取り付ける。
といった、5つの作業(1)〜(5)により行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−117105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の空調用室内機は、(1)〜(5)の作業を実施する必要があるため、作業性が悪いという問題点があった。また、勾配をつけ忘れた場合はドレンパンが水平となるため、排水不良のおそれや、ドレンパン内の溜水部にスライムが発生するおそれがあった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、被空調室内の状況に応じてドレンパンの左右方向の傾きを簡単な作業により変更できて、左右いずれかの側面から排水管接続ができる空調用室内機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明に係る空調用室内機は、内部に通風路が形成された本体ケーシングと、本体ケーシングの通風路内に配備されて空気との間で熱交換を行なう熱交換器と、通風路内で熱交換器の下方位置に配備されて熱交換器からのドレン水を収受するドレンパンと、を有して成る空調用室内機において、ドレンパンの左右端部にそれぞれ形成されたドレン排出口部と、ドレンパンを左右方向に傾斜自在に支持する支持手段と、支持手段により左右いずれかの方向に傾いて支持されたドレンパンをその傾斜状態に固定する固定手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の空調用室内機は、ドレンパンの左右端部のドレン排出口部と、ドレンパンを左右方向に傾斜自在に支持する支持手段を備えているので、支持手段によりドレンパンをシーソーの様に左右いずれかの方向へ傾けることができる。そして、左右いずれかの方向に傾いて支持されたドレンパンを、固定手段がその傾斜状態に固定する。従って、排水配管接続の作業性が大幅に改善される。また、ドレンパンを必ず左右に傾けるようにしたことで、ドレンパンが水平となることを防止でき、排水不良や溜水部へのスライム発生を抑止できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態における空調用室内機であってフロント下パネルを取り外した状態の正面図である。
【図2】図1の空調用室内機における左側面図である。
【図3】図1の空調用室内機における右側面図である。
【図4】図1の空調用室内機における正面側斜視図である。
【図5】図1の空調用室内機における背面側斜視図である。
【図6】この発明の実施の形態における空調用室内機に用いるドレンパンの斜視図である。
【図7】前記ドレンパンに用いるドレンキャップの拡大斜視図である。
【図8】図1におけるA−A線矢視断面図である。
【図9】前記空調用室内機のドレンパンに左下がり勾配がつけられている状態を示す部分拡大正面図である。
【図10】ドレンパン左下がり状態で右サイドパネルにアタッチメントパネルを取り付ける態様を示す部分拡大斜視図である。
【図11】図2の空調用室内機における円B内を示す部分拡大図である。
【図12】図3の空調用室内機における円C内を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1〜図8は本発明の実施形態における空調用室内機の全体構成または各部構成を示したものである。
各図において、この実施形態に係る空調用室内機は、例えば直方箱状に形成された本体ケーシング30を備えている。この本体ケーシング30は、左サイドパネル2と、右サイドパネル3と、左サイドパネル2および右サイドパネル3のそれぞれの後部に連結される後ろ下パネル12、後ろ中パネル13および後ろ上パネル14と、左サイドパネル2、右サイドパネル3および後ろ上パネル14のそれぞれの上部に支持される天パネル11と、フロント上パネル9と、フロント上パネル9の下方に配置されるフロント下パネル(図示省略)と、底台枠5とから構成されている。これらの、左サイドパネル2、右サイドパネル3、後ろ下パネル12、後ろ中パネル13、後ろ上パネル14、フロント上パネル9、フロント下パネル(図示省略)、天パネル11、および底台枠5は、それぞれの間に例えば支柱材や横枠材を適宜介在させてビスなどで固定されている。
【0011】
本体ケーシング30内は、ケーシング背面下部の空気吸込み口6と天パネル11の空気吹出し口31とを連通する通風路になっている。この通風路内には、汎用の空調用冷媒回路(図示省略)の一構成部品である熱交換器10が、前側を高くした傾斜配置で設置されている。この熱交換器10を境に、本体ケーシング30内の通風路が空気入側の1次側空間と空気出側の2次側空間とに区画されている。本体ケーシング30の通風路内の上部、例えば天パネル11の下面に、シロッコファンなどの送風機およびモータ(いずれも図示省略)が配備されている。前記した送風機は、室内空気を空気吸込み口6から吸い込んで熱交換器10を通過させ、熱交換器10で空気調和された空気を空気吹出し口31から室内に吹き出すようになっている。そして、本体ケーシング30の通風路内で熱交換器10の下方位置には、熱交換器10の表面で結露して滴下したドレン水を収受するドレンパン1が配備されている。このドレンパン1は、平面視で略長方形状の底面部1Cと、底面部1Cの周囲四辺に立設された前面壁1D、左側面壁1A、右側面壁1B、および背面壁1Eとから、角皿状に形成されている。
【0012】
そして、この空調用室内機では、ドレンパン1の左側面壁1Aに外向きに突出して形成された排出口22(ドレン排出口部)と、外向きに突出して形成された排出口23(ドレン排出口部)とを備えている。排出口22,23はこれらの内周面に形成された雌ネジ部に、ドレンキャップ7(ドレン排出口部)が螺止されて密閉される。このようにドレンパン1に取り付けられたドレンキャップ7は円柱形のプラグであり、本体ケーシング30の右サイドパネル2の縦長穴20から機外へ突出するようになっている。また、ドレンパン1を左右方向に傾斜自在に支持する2つの支持手段28A,28Bと、これらの支持手段28A,28Bにより左右いずれかの方向に傾いて支持されたドレンパン1をその傾斜状態に固定する固定手段29を備えている。これら2つの支持手段28A,28Bにより、ドレンパン1がシーソーの様に左右に揺動自在となっている。
【0013】
支持手段28Aは、本体ケーシング30に対しドレンパン1を略水平軸心H1回りに回動自在に支持するビス(枢軸部材)15と、底台枠5の前側左右中央部に立設された支柱4の上部に形成されてビス15を回動自在に支持する枢支穴27と、枢支穴27を通されたビス15を螺止するためにドレンパン1の前面壁1Dに形成された雌ネジ穴33とから構成されている。同様に、支持手段28Bは、ドレンパン1を略水平軸心H1回りに回動自在に支持するビス(枢軸部材)16と、後ろ下パネル12の上側左右中央部に形成されてビス16を回動自在に支持する枢支穴32と、枢支穴32を通されたビス16を螺止するためにドレンパン1の背面壁1Eに形成された雌ネジ穴34とから構成されている。
【0014】
固定手段29は、本体ケーシング30の右サイドパネル2と左サイドパネル3とにそれぞれ形成されていて、ドレンパン1の左右の排出口22,23に装着されたドレンキャップ7を上下移動自由に挿通する縦長穴21と、縦長穴21を被った状態で右サイドパネル2または左サイドパネル3に着脱自在に取り付けられるアタッチメントパネル8と、アタッチメントパネル8に形成されていて、右サイドパネル2の縦長穴20または左サイドパネル3の縦長穴21から突出した排出口22,23のドレンキャップ7を係止する係止穴24と、から構成されている。尚、アタッチメントパネル8における係止穴24の位置は、傾斜したドレンパン1の上がり側にある排出口22または排出口23に装着されたドレンキャップ7を係止可能な位置に設定されている。また、アタッチメントパネル8において、係止穴24の上下位置には、右サイドパネル2の上下2つの雌ネジ穴18,18または左サイドパネル3の上下2つの雌ネジ穴19,19に螺止させるために、ビス17を通す貫通穴25と貫通穴26が形成されている。
【0015】
ドレンパン1の左側面壁1Aの外面および右側面壁1Bの外面には、シール用弾性部材36,36が接着剤などで貼り着けられている。これらのシール用弾性部材36,36は、ドレンパン1の左側面壁1Aと本体ケーシング30の左サイドパネル3との間、および、ドレンパン1の右側面壁1Bと本体ケーシング30の右サイドパネル2との間をそれぞれ封止する止水構造37を構成している。すなわち、本体ケーシング30の右サイドパネル2の内面および左サイドパネル3の内面との圧縮による力を利用し、シール用弾性部材36の圧縮率が50%以上となるように、ドレンパン〜サイドパネル間の隙間寸法を設定することで、気密構造をもたらしている。
【0016】
そして、この空調用室内機では、図9〜図12に示すように、組立時のデフォルトとして左側ドレン配管接続が初期設定され、ドレンパン1が水平軸心H2に対し左下がりに角度θぶん傾斜した姿勢となっており、ドレンパン1の右側の排出口23にドレンキャップ7が装着されている。これにより、被空調室内に置かれた本体ケーシング30の左側からのみドレン水が排水される初期構造となっている。すなわち、突出したドレンキャップ7を係止穴24に嵌め込んだ状態で、アタッチメントパネル8が本体ケーシング30の右サイドパネル2にあてがわれ、雌ネジ穴18,18に螺止されるビス17,17によって固定されることで、ドレンパン1の勾配が必然的に左下がりとなるようになっている。同時に、傾斜姿勢にあるドレンパン1がそのままに固定されることにより、ドレンパン1が出荷時にグラつくことが防止されている。
【0017】
そして、被空調室内においてドレン排水管接続工事を行うにあたり、左側ドレン配管接続とする場合は、そのままドレンパン1の左側の排出口22に排水管が接続される。それにより、接続作業は1工程で済むため、工事を極めて容易に行なうことができる。
【0018】
一方、ドレン排水管接続工事を行なうにあたり、右側ドレン配管接続にしたい場合は、右サイドパネル2に取り付けていたアタッチメントパネル8を取り外したのち、ドレンパン1の右側の排出口23から外したドレンキャップ7で左側の排出口22を封止する。そして、ドレンパン1をビス15,16回りに回動させて右下がりとし、左サイドパネル3の縦長穴21から突出したドレンキャップ7をアタッチメントパネル8の係止穴24に挿通させる。その後、図9〜図12に示した左下がり勾配のときと同様の手順で、ビス17,17を雌ネジ穴19,19に螺止して、アタッチメントパネル8を左サイドパネル3に取り付けることで、ドレンパン1が右下がりの状態に固定することができる。このようにして上記作業を実施した後、ドレンパン1の右側の排出口23に排水用配管を接続することで、右側接続のドレン排水接続工事が完了する。
【0019】
以上のように、この空調用室内機は、ドレンパン左右端部の排出口22,23およびこれらを封止するドレンキャップ7と、支持手段28A,28Bを備えているので、支持手段28Aおよび28Bによりドレンパン1をシーソーの様に左右いずれかの方向へ傾けることができる。そして、左右いずれかの方向に傾いて支持されたドレンパン1を、固定手段29がその傾斜状態に固定する。従って、左側または右側への排水配管接続の作業性を大幅に改善することができる。
【0020】
また、前記の支持手段28A,28Bは、本体ケーシング30に対しドレンパン1を略水平軸心H1回りに回動自在に支持するビス15,16で構成されるため、極めて簡素で安価に製造することができる。そして、傾斜したドレンパン1の上側位置にあるドレンキャップ7を係止する固定手段29は、左右のサイドパネル2,3に形成された縦長穴20,21と、サイドパネル2,3に着脱自在に取り付けられるアタッチメントパネル8と、アタッチメントパネル8に形成されてドレンキャップ7を係止する係止穴24とから構成されているので、簡素で安価な構成により固定手段を実現することが可能である。
【0021】
尚、上記の実施形態では、ドレンパン1の左側面壁1Aの外面および右側面壁1Bの外面にシール用弾性部材36,36を貼設した例を示したが、本発明の空調用室内機はそれに限定されるものでない。例えば、本体ケーシング30の右サイドパネル2の内面および左サイドパネル3の内面にシール用弾性部材を貼設し、それにより、ドレンパン1の左側面壁1Aと左サイドパネル3との間、および、ドレンパン1の右側面壁1Bと右サイドパネル2との間をそれぞれ封止する止水構造とすることも可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 ドレンパン
1A 左側面壁
1B 右側面壁
2 右サイドパネル
3 左サイドパネル
4 支柱
7 ドレンキャップ
8 アタッチメントパネル
10 熱交換器
15 ビス(枢軸部材)
16 ビス(枢軸部材)
17 ビス
18 雌ネジ穴
19 固定用穴
20 縦長穴
21 縦長穴
22 排出口
23 排出口
24 係止穴
25 貫通穴
26 貫通穴
27 枢支穴
28A,28B 支持手段
29 固定手段
30 本体ケーシング
32 枢支穴
33 雌ネジ穴
34 雌ネジ穴
36 シ−ル用弾性部材
37 止水構造
H1,H2 水平軸心
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に通風路が形成された箱状の本体ケーシングと、前記本体ケーシングの通風路内に配備されて空気との間で熱交換を行なう熱交換器と、前記通風路内で前記熱交換器の下方位置に配備されて前記熱交換器からのドレン水を収受するドレンパンと、を有して成る空調用室内機において、
前記ドレンパンの左右端部にそれぞれ形成されたドレン排出口部と、
前記ドレンパンを左右方向に傾斜自在に支持する支持手段と、
前記支持手段により左右いずれかの方向に傾いて支持された前記ドレンパンをその傾斜状態に固定する固定手段と、を備えていることを特徴とする空調用室内機。
【請求項2】
支持手段が、本体ケーシングに対しドレンパンを略水平軸心回りに回動自在に支持する枢軸部材で構成されている請求項1に記載の空調用室内機。
【請求項3】
固定手段が、本体ケーシングを構成する左右のサイドパネルにそれぞれ形成されていて、ドレンパンの左右のドレン排出口部を上下移動自在に挿通する縦長穴と、
前記縦長穴を被った状態で前記サイドパネルに着脱自在に取り付けられるアタッチメントパネルと、
前記アタッチメントパネルに形成されていて、前記サイドパネルの縦長穴から突出した前記ドレンパンのドレン排出口部を係止する係止穴とから構成され、
前記アタッチメントパネルにおける係止穴の位置は、傾斜したドレンパンの下がり側にあるドレン排出口部を係止可能な位置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空調用室内機。
【請求項4】
ドレンパンの左右の側面壁の外面、または、本体ケーシングの左右のサイドパネルの内面にシール用弾性部材を貼設することにより、ドレンパンの左側面壁と本体ケーシングの左サイドパネルとの間、および、ドレンパンの右側面壁と本体ケーシングの右サイドパネルとの間をそれぞれ封止する止水構造を備えている請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の空調用室内機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−19631(P2013−19631A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154608(P2011−154608)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】