説明

空調用室外機の外壁パネル

【課題】簡単な表面処理によって耐食性及び意匠性に優れた空調用室外機の外壁パネルを提供する。
【解決手段】空調用の室外機の外壁パネル70を構成する亜鉛含有めっき鋼板71を、表面が粗面に構成された耐食皮膜層72によって覆い、該耐食皮膜層の片側面のみに塗料層73を形成する。耐食皮膜層の主成分を無機系材料とすることにより、耐食皮膜層を薄く形成することで表面を粗面に構成して、塗料を容易に密着させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調用室外機の外壁パネルに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調用室外機の外壁パネルとして、亜鉛含有めっき鋼板が用いられている(例えば、下記特許文献1を参照)。通常、空調用室外機は屋外に設置されて風雨に曝される。そのため、空調用室外機の外壁パネルとして、耐食性を確保するために亜鉛含有めっき鋼板の両面に塗装が施された塗装鋼板や、亜鉛含有めっき鋼板の両面に有機系トップコートを施したもの(例えば、下記特許文献2を参照)が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−138233号公報
【特許文献2】特開平10−96537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように空調用室外機は屋外に設置されるため、外壁パネルの外側面については耐食性だけでなく意匠性の向上のために塗装が必要となることがある。しかし、鋼板の表面処理の手法として、塗装は皮膜の形成に比べて手間がかかるため、鋼板の両面に塗装を施すこととすると、鋼板の表面処理に手間がかかるという問題があった。そこで、特許文献2に記載の内外両面に皮膜を形成した鋼板の片側面のみに塗装を施すことで表面処理作業の容易化を図ることが考えられるが、単に皮膜の表面に塗装を施すと、皮膜の表面は滑らかで塗料の密着性が低いため、塗料が剥離して耐食性及び意匠性を損なうおそれがあった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な表面処理によって耐食性及び意匠性に優れた空調用室外機の外壁パネルを製作することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、亜鉛含有めっき鋼板(71)によって構成された空調用室外機の外壁パネルであって、上記亜鉛含有めっき鋼板(71)を覆い、表面が粗面に構成された耐食皮膜層(72)と、上記耐食皮膜層(72)の片側面のみに形成された塗料層(73)とを備えている。
【0007】
第1の発明では、空調用室外機の外壁パネルに用いられる亜鉛含有めっき鋼板(71)が、耐食皮膜層(72)によって覆われている。そのため、鋼板(71)の耐食性が向上し、腐食が抑制される。また、上記耐食皮膜層(72)は、表面が粗面に構成されているため、アンカー効果によって塗料の耐食皮膜層(72)に対する密着性が向上する。よって、塗装作業が容易になると共に、塗料が剥離し難くなるため、意匠性が向上する。また、上述のように耐食皮膜層(72)を形成することにより、鋼板(71)の両面を塗装する必要がなく、意匠性の確保が必要となる外側面のみに塗装を施せばよくなる。その結果、塗装作業の手間が半減し、単位時間当たりに塗装処理される個数が倍増する。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、上記耐食皮膜層(72)の厚みは、1μm以下である。
【0009】
第2の発明では、耐食皮膜層(72)の厚みが1μm以下に形成されている。ここで、通常、亜鉛含有めっき鋼板(71)の表面は凹凸を有する粗面に構成されている。そのため、耐食皮膜層(72)の厚みが1μm以下に形成されると、亜鉛含有めっき鋼板(71)の凹凸形状がそのまま耐食皮膜層(72)の表面に現れ、該耐食皮膜層(72)の表面が粗面に構成される。そのため、アンカー効果によって塗料が耐食皮膜層(72)の表面に密着し易くなる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記耐食皮膜層(72)の主成分は、無機系材料である。
【0011】
第3の発明では、耐食皮膜層(72)の主成分が無機系材料によって構成されている。
【0012】
ところで、耐食皮膜層(72)の主成分が例えば樹脂等の有機系材料である場合、耐食皮膜層(72)が厚くなり、1μm以下に形成することが困難となる。耐食皮膜層(72)の厚みが増すと、亜鉛含有めっき鋼板(71)の表面の凹部に耐食皮膜材料が埋まることにより、耐食皮膜層(72)の表面に亜鉛含有めっき鋼板(71)の表面の凹凸形状が現れなくなり、アンカー効果が期待できない。しかしながら、主成分が無機系材料である場合、耐食皮膜層(72)の厚みは必然的に薄くなり、1μm以下となる。そのため、耐食皮膜層(72)の表面に亜鉛含有めっき鋼板(71)の表面の凹凸形状が現れ易くなる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、上記耐食皮膜層(72)には二酸化ケイ素が含まれている。
【0014】
第4の発明では、耐食皮膜層(72)に二酸化ケイ素が含まれている。二酸化ケイ素の表面にはシラノール基(SiOH)が存在している。シラノール基(SiOH)は、塗料に含まれる成分と結合し易い。そのため、耐食皮膜層(72)が二酸化ケイ素を含むことにより、塗料の耐食皮膜層(72)への密着性が向上する。
【0015】
第5の発明は、第1乃至第4のいずれか1つの発明において、上記耐食皮膜層(72)の表面には、リン酸亜鉛処理によるリン酸亜鉛の結晶(75)が析出している。
【0016】
第5の発明では、リン酸亜鉛処理によって耐食皮膜層(72)の表面にリン酸亜鉛の結晶(75)を析出させることにより、耐食皮膜層(72)の表面がより凹凸形状に構成される。
【0017】
第6の発明は、第5の発明において、上記亜鉛含有めっき鋼板(71)は、亜鉛のみをめっき材料として用いためっき鋼板である。
【0018】
ここで、亜鉛のみをめっき材料として用いためっき鋼板(71)には、単に亜鉛めっきが施された純亜鉛めっき鋼板と、亜鉛めっきを施した後、加熱することによって亜鉛と鉄とを合金化させた合金化亜鉛めっき鋼板とが含まれる。
【0019】
ところで、亜鉛含有めっき鋼板(71)の中には、ガルバリウム鋼板のようにめっき材料の中にアルミニウムが含まれるものがあるが、このようなアルミニウムを含むめっき材料を用いてめっき処理が施された鋼板では、上記リン酸亜鉛処理を行う際に、アルミニウムがリン酸亜鉛の薬剤に溶出してしまう。そのため、リン酸亜鉛処理の際に、リン酸亜鉛の薬剤を再利用することができなくなる。
【0020】
第6の発明では、亜鉛含有めっき鋼板(71)は、亜鉛のみをめっき材料として用いためっき鋼板であるため、ガルバリウム鋼板のように、リン酸亜鉛処理の際に、リン酸亜鉛の薬剤にアルミニウムが溶出するようなことがない。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、亜鉛含有めっき鋼板(71)を耐食皮膜層(72)で覆うことにより、耐食性を向上させることができる。また、耐食皮膜層(72)の表面を粗面に構成することにより、アンカー効果によって塗料が耐食皮膜層(72)に容易に密着するため、塗装作業を容易化することができる。また、耐食皮膜層(72)の片側面のみに塗装を施すことにより、外壁パネルの外側面の意匠性を向上させることができると共に、両面に塗装を施す場合に比べて塗装作業を容易化することができる。例えば、従来、塗料の吹き出し装置を吹き出し方向が対向するように配置し、その間に1枚の鋼板(71)を通すことによって該鋼板(71)の両面に塗装を施していた。しかし、上記構成のように、鋼板(71)の片側面のみに塗料層(73)を形成することとすると、2つの吹き出し装置の間に塗装面と逆側の面を対向させた2枚の鋼板(71)を通過させることで、一度に2枚の鋼板(71)に塗装を施すことができる。つまり、従来と同じ時間で、2倍の枚数の鋼板(71)に塗装を施すことができる。従って、上記構成によれば、簡単な表面処理によって耐食性及び意匠性に優れた空調用室外機の外壁パネルを製作することができる。
【0022】
また、第2の発明によれば、耐食皮膜層(72)の厚みを薄く形成することにより、亜鉛含有めっき鋼板(71)の表面の凹凸形状をそのまま耐食皮膜層(72)の表面の形状とすることができる。従って、耐食皮膜層(72)の表面を容易に粗面に構成することができるため、外壁パネルの表面処理作業のさらなる容易化を図ることができる。
【0023】
また、第3の発明によれば、耐食皮膜層(72)の主成分を無機系材料とすることにより、耐食皮膜層(72)を薄く形成することができるため、容易に耐食皮膜層(72)の表面を凹凸を有する粗面に構成することができる。従って、外壁パネルの表面処理作業のさらなる容易化を図ることができる。
【0024】
また、第4の発明によれば、耐食皮膜層(72)に二酸化ケイ素を含ませることにより、塗料の耐食皮膜層(72)への密着性を容易に向上させることができる。従って、塗装作業のさらなる容易化を図ることができると共に、塗料の剥離を容易に防止することができるため、意匠性の向上を容易に図ることができる。
【0025】
また、第5の発明によれば、リン酸亜鉛処理によって耐食皮膜層(72)の表面にリン酸亜鉛の結晶(75)を析出させて耐食皮膜層(72)の表面をより凹凸形状に構成することにより、より容易に耐食皮膜層(72)に塗料を密着させることができる。従って、塗装作業のさらなる容易化を図ることができると共に、塗料の剥離を容易に防止することができるため、耐食性及び意匠性に優れた外壁パネルの表面処理作業のさらなる容易化を図ることができる。
【0026】
また、第6の発明によれば、亜鉛含有めっき鋼板(71)を、亜鉛のみをめっき材料として用いためっき鋼板とすることにより、ガルバリウム鋼板のように、リン酸亜鉛処理の際に、リン酸亜鉛の薬剤にアルミニウムが溶出するようなことがなく、使用済みのリン酸亜鉛の薬剤を回収して再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る空調用室外機の外観形状を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の空調用室外機の内部構造を示す平面図である。
【図3】図3は、外壁パネルの概略構成を示す断面図である。
【図4】図4は、外壁パネルの一部を拡大して示す断面図である。
【図5】図5は、外壁パネルの塗装工程を示す動作図である。
【図6】図6は、実施形態2に係る空調用室外機の外壁パネルの一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
〈発明の実施形態1〉
図1及び図2に示すように、本実施形態1の室外機(10)は、空気調和装置に用いられる空調用室外機であって、図示しないが、室内機が接続されて蒸気圧縮式冷凍サイクルを構成している。
【0030】
上記室外機(10)は、例えば、ビルの屋上等に設置され、ケーシング(20)と室外熱交換器(30)と室外ファン(40)と圧縮機構(50)とを備えている。
【0031】
上記ケーシング(20)は、平面視矩形状に形成され、4本の支柱(21)と複数枚の外壁パネル(70)とを備えている。複数枚の外壁パネル(70)は、それぞれ底フレーム(22)と側面パネル(23)と天板(24)とを構成している。
【0032】
上記4つの支柱(21)は、四隅に設けられ、下部に底フレーム(22)が固定されている。また、前側の左右の支柱(21,21)の下端には基礎脚(27)が接続され、後ろ側の左右の支柱(21)の下端にも基礎脚(27)が接続されている。
【0033】
上記側面パネル(23)は、ケーシング(20)の上半部四面を形成する上側面パネル(23a)と、ケーシング(20)の下半部における前面を形成し且つ左半分を形成する前側面パネル(23b)と、ケーシング(20)の下半部における左側の横側面を形成し且つ前半分を形成する横側面パネル(23c)とを備えている。そして、上記ケーシング(20)の側面には、下半部における前面の右半分と、下半部における右側の横側面と、下半部における背面と、下半部における左側の横側面の後半分に吸込口(25)が形成されている。
【0034】
また、上記天板(24)は、支柱(21)の上端に固定され、吹出口(26)が形成されると共に、吹出口(26)を覆うグリル(24a)を備えている。
【0035】
上記室外熱交換器(30)は、フィンアンドチューブ型熱交換器であって、室外空気と冷媒とを熱交換するように構成されている。上記室外熱交換器(30)は、上下に起立した状態で設けられ、上記ケーシング(20)の全ての側面に亘る折曲熱交換器に構成されている(図2参照)。さらに、上記室外熱交換器(30)の両側端の間には、ケーシング(20)の前側の左隅角部を挟んで所定の開口(30a)が形成されている。この開口(30a)を形成する室外熱交換器(30)の両端には、室外熱交換器(30)をケーシング(20)に固定するのに用いる管板(31)が設けられている。つまり、上記ケーシング(20)は、室外熱交換器(30)の開口(30a)に対応して上記前側面パネル(23b)と横側面パネル(23c)が設けられている。
【0036】
上記底フレーム(22)には、圧縮機構(50)と油分離器(51)とアキュムレータ(52)とが取り付けられ、上記圧縮機構(50)は、防音箱内に収容された1台の圧縮機で構成されている。上記室外熱交換器(30)は、上記底フレーム(22)に一端面を下端にして載置された状態でケーシング(20)に固定されている。
【0037】
上記圧縮機構(50)と油分離器(51)とアキュムレータ(52)と室外熱交換器(30)とは、ケーシング(20)の下部空間に収納され、室外ファン(40)は、ケーシング(20)の上部空間に収納されている。また、図示を省略するが、ケーシング(20)の上部空間には、圧縮機構(50)等を制御するための電装品が収納される電装品ユニットが収納されている。
【0038】
〈外壁パネルの構成〉
図3に示すように、外壁パネル(70)は、亜鉛めっきが施された鋼板(71)と、該鋼板(71)を覆うように形成された耐食皮膜層(72)と、耐食皮膜層(72)の上に形成された塗料層(73)とを有している。
【0039】
鋼板(71)は、板状の母材(71a)と、該母材(71a)の表面に形成されためっき層(71b)とを有している。鋼板(71)は、めっき材料として亜鉛のみを用いた亜鉛めっき鋼板である。より具体的には、鋼板(71a)は、板状の鋼材を高温で溶融した亜鉛の中に浸漬させ、急速に冷却することによって形成される。つまり、鋼板(71)は、鉄のみからなる母材(71a)の表面に亜鉛のみからなるめっき層(71b)が形成された純亜鉛めっき鋼板に構成されている。図4に拡大して示すように、鋼板(71)の表面(めっき層(71b)の表面)を構成する第1面(S1)及び第2面(S2)は、凹凸を有する粗面に構成されている。
【0040】
耐食皮膜層(72)は、図3に示すように、鋼板(71)の両表面、即ち第1面(S1)及び第2面(S2)のそれぞれに耐食性を有する材料によって形成された皮膜層である。耐食皮膜層(72)は、表面が粗面に構成されている。具体的には、耐食皮膜層(72)の表面は、微細な凹凸を有して摩擦係数が0.1以上となるような粗面に形成されている。また、本実施形態1では、耐食皮膜層(72)は、無機系材料を主成分として形成され、耐食皮膜層(72)中に占める無機系材料の含有量が50wt%以上となるように形成されている。
【0041】
また、本実施形態1では、耐食皮膜層(72)は、皮膜厚さが1μm以下となるように形成されている。そのため、図4に拡大して示すように、鋼板(71)の表面の凹凸形状が耐食皮膜層(72)の表面に現れることにより、耐食皮膜層(72)の表面が粗面に構成されている。さらに、本実施形態1では、耐食皮膜層(72)は、無機系材料として二酸化ケイ素(SiO2)を含んでいる。
【0042】
塗料層(73)は、鋼板(71)の第1面(S1)に形成された耐食皮膜層(72)の上のみに形成され、鋼板(71)の第2面(S2)に形成された耐食皮膜層(72)の上には形成されていない。塗料層(73)は、粉体塗料を鋼板(71)の第1面(S1)に形成された耐食皮膜層(72)の上に吹き付けることによって形成されている。
【0043】
〈外壁パネルの製造方法〉
以下、外壁パネル(70)の製造方法について図5に基づいて説明する。
【0044】
まず、塗料の吹き出し装置(90)を吹き出し方向が対向するように配置し、該吹き出し装置(90)の間に、両面に耐食皮膜層(72)が形成された2枚の鋼板(71)を、第2面(S2)側を対向させた状態で通過させる。その結果、一度に2枚の鋼板(71)の第1面(S1)に形成された耐食皮膜層(72)の上に塗料を吹き付けることができる。2枚の鋼板(71)の第1面(S1)に形成された耐食皮膜層(72)の上に塗料を吹き付けた後、焼き付けることによって2枚の鋼板(71)のそれぞれに塗料層(73)が形成される。
【0045】
なお、本実施形態1では、ケーシング(20)の側面パネル(23)と天板(24)とを構成する外壁パネル(70)の外側面が第1面(S1)に構成されている。つまり、ケーシング(20)の側面パネル(23)及び天板(24)の人目に触れ難い内側面には塗料層(73)が形成されず、風雨に曝される外側面のみに塗料層(73)が形成されることとなる。一方、ドレン等の水が溜まるおそれのあるケーシング(20)の底フレーム(22)を構成する外壁パネル(70)では、内側面が第1面(S1)に構成されている。つまり、ケーシング(20)の底フレーム(22)の人目に触れ難い外側面には塗料層(73)が形成されず、水が溜まるおそれのある内側面には塗料層(73)が形成されることとなる。
【0046】
−実施形態1の効果−
本実施形態1では、空調用の室外機(10)の外壁パネル(70)に用いられる亜鉛めっきが施された鋼板(71)を、耐食皮膜層(72)によって覆うことにより、耐食性を向上させることができる。また、耐食皮膜層(72)の表面を粗面に構成することにより、アンカー効果によって塗料が耐食皮膜層(72)に容易に密着するため、塗装作業を容易化することができる。また、鋼板(71)の外側面を構成する第1面(S1)に形成された耐食皮膜層(72)の上のみ、即ち、耐食皮膜層(72)の外側面のみに塗装を施すことにより、外壁パネル(70)の外側面の意匠性を向上させることができると共に、両面に塗装を施す場合に比べて塗装作業を容易化することができる。例えば、従来、塗料の吹き出し装置(90)を吹き出し方向が対向するように配置し、その間に1枚の鋼板(71)を通すことによって該鋼板(71)の両面に塗装を施していた。しかし、上記構成のように、鋼板(71)の片側面のみに塗料層(73)を形成することとすると、2つの吹き出し装置(90)の間に塗装面となる第1面(S1)の逆側の第2面(S2)を対向させた2枚の鋼板(71)を通過させることで、一度に2枚の鋼板(71)に塗装を施すことができる。つまり、従来と同じ時間で、2倍の枚数の鋼板(71)に塗装を施すことができる。従って、上記構成によれば、簡単な表面処理によって耐食性及び意匠性に優れた空調用の室外機(10)の外壁パネル(70)を製作することができる。
【0047】
また、上記実施形態1では、鋼板(71)の表面は凹凸を有する粗面に構成されている。そのため、耐食皮膜層(72)の厚みを1μm以下に薄く形成することにより、鋼板(71)の表面の凹凸形状をそのまま耐食皮膜層(72)の表面の形状とすることができる。従って、耐食皮膜層(72)の表面を容易に粗面に構成することができるため、外壁パネル(70)の表面処理作業のさらなる容易化を図ることができる。
【0048】
また、上記実施形態1によれば、耐食皮膜層(72)の主成分が無機系材料によって構成されている。
【0049】
ところで、耐食皮膜層(72)の主成分が例えば樹脂等の有機系材料である場合、耐食皮膜層(72)が厚くなり、1μm以下に形成することが困難となる。耐食皮膜層(72)の厚みが増すと、鋼板(71)の表面の凹部に耐食皮膜材料が埋まることにより、耐食皮膜層(72)の表面に鋼板(71)の表面の凹凸形状が現れなくなり、アンカー効果が期待できない。しかしながら、主成分が無機系材料である場合、耐食皮膜層(72)の厚みが必然的に薄くなり、耐食皮膜層(72)の表面に鋼板(71)の表面の凹凸形状が現れ易くなる。つまり、耐食皮膜層(72)の主成分を無機系材料とすることにより、耐食皮膜層(72)を薄く形成して容易に耐食皮膜層(72)の表面を粗面に構成することができる。従って、外壁パネル(70)の表面処理作業のさらなる容易化を図ることができる。
【0050】
また、上記実施形態1では、耐食皮膜層(72)に二酸化ケイ素が含まれている。二酸化ケイ素の表面にはシラノール基(SiOH)が存在している。シラノール基(SiOH)は、塗料に含まれる成分と結合し易い。そのため、耐食皮膜層(72)に二酸化ケイ素を含ませることにより、塗料の耐食皮膜層(72)への密着性を容易に向上させることができる。従って、塗装作業のさらなる容易化を図ることができると共に、塗料の剥離を容易に防止することができるため、耐食性及び意匠性に優れた外壁パネル(70)の表面処理作業のさらなる容易化を図ることができる。
【0051】
《発明の実施形態2》
図6に示すように、本実施形態2の外壁パネル(70)は、実施形態1の外壁パネル(70)について、耐食皮膜層(72)の形成後にリン酸亜鉛処理を施し、鋼板(71)の第1面(S1)に形成された耐食皮膜層(72)の表面にリン酸亜鉛の結晶(75)を析出させて、その後に行われる塗装工程における塗料の密着性の向上を図ったものである。
【0052】
リン酸亜鉛処理は、塗料を吹き付ける前に行われる。図5に示す状態で、リン酸亜鉛薬剤を吹き付ける。その結果、鋼板(71)の第1面(S1)に形成された耐食皮膜層(72)の表面に図6に示すようなリン酸亜鉛の結晶(75)が析出する。これにより、耐食皮膜層(72)の表面がより凹凸形状に構成される。また、鋼板(71)に吹き付けられて鋼板(71)を流れて下方に落下した余剰の薬剤は、リン酸亜鉛の吹き付け手段に回収されて別の鋼板(71)へのリン酸亜鉛処理に用いられる。なお、リン酸亜鉛薬剤が吹き付けられた鋼板(71)を100〜200℃程度の温度で加熱することとしてもよい。これにより、処理効果が促進される。また、リン酸亜鉛処理は、上述のように鋼板(71)にリン酸亜鉛の薬剤を吹き付けるのではなく、鋼板(71)を薬剤中に浸漬させてもよい。
【0053】
上述のように、リン酸亜鉛処理によって耐食皮膜層(72)の表面にリン酸亜鉛の結晶(75)を析出させて耐食皮膜層(72)の表面により細かな凹凸を形成することにより、より容易に耐食皮膜層(72)に塗料を密着させることができる。従って、塗装作業のさらなる容易化を図ることができる。
【0054】
また、亜鉛含有めっき鋼板(71)の中には、ガルバリウム鋼板のように、めっき材料の中にアルミニウムが含まれるものがあるが、このようなアルミニウムを含むめっき材料を用いてめっき処理が施された鋼板では、上記リン酸亜鉛処理を行う際に、アルミニウムがリン酸亜鉛の薬剤に溶出してしまう。そのため、リン酸亜鉛処理の際に、リン酸亜鉛の薬剤を再利用することができなくなる。しかしながら、上記実施形態2では、鋼板(71)は、亜鉛のみをめっき材料として用いためっき鋼板であるため、ガルバリウム鋼板のように、リン酸亜鉛処理の際に、リン酸亜鉛の薬剤にアルミニウムが溶出するようなことがなく、使用済みのリン酸亜鉛の薬剤を回収して再利用することができる。
【0055】
また、潤滑性を向上させるために、皮膜にワックスを含ませたものがあるが、このような皮膜を形成すると、上記リン酸亜鉛の薬剤の吹き付け後、100〜200℃の温度で加熱して乾燥させる際に、ワックスが溶けて皮膜が浮いてしまう。しかしながら、上記実施形態2では、皮膜にワックスが含まれていないため、上記リン酸亜鉛処理において高温の温度で加熱して乾燥させても皮膜が浮くおそれがない。
【0056】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0057】
上記各実施形態では、厚さが1μm以下となるように耐食皮膜層(72)が形成されることによって耐食皮膜層(72)の表面が粗面に構成されていたが、耐食皮膜層(72)は、表面が粗面に構成されるのであれば、皮膜厚さが1μmよりも厚いものであってもよい。また、上記各実施形態では、耐食皮膜層(72)は、主成分が無機系材料となる皮膜材によって構成されていたが、耐食皮膜層(72)は、表面が粗面に構成されるのであれば、主成分が有機系材料となる皮膜材によって構成されていてもよい。さらに、耐食皮膜層(72)は、二酸化ケイ素を含まないものであってもよい。以上のような皮膜材によって形成された耐食皮膜層(72)であっても、表面が粗面に構成されることにより、上述のアンカー効果を期待できるため、耐食皮膜層(72)への塗料の密着性が向上する。
【0058】
また、上記各実施形態では、塗料層(73)を形成する塗料として、粉体塗料を用いていたが、塗料はこれに限られず、例えば、溶剤塗料を用いてもよく、フッソ系塗料を用いてもよい。
【0059】
さらに、上記各実施形態では、鋼板(71)のめっき層(71b)は、亜鉛のみによって構成されていた。しかしながら、鋼板(71)は、亜鉛を含有するめっき材料によってめっきされたものであればよく、亜鉛のみからなるめっき層(71b)が形成された純亜鉛めっき鋼板に限られない。鋼板(71)は、鉄と亜鉛が合金化された合金化亜鉛めっき鋼板であってもよく、ニッケルと亜鉛が合金化された合金化亜鉛めっき鋼板であってもよい。さらに、亜鉛めっきの手法は上記各実施形態のものに限定されず、いかなる手法を用いてもよい。
【0060】
また、本発明に係る外壁パネルが用いられる空調用室外機は、上記実施形態において図示したものに限られない。上記実施形態における冷媒回路機器の配置などは一例に過ぎず、適宜変更することが可能である。
【0061】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明は、空調用室外機の外壁パネルについて有用である。
【符号の説明】
【0063】
10 室外機
70 外壁パネル
71 鋼板
71a 母材
71b めっき層
72 耐食皮膜層
73 塗料層
75 リン酸亜鉛の結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛含有めっき鋼板(71)によって構成された空調用室外機の外壁パネルであって、
上記亜鉛含有めっき鋼板(71)を覆い、表面が粗面に構成された耐食皮膜層(72)と、
上記耐食皮膜層(72)の片側面のみに形成された塗料層(73)とを備えている
ことを特徴とする空調用室外機の外壁パネル。
【請求項2】
請求項1において、
上記耐食皮膜層(72)の厚みは、1μm以下である
ことを特徴とする空調用室外機の外壁パネル。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記耐食皮膜層(72)の主成分は、無機系材料である
ことを特徴とする空調用室外機の外壁パネル。
【請求項4】
請求項3において、
上記耐食皮膜層(72)には二酸化ケイ素が含まれている
ことを特徴とする空調用室外機の外壁パネル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つにおいて、
上記耐食皮膜層(72)の表面には、リン酸亜鉛処理によるリン酸亜鉛の結晶(75)が析出している
ことを特徴とする空調用室外機の外壁パネル。
【請求項6】
請求項5において、
上記亜鉛含有めっき鋼板(71)は、亜鉛のみをめっき材料として用いためっき鋼板である
ことを特徴とする空調用室外機の外壁パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−72560(P2013−72560A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209618(P2011−209618)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】