説明

空間電荷低減効果を有する直流用電力ケーブル

【課題】本発明は、導体、内部半導電層、絶縁層及び外部半導電層を含み、良好な空間電荷低減効果を有する直流用電力ケーブルの提供を目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、前記内部半導電層または外部半導電層は、ポリプロピレン基本樹脂または低密度ポリエチレン基本樹脂とカーボンナノチューブとを含む半導電性組成物によって形成され、前記絶縁層は、ポリプロピレン基本樹脂または低密度ポリエチレン基本樹脂とナノ無機粒子とを含む絶縁組成物によって形成される直流用電力ケーブルを採用する。最終的に製造された直流用電力ケーブルは、電力ケーブルに求められる体積比抵抗、ホットセットなどの物性において優れた効果を奏するだけでなく、上昇した体積比抵抗と優れた空間電荷低減効果とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた空間電荷低減効果を有する直流用電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2010年7月13日出願の韓国特許出願第10‐2010‐0067454号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書および図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【0003】
現在、韓国内で使われている電力ケーブルは、図1及び図2に示すように、導体1を中心にして、内部半導電層2、絶縁層3、外部半導電層4、鉛シース(lead sheath)層5及びポリエチレンシース(PE sheath)層6からなっている。従来から、電力ケーブルを構成する絶縁層3としては、架橋ポリエチレン(XLPE)が広く使われてきた。
【0004】
ところが、環境規制が漸次厳しくなる国際状況を勘案すれば、リサイクルが難しい架橋ポリエチレン樹脂を使うことは望ましくない。また、架橋ポリエチレンを使う場合、架橋結合またはスコーチ(scorch)が早期に発生すれば、均一な生産能力を発揮できないなど、長期押出性の低下を引き起こすので望ましくない。そして、架橋ポリエチレン樹脂と共に架橋剤を使用して架橋工程を経る場合、アルファ‐メチルスチレンまたはアセトフェノンのような架橋副産物が発生する問題点があった。
【0005】
したがって、このような架橋副産物を除去するためのガス除去工程をさらに経なければならないので、工程時間及び工程コストが増加するというもう一つの問題点が生じる。それだけでなく、架橋ポリエチレンによって製造された絶縁体を含む電力ケーブルを高圧送電線として使う場合に発生する最大の問題点は、ケーブルに直流高電圧が印加されるとき、絶縁体に電極からの電荷注入及び架橋副産物の影響により空間電荷(space charge)が形成されやすいということである。そして、電力ケーブルに印加された直流電圧によって、絶縁体内にこのような空間電荷が蓄積されれば、電力ケーブルの導体周囲の電界強度が上昇するので、ケーブルの破壊電圧が低下する問題点も発生する。
【0006】
前記問題点を解決するために、酸化マグネシウムを含んで絶縁体を製造しようとする試みがあった。前記酸化マグネシウムは、基本的に面心立方構造(FCC)の結晶構造を有するが、合成方法によっては多様な形態、純度、結晶化度、物性を有し得る。前記酸化マグネシウムの形態は、図3〜図7に示すように、立方体型(cubic)、積層型(terrace)、棒型(rod)、多孔性(porous)、球形(spherical)に区分され、それぞれの特徴的な物性に応じて、多様な利用方法がある。前記酸化マグネシウムの形態の中で球形酸化マグネシウムは、特許文献1及び特許文献2に示されるように、電力ケーブルの空間電荷を抑制するために使われる。このように、絶縁体を備える電力ケーブルにおいて空間電荷を抑制しようとする方法は、現在も研究が継続されている。
【0007】
また、従来の直流用電力ケーブルの内部半導電層2または外部半導電層4を形成する導電性組成物には、基本樹脂に対して多量のカーボンブラックが含まれたものが採用される。このため、製造された直流用電力ケーブルの体積と重量とが増加し、基本樹脂とカーボンブラックとの間の分散性が低下する問題点が発生する。従って、カーボンブラックの代わりに導電性粒子として使用可能な物質に関する研究が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2541034号公報
【特許文献2】特許第3430875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の技術的課題は、製造工程で発生する架橋副産物と空間電荷とが抑制され、押出性が改善した絶縁層を含む直流用電力ケーブルを提供することである。
【0010】
また、本発明の他の技術的課題は、既存のカーボンブラックの代わりをする新しい導電性粒子を含有する半導電層を含むことで改善した直流用電力ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、導体、内部半導電層、絶縁層及び外部半導電層を含む本発明の直流用電力ケーブルとして、ポリプロピレン基本樹脂または低密度ポリエチレン基本樹脂とカーボンナノチューブとを含む半導電性組成物によって形成された内部半導電層または外部半導電層を含み、ポリプロピレン基本樹脂または低密度ポリエチレン基本樹脂とナノ無機粒子とを含む絶縁組成物によって形成された絶縁層を含むものを採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の直流用電力ケーブルは、優れた空間電荷低減効果と、良好な押出性とを有し、体積と重量とが減少したものとなるため、様々の利用分野においての応用度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に添付される下記の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明は、そのような図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはいけない。
【図1】直流用電力ケーブルの断面図である。
【図2】直流用電力ケーブルの構造を示す図である。
【図3】立方体型酸化マグネシウムのSEM写真である。
【図4】積層型酸化マグネシウムのSEM写真である。
【図5】棒型酸化マグネシウムのSEM写真である。
【図6】多孔性酸化マグネシウムのTEM写真である。
【図7】球形酸化マグネシウムのSEM写真である。
【図8】立方体型酸化マグネシウムが含まれた絶縁体のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明の直流用電力ケーブルは、導体1、前記導体を包む内部半導電層2、前記内部半導電層を包む絶縁層3及び前記絶縁層を包む外部半導電層4を含む。また、本発明は、前記外部半導電層4を包む外装を、さらに含むことができ、前記外装は、鉛シース層5及びポリエチレンシース層6からなり得る。
【0015】
前記内部半導電層2または外部半導電層4は、ポリプロピレン基本樹脂または低密度ポリエチレン基本樹脂と、カーボンナノチューブとを含む半導電性組成物によって形成される。
【0016】
前記半導電性組成物は、基本樹脂100重量部に対して、カーボンナノチューブを1重量部〜6重量部の範囲で含み、カーボンブラックを0.1重量部〜10重量部及び/又は酸化防止剤を0.1重量部〜0.5重量部の範囲で更に含ませることができる。
【0017】
本発明で用いるポリプロピレン基本樹脂は、溶融指数(MI)が1〜50であるものであって、i)C4ないしC8のアルファオレフィン、及び、ii)エチレンから構成された群より選択された一つ以上のモノマーが共重合されたものが望ましい。前記ポリプロピレン樹脂は、アルファオレフィン及び/又はエチレンが規則性なく重合されたポリプロピレンランダムコポリマーである。
【0018】
本発明で用いる低密度ポリエチレン(LDPE)基本樹脂は、密度が0.85〜0.95kg/mであり、溶融指数(MI)が1〜2であることが望ましい。
【0019】
前記半導電性組成物に用いるカーボンナノチューブには、薄い多重壁カーボンナノチューブ(thin MWCNT)を含む多重壁カーボンナノチューブ(MWCNT)を用いることができ、前記カーボンナノチューブは通常の合成法によって製造できる。前記合成法は、液状酸化を通じて触媒を除去し、高温熱処理を通じて非晶質カーボンを除去して、98%〜100%の高純度カーボンナノチューブを修得できるようにする。このように高純度のカーボンナノチューブを用いることで、製造される内部半導電層または外部半導電層に発生する突起のサイズを減らすことができる。その結果、内部半導電層または外部半導電層の寿命が延長され、高信頼性のケーブルを作ることができる。また、従来使われてきた高含量のカーボンブラックの代わりに低含量のカーボンナノチューブを半導電性組成物に適用することで、より平滑な半導電層を作ることができる。これにより絶縁層の厚さ低減が可能であるので、より軽量のケーブルを作ることができる。
【0020】
また、前記半導電性組成物のカーボンナノチューブは、1重量部〜6重量部の範囲であれば、基本樹脂と容易に結合できるので、基本樹脂に対する良好な分散性を得ることができる。特に、純度が98%以上であるカーボンナノチューブを使うことが望ましく、直径が5nm〜20nmであり、且つ、長さが数十μmである薄い多重壁カーボンナノチューブを用いることが、より好ましい。本発明においてカーボンナノチューブを使うことで、カーボンブラックの含量を減らすことができ、その結果、半導電性組成物の流れ性を向上させて押出負荷を減らすことができるなど、改善した押出性を発揮することができる。この押出性が改善すると、押出成形に要する工程時間の短縮が可能になり、製造コストの削減効果が期待できようになる。
【0021】
また、カーボンナノチューブと基本樹脂との分散性を、さらに改善するために、次のような方法が使用できる。まず、超臨界流体法、液状酸化‐ラッピング(wrapping)などの方法を使用して、カーボンナノチューブの表面を官能化し、ヘンシェルミキサー(Henschel mixer)などを利用して本発明の基本樹脂と混合することで分散性を改善することができる。前記液状酸化‐ラッピング方法とは、カーボンナノチューブに酸性溶液を処理した後、精製してカーボンナノチューブの表面をカルボキシル基などによって官能化する方法を意味する。
【0022】
カーボンナノチューブと基本樹脂との分散性をさらに改善するためのもう一つの方法は、次のとおりである。本発明の基本樹脂を、オルト(ortho)‐1,2‐ジクロロベンゼン、1,2,4‐トリクロロベンゼンのようなクロロベンゼン類の良溶媒(good solvent)に溶かした後、水、メタノールのような極性溶媒である貧溶媒(poor solvent)に撒布してマイクロサイズの球形基本樹脂を作った後、Hybridizer(Nara Machinery)、Nobilta(Hosokawa Micron)、Q‐mix(Mitsui Mining)などの設備を使用してカーボンナノチューブと混成して混成粒子を製造することで、分散性を改善することができる。
【0023】
また、本発明においては、カーボンナノチューブとともにカーボンブラックを0.1重量部〜10重量部の範囲で混合して使うことができる。カーボンブラック粒子は40m/g〜200m/gの高い比表面積を有するので、カーボンブラックの含量を多少減少させても、配合、配合速度、体積比抵抗、押出性及び再現性の観点で改善した効果を奏することができ、スコーチ容積を減少させることができるようになる。このように、本発明においては、カーボンナノチューブを使うことで、カーボンブラックを使わないか或いは少ない量を使うことになるので、平滑な半導電層を製造できるようになる。その結果、内部半導電層及び/又は外部半導電層の厚さ低減が可能になるので、軽量の電力ケーブルを提供できる。従って、電力ケーブルの物流及び施工コストも削減することができる。
【0024】
前記半導電性組成物の酸化防止剤として、アミン類及びその誘導体、フェノール類及びその誘導体またはアミン類とケトン類の反応生成物を1種または2種以上混用して使うことができる。また、耐熱特性を向上させるために、ジフェニルアミンとアセトンの反応物、ジンク 2‐メルカプトベンジミダゾレイト、4,4’‐ビス(α,α‐ジメチルベンジル)ジフェニルアミンを1種または2種以上混用して使うことができる。また、ペンタエリスリトール‐テトラキス[3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐フェニル)‐プロピオネート]、ペンタエリスリトール‐テトラキス‐(β‐ラウリル‐チオプロピオネート、2,2’‐チオジエチレンビス‐[3‐(3,5‐ジ‐tert, ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオネート]、b,b’‐チオジプロピオン酸のジステアリル‐エステルを1種または2種混用して使うことができる。
【0025】
前記絶縁層3は、ポリプロピレン基本樹脂または低密度ポリエチレン基本樹脂とナノ無機粒子とを含む絶縁組成物によって形成される。係る場合の絶縁組成物は、架橋剤を含まないので、製造工程において架橋副産物が発生しない。従って、従来技術とは異なって架橋副産物を除去するための工程を経る必要がないので、工程時間及び工程コストを節減することができる。
【0026】
本発明の絶縁組成物は、基本樹脂100重量部に対して、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化チタン(TiO)、カーボンブラック、グラファイト粉末及び表面改質された立方体型酸化マグネシウムから構成された群より選択された1種以上のナノ無機粒子を0.1重量部〜5重量部の範囲で含むことが好ましい。前記数値範囲に関し、0.1重量部未満の場合には、空間電荷低減効果は奏するが直流絶縁破壊強度が相対的に低くなり、5重量部を超えて含まれる場合には、機械的性能及び連続押出性を低下させる。
【0027】
望ましくは、前記酸化マグネシウムは、ビニルシラン、ステアリン酸、オレイン酸、アミノポリシロキサンなどによって表面改質することが望ましい。通常、酸化マグネシウムは高表面エネルギーを有する親水性であるが、ポリプロピレン基本樹脂または低密度ポリエチレン基本樹脂は低表面エネルギーを有する疎水性であるので、酸化マグネシウムが前記基本樹脂に対する分散性が低下し、電気的特性にも悪影響を及ぼすという問題点がある。したがって、このような問題点を解決するために、酸化マグネシウムを表面改質することが望ましい。酸化マグネシウム粒子を表面改質しなかった場合、酸化マグネシウムとポリプロピレン樹脂との間にギャップができて機械的物性を低下させるだけでなく、絶縁破壊強度などの電気絶縁特性の低下を誘発する恐れがあるからである。
【0028】
一方、本発明における酸化マグネシウムは、ビニルシランによって表面改質されることで、基本樹脂に対して、より優れた分散性を示し、電気的特性を改善する。ビニルシランの加水分解基が縮合反応によって、酸化マグネシウムの表面に化学結合することで、表面改質された酸化マグネシウムとなる。その後、前記ビニルシランによって、表面改質された酸化マグネシウムのシラン基が、基本樹脂と反応して優れた分散性を確保できるようになるのである。
【0029】
また、前記酸化マグネシウムは、純度が99.9%〜100%であり、平均粒径が500nm以下であることが望ましく、単結晶または多結晶の結晶形態を備える。そして、前記絶縁組成物は、前記基本樹脂100重量部に対して、酸化防止剤を0.1重量部〜0.5重量部の範囲で含むことが可能である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明が属する分野の平均的な技術者は、下記実施例に記載された実施態様以外に種々の形態に本発明を変更することができ、下記実施例は本発明を例示するに過ぎず、本発明の技術的思想の範囲を下記実施例の範囲に限定するための意図であると解釈してはいけない。
【0031】
本発明の直流用電力ケーブルを製造するために用いられる半導電性組成物及び絶縁組成物の組成による性能変化を観察するために、下記表1に示す組成で実施例と比較例の組成物を製造した。表1の各成分の含量の単位は重量部であり、本発明の数値範囲を外れる含量はイタリック体で表す。
【0032】
【表1】

【0033】
[表に使用した成分の説明]
* 基本樹脂:低密度ポリエチレン(密度:0.85〜0.95kg/m、溶融指数(MI):1〜2)。
* 酸化マグネシウム:ビニルシランによって表面改質された酸化マグネシウムを粉砕したもの。
* 酸化防止剤:テトラキス‐(メチレン‐(3,5‐ジ‐(tert)‐ブチル‐4‐ヒドロシンナマート))メタン。
【0034】
物性測定及び評価: 前記実施例1〜3及び比較例1〜2による半導電性組成物を用いて半導電体試片を製造した。このように得られた実施例と比較例との試片に対して、半導電特性としての体積比抵抗、ホットセット(hot set)を測定し、その結果を下記表2に示し、基準値を満たさなかった場合はイタリック体で表した。簡略な実験条件は、下記のようである。
【0035】
また、前記実施例1〜3及び比較例1〜2による絶縁材料組成物を用いてマスターバッチ(master batch)化合物を製造し、スクリュー直径が25mm(L/D=60)である2軸押出機を使用して押出工程を行なった。その結果として製造された本発明の絶縁体内に、立方体型酸化マグネシウムが含有されていることを確認するために、図8に絶縁体のTEM写真を示す。
【0036】
前記実施例1〜3及び比較例1〜2によって製造された絶縁体を熱間加圧して、体積比抵抗及び直流絶縁破壊強度測定用0.1mm厚さの試片をそれぞれ製造し、体積比抵抗及び直流絶縁破壊強度(ASTM D149)をテストして、その結果を下記表2に示した。簡略な実験条件は、下記のようである。
【0037】
イ.内部及び外部半導電体の体積比抵抗
半導電体試片に対して、直流印加電界80kV/mmであるときの体積比抵抗(Ω・cm)を25℃、90℃でそれぞれ測定した。
ロ.ホットセット
半導電体試片に対するホットセット試験は、引張り試験試片で150℃の空気条件下で15分間露出させた後、IECA T‐562で評価した。
ハ.絶縁体の体積比抵抗
絶縁体試片に対して、直流印加電界80kV/mmであるときの体積比抵抗(×1014 Ω・cm)を測定した。
ニ.直流絶縁破壊強度
絶縁体試片に対して、90℃で直流破壊強度(kV)を測定した。
【0038】
【表2】

【0039】
表2に示すように、本発明の実施例1〜実施例3の半導電性組成物を用いて製造された半導電体試片は、体積比抵抗及びホットセットですべて基準値を満たした。しかし、比較例1の半導電体試片は、体積比抵抗で基準値を満たすことができず、比較例2の半導電体試片は、体積比抵抗及びホットセットですべて基準値を満たさなかった。このような結果は、比較例1及び2の半導電性組成物がカーボンナノチューブを含まずに多量のカーボンブラックを含んで製造されたことに起因する。
【0040】
また、表2に示すように、本発明の実施例1〜実施例3の絶縁体は、比較例1(酸化マグネシウムを使わない)及び比較例2(積層型酸化マグネシウムを使う)の試片に比べて、体積比抵抗及び直流絶縁破壊強度が高かった。すなわち、本発明の実施例1〜実施例3の絶縁体試片は、立方体型酸化マグネシウムを空間電荷低減剤として使ったことから優れた電気絶縁特性を現すということが分かる。
【0041】
以上のように、本発明の最適な実施例を開示した。本実施例を含む明細書において特定の用語が使われたが、これは単に当業者に本発明を詳しく説明するための目的で使われたことであって、意味を限定するか特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を制限するために使われたものではないことを明らかにしておく。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る直流用電力ケーブルは、良好な品質の絶縁層又は半導電層を備えるため、優れた空間電荷低減効果を発揮する。よって、本発明に係る直流用電力ケーブルは、安定した絶縁破壊特性を発揮し、小型化と軽量化とを同時に達成し、且つ、その他の絶縁特性、電気特性も良好で信頼性の高い高品質のものとなり、様々の利用分野においての利用分野が広がる。また、本発明に係る直流用電力ケーブルの製造過程においては、良好な押出性をもって製造されるものであるため、生産歩留まりに優れたものとなる。
【符号の説明】
【0043】
1… 導体
2… 内部半導電層
3… 絶縁層
4… 外部半導電層
5… 鉛シース層
6… ポリエチレンシース層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体、内部半導電層、絶縁層及び外部半導電層を含むケーブルにおいて、
当該内部半導電層又は外部半導電層は、ポリプロピレン基本樹脂又は低密度ポリエチレン基本樹脂と、カーボンナノチューブとを含む半導電性組成物によって形成されたものであり、
当該絶縁層は、ポリプロピレン基本樹脂又は低密度ポリエチレン基本樹脂と、ナノ無機粒子とを含む絶縁組成物によって形成されたことを特徴とする直流用電力ケーブル。
【請求項2】
前記半導電性組成物は、基本樹脂100重量部に対して、
カーボンナノチューブを1重量部〜6重量部の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の直流用電力ケーブル。
【請求項3】
前記半導電性組成物は、基本樹脂100重量部に対して、
カーボンブラックを0.1重量部〜10重量部、及び、酸化防止剤を0.1重量部〜0.5重量部の範囲で含むものである請求項1又は請求項2に記載の直流用電力ケーブル。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブは、5nm〜20nmの直径を有し、且つ、98%以上の多重壁カーボンナノチューブである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の直流用電力ケーブル。
【請求項5】
前記絶縁組成物は、基本樹脂100重量部に対して、
二酸化ケイ素(SiO)、二酸化チタン(TiO)、カーボンブラック、グラファイト粉末及び表面改質された立方体型酸化マグネシウムから構成された群より選択された1種以上のナノ無機粒子を0.1重量部〜5重量部の範囲で含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の直流用電力ケーブル。
【請求項6】
前記絶縁組成物は、基本樹脂100重量部に対して、
酸化防止剤を0.1重量部〜0.5重量部の範囲で含むものである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の直流用電力ケーブル。
【請求項7】
前記酸化マグネシウムは、純度99.9%以上であり、且つ、平均粒径が500nm以下である請求項5に記載の直流用電力ケーブル。
【請求項8】
前記酸化マグネシウムは、単結晶又は多結晶である請求項5又は請求項7に記載の直流用電力ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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