説明

空調装置および海洋深層水利用システム

【課題】被熱交換媒体を海洋深層水より低温に冷却でき、さらに、効率よく海洋深層水から淡水を製造できる空調装置および海洋深層水利用システムを提供することを課題とする。
【解決手段】海洋深層水で被熱交換媒体を冷却する第1熱交換器8aと、海洋深層水との熱交換で温度が低下した被熱交換媒体を冷媒でさらに冷却するターボ冷凍機9a、9bと、を備える海洋深層水利用システム、および、ターボ冷凍機9a、9bで冷却された被熱交換媒体を冷熱源とする空調装置とする。そして、被熱交換媒体との熱交換で温度が上昇した海洋深層水が、ターボ冷凍機9a、9bの冷媒を冷却して温度が上昇した冷却水を冷却する第2熱交換器8bを備え、さらに、第2熱交換器8bで冷却水を冷却して温度が上昇した海洋深層水を淡水化する淡水化ユニット300を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋深層水で被熱交換媒体を冷却する空調装置および海洋深層水利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
200mより深海に存在する海洋深層水は従来から積極的に利用され、例えば特許文献1〜4には海洋深層水を冷暖房(空調装置)に用いる技術、特許文献5には海洋深層水を淡水化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−180735号公報
【特許文献2】特開2005−308314号公報
【特許文献3】特開2005−308313号公報
【特許文献4】特開2005−156125号公報
【特許文献5】特開2005−334882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1〜4に開示されるように海洋深層水を空調装置に使用する技術ではプレート式など単純間接熱交換器を使用している。しかしながら、プレート式などの単純間接熱交換器では、冷媒となる海洋深層水より低温の冷水を得ることができないため、取水時点で10〜12℃の温度となる海洋深層水を利用する場合、空調装置に必要な低温の冷水を得ることができず、空調装置の室内機ユニットが備わる室内を快適な環境に保つことが困難であるという問題がある。
【0005】
また、淡水化装置で海洋深層水を淡水化する淡水化装置の場合、海洋深層水の温度が低すぎると淡水化装置における淡水化の効率が低くなる。
例えば、特許文献5に開示される技術は海洋深層水を直接淡水化する技術であって、海洋深層水を加熱するエネルギが必要となるためCOの排出量が増えるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、被熱交換媒体を海洋深層水より低温に冷却でき、さらに、効率よく海洋深層水から淡水を製造できる空調装置および海洋深層水利用システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、被熱交換媒体を冷却する第1熱交換器と、第1熱交換器で冷却された被熱交換媒体をさらに冷却するチラーユニットと、チラーユニットの冷媒を冷却する冷却水を海洋深層水で冷却する第2熱交換器と、チラーユニットの冷却水を冷却して温度が上昇した海洋深層水を淡水化する淡水化ユニットと、を備える海洋深層水利用システムとする。また、第1熱交換器で冷却された被熱交換媒体を冷熱源とする空調装置とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、被熱交換媒体を海洋深層水より低温に冷却でき、さらに、効率よく海洋深層水から淡水を製造できる空調装置および海洋深層水利用システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る空調装置の構成を示す図である。
【図2】熱交換装置の構成を示す図である。
【図3】(a)は、取水配管を敷設した状態を示す図、(b)は、取水口の構成を示す図である。
【図4】(a)〜(c)は、取水配管を敷設する手順を説明する図である。
【図5】主に海洋深層水の温度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る海洋深層水利用システムは、冷熱源となる被熱交換媒体(冷房用水)を海洋深層水を利用して冷却する熱交換ユニット200と、海洋深層水を浄化して上水供給装置310から利用者に供給する上水を製造する淡水化ユニット300を含んで構成される熱交換装置1aを有する空調装置1とする。
空調装置1の空調端末210(室内機ユニット)で室内の周囲の空気を冷却して温度が上昇した冷房用水は、熱交換ユニット200(室外機ユニット)に戻り海洋深層水によって冷却される。
また、淡水化ユニット300で製造された上水は、上水供給装置310から利用者に供給される。
【0011】
図2に示すように、本実施形態に係る熱交換装置1aは、深度600〜800m程度の海洋深層水を汲み上げる汲み上げ装置100と、汲み上げた海洋深層水を利用して冷熱源となる冷房用水を冷却する熱交換ユニット200と、海洋深層水を淡水化して上水を製造する淡水化ユニット300と、を含んで構成される。
【0012】
汲み上げ装置100は、例えば海底に沿って海洋深層水の汲み上げ深度(600〜800m)まで敷設されて先端に取水口2aが取り付けられている取水配管2、例えば並列に2つ配置されるバケットトラップ3、海洋深層水を汲み上げる取水ポンプ4、汲み上げた海洋深層水を一時的に溜める原水槽5、および原水槽5に溜まる海洋深層水を取り出す原水ポンプ6を備えて構成される。なお、原水槽5には排水管5aが接続され、原水槽5における余剰の海洋深層水は、排水管5aを流通して海洋に排水される。さらに、原水槽5には、海洋深層水の貯水量を調節する調節弁5bが備わる。
調節弁5bは、原水槽5における海洋深層水の貯水量を減量するときに開弁して原水槽5に溜まる海洋深層水を排水管5aに流すように構成される。
また、2つの原水ポンプ6が並列に配設される構成であってもよい。この構成によって、一方の原水ポンプ6が故障しても他方の原水ポンプ6を駆動することによって、汲み上げ装置100を稼動することができる。
【0013】
例えば、図3の(a)に示すように、熱交換装置1aは海岸部に近い陸上部GDに建設される建物BLDの屋内に設置され、取水配管2は、建物BLDから海底に沿って敷設される。
取水配管2の敷設方法は特に限定するものではないが、海面SL付近(30〜50mまでの深度)は、例えば、スクリューによる取水配管2の破損など、船舶の航行に影響する深度であることから、この領域は取水配管2を地中に敷設することが考えられる。
【0014】
例えば、図3の(a)に示すように、建物BLDからトンネルTNを海面下30〜50mまで地面を掘って開通し、建物BLDから海面下30〜50mまでは、取水配管2をトンネルTN内に敷設する。さらに、トンネルTNの先は、複数の重り2bを取り付けた取水配管2を海底に沈めて海洋深層水の汲み上げ深度(600〜800m)まで、取水配管2を敷設する。
【0015】
また、取水口2aが取り付けられる取水配管2の先端部には重り2bを取り付けず、取水口2aが自身の浮力等で海底から数m〜数十mだけ浮上して浮遊する構成が好ましい。この構成によって、海底の堆積物が舞い上がったときに、取水口2aから堆積物が取り込まれることを抑制できる。取水口2aの形状は限定するものではないが、例えば、図3の(b)に示すように、円筒形の本体2a1の側面に複数の取水孔2a2が開口する構成とする。
この構成によると、海水中を沈降してくる浮遊物が溜まりやすい取水口2aの天頂部2a3には取水孔2a2が開口せず、取水口2aによる浮遊物の取り込み量を抑制できる。
【0016】
また、必要とされる数より多い数の取水孔2a2を設けることにより、海中の浮遊物等によって取水口2aが塞がれることによる故障の発生を抑制できる。なお、図3の(a)に示す取水配管2には1つの取水口2aが備わっているが、例えば、取水配管2の先端を2つ以上に分岐し、分岐した先端にそれぞれ取水口2aが備わる取水配管2であってもよい。
【0017】
また、取水配管2は、例えば、対腐食性に優れた高密度ポリエチレン管を素材とし、長期間に亘って空調装置1を使用した場合であっても腐食の進行が抑制されることが好ましい。この構成によって、保守作業が実質的に不可能である海底部における保守作業の必要性がなくなり、空調装置1の長期間に亘る運用を可能とすることができる。
【0018】
取水配管2は、例えば図4の(a)〜(c)に示す手順で敷設可能である。図4の(a)に示すように、陸上部GDから水面下30〜50mの海底に向かって、ボーリング(水平ボーリング)などの工法によってトンネルTNを開通し、そのとき使用する掘削装置(例えばドリル400)でワイヤ401を牽引してトンネルTN内にワイヤ401を通す。そしてトンネルTNの貫通後にドリル400のみを陸上部GD側に引き上げると、トンネルTN内にワイヤ401が残る。
【0019】
そして、図4の(b)に示すように、海面SL上を航行する作業船402に、例えばリール403に巻かれて搭載される取水配管2の先端とトンネルTN内を通るワイヤ401の先端を海中で連結し、図示しないウインチ等によってワイヤ401を陸上部GD側に引き上げる。
取水配管2がワイヤ401に引かれてトンネルTN内を進行し、トンネルTN内に取水配管2が敷設される。
【0020】
その後、図4の(c)に示すように、複数の重り2bを適宜取り付けた取水配管2をリール403から解放して海中に投入しながら作業船402を取水配管2の敷設方向に進行すると、重り2bの重さで取水配管2が海中に沈み、取水配管2を海底に敷設できる。
このように、取水配管2を海底に敷設することができるが、図4の(a)〜(c)に示す方法は一例であってこの方法に限定するものではない。
【0021】
説明を図2に戻す。熱交換ユニット200は、汲み上げた海洋深層水と被熱交換媒体を熱交換して被熱交換媒体を冷却する装置であり、本実施形態の熱交換装置1aでは、熱交換ユニット200としてチラープラントを使用することを特徴とする。
また、本実施形態において、被熱交換媒体は空調装置1(図1参照)の冷熱源となる冷房用水とするが、被熱交換媒体は冷房用水に限定されるものではなく、例えば、代替フロンなどの冷媒であってもよい。
【0022】
汲み上げ装置100によって汲み上げられて原水槽5に溜められた冷たい海洋深層水(温度:T11)は、原水ポンプ6によって熱交換ユニット200に送水される。熱交換ユニット200に送水された海洋深層水は熱交換器(第1熱交換器8a)に導入され、空調端末210で温度が高くなって破線で示すように冷却ポンプ10で送水される冷房用水(温度:T21(但し、T21>T11))と熱交換して冷房用水を冷却する。そして、冷房用水と熱交換して温度が上昇した海洋深層水(T11→T12)は、他の熱交換器(第2熱交換器8b)に導入される。第1熱交換器8a、第2熱交換器8bは、例えば、プレート式熱交換器である。
【0023】
第1熱交換器8aは、熱交換ユニット200を海洋深層水が流通する流路(主流路200a)と並列に配置され、第1熱交換器8aに流入する海洋深層水の流通量は、調節弁8a1によって調節される。また、第2熱交換器8bも主流路200aと並列に配置され、第2熱交換器8bに流入する海洋深層水の流通量は、調節弁8b1によって調節される。
【0024】
調節弁8a1による海洋深層水の流通量の調節および調節弁8b1による海洋深層水の流通量の調節は、例えば、海洋深層水の温度、空調端末210で利用者が設定する設定温度等に基づいて図示しない制御装置が制御する。
例えば、海洋深層水の温度が高いとき、図示しない制御装置は、第1熱交換器8aおよび第2熱交換器8bに流入する海洋深層水の流量を増量して、海洋深層水による冷房用水および冷却水の冷却効果を増大する。
【0025】
また、熱交換ユニット200には、例えば2つのターボ冷凍機9a、9bが直列に配設され、第1熱交換器8aで海洋深層水と熱交換して温度が低下した冷房用水(の一部)をさらに冷却する。ターボ冷凍機9a、9bは、細い実線で示すように内部を循環する冷媒と冷房用水が熱交換して冷房用水の温度を下げるように構成される。また、ターボ冷凍機9a、9bの内部の冷媒は、冷却水ポンプ11によって点線で示すように循環する冷却水との熱交換で温度が下がり、冷却水は冷却水ポンプ11によって第2熱交換器8bとターボ冷凍機9a、9bとの間を循環する。そして、冷媒との熱交換で温度が上昇した冷却水(温度:T31(但し、T31>T12))は第2熱交換器8bで海洋深層水と熱交換して温度が低下する。一方、海洋深層水は温度が上昇する(T12→T13)。
【0026】
このように、ターボ冷凍機9a、9bは、冷却水ポンプ11で循環する冷却水で冷媒が冷却されるように構成され、ターボ冷凍機9a、9bおよび冷却水ポンプ11を含んでチラーユニットが構成される。そして、熱交換ユニット200は、チラーユニットを備えるチラープラントとなる。
【0027】
さらに、本実施形態に係る熱交換装置1aは、海洋深層水を淡水化して上水を製造する淡水化ユニット300を備える。
淡水化ユニット300は、熱交換ユニット200の第2熱交換器8bで熱交換した後の海洋深層水(の一部)を一時的に溜める補給水槽12と、RO膜モジュール17で海洋深層水をろ過して淡水化するSW(Sea Water)ROシステム301と、SWROシステム301を洗浄するためのCIP(Cleaning in Place)システム302と、後処理システム303と、を備えて構成される。
【0028】
補給水槽12は、熱交換ユニット200の第2熱交換器8bで熱交換した後の海洋深層水の一部を溜める水槽であり、第2熱交換器8bで熱交換した後の海洋深層水のうち、補給水槽12に溜まらない海洋深層水は、排水管201を流通して海洋に排水される。
淡水化ユニット300における海洋深層水の使用量は、上水供給装置310から利用者に供給される上水の使用量に応じて変化するため、補給水槽12に海洋深層水を溜めることによって上水の使用量に影響されずに、SWROシステム301に安定して必要量の海洋深層水を供給できるように構成する。なお、補給水槽12における余剰の海洋深層水は補給水槽12に備わる排水管12aを流通して海洋に排水される。さらに、補給水槽12には、海洋深層水の貯水量を調節する調節弁12bが備わる。
調節弁12bは、補給水槽12における海洋深層水の貯水量を減量するときに開弁して補給水槽12に溜まる海洋深層水を排水管12aに流すように構成される。
【0029】
本実施形態に係るSWROシステム301は、逆浸透膜を利用したRO膜モジュール17を保護するために備わる保全フィルタ18を経由した海洋深層水が加圧ポンプ19によって加圧されてRO膜モジュール17に加圧送水される。また、本実施形態に係るSWROシステム301には圧力交換機24が備わっている。圧力交換機24は、RO膜を通過せずにRO膜モジュール17から排出される加圧された海洋深層水(加圧水)の圧力で駆動して加圧ポンプ19の駆動を補助する装置であり、保全フィルタ18の手前から圧力交換機24に取り込まれた海洋深層水が、加圧水の圧力で駆動する圧力交換機24で加圧され、ブースターポンプ24aでさらに加圧された後に加圧ポンプ19の吐出側に戻される。この構成によって、加圧ポンプ19の仕事の一部を圧力交換機24に分担することができ、加圧ポンプ19で消費するエネルギを抑えることができる。また、加圧水の圧力を有効に利用することができる。
なお、圧力交換機24を駆動した後の加圧水は、排水管24bを流通して海洋に排水される。
【0030】
RO膜モジュール17で淡水化された海洋深層水(淡水)は、後処理システム303に備わるソーダ灰容器15から取り出されるソーダ灰と、次亜塩素酸容器16から取り出される次亜塩素酸Na/Caが混合されて上水となり、上水供給装置310から利用者に供給される。また、利用者に供給されない上水は図示しない受水槽に蓄えられる。
【0031】
CIPシステム302は、主にRO膜モジュール17に備わる図示しないRO膜に付着した不純物を洗浄するための装置で、CIPタンク21、CIPポンプ22、バッグフィルタ23を備えて構成される。
RO膜モジュール17を洗浄する場合、RO膜モジュール17から排出された海洋深層水(淡水、加圧水)がCIPタンク21に取り込まれて必要な薬品が投入された後、CIPポンプ22によってバッグフィルタ23に加圧送水されて不純物がろ過され、SWROシステム301に備わる加圧ポンプ19の入力側に戻される。
【0032】
以上のように、本実施形態に係る熱交換装置1aは、600〜800mの深海から海洋深層水を汲み上げる汲み上げ装置100と、汲み上げた海洋深層水で冷熱源となる冷房用水を冷却するチラープラントからなる熱交換ユニット200と、海洋深層水を淡水化して上水を製造する淡水化ユニット300を備えて構成される。
そして、冷房用水を低温の海洋深層水より低温に冷却するとともに、冷房用水の冷却で温度が上昇した海洋深層水を淡水化して上水を製造することによって、低温の海洋深層水を効率よく利用できる。
なお、淡水化ユニット300の構成は淡水の原水となる海洋深層水の水質等によって適宜決定されるものであり、図2に示す構成に限定するものではない。また、後処理システム303で淡水に混合される薬品も海洋深層水の水質等によって適宜変更されるものであり、ソーダ灰と次亜塩素酸Na/Caに限定するものではない。
【0033】
本実施形態における空調装置1(図1参照)で冷房用水を冷却し、さらに上水を製造する過程を、主に図5を参照してより具体的に説明する(適宜図2〜図4参照)。
なお、図5に示す具体的な数値(温度等)は説明のための一例であり、本実施形態に係る空調装置1が設置される周囲環境、季節、規模等によって変化する数値である。
【0034】
例えば、海洋深層水の汲み取り深度が600mで温度が8℃のとき、海洋深層水は、汲み上げ装置100の取水ポンプ4によって海面SLまで汲み上げられると、周囲温度(海水温)の上昇にともなって、温度が10〜12℃まで上昇する。
そして、汲み上げられた海洋深層水は、バケットトラップ3を経由して原水槽5に送水され、例えば12℃の海洋深層水が原水槽5に溜まる。
【0035】
原水槽5に溜まる12℃の海洋深層水は、原水ポンプ6によって第1熱交換器8aに導入され、冷却ポンプ10によって空調端末210から送られる高温(19℃)の冷房用水と第1熱交換器8aで熱交換する。そして、海洋深層水は、第1熱交換器8aで冷房用水と熱交換して温度が16℃まで上昇し、冷房用水は第1熱交換器8aで海洋深層水と熱交換して温度が低下する。さらに、冷房用水は2つ備わるターボ冷凍機9a、9bによって8℃まで温度が下げられて空調端末210に戻る。
【0036】
一方、第1熱交換器8aにおける熱交換で16℃に温度上昇した海洋深層水は、第2熱交換器8bに導入され、冷却水ポンプ11によって第2熱交換器8bと2つのターボ冷凍機9a、9bを循環する冷却水と熱交換する。冷却水は、ターボ冷凍機9a、9b内の冷媒と熱交換して高温の状態であり、第2熱交換器8bで冷却水と熱交換器した海洋深層水は26℃まで温度が上昇する。
【0037】
熱交換ユニット200の第2熱交換器8bで、ターボ冷凍機9a、9bの冷却水と熱交換して26℃に上昇した海洋深層水は分岐し、一方は排水管201を流通して海洋に排水される。このとき、排水する海洋深層水の温度(26℃)と海水温が等しい深度に海洋深層水が排水されることが好ましい。すなわち、排水管201を流通する海洋深層水の温度が26℃の場合、海水温が26℃の深度に海洋深層水を排水することが好ましい。
【0038】
第2熱交換器8bから排出されて分岐した一方の海洋深層水は淡水化ユニット300の補給水槽12に溜められた後、必要に応じて加圧ポンプ19によって取り出されて26℃の温度で保全フィルタ18を経由し、RO膜モジュール17に圧送される。
海洋深層水は加圧ポンプ19で加圧された圧力によってRO膜モジュール17で淡水化され、淡水となって後処理システム303に導入される。そして、後処理システム303に導入された淡水にソーダ灰と次亜塩素酸Na/Caが適宜混合されて上水が製造される。
なお、前記した必要に応じてとの趣旨は、例えば、利用者が上水供給装置310に備わる図示しない給水栓を開いて淡水化ユニット300で製造される上水を利用する必要が生じたような場合である。
【0039】
海洋深層水は、海面SL付近の海水温より低温(例えば8℃)であり、空調装置1の冷熱源となる冷房用水の冷却に利用できるが、海面SL付近まで汲み上げたときに周囲の海水温によって例えば10〜12℃まで温度上昇することから、冷房用水を10〜12℃以下に冷却することができない。
【0040】
そこで、本実施形態に係る空調装置1の熱交換装置1a(図2参照)は、海洋深層水で冷房用水を冷却する第1熱交換器8aの他にターボ冷凍機9a、9bを備え、冷房用水を10〜12℃以下(例えば8℃)に冷却可能とした。
そして、ターボ冷凍機9a、9bは冷媒を冷却水で冷却するチラーユニットを構成し、本実施形態においては、ターボ冷凍機9a、9bの冷媒を冷却した冷却水を、第2熱交換器8bで海洋深層水と熱交換して冷却する構成とした。
【0041】
さらに、第2熱交換器8bでの熱交換によって温度が上昇した海洋深層水(例えば26℃)を、RO膜モジュール17を使用する淡水化ユニット300で淡水化して上水を製造する構成とした。RO膜モジュール17を使用する淡水化ユニット300は、被処理水(本実施形態においては海洋深層水)の温度が低すぎると効率が低下し、25〜30℃の被処理水を淡水化するときに効率を向上できることから、例えば26℃に温度が上昇した海洋深層水は、RO膜モジュール17を使用する淡水化ユニット300で効率よく淡水化可能であり、淡水化ユニット300で効率よく上水を製造できる。
【0042】
このように、本実施形態に係る熱交換装置1a(図2参照)は、熱交換ユニット200(図2参照)に備わるプレート式熱交換器である第1熱交換器8a(図2参照)とチラーユニットを構成するターボ冷凍機9a、9b(図2参照)を備え、海洋深層水を利用して冷房用水を冷却できる。
また、ターボ冷凍機9a、9bの冷媒を冷却する冷却水を海洋深層水で冷却できる。
さらに、ターボ冷凍機9a、9bの冷却水との熱交換で温度が上昇した海洋深層水を淡水化ユニット300(図2参照)に導入してRO膜モジュール17(図2参照)で効率よく淡水化できる。
【0043】
以上のように、本発明は、被熱交換媒体を海洋深層水より低温に冷却して冷熱源とすることができ、さらに、淡水化処理に好適な温度になった海洋深層水を淡水化することで効率よく淡水を製造できる空調装置(海洋深層水利用システム)を提供することができる。そして、海洋深層水の温度を効率よく利用できるという優れた効果を奏する。
また、例えば電気駆動のヒートポンプによって空気を冷却する従来の空調装置や、ターボ冷凍機のみで冷房用水を冷却するシステムよりも大幅にCOを削減することができる。
【0044】
なお、図2に示す淡水化ユニット300に導入される海洋深層水の温度を25〜30℃に維持するためには、熱交換ユニット200の第1熱交換器8aに導入される海洋深層水、すなわち、第1熱交換器8aの入口における海洋深層水の温度が10〜12℃であることが好ましい。したがって、第1熱交換器8aの入口における海洋深層水の温度を10〜12℃に維持する水温調節装置(図示せず)を備える構成としてもよい。
このような水温調節装置は、例えば、原水槽5に備わる加熱装置や冷却装置とすることができる。そして、原水槽5における海洋深層水の温度を10〜12℃に維持するように構成すればよい。この構成によって、淡水化ユニット300に導入される海洋深層水の温度を25〜30℃に維持することができ、淡水化ユニット300で上水を製造する効率を高く維持できる。
【0045】
本発明は、熱帯地方の海岸沿いの地域、特に南国の島国などで好適に実施することができ、COの削減によって地球温暖化を抑制しながら空調装置や上水の供給設備を整備することに寄与するものである。
【符号の説明】
【0046】
1 空調装置(海洋深層水利用システム)
1a 熱交換装置
8a 第1熱交換器
8b 第2熱交換器
9a,9b ターボ冷凍機(チラーユニット)
11 冷却水ポンプ(チラーユニット)
200 熱交換ユニット
210 空調端末
300 淡水化ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋深層水と被熱交換媒体が熱交換して前記被熱交換媒体を冷却する第1熱交換器と、
前記海洋深層水との熱交換で温度が低下した前記被熱交換媒体を冷媒でさらに冷却するチラーユニットと、
前記被熱交換媒体との熱交換で温度が上昇した前記海洋深層水と前記チラーユニットで前記冷媒を冷却して温度が上昇した冷却水が熱交換して前記冷却水を冷却する第2熱交換器と、を含んで構成される熱交換装置を備え、
前記熱交換装置で冷却された前記被熱交換媒体を冷熱源とすることを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記冷却水との熱交換で温度が上昇した前記海洋深層水をRO膜を利用して淡水化する淡水化ユニットを備えることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記第1熱交換器の入口における前記海洋深層水の温度が10〜12℃であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空調装置。
【請求項4】
海洋深層水と被熱交換媒体が熱交換して前記被熱交換媒体を冷却する第1熱交換器と、
前記海洋深層水との熱交換で温度が低下した前記被熱交換媒体を冷媒でさらに冷却するチラーユニットと、
前記被熱交換媒体との熱交換で温度が上昇した前記海洋深層水と前記チラーユニットで前記冷媒を冷却して温度が上昇した冷却水が熱交換して前記冷却水を冷却する第2熱交換器と、を含んで構成される熱交換装置を有し、
前記第2熱交換器で前記冷却水と熱交換して温度が上昇した前記海洋深層水をRO膜を利用して淡水化する淡水化ユニットを備えることを特徴とする海洋深層水利用システム。
【請求項5】
前記第1熱交換器の入口における前記海洋深層水の温度が10〜12℃であることを特徴とする請求項4に記載の海洋深層水利用システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−242036(P2011−242036A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113489(P2010−113489)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】