説明

空調装置

【課題】シール材を用いることなく結合部からの水漏れを防止できる空調装置を提供する。
【解決手段】分割形成された下ケース61とカバー70とが嵌合部80を介して結合された空調ケース10を備えた空調装置であって、下ケース61の底壁部61cに形成され、下ケース61内の水を排水する第1の排水経路d1と、下ケース61の底壁部61cであって第1の排水経路d1と嵌合部80との間に設けられた部屋35と、部屋35に接続され、第1の排水経路d1から部屋35に浸入した水を排水する第2の排水経路d2とを有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割形成された複数のケース体が結合された空調ケースを備えた空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蒸発器で凝縮した水が空調ケースの合わせ面(結合部)から外部に漏れ出すのを防止する車両用空調装置が開示されている。この車両用空調装置では、互いに嵌合される上ケース及び下ケースのうち一方に形成された突起部と他方のケース内壁とによって弾性挟持されるシール材が結合部よりも内側に設けられている。
【特許文献1】特開平6−135220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の車両用空調装置では、シール材の部品コスト及びシール材の取付けコストが必要になるため、車両用空調装置の製造コストが増加してしまうという問題が生じる。
【0004】
本発明の目的は、シール材を用いることなく結合部からの水漏れを防止できる空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0006】
請求項1に記載の発明は、分割形成された第1のケース体(61)と第2のケース体(70)とが結合部(80)を介して結合された空調ケース(10)を備えた空調装置であって、第1のケース体(61)の底壁部(61c)に形成され、第1のケース体(61)内の水を排水する第1の排水経路(d1)と、第1のケース体(61)の底壁部(61c)であって第1の排水経路(d1)と結合部(80)との間に設けられた部屋(35)と、部屋(35)に接続され、第1の排水経路(d1)から部屋(35)に浸入した水を排水する第2の排水経路(d2)とを有することを特徴としている。
【0007】
これにより、第1の排水経路(d1)の水は第1の排水経路(d1)と結合部(80)との間に設けられた部屋(35)に浸入するようになっており、部屋(35)に浸入した水は第2の排水経路(d2)により排水されるようになっている。したがって、シール材を用いることなく結合部(80)からの水漏れを防止できる。
【0008】
請求項2に記載の発明のように、第1の排水経路(d1)は直線状に延びる凹溝(32)を含み、凹溝(32)の長手方向の任意の位置に設けられ、凹溝(32)を流れる水を堰き止めるとともに部屋(35)と第1の排水経路(d1)との間を分離する堰止め壁(33)をさらに有していてもよい。
【0009】
請求項3に記載の発明は、部屋(35)の上部を塞ぐ蓋(72)をさらに有することを特徴としている。これにより、部屋(35)内が空調ケース(10)内の内部圧力や通過風の影響を受け難くなるため、部屋(35)内の水が結合部(80)を介してさらに漏れ出すことを防止できる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、蓋(72)は、第2のケース体(70)と一体的に形成されていることを特徴としている。これにより、空調装置の部品点数の増加及び製造コストの増加を抑制できる。
【0011】
ここで、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係の一例を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1乃至図4を用いて説明する。図1は、本実施形態における車両用の空調装置1の全体構成を示す概略図である。図1に示すように、車両に搭載される空調装置1は、空調空気を流通させる空気通路11を内部に備えた空調ケース10を有している。空調ケース10は、後述するように、底壁部61cを備えた下ケース61と、嵌合により下ケース61に結合される上ケース62と、下ケース61及び上ケース62の結合面近傍に形成された開口部を塞ぐカバー70との3つのケース体により構成されている。下ケース61、上ケース62及びカバー70は、嵌合部を介して互いに結合されている。
【0013】
空調ケース10には、車室内に向かう空気の流れを空気通路11内に発生させる送風機16が設けられている。送風機16は、遠心式の送風ファン17と、送風ファン17を駆動する駆動用モータ18とを有している。
【0014】
送風機16の空気流れ上流側には、内外気切替箱12が設けられている。内外気切替箱12には、車室外の空気(外気)を導入する外気導入口13と、車室内の空気(内気)を導入する内気導入口14とが形成されている。また内外気切替箱12には、外気導入口13及び内気導入口14を開閉する板状の内外気切替ドア15が設けられている。内外気切替ドア15は不図示の駆動機構により駆動され、外気及び内気を吸込モードに基づいて切替え導入するようになっている。
【0015】
空気通路11内であって送風機16の下流側には、内部を流通する冷媒との熱交換により空調空気を冷却する冷媒蒸発器20が配置されている。冷媒蒸発器20は、冷媒が循環する冷凍サイクルの一部を構成する。
【0016】
図2は、空調装置1の冷媒蒸発器20近傍の構成を示す模式図である。図2の上下方向は概ね鉛直上下方向を表している。図2に示すように、空調ケース10本体は、下ケース61と上ケース62とが嵌合部81を介して結合された構成を有している。冷媒蒸発器20近傍では、上方から流入した空気の流れ方向が空調ケース10の傾斜面10aによりほぼ水平方向(図中左方向)に変化するようになっている。送風機16側から吹き出された水は、傾斜面10aを流下するようになっている。冷媒蒸発器20の空気流れ上流側には、内外気切替箱12で導入された空気を濾過集塵するフィルタ30が着脱可能に取り付けられている。フィルタ30が取り付けられる空調ケース10(下ケース61)の底壁部61cには、フィルタ30の高さ位置を位置決めするための複数のリブ31が形成されている。各リブ31は、互いに並列して傾斜面10aに沿って直線状に延びている(図3参照)。傾斜面10aとリブ31との間、及び互いに隣り合うリブ31間には、直線状に延びる凹溝32が形成されている。
【0017】
冷媒蒸発器20の下方には、冷媒蒸発器20表面で凝縮した凝縮水や内外気切替箱12から進入した水を排水するための排水口21が設けられている。また、空調ケース10の底壁部61cのうち冷媒蒸発器20の下方には、排水口21側が低くなるように傾いた傾斜面10bが形成されている。
【0018】
図1に戻り、冷媒蒸発器20の空気流れ下流側には、回動自在なエアミックスドア51が設けられている。エアミックスドア51のさらに下流側には、内部を流通するエンジン冷却水との熱交換により、冷媒蒸発器20で冷却された空気を加熱するヒータコア50が設けられている。ヒータコア50の上方には、ヒータコア50を迂回して空気を流すバイパス通路52が形成されている。エアミックスドア51は、不図示の駆動機構により駆動され、ヒータコア50を通過して再加熱される高温の空気と、ヒータコア50を迂回してバイパス通路52を通過する低温の空気との混合比率を調節できるようになっている。これにより、車室内に吹き出される空気の温度が調節される。
【0019】
ヒータコア50及びバイパス通路52の空気流れ下流側には、フット吹出口55、フェイス吹出口56及びデフロスタ吹出口57が設けられている。フット吹出口55からは、車室内の乗員の下半身側に空気が吹き出され、フェイス吹出口56からは、乗員の上半身側に空気が吹き出されるようになっている。フット吹出口55及びフェイス吹出口56は、例えば、回動自在なモードドア58によって開閉される。またデフロスタ吹出口57からは、車両のフロントガラス内面に空気が吹き出されるようになっている。デフロスタ吹出口57は、例えば、回動自在なモードドア59によって開閉される。
【0020】
図3は、空調ケース10を構成するケース体の一つである下ケース61の要部構成を示す上面図である。図4は、図3のIV−IV線で切断した空調ケース10の構成を模式的に示す断面図である。図3及び図4に示すように、嵌合部81を構成する下ケース61の結合端面61bには、上ケース62の結合端面に形成された嵌合溝部に嵌合する嵌合突起部63が形成されている。下ケース61の底壁部61cに形成された凹溝32には、送風機16側から吹き出されて傾斜面10a(下ケース61の傾斜面61a)を流下した水が流入し、長手方向に流れるようになっている。
【0021】
凹溝32の一方の長手方向端部(図3中左側)には、凹溝32を長手方向に流れる水を堰き止める堰止め壁33が下ケース61と一体的に形成されている。堰止め壁33よりも内側には、凹溝32の長手方向にほぼ垂直に延びて各凹溝32にそれぞれ接続された排水溝34が形成されている。排水溝34の一端には、各凹溝32内を流れる水を傾斜面10b側に排水するための排水用開口34aが形成されている。排水溝34の底面は、例えば排水用開口34a側が低くなるように傾斜している。凹溝32、排水溝34、排水用開口34a及び傾斜面10bは、外部から浸入した水を排水口21を介して排水するための通常の排水経路(第1の排水経路)d1を構成する。
【0022】
堰止め壁33の外側の空調ケース10側壁部には、下ケース61及び上ケース62を嵌合させた空調ケース10本体に対しフィルタ30を挿脱するための開口部64が形成される。開口部64は、鉛直方向に長い長方形状の開口形状を有している。開口部64の下方部分を画定する下ケース61の結合端面66には、嵌合突起部65が形成されている。また、開口部64の上方部分を画定する上ケース62の結合端面(図示せず)にも嵌合突起部が形成されている。
【0023】
堰止め壁33と開口部64との間には、長方形状の平面形状を有する部屋35が形成されている。部屋35の一端には、部屋35内に浸入した水を傾斜面10b側に排水するための排水用開口35aが形成されている。部屋35の底面は、例えば排水用開口35a側が低くなるように傾斜している。部屋35と排水溝34との間は、堰止め壁33により分離されている。また部屋35と開口部64との間は、堰止め壁33上面とほぼ等しい高さレベルの上面を備えた側壁73により分離されている。側壁73は、下ケース61と一体的に形成されている。
【0024】
開口部64には、空調ケース10を構成するケース体の1つであるカバー(第2のケース体)70が取外し可能に取り付けられるようになっている。カバー70は、下ケース61の結合端面66に接する結合端面74と、上ケース62の結合端面に接する結合端面(図示せず)とを有している。結合端面74には、下ケース61側の嵌合突起部65の形状に沿った嵌合溝部71が形成されている。下ケース61の嵌合突起部65を嵌合溝部71に嵌合させることによって、カバー70と下ケース61とが嵌合部(結合部)80を介して結合されるようになっている。またカバー70は、空調ケース10の内側に向かってほぼ水平に突出する平板状の蓋72を有している。蓋72は、カバー70本体と一体的に形成されている。
【0025】
カバー70を空調ケース10本体に取り付けたときには、蓋72の下面が堰止め壁33及び側壁73のそれぞれ上面に当接し、部屋35の上部は蓋72により覆われるようになっている。例えば排水溝34側から部屋35内に浸入した水は、排水用開口35aから傾斜面10b側に排水される。部屋35、排水用開口35a及び傾斜面10bは、通常の排水経路d1とは別の排水経路(第2の排水経路)d2を構成する。
【0026】
次に、外部から空調装置1内に浸入した水の排水経路について説明する。内外気切替箱12を介して外部から浸入した水は、送風機16により空気と共に空気通路11に吹き出される。空気通路11に吹き出された水は、空気の流れ方向をほぼ鉛直方向からほぼ水平方向に変える空調ケース10の傾斜面10aに付着し、傾斜面10aを流下する。傾斜面10aを空調ケース10(下ケース61)の底壁部61cまで流下した水は凹溝32に流入し、凹溝32を長手方向(図3中の左方向)に流れる。凹溝32を流れる水は、堰止め壁33により堰き止められて排水溝34を流れ、排水用開口34aから流出する。排水用開口34aから流出した水は傾斜面10bを流下し、排水口21を介して外部に排出される。すなわち、内外気切替箱12を介して外部から浸入した水の大部分は、通常の排水経路d1を通って排水口21から排水される。
【0027】
ここで、排水溝34と部屋35とは堰止め壁33及び蓋72により分離されているが、空調ケース10内の内部圧力や通過風の影響、又は毛細管現象等により、排水溝34内の水が堰止め壁33及び蓋72間の当接面を介して部屋35内に浸入することがあり得る。
【0028】
部屋35内に浸入した水は、排水用開口35aから流出して傾斜面10bを流下し、排水口21を介して外部に排出される。すなわち、内外気切替箱12を介して外部から浸入した水の一部は部屋35に浸入し得るが、部屋35に浸入した水は通常の排水経路d1とは別の排水経路d2を通って排水口21から排水される。部屋35内は空調ケース10内の内部圧力や通過風の影響を受け難いため、部屋35に浸入した水が下ケース61及びカバー70間の嵌合部80を介して外部にさらに漏れ出すことはほとんどない。
【0029】
以上のように本実施形態によれば、通常の排水経路d1を流れる水は、嵌合部80を介して外部に漏れ出す前に部屋35に浸入するようになっている。部屋35内の水は、排水経路d1とは別に設けられた排水経路d2を通って排水される。これにより、空調ケース10の嵌合部80から外部への水漏れを防止できる。
【0030】
また本実施形態ではシール材を用いずに水漏れを防止できるため、空調装置1の部品コスト及び製造コストを低減できるとともに、シール材の付け忘れによる水漏れの発生の問題が生じない。
【0031】
さらに本実施形態では、蓋72がカバー70と一体的に形成されているため、部品点数の増加及び製造コストの増加が抑えられる。
【0032】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、堰止め壁33が凹溝32の一方の長手方向端部に形成されているが、堰止め壁33は凹溝32の長手方向の任意の位置に設けることができる。
【0033】
また上記実施形態では、下ケース61と取外し可能なカバー70との間の嵌合部80での水漏れを防止する構造を例に挙げたが、取外しが行われない下ケース61と上ケース62との間の嵌合部での水漏れを防止する構造にも適用できる。
【0034】
さらに上記実施形態では、下ケース61とカバー70との間の嵌合部80での水漏れを防止する構造を例に挙げたが、嵌合以外の手段により結合される結合部での水漏れを防止する構造にも適用できる。
【0035】
また上記実施形態では、空調ケース10内部から外部への水漏れを防止する構造を例に挙げたが、排水経路が形成されるある空間から水の漏入が問題となる他の空間への水漏れを防ぐ構造に広く適用できる。
【0036】
さらに上記実施形態では車両用の空調装置1を例に挙げたが、車両用以外の空調装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施形態における空調装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】冷媒蒸発器近傍の構成を示す模式図である。
【図3】空調ケースのうち下ケースの要部構成を示す上面図である。
【図4】図3のIV−IV線で切断した空調ケースの構成を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 空調装置
10 空調ケース
32 凹溝
33 堰止め壁
35 部屋
61 下ケース(第1のケース体)
70 カバー(第2のケース体)
72 蓋
80 嵌合部(結合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割形成された第1のケース体(61)と第2のケース体(70)とが結合部(80)を介して結合された空調ケース(10)を備えた空調装置であって、
前記第1のケース体(61)の底壁部(61c)に形成され、前記第1のケース体(61)内の水を排水する第1の排水経路(d1)と、
前記第1のケース体(61)の底壁部(61c)であって前記第1の排水経路(d1)と前記結合部(80)との間に設けられた部屋(35)と、
前記部屋(35)に接続され、前記第1の排水経路(d1)から前記部屋(35)に浸入した水を排水する第2の排水経路(d2)とを有することを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記第1の排水経路(d1)は直線状に延びる凹溝(32)を含み、
前記凹溝(32)の長手方向の任意の位置に設けられ、前記凹溝(32)を流れる水を堰き止めるとともに前記部屋(35)と前記第1の排水経路(d1)との間を分離する堰止め壁(33)をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記部屋(35)の上部を塞ぐ蓋(72)をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の空調装置。
【請求項4】
前記蓋(72)は、前記第2のケース体(70)と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−296713(P2008−296713A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144159(P2007−144159)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】